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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012890030 審決 商標
無効2011890049 審決 商標
無効2008890041 審決 商標
無効2011890082 審決 商標
取消2008300287 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X14
管理番号 1239815 
審判番号 無効2010-890062 
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-08-16 
確定日 2011-06-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5189842号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5189842号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5189842号商標(以下「本件商標」という。)は、「フォアランナー」の片仮名と「FORERUNNER」の欧文字とを二段に横書きしてなり、平成20年1月28日に登録出願、第14類「スポーツにおける計測用時計」を指定商品として、同年11月18日に登録査定がなされ、同年12月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び資料1ないし資料8を提出した。
本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものである。
1 請求人の商標「FORERUNNER」(以下「引用商標」という。)の周知性について
(1)請求人の商品であるFORERUNNERシリーズの腕時計は、GPSを搭載し、ジョギング時に心拍数、距離、消費カロリーがわかる機能も備えた腕時計であり、このような機能が全米でランナーに好評を得ている。このように、請求人は、引用商標をスポーツにおける計測等に用いられる腕時計に使用しており、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものである。
請求人の引用商標に係る腕時計としては、様々なシリーズが販売されており、引用商標は、米国における需要者に広く認識されているものである。米国における周知性を示す証拠としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
ア 雑誌「Runner’s World」(ランナーズワールド)(資料1)
ランナーズワールドは、米国のRodale社が出版しているランナーを対象にした雑誌である。全米で65万部発行され販売されているこの雑誌は、過去3回米国雑誌大賞を受賞している。2006年度の雑誌中、添付の3月号、4月号、5月号、6月号、11月号、12月号に、請求人の「FORERUNNER」の広告が掲載されている。さらに、9月号においては、トレーニング測定機器として本書が推奨する商品のひとつとして「FORERUNNER」を紹介する記事が掲載されている。
イ 雑誌「Men’s Health」(メンズヘルス)(資料2)
メンズヘルスは、米国のRodale社が出版している男性向けの健康に関する雑誌である。全米では190万部、その他の国々では150万部を発行し販売されている。この雑誌は過去4回米国雑誌大賞を受賞している。2006年と2007年度の雑誌中、2006年度の3月号、5月号、6月号、7/8月号、2007年度の3月号、4月号、5月号、7/8月号、11月号、12月号に請求人の「FORERUNNER」の広告が掲載されており、2006年度の4月号と2007年度の9月号には該誌が推奨する商品のーつとして「FORERUNNER」を紹介する記事が掲載されている。
ウ 「Wall Street Journal」(ウォールストリートジャーナル)(資料3)
ウォールストリートジャーナルは、ニューヨークのダウジョーンズ アンド カンパニー社から発行される国際的な影響力を持つ日刊新聞である。発行部数は約208万部で、長年にわたり米国内での発行部数第1位を占めてきた。2007年12月1日の同新聞に、請求人の「FORERUNNER」を推奨している記事が掲載されている。
エ その他関連資料(資料4)
資料4は、上記の著名な雑誌、新聞以外にも様々な形で請求人の「FORERUNNER」に関する記事が掲載されている例である。
(ア)Business Week(ビジネスウィーク誌)は、米国のブルームバーグ社から発行されるビジネス雑誌である。2006年10月号に請求人の「FORERUNNER」の製品レビューと評価が掲載されている。
(イ)About.com(アバウト.コム)は、各分野で深い知識を持つ「専門ガイド」と呼ばれる専門家が様々なサービス、商品、情報について必要な情報を提供してくれるサーチエンジンである。添付した資料は「garmin forerunner」で検索した結果得られた294件の情報のうちの最初の10件の一覧表である。「FORERUNNER」シリーズの様々な製品レビューや評価が掲載されている。
(ウ)2007年に行われたING ニューヨークシティマラソンにおいて、請求人がスポンサー会社のーつとして紹介された記事がMediaPostNewsというオンライン出版に掲載されている。また、FORERUNNER 50という新商品についても明記されている。さらに、2009年開催のING ニューヨークシティマラソンの記事においても、請求人がコースマッピングスポンサーとして紹介されている。
(エ)テクノロジーとビジネス情報のメディアサイトであるCNET(シーネット)及び米国最大のオンラインリテーラーであるAmazon.com(アマゾン.コム)にも、請求人の「FORERUNNER」シリーズの様々な商品のレビューが掲載されている。
上記に示した例のように、請求人の「FORERUNNER」は、米国におけるメジャーな新聞、雑誌、サーチエンジン、メディアサイトなどに様々な形で紹介されており、さらに、これらは長年にわたって全米中に流布されている。このような事実から、請求人の引用商標が米国において周知であることは明らかである。
2 同一又は類似の商標
前述の通り、引用商標は、請求人の商品を表示するものとして、米国において広く知られた商標である。なお、該商標については、米国において商標登録を受けている(資料5)。
このように、請求人の商品を表示するものとして米国において広く知られた引用商標からは、「フォアランナー」なる称呼が生じるものである。また、ジーニアス英和辞典によれば、「FORERUNNER」という語からは「先駆け、先駆者」等の観念が生じる。
一方、本件商標は、上下二段構成からなり、下段に同書同大の欧文字「FORERUNNER」を表記し、上段に「フォアランナー」を片仮名で表記した構成からなるものであるから、本件商標からも「フォアランナー」という称呼が生じ、「先駆け、先駆者」等の観念が生じる。
以上のとおり、引用商標と本件商標とは、外観、称呼及び観念において類似するものである。
3 不正の目的
被請求人は、請求人との間で、米国や日本その他いずれの国においても正規の販売代理店契約など、販売に関するいかなる契約も締結していない。
このような状況下、被請求人は、「FORERUNNER」について出願しており、これは明らかに代理店契約を強要する、あるいは、請求人の「FORERUNNER」が有するブランドカや信用にただ乗りするなどの不正の目的をもって出願したものである。以下、証拠に基づき、被請求人の不正の目的を説明する。
(1)代理店契約締結の希望(資料6)
資料6は、被請求人と請求人の間でかわされた電子メールの記録である。まず、2008年1月28日付けで被請求人から請求人に宛てた電子メールにおいて、商標「FORERUNNER」について、HitachiとAgilentが商標登録をしていると勧告したうえで、スポーツ用時計においては登録されていない旨を伝えている。その上で、被請求人は、このメールを書いた2008年1月28日に「FORERUNNER」の商標出願を行っている。
また、この日以前のメールのやりとりにおいても、被請求人は、請求人との代理店契約の締結の希望を何度も述べている。例えば、2008年1月22日に、被請求人は「請求人の再販売業者になりたい」という趣旨のメールを送付している。さらに、2008年1月25日のメールにおいては、「再販売業者契約の締結、或いは、必要であればそのトレーニングの為、喜んで台湾に出向く」という内容を述べている。
したがって、被請求人が請求人の代理店になることを希望していたことは明らかである。
(2)被請求人による出願あるいは登録している商標(資料7)及び請求人の商品例(資料8)
被請求人は、「FORERUNNER」の他にも請求人の商品に関する商標について多くの出願を行っている。資料7は、被請求人が出願しているあるいは登録している商標の一覧表である。これらは、いずれも請求人の業務に係る商品に表示されている商標に関連するものである(資料8)。
資料7、8からわかるとおり、被請求人は、請求人の商品を表示する商標若しくはこれに類似する商標について多数の商標登録出願を行っている。
これらの事実から、米国において周知の商標と同一又は類似の商標について、被請求人は、請求人に先んじて日本において商標登録出願を行うことにより、日本国での販売権の確保あるいは代理店契約の締結を強制したりする不正の目的をもっていたものであり、日本において、請求人がその商品を表示する商標について商標登録を受けていないことを奇貨として、請求人の名声や信用にただ乗りする不正の目的をもって出願したことは明らかである。
つまり、本件商標は、「我が国において登録されていないことを奇貨として、国内代理店契約を強制したりする等の目的で、先取り的に出願した」もので、商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」をもって使用をするものに該当する。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして、外国(米国)における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、日本国内での販売権の確保及び代理店契約の強要など、不正の目的をもって使用をするものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとして、商標法第46条の規定によって無効にされるべきである。

第3 被請求人の答弁(要旨)
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第8号証を提出した。
1 周知性について
(1)検索エンジンGoogleによる検証
被請求人は、検索エンジンGoogleを用いて、本件商標に係る出願日(2008年1月28日)までに、本件商標に係る「FORERUNNER」とその指定商品に係る「watch」という語を含むウェブページのインデックス数を調べた。その結果、上記条件におけるヒット件数は、約86400件であった(乙第1号証)。
また、上記したヒット件数が周知性との関係でどの程度のものであるかを検証するために、特許電子図書館の「日本国周知・著名商標検索」で「日本国周知・著名商標」と認定されているカシオ社の「G-shock」、ROLEX社の「ROLEX」、OMEGA社の「OMEGA」に係るウェブページのヒット件数を上記検索条件と同じ条件で調べた。その結果、ヒット件数は、「G-shock」は約36万件、「ROLEX」は約111万件、「OMEGA」は約28万件であった(乙第2号証ないし乙第4号証)。
乙第1号証と乙第2号証ないし乙第4号証とを対比すると、周知・著名と認定されている商標「G-shock」等の場合には、周知・著名とは言い難い商標「FORERUNNER」に対して、それぞれ、約4倍以上、12倍以上、3倍以上ものヒット件数であった。
検索エンジンGoogleの検索結果が商標の周知著名性の有無を一意に決定づけるものであるとまではいうつもりはない。しかし、そうはいっても、ヒット件数の顕著な差にかんがみれば、この検索結果を軽視して、商標の周知性の有無を判断すべきでないことは明白である。
そうすると、商標「FORERUNNER」は、「watch」というキーワードともに検索した結果にかんがみれば、商品との関係如何を問わず、外国(米国)における需要者の間に広く認識されている商標とは言えない。
(2)請求人の主張に対する反論
資料1ないし資料4は、いずれも、商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標の周知性を肯定する根拠となるものではない。
ア 資料1について
資料1(雑誌「ランナーズワールド」)によれば、請求人による広告掲載がされていることが認められる。しかし、資料1では、いずれも、「FORERUNNER」という文字が商品の紹介文中に僅かに1?3回登場するだけでしかなく、その一方で、「GARMIN」という文字が頁右下に大きく示されている。
このことから、資料1に接した看者は、資料1は「GARMIN社がランナー用の時計を販売している」ことを示す広告であるといった認識をするに留まるはずである。このため、資料1は、商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標の周知性を肯定するための証拠にはならない。
イ 資料2について
資料2(雑誌「Men’s Health」)によれば、請求人による広告掲載がされていることが認められるが、資料1と同様の理由により、資料2も商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標の周知性を肯定するための証拠にはならない。
ウ 資料3について
資料3(日刊新聞「Wall Street Journal」)によれば、「FORERUNNER305」についての記事が掲載されてはいるが、請求人添付の邦文によれば、「FORERUNNER」の語が僅かに1か所あるだけである。そして、僅かに1度、日刊新聞で取り上げられただけでは、継続的に商標の宣伝広告がなされているとはいえない。
してみれば、資料3は、商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標の周知性を肯定するための証拠にはならない。
エ 資料4(a)について
資料4(a)には、「FORERUNNER」の製品レビューと評価が掲載されていることが認められる。しかし、資料4(a)には「FORERUNNER」という語はほとんど登場しないし、資料4(a)は継続的な商標の宣伝広告を示すものでもない。
したがって、資料4(a)は、商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標の周知性を肯定するための証拠にはならない。
オ 資料4(b)について
資料4(b)がいわゆる専門家ガイドでの検索結果を示すことは認める。しかし、引用商標の周知性を示す資料としては、「watch」や「sports watch」等の用語を検索キーワードとして選択して検索すべきであり、単に「FORERUNNER」という検索キーワードを用いて検索すれば、「FORERUNNER」についての記事がヒットすることは当然であるから、資料4(b)は、商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標の周知性を肯定するための証拠にはならない。
また、資料4(b)では、「FORERUNNER」については294件の記事がヒットしたことが読み取れるが、この数字の多少を検討するために、検索キーワードに周知著名商標である「g-shock」を選択して検索してみた結果、約8倍にもあたる2280件もの検索ヒット数が確認できた(乙第5号証)。したがって、この点からも、資料4(b)が商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標の周知性を肯定するものであるとは言えない。
ところで、資料4(b)がいつの時点での検索結果を示すものであるか、請求人は明らかにしていない。商標法第4条第1項第19号を適用するには、その商標登録出願が出願時かつ査定時において各号の規定に該当しなければならないが(商標法第4条第3項)、資料4(b)は、その右下のフッター部分によれば、印字日が2010年2月24日であることしか把握できず、また、本件商標に係る出願日より後の2008年5月5日に投稿されたレビューが掲載されているものであることから、そもそも、証拠としての体をなしていない。
カ 資料4(c)について
資料4(c)を見たところ、「FORERUNNER」という文字は、僅かに一箇所しか見つからなかった。付言すると、資料4(c)では、マラソン大会等のスポンサーを行う、あるいは行ったことについては述べられているが、これにより、商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標が実際に周知性を獲得するに至ったか否か、更には、実際に周知性を獲得するに至ったと言えるとしたら、何故、そのように言えるのかといった根拠について全く示されていない。
したがって、資料4(c)も、商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標が実際に周知性を肯定する根拠とはならない。
キ 資料4(d)について
資料4(d)で紹介されているは「Garmin Forerunner」あるいは「Garmin’s Forerunner」である。ここで、「Garmin(あるいはGarmin’s)」部分は、接頭語かつ造語であり、「FORERUNNER」部分がそれに続く既成語であるから、「FORERUNNER」のみが独立して把握、認識されるものではない。
そうとすれば、資料4(d)で紹介されている「Garmin Forerunner」等は、本件商標とは非類似の商標であるから、資料4(d)は、商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標の周知性を肯定するための証拠にはならない。
以上述べたように、資料1ないし資料4は、いずれも、商品「スポーツにおける計測用時計」についての引用商標の周知性を肯定するための根拠にはならないのであるから、引用商標「FORERUNNER」は米国において周知の商標である旨の請求人の主張には根拠がなく誤りである。
2 同一又は類似の商標の主張に対する反論
概ね、請求人の主張は認めるが、本件商標は「フォアランナー\FORERUNNUR」であり、請求人が米国で取得した商標権に係る商標は「FORERUNNER」であるので、両商標は類似しているとはいえるが、同一とは評価しえないものである。
3 不正の目的について
(1)商標審査基準には「不正の目的」について説明されているところ、被請求人は、出願時、更には現在においても、請求人に対して、本件商標を高額で買い取らせるといったアクションを何ら起こしていない。このため、本件商標に係る出願は、このような目的でしたものではない。
請求人は、本件商標の出願日前の平成16年7月5日に、既に、「手首に装着して使用する、速度・距離・カロリー燃焼率などの測定機能付き全地球測位システム(GPS)受信機を内蔵した携帯型運動用ナビゲーション装置」等を指定した商標「FOREATHLETE」を出願しており、この商標は、平成17年4月22日に、商標登録第4858961号として登録されている。
つまり、請求人は、我が国においては、本件商標の登録日以前には、商標「FORERUNNER」については出願をしておらず、これとは異なる商標「FOREATHLETE」の出願・登録・使用を選択しているのであって、請求人は、本件商標の出願日の時点及び登録時の時点では、日本国内で、商標「FORERUNNER」の登録を受けることに興味がなかったのである。このことは、乙第6号証及び乙第7号証に裏付けがある。
乙第6号証は、請求人が被請求人に対して、2008年1月28日に送信したメールである。請求人は、該メールにおいて「商標Forerunnerは、他の日本企業によって登録されているため、ガーミン社としては、日本でこの商標を使用することができません。」との見解を被請求人に対して示している。この請求人の認識は、事実とは異なっていたため、請求人が製造した商標「Forerunner」に係る「スポーツにおける計測用時計」を日本で販売等をしても日本の権利者の商標権を侵害することにはならない旨を請求人に告げたところ、請求人からは、「ご存じの通り、ガーミン社は、長年、ForeAltheteという商標を付したフィットネス製品をリリースしています。また、我々は、ForeAltheteのプロモーションに多額の投資をしたため、今ではForerunnerに戻す計画はありません。」とのメールがあり(乙第7号証)、請求人は、商標「Forerunner」の出願・登録・使用に興味がないことを示している。
このようなやり取りがあったのであるから、被請求人が請求人に本件商標を「高額で買い取らせる」ことを目的としていないこと、当該目的のために「先取り的に出願」していないことは明白である。
そして、「FORERUNNER」は、造語よりなるものではなく、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものでもない。しかも、請求人は、「ForeAlthete」というブランドで日本での市場展開を図ろうとしていたのだから、請求人が「FORERUNNER」の付された「スポーツにおける測定用時計」に関して、少なくとも被請求人が登録出願をした時点では我が国に進出する具体的計画を有していなかったことは明らかである。
確かに、被請求人が請求人に対し一緒にビジネスをしたいというような希望を伝えたことはあったが、その内容は、あくまで「再販売契約の締結」であったのだから、この事実をもって、被請求人に不正の目的があったということはできない。
そして、被請求人が「FORERUNNER」の商標を使用した場合であっても、被請求人は、独自に本件時計の日本語版のマニュアルを作成して、本件時計の購入者に配布する等、種々のサポート体制を整えて、ユーザの本件商標に対する信用形成及びその信用維持に努めているため、その周知商標に化体した信用・名声・顧客吸引力等を毀損させるおそれはない。
したがって、本件においては、商標審査基準の「不正の目的」の判断において勘案すべき資料は、そもそも存在しないか、存在しても僅かなものにとどまるものである。
(2)つぎに、請求人の「不正の目的」についての主張に対して反論する。 請求人は、請求人が被請求人に対して正規販売代理店契約をしていない状況で、被請求人が商標登録出願をしたから、その出願には代理店契約の強要等の不正の目的があることが明らかである旨主張している。
しかし、正規販売代理店契約をしていない状況で商標登録出願をしただけで、何故、その出願に不正の目的があることが明らかと言えるのか根拠が不明である。添付書類6によれば、被請求人が請求人に対して「再販売契約」の締結を打診したことを認める。しかし、添付書類6からは、被請求人が請求人に対して代理店契約を「強要」したといったような事実は窺えない。
被請求人は、請求人が製造販売する「FORERUNNER」という文字が付された商品を並行輸入販売する業者であり、商品「スポーツにおける計測用時計」についての登録商標「FORERUNNER」を自ら使用している。そして、請求人は、少なくとも本件商標の出願のころ、及び、登録後においても、本件商標と同一又は類似の商標を使用することに興味がないという意思表示をしているのだから、被請求人は、商標権を行使して不正の利益を得る目的や他人に損害を加える目的を有していない。したがって、請求人がこのような事実を無視して、本件商標に係る出願に対して不正の目的があったと主張することには無理がある。
また、添付書類7には、請求人の取扱商品名が掲載されているが、これらの事実には、社会的妥当性を欠くなどとする不正な目的があったとする具体的な証左は一切示されていないから、不正の目的があるとはいえない。
被請求人としては、輸入業者は輸入商品に関して商標問題を含めて何らかの問題が生じたのであればそれに対処し、問題が生じないように事前に対処するといった注意義務を負うと考えており、特許庁に対しても問い合わせをしたところである(乙第8号証)。
4 以上述べたように、被請求人が本件商標に係る商標登録出願の際に、「不正の目的」を有していないことは明らかであるし、そもそも、本件商標は、いわゆる外国周知商標ではないのであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反するものではないので、商標法第46条の規定により無効とされるべきものではない。

第4 当審の判断
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであることを理由に、同法第46条第1項の規定に基づく商標登録の無効の審判を請求している。
1 引用商標の周知著名性について
請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)米国における商標登録
資料5によれば、「FORERUNNER」の商標は、請求人により、2001年8月18日にアメリカ合衆国において出願され、2004年10月26日にアメリカ合衆国商標登録第2897639号として登録されている。その指定商品は、第9類「ELECTRONIC TRACKING DEVICES AND EXERCISE MONITORS ; AND ELECTRONIC EXERCISE MONITORS FEATURING A GPS RECEIVER FOR TRACKING EXERCISE ACTIVITY(電子追跡デバイス及び運動モニター及び運動活動を追跡するためのGPS受信機を特徴とする電子運動モニター)」であり、「FIRST USE : 20031110.FIRST USE IN COMMERCE:20031110」と記載されている。
(2)米国において発行された雑誌等における広告や紹介記事について
請求人が提出した各種文献によれば、引用商標(FORERUNNER)については、以下のような広告がなされ、あるいは紹介記事が掲載されていた事実が認められる。
ア 資料1は、雑誌「Runner’s World」(ランナーズワールド)であり、米国のRodale社が出版しているランナーを対象にした雑誌である。全米で65万部発行されており、過去3回米国雑誌大賞を受賞している。2006年度の3月号、4月号、5月号、6月号、11月号及び12月号に、請求人のGPS搭載の腕時計「FORERUNNER」の広告が掲載されており、9月号には、該誌が推奨する商品のーつとして「FORERUNNER」を紹介する記事が掲載されている。
例えば、2006年度の3月号(表紙を含めて4枚目)及び4月号(表紙を含めて3枚目)の広告には、GPS搭載の腕時計の写真が掲載され、「GARMIN」の文字が大きく表示された頁に、「古いPRには別れを告げてください」の見出しのもとに、「10キロマラソンの記録を少しでも縮めたいですか。マラソンの為にトレーニングをしたいですか。或いは、仲間に自慢したいですか。そんな時はガーミンの新商品Forerunnerのような献身的なパーソナルトレーナーが必要になります。このGPS搭載のトレーナーは絶えず距離、ペース、高度を測定し、あなたのデータを表示してくれます。すごく簡単です。目標のスピードと距離、水休憩、合間のトレーニングをセットアップすると、ワイヤレスの心拍モニターがついたForerunner305があなたにあったトレーニングを教えてくれます。205と305のシリーズは新しい高感度の受信機を搭載し、ラップ履歴を保存し、コンピュータにダウンロードすることもできます。マイル毎に入力するとForerunnerは高速処理を行います。きっと満足な結果が得られるでしょう。詳しいことはwww.garmin.comをご覧下さい。」と記載されている(掲載文は添付の訳文による。以下同じ。上記訳文は、資料1の訳文の1枚目の上段部分)。
2006年度の5月号(表紙を含めて3枚目)の広告には、GPS搭載の腕時計の写真が掲載され、「GARMIN」の文字が大きく表示された頁に、「先週-6分45秒のペース」の見出しのもとに、「もっと速く、もっと長く、もっと良く走る、これはピュアな動機です。新しいガーミンのForerunnerシリーズがあればあなたはどこでも走ることができ、距離、ペース、時間、カロリーなどが一目でわかります。目標のスピードと距離、水休憩、合間のトレーニングをセットアップします。305シリーズには上級トレーニング用に、ワイヤレスの心拍モニターが加わり、トレーニングがきつすぎないか又は軽すぎないかがわかるようになっています。205と305シリーズには新しい高感度の受信機を搭載し、デザインも新しくなっています。トレーニング後の詳細分析、ルート、オンラインマップのために、MotionBased.comにデータをアップロードしトレーニングを次のレベルに進めてください。Forerunnerがあなたをどこまで連れて行ってくれるか、www.garmin.comをご覧下さい。」と記載されている(上記訳文は、資料1の訳文の1枚目の下段部分)。
また、「FORERUNNER」を推奨する記事として、2006年度の9月号(表紙を含めて2枚目)には、「GARMIN FORERUNNER 305 $350」の見出しのもとに、「グッドニュースです。305シリーズは今までのForerunnerの半分の大きさで、カスタマイズ可能なディスプレー、使いやすい心拍モニター付で、過去の自分の記録と競うことができる機能がついています。被験者の一人は『サテライトを受信するのに30秒待たなければならないが、マイル毎にセットアップするのはとても簡単でよい。』と言っています。」と記載されている(上記訳文は、資料1の訳文の2枚目の上段部分)。
イ 資料2は、雑誌「Men’s Health」(メンズヘルス)であり、米国のRodale社が出版している男性向けの健康に関する雑誌である。全米では190万部、その他の国々では150万部発行されており、過去4回米国雑誌大賞を受賞している。2006年度の3月号、5月号、6月号、7/8月号、2007年度の3月号、4月号、5月号、7/8月号、9月号、12月号に請求人のGPS搭載の腕時計「FORERUNNER」の広告が掲載されており、2006年度の4月号と2007年度の9月号には、推奨する商品のーつとして「FORERUNNER」を紹介する記事が掲載されている。
例えば、2006年度の3月号(表紙を含めて3枚目)、5月号(表紙を含めて4枚目)、6月号(表紙を含めて4枚目)、7/8月号(表紙を含めて4枚目)の広告には、GPS搭載の腕時計の写真が掲載され、「GARMIN」の文字が大きく表示された頁に、「自分の走りに没頭してください」の見出しのもとに、「次の瞬間、地面をつかみ、?歩一歩、ゴールに向かって走る、より良い自分を目指して。あなたのランニングパートナーでありトレーナーでもあるForerunnerは絶えず、あなたのペース、距離、消費カロリーを測定します。超高感度のGPS搭載であなたのどんな動きも察知し、町でも木々に覆われたトレイルでも使用可能です。新しいルートを探索する時、Forerunnerはあなたを誘導します。自動休止、自動ラップ、タイマー等、測定はForerunnerにお任せください。あなたはただ走るだけ。Forerunnerは先週、先月、先シーズン、どのくらいのスピードで走ったかを教えてくれます。トレーニングパートナーについての詳しいことはwww.garmin.comをご覧下さい。」と記載されている(上記訳文は、資料2の訳文の1枚目の上段部分)。
2007年度の3月号(表紙を含めて4枚目)、4月号(表紙を含めて3枚目)、5月号(表紙を含めて3枚目)、7/8月号(表紙を含めて4枚目)の広告には、GPS搭載の腕時計の写真が掲載され、「GARMIN」の文字が大きく表示された頁に、「私のゴールキーパー、Forerunner」の見出しのもとに、「それは、私の距離、ペース、タイム、私の心拍数まで知っている。だから、トレーニングがきつすぎるのか軽すぎるのかがすぐに分かる。自分の気持ちに従ってこれを購入したのはいろいろな意味で元が取れていると今感じている。GPS搭載のForerunnerがどのようにあなたに感動を起こさせるかwww.garmin.blogs.comをご覧ください。」と記載されている(上記訳文は、資料2の訳文の2枚目の下段部分)。
2007年度の9月号(表紙を含めて6枚目)、12月号(表紙を含めて4枚目)の広告には、GPS搭載の腕時計の写真が掲載され、「GARMIN」の文字が大きく表示された頁に、「私のコーチ:Forerunner50」の見出しのもとに、「今日はスピードワーク、明日はがんがんと山を登る。僕についてこられるランニングパートナーはForerunnerだけ。僕のタイム、ペース、心拍数を測定し、コンピュータに送信することもできる。毎週僕のマイレージをチェックし、今日の走行距離を友人に送る。これでやつらもビールを止めカウチから起き出してくるかもしれない。新しいForerunner50についてwww.garmin.blogs.comをご覧ください。」と記載されている(上記訳文は、資料2の訳文の3枚目の下段部分)。
また、「FORERUNNER」を推奨する記事として、2006年度の4月号(表紙を含めて4枚目)には、「ガーミンForerunner305 GPS時計」の見出しのもとに、「このGPS搭載の時計には、スピード、距離、消費カロリー、ペース、心拍数など、ピンポンのラケットほどの大きさだった従来品に備わっていた“風の抵抗”以外は全ての機能が可能です。便利な機能としては、友人のコースと時間をダウンロードし、実質的にそれらの記録と競争することができるのです。$375.garmin.com」と記載されており(上記訳文は、資料2の訳文の1枚目の下段部分)、2007年度の9月号(表紙を含めて4枚目)には、「ガーミン Forerunner50」の見出しのもとに、「心拍数を把握することは必須である。オーストラリアの研究者達は、トレーニングのやりすぎはその効果を20パーセント下げることになる、という発見をしました。Forerunner50は我々のお気に入りの心拍モニターです。胸のストラップと時計が心拍数を測定し、レッドラインを知らせます。ワイヤレスのフットポットはスピード、距離、ペースを記録し、トレーニングを監視します。$150.garmin.com」と記載されている(上記訳文は、資料2の訳文の3枚目の上段部分)。
ウ 資料3は、「Wall Street Journal」(ウォールストリートジャーナル)であり、ダウジョーンズ アンド カンパニー社が発行している日刊新聞である。発行部数は約208万部で、長年にわたり米国内での発行部数第1位を占めている。
2007年12月1日付けの「Running With the Satellites」の記事の中で、「FORERUNNER」についても取り上げられており(表紙を含めて3枚目)、「別の機器はGPSの大手、ガーミンの『Forerunner305』で、$323で売られている。(しかし、オンラインでは$206ほどで手に入る)これは、大きな腕時計である。音声は発しないが、一目で自分のペースと走行距離が分かる。胸にストラップをつけると心拍測定も出来るが機能が多すぎてわずらわしいため、私は試したことがない。走った後に機器をUSBケーブルにつなぐと、消費カロリー、獲得高度、最速スピード等の運動統計をコンピュータに入力することができる。それにも増して魅力的なのは、走行の地図を描いてくれることである。購読する必要があるが、ガーミンのmotionbased.com、trainingpeaks.comやmotionlingo.comなどのウェブサイト上で、グーグルマップやグーグルアースのルートを描いてくれて、友人にその情報をメールすることができる。・・・」と記載されている。
エ 資料4は、その他の関連資料として、Business Week(ビジネスウィーク誌)やサーチエンジン、オンライン記事等が提出されている。
資料4の(a)は、米国のブルームバーグ社が発行しているビジネス雑誌である「Business Week(ビジネスウィーク誌)」の2006年10月号の記事であり、請求人の「FORERUNNER」の製品レビューが次のように記載されている。
「ガーミンForerunner301とタイメックスボディリンク5E671はGPSに依存しているので、世界中どこでもランニングとサイクリングのルートをたどることができる。4つの時計のうち、ガーミンとポーラーのものが気に入っている。ガーミンの設定説明はとても簡潔である。胸に心拍モニターをとりつけ、Forerunnerを腕に装着すると、時間、スピード、距離、心拍数などの見たいデータが、1.5インチ×1インチの時計の窓に現れる。水泳、サイクリング、ランニングを切り替えたい場合は、どのボタンを押すのかが一目でわかる。・・・取り付け式のキットが$24.99で売られているのでグーグルにつなぎ、GPSの信号を受信することもできる。・・・運動のデータをダウンロードするためには、単にUSBを通じてコンピュータに落とすだけである。運動の相棒として、いわゆる、実質的パートナーがガーミンのセールスポイントである。・・・」と記載されている。
資料4の(b)は、各分野で深い知識を持つ「専門ガイド」と呼ばれる専門家が様々なサービス、商品、情報について必要な情報を提供してくれるサーチエンジンである「About.com(アバウト.コム)」による「garmin forerunner」についての検索結果リストであり、294件の情報のうちの最初の10件の一覧である。
これによれば、例えば、「ガーミンForerunner405 レビュー 商品テスト」の見出しのもとに、「ガーミンForerunner405は、ランナーのためのガーミンのスポーツ・フィットネスGPS分野では、最高のモデルである。」(上段から1番目の記事)、「ガーミンForerunner201 GPS速度計レビュー」の見出しのもとに、「ガーミンForerunner201は、ウォーカーやランナーのために、ペース、スピード、距離、消費カロリーなどがわかる完璧なトレーニング仲間になるGPS速度計である。」(上段から2番目の記事)、「しゃれてコンパクト:ランナーのためのガーミンForerunner405GPS」の見出しのもとに、「2008年5月5日 かってのガーミンForerunner405、スポーツ用時計に比べはるかにしゃれていてコンパクトになった、ランナーのためのGPS」(上段から5番目の記事)、「ガーミン2008商品紹介」の見出しのもとに、「以前のForerunner405はコンパクトだったがそれでも通常のスポーツ用時計にしては大きかった。この405はそうではない。」(上段から7番目の記事)、「ガーミンForerunner201-ウォーカーにとって最高の機器」の見出しのもとに、「インターフェースとソフトで全てをコンピュータにダウンロードできる。機器はいつか良くなるという可能性があったが、ガーミンForerunner201が今日それを成し遂げた。(http://walking.about.com/b/2004/02/14/garmin-forrunner-201-best-walking-gadget-ever.htm)」(上段から8番目の記事)等々と記載されている。
なお、被請求人は、資料4(b)について、印字日が2010年2月24日であり、本件商標の出願日より後の2008年5月5日に投稿されたレビューも掲載されているから、証拠としての体をなしていない旨主張しているが、本件商標の査定時(2008年11月18日)当時までの事情を把握するうえで充分に参考となり得る証拠である。また、ウェブページのアドレスに「2004/02/14」の日付けが記載されていることから出願日前のものと判断できる。
資料4の(c)は、MediaPostNewsというオンライン出版に掲載された記事であり、2007年に行われたING ニューヨークシティマラソンにおいて、請求人がスポンサー会社のーつとして紹介されており、「正式なGPSコースマッピング提供者(コースをはずれないよう調整が必要である)であるガーミンはマラソンで新製品Forerunner50を大々的に展開する。」と記載されている(1枚目最終行から2枚目1行目)。また、2009年開催のING ニューヨークシティマラソンの記事においても、請求人がコースマッピングスポンサーとして紹介されている(3枚目9行目から13行目)。
資料4の(d)は、テクノロジーとビジネス情報のメディアサイトであるCNET(シーネット)及び米国最大のオンラインリテーラーであるAmazon.com(アマゾン.コム)に掲載された請求人の「FORERUNNER」シリーズについての商品レビューである。
例えば、Amazon.comの商品レビューの記事(2枚目下段部分)には、「ガーミンは、効率的で良心的な価格で、手首に装着するGPS機器のマーケットを押さえてきたとAmazon.comは評価してきたが、今度はForerunner305を発売した。この商品はデザイン及び技術の面から驚くべき功績を達成したと言える。営業口調ではないが、我々が検証したGPS機器の中で、Forerunner305は最も正確で、最も信頼できる手首に装着する機器である。本当に素晴らしい。何でもできるこんなにコンパクトな機器は今までになかった。305シリーズは手首に装着する型として可能性の限界に挑戦している。305シリーズはワイヤレスで心拍数を測定し、さらに、ガーミンのワイヤレスのサイクリング用のスピード・ペダルセンサーにつなげることもできる。このような機能が必要でない場合は、安価なForerunner205をお勧めする。」と記載されている(上記訳文は、資料4(d)のAmazon.comに係る訳文の1枚目の上段部分)。
オ 以上のとおり、上記の事実によれば、請求人は、遅くも2006年3月には、アメリカ合衆国において引用商標(FORERUNNER)を使用した「GPS搭載の腕時計」の販売をしており、該商品の広告宣伝を米国のRodale社が出版しているランナーを対象にした雑誌であり、全米65万部発行される「Runner’s World(ランナーズワールド)」の2006年度の3月号、4月号、5月号、6月号、11月号及び12月号に掲載しており、同じくRodale社が出版している男性向けの健康に関する雑誌であり、全米で190万部、その他の国々では150万部発行される「Men’s Health(メンズヘルス)」の2006年度の3月号、5月号、6月号、7/8月号、2007年度の3月号、4月号、5月号、7/8月号、9月号、12月号にも掲載していたことが認められる。
また、「Runner’s World(ランナーズワールド)」の2006年度の9月号及び「Men’s Health(メンズヘルス)」の2006年度の4月号と2007年度の9月号には、それぞれの雑誌が推奨する商品のーつとして「FORERUNNER」を紹介する記事が掲載されているばかりでなく、長年にわたり米国内での発行部数208万部で第1位を占めているダウジョーンズ アンド カンパニー社が発行している日刊新聞である「Wall Street Journal(ウォールストリートジャーナル)」の2007年12月1日付けの記事や米国のブルームバーグ社が発行しているビジネス雑誌である「Business Week(ビジネスウィーク誌)」の2006年10月号の記事の中においても、請求人の商品「FORERUNNER」について取り上げられていた事実が認められる。
さらには、専門家が情報を提供しているサーチエンジンである「About.com(アバウト.コム)」においても、2008年当時の商品をも含めて、ガーミンの「forerunner」について数多くの情報が提供されており、MediaPostNewsというオンライン出版においては、2007年及び2009年に開催されたING ニューヨークシティマラソンにおいて、請求人がスポンサー会社のーつとして紹介されており、テクノロジーとビジネス情報のメディアサイトであるCNET(シーネット)及び米国最大のオンラインリテーラーであるAmazon.com(アマゾン.コム)においても請求人の「FORERUNNER」シリーズについての商品レビューが掲載されていた事実が認められる。
してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願前より、相当部数発行される雑誌等に、「GPS搭載の腕時計」に付され紹介されていたことが認められる。
(4)上記した(2)及び(3)の事実を総合してみれば、引用商標(FORERUNNER)は、本件商標の登録出願時(平成20年(2008年)1月28日)において、請求人の業務に係る「GPS搭載の腕時計」に使用される商標として、少なくとも、アメリカ合衆国におけるこの種商品の取引者・需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものということができる。
2 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、前記のとおり、「フォアランナー」の片仮名と「FORERUNNER」の欧文字とを二段に横書きしてなるものであるから、該構成文字に相応して「フォアランナー」の称呼を生じ、「先駆け、先駆者」等の観念を生ずるものである。
他方、請求人がGPS搭載の腕時計に使用している引用商標は、「FORERUNNER」あるいは「Forerunner」の欧文字からなるものであるから、これからも「フォアランナー」の称呼を生じ、「先駆け、先駆者」等の観念を生ずるものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、「フォアランナー」の称呼及び「先駆け、先駆者」等の観念を同じくし、本件商標の欧文字部分と引用商標とは、その綴り字を同じくするものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において類似する商標といわなければならない。
3 本件商標の指定商品と引用商標に係る商品との関連性について
本件商標の指定商品は、前記したとおり、第14類「スポーツにおける計測用時計」を指定商品とするものである。
他方、請求人が引用商標を使用している商品は、GPSを搭載し、ジョギング時に心拍数、距離、消費カロリーがわかる機能も備えたスポーツにおける計測等に用いられる腕時計である。
してみれば、本件商標の指定商品と請求人が引用商標を使用している商品とは、商品の用途や需要者等を共通にすることも多い極めて密接な関連性を有する商品であるということができる。
4 被請求人の不正の目的について
(1)資料6(被請求人と請求人の間でかわされた電子メールの記録)によれば、被請求人は、2008年1月22日に、「我々は、再販売業者になることを強く希望している」(英文10頁目、訳文3頁目)、「新しいForerunner405を見て、すごく興奮いたしました。あまりに素晴らしいので、再販売業者になるのが待ちきれません」(英文11頁目、訳文4頁目)とのメールを請求人に送付しており、2008年1月25日には、「再販売業者契約の締結、或いは、必要であればそのトレーニングの為、喜んで台湾に出向く」旨のメールを請求人に送付している(英文9頁目、訳文2頁目)。
そして、被請求人自身、答弁書において、「添付書類6によれば、被請求人が請求人に対して『再販売契約』の締結を打診したことを認める。」と述べており(答弁書12頁下から5行目ないし4行目)、また、「被請求人は、請求人が製造販売する『FORERUNNER』という文字が付された商品を並行輸入販売する業者である」旨述べている(答弁書13頁上から5行目ないし7行目)。
そうとすれば、被請求人は、請求人がアメリカ合衆国において、引用商標をGPS搭載の腕時計に使用していることを充分に認識のうえで、本件商標の登録出願をしたものといわなければならない。
(2)加えて、請求人の提出に係る資料7及び資料8によれば、被請求人は、本件商標の他にも、請求人の業務に係る商品に表示されている商標に関連する下記の商標について登録出願をし商標登録を受けていることが認められる。
ア 商標の構成:USB ANT Stick
登録出願日:平成20年12月4日
設定登録日:平成22年10月29日(登録第5363673号)
指定商品 :第9類「コンピュータ相互間又はコンピュータと周辺機器 間の無線式データ伝送装置」
イ 商標の構成:ANT+Sport
登録出願日:平成20年12月4日
設定登録日:平成22年10月29日(登録第5363674号)
指定商品 :第9類「スポーツにおける計測機器用コンピュータソフト ウェア」
ウ 商標の構成:FORERUNNER
登録出願日:平成21年1月7日
設定登録日:平成21年8月7日(登録第5254237号)
指定商品 :第37類「時計の修理及び保守」
エ 商標の構成:FORERUNNER
登録出願日:平成21年1月7日
設定登録日:平成21年8月7日(登録第5254238号)
指定商品 :第35類「時計の小売又は卸売の業務において行われる顧 客に対する便益の提供」
オ 商標の構成:GSC
登録出願日:平成20年12月4日
設定登録日:平成21年8月21日(登録第5258373号)
指定商品 :第9類「自転車用計測器(走行速度・走行距離・走行時間 ・ペダル回転数・気温・高度・心拍数・消費カロリー計測 機能・時計機能・方位コンパスなどの機能を有する計測器 )」
カ 商標の構成:Virtual Partner/バーチャル・パート ナー
登録出願日:平成20年12月1日
設定登録日:平成21年9月11日(登録第5264007号)
指定商品 :第9類「スポーツにおける計測機器用コンピュータソフト ウェア」
(3)以上を総合すると、被請求人は、本件商標と類似する引用商標の著名性にただ乗り(フリーライド)し、引用商標に化体した請求人の信用を利用して利益を得るために、本件商標の登録出願をしたものと優に推認することができるから、被請求人には、本件商標を出願し登録を受けたことについて、不正の目的があったものというべきである。
5 被請求人の主な主張について
(1)被請求人は、検索エンジンGoogleによる「FORERUNNER」のヒット件数と「G-shock」、「ROLEX」及び「OMEGA」のヒット件数とを対比して、「G-shock」は4倍以上、「ROLEX」は12倍以上、「OMEGA」は3倍以上ものヒット件数であったことから、商標「FORERUNNER」は、外国(米国)における需要者の間に広く認識されている商標とはいえない旨主張している。
しかしながら、請求人が「FORERUNNER」の商標を使用している商品は、「GPSを搭載し、ジョギング時に心拍数、距離、消費カロリーがわかる機能も備えたスポーツにおける計測等に用いられる腕時計」である。
これに対して、「G-shock」、「ROLEX」及び「OMEGA」等の時計は、その中心的な機能はあくまでも本来的な時計としての機能であって、これに堅牢性や正確性、高級感、ファッション性等も加わった時計であるから、これらの時計と「FORERUNNER」の商標に係る時計とは、その用途及び需要者層を必ずしも同じくするものではない。
そうとすれば、単純に検索エンジンによるヒット件数を比較して、「FORERUNNER」のヒット件数が「ROLEX」等の時計のヒット件数より少ないからといって、そのことを理由に、商標「FORERUNNER」に係る時計が外国(米国)における需要者の間に広く認識されているとは言えないということはできない。
なお、被請求人は、資料4(b)の「About.com(アバウト.コム)」による検索結果リストに対しても、「g-shock」との比較をしているが、この点についても、上記したところと同様である。
(2)被請求人は、「FORERUNNER」は造語よりなるものではなく、構成上顕著な特徴を有するものでもない旨主張している。
確かに、「FORERUNNER」の語は、「先駆け、先駆者」等の観念を有する成語ではあるが、三省堂発行の「コンサイス英和辞典(第13版)」によれば、中学や高校で学習するような基本語にもなっておらず、日常一般おいて親しまれて用いられている語でもなく、商標としても採択され易い語であるということも出来ない語である。そして、現に、「FORERUNNER」の語は、請求人が「GPSを搭載した腕時計」について使用して、米国において広く知られていたものと認められる商標であり、被請求人は、請求人に対して該商品についての再販売契約の締結を打診したことを認めているのであるから、被請求人が本件商標を引用商標とは関係なく、独自の発想に基づいて採択したものとはいえないものである。
そうとすれば、「FORERUNNER」の語が造語よりなるものではなく、構成上顕著な特徴を有するものではないとしても、そのことの故に、被請求人による本件商標の登録が商標法第4条第1項第19号の適用を免れる要件になるものとはいえない。
(3)被請求人は、請求人に対して本件商標を高額で買い取らせることを目的として本件商標の出願をしたものではないこと、また、請求人は我が国において、「FOREATHLETE」の商標の登録を受けており、「Forerunner」の出願・登録・使用に興味がないことを示していること(乙第7号証)等々を挙げて、被請求人が本件商標の登録出願の際に不正の目的を有していなかったことは明らかである旨主張している。
しかしながら、職権で調査するに、請求人は商標登録第4552672号商標「FORERUNNER」に係る不使用取消審判を請求し、その商標登録を取り消した経緯もあるから、米国の需要者の間において広く認識されている請求人の腕時計に係る「FORERUNNER」の商標を被請求人が我が国において出願・登録することを容認し得る合理的な理由はなく、先に認定したとおり、被請求人は、請求人の使用に係る他の商標をも出願・登録している状況をも併せみれば、被請求人には、引用商標に化体した請求人の信用を利用して利益を得る等の不正の目的があったものといわざるを得ない。
(4)以上のとおり、被請求人の主張はいずれも採用することができない。
6 むすび
以上によれば、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-04-14 
結審通知日 2011-04-18 
審決日 2011-05-06 
出願番号 商願2008-8780(T2008-8780) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (X14)
最終処分 成立 
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 前山 るり子
瀧本 佐代子
登録日 2008-12-19 
登録番号 商標登録第5189842号(T5189842) 
商標の称呼 フォアランナー、フォア、ランナー 
代理人 関口 一哉 
代理人 矢口 太郎 
代理人 山内 博明 
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