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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 X37 審判 一部申立て 登録を維持 X37 審判 一部申立て 登録を維持 X37 審判 一部申立て 登録を維持 X37 |
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管理番号 | 1238492 |
異議申立番号 | 異議2010-900316 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2010-10-08 |
確定日 | 2011-05-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5336588号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5336588号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5336588号商標(以下「本件商標」という。)は、「Tヘッドバー工法」の文字を横書きしてなり、平成22年2月12日に登録出願され、第37類「建設工事,建設工事に関する助言,建設機械器具の修理または保守,土木機械器具の貸与」を指定役務として、同年5月25日に登録査定、同年7月9日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由(要旨) 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その申立ての理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出している。 1 商標法第4条第1項第15号について (1)引用商標 申立人が本件商標の登録異議の申立ての理由に引用する商標は、「Head-bar」の文字及び符号を標準文字で表してなり、第6類「鉄及び鋼,建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製金具」を指定商品とする登録第4370597号商標(以下「引用商標1」という。)、「ヘッドバー」の文字からなり、橋梁等の構造物の耐震性能向上を目的とする「せん断補強鉄筋」(以下「本件鉄筋」という。)及び「本件鉄筋を用いる機械式定着工法による建設工事」(以下「本件建設工事」という。)に使用する商標(以下「引用商標2」という。)並びに、「Head-bar工法」の文字からなり、本件建設工事に使用する商標(以下「引用商標3」という。)である(以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめて「引用各商標」という場合がある。)。 (2)引用商標の使用による著名性の獲得 申立人又はブイ・エス・エル・ジャパン株式会社(申立人との間で本件鉄筋「Head-bar」の製造、販売専属契約を締結している者。以下「VSL社」といい、申立人及びVSL社を合わせて「申立人等」という場合がある。)は、土木分野について技術名称を「Head-bar」とする、財団法人土木研究センターによる平成11年9月30日付け技術審査証明書を申立人が受けた後、土木分野における引用商標1及び引用商標2を使用した本件鉄筋の販売及び引用各商標を使用した本件建設工事の提供を開始し、さらに、建設分野においても、平成18年11月10日付け構造評定書を申立人等が受けた後、同分野において同様に本件鉄筋の販売及び本件建設工事の提供を開始し、現在まで継続的にその販売及び提供を行っている。 引用商標1及び引用商標2を使用した本件鉄筋の平成20年末までの累計販売本数は、平成11年の販売開始以来、約1600万本であり、また、引用各商標を使用した本件建設工事は、その主たる施主を都道府県や市、国土交通省や東京都水道局等の官公庁、東京電力やJR東日本等の大手企業とするものであって、その工事現場は日本全国にわたるものである。 なお、本件商標権者に係る「Tヘッドバー」の文字からなる商標が使用された本件鉄筋の同時期までの累計販売本数は、平成15年の販売開始以来、約855万本であり、また、申立人等が入手した本件鉄筋に関する情報を総合すると、申立人等及び本件商標権者以外の他者による本件鉄筋の売上のすべてを合算しても本件鉄筋の総売上の10%にも満たないのが現状であることから、本件商標登録出願時において、引用商標1及び引用商標2を使用した本件鉄筋は、圧倒的なトップシェアを有することは明らかである。 以上に述べた事実に照らせば、引用各商標は、本件商標の登録出願日以前から、申立人等の業務に係る本件鉄筋又は本件建設工事を表示するものとして、各々、その取引者、需要者間において著名性を獲得しているものと思料される。 (3)出所の混同を生ずるおそれ 本件商標は、前記のとおり、「Tヘッドバー工法」の文字からなるところ、その構成中の「T」、「ヘッドバー」及び「工法」の各文字は、文字種を異にするため、視覚的に分離されるものであり、それ故、先頭の「T」は役務の種類等を表示する記号、符号として一般に使用されている欧文字1文字の一類型と理解され、さらに、後半部の「工法」は工事の方法を意味する熟語であるから、「建設工事」等の役務について識別力を有しない。 そうすると、本件商標からは、「ティーヘッドバーコーホー」の称呼のほか、「ティーヘッドバー」、「ヘッドバーコーホー」及び「ヘッドバー」の称呼をも生ずるものである。 他方、VSL社が本件鉄筋について使用して著名な引用商標1は、普通の書体をもって「Head-bar」と書してなるものであるから、「ヘッドバー」の称呼を生ずるものである。 してみれば、本件商標が役務「建設工事」に使用されたときは、当該役務に接する者は、これをVSL社又はVSL社と組織的、経済的に何らかの関係のある者の業務に係る「建設工事」と誤認し、出所の混同を生ずるおそれがあると思料する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 2 商標法第4条第1項第10号について 本件商標は、申立人の業務に係る本件建設工事を表示するものとして著名な引用各商標と類似するものであり、かつ、本件商標に係る指定役務「建設工事」と引用各商標が使用される本件建設工事は、同一又は類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。 3 商標法第4条第1項第19号について 本件商標は、本件商標の登録出願日以前より、申立人等の商標として著名な引用各商標に類似するものであって、かつ、これら著名商標にフリーライドして不正の利益を得るため及びこれら著名商標の識別機能を希釈化するための不正の目的をもって使用をするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。 4 商標法第4条第1項第7号について 本件商標権者は、本件商標を本件建設工事に使用すると、取引者、需要者に出所の混同を招くことを認識していながら、申立人等の著名商標である引用各商標に類似する本件商標を不正の目的をもって使用するために登録出願したものであるから、本件商標は、申立人等の商標を剽窃したものというべきである。したがって、本件商標は、社会公共の利益及び公の秩序に反し、公正な商取引の秩序を混乱させるおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。 第3 当審の判断 1 本件商標 本件商標は、とりたてて特徴のない普通に用いられる書体をもって、「Tヘッドバー工法」の文字を横書きしてなるところ、その構成中の「工法」の文字部分は、「加工・工事などにおける造り方・組立て方」(「広辞苑第六版」、株式会社岩波書店発行)を意味する語として一般に理解されるものであり、建設関連の業界においては、工事内容、施工方法等を表すものとして取引上普通に使用されているものであるから、本件商標に係る指定役務との関係においては、それ自体、役務の識別標識としての機能を有しないか又は、極めて識別力の弱いものとして認識されるとみるのが相当である。 また、本件商標の構成中の「Tヘッドバー」の文字部分は、外観上、まとまりよく一体的に表されており、かつ、その構成全体から生ずると認められる「ティーヘッドバー」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであることからすれば、本件商標に接する取引者、需要者が、その構成中の「T」の文字部分を役務の種類等を表示するための記号、符号として捉え、これを捨象した「ヘッドバー」の文字部分のみに着目して商取引に資するというよりはむしろ、当該「Tヘッドバー」の文字全体をもって特定の観念を有しない一体不可分の造語と認識して商取引に資するとみるのが相当である。 そうとすれば、本件商標は、その構成文字全体に相応する「ティーヘッドバーコーホー」の称呼を生ずるほか、その構成中の「工法」の文字部分に相応する「コーホー」の称呼を省略した「ティーヘッドバー」の称呼をも生じ得るものであり、また、その構成全体から「Tヘッドバーという名の工法」ほどの意味合いを想起する場合もあるというのが相当である。 2 引用各商標 引用商標1は、「Head-bar」の文字及び符号を標準文字で表してなるところ、その構成文字全体に相応する「ヘッドバー」の称呼を生ずるものであり、また、それ自体、直ちに特定の意味合いを想起させるものとはいえないことから、特に観念を生ずることのない造語からなるものである。 また、引用商標2は、「ヘッドバー」の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるところ、その構成文字全体に相応する「ヘッドバー」の称呼を生ずるものであり、また、それ自体、直ちに特定の意味合いを想起させるものとはいえないことから、特に観念を生ずることのない造語からなるものである。 さらに、引用商標3は、「Head-bar工法」の文字及び符号を普通に用いられる方法で横書きしてなるところ、前述のとおり、その構成中の「Head-bar」の文字及び符号は、「ヘッドバー」の称呼を生じ、観念を生ずることのない造語からなるものであり、同じく、「工法」の文字は、「加工・工事などにおける造り方・組立て方」を意味する語として一般に理解されるものであって、建設関連の業界においては、工事内容、施工方法等を表すものとして取引上普通に使用されている実情にあり、本件建設工事との関係においては、それ自体、役務の識別標識としての機能を有しないか又は、極めて識別力の弱いものとして認識され得るものであることからすれば、引用商標3は、「ヘッドバーコーホー」又は「ヘッドバー」の称呼を生じ、また、その構成全体から「Head-barという名の工法」ほどの意味合いを想起する場合もあるというのが相当である。 3 本件商標と引用各商標との類否 本件商標と引用各商標とは、各々、前記1及び2に述べたとおりの構成態様からなるところ、両商標は、外観において、相紛れるおそれの無いほどに相違すること明らかである。 また、本件商標は、「ティーヘッドバーコーホー」又は「ティーヘッドバー」の称呼を生ずるのに対し、引用商標1及び引用商標2は、いずれも「ヘッドバー」の称呼を生じ、また、引用商標3は、「ヘッドバーコーホー」又は「ヘッドバー」の称呼を生ずるものであるから、本件商標と引用各商標とは、称呼において、明らかな差異を有し、容易に聴別し得るものである。 さらに、本件商標は、「Tヘッドバーという名の工法」ほどの意味合いを想起する場合があるのに対し、引用商標1及び引用商標2は、いずれも直ちに特定の観念を生ずることのない造語からなるものであり、また、引用商標3は、「Head-barという名の工法」ほどの意味合いを想起する場合があるから、本件商標と引用各商標は、観念において、比較することができないか又は相紛れるおそれのないものである。 してみれば、本件商標と引用各商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 4 商標法第4条第1項第15号について 本件商標と引用各商標とは、前記3のとおり、互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。 また、本件商標権者に係る本件鉄筋「Tヘッドバー」の施工実績累計本数は、平成15年(2003年)の販売開始以降、同18年度(2006年度)までに355万本(甲第14号証)、同21年(2009年)10月現在で「約900万本」(甲第6号証)であるのに対し、申立人等に係る本件鉄筋「Head-bar(ヘッドバー)」の施工実績累計本数は、平成11年(1999年)の販売開始以降、平成18年(2006年)3月現在で「700万本」(甲第5号証)、同21年(2009年)4月現在で「1600万本」(甲第6号証)であるところ、その累計本数においては、申立人等に係るものが多いものの、両者の販売開始時期をも併せみれば、本件商標権者の施工実績は、申立人等のそれと遜色ないものというのが相当である。 そうすると、本件商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該役務が申立人等又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものということはできない。 5 商標法第4条第1項第10号について 本件商標と引用各商標は、前記3のとおり、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であるから、引用各商標が申立人等の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、その取引者、需要者の間において相当程度知られ、かつ、本件商標の指定役務中に引用各商標の使用に係る役務等と同一又は類似するものが包含されているとしても、本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものということはできない。 6 商標法第4条第1項第19号について 本件商標と引用各商標とが、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であることは、前記3のとおりである。 また、申立人の提出に係る証拠のいずれを見ても、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る又は他人の著名商標に蓄積された信用若しくは名声にフリーライドする等の不正の目的をもって使用すると認めるに足る事実は、見いだし得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものということはできない。 7 商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、その構成態様に照らし、きょう激、卑わい若しくは差別的な文字からなるものでないことは明らかであるばかりでなく、申立人の提出に係る証拠のいずれを見ても、本件商標をその指定役務に使用することが、社会公共の利益、社会の一般的道徳観念に反するものとはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものということはできない。 8 むすび 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではない。 したがって、本件商標は、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2011-05-13 |
出願番号 | 商願2010-9976(T2010-9976) |
審決分類 |
T
1
652・
22-
Y
(X37)
T 1 652・ 222- Y (X37) T 1 652・ 271- Y (X37) T 1 652・ 25- Y (X37) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 真鍋 恵美 |
特許庁審判長 |
石田 清 |
特許庁審判官 |
田中 敬規 酒井 福造 |
登録日 | 2010-07-09 |
登録番号 | 商標登録第5336588号(T5336588) |
権利者 | 第一高周波工業株式会社 清水建設株式会社 |
商標の称呼 | テイヘッドバーコーホー、テイヘッドバー、ヘッドバーコーホー、ヘッドバー |
代理人 | 磯野 道造 |