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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z33
管理番号 1238359 
審判番号 取消2010-300806 
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-07-22 
確定日 2011-05-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第4380571号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4380571号商標(以下「本件商標」という。)は、「BACH」の文字を標準文字で書してなり、平成11年4月27日に登録出願、第33類「発泡性ぶどう酒,その他のぶどう酒,その他の果実酒,洋酒,日本酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、平成12年4月28日に設定登録され、その後、平成21年12月8日に商標権存続期間の更新登録がされ、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第19号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 乙第1号証について
これは、「発泡性ぶどう酒」(以下「使用商品」という場合もある。)の写真入りの宣伝文書であるが、ここには、日付がなく、本件審判の請求の登録前3年以内の使用とは認められない。しかも、全文外国語であり、日本の取引者・需要者向けのものとは思われない。
なお、被請求人は、商標権者の日本法人を介して、サッポロビール株式会社(以下「サッポロビール」という。)に使用商品の卸売りを行い、この写真に示す使用商品を販売していると主張する。しかし、使用商品の瓶に表示された商標は、「Gran」、「BACH」、「Brut」の三段に記載されており、その背後に、シェリー体の文字「g」を配置してなるものである。三段の単語(特に「BACH」の文字)と背後の「g」は一部重なって融合しているので、全体で一体の商標と見なければならない。そのように見るとき、この瓶に表示された商標は「BACH」の類似商標かもしれないが、本件商標と同一の商標ではない。仮にこの瓶の態様の商品が日本で販売されていたとしても、本件商標の使用とはなり得ない。
イ 乙第2号証について
これは、サッポロビールの2010年版ワインカタログと価格表のコピーである。前者の28頁に「グランバック」の片仮名文字と「Gran Bach」の欧文字が二段書きされている。左端に、乙第1号証と同一と思われるワインの写真があるが、瓶に表示された文字は判読できない(もし原本において判読できるとしてもあまりに小さくて読者の目に留まらないであろう。)。後者の5頁は、「グランバック」の片仮名文字で表記された商品の価格が表示されている。
この証拠で使用されている商標は、「グランバック」及び/又は「Gran Bach」であって、本件商標ではない。被請求人は、「Gran」の文字は、「高級品、大きい、偉大な」を意味するスペイン語であり、「ワインの業界で等級表示としての意味合いを有する」と主張するが、仮にそうであるとしても、現在の日本においてそれが理解できるのは非常に限られた人たちである。本件商標の指定商品は「ワイン」等であり、実際に購人する消費者が一般人であることを考慮すると、商標の観念は大多数の取引者・需要者の知的レベルに基づくべきである。そのように見るとき、「グランバック」、「Gran Bach」と本件商標は同一でないことはもちろん、類似であるかどうかさえ疑わしい。
なお、上記請求人の主張が請求人の独断でないことは、「グラン」、「GRAN」の文字よりなる商標が登録されている事実より明らかであり(甲第2?19号証)、少なくとも日本では「GRAN/グラン」に顕著性があるというべきである。特に、甲第4号証の登録商標「グラン」は、スペイン法人が「食卓ワイン」などを指定商品として登録されている。スペイン語で「GRAN/グラン」に顕著性がないのであれば、なぜスペイン法人がこのような単語を「食卓ワイン」などに関して登録したのか不思議なことである。
ウ 乙第3号証について
これは、サッポロビールのホームページ中のワイン紹介頁であるが、日付のないものであり、本件審判の請求の登録前3年以内の使用とは認められない。その他、乙第2号証で述べたのと同じこと(「全文外国語」という点を除く。)を指摘することができる。
エ 乙第4号証、乙第5号証について
これらは、商標権者とサッポロビールにおけるワイン等に関する取引書類である。ここで使用されている商標は、「CV GRAN BACH」であって、本件商標ではない。「CV GRAN BACH」と本件商標が同一でないことはもちろん、類似であるかどうかさえ疑わしい。
オ 乙第6号証、乙第7号証について
これらは、商標権者とサッポロビールにおけるワイン等に関する取引書類である。これの作成日は、前者が2010年10月20日であり、また、後者が2010年10月21日であって、いずれも本件審判の請求の登録前3年以内の使用とは認められない。さらに、ここで使用されている商標は、前者が「Gran Bach」であり、後者が「CV GRAN BACH」であって、いずれも本件商標ではなく、これら商標と本件商標が同一でないことはもちろん、類似であるかどうかさえ疑わしい。
カ 乙第8号証について
これは、商標権者の会社紹介パンフレットであるが、日付のないものであり、本件審判の請求の登録前3年以内のものとは認められない。また、「OUR WINERIES(醸造所一覧)」としてスペインの「BACH」醸造所が紹介されているが、製品は一切現れていない。商標の使用ということはできない。
キ 乙第9号証について
これは、商標権者の会社紹介パンフレットである。同社の歴史やワインの解説を辞書的に行っているが、製品は一切現れていない。商標の使用ということはできない。
ク 以上の理由により、被請求人は本件商標の使用を立証していない。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
(1)使用の事実
以下のとおり、商標権者は、本件商標を使用商品(発泡性ぶどう酒)について、本件審判の請求の登録前3年以内に使用していた。
ア 商標権者は、同法人の日本国支社を介して、サッポロビールに使用商品の卸売りを行い、サッポロビールは、本件商標を付した商品を販売している(乙1)。使用商品のボトルには、商標「BACH」が自他商品識別機能を発揮する態様で使用されている。なお、商標の使用態様の詳述については、後記キのとおりである。
イ 商標権者より使用商品を購入したサッポロビールは、日本国内で配布されたカタログに商標「BACH」を付した使用商品の紹介を行った(乙2)。この種のワインのカタログは、年度に合わせて毎年3月ころに発行されるのが通例である。そして、乙第2号証の発行時期については、カタログに附属する価格表冊子の表紙下部の「2010年3月3日現在」の記載から、本件審判の請求の登録日より以前であることは明らかである。なお、カタログの28頁、商品番号〈0752〉の価格は、価格表冊子5頁の商品番号〈0752〉と対応している。
ウ サッポロビールは、インターネットにて商標「BACH」を付した使用商品の紹介を行った(乙3)。なお、乙第3号証は、平成22年10月25日現在のものであるが、後記エの取引書類の存在から、審判請求の登録後に使用しているというような使用ではないことは明らかである。
エ 商標権者は、サッポロビールに対して商品の卸売りを行う上で、取引書類としての発送(納品)書を作成し、購入先に送付した(乙4ないし乙7)。この書類には「Gran BACH」を納品した旨が明確に記載されている。「02.06.2009(2009年6月2日)」(乙4)及び「30.06.2009(2009年6月30日)」(乙5)は、いずれも本件審判の請求の登録前3年以内に該当する。
乙第6号証及び乙第7号証に記載された発行日付は、本件審判の請求後のものであるが、これより商標権者が、遅くとも2009年6月から現在に至るまで、本件商標を使用していることが明らかになるものと考えられる。また、これにより、商標権者が審判請求の登録前3年以内に本件商標を継続的に使用していたことが確認できると思料する。
オ さらに、商標権者は、商標「BACH」を会社案内に掲載し、紹介した(乙8)。該資料の2頁に「BACH」というブランドを商標権者が扱っていることが紹介されている。
カ 被請求人は、ブランド「BACH」の販売促進を目的としたセミナーを行った(乙第9号証)。この資料から、商標「BACH」を広告的態様で使用していることが明らかになると考えられる。また、資料に記載される日付は、その資料を参加者に配布する日付とするのは通常であり、したがって、1頁の「2008年9月10日」の記載は、資料配布の日付であり、本件審判の請求の登録前3年以内に使用していたことが明らかである。
キ 登録商標の使用
使用商品のボトルのラベルおける商標の使用(乙1ないし乙3)は、商標法第2条第3項第1号及び同第2号に掲げる商標の使用に該当するところ、「Gran」の文字が「BACH」と合わせて記載されているが、「Gran」は、「高級品、大きい、偉大な」といった修飾的な意味合いを有するスペイン語であり、ワインの業界で等級表示としての意味合いを有するから、使用商品との関係において自他商品識別力を有しない部分であると考えられる。そして、「Gran」と「BACH」の二段書きは、「BACH」を「Gran」よりも目立つように太い書体で、かつ、目立つ色彩で記している。「BACH」は、指定商品との関係において、商品の品質等を表す言葉ではない。このような態様の商標では、「BACH」を商標として認識し、これもって取引に資すると考えられる。
さらに、取引書類(乙4ないし乙7)には、商標として「GRAN BACH」が記載されているが、上記のとおり、「GRAN」は、形容詞的意味であり、識別力が弱く又は識別力を有さないものであり、「BACH」が商標として認識されていると考えられる。
したがって、商標権者は、商標「BACH」を使用した使用商品について、日本国における販売店であるサッポロビールに対し、少なくとも2009年6月ころから現在に至るまで継続して販売したことが証明されたと考えられる(乙1ないし乙7)。
さらに、販売促進を目的とした広告として商標「BACH」が掲載されている(乙8、乙9)。この使用は、商標法第2条第3項第8号に掲げる商標の使用に該当する。
以上によれば、商標権者は、本件商標を指定商品について使用していると判断できると考えられる。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標は、請求に係る指定商品に使用されているので、本件商標の登録が取り消されるべき理由は存在しない。

4 当審の判断
商標権者が本件審判の請求の登録(平成22年8月10日)前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品について、本件商標を使用していたか否かについて検討する。
(1)乙第1号証、乙第2号証、乙第4号証、乙第5号証及び乙第9号証によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 乙第1号証は、英文で書された使用商品のパンフレットと認められる(争いのない事実)ところ、その上部には、黄色を施した活字体の「BACH」の文字が大きく横書きされ、その下に、灰色を施した筆記体の「Cava Gran Bach」の文字が横書きされ、さらに、その下に、灰色を施した活字体の「BRUT」の文字が小さく横書きされている。
また、これらの文字の下には、使用商品の写真が掲載されており、使用商品の包装容器(瓶)の胴体部中央には、容器の緑地を背景に、紺色を施した筆記体の「G」と思しき文字(以下「筆記体G」という。)を大きく表し(筆記体Gの一部には細い白色の縁取りがある。)、その筆記体Gの上に重ね書きした「Gran」、「BACH」、「BRUT」の各文字が三段に横書きされているところ、そのうちの上段の「Gran」の文字部分は、白色の筆記体で細く書され、真ん中の「BACH」の文字部分は、黄色を施した活字体で、他の「Gran」、「BRUT」の各文字に比べて大きく書され、さらに、下段の「BRUT」の文字部分は、白色の活字体で、上段に書された他の文字に比べ、最も小さく書されているものである。
イ 乙第2号証は、「★SAPPORO WINE & SPIRITS CATAROGUE 2010-2011」との表題のあるサッポロビール(東京都渋谷区恵比寿4-20-1)の作成に係るカタログとこれに附属する価格表と認められる(争いのない事実)ところ、カタログの「SPAIN」の項目(28頁)には、「コドーニュ・グループ」の見出しのもと、「グランバック」の文字と「Gran Bach」の文字が二段に横書きにして表示され、乙第1号証に掲載された使用商品の写真と同一と認められる商品の写真が掲載されている。
また、商品の説明として、「[白・カバ・辛口]伝統的なカバのブドウ品種(マカベオ、チャレロ、パレリャーダ)に、珍しいブレンドとしてシャルドネを加えたコドーニュ・グループの本格的なカバです。」と記載され、下部には、「〈0752〉750ml×6本入」などの記載がある。
さらに、価格表の表紙下部には、「本価格表に記載されている商品価格は、2010年3月3日現在の・・・」と記載され、また、「スペインワイン」の項目(5頁)には、「頁/28 コドーニュ・グループ」、「商品名/グランバック」、「容量(ml)/750」、「入数/6」、「コード/0752」などの記載がある。
ウ 乙第4号証及び乙第5号証は、商標権者とサッポロビールとの間で取り交わした取引書類と認められるところ、これらの左上には、前者は、「Date:02.06.2009」と、また、後者は、「Date:30.06.2009」と記載され、それぞれの「Product」欄には、いずれも「56911N6 CV GRAN BACH 6b 0,75L」の記載がある。
エ 乙第9号証は、表紙に、籠文字風に表した「BACH」の文字が大きく記載され、その下に、「GRUPO CODORNIU」、「WINEMAKERS SINCE 1551」、「コドルニウ・グループ 2008年9月10日」の各文字が小さく記載された印刷物であり、その内容は、商標権者の会社紹介と「BACH」なる銘柄のワインの販売促進のための資料といえるものである。
その最終頁には、「地中海のワイン/・BACHのカバは、地中海に近いために、柔らかで心地よいそよ風、健康的な日差し、涼しい日陰といった恵みを受けています。/・このような環境で育ったブドウは、飲み心地の良いカバ、ワインへと成長しています。/・ワイン造りの最後の秘密は、・・・」などの記載がある。
(2)前記(1)で認定した事実を総合すると、商標権者は、スペインの発泡性ぶどう酒(カバ)のメーカーであり、乙第1号証に示す発泡性ぶどう酒の製造、販売を行っていること、商標権者は、本件審判の請求の登録(平成22年8月10日)前3年以内である2009年(平成21年)6月2日付け及び2009年(平成21年)6月30日付けで、東京都渋谷区に所在のサッポロビールに対し、「56911N6 CV GRAN BACH 6b 0,75L」を出荷したこと、サッポロビールは、上記納品した商品について、本件審判の請求の登録前3年以内に作成したカタログにおいて、「コドーニュ・グループ」の表示のもと、「グランバック」の文字と「Gran Bach」の文字を表示して、乙第1号証に示す使用商品と同一の商品の写真を掲載したこと(以上、当事者間に争いのない事実。)、などの事実が認められる。
そして、乙第1号証に示す使用商品の包装容器(瓶)の胴体部中央には、前記(1)ア認定のとおり、容器の緑地を背景に、紺色を施した筆記体Gを大きく表し、この上に重ね書きした「Gran」、「BACH」、「BRUT」の各文字が三段に横書きされており、そのうちの上段の「Gran」の文字部分は、白色の筆記体で細く書され、真ん中の「BACH」の文字部分は、黄色を施した活字体で、他の「Gran」、「BRUT」の各文字に比べて大きく書され、さらに、下段の「BRUT」の文字部分は、白色の活字体で、上段に書された他の文字に比べ、最も小さく書されていることが認められる。
また、上記の販売状況からすると、商標権者は、自己の会社紹介と業務に係る商品である「BACH」なる銘柄の発泡性ぶどう酒に関する販売促進のための資料(乙9)を作成し、その表紙に、籠文字風に表した「BACH」の文字を表示し、これを2008年9月10日以降に頒布したものと推認することができる。
(3)そこで、商標権者の使用に係る商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するか否かについて検討する。
ア 使用商品の包装容器(乙第1号証)に表示された商標について
(ア)使用商品の包装容器(瓶)の胴体部中央には、前記(2)認定のとおり、「Gran」、「BACH」、「BRUT」の文字などが表示されているところ、その構成中の「BACH」の文字部分は、「Gran」の文字部分とは、書体を異にするばかりでなく、黄色を施した点、他の文字に比べ大きく表されている点などからみて、看者の注意を最も強く引く部分であるといえる。加えて、「Gran」の文字部分は、「大きい、偉大な、すばらしい」などを意味するスペイン語「grande」の語尾が脱落した形のものであり、また、「BRUT」の文字部分は、「『ワイン』が極辛口の」を意味するスペイン語であるから、いずれも自他商品の識別機能を有しないのに対し、「BACH」の文字部分は、特定の観念を有しない造語よりなるものと理解されるものである。
してみれば、使用商品の包装容器(瓶)に表示された「BACH」の文字部分は、独立して自他商品の識別標識としての機能を発揮する使用態様というべきである。そして、該「BACH」の文字部分は、本件商標と同一の綴り字よりなるものであるから、本件商標と同一の称呼を生ずるのみならず、外観上も極めて近似するものといわなければならない。
したがって、使用商品の包装容器(瓶)の胴体部中央に表示された「BACH」の文字は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するというべきである。
(イ)上記に関し、請求人は、「Gran」、「BACH」、「BRUT」の単語(特に「BACH」の文字)と背後の「g」(筆記体G)は、一部重なって融合しているので、全体で一体の商標と見なければならず、したがって、容器に表示された商標は「BACH」の類似商標かもしれないが、本件商標と同一の商標ではない旨主張する。
しかし、「Gran」、「BACH」、「BRUT」の各文字の背後にある筆記体Gは、容器の色彩と同系色ともいえる暗い色彩であり、それ自体看者の注意を引くものではないのに対し、「BACH」の文字部分は、上記のとおり、色彩や大きさの点などからみて、それ自体独立して看者の注意を強く引く部分であるといえる。そして、上記の点からみて、「BACH」の文字部分と筆記体Gとが融合しているとは到底認めることができない。したがって、請求人の上記主張は、理由がなく採用することができない。
また、請求人は、サッポロビールのカタログ(乙2)に掲載された使用商品の写真について、瓶に表示された文字は判読できないし、判読できるとしてもあまりに小さくて読者の目に留まらない旨主張し、さらに、カタログに表示された「グランバック」及び/又は「Gran Bach」の商標は、そのうちの「グラン/Gran」の文字部分が自他商品の識別機能を有するから、本件商標とは同一でない旨主張し、「GRAN」、「グラン」の登録例として、甲第2号証ないし甲第19号証を提出する。
しかし、サッポロビールのカタログに掲載された商品が乙第1号証に示す使用商品と同一であることについては、請求人は争っていない。そうすると、サッポロビールのカタログに掲載された商品についても、乙第1号証に示す使用商品と同様に、「BACH」の文字よりなる商標が独立して自他商品の識別標識としての機能を発揮する態様で使用されていたことは明らかであり、したがって、サッポロビールのカタログに掲載された使用商品の写真が小さいものであるとしても、その事実をもって、「BACH」の文字よりなる商標が使用されていなかったということはできない。
また、使用に係る商標中の「Gran」の文字部分は、前記認定のとおり、「大きい、偉大な、すばらしい」などを意味するスペイン語「grande」の語尾が脱落した形のものであり、商品「(スペイン産)発泡性ぶどう酒」との関係からみれば、自他商品の識別機能を有しない部分といえるばかりでなく、請求人の提出に係る登録例は、甲第4号証を除き、化学製品、燃料、薬剤、化粧品、宿泊施設の提供やパチンコホールの提供などの役務、産業用機械器具、電気機械器具、日用品、建築用専用材料、飼料等について登録された商標であるから、これら登録例をもって、「Gran」の文字部分が、商品「(スペイン産)発泡性ぶどう酒」について、自他商品の識別機能を有するということはできないし、甲第4号証にしても、片仮名文字の「グラン」よりなるものであるから、「Gran」とは同等に扱うことはできない。
なお、請求人は、乙第1号証に関し、日付がないから、本件審判の請求の登録前3年以内の使用とは認められないし、しかも、全文外国語であり、日本の取引者、需要者向けのものとは思われない旨主張するが、乙第1号証は、使用商標がどのような態様で使用されているかを明らかにするためのものであり、使用商標が本件審判の請求の登録前3年以内に使用されていたことは、取引書類、サッポロビールのカタログ等を総合すれば明らかである。
また、乙第1号証は、商標権者と輸入業者たる商標権者の日本法人や卸業者たるサッポロビールとの間の取引に使用される使用商品のパンフレットと認められるものであり、必ずしも最終消費者に頒布する目的で作成されたものとはいえないから、全文外国語であるとしても、使用事実を証明する証拠にならないということはできない。
したがって、請求人の上記に関する主張は、いずれも理由がない。
イ 資料(乙第9号証)に表示された商標について
(ア)商標権者の会社紹介とその業務に係る商品である「BACH」なる銘柄の発泡性ぶどう酒に関する販売促進のための資料(乙9)に表示された籠文字風の「BACH」の文字は、本件商標と同一の綴り字よりなるものであるから、本件商標と同一の称呼を生ずるのみならず、外観上も近似するものである。
したがって、上記資料に表示された「BACH」の文字は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するというべきである。
(イ)上記に関し、請求人は、当該資料には、製品が一切現れていないから、商標の使用ということはできない旨主張する。
しかし、当該資料には、「BACH」の文字と共に、商標権者のワイン造りに関する記載や「BACHのカバは、・・・」との記載があるところからすれば、「BACH」が商標権者の製造、販売に係るワイン(カタルーニャ産の発泡性ぶどう酒)の名称ないしこれに使用される商標であることが認識され、その他、乙第1号証及び乙第2号証に示す使用商品の写真等を総合すれば、たとえ、当該資料に製品の写真等の掲載がないとしても、「BACH」の文字が商標権者の業務に係る発泡性ぶどう酒に使用される商標であることは、容易に理解されるところである。したがって、請求人の上記に関する主張は理由がない。
ウ その他、使用に係る商標に関する請求人の主張について
請求人は、商標権者とサッポロビールとの間の使用商品等に関する取引書類(乙4、乙5)に記載された「CV GRAN BACH」は、本件商標ではないことはもちろん、類似であるかどうかさえ疑わしい旨主張する。
しかし、上記取引書類に記載された「CV GRAN BACH」が、乙第1号証に示す使用商品であることについては、請求人は争っていない。そうすると、取引書類に「CV GRAN BACH」の文字が記載されているとしても、使用商品そのものには、前記認定のとおり、「BACH」の文字よりなる商標が独立して自他商品の識別標識としての機能を発揮する態様で使用されていたことは明らかである。したがって、請求人の上記に関する主張は理由がない。
(4)以上によれば、商標権者は、本件審判の請求の登録(平成22年8月10日)前3年以内に、東京都渋谷区に所在のサッポロビールに対し、本件商標と社会通念上同一と認められる商標をその包装容器に付した使用商品(発泡性ぶどう酒)を販売し、使用商品に関する販売促進のための資料に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示しこれを頒布したことを推認することができる。
そして、商標権者の上記行為は、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸出し、輸入・・・する行為」、「商品若しくは役務に関する広告、定価表若しくは取引書類に標章を付して・・・頒布・・・する行為」(商標法第2条第3項第1号、同第2号、同第8号)に該当するものと認めることができる。
また、使用商品は、本件請求に係る指定商品に含まれる商品である。
(5)むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が請求に係る指定商品に含まれる商品「発泡性ぶどう酒」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2011-04-04 
結審通知日 2011-04-06 
審決日 2011-04-20 
出願番号 商願平11-37102 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z33)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 和雄 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 2000-04-28 
登録番号 商標登録第4380571号(T4380571) 
商標の称呼 バック、バッハ、バッチ 
代理人 広瀬 文彦 

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