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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない X03
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X03
管理番号 1238350 
審判番号 無効2010-890047 
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-06-07 
確定日 2011-05-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第5163327号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5163327号商標(以下「本件商標」という。)は、「FUEL FOR MEN」の文字を横書きしてなり、平成20年3月4日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同年7月9日に登録査定、同年8月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する国際登録第927197号商標(以下「引用商標」という。)は、「FUEL FOR LIFE」の文字を横書きしてなり、2006年11月13日にフランス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2007年(平成19年)4月20日に国際商標登録出願され、第3類「Perfumes, eaux de toilette; liquid creams for the body; after-shave lotions; bath and shower gels and lotions not for medical use; toilet soaps; body deodorants.」を指定商品として、平成20年3月13日に登録査定、同年5月23日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第65号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、以下のとおり、商標法第4条第1項第15号及び同第16号に該当するから、その登録は、商標法第46条第1項第1号によって無効とされるべきである。
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 商標法第4条第1項第15号の判断基準
商標法第4条第1項第15号は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリュージョン)を防止し、商標の自他商品識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるから、同号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品等に使用したときに、当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信させるおそれがある商標を含むものと解するのが相当である。そして、この場合、同号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知・著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引実情に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものであるとされている(平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決平成10年(行ヒ)第85号審決取消請求事件)。
かかる基準に照らし合わせた場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも請求人又は請求人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは、以下イないしキの理由より、明らかである。
イ 引用商標の周知・著名性
(ア)請求人商品について
請求人は、イタリアの老舗ファッションブランドとして日本でも人気の高い国際的なアパレルブランドのDIESEL S.p.A.(以下「DIESEL社」という。甲第15号証ないし甲第19号証。)と平成18年に「DIESEL」ブランドの香水類について包括的なグローバルライセンス契約を締結し(甲第22号証)、引用商標を付したオードトワレ、コロン等のフレグランス(以下、請求人の主張に限り「請求人商品」という。)をフランスにおいて製造し、日本、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、韓国等世界48カ国に輸出している(甲第20号証及び甲第21号証)。
請求人商品は、女性らしさ及び男性らしさをもっとも象徴するような香りの系統の中から二つのフレグランス(シプレーとファーン)を使用した、セクシーでエネルギッシュなフレグランスとして、その製品の秀逸さは、世界的に権威のあるフレグランス賞であるFIFI賞を受賞するなど、極めて高く評価されている。また、国内においても、請求人の日本法人である日本ロレアル株式会社(以下「日本ロレアル社」という。)が請求人から請求人商品を輸入し、DIESEL社の日本法人であるディーゼルジャパン株式会社(以下「ディーゼルジャパン社」という。)の全国の45店舗のDIESEL SHOPにおいて、平成19年8月27日から販売し(甲第22号証及び甲第23号証)、需要者の間で人気のフレグランスとなっている。
(イ)請求人商品の国内での宣伝・販売実績
請求人商品の販売が開始された平成19年8月27日以降、ディーゼルジャパン社及び日本ロレアル社によって、引用商標の我が国での普及のために、年間2,180,492円の金額が費やされ(2008年度実績)、雑誌広告やディーゼルジャパン社のクラブ会員報等で広告活動が行われている(甲第22号証、甲第24号証ないし甲第29号証、甲第57号証ないし甲第60号証)。
(ウ)請求人商品の海外での宣伝・販売実績
請求人商品は、上記のとおり、平成19年8月からフランス、イギリス、ドイツ、アメリカ、カナダ等の世界48カ国で発売されているが、その発売後の平成20年4月に、50年以上の伝統を誇るアメリカフレグランス財団によって、前年度発表されたフレグランスを対象として最も優れた香水に与えるFIFI賞を受賞した(甲第30号証)。FIFI賞は、毎年、ニューヨークにおいて、ジャーナリストと香水の小売業者の投票により決定される(甲第61号証)。また、1993年からは、ヨーロッパ部門が新設された(甲第30号証)。請求人商品は、フレグランスの本場であるヨーロッパはフランス、イギリス、ドイツにおいて、FIFI賞を獲得し、今やフレグランス業界を代表する、一流フレグランスとしての地位を獲得している。
請求人商品は、このように、フレグランス関係者や消費者に毎年注目されている権威あるフレグランス賞を受賞していることから、フレグランスとして優れた商品であることは当然のこと、遅くとも上記の各FIFI賞が開催された平成20年4月ころまでには、ヨーロッパを含む世界各国で周知・著名となっていたというべきである。
(エ)海外での商標出願・登録状況
請求人は、引用商標を、EU、フランス、イタリア、スイス等のヨーロッパ地域や、香港、マレーシア、フィリピン、シンガポール、台湾、及び日本を含むアジア各国、その他、アフリカ、中東、南米地域など、77の国又は地域で商標登録又は商標登録出願を行っており(甲第31号証ないし甲第56号証)、「FUEL FOR LIFE」ブランドの保護に非常に力を入れている。
(オ)小括
以上の結果、引用商標は、遅くとも本件商標の出願時である平成20年3月4日には、日本やヨーロッパをはじめとした世界各国において、請求人商品を指すものとして、需要者の間で認識されており、本件商標の登録査定時である平成20年7月9日にもその著名性が維持されていたというべきである。
ウ 本件商標と引用商標との類似性の程度
(ア)本件商標
本件商標は、「FUEL」、「FOR」、「MEN」の3語を結合させてなる商標であり、その構成中の「FUEL」は、「燃料」の意味を有する名詞であり、「FOR」は、「?のための」という前置詞であり、「MEN」は、男性名詞「MAN」の複数形であり、いずれの単語も、我が国で広く知られた平易な英単語であるから、その構成文字に相応して、全体からは、「フューエルフォーメン」の称呼が生じ、「男のための燃料」の観念が生じる。
(イ)引用商標
引用商標は、「FUEL」、「FOR」、「LIFE」の3語を結合させてなる商標であり、その構成中の「FUEL」及び「FOR」は、前記(ア)のとおりの意味を有するものであり、「LIFE」は、「生命」又は「人生」の意味を有する単語であり、いずれの単語も、我が国で広く知られた平易な英単語であるから、その構成文字に相応して、全体からは、「フューエルフォーライフ」の称呼が生じ、「生命のための燃料」又は「人生のための燃料」の観念が生じる。また、前記イ(ア)のとおり、引用商標が主として使用されるメンズフレグランスは、男性の「セクシーでエネルギッシュな」香りをイメージして作られたフレグランスであり、かかるコンセプトのもと、「FUEL FOR LIFE」とネーミングされたものであり、需要者の間においても、当該商品は、エネルギッシュな男のための「人生のための燃料」として使用するフレグランスとして認識され、人気となっている。
(ウ)観念の類似
引用商標が、上記のコンセプトのフレグランスとして需要者の間で認識されていることよりすれば、本件商標がフレグランスを含むその指定商品について使用された場合には、引用商標に係るフレグランスとの間で、全体的な商品コンセプトが近似するものとなり、観念上相紛らわしい商標といわざるを得ない。
さらに、後記エのとおり、当該商品分野においては、シリーズ商品を発売することが見受けられ、請求人も、「FUEL」シリーズとして、引用商標のほかに「FUEL FOR LOVE」(甲第14号証の1)を日本を含む19カ国を指定して国際登録出願をしている。かかる取引の実情において、本件商標が市場に登場した場合には、「FUEL(燃料)」シリーズが、新たに、「FOR MEN(男のための)」バージョンを発売したものと理解する可能性が極めて高いというべきである。かかる点からも、本件商標は、全体の観念において、引用商標との類似性が高いことは明らかである。
エ 取引の実情
(ア)フレグランスの分野において、各メーカーは、フレグランスの香りやそのフレグランスを需要者につけてほしいと考える様々なシーンを表現するために、フレグランスごとにコンセプトを設定して販売することが一般的である。また、1つのフレグランスブランドをシリーズ化し、そのシリーズのもとで、異なる香りを有するフレグランスを、個別のコンセプトを設定し、複数種類展開することが見受けられ、我が国でも著名なフレグランスブランドやファッションブランドが、自己の製造・販売するフレグランスをシリーズ化し、そのシリーズのもとで、異なる香りを有するフレグランスを、個別のコンセプトを設定して、宣伝・販売している(甲第3号証ないし甲第13号証、甲第62号証ないし甲第65号証)。
(イ)請求人は、現在、「FUEL FOR LIFE」のシリーズ化を行っているわけではないが、「FUEL」に関連して、「FUEL FOR LOVE」の欧文字からなる商標を、第3類「perfumes,eaux de toilette;bath and shower gels and salts not for medical purposes」等の商品について、フランス国の基礎登録に基づき、アルジェリア、エジプト、カザフスタン、オーストラリア、日本、ノルウェー、シンガポール、スイス、中国、ベトナム等を指定国とした国際登録第927216号を有している(甲第14号証の1及び2)。したがって、将来、当該商標を使用したフレグランスが発売された場合には、引用商標が「セクシーでエネルギッシュな人生のための燃料」というコンセプトのフレグランスとして我が国の需要者に広く知られていることから、需要者は、引用商標を想起し、「FUEL」シリーズの「FUEL FOR LOVE(愛のための燃料)」という新たなコンセプトの後続フレグランスが発売されたものと理解する可能性が高いというべきである。このように、請求人は、「FUEL」ブランドの将来のシリーズ化を念頭に、積極的に商標登録を行い、「FUEL」ブランドの保護に努めている。
(ウ)上記状況よりすれば、フレグランスの需要者が、「FUEL FOR LIFE」とは別のコンセプトの「FUEL」シリーズのフレグランスが発売されているかもしれないといった認識があったとしても、決して不自然なことではない。
オ 本件商標の指定商品と請求人商品との間の関連性の程度
上記のように、請求人は、平成19年8月(甲第21号証)より海外で、及び、平成19年8月27日より日本で、引用商標を請求人商品に使用しており、さらに、関連商品として、シャワージェル、ボディーローションにも引用商標を使用している。
本件商標の指定商品中「化粧品」は、オードトワレ、コロン、オードパルファム等のフレグランス、シャワージェル及びボディーローションを包含する商品である。また、本件商標の指定商品中「せっけん類、香料類、歯磨き」は、上記のフレグランス、シャワージェル及びボディーローションと商品の用途・効能・品質等において共通しており、互いの関連性は極めて高いものである。
カ 商品等の取引者及び需要者の共通性
請求人商品を含む引用商標を使用する上記商品と本件商標に係る指定商品は、老若男女を問わず、一般消費者により広く使用される商品であるから、商品の取引者・需要者が互いに共通していることは明らかである。
キ 以上に照らし、主にフレグランスについて、世界的に周知・著名な引用商標に近似する本件商標が、引用商標が使用される商品と関連性の高いその指定商品について使用された場合、これに接する需要者・取引者は、周知・著名な引用商標を連想し、請求人の取扱いに係る「FUEL」シリーズに属し、異なるタイプの香りを有する「FOR MEN(男のための)」バージョンのフレグランス又はそのようなフレグランスを使用した商品であるかのように誤認し、請求人又は請求人と何らかの関連を有する者の取扱いに係るものではないかと、その商品の出所について混同するおそれが極めて高いものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、その構成中に「FOR MEN」の欧文字を含んでいる。当該文字は、フレグランス、フェイスソープ、フェイスローション、シャンプー、ボディシャンプー等の本件商標の指定商品の分野において、1つのブランドのメンズ・ラインの名称に使用されているのが取引実情であるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、需要者は、「男性用の、男性のための」といった意味を理解する場合もあるというべきである。
したがって、本件商標は、その指定商品について使用された場合には、「男性用」商品であるかのように理解させるものであるから、男性用の指定商品以外の指定商品について使用された場合には、商品の品質等について誤認を生じさせることは明白である。
ゆえに、本件商標は、その指定商品中「男性用のせっけん類、男性用の香料類、男性用の化粧品、男性用の歯磨き」以外の指定商品について、商標法第4条第1項第16号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は、前記第3の請求人の主張に対して、何ら答弁をしていない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の著名性について
ア 請求人の主張及び提出した甲各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)請求人は、2006年(平成18年)に、イタリアの服飾メーカーであるDIESEL社との間で、香水に関するライセンス契約を締結し、「DIESEL」ブランドのもとに、香水「FUEL FOR LIFE」を製造、販売したこと(甲第15号証ないし甲第20号証及び甲第22号証)。
(イ)「DIESEL」ブランドを使用した香水「FUEL FOR LIFE」は、ヨーロッパにおいて、2007年(平成19年)8月末ころから発売され、また、我が国においても、2007年(平成19年)8月27日から、ディーゼルジャパン社の「DIESEL SHOP」で販売されたこと(甲第21号証及び甲第22号証。)
なお、本件商標の登録出願後にディーゼルジャパン社が発行したと認められるディーゼルジャパン社の会員向け冊子及び掲載日の不明なネットショッピングのウェブページである甲第24号証ないし甲第29号証(但し、甲第29号証の5枚目、13枚目及び14枚目の打ち出し日は、2009年(平成21年)2月20日として明確である。)には、2007年(平成19年)に発売された「DIESEL/FUEL FOR LIFE」との表示のある香水は、「レディース香水」(甲第27号証)であり、「DIESEL/FUEL FOR LIFE」との表示のあるメンズ香水は、2008年(平成20年)に発売されたとの記載がある(甲第28号証及び甲第29号証)。)。
(ウ)上記「DIESEL SHOP」は、本件商標の登録出願日である平成20年3月の時点において、我が国に36店舗存在していたこと(甲第22号証)。
(エ)「DIESEL」ブランドが付された香水「FUEL FOR LIFE」は、「FiFi Show-2008」において、「Meilleure Communication de l’annee Parfum/Masculin(フランス 男性用香水部門ベストコミュニケーション賞)」、「Meilleure Communication de l’annee Parfum/Feminin(フランス 女性用香水部門ベストコミュニケーション賞)」、「Men’s Health Readers Award(イギリス 男性用ヘルスリーダーズ賞)」、「Men’s Best Fragrance-Prestige(ドイツ 男性用香水部門ベストプレスティッジフレグランス賞)」を受賞したこと(甲第30号証)。
「FIFI賞」とは、50年以上の伝統を誇るアメリカフレグランス財団が、前年度発表されたフレグランスを対象として、最も優れた香水に与える賞であり、毎年、ニューヨークにおいて、ジャーナリストと香水小売業者の投票により決定される賞であること(甲第61号証)。
(オ)請求人は、引用商標と同一の文字からなる商標を、世界77の国又は地域で商標登録又は商標登録出願を行っていること(甲第31号証ないし甲第56号証)。
イ 前記アで認定した事実によれば、「DIESEL」ブランドが付された香水「FUEL FOR LIFE」は、我が国においては、2007年(平成19年)8月27日に発売されたことが認められる(ただし、請求人が主張する「引用商標が主として使用されるメンズフレグランス」の発売時期は、2008年(平成20年)であるといわざるを得ず、他に該商品が2007年(平成19年)に発売されたと認めるに足りる証拠は見出せない。)。
しかしながら、上記2007年(平成19年)8月27日の発売日から本件商標の登録出願日(平成20年3月4日)までは、約6ヶ月半と極めて短い期間である上に、その期間中に、「DIESEL」ブランドが付された香水「FUEL FOR LIFE」の、我が国における販売数及び売上高、あるいは、平成20年3月の時点において36店舗存在していた「DIESEL SHOP」における具体的な販売状況等は明らかではない。また、本件商標の登録出願前における「DIESEL」ブランドが付された香水「FUEL FOR LIFE」に関する広告も、雑誌に掲載された1例しかなく、その広告や本件商標の登録出願後ないし登録査定後にした広告(甲第24号証ないし甲第29号証及び甲第58号証ないし甲第60号証)には、そのほとんどのものに「DIESEL」又は「ディーゼル」の文字が表示されているものの、請求人の表示があるのは、甲第27号証に「・・・一応はロレアルの企画香水ライン・・・」の記載があるだけである。
してみると、請求人の提出した証拠によっては、「FUEL FOR LIFE」の文字からなる引用商標が、請求人の業務に係る商品「香水」を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。このことは、引用商標と同一の文字よりなる商標が、世界77の国又は地域で商標登録又は商標登録出願がされていること、「DIESEL」ブランドが付された香水「FUEL FOR LIFE」が、2008年に外国においてFIFI賞を受賞したことをもってしても、左右されるものではない。その他、引用商標が、請求人の業務に係る商品「香水」を表示するものとして、本件商標の登録出願時(平成20年3月4日)はもとより、登録査定時(平成20年7月9日)においても、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたという事実を認め得る証拠はない。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「FUEL FOR MEN」の文字を横書きしてなり、該文字は、同じ書体、同じ大きさをもって、外観上まとまりよく表されているものであって、構成全体より生ずる「フューエルフォーメン」の称呼もよどみなく称呼し得るものといえる。さらに、本件商標は、その構成全体から「男のための燃料」なる意味合いを認識させるものである。そうすると、本件商標は、構成文字全体をもって一体不可分の商標と認識され、その構成文字に相応して、「フューエルフォーメン」の称呼のみを生じ、「男のための燃料」なる意味合いを認識させるものというべきである。
イ 引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、「FUEL FOR LIFE」の文字を横書きしてなり、該文字は、同じ書体、同じ大きさをもって、外観上まとまりよく表されているものであって、構成全体より生ずる「フューエルフォーライフ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものといえる。さらに、引用商標は、その構成全体から「生命のための燃料」、「生活のための燃料」なる意味合いを認識させるものである。そうすると、引用商標は、構成文字全体をもって一体不可分の商標と認識され、その構成文字に相応して、「フューエルフォーライフ」の称呼のみを生じ、「生命のための燃料」、「生活のための燃料」なる意味合いを認識させるものというべきである。
ウ 本件商標と引用商標との対比
そこで、本件商標から生ずる「フューエルフォーメン」の称呼と引用商標から生ずる「フューエルフォーライフ」の称呼とを比較すると、両称呼は、前者が8音からなり、後者が9音からなるものであって、語尾において、「メン」と「ライフ」の明らかな差異を有するから、これらの音が語尾に位置するものであるとしても、その差異が称呼全体に及ぼす影響は大きいものといえる。そうすると、両称呼は、これらをそれぞれ一連に称呼しても、称呼全体の語調、語感が相違し、互いに聞き誤るおそれはないというべきである。
また、本件商標と引用商標の観念は、上記のとおり、前者が「男のための燃料」の意味合いを生ずるのに対し、後者が「生命のための燃料」又は「生活のための燃料」の意味合いを生ずるから、互いに紛れるおそれはない。
さらに、本件商標と引用商標は、「FUEL FOR」の文字を同じくするものであるが、語尾において、「MEN」と「LIFE」の文字に顕著な差異を有するから、外観上互いに紛れるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、観念及び外観のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 本件商標と引用商標との類否に関し、請求人は、香水の分野においては、シリーズ商品を発売することが見受けられ、請求人も、「FUEL」シリーズとして、引用商標のほかに「FUEL FOR LOVE」(甲第14号証の1)を日本を含む19カ国を指定して国際登録出願をしているから、本件商標が市場に登場した場合には、「FUEL(燃料)」シリーズが、新たに、「FOR MEN(男のための)」バージョンを発売したものと理解する可能性が極めて高いというべきであって、この点からも、本件商標は、全体の観念において、引用商標との類似性が高い旨主張する。
確かに、甲第3号証ないし甲第13号証及び甲第62号証ないし甲第65号証によれば、商品「香水」について、著名なブランドやハウスマークを基幹として、香り等の異なる商品ごとに個別的な商標を付加して、シリーズ商品を発売していることが認められる。
しかしながら、これらは、その基幹となるブランドやハウスマークが著名であるが故に、シリーズ商品と認識されるのである。これに対し、引用商標が本件商標の登録出願前より我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていなかったことは前記認定のとおりであり、さらに、引用商標中の「FUEL」の文字部分が独立して、請求人の業務に係る商品「香水」を表示するものとして、本件商標の登録出願前より著名性を獲得していた事実、あるいは、引用商標のほかに「FUEL」の文字を冠した商標が、本件商標の登録出願前から、取引の実際において使用されていた事実を認めるに足る証拠はない。
そうとすれば、引用商標中の「FUEL」の文字部分が、シリーズ商品を表す商標として認識されることはないというべきであり、前記認定のとおり、本件商標と引用商標は、それぞれ構成全体をもって一体不可分の商標として、称呼、観念及び外観が異なる非類似の商標と認識されるというべきであるから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、引用商標と何ら関係を有する商標とは認識され得ないといわなければならない。したがって、請求人の上記主張は理由がない。
(3)以上(1)及び(2)によれば、引用商標は、申立人の業務に係る商品「香水」を表示するものとして、本件商標の登録出願日はもとより登録査定日の時点においても、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることはできず、また、本件商標は、引用商標とは、前記(2)ウで認定したとおり、非類似の商標であって別異の商標というべきであるから、本件商標に接する取引者、需要者が引用商標を想起又は連想することはないというべきである。
してみれば、本件商標は、被請求人がこれを「香水」を含む「化粧品」をはじめ、その他の指定商品について使用しても、該商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。その他、本件商標を使用した商品と引用商標を使用した商品「香水」等の間に、出所について誤認混同を生ずるおそれがあるとみるべき特段の事情は見出せない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、前記1(2)認定のとおり、構成文字全体をもって、「フューエルフォーメン」の称呼を生じ「男のための燃料」なる意味合いを認識させる一体不可分の商標と認識されるというべきであるから、その構成中の「FUEL」の文字部分と「FOR MEN」の文字部分とを分離して観察すべきものではない。
してみると、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標中の「FOR MEN」の文字部分を捉え、これを商品の用途、品質表示とみることはないといわなければならず、本件商標は、これをその指定商品中のいずれの商品について使用しても、その取引者、需要者をして、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものと認めることはできない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第16号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-12-27 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-17 
出願番号 商願2008-15968(T2008-15968) 
審決分類 T 1 11・ 272- Y (X03)
T 1 11・ 271- Y (X03)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 井出 英一郎 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 2008-08-29 
登録番号 商標登録第5163327号(T5163327) 
商標の称呼 フユーエルフォーメン、ヒューエルフォーメン、フユーエル、ヒューエル 
代理人 廣中 健 
代理人 阪田 至彦 
代理人 下坂 スミ子 
代理人 中山 俊彦 
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