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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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審判199930328 | 審決 | 商標 |
取消2009301100 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 130 |
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管理番号 | 1236677 |
審判番号 | 取消2009-301101 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2009-10-01 |
確定日 | 2011-05-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第974493号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第974493号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和45年10月8日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同47年8月2日に設定登録、その後、同57年6月25日、平成4年7月29日及び同14年7月23日の三回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、同14年12月18日に指定商品を第30類「菓子,パン」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録は、平成21年10月20日にされたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由、上申の理由及び答弁に対する弁駁を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第31号証(枝番を含む。上申書に添付の甲第1号証を「甲第1号証の2」と読み替える。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきでものである。 2 上申の理由及び答弁に対する弁駁 (1)本件商標の構成 本件商標は、甲第1号証の2の願書に示すように、右側に平仮名で「ちょおじや」と縦書きし、左側に上記平仮名部分と等大の文字をもって漢字で「長者」と縦書きした左右2列の構成よりなり、昭和34年法区分の第30類「菓子、パン」を指定商品とするものである。 前記構成よりなる本件商標は、「チョオジヤチョウジャ」ないし「チョオジヤチョージャ」の称呼を生じ、「ちょおじや長者」ないし「ちょおじや金持ち」の観念を生じる。 (2)被請求人の使用態様 被請求人は、本件商標の構成の一部分である「長者」の文字を含む商標「長者せんべい」を商品「せんべい」に、同じく商標「長者ゆべし」を商品「ゆべし」に使用していた。 (3)使用商標と本件商標の同一性の有無 ア 被請求人が使用する「長者せんべい」又は「長者ゆべし」の「長者」部分の称呼は、「ちょうじゃ」「チョウジャ」「ちょーじゃ」「チョージャ」などである。 これに対し、本件商標は、使用商標と文理上の同一性がないことはもちろん、その称呼「チョオジヤチョウジャ」ないし「チョオジヤチョージャ」は、前記の使用商標の称呼とは共通性がない。一方、仮に本件商標を分離観察したとしても、「ちょおじや」部分から生じる「チョオジヤ」は、前記の使用商標の称呼とは共通性がない。また、観念においても、本件商標が「ちょおじや長者」ないし「ちょおじや金持ち」であるのに対し、使用商標の観念は、単なる「長者せんべい」「長者ゆべし」ないし「金持ちせんべい」「金持ちゆべし」であり共通性がない。 さらに、外観においても、本件商標が左右に「ちょおじや」の文字と「長者」の文字とを振り分けた特異な外観を有するのに対し、使用商標は、単なる「長者せんべい」「長者ゆべし」の文字のみからなるものであり共通性がない。 イ 一方、「ちょおじや」を「長者」と解する根拠は見いだせず、逆に食べ物の「おじや」を想起する「著おじや」「緒おじや」や、地名の小千谷を想起する「著小千谷」「緒小千谷」の当て字を想起することができる(甲第16号証の3・4、甲第17号証の3・4)。 これに関し、被請求人は、「平仮名『ちょおじや』は、漢字「長者」を表音式に表記したものである。つまり、世人において、『長者』が『ちょおじや』と表記されていることに違和感を感じることはなく、両者が社会通念上同一であると認識するものである。」と主張し、乙第17号証を提出している。 しかしながら、他の辞書においては、「長者」は、あくまでも「ちょうじゃ」としてのみ表記されており(甲第16号証の2,甲第29号証の2)、「長」の文字はあくまでも「ちょう」としてのみ表記されている(甲第18号証の2,甲第19号証の2)。また、インターネットホームベージ上での使用例における検索結果においても、「ちょうじゃ」に関しては、「長者」関連のものが多数ヒットするのに対し(甲第24号証)、「ちょおじや」はもちろん、「ちょおじゃ」に関しても「長者」関連のものはヒットしない(甲第20号証、甲第21号証)。 さらに、「新明解国語辞典第三版」においては、「あいきどう(「う」の右傍に「オ」が併記されている。)[合気道]・ねがわくは(「は」の右傍に「ワ」が併記されている。)における右傍のカタカナ小字は、表記と一致しない発音を示す。」と記されている(甲第28号証の2)。右事実は、被請求人のいうところの「表音式の表記」が世人において決して一般的ではないことを意味する。 そして、本件商標における平仮名部分は、あくまでも「ちょおじや」であり、「ちょおじゃ」ではない。 仮に、被請求人のいうところの「表音式の表記」をもって「長者」を表記するのであれば、それは「ちょおじゃ」であり「ちょおじや」ではないはずである。音をそのまま表記する表音式の表記においては、拗音もまた正確に表記されなければならず、拗音である「長者」の「者」部分を無視して「じや」と表記することは、断じてあり得ない。すなわち、「ちょおじや」は、「長者」を表音式に表記したものではない。 一方、「ちょおじや」の文字に着目した場合、仮にこれが表音式の表記として認識されるとするのであるのなら、「ちょお(う)じ」部分には、「丁子・弔辞・弔事・長耳・長治・長時・重事・停止・貼示・懲治・寵児」の多数の対応候補が存することになる(甲第16号証の2、甲第29号証の2)。 そして、「丁子」と「屋」からなる「丁子屋」の文字は日本の古くからの屋号の一つとして広く親しまれている(甲第30号証)。 よって、「ちょおじや」の文字が、音をそのまま表記する表音式で表記したものと需要者、取引者に認識されたしても、そこから先ず想起されるのは、日本の古くからの屋号の一つとして広く親しまれている「丁子屋」や「弔辞・弔事・長耳・長治・長時・重事・停止・貼示・懲治・寵児」などを造語の成分とした文字であり、拗音ではない「じや」部分の存在をあえて無視して「長者」の文字のみが一義的に直感されると考えることは極めて不自然である。 ウ 仮に本件商標の商標権者が「長者」の文字に独自の称呼である「ちょうじや」を当てはめ、これを表音式の表記「ちょおじや」で記したと推論したとしても、「ちょうじや」の語尾は1モーラ(拍)で終わる拗音「じゃ」ではなく2モーラで終わる「じや」であり、全体として「チョ・ウ・ジ・ヤ」の4モーラとなり、「チョ・ウ・ジャ」の3モーラとなる「長者」の称呼とは、語調・語感を大いに異にする。よって、商標権者の内心の意図とは関わりなく、「ちょおじや」の文字に接した取引者、需要者がそれを語調・語感が明らかに異なる「長者」の読みの当てはめであると、一義的に直感し得る客観的な状況は想定し難い。 エ 以上のように、「ちょおじや」の文字と「長者」の文字間には一対一対応の関係がない。 オ 一方、この場合、両者は、一つの商標の中で隣り合って配されているのだから、取引者、需要者に対し「ちょおじや」の文字は、「長者」の文字の独自の読みを表したものと暗示させる場面があり得ることはもちろんである。 しかしながら、この場合は、本件商標は、「『長者』の文字に『ちょおじや』という独自の振りがなを付した商標」全体として識別の用に供されるものであり、仮に「ちょおじや」単独の商標や「長者」単独の商標と類似する可能性があるとしても、一対一対応の関係が無い「ちょおじや」単独の商標や「長者」単独の商標と社会通念上の同一性があると解することは不自然であり許されない。 カ 被請求人は、本件商標における「ちょおじや」の「じや」部分に関し、「『じゃ』ではなく『じや』であるのは、出願当時『じゃ』のフォントが無かったため」と釈明しているが、これは、次の理由からまことにもって奇異な主張であるといわざるを得ない。 (ア)そもそも本件商標の出願時である昭和45年当時の商標法施行規則によれば、商標出願にあたっては、濃墨又は退色しない絵の具か印刷インキをもって印刷された商標見本を所定枚数添付しなければならず、現在のようにパソコンやワープロで印字されたものや、トナーなどによる複写されたものは使用できなかった。 (イ)すなわち、当時においては、出願人や代理人は、商標見本に関し、別途専門の印刷業者に依頼して印刷してもらうか、濃墨や絵の具をもって自書するしかなかった。 (ウ)印刷業者の場合は、活版やオフセット印刷によって商標見本を印刷していたが、専門の業者において拗音のフォントがないということはあり得ず、「や」に関しては、ポイント数の小さい「や」の活字や写植文字を使用すれば容易に拗音を表記できたはずである。 (エ)また、出願人が濃墨や絵の具をもって自書しても「ちょおじゃ」の文字を容易に表記できたはずである。 (オ)なお、それ以前に「『じゃ』のフォント」という意味が不明である。「じゃ」に関しては、「じ」のフォントと「や」のフォントで表記できるはずである。 キ 以上の事実から被請求人が本件商標の「ちょおじや」の「じや」を拗音「じゃ」でなく「じや」として意図的に構成したことは明らかである。 ク 一方、商標見本(甲第1号証の2)を見ても、拗音「ちょ」の「ょ」は、殊更小さく記しており、これとの対比においても「じや」の「や」が拗音でないことに客観性は十分ある。 本件商標においては、「ちょおじや」部分は、「長者」部分と等大の文字をもって書され、それが占める面積は「長者」部分より大きく、むしろ構成上は「ちょおじや」部分が主で「長者」部分が従であるとさえいえる。このように、「ちょおじや」部分は、商標の構成において十分目立っており、客観的に見た場合は、それが商標の一部を構成していると認識されるのは明らかであり、識別の用にあたって「ちょおじや」部分が除外されるべき特段の理由は見いだせない。 (4)ところで、「長者」の文字を後半に配した既存の単語としては、「億万長者」、「百万長者」、「わらしべ長者」、「黄金長者」など広く馴れ親しまれたものがあり、さらに商品の識別の用に供するために、「長者」の文字を後半に配した多数の造語が採択されている(甲第27号証の1・2)。よって、このような状況において、本件商標に接した取引者、需要者が本件商標を「チョオジヤチョウジャ」ないし「チョオジヤチョージャ」なる称呼を有する造語と直感すると考えることは経験則上に照らして正当である。 また、仮に被請求人の主張のように、「ちょおじや」が「ちょうじや」の表音式の表記であるとして認識されるのであるのなら、本件商標に接した取引者、需要者は、そこから「丁子屋長者」や例えば「長治屋長者」、「寵児屋長者」なる造語を直感すると考えることも経験則上に照らして正当である。 被請求人は、本件商標の更新記録を提出している(乙第15号証,乙第16号証)。しかしながら、当時更新登録に対する無効審判制度があったことから明らかなように、それらは、審査時の一つの判断にすぎず、それに本件の判断が拘束されることがないことはもちろんである。 (5)結び 出願当時、「長者」あるいは「長者/ちょうじゃ」等の選択肢があったにもかかわらず、意図的に特異な態様の「ちょおじや/長者」として商標権を獲得した者が、今になってその同一性を拡大して解釈することは許されないということである。 以上のとおり、使用商標と本件商標とは、社会通念上の同一性を欠き、本件商標は不使用であるので、その登録は取り消されるべきである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番を含む。)を提出した。 1 被請求人は、本件商標の商標権者であり、昭和39年5月21日より「福島県南相馬市原町区旭町三丁目29番地」で菓子類の製造並びに販売を営んでいる(乙第1号証)。 2 乙第2号証は、本件標章「長者」が付された「せんべい」の現物写真である。 この「長者せんべい」の包装箱の写真には、本件商標「長者」が付されており、品名、原材料名、賞味期限、販売者名称、住所、電話番号等が表示されている製造ラベルが添付されている。包装袋の写真には、本件商標「長者」が付されており、品名、原材料名、内容量等が表示されているが、上記表記の末尾にある「せんべい」は、商品を表すものとして普通に使用されているものであるから、ここでの実質的な商標は「長者」である。 乙第3号証は、被請求人の経営する「四季菓秀 亀屋」店舗写真であり、その店舗内で、「長者せんべい」及び「長者ゆべし」を販売している。 乙第4号証は、被請求人の委託販売先(納品先)である「株式会社野馬追の里」の平成21年10月29日付けの長者せんべいに関する販売証明書である。「長者」の標章を付した「せんべい」を、少なくとも同19年10月4日から現在に至るまで、「道の駅 南相馬(福島県南相馬市原町区高見町2-30-1)」で販売していることを証明するものである。 乙第5号証は、被請求人の委託販売先(納品先)である「株式会社野馬追の里」からの「業者別支払報告書」写しであり、2008年12月31日分から2009年9月15日分まで記載されている。2008年12月31日には、「長者せんべい18枚入」を「8箱」、「長者せんべい8枚入」を「7箱」、「長者ゆべし9ヶ入」を「5箱」を売り上げている。同様に、同年2月28日、同年5月15日、同年5月31日、同年6月30日及び同年9月15日に「長者せんべい」及び「長者ゆべし」をそれぞれ売り上げている。 乙第6号証は、請求外「浅井」に「長者せんべい」を合計「(数量)25」納品した「平成20年4月9日付け納品書(控)」写しである。 乙第7号証は、秋市実行委員会に「長者せんべい」を「(数量)20」納品した「平成20年11月3日付け納品書(控)」写しである。 乙第8号証は、少なくとも平成20年12月1日から現在に至るまで「長者せんべい」を使用していることを示す「平成21年11月13日付けの原町商工会議所の長者せんべいに関する証明書」である。 乙第9号証は、被請求人が販売している「和菓子のご案内(和菓子の栞)」であって、裏面左上に「長者せんべい」が掲載されている。これは、被請求人が顧客に頒布しているものである。 乙第10号証は、上記「お菓子の案内(和菓子の栞)」の制作に係る「平成20年11月30日付の東北紙工株式会社の請求書」写しである。東北紙工株式会社が上記栞を被請求人に20,000枚納品したことを示している。 3 乙第11号証は、本件標章「長者」が付された「ゆべし」の現物写真であり、この「長者ゆべし」の包装箱の写真には、本件商標「長者」が付されており、品名、原材料名、賞味期限、販売者名称、住所、電話番号等が表示されている製造ラベルが添付されている。 また、包装袋の写真には、本件商標「長者」が付されており、品名、原材料名、内容量等が表示されている。上記表記の末尾にある「ゆべし」は、商品を表すものとして普通に使用されているものであるから、ここでの実質的な商標は「長者」である。 乙第12号証は、委託販売先である「株式会社野馬追の里」の「平成21年10月29日付けの長者ゆべしに関する販売証明書」であり、「長者」の標章を付した「ゆべし」を、少なくとも平成19年10月4日から現在に至るまで、「道の駅 南相馬(福島県南相馬市原町区高見町2-30-1)」で販売しているものである。 乙第13号証は、被請求人が、少なくとも平成20年12月1日から現在に至るまで「長者ゆべし」を使用していることを示す同21年11月13日付けの原町商工会議所の証明書である。 乙第14号証は、「長者ゆべし」が福島県観光みやげ品として優良なものであると福島県観光連盟及び社団法人福島県物産振興協会から昭和55年4月1日に推薦されたことを示す「推薦証」写しである。昭和55年4月1日当時も、「長者ゆべし」を販売していたことを示すものである。 4 乙第15号証は、昭和57年2月3日付けで出願した本件商標の商標権存続期間更新登録出願記録(昭和57年第201833号)の写しであり、添付の登録商標の使用説明書中、「商標の使用の事実を示す書類」として「長者ゆべし」の商品写真を提出し、同年6月25日付けで更新登録されている。 乙第16号証は、平成4年2月10日付けで出願した本件商標の商標権存続期間更新登録出願記録(平成4年第702979号)の写しであり、添付の登録商標の使用説明書中、「商標の使用の事実を示す書類」として「長者ゆべし」の商品写真を提出し、同年7月29日付けで更新登録されている。 5 乙第17号証は、「新明解国語辞典第6版」(株式会社三省堂、2007年1月20日第8刷発行)一部抜粋である。「第4頁 編集方針 細則 見出しの表記と体裁」において「3あいきどう(「う」の右傍に「オ」が併記されている。)【合気道】・ねがわくは(「は」の右傍に「ワ」が併記されている。)【願わくは】等における右傍のカタカナ小字は、本行(ホンギョウ)の1に対応する表音式表記である。」と記されており、第963頁中段に記されている「長者」は、「ちょうじゃ」(「う」の上段に「オ」が併記されている。)と掲載されている。つまり、漢字の「長者」を表音式に表記した場合には「ちょおじゃ」となることを意味するものである。 6 以上のように、被請求人は、本件標章「長者」を商品「せんべい及びゆべし」に付して、少なくとも平成20年12月以降、今日まで継続的に日本国内の顧客向けに出荷(販売)している。 また、乙第15号証及び乙第16号証の証拠から明らかなように、商標権存続期間更新登録出願において登録商標の使用証明書を提出し、登録商標の使用であると判断され、更新登録されたものである。 さらに、乙第17号証の証拠から明らかなように、本件商標は左側に漢字で「長者」と記されており、右側に平仮名で「ちょおじや」と記された態様であるが、平仮名「ちょおじや」は、漢字「長者」を表音式に表記したものである(なお、「じゃ」ではなく「じや」であるのは、出願当時「じゃ」のフォントが無かったためである。)。つまり、世人において、「長者」が「ちょおじや」と表記されていることに違和感を感じることはなく、両者が社会通念上同一であると認識するものである。 したがって、本件商標と使用商標は、社会通念上の同一性を有しており、しかも本件商標は、その指定商品について継続して3年以上不使用であったものではない。 第4 当審の判断 1 認定事実 本件商標の商標登録原簿の記載及び被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1)本件商標の商標登録原簿の記載によれば、本件商標の商標権者は、設定登録時においては、「新妻貞衛」(「原町市旭町3丁目29番地」在)であったが、平成14年2月5日付けの「本権の移転」により「新妻貞美」(移転時は、前商標権者と同所在、その後、同18年3月17日付けの「登録名義人の表示の変更」により「福島県南相馬市原町旭町三丁目29番地」在となる。)に、さらに、同20年12月8日付けの「特定承継による本権の移転」により現商標権者である「合資会社亀屋菓子店」(前権利者と同所在)に移転されたものである。 そして、乙第1号証の1(被請求人の「履歴事項全部証明書」)、乙第1号証の2(本件商標の「譲渡証書」)によれば、被請求人である現商標権者は、菓子類の製造及び販売等を目的として昭和39年5月21日に設立された会社であり、平成20年11月7日付けで本件商標を「新妻貞美」から譲受したものである。このことは、上記の商標登録原簿の記載に矛盾しないものである。 (2)乙第2号証は、品名「長者せんべい」の現物写真であるが、この商品の包装用箱及び包装用紙には「長者せんべい」の文字が表示されている。そして、包装された商品の裏面には製造ラベルがはり付けられており、そこには、「品名 長者せんべい」、「名称 焼菓子」、「製造者 合資会社 亀屋菓子店」及び「賞味期限 09.12.29」の記載のほか、原材料名、保存方法及び製造者の住所・電話番号などが表示されている。 乙第3号証は、2009年11月6日に撮影したと認められる写真であり、1ページ目には「四季菓秀 亀屋」と表示された看板の店舗が写されており、2ページ目には「長者せんべい」及び「長者ゆべし」の標章が付された商品が展示された様子が写されている。 乙第4号証は、タイトルは「証明願」とするものであるが、「『長者』の標章を付した『せんべい』を平成19年10月4日から現在に至るまで、『道の駅 南相馬(福島県南相馬市原町区高見町2-30-1)』で販売した。」旨を内容とする商標権者に対する平成21年10月29日付けの「株式会社野馬追の里」による販売証明書(写し)である。 乙第5号証は、「業者別支払報告書」をタイトルとするものであり、その1枚目上段には、タイトルの左下に「2008年12月31日分」、「(資)亀屋菓子店様」及び「下記の通り、お支払い申し上げます。」、同じく右下に「作成 2009年01月01日」、「株式会社 野馬追の里」及び「福島県南相馬市原町区高見町2丁目30-1」などの記載があり、表中の「商品名」欄には「長者せんべい18枚入」、「長者せんべい8枚入」及び「長者ゆべし9ケ入」、それぞれに対応する「売上数」欄には「8」、「7」及び「5」の記載がある。同様に「商品名」欄には「長者せんべい18枚入」、「長者せんべい8枚入」、「長者ゆべし9ケ入」及び「長者ゆべし12ケ入」の記載が認められる2009年2月28日分、同年5月15日分、同年5月31日分、同年6月30日分及び同年9月15日分が提出されている。 乙第8号証は、タイトルは「証明願」とするものであるが、「『長者せんべい』商標を商品『せんべい』について平成20年12月1日から現在に至るまで、『商標権者』が使用している。」旨を内容とする商標権者に対する平成21年11月13日付けの「原町商工会議所」の証明書(写し)である。 乙第9号証は、表面に「和菓子のご案内」、「四季菓秀亀屋」及び「合資会社亀屋菓子店」などの記載があり、裏面には、左上に「長者せんべい」の標章が表示された商品及び包装用箱が掲載されている。 乙第10号証は、「請求書」のタイトルの下、「平成20年11月30日」及び「東北紙工株式会社」の記載があり、そして、その左方に「合資会社亀屋菓子店御中」及び「下記のとおりご請求申し上げます。」などの記載、下方表中の「納品日」欄に「11.20」、「商品名」欄に「和菓子の栞」及び「数量」欄に「20,000」などの記載がある。 乙第11号証は、品名「長者ゆべし」の現物写真であるが、包装された箱には製造ラベルがはり付けられており、そこには、「品名 長者ゆべし」、「名称 和菓子」、「製造者 合資会社 亀屋菓子店」及び「賞味期限 09.11.15」の記載のほか、原材料名、保存方法及び製造者の住所・電話番号などが表示されている。また、該商品の個包装されたものの写真には、表面に「長者ゆべし」及び「四季菓秀亀屋」の文字が表示され、裏面に「商品名 長者ゆべし」及び「製造者 合資会社亀屋菓子店」の記載のほか、原材料名、保存方法及び製造者の住所・電話番号などが表示されている。 乙第12号証は、タイトルは「証明願」とするものであるが、「『長者』の標章を付した『ゆべし』を平成19年10月4日から現在に至るまで、『道の駅 南相馬(福島県南相馬市原町区高見町2-30-1)』で販売した。」旨を内容とする商標権者に対する平成21年10月29日付けの「株式会社野馬追の里」による販売証明書(写し)である。 乙第13号証は、タイトルは「証明願」とするものであるが、「『長者ゆべし』商標を商品『ゆべし』について平成20年12月1日から現在に至るまで、『商標権者』が使用している。」旨を内容とする商標権者に対する平成21年11月13日付けの「原町商工会議所」の証明書(写し)である。 以上によれば、商品の包装に「長者せんべい」又は「長者ゆべし」の標章が付された商品「せんべい」又は「ゆべし」が商標権者により製造され、該商品が少なくとも平成20年12月31日ないし同21年9月15日において「株式会社野馬追の里」により販売されたことが認められる。 2 本件商標の使用についての判断 前記1により認定した事実によれば、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者がその指定商品中の「せんべい」及び「ゆべし」について、「長者せんべい」又は「長者ゆべし」の文字よりなる標章(以下「使用商標」という。)を使用したものということができる。 そして、「長者せんべい」又は「長者ゆべし」の文字は、「せんべい」又は「ゆべし」の文字が商品の普通名称を表したものであり、使用標章にあって、自他商品の識別機能を果たすのは、その余の「長者」の文字にあるものと認められる。 しかして、本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、漢字の「長者」は、約2文字分の間隔を設けて縦書きされており、その右傍に近接して平仮名5文字が「よ」の文字を除き漢字とほぼ同じ大きさにより縦書きされているものである。そして、「ち」の文字は「長」の文字より上に、「や」の文字は「者」の文字より下に、それぞれ約半文字分ずれ、また、「よ」の文字は他の文字より縦横それぞれ約7割程の長さよりなる大きさで左方にずらして配置されており、「長者」の漢字と無関係に併記されているものであると直ちに看取されるものではない。また、本件商標は、構成中の「長者」の文字が、表音式表記によれば「チョオジャ」と表す場合があること(乙第17号証)、及び、後述のとおり、本件商標が登録出願・設定登録された昭和45年ないし同47年当時における平仮名、特に拗音に用いる「や、ゆ、よ」の小書きに係る仮名遣いの状況をも考慮すれば、かかる構成からなる本件商標にあっては、構成中の「ちょおじや」の平仮名をほかの漢字「丁子屋」等に置き換えなければならない格別の事情を見いだすことはできないから、「ちょおじや」は、「長者」の振り仮名として機能する部分であるというを相当とする。 してみれば、使用標章は、本件商標と社会通念上同一の商標であると評価することができる。 3 請求人の主張について 請求人は、本件商標における「ちょおじや」の文字中の「じや」の文字は拗音の「じゃ」ではないことを主な理由として、「ちょおじや」と「長者」の文字間には一対一対応の関係がなく、使用標章と本件商標とは社会通念上の同一性を欠くことから、本件商標は不使用である旨、主張している。 しかしながら、本件商標は、前記1のとおり、昭和45年10月8日に登録出願、同47年8月2日に設定登録されたものであるところ、拗音に用いる「や、ゆ、よ」の小書きとの関係についてみるに、昭和21年11月16日内閣告示第33号の「現代かなづかい」において「拗音をあらわすには、[や]、[ゆ]、[よ]を用い、なるべく右下に小さく書く。」との記載があり、そして、同61年7月1日内閣告示第1号においても、拗音の項に「〔注意〕拗音に用いる『や、ゆ、よ』は、なるべく小書きする。」、前書きに「3 この仮名遣いは、科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。」との記載があることを考慮すると、本件商標が登録出願・設定登録された当時において、拗音に用いる「や、ゆ、よ」について、小書きしなければならないという意識は必ずしも強いとはいえない状況にあったといえる。 そして、本件商標は、構成中の拗音「ちょ」の「ょ」が「ち」の右下でなく左下に表されていること、及び現在の表記状況でいえば「う」と表記されるべきところを「お」で表記していることをも併せ考慮すれば、「ちょおじや」の部分が商標権者の「長者」の漢字に対する振り仮名としての平仮名の表記方法の一つであったと考えることができるものであり、「じや」の部分についても拗音を表したものと評価することが必ずしも否定できないから、前記2のとおり判断するのが相当であり、請求人の主張は、採用することができない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者がその請求に係る指定商品に含まれる前記商品について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用をしていたことを証明したものと認めることができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
<別紙> 本件商標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
審理終結日 | 2011-02-18 |
結審通知日 | 2011-02-23 |
審決日 | 2011-03-25 |
出願番号 | 商願昭45-106320 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(130)
|
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
井岡 賢一 |
特許庁審判官 |
末武 久佳 酒井 福造 |
登録日 | 1972-08-02 |
登録番号 | 商標登録第974493号(T974493) |
商標の称呼 | チョージャ |
代理人 | 加藤 恭介 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 神保 欣正 |
代理人 | 福田 伸一 |