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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X14
管理番号 1234934 
審判番号 無効2010-890033 
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-04-23 
確定日 2011-03-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第5268247号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5268247号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、平成20年7月22日に登録出願、第14類「身飾品,時計,キーホルダー,根付」を指定商品として、同21年8月10日に登録査定、同年10月2日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第97号証及び資料1ないし資料13を提出した。
1 請求の理由
(1)無効理由について
本件商標は、少なくとも登録出願・登録査定の両時において、請求人の商標として全国的に著名な「モカソフト」と同一の文字列をその下段に顕著に有し、かつ、請求人が1969年以来今日に至るまで請求人商標「モカソフト」を使用して事業を継続してきた場所を示す「軽井沢」の文字列を上段に表記したものであるから、明らかに請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生じさせるおそれがある商標であって、商標法第4条第1項第15号及び同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきである。
(2)具体的理由
請求人は、本件商標の不登録性を明らかにするため、請求人の商標「モカソフト」が請求人の永年使用により自他商品役務識別力を備えるに到ったものであることを説明した上で、本件商標が請求人の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがあるものであることを主張する。
(3)請求人商標「モカソフト」の自他商品役務識別力
ア 請求人商標「モカソフト」を普通名称であるとする被請求人の主張が合理的根拠を欠いていること
被請求人は、本件商標の審査における上申書及び意見書において再三にわたり請求人商標「モカソフト」が普通名称であるとの主張を繰り返すものであるが、これは誤りである。
ある商標が普通名称に該当するか否かは、当該商標を使用する商品との関係で決定されねばならないところ、被請求人主張はこの商品を特定することなく又はすり替えて立論するものである。
被請求人の本件商標の登録出願における経緯に関する主張は、「モカソフト」から「モカ」を抽出してこれは商品「ソフトクリーム」の「味」や「原材料」といった品質を意味するといいながら、他方では「モカソフトクリーム」自体が普通名称であるというのであるから、双方においてまったく整合性を欠くものである。
対照的に被請求人は、「ソフトクリーム」の語については、例えば「ソフトアイスクリーム」の略語であるなど、これに何らの説明も加えていない。このことは、被請求人自らが「モカソフトクリーム」と「ソフトクリーム」をまったく性質の異なる語として認識していることを如実に物語るものである。
実際、商品「菓子及びパン」について登録出願された商標「モカソフト」が(無論、商標法第3条第1項第1号への言及は一切なく)商標法第3条第1項第3号及び同4条第1項第16号に該当するとして拒絶されているという事実(甲第2号証)に照らしても、被請求人主張が一般世人の感覚からは大きく逸脱したものであるということが窺われる。もちろん「モカソフト」はおろか「モカソフトクリーム」を指定商品・指定役務に記載する商標登録例は一つも見当たらない(甲第3号証)。
請求人商標「モカソフト」を普通名称とする被請求人主張は誤りである。
イ 請求人商標「モカソフト」には永年使用による自他商品役務識別力が備わること
請求人商標「モカソフト」は、そもそも請求人創業者である金坂景助の発案による不可分一体の新語であるが、いずれにしても同商標には既に請求人の永年使用による強大な自他識別力が生じている。
請求人創業者である金坂景助は、1948年(昭和23年)東京都中央区日本橋室町に請求人会社を設立した後、請求人は、1952年(昭和27年)に軽井沢千ヶ滝店、兜町店、1954年(昭和29年)に軽井沢旧道店、1972年(昭和47年)浦安店、1975年(昭和50年)六本木店、1978年(昭和53年)葛西店、1983年(昭和58年)世田谷店、1994年(平成6年)愛宕店、1997年(平成9年)長浜店、1999(平成11年)三田店、渋谷店(東急百貨店本店地下1階)、横浜元町店、2000年(平成12年)軽井沢プリンスショッピングプラザ店、2002年(平成14年)鎌倉店、2007年(平成19年)軽井沢ツルヤ店、2009年(平成21年)沖縄三越店、上田ツルヤ店と次々に店舗をオープンさせ、営業地域の拡大を行った。このさなか1969年(昭和44年)には、同人と請求人代表者鳴島佳津子による共同研究の末、自社焙煎の深煎りコーヒーを使用したコーヒー味のソフトクリームを完成し、これを「モカソフト」と名付けて発売したところ、たちまち請求人の看板メニューとなった。以後、売上は毎年のように伸びて1988年(昭和63年)頃には軽井沢旧道店において1日3,000個を売る店舗に成長した(1日の売上が100万円を超すこともあった。)ため、積極的に催事などで全国百貨店に販売網を増やした。また、1993年(平成5年)頃より自社通信販売においても「モカソフト」の販売を開始し、ヨシケイ開発、大丸百貨店、松坂屋百貨店のギフトとしても取扱われるなど、全国各所で「モカソフト」の製造販売を継続した。その結果、ミカド珈琲といえばモカソフト、モカソフトといえばミカド珈琲として、その優れた品質と共に請求人商標「モカソフト」が広く需要者及び取引者間において認知されるようになったものである。
上記の内容に関し、請求人商標「モカソフト」に関する広告や評判を掲載した新聞、雑誌、書籍、テレビ番組など(甲第4号証ないし甲第97号証)のとおりである。
そして、上記甲各号証の内容に鑑みれば、請求人商標「モカソフト」には、需要者及び取引者の極めて大きな信用が化体していることが明らかであり、同商標が完全に自他商品役務の識別標識として機能していることが分かる。
請求人商標「モカソフト」に自他商品役務識別力が備わることは明白である。
(4)本件商標は請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあること
本件商標は、請求人商標「モカソフト」と同一の文字列に地名を表す「軽井沢」の文字列を結合してなるものであるが、「モカソフト」の文字列を明確に認めることができ、当該文字列を既成語の一部として有するものでもないため、請求人商標「モカソフト」に類似する(商標審査基準)。
そして、本件商標の指定商品「身飾品,時計,キーホルダー,根付」が、土産物店で取り扱われることの多い商品であることはよく知られた事実である。また、請求人の業務に係る商品・役務の需要者が多数存する軽井沢が日本有数の避暑地・観光地であって、そこには数多くの土産物店が存在することも周知の事実である。よって、請求人の業務に係る商品・役務の需要者と本件指定商品の需要者は少なからず共通している。
このため、請求人の商品・役務の需要者が軽井沢にある請求人店舗を訪れた後にその足で付近の土産物店へ入り本件商標の付された上記指定商品を目にしたときは、これを請求人と経済的又は組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であると誤って認識することは勿論、まさに請求人の業務に係る商品であると狭義の混同をしてしまうことも容易に想定される。また、軽井沢でなくとも、軽井沢に請求人の代表的店舗が存することを知る請求人の商品・役務の需要者であれば、各土産物店において本件商標を付した上記指定商品を目にして出所混同を来すおそれのあることは明らかである。本件商標の登録を維持するということは、請求人商標「モカソフト」について請求人が蓄積した業務上の信用に対するただ乗り希釈化を許容するものに他ならず、到底容認されるべきものではない。
本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同46条の適用によりその登録を無効とされるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)はじめに
請求人が提出した審判請求書は、永年に亘る商行為の中で需要者及び取引者より寄せられるに至った業務上・営業上の信用の維持を図るため、被請求人による請求人商標へのただ乗り希釈化からこの信用の毀損が回復不能となることを防ぐため、そして出所混同の弊害から日本全国に存する上記需要者等の利益を保護するため、その商標使用と事業活動の全歴史を背景に主張するものである。
(2)請求人商標「モカソフト」に自他商品役務識別力が備わること
ア 自他商品役務識別力に関する被請求人主張の誤り
請求人商標「モカソフト」が少なくとも本件商標の出願・査定の両時において全国的に周知著名であることは、請求人の提出した証拠(甲第4号証ないし甲第97号証)により既に明らかである。
ところが、これに対し被請求人は、答弁書2頁11行及び同3頁24行において、請求人商標「モカソフト」が普通名称であると立論するため本件審判審理に商標法第3条第2項の規定を持ち出すものであるから、まずはこれから正していく。
本件審判審理の対象はいうまでもなく商標法第4条第1項第15号との関係における本件商標の登録性の有無にある。したがって、本件審判審理においては、商標法第4条第1項第15号の適用に関する審査基準を用いるべきである。
そして、商標法第4条第1項第15号の立法趣旨(後掲「レールデュタン事件」最高裁判決参照、資料4)に鑑みると、請求人商標「モカソフト」の周知著名性の認定については、商品「ソフトクリーム」ないし役務「ソフトクリームの提供」について永年使用される請求人商標「モカソフト」が自他商品役務識別力を獲得したかどうか、すなわち請求人商標「モカソフト」が請求人の商品又は営業(役務を含む。)の表示として日本国内に広く認識されているかどうかの問題として、請求人商標「モカソフト」に生ずる商品表示性(不正競争防止法第2条第1項)の有無が考慮されるべきなのである。被請求人主張のように出願商標に対する商標法第3条第2項の規定を持ち出す余地など一切ない。この点については、まさに被請求人主張と同様の主張に対し「理由がない」としてこれを明快に破棄した高裁判決が存する(東京高判昭45・4・28 長崎タンメン事件、資料5)。
もちろん、被請求人商標「モカソフト」に自他商品役務識別力が備わることは、当該商標の商品等表示としての使用事実とその日本全国における周知著名性を示す甲第4号証ないし甲第97号証によって十分に明らかにされるとおりである。そして、当該各号証が請求人商標「モカソフト」の商標としての使用態様、使用回数、使用頻度、使用期間及びその周知著名性を示すものであることはいうまでもない。被請求人も「甲第4号証以下の証拠では請求人のソフトクリームが人気があり有名になったと、雑誌等に記載されている」などとして積極的に認めるところである。また、請求人は本件審判請求後も引き続き請求人商標「モカソフト」を使用した事業活動を行うとともに各種媒体等にてその営業活動を継続的に展開しており(資料8ないし資料14)、請求人商標「モカソフト」に対する需要者等の信用が現に拡大していることは事実であって想像にも難くない。
被請求人主張は、「普通名称」、「品質表示」、「自他商品識別力」、「特別顕著性」の各概念に対する誤解ないし無理な曲解からあらぬ方向を向いてしまったが、根底から理由のないものである。
イ 被請求人は商標法第3条その他の法律についても不合理な解釈をしていること
被請求人は、請求人商標「モカソフト」が普通名称と品質表示のいずれに当たるかは商標法第3条第2項との関係でも「何ら異なるところはない」と主張する。
しかしながら、同項は「前項第三号から第五号までに該当する商標」と明記してその適用範囲を明確にするものである。したがって、永年使用により自体商品役務識別力を肯定される可能性があるという極めて重要な点において、同法第3条第1項第3号に該当する商標(品質等表示)と同法第3条第1項第1号に規定する商標(普通名称)がそれらの性質をまったく異にすることは明白である。
また、被請求人は、請求人が、「モカソフト」と表示する他者に対し不正競争防止法に基づく訴訟を提起していないことをもって、請求人自身が請求人商標「モカソフト」を著名でもなく周知でもないことを自認している査証であると主張する。しかし、権利者がいつ誰に対して権利を行使するかは権利者の自由であることはいうまでもない。権判者が権利行使をしないことによる不利益は民法上の時効など、法的に明文化された場合に限ることは社会通念上も常識であり、他者に対して権利行使をしないことをもって、権利がないことを自認しているなどという主張は法的にはあまりにも稚拙というほかない。著名な商標はなんらかの形で世のなかでただ乗り(フリーライド)される危険があるが、それを逐一排除していくことは現実に不可能である。被請求人は請求人商標「モカソフト」が殊に軽井沢において知名度を有している実態を熟知しつつあえて本件商標を登録しようとしている点において悪質性が著しいことから、請求人は、本件審判請求に及んでいるのである。
ウ 被請求人の例え話は当を失していること
被請求人は、「チョコレートパン」、「メロンパン」、「バニラソフト」、「チョコソフト」、「かた焼きそば」など、自己の主張に必要と考えたであろう各種の商標をあれこれと例示しながら、これらが一律普通名称であると称し、請求人商標「モカソフト」が「これと同様に…普通名称であると理解される。」と結論する。
しかしながら、「チョコレートパン」、「メロンパン」、「かた焼きそば」に到っては被請求人自身がこれまで再三主張してきた略称性の要素さえ没したものである。しかも、上記各商標が普通名称といえることについて、被請求人は何らの論証も開示しない。商標の不登録性を審理するに際し個別具体的な事情に対する慎重な検討が不可欠であることは、商標審査基準も明確にするところである。
もっとも、これについて被請求人は、答弁書3頁2行以下に「『チョコレートパン』や『メロンパン』は、特定種類のパンの普通名称であり、これらの表示におけるチョコレートやメロンが品質表示であると理解されることはない。」と述べる。述べたきりで後にも先にもその論拠を一切示すことない。むしろ需要者等の通常有する注意力を基準とすれば、「チョコレートパン」と見聞きしてこれを「材料の一部にチョコレートを含有してなるパン」又は「チョコレートの風味を有するパン」と考えない者の方がいないのではなかろうか。
いずれにせよ請求人商標「モカソフト」は、被請求人主張に拠ると否とを問わず、どのように解釈してもこれが普通名称と把握されることなどあり得ない。請求人は、少なくとも、「モカソフト」の文字列からなる他人の出願商標が商標法第3条第1項第3号に規定する商標に当たるとして拒絶された事例を明確に示している(甲第2号証)。
エ 商標の使用態様と構成態様に関する被請求人主張の混乱
また、被請求人は、答弁書において、「請求人は、請求人が使用している商標『モカソフト』は、永年使用による自他商品識別力が備わっているとして種々の雑誌等を証拠として提出しているが、これらはいずれもミカド珈琲を表す文字と共に『モカソフト』の名称が使用されていることから、…『モカソフト』が特定種類の商品の普通名称として使用されているに過ぎないものである。」と主張する。また斯かる主張は、答弁書において、「モカソフトは普通名称として使用されている」や「モカソフトは普通名称として記載されている」など、いくつかのかたちを見せながらおおよそ同じ意味合いに繰り返されている。
そもそも、商標が商品との関係においてその普通名称に当たるかどうかは商標の構成態様の問題である。他方、商標の使用が商標としての使用に当たるかどうかは商標の使用態様の問題である。仮に構成態様に係る主張と解すれば、被請求人の上記主張は甲第4号証ないし甲第97号証とは何ら関係がない話ということであり、しかも中身もそれまでの単なる繰り返しに過ぎない。とはいえ使用態様に係る主張と善解するにも、商品表示・営業表示としての使用態様に関する主張が何一つ示されていないので、反論としての体さえなしていない。
いうまでもなく、答弁書における被請求人主張が甲第4号証ないし甲第97号証によって明らかにされる請求人商標「モカソフト」の永年使用の事実とその周知著名性の存在に影響を与えることはない。
この点、甲第4号証ないし甲第97号証の存在に対し疑義を呈するならば被請求人は、請求人商標「モカソフト」が、商品等表示として使用された結果、商標法第3条の規定とは無関係に、保護されるべき商品表示性を獲得する場合があるということ、及び、商標の構成態様と使用態様とが別論であること、これら2点を正しく理解した上で合理的かつ論理的に主張すべきである。
オ 小括
以上のとおり、請求人商標「モカソフト」の請求人による永年使用が認められること、請求人商標「モカソフト」が請求人の商標として全国的に周知著名であること、請求人商標「モカソフト」に自他商品役務識別力が備わることは明白である。そして、本件商標が請求人の商品及び役務との関係で出所混同を生ずるおそれがあるということは次に述べるとおりである。
(3)請求人の業務に係る商品及び役務と本件商標「軽井沢 モカソフト」は混同を生ずるおそれがあること
ア 商取引の実情に関する被請求人主張の誤り
請求人商標「モカソフト」と本件商標「軽井沢 モカソフト」の著しい類似性、請求人の業務に係る商品・役務と本件商標の指定商品における需要者層の共通性、及び本件商標「軽井沢 モカソフト」が需要者等に対し出所混同(広義・狭義)による不利益を与えることの蓋然性については、本件審判請求書において詳細に述べたとおりである。
これに対し被請求人は答弁書において、本件指定商品「身飾品,時計,キーホルダー,根付」が土産物屋で扱われるケースが少ないということを前提にした上で「よって、本件登録商標の指定商品の需要者は、ソフトクリームの需要者とは異なる。」と結論し、続けて「本件登録商標の指定商品は飲食物とは全く関係のない商品であり、ソフトクリームの製造販売業者が取り扱う商品と誤認混同を生じる余地はない。」などと述べている。本件指定商品が土産物店で取り扱われることが少ないとはおよそ常識に欠ける無理な解釈であるから、被請求人主張がその前提において誤りを有しているということは明らかである。
イ 「混同」の意義と判断基準
ところで、商標法第4条第1項第15号の規定については、その一般的な意義を明らかにする最高裁判決が存在する(平成10年(行ヒ)85 審決取消請求事件 商標権「レールデュタン」平成12年7月11日最高裁判所第三小法廷、資料4)。
本件商標「軽井沢 モカソフト」と請求人商標「モカソフト」の間で出所混同を生ずるおそれがあることは、本件審判請求書において述べたとおり明らかなところである。被請求人は「モカソフト」に関する僅かばかりの使用例をたてに請求人商標「モカソフト」に寄せられる信用の全否定を試みるが、審査基準においても「他人の標章の周知度(広告、宣伝等の程度又は普及度)の判断に当たっては、周知度が必ずしも全国的であることを要しないものとする。」と念を押して確認され、かつ、上記判決に説かれる商標法第4条第1項第15号の規定の趣旨に照らせば、出所混同の蓋然性は明らかである。そして、いうまでもなく、請求人商標「モカソフト」は、請求人の歴史そのものであり、かけがえのないものである(資料7)。
(4)請求人商標「モカソフト」に係る事業活動・営業活動が請求人によって現に継続されていること
請求人が継続的に請求人商標「モカソフト」を使用している事実に関し、その一部を提示する(資料8ないし資料13)。
各資料から、請求人商標「モカソフト」の周知著名性と需要者等より寄せられる信用が日々拡大しているということは明らかである。
(5)むすび
以上のとおりであって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第21号証を提出した。
1 請求人は、本件商標について、請求人の商標として全国的に著名な「モカソフト」の文字に「軽井沢」の文字を二段書きに表記したものであるから、商標法第4条第1項第15号及び同法第46条の規定によりその登録が無効とされるべきであると主張する。
しかしながら、そもそも「モカソフト」の文字は、本件商標の登録出願時にも登録査定時にも請求人の商品であるソフトクリームを表す商標として識別力などなく、また請求人の使用により商標法第3条2項による使用による特別顕著性も生じていない。
したがって、「モカソフト」が請求人の商標として著名となる余地もない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当することもない。
(1)本件商標は、商品ソフトクリームについての普通名称であることなどから、商品ソフトクリームについては識別力を有しないことについて
請求人は、「被請求人の『モカソフト』は商品ソフトクリームの普通名称であるとの主張が誤りである」と反論する。
「モカ」がコーヒー味そのものを指し「ソフト」がソフトクリームの略称であるならば「モカ」はソフトクリームの「品質」ないし「原材料」に該当し、「モカソフト」は全体として商品ソフトクリームの品質等表示にすぎないということであると主張する。
しかしながら「チョコレートパン」や「メロンパン」は、特定種類のパンの普通名称であり、これらの表示におけるチョコレートやメロンが品質表示であると理解されることはない。
これと同様に「モカソフト」も特定種類のソフトクリームの普通名称であると理解される。
この事実は、バニラ味のソフトクリームが「バニラソフト」と呼ばれ(乙第1号証及び乙第2号証)、チョコレート味のソフトクリームが「チョコソフト」と呼ばれ(乙第3号証)ている事実からも明らかである。
確かに、甲第2号証においては「モカソフト」の文字中における「モカ」の文字は、コーヒー味を表すものであると判断されているが、これは全体として、特定の種類のソフトクリームの普通名称であるとして拒絶理由通知を出すよりも、「モカ」は、商品の品質を表示するにすぎないとの理由で拒絶理由通知を出したほうが争いにくいことによるものである。
いずれにしても、「モカソフト」全体を特定種類のソフトクリームと理解するか「モカ」の部分は品質表示と理解するかによって何ら異なるところはない。
全体を普通名称だとした場合、使用によって特別顕著性が生じたような場合には、最早普通名称ではなくなり、登録を受けられることになる。
これに対し、「モカ」の部分を品質表示だとしても使用によって特別顕著性が生じれば商標法第3条第2項の適用が認められ登録が認められることになる。結局いずれと理解しても同様の結果となる。
(2)商品ソフトクリームについて「モカソフト」は、特定の種類のソフトクリームを表す名称(または特別顕著性がない商標として識別力が認められない)であることは次の事実から明らかである。
「モカソフト」の表示は、我が国において地域を問わず、従前から今日に至るまで普通名称として使用され続けてきている(乙第4号証から乙第9号証はそのほんの一例である。)。
請求人が主張するように、「モカソフト」は、請求人のソフトクリームを表示するものとして自他商品識別力(使用による特別顕著性が発生している場合も含む。)が認められ周知となっているのであれば、請求人は、被請求人に対し、本件商標の無効審判を請求する前に、これらの「モカソフト」商標の使用者に対し、不正競争防止法第1条第1項第1号又は第2号に基づく差止請求及び損害賠償の請求がなされていてしかるべきである。
なぜならば、本件商標は、ソフトクリームとは無関係な商品を指定商品として登録を受けているのに対して、前記「モカソフト」商標の使用者は、ソフトクリームについて「モカソフト」商標を使用しているからである。
請求人がソフトクリームについて「モカソフト」の名称を使用している業者に対し、不正競争防止法に基づく訴訟を提起していないという事実は、請求人自身が「モカソフト」が請求人のソフトクリームを表す商標として著名でもなく周知でもない(識別力がない)ことを自認している査証である。
(3)請求人は、請求人が使用している商標「モカソフト」は、永年使用による自他商品識別力が備わっているとして種々の雑誌等を証拠として提出しているが、これらはいずれもミカド珈琲を表す文字と共に「モカソフト」の名称が使用されていることから、全体として自他商品識別力が認められているケースか、さもなければ「モカソフト」が特定種類の商品の普通名称として使用されているにすぎないものである(甲第3号証ないし甲第97号証)。
甲第4号証以下の証拠では、請求人のソフトクリームが人気があり有名になったと、雑誌等に記載されているだけである。○○飯店のかた焼きそばが有名になったとして「○○飯店の有名なかた焼きそば」と記載されているのと全く同様である。
「かた焼きそば」はあくまで普通名称である。
例えば、甲第41号証では、「メニュー」として「モカソフト」とならんで「コーヒー(ブレンド)」が記載されている。
また、甲第69号証でも「モカソフト」とならんで「ブレンドコーヒー」及び「チーズケーキ」の値段が記載されている。
請求人は、「コーヒー(ブレンド)」も請求人の著名商標であると主張していることになる。
(4)本件商標の指定商品がソフトクリームを製造販売する請求人の商品と誤認混同を生じる恐れがないこと
本件商標は、身飾品、時計、キーホルダー、根付を指定商品とするものであり、これらの商品は、主に洋服店や時計屋で販売されており、土産物量で扱われるケースは少ない。
よって、本件商標の指定商品の需要者は、ソフトクリームの需要者とは異なる。
そもそも、本件商標の指定商品は飲食物とは全く関係のない商品であり、ソフトクリームの製造販売業者が取り扱う商品と誤認混同を生じる余地はない。
また、請求人が請求書で述べているように、請求人はソフトクリームを全国各所で販売しているようであり、請求人の商品と「軽井沢」の文字は関係がない。
そもそも、商標法第4条第1項第15号は、著名商標に関して適用されるものであり「モカソフト」の名称は、識別力自体がないことから、著名商標になれる余地もなく、請求人の主張は論外である。
なお、「軽井沢 モカソフト」が請求人の販売するモカソフトを表示する商標として使われていることは一切ない。
そもそも、請求人が登録を受けている商標は「ミカド珈琲のモカソフト」であり、他社の商品と識別する標識部分として「ミカド珈琲」の文字が表示されている(乙第13号証)。
インターネットで調べてみた場合においても、請求人が販売しているモカソフトのソフトクリームについては、「ミカド珈琲のモカソフト」又は「ミカドコーヒーのモカソフト」などミカドの文字が必ず表示され、他人の商品と区別されている(乙第14号証ないし乙第21号証)。
2 むすび
以上のとおり、「モカソフト」の名称は、請求人が主張するように、請求人の商品ソフトクリームを表示するものとして著名商標でなく周知商標でもなく、そもそも識別力を有するものではないことから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではなく、その登録が維持されるべきものである。

第4 当審の判断
1 本件商標
本件商標は、別掲に表示したとおり、「軽井沢」の文字と「モカソフト」の文字を上下二段に文字をずらして表してなるところ、「軽井沢」の文字は、「長野県東部、北佐久郡にある避暑地。」の意味を有し、「モカ」の文字は、「アラビア半島南西部イエメン産のコーヒー豆。酸味の強いのが特徴。かつては同国南西端のモカ港から輸出されていた。」の意味を有し、「ソフト」の文字は、「ソフト‐クリームの略。」の意味を有するものである(いずれも株式会社岩波書店:広辞苑第六版)。
2 提出された証拠について
(1)請求人の提出に係る甲号証及び資料について
甲第4号証ないし甲第97号証及び資料1ないし資料13によれば、以下の事実が認められる。
(ア)雑誌「non-no」((株)集英社 昭和49年8月5日発行)に、軽井沢の各店舗の所在を示す地図とともに「モカソフト(150円)のおいしさで有名なミカドコーヒー…」の記載がある(甲第4号証)。
(イ)「軽井沢/浅間・信濃追分/小諸」(日本交通公社出版事業局 昭和52年8月10日発行)の52頁の「ソフトクリーム」の見出しの下に、「ミカドコーヒー 銀座の入り口に近い喫茶店。ここの店先で売っている,ちょっぴり苦いモカソフトは行列ができるほど。150円。」の記載がある(甲第6号証)。
(ウ)「JTBのるるぶ情報版458/’92?’93エンジョイ軽井沢」(JTB 日本交通公社出版事業局 1992年5月1日発行)の103頁右下に、「ミカド珈琲/…やはり一番の名物は何といっても”モカソフト”。このモカ風味のソフトクリーム(400円)は、まろやかなおいしさでいつも大人気だ。」の記載がある(甲第18号証)。
(エ)「無敵のニッポンお遊びガイド/じゃらん/DE/信州/[1999年-2000年保存版]」(株式会社リクルート 平成11年7月23日発行)119頁の「3ミカドコーヒー」の見出しの下に、「モカソフトで有名な喫茶店。上質なコーヒーを使った香り高いソフトクリームを目当てに、たくさんの人々が行列を作る…モカソフト280円」の記載がある(甲第40号証)。
(オ)「[上撰の旅]/Series:14/長野・軽井沢」(株式会社昭文社 2000年4月初版発行)の3枚目の「自家焙煎のコーヒーとモカソフト/ミカドコーヒー」の見出しの下に、「自家焙煎のコーヒーが飲める店。テイクアウトができるモカ味のソフトクリームは行列ができるほどの人気で…/メニュー/モカソフト(店内)420円、モカソフト(テイクアウト)280円、コーヒー(ブレンド)420円」の記載がある(甲第41号証)。
(カ)「Visita/ビジータ/信州/2005」(JTBパブリッシング 2005年5月1日発行)3枚目の左下には、「ミカド珈琲旧道店/みかどこーひーきゅうどうてん」の見出しの下に、「…ドリップした珈琲をそのままソフトクリームにしたモカソフトが名物。…」の記載がある(甲第74号証)。
(キ)「るるぶ情報版/関東19通巻3832号 草津伊香保/四万軽井沢 ’10?’11最新版」(JTBパブリッシング 2010年2月1日初版発行)の55頁中段左側に、「モカソフトで/人気のコーヒー/専門店」「モカソフト300円/旧軽銀座の名物ソフトクリーム。」及び「ミカドコーヒー/軽井沢旧道店…」の記載がある(資料8)。
(ク)甲第97号証、資料12及び資料13は、ミカド珈琲の「モカソフト」が紹介されたテレビ番組を収録したDVDディスクである。
(ケ)請求人の提出に係るその他の証拠についても、前記の証拠とほぼ同様に、商品名とみられる「モカソフト」の記載等がある。
(2)被請求人の提出に係る乙号証について
乙第4号証ないし乙第9号証及び乙第14号証ないし乙第21号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人以外の「モカソフト」の使用について
「BishopCoffee」のウェブサイトにおいて、「[商品名]/ミックス・モカソフト 10ヶセット/…豊かな香りのコーヒーとクリームの絶妙なハーモニーのモカソフト、濃厚バニラソフトと本格モカソフトのハーフ&ハーフのミックスソフトを5個ずつ計10個セットでお届けします。…」の記載がある(乙第4号証)。
被請求人の提出に係る乙5号証ないし乙第9号証についても、前記の証拠とほぼ同様に、商品名とみられる「モカソフト」の記載等がある。
(イ)請求人の「モカソフト」の使用について
「ぺこちゃんの食いしん坊日記」のウェブサイトにおいて、「ミカド珈琲のモカソフト/ミカド珈琲のモカソフトは、…自家焙煎したコーヒー豆と生乳から作られているソフトでとても美味しい。/モカソフト 280円/【お店データ】ミカド珈琲 渋谷東急本店 B1F…/2002年08月08日(木)」の記載があり、メニューには、「◆ホットコーヒー ¥350/◆アイスコーヒー ¥350…/ミカド特選オリジナルメニュー/◆モカソフト ¥280/◆バニラソフト ¥280…」の記載がある(乙第14号証)。
被請求人の提出に係る乙15号証ないし乙第21号証についても、前記の証拠とほぼ同様に、商品名とみられる「モカソフト」の記載等がある。
3 「モカソフト」の文字について
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、雑誌、書籍などにおいて、「モカソフト」の文字は、「モカ風味のソフトクリーム」程の意味合いで、ソフトクリームの商品名として紹介されている。
また、被請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、「モカソフト」の文字をソフトクリームの商品名として使用しており、請求人以外の者も「モカソフト」の文字をソフトクリームの商品名として使用している。
してみれば、「モカソフト」の文字は、これをソフトクリームについて使用するときは、単にソフトクリームの商品名を表したにすぎない文字というべきであり、ソフトクリームについて自他商品の識別標識としての機能を果たさない文字といわざるを得ない。
(2)「モカソフト」の文字が、請求人の出所表示標識として機能するか否かについて
請求人及び被請求人から提出された証拠によれば、本件商標の登録出願時及び査定時において、請求人が使用する「モカソフト」の文字は、「ミカド珈琲」、「ミカドコーヒー」、「みかどこーひー」又は「MiKaDo Coffee」の各文字とともに使用されているものであって、単独で表された「モカソフト」の文字のみが、商品「ソフトクリーム」に関し、請求人の出所を表示する商標として使用されている事実を示すものはない。
したがって、「モカソフト」の文字のみでは、請求人の出所表示標識として機能しているものとは認められない。
4 本件商標の指定商品と請求人の使用商品との関連性等について
請求人が「モカソフト」の文字を使用する商品「ソフトクリーム」と本件審判請求に係る指定商品「身飾品,時計,キーホルダー,根付」とは、その原材料だけではなく、性質、用途又は目的が異なるものであり、また、取引者、需要者が共通する商品とはいえない。
5 まとめ
以上によれば、請求人以外の者が、「モカソフト」の文字をソフトクリームの商品名として使用しており、請求人も「モカソフト」の文字をソフトクリームの商品名として使用していることから、「モカソフト」の文字は、これを商品「ソフトクリーム」について使用するときは、単にソフトクリームの商品名を表したにすぎない文字というべきであり、これが、請求人の商標として認識されているものでないことは明らかである。
したがって、「モカソフト」の文字のみでは、請求人の出所表示標識として機能しているものとは認められない。
さらに、本件商標の指定商品と請求人の使用商品とは、たとえ「ソフトクリーム」と「身飾品,時計,キーホルダー,根付」とが観光地において販売されている場合があるとしても、それらは、原材料、性質、用途、目的、取引者、需要者等が異なる別異の商品である。
そうとすれば、商標権者が、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして「ミカド珈琲のモカソフト」又は「ミカドコーヒーのモカソフト」等を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
6 むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標





審理終結日 2010-11-11 
結審通知日 2010-11-30 
審決日 2011-02-01 
出願番号 商願2008-64140(T2008-64140) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X14)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2009-10-02 
登録番号 商標登録第5268247号(T5268247) 
商標の称呼 カルイザワモカソフト、モカソフト、モカ 
代理人 原 慎一郎 
代理人 大井 法子 
代理人 樋口 盛之助 
代理人 北村 行夫 
代理人 会田 恒司 
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