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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y42
管理番号 1234882 
審判番号 無効2009-890119 
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-11-06 
確定日 2011-03-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4930861号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4930861号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4930861号商標(以下「本件商標」という。)は、「みずほ」の平仮名文字を標準文字で表してなり、平成17年5月12日に登録出願、第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務及びこれに関する情報の提供,工業所有権に関する情報の提供,訴訟事件その他に関する法律事務及びこれに関する情報の提供,訴訟に関する情報の提供,登記又は供託に関する手続きの代理及びこれに関する情報の提供,登記又は供託に関する情報の提供,社会保険に関する手続の代理及びこれに関する情報の提供,社会保険に関する情報の提供」を指定役務として、同年12月14日に登録査定、同18年2月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4547241号商標(以下「引用商標1」という。)は、「MIZUHO」の欧文字を標準文字で表してなり、平成11年12月16日に登録出願、第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同14年3月1日に設定登録されたものである。
同じく、登録第4613546号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成13年7月19日に登録出願、第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同14年10月18日に設定登録されたものである。
同じく、請求人及び請求人を中心とする請求人グループが「銀行業務、信託業務、証券業務、保険業務、シンクタンク、コンサルティング業務、べンチャーキャピタル業務、貸金業務、不動産仲介業務、事務受託業務、事務代行、人材派遣業務、システム管理業務、企業財務アドバイザリー業務、信用保証業務、年金及び資産運用の研究」(以下「請求人役務」という。)について、平成11年12月より継続的かつ全国的に使用しているとする商標(以下「引用商標3」という。)は、「みずほ」の平仮名文字よりなるものである。
以下、これらを一括して「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第31号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)請求の利益について
請求人は、商標「MIZUHO」(2009-054903号)を本件商標と同一又は類似する役務について出願している(甲第4号証)。したがって、本件審判を請求することについての利害関係を有する。
(2)商標法第4条第1項第8号について
ア 請求人について
請求人は、平成11年12月に株式会社第一勧業銀行、株式会社富士銀行及び株式会社日本興業銀行の3行によって締結された全面的統合に関する契約に基づき、平成12年9月に設立上場された株式会社みずほホールディングス(現社名株式会社みずほフィナンシャルストラテジー)を前身とし、株式会社みずほ銀行、株式会社みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行株式会社、みずほ証券株式会社、みずほインベスターズ証券株式会社の各子会社を擁する金融持ち株会社である(甲第6号証の1)。
平成15年3月に請求人の子会社となった株式会社みずほホールディングスを含め、請求人を中心とする企業グループは、銀行業、証券業、その他の事業を幅広く行っている。
上記各社のほか、平成17年3月末現在で、請求人グループには、みずほ総合研究所株式会社、みずほ情報総研株式会社、みずほキャピタル株式会社、株式会社みずほアドバイザリー等、その他の企業が属しており、請求人グループには、国内78社、海外70社等が属している(甲第6号証の2)。
そして、平成17年3月期における請求人グループの連結総資産は1,430,762億円に達し、日本国内外に4万5千人超の従業員を擁するとともに(甲第6号証の2)、請求人グループが全国各地に有する営業拠点は、株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社みずほ銀行、株式会社みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行株式会社、みずほ証券株式会社及びみずほインベスターズ証券株式会社が有するものだけでも本支店607店、出張所100店、代理店23店に及ぶ。請求人グループは、かかる営業ネットワークを通じて全国的に事業を展開し、銀行業、証券業、その他の事業に係る役務を提供している(甲第6号証の3)。
イ 請求人及び請求人グループの略称「みずほ」の著名性
平成11年12月22日に株式会社第一勧業銀行、株式会社富士銀行及び株式会社日本興業銀行の3行の統合によって生まれる企業グループの名称が「みずほフィナンシャルグループ」(英文名称「Mizuho Financial Group」)であることが公表されるや否や(甲第7号証)、「みずほフィナンシャルグループ」は、「みずほ」と略称されて、大々的に報道された。すなわち、平成11年12月22日から翌日にかけて、日本全国の新聞紙上において「統合3行名称は『みずほ』」(甲第8号証の1)、「新行名は『みずほ』」(甲第8号証の2)、「持ち株会社名『みずほ』」(甲第8号証の3)、「持ち株会社名称『みずほ』に決定」(甲第8号証の4)、「3行統合『みずほ』が事業戦略」(甲第8号証の5)、「統合3行『みずほ』グループ」(甲第8号証の6)、「統合3行『みずほ』」(甲第8号証の7)、「『みずほ』グループ業務純益1兆3500億円」(甲第8号証の8)、「統合3行が計画を発表新名称は『みずほ』」(甲第8号証の9)、「みずほが一気にトップ浮上」、「総合評価トップも『みずほ』」(甲第8号証の10)などと、「みずほフィナンシャルグループ」は、「みずほ」と略称されている。この結果、「みずほ」は、前記三行の統合によって生まれる新たな企業グループの名称の略称として即座に日本全国において受け入れられ、周知著名となった。
また、平成12年に株式会社みずほホールディングスが設立されるにあたっても、「『みずほ』発足前に駆け込み?」(甲第9号証の1)、「みずほ3行一斉に株主総会」(甲第9号証の2)「みずほ、発足へ最終準備」(甲第9号証の3)、「『みずほ』グループ、29日発足」(甲第9号証の4)、「『みずほ』初上場、84万9000円」(甲第9号証の5)、「みずほ株上場に買いが集中」(甲第9号証の6)、「みずほ3行完全統合へ戦略一体化」(甲第9号証の7)、「みずほ3行経営統合」(甲第9号証の8)、「『みずほ』持ち株会社が発足」(甲第9号証の9)、「みずほ発足」(甲第9号証の10)などの見出しの下、全国紙上において大々的に報道された。例えば、平成12年9月30日付け朝日新聞では「みずほグループ誕生」の見出しの記事中「『みずほ』とのよりよいリレーションシップが構築できることを強く期待している。」、「鉄鋼業界では・・・4社の主力行が『みずほ』になる。」、「『みずほ』からは何も言ってきていない。先方の出方をみて対処方法を考える」、「『みずほ』は、史上最大規模になってスタートする。」のように、「みずほフィナンシャルグループ」が「みずほ」と略称されている(甲第9号証の11)。平成12年9月30日付産経新聞では、「『みずほ』発足」の見出しの下、みずほホールディングスの上場が大きく報じられ、「日本のメガバンク(巨大銀行)時代の幕を開いた『みずほ』がいよいよ始動したのである」と記載されている(甲第9号証の12)。さらに、日本経済新聞では、平成12年9月26日から4日間にわたり、「みずほ始動」と題された特集記事が連載された(甲第9号証の13ないし16)。その後も一貫して「みずほフィナンシャルグループ」は、「みずほ」と略称されて一般に報道されている(甲第10号証の1ないし20)。
請求人は、平成15年1月8日に設立され、株式会社みずほホールディングスを完全子会社とした(甲第11号証)。上記のとおり、元々「みずほフィナンシャルグループ」が「みずほ」と略称されて広く認識されていたことと相まって、請求人は、設立当初より「みずほ」の略称をもって報道されている(甲第12号証の1ないし50)。
すなわち、甲第12号証の1ないし10をみると、平成15年を通じて、「みずほ、主幹事で6位」(甲第12号証の1)、「遺言信託、みずほ首位」(甲第12号証の5)、「『公的資金再注入はいらない』みずほ“復配宣言”の真意」(甲第12号証の6)、「みずほがS高」(甲第12号証の7の1)、「みずほストップ高」(甲第12号証の7の2)、「みずほストップ高」(甲第12号証の7の3)、「三井住友の消極姿勢でみずほ前田社長が急浮上」、「みずほにしてみれば・・・」、「みずほが協会長を引き受ける公算は大きい」(甲第12号証の8)、「みずほ前田社長が本誌と対決100分!」(甲第12号証の9)、「みずほ、オリコと金融商品」(甲第12号証の10)のように請求人が「みずほ」の略称をもって報道されている。
さらに、甲第12号証の11ないし32に示すとおり、平成16年においても請求人が「みずほ」の略称をもって報道されている。例えば、平成16年2月21日発行の「週刊東洋経済」では、「現場、顧客、識者からの改造論特集『みずほ』の作り方」の見出しをもって、「みずほが公的資金(劣後債など)返済に動き出した。」、「最大のみずほを最強にするのは、現場のグループ連携力しかない。」などと、請求人の事業活動が「みずほ」の略称をもって報道されている(甲第12号証の14)。平成16年3月24日付の日本経済新聞では、他の金融機関が「三井トラスト」、「横浜銀」及び「足利銀」の略称で掲載されているのと並んで、請求人は、「みずほ」と略称されて報道されている(甲第12号証の20)。平成16年9月15日付の日経金融新聞では、他の金融グループが「三井住友」、「三菱東京」及び「UFJ」の略称で掲載されているのと並んで、請求人は、「みずほ」の略称をもって報道されている(甲第12号証の27)。平成16年9月30日付の「夕刊フジ」では、「日興コーディアルみずほ傘下検討」との記事において、請求人が「みずほ」と略称されている(甲第12号証の28)。
甲第12の33ないし45に示すとおり、被請求人が本件商標を出願した平成17年においても請求人は、「みずほ」の略称をもって報道されている。例えば、「みずほ、ペーパーレス化」(甲第12号証の36)、「みずほ、富裕層向け新会社」(甲第12号証の37)、「信託銀 知財に照準 アニメの著作権 みずほ手がける」(甲第12号証の38)、「みずほ、個人部門で攻勢」(甲第12号証の40)、「みずほなど4行新経営健全化計画」(甲第12号証の44)、「みずほ公的資金6164億円返済」(甲第12号証の45)のように、請求人の略称として、一貫して「みずほ」が用いられている。
平成18年に入っても、「三菱UFJ みずほ 米に金融持ち株会社」(甲第12号証46)、「みずほ 公的資金 来月完済へ」(甲第12号証の47の1)、「みずほ来月4日にも公的資金完済」(甲第12号証の47の2)、「みずほ 8日NY上場」(甲第12号証の48)、「みずほ復活の第一歩」(甲第12号証の49)、「確定拠出年金の受託件数 みずほ首位奪還」(甲第12号証の50)のように、請求人が「みずほ」の略称をもって報道されている。
また、請求人においても、ディスクロージャー誌、CSRレポート、ホームページ等において、自らを「みずほ」の略称によって指標している。例えば、請求人が平成16年7月に発行した「2004ミニディスクロージャー誌」(甲第6号証の1)においては、「<みずほ>について。」、「<みずほ>は、金融サービスのさまざまな分野で、国内トップクラスの実績をあげています。」、「今年度につきましては『みずほの真価を発揮する一年』と位置づけ、みなさまのご期待にお応えできるよう、グループの総合力を最大限に発揮して<みずほ>の企業価値の一層の向上に総力をあげて取り組んでおります。」、「<みずほ>の現状についてお答えします」、「<みずほ>はどのような金融グループですか?」、「<みずほ>のブランドステートメントおよびブランドロゴ」のように、また、平成17年7月に発行した「2005ミニディスクロージャー誌」(甲第6号証の3)においては「<みずほ>について知ってください。」、「<みずほ>の現状についてお答えします」のように、さらに、「みずほフィナンシャルグループCSRレポート2005」(甲第6号証の4)においては、「<みずほ>のCSR」、「<みずほ>の経済的パフォーマンス」のように、請求人は、自身を「みずほ」と略称して記載している。そして、全国700拠点に及ぶ請求人グループの事業所においては、「MIZUHO」を図案化した引用商標2を表示した看板が大々的に掲示されている。
このように、請求人及び請求人グループは、その発足以来一貫して「みずほ」と略称されて全国的に報道されてきた。また、請求人及び請求人グループにおいても自ら「みずほ」の略称をもって自己を指称している。このことと、請求人及び請求人グループが提供する役務、とりわけ銀行業に係る役務が全ての需要者、取引者がその日常生活や事業活動において日常的にあまねく利用する役務であって、請求人がかかる役務を全国的に展開していることを合わせ考えると、本件商標の出願時である平成17年5月及び登録査定時である同年12月の時点において、「みずほ」が請求人及び請求人グループの略称として一般に受け入れられたものであって、かつ、全国的に著名となっていたことは明白である。よって、「みずほ」は、請求人の著名な略称にあたり、同時に、請求人グループの著名な略称にもあたる。
ウ 本件商標は、「みずほ」の標準文字よりなるものであるから、請求人の著名な略称及び請求人グループの著名な略称を含む商標である。
エ 請求人及び請求人グループが本件商標の出願・登録について被請求人に承諾を与えた事実は無い。
オ 以上のとおり、本件商標は、他人たる請求人の著名な略称及び請求人グループの著名な略称を含む商標であって、当該他人の承諾を得たものではないから、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標は、請求人及び請求人を中心とする請求人グループが銀行業務、信託業務、証券業務、保険業務、シンクタンク、コンサルティング業務、ベンチャーキャピタル業務、貸金業務、不動産仲介業務、事務受託業務、事務代行、人材派遣業務、システム管理業務、企業財務アドバイザリー業務、信用保証業務、年金及び資産運用の研究について平成11年12月より継続的かつ全国的に使用した結果、日本国内外の需要者取引者の間で周知著名となった引用商標との関係において、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
イ 引用商標の周知著名性
(ア)請求人の沿革について
請求人の沿革は、平成11年12月22日に公表された「3行統合による『みずほフィナンシャルグループ』の創設」と題されたプレスリリースに始まる(甲第7号証)。このプレスリリースにおいて、株式会社第一勧業銀行、株式会社富士銀行及び株式会社日本興業銀行は、3行の全面的統合に関する契約書に調印したこと、新しい総合金融グループの名称として「みずほフィナンシャルグループ」を採択したこと及び平成12年9月29日または10月2日を目標に持株会社としてみずほホールディングスを設立することを発表し、平成12年9月29日に、上記3行の株式移転により、完全親会社である株式会社みずほホールディングスが設立された。
その後、平成14年4月に上記3行が会社分割及び合併により、みずほ銀行及びみずほコーポレート銀行に統合、再編される一方で、みずほ証券及びみずほ信託銀行が株式会社みずほホールディングスの100%子会社となり、さらに、持株会社となった株式会社みずほホールディングスの資産を引き継いで、上記のとおり、平成15年1月8日に請求人が設立され、同年3月には請求人の普通株式が東京、大阪の両証券取引所に上場された。
(イ)請求人グループの事業内容・事業規模について
平成17年3月末現在で、国内78社、海外70社に及ぶ請求人グループに属する企業群が提供する請求人役務は、銀行業務、信託業務、証券業務、保険業務、シンクタンク、コンサルティング業務、ベンチャーキャピタル業務、貸金業務、不動産仲介業務、事務受託業務、事務代行、人材派遣業務、システム管理業務、企業財務アドバイザリー業務、信用保証業務、年金及び資産運用の研究の多岐にわたる(甲第6号証の2)。
そして、平成16年3月時点において、請求人グループの遺言信託受託件数10,440件は業界第一位、会員制サービス契約者数810万人・居住用住宅ローン残高9.4兆円は邦銀第一位、外国人投資家保有円カストディ預り資産残高シェア45%及び外為円決済受託先数シェア33%は邦銀第一位、国内公募事業債受託額15,710億円、シェア35.2%等法人向け業務において業界第一位、国内シンジケートローン組成実績7兆7,170億円、シェア40.4%は邦銀第一位であり、第9回債券アナリスト・エコノミスト人気調査(日経公社債情報主催)において総合順位第一位であった(甲第6号証の1)。
また、新聞雑誌等で報道された内容によってみても、平成15年時点において、請求人グループが有する法人顧客は取引先100万社、貸出先は大企業15,000社、中堅・中小企業は17万社、個人取引顧客は3000万口座に及ぶと報道された(甲第10号証の2)。平成16年の時点においてみると、請求人グループに属するみずほ銀行及びみずほコーポレート銀行の総資産合計は、世界の銀行中第二位の137兆円にのぼり、日本国内においては、上場企業の4割が主要取引銀行として、7割が取引銀行として請求人グループに属する銀行を利用しており、請求人グループは貸出金平均残高、居住用住宅ローン残高及び預金平均残高のいずれにおいても邦銀中一位と報道された(甲第12号証の14)。
(ウ)引用商標の使用事実について
請求人及び請求人グループは、引用商標1ないし3を、全国各地の本支店の店頭、新聞・雑誌・テレビコマーシャル等各種の媒体を通じた広告、ホームページにおいて大々的に使用してきた。甲第13の2ないし23は、新聞に掲載された請求人による広告の一部であるところ、掲載広告の左肩の目立つ部分に一貫して引用商標2が使用されている。
また、これらの広告においては、「<みずほ>がはじまる。新しい銀行がはじまる。」(甲第13号証の2)、「意欲に投資する。私たちは<みずほ>です。」(甲第13号証の3)、「そのために、<みずほ>自身も未来を描き、カタチにしていきたいと思っています。」(甲第13号証の4)、「私たち<みずほ>は、次々生まれるあなたの夢にあわせ実現へのプロセスをご提案し続けます。」(甲第13号証の5)、「<みずほ>は金融のノウハウを活かし、企業の排出権の取得を容易にする」、「<みずほ>はこの他にも排出権の創出をめざしているプロジェクトを・・・」、「<みずほ>は、そんな金融でありたいと思っています。」(甲第13号証の8)、「だから<みずほ>は金融教育に人と時間をかけています。」(甲第13号証の9)のように、引用商標3が使用されている。
このように、新聞、テレビを通じて大々的に行われた請求人による広告宣伝活動は、広く世の中一般の注意、関心を集め、風力発電事業への積極的な融資や温室効果ガス排出梅の創出を目指しているプロジェクトヘの取組等の環境問題に着目した事業活動の社会的意義と相俟って、第55回日経広告賞において環境広告賞・環境大臣賞を受賞した(甲第13号証の24)。
また、銀行をはじめとする金融機関の統合は、国民の一般生活及び企業活動に直接影響を及ぼす極めて重要な問題であるから、上に述べた平成11年12月22日のプレスリリースは、発表当時大きな話題となり、その後、報道された請求人及び請求人グループに関するニュースは、いずれも世間の注目を集めるところとなった。かかるニュースの発表等に伴い、引用商標が新聞、雑誌等(甲第8、9、10及び12号証、各枝番を含む。)やテレビ、ラジオ、インターネット等のニュースにおいて頻繁に登場するようになった結果、金融業関係者はもちろんのこと、一般の需要者・取引者において引用各商標は広く認識されたものとなった。請求人及び請求人グループが全国700拠点以上の本支店網を通じ、法人及び個人の顧客を幅広く対象として全国的に営業活動を展開しており、経済活動が高度に発展した今日において銀行をはじめとする金融機関が企業活動及び市民の日常生活のあらゆる場面において利用されている実情を考慮すると、引用商標は、請求人役務について使用されるものとして、本件商標の出願時において、人的範囲を制限することなく全国的に広く知られた極めて著名な商標となっていたことは明らかであり、その著名性は、今日に至るまで継続している。
ウ 本件商標と引用商標の類似の程度
引用商標1は、「MIZUHO」の欧文字を標準文字により横書きしたものであるところ、これよりは、「ミズホ」の称呼、「瑞々しい稲の穂」の観念を生じるとともに、前記(ア)に述べたとおり、平成11年12月以来、請求人グループに属する企業群が統一して使用する商標として、継続的かつ大々的に使用して周知著名なものとなっていることから、「みずほフィナンシャルグループ」の観念を生じる。
引用商標2は、「MIZUHO」の欧文字を図案化したものであり、引用商標1と同様に、「ミズホ」の称呼、「瑞々しい稲の穂」の観念を生じるとともに、著名な「みずほフィナンシャルグループ」の観念を生じる。
引用商標3は、「みずほ」の平仮名文字よりなるところ、引用商標1及び2と同様に、「ミズホ」の称呼、「瑞々しい稲の穂」の観念を生じるとともに、著名な「みずほフィナンシャルグループ」の観念を生じる。
しかして、本件商標は「みずほ」の平仮名を標準文字により横書きにしてなる商標であり、引用商標1及び2に極めて類似する商標であって、引用商標3とは、同一の商標である。
エ 本件指定役務と請求人役務事業の関連性、取引者、需要者の共通性
(ア)一般的に金融機関及び金融グループ会社においては、知的財産権を対象とする信託業務や、知的財産権・訴訟事件・法律に関する情報提供又は相談業務(コンサルティング)の提供、弁護士の紹介、遺言執行引受等の業務を行っている事実がある。また、各金融機関においては、預金者又は潜在的顧客を対象として年金相談会を定期的に開催するなど、社会保険に関する情報の提供や相談業務(コンサルティング)の提供を行っている事実がある。
(イ)知的財産権を対象とする金融サービスの広がり
平成17年4月8日付けニッキンでは、「メガバンクなど知財に新ビジネスモデル」の見出しのもと、「メガバンクグループが、特許権など知的財産分野で新たなビジネスを展開している」と報道され、「一部のメガバンクが国立大学などの研究室を訪問、大学の持つ特許など、最新の技術を海外を含めたネットワークを通じて取引先に紹介(中略)その際に企業から手数料を受け取るという、新たな知財ビジネスが生まれた」、「UFJ信託銀は大田区産業振興協会、大手法律事務所と“共同協働”で、同区内の中小企業の持つ特許権の管理・活用を行う。特許料の納付、実施権の付与、侵害など裁判対応-が主な業務。大企業に比べ、態勢面で難しい中小企業にとって、事務や訴訟などの負担が軽減される」と報道されている(甲第14号証の11)。また、平成17年2月22日付け日経金融新聞では、大阪市信用金庫が大阪市立大学、大阪工業大学と連携して、「技術相談、知的財産相談」を提供することが報道されている(甲第14号証の17)。
さらに、平成16年に信託業法の改正によって、受託財産の制限がなくなったことを受け、各金融機関が知的財産権を対象とする信託業務に注力していることが報道されている。例えば、平成17年4月12日付けの日本経済新聞には、「信託銀 知財に照準 アニメの著作権 みずほ手がける」の見出しの下、みずほ信託銀行がテレビアニメの著作権信託を始めることが報道されている(甲第14号証の19)。平成17年4月19日付け日経金融新聞には、信託協会会長が「昨年末の信託業法改正は、信託新時代の幕開けを告げる出来事」、「知的財産信託には大きな注目と期待の目が向けられている」と発言をしたことが報道されている(甲第14号証の18)。平成17年5月10日付けの日本経済新聞には、「昨年の法改正で、信託の対象が企業の特許など知財にも広がった」、「特許を侵害されたときに相手と交渉したり、提訴したりするのは中小企業にとって大きな負担。対応を信託銀行に任せることで、メーカーは本業に専念できる」との記載がある(甲第14号証の21)。
請求人グループにおいても、上記のように、みずほ信託銀行がテレビアニメの著作権信託を始めることが報道されている。また、請求人グループのディスクロージャー誌においても、「音楽著作権キャッシュフローをベースにした事業資金の融資」(甲第15号証の1)、「知的財産権を活用した資金調達への取組強化」(甲第15号証の2)のように、知的財産権を活用した新たな資金調達手法、金融手法の開発に注力していることが紹介されている。
(ウ)金融機関による弁護士紹介サービス・法律相談・法律に関する情報の提供
平成14年12月30日付の産経新聞には、第二東京弁護士会と証券、損害保険、信託銀行が提携して弁護士紹介サービス「弁護士ナビ」を始める方針を決めたことが報道されている(甲第14号証の22)。平成15年3月25日付の日刊工業新聞には中央三井信託銀行が、第二東京弁護士会と弁護士紹介制度に関して提携したことを発表したことが報道されている(甲第14号証の25)。平成15年3月28日付けのニッキンには、中央三井信託銀行が、平成13年10月から日本弁護士連合会と提携して遺言・相続関係弁護士の紹介サービスを行っていたところ、顧客から広く法律相談に応じてもらいたいとのニーズもあり、顧客向けに弁護士紹介サービスを開始したことが報道されている(甲第14号証の3)。平成16年12月10日付日経金融新聞では、北陸銀行が企業向けにインターネットによる会員制の経営情報提供サービスを開始することが報道されており、「日常的な様々な問題やリスクを抱える企業・部署に対し、弁護士や税理士、社会保険労務士ら専門家が役立つ情報を提供するほか、経営相談にも応じる」と記載されている(甲第14号証の16)。平成17年2月22日付けの日経金融新聞では、りそな銀行が関西大学と連携して、法科大学院学生による無料法律相談を提供することが報道されている(甲第14号証の17)。平成17年5月10日付けの日本経済新聞では、請求人グループが企業を対象とした買収防衛策に関するコンサルティング業務を提供することが報道されている(甲第14号証の21)。
また、三菱東京UFJ銀行グループにおいては、会員制経営支援総合サービス「SQUET」において、グループ企業である三菱UFJリサーチ&コンサルティングが「問題社員をめぐるトラブルヘの法的対応策」、「土地・オフィスビルの賃貸借をめぐる法律とトラブル対応策」、「裁判員制度実施に伴う企業の対応策」、「契約に関する法律知識」など、法律や訴訟に関するビジネスセミナーを顧客企業向けに開催し、法律や訴訟に関連する情報提供を行っている(甲第16号証)。
(エ)みずほ信託銀行では、遅くとも前身の安田信託銀行時代の昭和54年以来、遺言執行引受予諾業務を行っており、遺言書作成の相談、遺言書作成の援助、遺言書の保管、遺言の執行に関わる法律業務を提供している。また、他の大手金融機関においても同様に遺言の管理及び執行に関わる法律業務を提供することが一般的に行われている(甲第17号証の1ないし2)。そして、2004年ミニディスクロージャー誌(甲第6号証の1)に記載され、平成15年6月6日付け日経金融新聞(甲第12号証の5)においても報道されているとおり、請求人グループは、遺言信託の受託件数においては各金融機関中第一位である。なお、当該報道記事においては、遺言書の保管のみならず、遺産の分配など遺言執行も請け負う遺産整理の執行付き契約の件数が各金融機関において伸びていることが報道されており、当該記事の中でも「従来は弁護士が手がけることが多かった」と記載されているとおり、「遺言の執行」は、本件指定役務のうち「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務及びこれに関する情報の提供、工業所有権に関する情報の提供、訴訟事件その他に関する法律事務及びこれに関する情報の提供、訴訟に関する情報の提供、登記又は供託に関する手続きの代理及びこれに関する情報の提供、登記又は供託に関する情報の提供」と密接な関連性を有する役務であるといえ、特許庁の登録実務上も、「遺言の執行」、「遺言の整理」、「遺言書の保管」等の役務は前記の本件指定役務に類似する役務として取り扱われている。
(オ)さらに、平成13年12月21日付けニッキンでは、富山銀行が年金推進班を設置していることが報道されている(甲第14号証の1)。平成14年8月16日付けのニッキンでは、北国銀行が実施している年金無料相談会への来店が4ヶ月で200人を超えたと報道されている(甲第14号証の2)。平成16年8月27日付けのニッキンでは、阿波銀行が社会保険労務士や年金アドバイザーを配属した「お客様営業部」を設置したことが報道されている(甲第14号証の5)。平成16年10月1日付けのニッキンでは、大正銀行の年金相談会が好評であることが報道されている(甲第14号証の6)。平成16年10月8日付ニッキンでは、百五銀行の四日市駅前支店において、住宅ローンのほか、年金、法律相談にも対応して好評を博していることが報道されている(甲第14号証の7)。平成16年10月22日付けニッキンでは、東北銀行が年金受取口座の契約者を対象に発足した年金倶楽部の会員が3500人を超え、住居のトラブル解決支援に取り祖んでいるほか、社会保険労務士による年金の無料相談会を年度中に140回開催したことが報道されている(甲第14号証の8)。平成14年2月7日付けの日経金融新聞では、千葉銀行が開設するホームページにおいて、年金に関する情報を提供することが報道されている(甲第14号証の13)。平成14年9月6日付けの日経金融新聞によれば、銀行員が取得に挑む主な資格として社会保険労務士が上げられており、特色として「年金相談に対応する力をつける」と記載されている(甲第14号証の14)。平成14年10月9日付けの日経金融新聞では、常陽銀行が年金センターを本店内に開設したことが報道されている(甲第14号証の15)。平成17年1月28日付け産経新聞には、銀行や生命保険会社が駅前に設ける「コンサルティングプラザ」が盛況であり、「年金、運用・・・銀行・生保が情報発信」の見出しの下、例えば、新生銀行六本木ヒルズ支店けやき坂通り出張所では「年金相談に来る人が目立つ」と記載されている(甲第14号証の23)。平成17年4月26日付け産経新聞では、「面倒な手続き 無料でおまかせ」の見出しの下、一部の金融機関が無料で年金受給手続きの代行をしていると報道されている(甲第14号証の24)。平成16年4月10日付け毎日新聞では、三井住友銀行が年金相談コーナーを特設して年金相談に応じていると報道されている(甲第14号証の27)。平成16年10月2日付け毎日新聞では、南都銀行が年金の巡回相談に応じていることが報道されている(甲第14号証の28)。平成16年9月17日付け朝日新聞では、「社会保険事務所の説明だけで納得できなければ、銀行などの年金相談で『セカンドオピニオン』を求めることもできる」との記載がある(甲第14号証の32)。その他、全国各地の金融機関において年金等社会保険に関する相談サービスが行われていることが報道されている(甲第14号証の29ないし31、甲第14号証の33ないし42)。今日においても、各金融機関においては、顧客を対象として年金相談会を定期的に行うことが一般的に行われている(甲第18号証の1ないし12)。
(カ)以上の事実に照らしてみると、金融機関においては、法人顧客を対象として特許権や著作権等の知的財産権を対象とする信託業務を行ったり、大学の持つ特許などの知的財産に関する情報を取引先に提供したり、事業の開始に必要な資金を調達・融資するなどの事業を行っている。知的財産信託においては「特許料の納付、実施権の付与、侵害などへの対応」の役務を提供している。また、様々な経営リスクを抱える法人や個人の顧客を対象として法律相談・コンサルティング、法律に関する情報の提供や弁護士紹介サービスを行っている。信託銀行においては、遺言執行引受予諾業務の一環として遺言に関わる一連の法律業務を提供することが一般的に行われており、現に請求人グループは、遺言信託受託件数において金融機関中第一位の実績を誇っている。さらに、各金融機関においては、顧客や潜在的顧客を対象とした年金相談等、社会保険に関する相談会を行うことが広く一般的に行われている。
他方、本件指定役務は、以下の特徴を有している。
自己の事業や資産に重大な金銭的・経済的影響を及ぼしうるものであること、知的財産権を利用した資金調達・融資、知的財産権信託、遺言信託、年金受取口座の開設及び貯蓄等、金融機関が提供する役務と一体的に利用することの多い役務であること、高度の専門的知識及び経験に基づく情報提供や相談が必要とされること。
このため、需要者・取引者においても、本件指定役務やこれらの役務に関する情報の提供を受けるにあたっては、公共性の高い企業体であって高度の信用を有する金融機関から役務の提供を受けたり、関連する情報の提供を受けることが求められている実情がある。
そうすると、本件指定役務は、金融機関においても提供されることが一般的な役務又はこれに類似する役務を含むものであるから、役務の提供者が請求人役務と一致する。さらに、その需要者・取引者も、自己の事業活動や金融資産に多大な影響を及ぼす知的財産の活用・保全、企業活動や生活全般に関連する法律に関する情報、財産の保護・処分、年金をはじめとする社会保険に関心を有する企業及び個人である点において、請求人役務の需要者・取引者と共通する。してみれば、本件指定役務と請求人役務は、同一の者によって提供されることの多い役務であって、取引者、需要者も完全に共通するものであり、極めて密接な関連性を有するものである。
オ 結論
以上のとおり、引用商標が、請求人役務について使用された結果、全国的に極めて高い著名性を有する商標であること、本件商標が引用商標と同一ないし極めて類似する商標であること、本件指定役務と請求人役務が密接な関連性を有するものであることを総合勘案すれば、被請求人が、請求人の周知著名な引用商標と同一ないし極めて類似する本件商標を、請求人役務と密接な関連性を有する本件指定役務について使用した場合、その需要者・取引者において、本件商標の下で提供される被請求人の役務が、請求人又は請求人と経済的若しくは組織的になんらかの関係がある者(例えば、請求人グループに属する者、請求人から商標使用許諾を受けた者等)の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所につき混同を生じるおそれが極めて高い。
したがって、本件商標は、請求人の業務にかかる役務と混同を生じるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 引用商標の著名性
引用商標は、請求人役務について使用された結果全国的に高い著名性を有する商標である。
よって、引用商標は、商標法第4条第1項第19号に規定する「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」にあたる。
イ 本件商標は、引用商標と同一ないし極めて類似する商標である。
ウ 本件商標は被請求人が不正の目的をもって使用するものである。
以下の事実関係に照らせば、被請求人が本件商標を不正の目的をもって使用するものであることは明らかである。
エ 引用商標の存在及び著名性について被請求人は、悪意であった。
請求人グループが商標「みずほ」を採択したことは、遅くとも平成11年12月23日には全国的に周知の事実となった。してみれば、被請求人においても、請求人グループが商標「みずほ」を採択した事実について当然了知していたものと推認される。
ところが、請求人グループが商標「みずほ」を採択したことが全国的に報道された直後の平成11年12月25日以降今日に至るまで、被請求人は「みずほ」、「あっとまあくみずほ」、「MIZUHO NET」、「@MIZUHO」、「MIZUHO.NET」、「MIZUHONOOTAYORI」、「MIZUHO COMMUNICATIONS」、「みずほつうしん」、「みずほちっぷ」、「みずほかあど」、「みずほめいる」、「MIZUHO BROADBAND」、「みずほあいぴい」、「みずほゆびきたす」等、「みずほ」または「MIZUHO」の文字を含む商標を多数出願している(甲第19号証)。かかる事実に照らすと、被請求人は、請求人グループが商標「みずほ」を採択したことを知って、これらの「みずほ」関連商標を出願し始めたものと考えざるを得ない。
そして、被請求人が出願した「みずほ」関連商標のうち、多くは、請求人が有する先願登録商標と同一又は類似するとの理由によって、または請求人グループが使用する著名商標「みずほ」との間で出所の混同を生じるおそれがあるとの理由によって、拒絶査定ないし拒絶審決を受けている。例えば、被請求人が出願した商願平11-119045「みずほ」(平成11年12月25日出願)に対しては、被請求人が有する登録第4457746号を引用して商標法第4条第1項第11号による拒絶査定が平成13年3月30日になされ、平成15年12月11日に拒絶審決がされている(甲第20号証の1及び2)。商願2001-6532「MIZUHO.NET」(平成13年1月11日出願)に対しては、請求人が有する登録商標第4451446号、第4457745号、第4474910号、第4474911号、第4547241号、第4457746号、第4474912号、第4478383号を引用して商標法第4条第1項第11号に該当するものとして、さらに、株式会社みずほホールディングスが使用する著名商標「MIZUHO」との関係において出所の混同を生じるおそれがあるものとして、同項第15号に該当するとの理由により、平成15年2月21日に拒絶査定がなされている(甲第21号証の1ないし5)。
してみれば、本件商標を出願した平成17年5月12日の時点において、被請求人は、引用商標の存在、引用商標1及び2を含む請求人の登録商標の登録内容、及び、引用商標の著名性について明確に認識していたといえる。
引用商標と無関係に本件商標を採択、出願したとは、到底考えられない。
そうとすると、被請求人が、請求人が類似群コード42R01及び42R03について商標「MIZUHO」の商標登録を有していないことを奇貨として、登録後、請求人がこれらの類似群に含まれる役務を提供することを阻止したり、商標使用許諾契約の締結を強制したり、本件商標を請求人に高額で買い取らせたりする目的をもって、これらの類似群に分類される役務のみを指定した本件商標を先取り的に出願したことは明らかである。
さらに、上記のとおり、請求人グループが商標「みずほ」を採択したことが報道されると時を同じくして、被請求人が「みずほ」又は「MIZUHO」を含む多数の商標を出願していることに照らせば、被請求人は、請求人が使用する著名商標「みずほ」の出所表示機能を希釈化させる目的をもって、本件商標を含むこれらの「みずほ」関連商標を出願したものといわざるを得ない。
現に、被請求人は、平成20年4月6日、請求人に対して、概略、本件指定役務又はこれに類似する役務に属する情報提供を請求人グループ会社が行う場合には、本件商標の存在を示す情報提供を行うよう要求する旨の書面を送達した(甲第23号証)。当該書面の内容に徴すれば、被請求人は、本件商標の登録を得たことを奇貨として、請求人の事業活動を妨害し、請求人に対して本件商標の使用許諾の締結を強制せんと出たものと解される。
よって、被請求人が本件商標を不正の目的で使用するものであることは明白である。
オ まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件商標の出願時及び査定時において、請求人の業務にかかる役務の出所を表示するものとして全国的に著名となっていた引用商標と、同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号について
ア 被請求人においては、株式会社第一勧業銀行、株式会社富士銀行、株式会社日本興業銀行が統合して生まれる企業グループが使用する商標が「みずほ」であると発表された平成11年12月22日から遅滞なくその事実を了知していたと推認される。
イ 被請求人は、自己の出願に対して引用商標を根拠とする拒絶査定がなされたことなどから、本件商標の出願時、引用商標の存在、引用商標1及び2を含む請求人の登録商標の登録内容、及び、引用商標の著名性について明確に認識していた。
ウ 本件商標は、引用商標と同一ないし極めて類似する商標であって、請求人が商標「MIZUHO」を登録していない類似群コード42R01及び42R03に属する役務のみを指定したものである。
エ 本件商標の登録後、被請求人は、請求人に対して、概略、本件指定役務又はこれに類似する役務に属する情報提供を請求人グループ会社が行う場合には、本件商標の存在を示す情報提供を行うよう要求する旨の書面を送達した。
以上の事実関係に照らせば、引用商標の存在及びその著名性並びに請求人が有する登録商標の登録状況を熟知した被請求人が、請求人が類似群コード42R01及び42R03について商標「MIZUHO」の商標登録を有していないことを奇貨として、登録後、請求人がこれらの類似群に含まれる役務を提供することを阻止したり、商標使用許諾契約の締結を強制したり、本件商標を請求人に高額で買い取らせたりする目的をもって、これらの類似群に分類される役務のみを指定した本件商標を先取り的に出願したことは明らかである。
さらに、金融機関は、企業及び個人の金融資産を保護し、その適性かつ円滑な運用・処分を担保する社会的責任を負っていることから、公共性の高い企業であり、さまざまな法律及び規制の下で厳正かつ的確な事業の遂行が義務付けられているものである。請求人グループに限らず、金融機関においては、このような高度の社会的責任を果たすべく企業努力を重ねているのであって、そのような企業努力の結果として、金融機関に対しては、国民一般から高い社会的信用が寄せられ、金融機関が使用する商標にも極めて高い信用と顧客吸引力が化体しているのである。また、金融関連役務が企業及び個人の財産に直接的かつ重大な影響を及ぼしうるものであってみれば、金融関連役務に関しては、他の商品役務に比較してより一層高い流通秩序が維持されなければならない。
しかるに被請求人の上記行為は、金融機関たる請求人が使用する引用各商標にこのような社会的信用が化体していることを十分に認識した上で、これを自己の利益に利用する行為に出たものであって、商標法が目的とする商品及び役務の流通秩序の維持に対しても重大な脅威を及ぼすものである。
そうすると、被請求人が本件商標を出願し、登録した行為は、不正の目的をもってなされたものであることが明らかである上、このような被請求人の行為に基づいて登録された本件商標が、商品流通社会の秩序良俗・競業秩序を乱すおそれの極めて高いものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当する。
オ 結語
かくして、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第15号、同第19号及び同第7号の規定に該当するから、その登録は、商標法第46条第1項第1号の規定により、無効にされるべきである。
2 答弁に対する弁駁
平成22年1月12日付審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対して以下の通り弁駁する。
(1)本審判事件は本件商標が商標法第4条第1項第8号、同15号、同19号及び同7号に該当するからその登録は無効とすることを請求するものである。被請求人が主張するところは、本件商標の無効理由の存否に関係がない。
(2)別件審決取消訴訟(平成19年(行ケ)10046、平成19年(行ケ)10047及び平成19年(行ケ)10114。いずれも平成19年9月13日判決(甲第25ないし甲第27))において、被請求人の指摘する登録第4246220号「みずほねっと」は、請求人の登録商標とは非類似の商標であると判断され、当該判決は確定している(甲第28号証ないし甲第30号証)。
本審判事件で問題とされている商標は、本件指定役務について登録された「みずほ」の文字よりなる商標である。被請求人が有する登録第4246220号「みずほねっと」は本件商標とは異なる構成を有しその指定役務も異なる商標であって、本件商標の無効理由の存否には関係がない。また、被請求人が、請求人グループの発足後にその著名な略称を含む商標であって、周知著名な引用商標1ないし3と同一ないし極めて類似する商標である本件商標を、本件指定役務について登録、出願したことを正当化するものでもない。
(3)被請求人主張の趣旨は明らかでないが、まず「みずほねっと」を商標登録しているので、「MIZUHO NET」、「MIZUHO.NET」更に本件商標「みずほ」を出願し、登録したことには、正当な理由があると主張しているものと思われる。しかし、被請求人が有する登録第4246220号「みずほねっと」は、本件商標「みずほ」とは異なる構成を有し、その指定役務、出願時及び登録要件の判断基準時も異なるものであって、登録第4246220号「みずほねっと」を有していたから、本件商標の出願・登録も正当化されるということにはならない。被請求人が述べるところは、本件商標の無効理由の存否を何ら左右しない。
(4)甲第19号証は、請求人グループの発足が全国的に報道された後に、被請求人が「みずほ」又は「MIZUHO」の文字を含む商標を多数出願している事実を立証し、かかる事実に基づいて本件商標の出願時において、被請求人が引用商標の存在及び著名性について悪意であったことが推認できる資料として提出したものである。
被請求人は、ここでも「MIZUHO.NET」や「みずほねっと」の文字からなる商標や、「あっとまあくみずほ」その他の商標について種々述べているが、「みずほ」の文字からなる本件商標の無効理由の存否とは、関係がない。
被請求人は「電気通信事業を実用化してお客様に電気通信事業者としての役務を提供するにあたって、他者の商標によって引き起こされる役務提供停止を回避するには、『みずほねっと』『MIZUHO NET』『MIZUHO.NET』のほかに『みずほ(MIZUHO)』も確保しておかないと、そうしないとお客様にご迷惑をかけるし事業の実用化も困難となるおそれが生じかねないという思考に至り、本件商標を取得した」(答弁書17ぺージ)と主張する。しかし、本件商標は「電気通信事業者の役務」とは、関連のない役務を指定役務としているものであるから、被請求人の主張は失当である。
(5)請求人は、被請求人との紛争を円満に解決する目的において、本件商標の譲受の可能性について打診したにすぎず、「悪意の創作の為だったかもしれない」との被請求人の憶測は、見当違いであり、当たらない。
(6)請求人が本件審判を請求することについて利害関係を有することは、審判請求書の第3に述べたとおりである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 「みずほ」は、1300年前に編纂された日本の歴史書に登場している言葉であり、「日本書紀」では「瑞穂」と表し、日本のことばを日本で生まれた「かな(平仮名)」で表したのが「みずほ」である。
2 被請求人の「みずほ」を含む商標出願は、請求人の出願や誕生よりも先行しており、請求人は、被請求人の「みずほ」を含む商標の存在と電気通信事業者の役務を知りうる立場にあった上で「みずほ」を商標とされた。請求人の主張では、請求人の「みずほ」グループ誕生の後に、被請求人が悪意をもってまねて出願しているにほかならないとしているようであり、錯誤しているようにとれる。
そもそも被請求人は請求人よりも先に「みずほ」を含む商標の登録出願をおこなっている。請求人が被請求人の商標登録出願についてまとめた甲第19号証に記載されているNo.1の商標「みずほねっと」よりもさかのぼる平成9年5月26日には、電気通信事業者の役務と関連を有する役務を含む指定役務に、「みずほねっと」商標を出願しており、請求人が「MIZUHO」商標を出願した時点(平成11年12月16日)には、既に登録査定を経て商標設定登録(平成11年3月5日)されている(乙第2号証の1)。
3 被請求人は、請求人に対し、本件商標の商標権の権限のもとづき、株式会社みずほ銀行が提供する「みずほビジネスモール」において、本件商標の指定役務と同一または類似の役務が提供されていることを確認したので、請求人宛に、請求人が「みずほ」商標を本件商標の指定役務と同一または類似の役務に使用するときには役務の出所の混同を生じることのないように、本件商標の存在を告知する手紙を出した(甲第23号証)。
その後、請求人から本件商標権について譲渡の意向の問い合わせがあったが最終的には、譲渡には至らなかった。
4 請求人適格について
被請求人の電気通信事業者としての商標「みずほねっと」(乙第2の1号証、請求人提出の甲第19号証には未掲載)や「MlZUHO NET」などの商標と、請求人の出願に係る商標「MIZUHO」(商標登録出願2009-054903)とが商標法第4条第1項第11号に該当するものであれば、請求人の出願に係る商標「MIZUHO」は、登録できないものであるから、請求人に訴えの利益はないといわざるを得ない。

第5 当審の判断
1 請求の利益について、
請求人は、本件商標と「ミズホ」の称呼を同一にする商標「MIZUHO」を本件商標と同一又は類似する役務について出願しており(2009-054903号 甲第4号証)、かつ、請求人の関連会社である株式会社みずほ銀行が提供する「みずほビジネスモール」について、被請求人から本件商標の存在を告知する手紙(甲第23号証)受け取り、その後、本件商標権についての譲渡交渉が整わなかったことよりすれば、請求人には、本件審判の請求の利益があるというべきである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標について
本件商標は、前記のとおり「みずほ」文字を標準文字で表したものであり、第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務及びこれに関する情報の提供,工業所有権に関する情報の提供,訴訟事件その他に関する法律事務及びこれに関する情報の提供,訴訟に関する情報の提供,登記又は供託に関する手続きの代理及びこれに関する情報の提供,登記又は供託に関する情報の提供,社会保険に関する手続の代理及びこれに関する情報の提供,社会保険に関する情報の提供」を指定役務とするものである。
(2)引用商標の著名性について
請求人の提出した甲各号証によれば、請求人は、平成11年12月22日に株式会社第一勧業銀行、株式会社富士銀行及び株式会社日本興業銀行の3行の統合によって創設された企業グループであって、「みずほフィナンシャルグループ」(英文名称「Mizuho Financial Group」)を名称とし(甲第7号証)、株式会社みずほ銀行、株式会社みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行株式会社、みずほ証券株式会社、みずほインベスターズ証券株式会社の各子会社を傘下に持つ金融持ち株会社である(甲第6号証の1)。
また、請求人を中心とする企業グループは、銀行業、証券業、その他の事業を行い、上記各社のほか、平成17年3月末現在で、請求人グループには、みずほ総合研究所株式会社、みずほ情報総研株式会社、みずほキャピタル株式会社、株式会社みずほアドバイザリー、株式会社みずほアセット、みずほEBサービス株式会社、みずほインターナショナルビジネスサービス株式会社、みずほインベスターズビジネスサービス株式会社、みずほオフィスマネジメント株式会社、みずほオペレーションサービス株式会社、みずほキャピタルパートナーズ株式会社、みずほギャランティ株式会社、みずほクレジット株式会社、株式会社みずほグローバル、株式会社みずほコーポレート、みずほコーポレートアドバイザリー株式会社、みずほ債権回収株式会社、みずほ信不動産販売株式会社、みずほ信用保証株式会社、みずほスタッフ株式会社、みずほゼネラルサービス株式会社、みずほ総合管理株式会社、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社、みずほ代行ビジネス株式会社、株式会社みずほトラストシステムズ、みずほトラスト保証株式会社、みずほトラストファイナンス株式会社、株式会社みずほ年金研究所、みずほビジネス金融センター株式会社、みずほビジネスサービス株式会社、みずほヒューマンサービス株式会社、みずほファクター株式会社、みずほ不動産調査サービス株式会社、株式会社みずほプロジェクト、みずほマーケティングエキスパーツ株式会社、みずほローンエキスパーツ株式会社、その他の企業が属している(甲第6号証の2)。
そして、平成17年3月期における請求人グループの連結総資産は1,430,762億円、国内外に4万5千人余りの従業員を有し(甲第6号証の2)、請求人グループの株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社みずほ銀行、株式会社みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行株式会社、みずほ証券株式会社及びみずほインベスターズ証券株式会社が有する本支店は、全国に607店、出張所は、100店、代理店は、23店あり、請求人は、かかる営業ネットワークを通じて銀行業、証券業等の事業を展開している(甲第6号証の3)。
また、1999年12月22、23日付け新聞記事には、請求人及び請求人グループは、三行統合当初より、請求人グループの名称を「みずほフィナンシャル・グループ」とし、「みずほ」の名称を使用することとする旨掲載されている(甲第8号証の1ないし8)。
さらに、甲第8号証の9及び10、甲第9号証、甲第10号証、甲第12号証の1ないし41、甲第13号証の2、3、11ないし15の「週刊東洋経済」、「週刊ダイヤモンド」、「NIKKEI BUSINESS」ほかの雑誌、新聞等の記事によっても、「みずほ」は、請求人及び請求人グループの業務である銀行業、証券業、その他の事業について盛大に使用され、本件商標の出願日前において、請求人及び請求人グループを表示するものとして我が国において広く知られており、その状態は、登録査定時はもとより現在もなお継続していると認められる(甲第12号証の42ないし50、甲第13号証の4ないし10、16ないし24)。
(3)請求人の事業と本件商標の指定役務との関連性について
(ア)平成16年に信託業法の改正によって、受託財産の制限がなくなったことを受け、各金融機関が知的財産権を対象とする信託業務に注力していることが以下の新聞記事から伺える。
例えば、平成17年4月8日付けニッキンでは、「一部のメガバンクが国立大学などの研究室を訪問、大学の持つ特許など、最新の技術を海外を含めたネットワークを通じて取引先に紹介(中略)その際に企業から手数料を受け取るという、新たな知財ビジネスが生まれた」、「UFJ信託銀は大田区産業振興協会、大手法律事務所と“共同”で、同区内の中小企業の持つ特許権の管理・活用を行う。特許料の納付、実施権の付与、侵害など裁判対応-が主な業務。大企業に比べ、態勢面で難しい中小企業にとって、事務や訴訟などの負担が軽減される」との記事(甲第14号証の11)。
平成17年2月22日付け日経金融新聞の「大阪市信用金庫が大阪市立大学、大阪工業大学と連携して、『技術相談、知的財産相談』を提供する」との記事(甲第14号証の17)。
平成17年4月19日付け日経金融新聞には、信託協会会長が「昨年末の信託業法改正は、信託新時代の幕開けを告げる出来事」、「知的財産信託には大きな注目と期待の目が向けられている。と発言をした。」との記事(甲第14号証の18)。
平成17年5月10日付けの日本経済新聞には、「昨年の法改正で、信託の対象が企業の特許など知財にも広がった」、「特許を侵害されたときに相手と交渉したり、提訴したりするのは中小企業にとって大きな負担。対応を信託銀行に任せることで、メーカーは本業に専念できる」との記事(甲第14号証の21)。
請求人グループにおいても、平成17年4月12日付けの日本経済新聞には、「信託銀 知財に照準 アニメの著作権 みずほ手がける」の見出しの下、みずほ信託銀行がテレビアニメの著作権信託を始めることが報道された
(甲第14号証の19)。
(イ)そして、請求人グループのディスクロージャー誌においても、「音楽著作権キャッシュフローをベースにした事業資金の融資」(甲第15号証の1)、「知的財産権を活用した資金調達への取組強化」(甲第15号証の2)のように、知的財産権を活用した新たな資金調達手法、金融手法の開発に注力していることが紹介されている。
(ウ)また、金融機関による弁護士紹介サービス・法律相談・法律に関する情報の提供について、平成14年12月30日付の産経新聞には、第二東京弁護士会と証券、損害保険、信託銀行が提携して弁護士紹介サービス「弁護士ナビ」を始める方針を決めたとの記事(甲第14号証の22)、平成15年3月25日付の日刊工業新聞には中央三井信託銀行が、第二東京弁護士会と弁護士紹介制度に関して提携したことを発表したとの記事(甲第14号証の25)、平成15年3月28日付けのニッキンの「中央三井信託銀行が、平成13年10月から日本弁護士連合会と提携して遺言・相続関係弁護士の紹介サービスを行っていたところ、顧客から広く法律相談に応じてもらいたいとのニーズもあり、顧客向けに弁護士紹介サービスを開始したとの記事(甲第14号証の3)、平成16年12月10日付日経金融新聞では、北陸銀行が企業向けにインターネットによる会員制の経営情報提供サービスを開始する。・・・日常的な様々な問題やリスクを抱える企業・部署に対し、弁護士や税理士、社会保険労務士ら専門家が役立つ情報を提供するほか、経営相談にも応じるとの記事(甲第14号証の16)、平成17年2月22日付けの日経金融新聞では、りそな銀行が関西大学と連携して、法科大学院学生による無料法律相談を提供するとの記事(甲第14号証の17)、平成17年5月10日付けの日本経済新聞では、請求人グループが企業を対象とした買収防衛策に関するコンサルティング業務を提供するとの記事(甲第14号証の21)が掲載されている。
(エ)さらに、大手金融機関においては、遺言の管理及び執行に関わる法律業務を提供することが一般的に行われている(甲第17号証の1ないし2)。
そして、請求人グループは、遺言信託の受託件数においては各金融機関申第一位となっている(甲第12号証の5)。
(オ)加えて、平成13年12月21日付けニッキンの「富山銀行が年金推進班を設置している。」との記事(甲第14号証の1)、平成14年8月16日付けニッキンでは、北国銀行が実施している年金無料相談会への来店が4ヶ月で200人を超えたとの記事((甲第14号証の2)。平成16年8月27日付けのニッキンでは、阿波銀行が社会保険労務士や年金アドバイザーを配属した「お客様営業部」を設置したとの記事(甲第14号証の5)。平成16年10月1日付けのニッキンでは、大正銀行の年金相談会が好評であるとの記事(甲第14号証の6)。平成14年2月7日付けの日経金融新聞の「千葉銀行が開設するホームページにおいて、年金に関する情報を提供する。」との記事(甲第14号証の13)、平成16年9月17日付け朝日新聞の「社会保険事務所の説明だけで納得できなければ、銀行などの年金相談で『セカンドオピニオン』を求めることもできる」との記事(甲第14号証の32)、その他、全国各地の金融機関において年金等社会保険に関する相談サービスが行われていることの記事が掲載されている(甲第14号証の7ないし10、15,23.24,27ないし31、33ないし42)。
(カ)以上のとおり、請求人及び請求人グループの業務である銀行業、証券業においては、業務の一環として、特許権や著作権等の知的財産権を対象とする信託業務を行ったり、大学の持つ特許などの知的財産に関する情報を取引先に提供したり、遺言状の作成・遺産相続等の法律相談、年金等社会保険に関する相談業務の事業もおこなっていることよりすれば、請求人及び請求人グループの業務と本件指定役務とは密接な関連性を有するものと認められる。
(4)出所の混同について
本件商標は、前記のとおりの構成よりなるものであり、請求人の事業に使用する著名な引用商標「みずほ」と同一の文字よりなるものであり、外観、称呼、観念をすべて共通にするものである。
かつ、本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務とは、上記のとおり密接な関連性を有するものであるといえる。
そうとすると、本件商標に接した取引者、需要者が、みずほフィナンシャルグループによる「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務及びこれに関する情報の提供,工業所有権に関する情報の提供,訴訟事件その他に関する法律事務及びこれに関する情報の提供,訴訟に関する情報の提供,登記又は供託に関する手続きの代理及びこれに関する情報の提供,登記又は供託に関する情報の提供,社会保険に関する手続の代理及びこれに関する情報の提供,社会保険に関する情報の提供」であると理解する場合も少なくない。
以上のとおり、本件商標は、これを請求人と何ら関係を有しない被請求人(商標権者)が、その指定役務に使用したときには、あたかも請求人あるいはそのグループ企業と関連を有する者の業務に係る役務であるかの如く役務の出所について誤認・混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
(5)被請求人の主張について
被請求人は、「みずほ」は1300年前に編纂された日本の歴史書にも登場している「瑞穂」に由来する言葉であること、被請求人は請求人の使用開始よりもさかのぼる平成9年5月26日に「みずほねっと」商標を出願し、請求人が引用商標1を出願した平成11年12月16日には、既に登録査定を経て平成11年3月5日に設定登録されたこと、及び「みずほ」を含む請求人の商標出願のいずれもが電気通信事業者の役務と関連を有するものを含んでいると主張している。
しかしながら、「みずほ」が「瑞穂」に由来する言葉であるとしても、本件商標の出願時及び登録査定時において、「みずほ」が、請求人及び請求人グループの著名な商標と認められること及び請求人の業務である「銀行業務」及び「証券教務」が本件指定役務と関連を有する役務であること前記のとおりである。
また、被請求人の所有する「みずほねっと」が、「電気通信事業者の役務」について登録されているとしても、「みずほねっと」は、本件商標「みずほ」とは構成を異にするものであり、また、本件商標の指定役務は、「電気通信事業者の役務」とは、関連しない役務であるから、被請求人の主張は失当である。
以上のとおり、被請求人の主張はいずれも採用できない。
したがって、本件商標は、請求人の主張するその余の無効理由について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に該当するものというべきであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 引用商標2


審理終結日 2010-08-19 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-30 
出願番号 商願2005-41708(T2005-41708) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y42)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊泉 弘貴 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 岩崎 良子
渡邉 健司
登録日 2006-02-24 
登録番号 商標登録第4930861号(T4930861) 
商標の称呼 ミズホ 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 小林 彰治 
代理人 廣中 健 

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