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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない X33
管理番号 1234831 
審判番号 不服2009-25481 
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-24 
確定日 2011-03-11 
事件の表示 商願2008- 96787拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、後掲のとおり構成からなり、第33類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成20年12月1日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同21年7月27日付け提出の手続補正書により、「芋焼酎」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『酒に貼られるラベルの形状とその枠組みからなる地紙紋状の中に植物の葉等を薄く施したもの』の上に、『全量芋焼酎』の文字を配した構成からなるものであるが、職権による調査及び刊行物提出書等から、既に該文字は『芋麹を使用し、原材料が全て芋で作られた焼酎』の意味合いで一般的に使用されいることが窺えることから、品質的表示であり、かつ、その他の構成要素(図形部分)も、『酒のラベルに薄くまねかれた植物の背景』と認められるものであり、特に自他商品の識別力を有するものとは認められないものである。よって、本願商標を本願指定商品に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨、認定、判断して本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知
当審において、平成22年11月10日付け証拠調べ通知書をもって通知した内容は別掲のとおりである。

4 証拠調べ通知に対する意見の要旨
(1)焼酎瓶に酒ラベル(肩ラベル)の別掲(1)ないし(5)は、いずれも「全量芋焼酎」のラベルとして使用されるものでなく、本願商標と全く異なる各社独自のラベル形状であって、そこに表示される文字も図形も各社の商標または仕込み法を表示したラベルであり、本願商標とは無関係の肩張りラベルの使用例があるからといって、本願商標の顕著性を否定する根拠とはならないものである。
(2)酒類(清酒)の肩ラベル別掲(6)ないし(11)は、焼酎の肩ラベルでもなく、「全類芋焼酎」の肩ラベルでもなく、本願商標と外観構成を全く異にする商標自体が外観上非類似であって、いずれの両者の比較においても各ラベルの表示される文字図形の理解、すなわち観念が全く異なり、本願商標の顕著性を否定する根拠とすることは出来ないものである。
(3)本願商標は、日本の著名な書家・作家の故榊莫山氏の筆にかかる独特の書であって、本件ラベルのみの文字を構成する顕著な書体というべく、本願商標は全体として出願人(請求人)の焼酎の商標であることを認識しうる商標としての自他商品の識別機能を備えた特別顕著なものである。
(4)まとめ
「全量芋焼酎」の文字は、「芋麹を使用し、原材料が全て芋で作られた焼酎」の意を指称する語であって、焼酎瓶にも肩ラベルが使用されることがあり、背景に描かれた図形は、芋の蔓、茎、葉を表示したものとしてありふれて普通に使用されない形状と表現方法の特異な図形と認められる図形要素であって、文字と図形が外観構成どおりの配置と色彩を施して一体的に表された出願人の全量芋焼酎の「一刻者」のラベルとして認識するものと思料されるものである。
このことは本件の先行商標登録第5163195号の顕著性判断と同様、取引者・需要者は本願商標を使用した商品について十分請求人の商品である事を認識しうるものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号には該当しないものである。
また、本願商標は、これをその指定商品「芋焼酎」に使用しても、何ら商品の品質の誤認を生ずるおそれはないものであるから、商標法第4条第1項第16号にも該当しないものである。

5 当審の判断
(1)本願商標は、図形と文字との結合商標からなるところ、当該図形は四方の角を丸くした扇子の地紙の形状様図形に、濃淡2色のモスグリーンで縁取りした扇状の輪郭図形(以下「扇状の輪郭図形」という。)とその輪郭図形内中央に背景のように蔓につながった大小2つのサツマイモ・葉を配置してなる図形(以下「芋の植物図形」という。)からなるものである。
そして、この芋の植物図形に上書きするように重ねて帯状に顕著に黒色の筆書体で「全量芋焼酎」の文字を表示してなるものである。
以上のとおり、本願商標は、扇状の輪郭図形内に芋の植物図形を背景図形として「全量芋焼酎」の文字を表示したものと容易に看取されるものである。
(2)本願商標は、その指定商品「芋焼酎」との関係では、その構成中芋の植物図形は、顕著に表示された「全量芋焼酎」の文字の背景図形ないし商品の品質、原材料を表示するものとして把握、理解されるものと認められ、また、その構成中「全量芋焼酎」の文字は、別掲の「証拠調べ通知の内容」第1の1及び2のとおり、「芋麹を使用し、原材料が全て芋で作られた焼酎」の意を指称する語であるから、商品の品質を表示するものとして認識される。
また、その構成中の扇状の輪郭図形は、別掲の「証拠調べ通知の内容」別掲(1)ないし(11)に示すとおり、類似商品である日本酒の瓶や焼酎の瓶の肩ラベルの形状とその外観において類似するものであって、普通に採択、使用されているものであるから、容易に焼酎の扇状の肩ラベルと理解されるものである。
そうとすれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、「原材料が全て芋で造られた焼酎であることを表示する肩ラベル」を認識させるにとどまるから、取引者、需要者をして何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものと認められる。
(3)請求人は、「別掲(1)ないし(11)はいずれも『全量芋焼酎』のラベルとして使用されるものでなく、本願商標を肩ラベルに使用した場合に商標としての自他商品の識別機能を発揮するものである。」旨主張する。
しかしながら、本願商標は、構成中の扇状の輪郭図形がその指定商品「芋焼酎」及びこれと類似する商品「日本酒」の肩ラベルの形状と外観において類似するものであるから、請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、「本件肩ラベルの文字を構成する『全量芋焼酎』の文字は、顕著な書体というべき独特の書であるから、本願商標は全体として自他商品の識別機能を備えた特別顕著なものである。」旨主張する。
しかしながら、図案化された文字商標については、「商標は字体等外観により目に訴えて、商品を区別させる作用を営むだけでなく、電話による場合はもちろん、一般口頭の注文の場合を考えて明らかなように、音によってその商品を指示し、他の商品と区別するに使われ、また観念によって記憶されるものであるから、ひとり字体等の外観ばかりからでなく、称呼、観念において、指定商品をそのままに表しているような商標は、やはりこれに特別顕著性ありとして、これを登録して排他的使用権を与えるに適さないものと解さなければならない。」(東京高裁昭和29年(行ナ)第35号判決参照)と、判示されているところである。
そこで、これを本願商標についてみると、本願の指定商品の取引者、需要者は、独特な書体に精通した者でなくとも、本願商標構成中の「全量芋焼酎」の文字から「ゼンリョウイモジョウチュウ」の称呼を生ずること及び「原材料が全て芋で作られた焼酎」の意を看取させることは前記のとおりであり、これを本願指定商品「芋焼酎」の当該品質の商品「全量芋焼酎」について使用したときには、指定商品をそのまま表していると認識されるというのが相当であるから、本願商標を特別顕著性、すなわち自他商品の識別標識としての機能を有するものでないことは明らかである。
さらに、請求人は、過去の登録例を挙げて、本願商標も識別力を有する旨述べているが、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項の規定に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、個別具体的に判断されるべきものである。
してみれば、本願商標は、前記のとおり認定、判断すべきものであるから、請求人の上記主張は、採用することができない。
(4)したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第6号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。

後掲
(本願商標)

(色彩については、原本参照)
別掲 別掲
(証拠調べ通知の内容)
第1 「全量芋焼酎」の文字及び肩ラベル状の図形に関して行った職権による証拠調べによれば、次の事実が認められる。
1 「全量」の意味について
「全体の数量。全体の重量または容量。」(広辞苑第六版)

2 酒類(焼酎)の販売をおこなう販売店のホームページにおいて、「全量」「芋焼酎」等の文字が使用されている事実。
(1)ワイン・地酒・焼酎 KAWADEのホームページには、以下のように記載されている。
(http://www5a.biglobe.ne.jp/~kawade/run.htm)
ア 「全芋焼酎 蘭芳(らんほう)」の項には、「業界初!全量芋焼酎樽熟成酒!!芋100%で出来た焼酎の木樽貯蔵酒で業界初の新カテゴリー製品です。全芋焼酎の原酒をそのままに木樽に貯蔵し、その命である香り味を残した雰囲気のある原酒タイプのお酒に仕上がりました。樽からのバニラの香りや甘さも味わえます。」と記載されている。
イ 「全芋焼酎 蘭・木樽貯蔵」の項には、「原料:芋・芋麹■アルコール度数:25°業界初!全量芋焼酎樽熟成酒!!芋100%で出来た焼酎の木樽貯蔵酒で業界初の新カテゴリー製品です。全芋焼酎の原酒をそのままに木樽に貯蔵し、その命である香り味を残した雰囲気のある原酒タイプのお酒に仕上がりました。樽からのバニラの香りや甘さも味わえます。」と記載されている。
ウ 「蘭・『壷中天』」の項には、「原料:芋・芋麹■アルコール度数:25°業界初!全量芋焼酎!!」と記載されている。
(2)濱田酒造株式会社のホームページ「通販ショップ白水酒店」には、「芋麹黒仕込み全量芋焼酎/純芋/黒海童」の項に「濱田酒造では独自の技術開発により『鹿児島県産100%芋全量』の芋焼酎商品化が可能となったのです。」と記載されている。
(http://www5.ocn.ne.jp/~shirouzu/syocyu/kaido/index.html)
(3)林屋酒店のホームページ「8848shop.net」には、「全量芋焼酎 さつま蘭 25度 1800ml」の項に「異なる100%芋焼酎をブレンドしました。芋ならではの純粋な甘みと奥行きのある深いコク。しっかりとした個性を醸し出す洗練された香りと味わいは、これまでにない芋焼酎といえます。」と記載されている。
(http://www.8848shop.net/SHOP/s000293.html)
(4)有限会社二階堂酒店のホームページ「酒&WineNIKAIDO」には、「さつま小鶴・いもいも25度」の項に「芋全量仕込みならではの芋焼酎の優しさが心地よい焼酎です。」と記載されている。
(http://www.nikaido.sake-ten.jp/bisyu_027.htm)
(5)有限会社河野酒店のホームページ「『諸国酒処』東海村河野酒店」には、「全量芋焼酎 さつま芋の花」の項に「全量芋焼酎/芋焼酎は、『芋』と『米麹』を原料に造られるのが一般的。ふつう、麹の原料には『米』を使い、麹菌をつけます(米麹)。『さつま芋の花』『赤芋の花』は、『芋』をダイス状に加工し、乾燥させたサツマイモダイスに、麹を付けました(芋麹)。こうしてできた芋麹に、さらに、蒸した芋を加え、焼酎を造りました。原材料がすべて“芋”であるので、『全量芋焼酎』です。」と記載されている。
(https://www.kawanosaketen.co.jp/items.aspx?cat=8)

3 酒類(焼酎)の販売をおこなう販売店のホームページにおいて、焼酎瓶に酒ラベル(肩ラベル)が使用されている事実。
(1)楽天市場が運営する「地酒・焼酎の『小野酒店』」のホームページには、「鹿児島県 霧島町蒸留所 明るい農村【あかるいのうそん】 赤芋仕込みかめ壺仕込み 1800ml 【GW_sakep】」の項に別掲(1)のとおり、肩ラベルが貼付された焼酎瓶が掲載されている。
(http://item.rakuten.co.jp/ono-sake/nouson-aka-kame1800/#nouson-aka-kame1800)
(2)「鹿児島県 佐多宗二商店 晴耕雨読【せいこううどく】」の項には、別掲(2)のとおり、肩ラベルが貼付された焼酎瓶が掲載されている。
(http://item.rakuten.co.jp/ono-sake/udoku-siro-1800/#udoku-siro-1800)
(3)薩摩の酒蔵梅屋のホームページには、「青潮1800ml 芋焼酎」の項に別掲(3)のとおり、肩ラベルが貼付された焼酎瓶が掲載されている。
(http://ume-ya.jp/SHOP/1410A011.html)
(4)薩摩の酒蔵梅屋のホームページには、「海童1800ml 芋焼酎」の項に別掲(4)のとおり、肩ラベルが貼付された焼酎瓶が掲載されている。
(http://ume-ya.jp/SHOP/1505A061.html)
(5)楽天市場が運営する「澤屋總本店」のホームページには、「【芋焼酎】薩摩富士 25度 1800ml【濱田酒造】」の項に別掲(5)のとおり、肩ラベルが貼付された焼酎瓶が掲載されている。
(http://www.rakuten.co.jp/sawaya/478291/482116/)

4 酒類(日本酒)において本願商標と外観が類似する肩ラベルが、別掲(6)ないし(11)のとおり使用されている事実。
日本酒ラベルコレクションのホームページには、本願商標と外観が類似する肩ラベルが以下のように掲載されている。
(http://www.nrib.go.jp/sake/sl/sl_mp6.htm、http://www.nrib.go.jp/sake/sl/sl_p33.htm)
(1)富志美盛(ふしみざかり)(大野酒造株式会社:http://www.nrib.go.jp/sake/sl/sl_p6.htm)の肩ラベルは、別掲(6)のとおりである。
(http://www.nrib.go.jp/sake/sl/images/331602.JPG)
(2)杉勇(すぎいさみ)(合資会社杉勇蕨岡酒造場:http://www.nrib.go.jp/sake/sl/sl_p6.htm)の肩ラベルは、別掲(7)のとおりである。
(http://www.nrib.go.jp/sake/sl/images/062402.JPG)
(3)錦爛(きんらん)(後藤康太郎酒造店:http://www.nrib.go.jp/sake/sl/sl_p6.htm)の肩ラベルは、別掲(8)のとおりである。
(http://www.nrib.go.jp/sake/sl/images/064102.JPG)
(4)賀茂緑(かもみどり)(丸本酒造株式会社:http://www.nrib.go.jp/sake/sl/sl_p33.htm)の肩ラベルは、別掲(9)のとおりである。
(http://www.nrib.go.jp/sake/sl/images/332701.JPG)
(5)嘉美心(かみこころ)(嘉美心酒造株式会社:http://www.nrib.go.jp/sake/sl/sl_p33.htm)の肩ラベルは、別掲(10)のとおりである。
(http://www.nrib.go.jp/sake/sl/images/332801.JPG)
(6)五十鈴(いすず)(株式会社牧野酒造本店:http://www.nrib.go.jp/sake/sl/sl_p33.htm)の肩ラベルは、別掲(11)のとおりである。
(http://www.nrib.go.jp/sake/sl/images/334204.JPG)

5 筆文字、筆書体がオーダーメイドされている事実
(1)NET-DTP筆文字オーダーサービスのホームページには、筆文字の作家による筆書体が多数掲載され、オーダーメイドされている。
(http://www.e-fudemoji.com/work/sakka-1.html)
(2)株式会社アートバンクのホームページ「筆文字なび」には、「作家別作品集」の見出しの下、書道家の筆書体が多数掲載され、オーダーメイドされている。
(http://www.sho.ne.jp/nabi/sakka/a.html)

第2 上記第1に記載の各事実によれば、「全量芋焼酎」の文字は、「芋麹を使用し、原材料が全て芋で作られた焼酎」の意を指称する語として一般的に使用されいることから、商品の品質を表示するものである。
また、本願商標を構成する肩ラベル状の外形輪郭図形は、焼酎を包装する1升瓶に貼付する肩ラベルに普通に採択、使用されていること、さらに、該肩ラベル中に表示されている「全量芋焼酎」の背景に描かれた図形は、その指定商品及び構成文字中の「芋焼酎」との関係、及びその配色、大きさ等から、芋の蔓、茎、葉を表示したものと認められるから、商品の品質(原材料)を表示するための背景図形として認識される。
加えて、筆書体(文字)は、筆書体のデザイナーによる多種類の書体が制作されている実情にあるから、本願商標構成中の「全量芋焼酎」の文字は、筆書体の一種により、前記意を表したものであると容易に認識されると判断するのが相当である。
してみれば、本願商標は、その構成中の「全量芋焼酎」の文字及び酒の肩ラベルに薄い配色をもって描かれた植物(芋)の背景図形からなるところ、これをその指定商品中前記意に照応する商品に使用しても、商品の品質を表示する肩ラベルとして認識されるから、取引者、需要者をして、何人かの業務に係る商品(役務)であるかを認識することができないものである。
また、本願商標は、これを前記意に照応する商品以外の商品に使用するときには、商品の品質において誤認を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。

別掲(色彩については、原本参照)
(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(6)

(7)

(8)

(9)

(10)

(11)


審理終結日 2011-01-06 
結審通知日 2011-01-12 
審決日 2011-01-26 
出願番号 商願2008-96787(T2008-96787) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (X33)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 孝 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 小畑 恵一
板谷 玲子
商標の称呼 ゼンリョーイモショーチュー、ゼンリョーイモジョーチュー、ゼンリョー 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 

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