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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010680005 審決 商標
無効2009890110 審決 商標
無効2010890099 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y29
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y29
管理番号 1233421 
審判番号 無効2009-890127 
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-11-20 
確定日 2011-03-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第5074465号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5074465号の指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5074465号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成18年12月20日に登録出願、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」を指定商品として、同19年7月25日に登録査定、同年8月31日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4722030号商標(以下「引用商標」という。)は、「ヨーグルトン」の片仮名文字を標準文字で書してなり、平成14年10月10日に登録出願、第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」を指定商品として、平成15年10月31日に設定登録され、現に有効に存続するものである

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第42号(枝番号を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標は、図形部分と文字部分とからなる結合商標であるが、該文字分は「ハーブヨーグルトン」と「HerbYogurTon」の文字が記載されている。当該「ハーブヨーグルトン」「HerbYogurTon」には、全体として特定の意味観念が生じているわけでない。
(2)当該商標の構成をみると、語頭に「ハーブ」なる字句があるが、ハーブとは、「薬草、香味料とする草の総称」(広辞苑)である。
そこで、「ハーブ」について指定商品との関係で調査してみると「草本性の植物のこと」とあり、これは食用として利用されたり、薬用として利用されたり、香りを利用したりする有用植物であるとされている(甲第4号証、甲第6号証、甲第19号証)。しかも「ハーブ一覧」をみると、ハーブには料理用のハーブが分類されて多数あることが解る(甲第5号証)。また、ハーブ料理というのも多数あり(甲第7号証、甲第8号証)、ハーブ料理専門の本が多数発行されている(甲第8号証)。このことからハーブ料理は、料理の一分野を占めているというのが実態である。
また、「ハーブ」は家畜の飼料としても利用されており、ハーブ飼料として商品化されている(甲第10号証ないし甲第18号証)。そして、このハーブ飼料で育った豚、牛、鶏、卵、水産物などを、ハーブ豚、ハーブ牛、ハーブ鶏、ハーブ卵、ハーブ水産物と称しており、これらの食肉類や肉製品及び水産物や、これらを用いた料理や加工食品などの品質表示としてもハーブ豚、ハーブ牛、ハーブ卵、ハーブ鶏、ハーブ水産物と表示したり、「ハーブ」の文字を付けた結合表示が普通に用いられている(甲第19号証ないし甲第24号証)。
このような、一般的、恒常的な取引の実情を考慮すると、本件商標は「ハーブ」と「ヨーグルトン」とに分離観察して、要部観察をする必要性がある。
つまり、本件商標「ハーブヨーグルトン」の構成中「ハーブ」の部分は指定商品との関係では品質表示部分として認識され、「ヨーグルトン」の部分は自他商品識別力のあるいわゆる要部になると認識するのが、一般消費者や需要者の自然な認識の仕方である。
したがって、本件商標からは、構成文字の全体観察から生じる「ハーブヨーグルトン」の称呼だけでなく「ヨーグルトン」の称呼も生ずるものである。
なお、本件商標権者が本件商標をどのような使い方をしているかを確認してみると、本件商標権者は、井田養豚という豚の生産者であり、主に株式会社小林畜産という卸売り業者を通して販売している。株式会社小林畜産のホームページによると、「ハーブヨーグルトン」は、ハーブ入り発酵リキッドを食べて育った新しい豚肉です。ハーブ入り発酵リキッド飼料とは食品製造副産物(麺、豆腐、米飯)とハーブ入り穀物飼料発酵液を混合して製造した安全・高品質な飼料です。」と記載されていることから明らかなように本件商標権者は、「ハーブヨーグルトン」を意味のない造語とは考えておらず、商標構成中の「ハーブ」の字句は、ハーブで育った豚という品質表示する意味であることを明確にしている(甲第26号証)
また、本件商標の使用の仕方からは、権利者の養豚事業は、近年注目されている発酵リキッド飼料を給餌方式の養豚技術とハーブを食べさせて豚を飼育する方式の周知養豚技術を組み合わせた方式で行っていること。そして商標を「ハーブヨーグルトン」としたのは、ブランド化されて周知になっている本審判請求人の周知商標「ヨーグルトン」に、人気のハーブ豚であることを示す「ハーブ」を組み合わせただけのものと解するのが正しい認識・把握の仕方である。
加えて、商標構成にハーブの文字が含まれている商標(指定商品の区分第29類)について、指定商品をハーブを用いたものに限定した記載になっている(甲第27号証ないし甲第34号証)。
(3)請求人の利害関係と引用商標の周知性
請求人である朝霧ヨーグル豚販売協同組合は、朝霧ヨーグル豚の共同購入及び組合員への販売並びに共同宣伝、共同商品開発を主業務とする肉卸売業者であり、平成15年2月に設立し、国内の食品リサイクル副産物を原料にした発酵リキッド飼料を給与して豚を育てるという環境に優しい養豚技術と、環境の良い富士山麓朝霧高原という地域特性を生かして、ブランド豚を生産し、これを地域特産品にして地域おこしをする事業を行い、生産されたブランド豚の名称を、「ヨーグル豚」、「ヨーグルトン」、「朝霧ヨーグル豚」と名付けて商標登録している。そして、当該商標を付した豚肉や肉製品は、「美味、安全、安心」であることを謳って盛大な宣伝・販売活動を継続的に繰り返しおこなってきた(甲第35号証)。このような「朝霧ヨーグル豚による地域おこし」は、2003年に事業の環境先進性と地域ぐるみの取り組みが認められ、第9回目本計画行政学会計画賞(優秀賞)や第14回静岡ニュービジネス大賞などを受賞している。その結果、富士宮市や静岡県などの地方自治体や(財)地域活性化センターで静岡県富士宮市の特産品として認められるようになり地域ブランド化かかなり定着しつつある。また最近では、JAPANブランド育成支援事業に採択されて、世界的ブランド化に向けて事業を展開すべくブランド戦略を進めているところである。
そして、例えば、平成15年11月6日に発行された日本農業新聞に掲載された(甲第42号証)ことにより、少なくとも業界では全国的に「ヨーグルトン」、「ヨーグル豚」、「朝霧ヨーグル豚」が広く知られるようになった。その後、財団法人日本食肉消費総合センターの「銘柄豚肉ハンドブック2005」にも掲載されるようになった。これらの事実の積み重ねによって、商標「ヨーグルトン」、「ヨーグル豚」、「朝霧ヨーグル豚」は、全国的にも周知になっているのである。
これに対し、本件商標「ハーブヨーグルトン」の出願(平成17年3月14日)は、引用商標「ヨーグルトン」の出願日(平成14年10月10日)から2年5か月後のことであり、朝霧ヨーグル豚販売協同組合が引用商標を使用開始してからでも2年後のことである。したがって、当該「ヨーグルトン」を造語商標としたのは請求人である朝霧ヨーグル豚販売協同組合であって、本件商標権者ではない。しかも、本件商標権者の養豚技術は、本件商標権者と基本的に同じ発酵リキッド飼料を食べさせる方式を採用し、これにハーブを入れて飼育する改良方法であることを表明して、事業化している(甲第26号証)。
両者は、同業者であるだけでなく、競合する同じ豚肉を基本的に同じ方式で養豚事業をする者同志である。同じ業界人として意識しないわけがない。したがって、権利者が商標を「ハーブヨーグルトン」としたのは、同業者の周知商標「ヨーグルトン」に品質表示の「ハーブ」を加えてハーブ豚であることを示そうとしたものであること明らかである。このため、関連する一般消費者や販売業者や流通業者や飲食店業界では、両商標が商標登録になって並存するのは紛らわしいとして混乱をおこしている。また、マスコミやブログでも商標問題として話題になっているのである(甲第40号証、甲第41号証)。
(4)前述のとおり、本件商標「ハーブヨーグルトン」については、「ハーブ」の部分が指定商品の原材料や品質を表示するものと認識され、「ヨーグルトン」の部分は自他商品識別力がある商標の要部と認識される。
したがって、本件商標からは、構成文字全体観察から「ハーブヨーグルトン」の称呼が生じるとともに、分離観察、要部観察から「ヨーグルトン」の称呼も生じるものである。
これに対して、引用商標は、「ヨーグルトン」の片仮名文字からなる文字商標であり、「ヨーグルトン」の称呼が生じる。
したがって、両商標構成を比較すると、商標の要部が共通しており、称呼において類似している。
次に、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とを比較すると、第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」において同一である。
なお、本件商標の指定商品中「食用油脂、乳製品」の部分は、非類似商品である。
よって、本件商標は、引用商標と称呼類似であり、「食用油脂,乳製品」を除く指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当するので、登録無効になるべきものである。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、別掲のとおり中心部に豚の図形が表現されているとともに「井田さんの家の豚」と記載されている点にあり、第2に、「ハーブヨーグルトン」と「HerbYogurTon」の文字が記載されている点にある。そして、第3に、本件商標の指定商品が、食品関連の第29類について全類指定である点が重要な特徴である。
本件商標は、前記第1の特徴である「豚の図形が表現されているとともに『井田さんの家の豚』と記載されている点」を看過しての過誤登録であると考える。
本件商標を使用した場合、その「豚の図形」や「井田さんの家の豚」の文字から、誰でも、当該商品は豚肉、その豚肉製品又は豚肉を用いた調理食品ではないかと認識する。すなわち、本件商標は、指定商品との関係で、商品の品種を限定すべき表示を有しているのである。しかるに、本件商標の指定商品は、品種を限定することが全くなされていない。これでは、豚肉、その豚肉製品又は豚肉を用いた調理食品でない指定商品に使用した場合、品質の誤認を起こすことになる。
また、商標構成文字「ハーブヨーグルトン」と「HerbYogurTon」の部分からは、「ハーブ」「Herb」が、指定商品である食品との関係で特定の商品の品質を表示するものと認識される。当該「ハーブヨーグルトン」「HerbYogurTon」には、全体として特定の意味観念が生じているわけでないが、当該商標の語頭に「ハーブ」なる字句がある。この商標構成中の「ハーブ」は、料理(調理食品)や食品の原材料として盛んに利用されている食材そのものであり、例えばハーブを用いた料理や加工食品は、ハーブ料理、ハーブ食品などと当該指定商品の品質を表示するものである。
また、ハーブ入り飼料で飼育された家畜やその肉類や卵などを「ハーブ豚」「ハーブ牛」「ハーブ鶏」「ハーブ卵」「ハーブ水産物」と一般に称されており、これらの肉類や肉製品や魚類や卵の品質を表示する用語として、市場において普通に用いられている。このような、一般的、恒常的な取引の実情を考慮すると、本件商標は「ハーブ」と「ヨーグルトン」とに分離観察して「ハーブ」の部分は、指定商品の原材料や品質を表示するものとしては認識される。
そのため、本件商標を指定商品に使用すると、「ハーブ」の文字からその豚はハーブの入った飼料を食べて育った豚、いわゆるハーブ豚の食用肉やハーブ豚肉を用いた肉製品であると認識する。したがって、本件商標をそれら以外の商品に使用する場合には、品質の誤認を起こすおそれがある。
よって、本件商標は、その指定商品中「食用油脂,乳製品,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」について、商標法第4条第1項第16号に該当し、商標法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標登録は、商標法第4条第1項第16号及び商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであり、商標法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標の要部である文字商標の部分は、「ハーブヨーグルトン」と片仮名で、同書、同大、同間隔に書してなり、或いは「HerbYogurTon」とローマ字で、同書、同間隔に書してなり、共にとくに意味のない造語である。しかも、「ハーブ」或いは「Herb」という語句が語頭にあって、それぞれ「ハーブヨーグルトン」と淀みなく称呼でき、語呂、語調も良いことから、一体不可分として捉えられるべきであり、本件商標中「ハーブヨーグルトン」或いは「HerbYogurTon」より、「ヨーグルトン」或いは「YogurTon」のみを取り出さなくてはならない格別な理由は存在しないと言うべきである。
よって、本件商標の要部を構成する文字商標の部分の、「ハーブヨーグルトン」或いは「HerbYogurTon」からは「ハーブヨーグルトン」のみの称呼が発生し、引用商標は「ヨーグルトン」のみの称呼が発生することから、称呼上非類似であり、外観、観念も類似しないことから、商標法第4条第1項第11号に規定する無効事由は存在しない。
(2)本件商標は「ハーブヨーグルトン」或いは「HerbYogurTon」であって、上述したように、一体不可分でとくに意味のない造語である。また、引用商標は「ヨーグルトン」であって、特に意味のない造語であることは、請求人も認めているところである(無効2009-890126号審判請求書第6ページ上から11行目)。
かかる場合に、両者が称呼上非類似と認められるべきことは、例えば乙第1号証の1ないし18に示したように、特許庁の過去の登録例からして明らかなことである。それをまとめた表(1)を乙第2号証として提出したので参照されたい。
そこにはいずれも先願の「デュー」「RELAX/リラックス」「LAND」「高原」「CARE」「HOME」及び「TERRACE」に対して、後願の「HERB DEW/ハーブデュー」「ハーブリラックス/HERB RELAX」「HERBLAND/ハーブランド」「ハーブ高原」「Herbcare/ハーブケア」「ハーブホーム/HERB HOME」及び「ハーブテラス」という、いずれも語頭に「ハーブ」をつけた商標が、同じ指定商品で、当該指定商品に「ハーブを用いた」などの限定を加えることなく登録されていることが解る。しかも、先願の「テラス」に対する後願の「ハーブテラス」の場合は、本件商標よりも後願である。
このように、先願の片仮名或いはローマ字の文字商標があって、この先願の文字商標の前に「ハーブ」或いは「HERB」の語句を付け加えた後願の文字商標が多数登録されている。そこには、さらに「ハーブ」或いは「HERB」と、その後に続く語句との間が離れたものも登録となっている。
以上のことは、被請求人の上記主張が正しく、本件商標「ハーブヨーグルトン」或いは「HerbYogurTon」と引用商標「ヨーグルトン」は、互いに称呼上非類似とすべきことを雄弁に物語っている。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
(1)本件商標の指定商品が、第29類の全類指定であることはそのとおりである。しかしながら、本件商標の要部は、中央部に紫色の下地に白抜きで片仮名で大きく記載した文字商標の部分である「ハーブヨーグルトン」にあることは明らかである。なお、「HerbYogurTon」の部分は、小さく記載されていて一見して直ちに読み取ることはできず、文字商標の要部を構成しているとは言い難いが、一応「HerbYogurTon」の部分も含めて答弁する。
「ハーブヨークルトン」或いは「HerbYogurTon」であっても、いずれも造語で、かつ、一体不可分の「ハーブヨーグルトン」或いは「HerbYogurTon」であって、そこから、「ハーブ」或いは「Herb」のみを取り出して商品の品質につき誤認混同を生じるおそれがあるといっても意味のないことは明らかである。
他方、豚の図形は全体として小さく記載され、また下側に小さく記載された「井田さん家の豚」の語句は商標的な使用ではないので、いずれも本件商標の要部を構成していない。
また、本件商標の要部である、「ハーブヨーグルトン」或いは「HerbYogurTon」の語句の中には、「豚」「牛」「鶏」「サーモン」などの具体的な家畜や魚類などの普通名詞を用いてはいない。したがって、「ハーブ」或いは「Herb」を具体的な豚や、牛、鶏などの家畜やサーモンのような魚類の飼料、餌として用いる使用例があったとしても、そのことから直ちに本件商標が商品の品質につき誤認混同を生じるおそれがあるとまでは言うことができない。なお、周知性については、日本農業新聞に記載されている商標の態様は、「ヨーグル豚」であって、「ヨーグルトン」ではない上に、1回程度発行部数の限られた新聞に記載されたからといって、それだけで周知性を取得できるものではないことは、過去の審・判決例からして明らかなことである。
(2)本件商標のように、商標の要部を構成しないが、標章中に豚の図形と「豚」という文字が記載してある場合、指定商品を豚或いは豚肉、豚肉を用いた食品に限定しなくては商品の品質につき誤認混同を生じさせるおそれがあるか否かについて考察する。
商標の要部が「ハーブヨーグルトン」或いは「HerbYogurTon」であって、補助的に豚の図形或いは「豚」の字句を記載している場合には、文字商標の関係からして、直ちにその指定商品につき、豚あるいは豚肉、豚肉を用いた食品に限定しなくてならないというものではない。
このことは過去の登録例からして明らかなことである。例えば、乙第4号証の各号に記載されているように、(ア)豚の図形のみ、或いは豚の字や豚の図形と文字商標の組合せた先願登録商標において、その指定商品に対して豚肉、或いは豚肉を用いた各種食品と言うように、限定を付することなく登録になっている例(乙第4号証の1ないし7)、(イ)牛の図形のみ、或いは牛の図形と他の図形を組み合わせた先願既登録商標において、その指定商品に対して牛肉、或いは牛肉を用いた各種食品と言うように、限定を付することなく登録になっている例(乙第4号証の8ないし12)、(ウ)鶏の図形のみ、或いは鶏の図形と他の図形を組み合わせた先願既登録商標において、その指定商品に対して鶏肉、或いは鶏肉を用いた各種食品と言うように、限定を付することなく登録になっている例(乙第4号証の13ないし19)、(エ)豚の図形とその品質を表わす材料を組み合わせた先願既登録商標において、その指定商品に対して豚肉、或いは豚肉を用いた各種食品、記載された材料を用いた豚肉、或いは豚肉を用いた各種食品と言うように、限定を付することなく登録になっている例(乙第4号証の20ないし22)が多数存在している。全体をまとめた表(2)を乙第5号証として提出したので参照されたい。
以上の登録例は、被請求人の上記主張が正しいことを雄弁に物語る有力な証拠である。
(3)乙第1号証の1ないし18及び乙第2号証の商標登録例によれば、「ハーブ」或いは「HERB」の語句を用いても、指定商品に「ハーブを用いた」とか「ハーブ入りの」とか、「ハーブを食べさせて育てた」とか、「ハーブ」という語句を何らかの形で指定商品に使用するように求められてはいない。さらに、乙第3号証の1ないし16に示したように、「ハーブ」或いは「HERB」の語句を用いて他の語句と組み合わせた商標であっても、「ハーブ」という語句を何らかの形で指定商品に使用するように求められてはいない。
そこには商標本体に指定商品との関係で意味のある具体的な語句(豚、牛、鶏といった)を用いていても、「ハーブ」という語句を何らかの形で指定商品に使用するように求められてはいない登録商標が多数存在している。このことは取りも直さず、「ハーブ」を家畜や魚類等の飼料や餌、或いは肉等に用いることが知られていても、本件商標のように、指定商品との関係で意味のない語句の前段に「ハーブ」という語句を用いたものは、そのことにより、一層指定商品の品質につき誤認混同を生ずるおそれがなく、なんら問題がないということを雄弁に物語る何よりの証拠である。
また、以上のことから、本件商標は、請求人の主張するような意味合いを直ちに看取させるとは言えるものではなく、さらに、特定の商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものとして取引者、一般需要者に認識、把握されるものとも言うことができないものである。そして、「ハーブヨーグルトン」の語句が本件商標の指定商品の業界に広く知られ、また、広く使用されている事実は被請求人の本件商標以外に存在していない。
(4)よって、本件商標には、商標法第4条第1項第16号に規定する無効事由は存在しない。
3 まとめ
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に該当する無効事由は存在していない。請求人の主張はいずれも理由がない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、別掲のとおり、その構成中に「ハーブヨーグルトン」の片仮名文字、「HerbYogurTon」の欧文字、「井田さん家の豚」の文字及び豚のシルエット図形を有してなるものであり、「ハーブヨーグルトン」の文字及び「HerbYogurTon」の文字も自他商品の識別標識としての機能を有するものである。
イ 「ハーブ」及び「Herb」の文字部分については、請求人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)ハーブは、「薬草、香味料とする草の総称」を意味する語であり、薬用のほか、料理用に多数のハーブが用いられるものである(甲第4号証ないし甲第9号証)
(イ)ハーブを加えた飼料で育てた豚等は、ハーブの持つ自然な薬効により動物を健康にするだけではなく、獣臭をなくす、風味や鮮度を長持ちさせるといった畜産物の品質を向上させる効果があり、ハーブ入りの飼料が製造、販売され、豚、牛、鶏等の家畜に使用されている(甲第10号証ないし甲第26号証)。また、ハーブ入りの飼料により育てられた家畜を「ハーブ豚」、「ハーブ牛」、「ハーブ鶏」、「ハーブさば」などと称し(甲第18号証ほか)、その食肉等がインターネット店舗(甲第20号証ないし甲第22号証)、スーパーマーケット(甲第23号証)、ファーストフード(甲第17号証)を通して一般消費者に提供されていることが認められる。
(ウ)以上の事実によれば、「ハーブ」は、「薬草、香味料とする草の総称」を意味する語として、一般に広く知られているものということができる。
また、指定商品との関係では、「ハーブ」は、牛、鶏及び豚などの飼料とされ、「ハーブ」を飼料として飼育した家畜の肉は消費者からは品質が良いと好評であることが認められる。
ウ 本件商標中の「ハーブヨーグルトン」及び「HerbYogurTon」の各文字は、「ハーブ」「Herb」の文字が、上述したとおり食品を取り扱う業界においては、「ハーブ」が食品の原材料として使用されているものであること及び家畜の飼料としても使用され「ハーブ」を飼料として飼育した家畜の肉は品質が良いとされることから、本件商標中の「ハーブ」及び「Herb」の文字部分は、自他商品の識別力が無いか又は極めて弱い部分であると認められるので、その構成文字中の「ヨーグルトン」及び「YogurTon」の文字が自他商品の識別力を有し、該文字は、特定の意味を有しない造語と認められる。
エ 被請求人は、本件商標は「ハーブヨーグルトン」及び「HerbYogurTon」が一体不可分として認識されること、「ヨーグルトン」及び「YogurTon」の部分を分離抽出すべき理由がないこと、先願の片仮名あるいはローマ字の文字商標があって、この先願の文字商標の前に「ハーブ」又は「HERB」の語を付け加えた後願の文字商標が登録されている例が多数存在していることを理由として、本件商標からは「ヨーグルトン」の称呼は生じない旨主張している。
しかしながら、商標は、その構成全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して類否判断をすることは許されないが、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際において、各構成部分がそれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常にその構成全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼及び観念が生じることがあると解されるところ、本件商標は、前述のとおり、各構成部分がそれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないから、その主張は採用できない。
また、被請求人は、特に意味のない造語の商標が一体不可分として登録された登録例をあげ、本件商標についても一体不可分としてのみ捉えられる旨主張している。
しかしながら、上記登録例は、本件商標とは構成する文字及び文字数等において事案を異にするものであるから、上記認定を左右するものではない。
さらに、被請求人は、「ハーブ」の文字を含む登録商標について、その「ハーブ」の文字に対応する指定商品の限定がなされていないことからも、「ハーブ」と結合した造語の商標は、構成全体をもって一体不可分の商標である旨主張している。
しかしながら、商標に接する需要者が、当該商標よりどのような品質の商品であるかを理解することと、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるかは、まったく別のことであるから、被請求人の主張はその前提において誤りである。
オ してみれば、本件商標は、その構成中の「YogurTon」及び「ヨーグルトン」の文字に相応して、「ヨーグルトン」の称呼を生ずるが、観念を有しないものであり、また、構成中の「井田さん家の豚」の文字に相応して、「イダサンチノブタ」の称呼及び「井田さん家の豚」の観念を生ずるものである。
(2)引用商標について
引用商標は、「ヨーグルトン」の片仮名文字を標準文字で書してなり、意味を有しない造語よりなるものであるから、該構成文字に相応して「ヨーグルトン」の称呼を生ずるが、特定の観念を有しないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標は、「ヨーグルトン」の称呼を共通にするものであるから、称呼上において互いに相紛らわしい類似の商標である。
つぎに、本件商標は、引用商標より特定の観念を生じないから、引用商標とは観念において比較することができない。
さらに、本件商標と引用商標の外観を比較すると、両者は、構成全体をみると図形の有無や文字の相違など構成上の差異があるものの、「ヨーグルトン」の部分は共通しているから、その外観において近似した印象を与えるものである。
これらを総合すると、本件商標と引用商標は、称呼を共通している上、外観においても、取引者、需要者の注意をひく「ヨーグルトン」の部分は共通しているから、商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、本件商標と引用商標は類似しているということができる。
(4)本件商標の指定商品は、「食用油脂,乳製品」において引用商標の指定商品とは取引者、需要者、販売場所及び用途などを異にする非類似の商品であるが、前記以外の指定商品は引用商標の指定商品と同一であり、取引者、需要者、販売場所及び用途などを共通にする同一又は類似の商品である。
(5)したがって、本件商標の登録は、その指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
(1)本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「井田さん家の豚」の文字が「(養豚を営む)井田さんが育てた豚」の意を容易に認識させるものである。また、その構成文字中の「豚」の文字及びその構成中の「豚のシルエット図形」から、「豚」を原材料とする関連製品を想起させるため、本件商標をその指定商品中の「豚肉以外の食肉、豚肉以外の肉を使用した肉製品」に使用するときは、需要者に「豚肉、豚肉を使用した肉製品」であるかのように想起、連想させ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるというのが相当である。
したがって、商標法第4条第1項第16号該当性については、請求人の主張は、上述した商品の範囲において理由があるものと認める。
(2)被請求人は、この点について、本件商標の要部が「ハーブヨーグルトン」あるいは「HerbYogurTon」であって、豚の図形は全体として小さく記載され、また下側に小さく記載された「井田さん家の豚」の語句は商標的な使用ではないので、いずれも本件商標の要部を構成しておらず、補助的に豚の図形或いは「豚」の字句を記載しているものであるから、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない旨主張している。
しかしながら、ある登録商標がその指定商品との関係から商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるか否かは、常に自他商品の識別力を有する部分(要部)に限定して判断しなければならないものではなく、その登録商標の要部又は付記的部分のいずれであるかを問わず構成全体から商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるか否かを判断すべきであり、本件商標については、上述したとおり、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあると判断されるから、前記被請求人の主張は採用することができない。
(3)また、請求人は、「食肉,肉製品」以外の指定商品「食用油脂,乳製品,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」に本件商標を使用した場合も、品質の誤認を起こすことになる旨も主張している。
しかしながら、請求人が誤認を生ずるおそれがあるとして掲げる上記商品については、その構成中に「豚」の文字及び「豚の図形」から想起する「豚」とは関連性が全くないか又は関連性の弱い商品であり、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがないとみられるから、前記請求人の主張は採用することができない。
さらに、請求人は、本件商標は、その構成中の「ハーブ」及び「Herb」の文字部分が指定商品の原材料や品質を表示するものとして認識されるため、指定商品に使用すると、「ハーブ」及び「Herb」の文字からその豚がハーブの入った飼料を食べて育った豚、いわゆるハーブ豚の食用肉やハーブ豚肉を用いた肉製品であると認識され、本件商標をそれら以外の商品に使用する場合には、品質の誤認を起こすおそれがある旨主張しているが、本件商標構成中の「ハーブ」の文字部分から「ハーブの入った飼料を食べて育った豚、いわゆるハーブ豚の食用肉やハーブ豚の肉を用いた肉製品」であると直ちに認識されるとまでは認定し得ず、採用の限りでない。
(4)小括
したがって、本件商標の登録は、指定商品「豚肉以外の食肉,豚肉以外の肉を使用した肉製品」について、商標法第4条第1項第16号に違反してされたものである。
3 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」について商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、その余の商品については、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではないから、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標(登録第5074465号商標)

(色彩については原本参照)

審理終結日 2010-05-18 
結審通知日 2010-05-20 
審決日 2010-06-07 
出願番号 商願2006-117947(T2006-117947) 
審決分類 T 1 11・ 272- ZC (Y29)
T 1 11・ 262- ZC (Y29)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 吉田 静子 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 内山 進
井出 英一郎
登録日 2007-08-31 
登録番号 商標登録第5074465号(T5074465) 
商標の称呼 ハーブヨーグルトン、ヨーグルトン、イダサンチノブタ、イダサンチ、イダサン、イダ 
代理人 伊藤 捷雄 
代理人 大津 洋夫 

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