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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y43 |
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管理番号 | 1233396 |
審判番号 | 取消2010-300012 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2010-01-04 |
確定日 | 2011-02-25 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4783233号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4783233号商標(以下、「本件商標」という。)は、「アリア」の片仮名を標準文字で表してなり、平成15年9月17日に登録出願され、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」のほか、商標登録原簿記載の第36類及び第43類に属する役務を指定役務として、 同16年7月2日に設定登録されたものである。 また、本件審判請求は、平成22年1月25日に登録されている。 第2 請求人の主張 請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務中第43類『宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供』についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び弁駁において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出している。 1 請求の理由 本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによってもその指定役務中前記指定役務について使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。 2 答弁書に対する弁駁 (1)被請求人は、「商標権者が、株式会社ベネッセスタイルケアに通常使用権を許諾している。」旨主張し、乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。 しかしながら、同号証では、商標権者が、株式会社ベネッセスタイルケア(以下「ベネッセスタイルケア」という。)に対し、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」について、通常使用権を許諾していることは、一切明示されていない。 (2)請求人は、「ベネッセスタイルケアは、有料老人ホームを運営する事業者であるが、長期居住者を対象として老人ホームを提供するのみでなく、居住者の家族等に対して、老人ホーム入居者居室での宿泊及び食事の提供を業として行っている。」旨主張し、乙第6号証ないし乙第12号証を提出している。そして、当該「老人ホーム入居者居室での宿泊及び食事の提供」が「老人ホームの提供」から独立した役務であることの根拠として、当該「老人ホーム入居者居室での宿泊及び食事の提供」に対しては、老人ホームの利用に係る費用とは別に費用が発生する点を挙げている(乙第7号証ないし乙第9号証)。 しかしながら、提供される役務が有償であるか無償であるかは、商標法上の独立した役務であるか否かを判断するにあたって決定的な要素とはならない。商標法上の独立した役務であるか否かは、商標がその使用されている役務の出所を表示しているか否かという観点から判断すべきである。 当該「老人ホーム入居者居室での宿泊及び食事の提供」は、老人ホームの利用者の家族しか利用できず、誰にでも提供されるものではない。 また、乙第7号証の附録7の「有料サービス一覧表」の下欄には、「スタッフの手配の状況によってはお受けできない場合もあります。」と記載されているところ、このような記載が存在すること自体が、当該「老人ホーム入居者居室での宿泊及び食事の提供」が「老人の養護(介護を含む。)」に付随した役務にすぎず、商標法上の独立した役務ではないことを証明している。 当該「老人ホーム入居者居室での宿泊及び食事の提供」は、「老人の養護(介護を含む。)」という役務の存在を離れて、それ自体で利用することができるサービスではない。 当該「老人ホーム入居者居室での宿泊及び食事の提供」は、老人ホームの利用者の家族しか利用できないので、商標「アリア」は「老人の養護(介護を含む。)」の役務の出所のみを表示しているにすぎない。 3 むすび 以上のとおり、乙号証は、平成19年1月26日から同22年1月25日までの間に、被請求人の通常使用権者により、「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」について本件商標を使用する行為(商標法第2条第3項各号)が行われたことを何ら証明するものではない。 よって、請求の趣旨のとおりの審決を求める。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を提出している。 1 答弁の理由 (1)通常使用権 商標権者は、本件商標について、ベネッセスタイルケアに、通常使用権を許諾している。 ベネッセスタイルケアは、商標権者の100%子会社であり、介護付有料老人ホームを運営する株式会社として位置付けられている(乙第2号証)。 また、本件商標は、ベネッセスタイルケアが本件商標を使用することを前提として、登録出願されたものである。 以上の事情を勘案すると、商標権者が、そのグループ企業であるベネッセスタイルケアに、本件商標の通常使用権を許諾していることは明かである。 (2)指定役務についての使用 通常使用権者は、有料老人ホームを運営する事業者であるが、長期居住者を対象として老人ホームを提供するのみでなく、居住者の家族等に対して、「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」を業として行っている。 ア 通常使用権者の事業形態 乙第6号証の1には、二つ折りの状態で表に表れる面に本件商標「アリア」が表示されており、乙第6号証の2の右側には「ご家族様の来訪はいつでも。ファミリールームもご用意」と記載されている。 乙第7号証は、老人ホームの入居者に配付される「重要事項説明書」であり、その附録7に「有料サービス一覧表」がある。 当該「有料サービス一覧表」には、老人ホームの利用に係る費用とは別のものとして、すなわち独立したサービスとして、「ご家族等の利用者居室での宿泊」(1泊2日 1,050円)、「ご家族等への食事の提供」(朝食525円等)が掲げられている。 すなわち、老人ホームへの入居者は、家族等が宿泊するとき及び家族等が食事の提供を受けるときには「入居に掛かる費用」(=自己の施設利用料や食事、光熱費)の他に別途費用が発生することを理解して、入居するのである。 以上のとおり、家族等への「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」は、入居者に対して提供する「老人ホームの提供」とは別途独立した役務として存在するものである。 イ 使用の実績 乙第8号証の1は、「アリア久我山」での食事・宿泊サービス利用申込書であり、2009年4月21日?22日に1名が宿泊したことが示されている。 宿泊料の支払いに関しては、入居者の月次請求に含める形と小口入金とがあり、選択する。 乙第8号証の2は、「アリア久我山」入居者への請求書であり、また、乙第8号証の3は、入居者への請求明細書であるところ、乙第8号証の3の「有料サービス等」の欄には、「ご家族の宿泊」及び「特別食」の記載があり、「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」の役務が提供されたことが示されている。 乙第9号証の1は、「アリア松原」での食事・宿泊サービス利用申込書であり、2009年7月25日?26日に1名が宿泊したことが示されている。 乙第9号証の2は、「アリア松原」入居者への請求書であり、また、乙第9号証の3は、入居者への請求明細書であるところ、「有料サービス等」の欄に「ご家族の宿泊」及び「ご家族分食費」の記載かあり、「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」の役務が提供されたことが示されている。 上記各請求書には、「お問い合わせ窓口 株式会社ベネッセスタイルケア」と記載されていることから、役務の提供者がベネッセスタイルケアであることは、明らかである。 なお、上記各請求書及び各請求明細書の右肩に「平成22年3月10日」と記載されているが、これはプリントアウトした日付けであり、これらの書類の作成日は利用月の翌月上旬である。 (3)商標の使用 本件商標は、標準文字で「アリア」であるところ、乙第6号証には、標章「アリア」が表されている。 ベネッセスタイルケアは、同号証で紹介されている施設において「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」を行っているのであるから、前記標章はこれらの役務についての商標として使用されているというべきである。 乙第7号証には標章「アリア恵比寿」が表されているところ、「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」などの有料サービス一覧表が綴じ込まれているのであるから、表紙に表された標章は、これらの役務についての商標として使用されているというべきである。 乙第8号証の3及び乙第9号証の3には、それぞれ、標章「アリア久我山」及び「アリア松原」が表されている。 これら請求明細書には、内訳として「ご家族の宿泊」「ご家族分食費」の記載があるから、前記各標章は「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」についての商標として使用されているというべきである。 乙第10号証ないし乙第12号証は、「アリア目黒洗足」、「アリア松原」及び「アリア文教大塚」の門表であるが、それぞれ、標章「アリア目黒洗足」、「アリア松原」及び「アリア文教大塚」が表されている。 そして、ベネッセスタイルケアは、これらの施設において「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」を行っているのであるから、上記各標章はこれらの役務についての商標として使用されているというべきである。 (4)商標の同一性 乙第6号証の1及び2に表された標章が、本件商標と実質的に同一であることは明かである。 乙第7号証ないし乙第12号証に表された標章は、片仮名「アリア」と「地名」が結合した態様である。 このような態様の商標において、「地名」は所在地を示すために付加されるにすぎないものであり、商標法が保護する「業務上の信用」は「アリア」の文字部分に化体するのであって、「地名」が付加されていることをもって、本件商標との同?性を否定すべきではない。 ちなみに、ベネッセスタイルケアは、「アリア」、「くらら」、「まどか」及び「グラニー・グランダ」の4シリーズの有料老人ホーム運営しているが、それぞれ特徴のある老人ホームとして運営しており、その特質を選択する機能は、「アリア」等これらシリーズ名が果たしている。 加えて、「アリア」は、老人ホーム、宿泊施設の提供及び飲食物の提供の役務との関係で識別力が極めて高いものである。 したがって、上掲各証拠に表された標章は、本件商標と実質的に同一の商標というべきである。 2 むすび 以上のとおり、本件商標は、請求に係る指定役務について、商標権者から通常使用権を許諾されたベネッセスタイルケアによって使用されているものである。 したがって、本件請求は理由がない。 第4 当審の判断 1 通常使用権の許諾について 乙第2号証の6頁目は、「ベネッセグループ概要」と題するウェブページの写しであるところ、同号証には、商標権者とベネッセスタイルケアが、ともに、ベネッセグループのグループ会社として記載されている。 また、乙第3号証は、「ベネッセスタイルケア沿革」と題する書面であるところ、「2003年 ベネッセグループの介護事業会社、(株)ベネッセケア、伸こう会(株)、(株)ベネッセシニアスタイルの三社を統合し、(株)ベネッセスタイルケアとして営業開始 東京都で介護付有料老人ホーム『アリア』をオープン」の記載がある。 以上の事実によれば、商標権者とベネッセスタイルケアは、いずれも、ベネッセグループのグループ会社であること及びベネッセスタイルケアは、ベネッセグループの中で介護事業を行っていることが認められる。 そして、ベネッセスタイルケアがベネッセグループの介護事業会社であること及び「本件商標は、ベネッセスタイルケアが本件商標を使用することを前提として、登録出願されたものである。」旨の被請求人の主張、さらに、一般的に通常使用権に関する契約は、商標権者又は専用使用権者との間で交わされる商標権使用許諾契約に基づいて発生するものであって、右契約は、商標権者等と使用者との意思表示の合意によって成立するものであるから、必ずしも書面による必要はないと解される点に照らせば、商標権者は、ベネッセスタイルケアに対して、少なくとも、黙示の承諾により通常使用権の使用許諾をしていたと推認することができる。 したがって、ベネッセスタイルケアは、通常使用権であるというのが相当である。 2 取消請求に係る指定役務についての本件商標の使用について (1)事実認定 ア 乙第2号証 乙第2号証の1頁目ないし6頁目は「(株)ベネッセスタイルケア会社概要」と題する書面であるところ、1頁目には、「創業/2003年12月1日」、「事業内容/高齢者介護サービス事業 保育事業」、「〈高齢者介護サービス事業〉(各拠点数は2009年12月1日現在のものです。)」等の記載があり、また、2005年3月期、2006年3月期、2007年3月期、2008年3月期及び2009年3月期の連結売上高・営業利益のグラフが表示されている。 イ 乙第6号証の1 乙第6号証の1は、ベネッセスタイルケアによる、「アリア」と題する、介護付き有料老人ホームのパンフレット(写し)であるところ、1枚目左の頁に、「高い入居率を誇る、人気シリーズ『アリア』」、「●友人知人から、アリアのサービスの良さを聞いていた。」、「『アリア』には、いろいろな方が入居されています。」、「アリアの詳しいサービスは、ホームページで!」、「※記載情報は、2009年11月現在のものです。」等の記載がある。 また、同頁に、「?住み慣れた街の近くに佇む、『アリア』という上質空間?」の記載があり、当該記載の下に「アリア恵比寿 東京都目黒区三田1-1-11」、「アリア松原 東京都世田谷区松原5-34-6」、「アリア久我山 東京都杉並区宮前4-30-3」等の記載がある。 ウ 乙第7号証 乙第7号証は、「アリア恵比寿 重要事項説明書」と題する書面であるところ、表紙には前記題号のほか、「株式会社ベネッセスタイルケア」等の記載がある。 同号証の「1事業主体概要」の「事業主体名」の欄には、「株式会社ベネッセスタイルケア」と記載され、「2施設概要」の「名称」の欄には、「アリア恵比寿」と記載され、「10 利用料」の「有料サービスの対価」の欄には、「有料サービスの内容・単価は付録『有料サービス一覧表』に定めるとおりです。」の記載がある。 そして、「有料サービス一覧表」には、「No.1」に「ご家族等の利用者居室での宿泊 *寝具・リネン類はホームにてご用意します *食事は含まれません *前日までの申し込みが必要です」「(内容/基準)1泊2日」、「(単価)1,050円」等の掲載があり、脚注には「*上記1?2のサービスはホーム利用者の家族等に提供するもの・・・(中略)・・・です。」、「*スタッフの手配の状況によってはお受けできない場合もあります。」等の記載がある。 エ 乙第9号証の1 乙第9号証の1は、「食事・宿泊サービス利用申込書」と題する書面(写し)であるところ、「ホーム名」の欄には 、「アリア松原」と記載され、「連絡年月日」の欄には、「09年7月21日」と記載され、「項目」の欄には、「ご家族/ご友人の宿泊 *利用者居室の利用 *1泊2日・食事なし *1泊・1,050円」と記載され、「期間」の欄には、「7月25日?7月26日(1泊)※泊数を記入」と記載され、「人数」の欄には、「1名」と記載され、「合計」の欄には「1,050円」と記載されている。 「ご利用者」の欄及び「ご宿泊者氏名(本人との続柄 )」の欄は、記入されているが、黒く塗りつぶされている。 また、「ホーム処理欄」には、受付担当及び確認(責任者)担当の押印がされ、また、「請求については、月次請求にて処理」と記載されている。 オ 乙第9号証の2 乙第9号証の2は、「ベネッセスタイルケア アリア松原」発行の「請求書(口座振替のご案内)」であるところ、「ご請求書(口座振替のご案内)」の欄には、「アリアをご利用いただきありがとうございます。」と記載され、「内訳」の欄には、「アリアご利用料 ¥322,960」と記載され、「お引落口座」の欄には、「平成21年8月26日に、下記ご指定の口座より振替えさせていただきます。」と記載されている。 カ 乙第9号証の3 乙第9号証の3は、「ベネッセスタイルケア アリア松原」発行の「請求明細書」であるところ、「ご利用期間」の欄には、「平成21年7月1日?平成21年7月31日」と記載され、「内訳 ◆有料サービス等◆」の欄には、「7月25日 ご家族の宿泊(課税)課(単価)1,000(数量)1(自己負担)¥1,000 」、「◆消費税・その他◆」の欄では、「消費税(外税) (自己負担額)¥999」、「今回ご請求額 合計 (自己負担額)¥322,960」と記載されている。 (2)判断 ア 乙第2号証によれば、ベネッセスタイルケアは、2003年12月1日、創業と同時に高齢者介護サービス事業を行っており、2009年12月1日現在も当該事業を行っていることが認められる。 イ 乙第6号証の1によれば、ベネッセスタイルケアは、高齢者の介護サービスに関する広告において、商標「アリア」を使用していること及び当該広告に係る高齢者の介護サービスが「アリア恵比寿 東京都目黒区三田1-1-11」、「アリア松原 東京都世田谷区松原5-34-6」、「アリア久我山 東京都杉並区宮前4-30-3」等のホーム(施設)で行われていることが認められる。 ウ 乙第7号証によれば、ベネッセスタイルケアは、「アリア恵比寿」で高齢者介護サービスを受けている入居者の家族等に対し、有料で、宿泊施設を提供していることが認められる。 そして、同号証の「有料サービス一覧表」に記載されている「ご家族等の利用者の居室での宿泊(内容/基準)1泊2日(単価)1,050円」の記載は、乙第9号証の1の「ご家族/ご友人の宿泊(期間)7月25?7月26日(1泊)(人数)1名(合計)1,050円」の記載と金額が一致している。 また、乙第7号証及び乙第9号証の1に記載されている金額「1,050円」と第9号証の3の「7月25日 ご家族の宿泊 自己負担額」の欄に記載されている「¥1,000」の金額は、乙第7号証及び乙第9号証の1の「1,050円」には、5%の商品税が含まれている。 そして、第9号証の3の「1,000円」の消費税分は、「内訳」の「諸費税(外税)」に含まれていると解するのが自然である。 そうとすれば、ベネッセスタイルケアは、平成21年7月25日に、「アリア松原」で、高齢者介護サービスを受けている入居者の家族等に対し、有料で、宿泊施設の提供を行い、その請求書(乙第9号証の2)には、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標「アリア」が、表示されたことが認められる。 ところで、乙第7号証は、「アリア恵比寿」の重要事項説明書であるのに対して、乙第9号証の2及び3は、「アリア松原」での家族等の宿泊に係る請求書及び請求明細書であるため、両者は、施設の場所を異にしている。 しかしながら、乙第6号証の1によれば、「アリア恵比寿」と「アリア松原」のいずれにおいても、商標「アリア」の高齢者の介護サービスが提供されていると認められること及び上記で認定したとおり支払われた金額が一致していることからからすれば、「アリア恵比寿」で提供されている「家族等の利用者居室での宿泊」は、「アリア松原」でも提供されていると解するのが相当である。 3 請求人の主張 請求人は、「ベネッセスタイルケアが提供している老人ホーム入居者居室での宿泊は、有料ではあっても、老人ホームの利用者の家族しか利用できないから、老人の養護(介護を含む。)に付随した役務にすぎず、商標法上の独立した役務ではない。」旨主張している。 しかしながら、上記2(2)で認定したとおり、家族等への当該宿泊施設の提供は、老人ホーム入居者に提供される役務の対価には含まれておらず、有料で提供されているものである。 また、特定の性別の需要者や特定の年齢の需要者にのみ役務を提供する等、役務の提供に当たって需要者に何らかの要件を課すことは、商取引上普通に行われているものであり、そのような役務も、商標法上の独立した役務であるというのが相当である。 そうとすれば、ベネッセスタイルケアによる宿泊施設の提供が老人ホーム入居者の家族等を対象としているからといって、そのことのみで、当該役務が老人の養護(介護を含む。)に付随した役務にすぎず、商標法上の独立した役務ではないとまでは、いうことはできない。 したがって、この点についての請求人の主張は、採用しない。 その他の請求人の主張及び証拠をもってしても、上記認定・判断を覆すに足りない。 4 むすび 以上によれば、通常使用権者は、本件審判請求の登録前三年以内に、日本国内において、取消請求に係る指定役務中「宿泊施設の提供」に関する取引書類(請求書)に、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標を付して使用したものである。そして、当該行為は、商標法第2条第3項第8号に該当する。 したがって、商標法第50条の規定により、取り消すべきではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-29 |
結審通知日 | 2010-10-04 |
審決日 | 2010-10-18 |
出願番号 | 商願2003-80684(T2003-80684) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(Y43)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 忠司 |
特許庁審判長 |
井岡 賢一 |
特許庁審判官 |
末武 久佳 井出 英一郎 |
登録日 | 2004-07-02 |
登録番号 | 商標登録第4783233号(T4783233) |
商標の称呼 | アリア |
代理人 | 峯 唯夫 |
代理人 | 松尾 和子 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 井滝 裕敬 |
代理人 | 藤倉 大作 |
代理人 | 辻居 幸一 |