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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200914235 審決 商標
不服2008650038 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X05
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X05
管理番号 1233313 
審判番号 不服2009-14236 
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-07 
確定日 2011-02-16 
事件の表示 商願2008- 507拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第5類に属する出願時の願書に記載の商品を指定商品として、平成20年1月8日に立体商標として登録出願されたものであり、指定商品については、当審における同21年9月18日付け手続補正書によって、第5類「薬剤」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その指定商品中の『薬剤』を詰める容器として通常採用し得る一の立体的形状を表したものと認められるものであって、また、その構成中の『赤色を付した長方形の図形部分』においても、スプレー式缶の白い胴体部分において商品の材質や形態などの内容表示をするための部分として、格別識別機能を有する図形部分とは認められないから、これをその指定商品中の『薬剤』に使用するときは、商標全体としても自他商品を区別するための識別標識としての機能を有せず、単にその商品の包装の形状(包装容器)を表示するにすぎないものといわざるを得ない。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、これをその指定商品中の『薬剤』以外の商品(『薬剤の容器』の立体的形状と認められるものであるから)に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを行ったところ、別掲(2)に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、平成22年3月19日付けで証拠調べの結果を通知した。

第4 職権証拠調べに対する請求人の意見の要点
請求人は、前記第3の証拠調べ通知に対して、平成22年5月6日付けの意見書及び同年6月3日付けの上申書において、以下のように意見を述べ、証拠方法として、甲第50号証ないし甲第91号証を提出した。
1 本願商標の立体的形状の胴体部分に描かれた図形は、商品名や製造販売業者名を表示する背景的な図形や、美感を向上させるための装飾若しくは単なる地模様的な装飾ではない。
2 本願商標は、使用による自他商品の識別機能を獲得しているから、商標法第3条第2項により登録を認められるべきである。

第5 当審の判断
1 本願商標について
本願商標は、別掲(1)のとおり、スプレー式缶等の包装容器と認識される円筒状の立体的形状の胴体部分に赤色及び青色を施した装飾的又は背景的な図形を表してなるものである。
2 本願商標の自他商品の識別性について
平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品、役務の出所を表示し、自他商品、自他役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(1)本願商標の立体的形状について
本願商標は、別掲(1)のとおりであるところ、その指定商品である「薬剤」を詰める容器(例えば、スプレー式缶)として通常採択し得る円筒状の立体的形状であり、その商品の形状そのものの範囲を出ないと認識され、かつ、その商品の形状の一形態であることを容易に認識させるにすぎないものであると認められる。
そして、別掲(2)の「証拠調べ通知の内容」中、1及び2の各事実から、本願の指定商品に関する取引の実情においても、本願商標に係る立体的形状であるスプレー式缶の商品が多数製造・販売されている事実を認めることができ、そのほとんどのものが、本願商標と同様の円筒状の立体的形状であると認められるものである。
そうとすると、本願商標の立体的形状は、同種の商品において、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるため、取引上何人もこれを使用する必要があり、その使用を欲するものであって、その立体的形状のみをもって商品の出所を表示する識別標識としての機能を発揮しているものとして一私人に独占を認めるのは、妥当でないものと認められる。
(2)本願商標の立体的形状に付された図形部分について
本願商標は、その構成中に、赤色及び青色の大小の矩形等の図形部分(以下「本願図形」という。)を有するものである。
そして、別掲(2)の「証拠調べ通知の内容」中、1ないし3の各事実からも認められるように、一般的に本願の指定商品を取り扱う業種においては、その商品に商品名及び製造販売業者名等の表示をする場合に、需要者が注意や注目を惹くように装飾的又は背景的図形を施されたものが多数使用されるところ、本願商標の立体的形状に表された本願図形は、需要者がその商品の取引業界において通常採用し得る範囲での装飾等と認識するに止まるものであると認められる。
さらに、本願商標の立体的形状に表された本願図形は、単なる大小の矩形等の図形の組み合わせよりなるものであって、特定の称呼及び観念を生じるものと認めることもできない。
そうとすれば、本願商標の構成中の大小の矩形等の本願図形は、これに接した取引者、需要者をして当該立体的形状であるスプレー式缶の白い胴体部分において、その商品の商品名、あるいは商品の品質・効能等を表示するための背景的な図形として認識されるにすぎず、もしくは、スプレー式缶の商品としての美感を向上させるための装飾的又は背景的な図形と認識させるに止まるため、該図形部分が商品の出所を表示する識別標識としての機能を発揮しているものと認識されることはないものと認められる。
ところで、立体商標の類否に関して、「立体商標は、立体的形状又は立体的形状と平面商標との結合により構成されるものであり、見る方向によって視覚に映る姿が異なるという特殊性を有し、実際に使用される場合において、一時にその全体の形状を視認することができないものであるから、これを考察するに際しては、看者がこれを観察する場合に主として視認するであろう一又は二以上の特定の方向(以下『所定方向』という。)を想定し、所定方向からこれを見たときに看者の視覚に映る姿の特徴によって商品又は役務の出所を識別することができるものとすることが通常であると考えられる。そうであれば、立体商標においては、その全体の形状のみならず、所定方向から見たときの看者の視覚に映る外観(印象)が自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を果たすことになる・・(中略)・・特許庁の商標審査基準が、立体商標類否判断につき、『立体商標の類否は、・・・次のように判断するものとする。ただし、特定の方向から観た場合に視覚に映る姿が立体商標の特徴を表しているとは認められないときはこの限りでない。(イ)立体商標は、原則として、それを特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を表示する平面商標(近似する場合も含む。)と外観において類似する。』と規定するのは以上の趣旨であると解される。」(東京高等裁判所 平成13年1月31日言渡 平成12年(行ケ)第234号)と判示されているところである。
そこで、検討するに、看者が本願の立体的形状に付された平面標章に接したときには、これを観察する場合に主として視認するであろう所定方向とは、顕著に表示されたブランド名や商品の説明書き等が表示された部分を視認できる方向であって、これをもって商品の購入に当たるのが取引の実情と認められる。
そうとすれば、所定方向から見た場合にあって、一時にその全体の平面標章を視認することができない平面標章にあっては、看者の視覚に映る姿に特徴を有していないか、構成が散漫となるものであるから商品の出所を識別することができないものと判断するのが相当である。
特に、本願商標はスプレー式缶の容器であり、実際に本願商標が取引される場においては、看者は、本願商標に係る商品を実際に手にした際に、あるいは、該商品の立体的形状を全体より見ることができるように陳列棚に置かれた際に、その立体的形状の胴体部分に表された本願図形について、一時にその全体の形状を認識することはできないものと認められる。
よって、本願図形は、これを所定方向から見た場合であっても、特定の称呼及び観念を生じるものではなく、その商品の商品名、あるいは商品の品質・効能等を表示するための装飾的又は背景的な図形として認識されるにすぎず、もしくは、スプレー式缶の商品としての美感を向上させるための装飾若しくは単なる地模様的な装飾と認識させるに止まるため、商品の出所を表示する識別標識として機能を発揮しているものと認めることはできない。
さらには、仮に、所定方向から本願商標を見た場合に、その立体的図形に付された本願図形の主たる要素を視認できたとしても、商品の識別標識としての商標は、出所表示機能、品質保証機能及び広告宣伝機能を発揮するところ、このような商標は、商品の包装容器に表示される場合には、一般的にその前面や背部を掩うように大きく表示されることはないのが取引の実情である。
そうとすれば、本願商標の立体的形状に付された本願図形は、所定方向から全容を視認できないものであるから、自他商品識別標識として機能を果たす文字商標を付すことを予定されて表示される背景図形として認識されるものである。
したがって、本願商標の立体的形状に付された本願図形は、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものである。
(3)平成22年5月6日付けの意見書における、本願商標の立体的形状に付された図形部分についての請求人の主張について
請求人は、本願商標の立体的形状に表された図形部分は図形商標として独自性や創造性を有する旨、主張している。
しかしながら、前記認定のとおり、本願図形よりは、特定の称呼及び観念を生じさせるものではなく、その商品の商品名、あるいは商品の品質・効能等を表示するための背景的な図形として認識されるにすぎず、もしくは、スプレー式缶の商品としての美感を向上させるための装飾的又は背景的な図形と認識させるに止まるため、取引業界において採用し得る範囲での装飾等と認識されるものであると認められる。
次に、請求人は、薬剤市場における包装容器についての取引の実情を説明した上で、包装容器についての商標登録の例をあげ、「商品の包装容器に描かれた図形が自体商品の識別にあたり重要な要素であるという取引の実情に鑑みれば、自他商品の識別力の判断において、立体商標の立体的図形に描かれた図形商標も平面商標と同様に取り扱うべきである」旨、主張している。
そこで、検討するに、請求人の提出に係る甲第55号証、同第57号証、同第58号証、同第60号証、同第62号証、同第64号証及び同第66号証による各登録商標は、通常の平面商標であるから、本願商標の立体的形状に付された図形部分とは事案を異にするものであるから、請求人の主張を採用することはできない。
3 本願商標の商標法第3条第2項該当性について
平成22年5月6日付けの意見書において、請求人は、本願商標は使用による自他商品の識別機能を獲得しているとして、本願商標は商標法第3条第2項により登録を認められるべき旨、主張している。
出願に係る商標が、その指定商品との関係において、単に商品の品質、効能、用途等を表示したものと認識させるに止まるために商標法第3条第1項第3号に該当する場合に、それが同条第2項に該当し、使用による識別性が発生したとして登録が認められるか否かは、(a)実際に使用している商標及び商品等、(b)使用開始時期、使用期間、使用地域、(c)該商品の生産、証明若しくは譲渡の数量又は営業の規模(店舗数、営業地域、売上高等)、(d)広告宣伝の方法、回数及び内容、(e)一般紙、業界紙、雑誌又はインターネット等における記事掲載の回数及び内容、(f)需要者の商標の認識度を調査したアンケートの結果等の事実を総合勘案して、出願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるかどうかによって判断するものであり、かつ、使用に係る商標及び商品は、出願に係る商標及びその指定商品と同一の場合に限られるものである。
そこで、これらの観点から本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて検討する。
(1)本願商標と使用に係る商標との同一性について、「商標法3条2項の要件を具備するためには、使用商標は、出願商標と同一であることを要し、出願商標と類似のもの(例えば、文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。なぜなら、同条項は、本来的には自他商品識別力がなく、特定人の独占にもなじまない商標について、特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり、実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして、登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると、同条項は、厳格に解釈し適用されるべきものである。」(知財高等裁判所 平成18年6月12日言渡 平成18年(行ケ)第10054号)と判示されているところである。
そこで、本願商標と、提出に係る各証拠方法中にある、請求人が実際に使用している、請求人の製造及び販売に係る商品である「エアーサロンパス」の構成態様について考察するに、本願商標は別掲(1)のとおりであるところ、請求人の提出に係る甲第69号証、甲第74号証及び甲第75号証並びに当審における別掲(2)の「証拠調べ通知の内容」中、3の請求人による使用の事実によれば、該商品は、本願の指定商品「薬剤」に含まれる「消炎鎮痛剤」であって、本願商標の立体的形状であるスプレー式缶の胴体部分に、白抜きの「AIR」、「SALONPAS」、「ID」及び製造会社名である「Hisamitsu」の文字を、背景図形として認識される本願図形上に付してなるところ、同胴体部分には商品の品質・効能等を意味する「スプレー式鎮痛消炎剤」等の文字の記載があるものである。
そして、本願商標と、請求人の提出に係る甲第69号証、甲第74号証及び甲第75号証記載の「エアーサロンパス」とは、その構成態様を比べても、上記の文字の記載の有無並びに甲第69号証においては本願図形と色彩も異なるため、明らかに同一とは認め難いものであると判断するものである。
また、請求人の提出に係る意見書及び甲第69号証、甲第71号証、甲第72号証及び甲第76号証中にある、使用開始時期、使用期間、使用地域、該商品の生産等の数量又は営業の規模(売上高等)、広告宣伝の方法、回数及び内容、雑誌等における記事掲載の回数及び内容等について検討するに、請求人は意見書において「エアーサロンパス」は1936(昭和38)年の販売以降、半世紀にわたりトップシェアを誇る商品である旨を主張し、甲第71号証による「2009年4月27日<通巻第888号> 国際医薬品情報」において、「エアーサロンパス」の2009年2月期の売上高は20億2600万円であり、請求人による他の消炎鎮痛剤の中には同時期に718億9700万円もの売上高が認められる商品もあるため、提出に係る証拠によっては「エアーサロンパス」は本願出願人による製造・販売に係る商品の中においてもきわめて少ないものと認められ、かつ、甲第72号証による「株式会社インテージ社のSDI移動年計平成21年5月現在(店頭価格ベース)」において、スプレー(噴霧)式の鎮痛消炎剤(一般医薬品)市場における「エアーサロンパス」の市場占有率は81.6%を有するものであるが、前記認定のとおり、その売上高より勘案すると、消炎鎮痛剤の市場全体よりすれば「エアーサロンパス」の売上高が高いものとは認められないため、これらをもって使用による識別力を生じているとする証拠とはなり得ないものと判断する。
広告宣伝についても、請求人は意見書において「エアーサロンパス」の発売当初である1934年から大規模な宣伝広告を行ってきた旨を主張するが、甲第74号証のテレビコマーシャルによる広告宣伝の証左はその放送時期が不明であり、甲第69号証のアドバルーンによる広告宣伝並びに甲第75号証及び甲第76号証による雑誌への広告宣伝及び「東京マラソン2008」への協賛活動の記事は、平成19年5月、同20年2月、同21年5月及び同22年2月における一定期間のものに限られ、また、甲第76号証は「エアーサロンパス」の表示はあるが、これが本願商標と同一の商標か不明であるため、これらをもってしても使用による識別力を生じているとする証拠とはなり得ないものと判断する。
そして、これらの全てのものが前記態様による「エアーサロンパス」に関するものであり、前記認定のとおり、本願商標とは同一とは認められないため、本願商標が使用により識別性を有するに至ったか否かの判断をするための証拠として用いることはできないものと判断する。
よって、本願商標は、提出に係る各証拠によっては、本願商標と使用に係る商標の同一性が認められないため、出願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるかどうかについて判断をするまでもなく、前記の商標法第3条第2項の適用の各要件を具備するものとは認めることはできない。
(2)次に、本願商標の立体的形状としての使用による識別力の獲得について考察するに、本願商標の立体的形状は、前記2(1)の認定のとおり、その指定商品である「薬剤」を詰める容器(スプレー式缶)として通常採択し得る立体的形状であり、その商品の形状そのものの範囲を出ないと認識されるものであり、さらに、「エアーサロンパス」の実際の使用の態様は前記のとおりであるところ、その立体的形状には、常に「AIR」及び「SALONPAS」等の文字を付して製造・販売されており、かつ、前記2(2)の認定のとおり、本願図形よりは、特定の称呼及び観念を生じさせるものではなく、その商品の商品名、あるいは商品の品質・効能等を表示するための背景的な図形として認識されるにすぎず、もしくは、スプレー式缶の商品としての美感を向上させるための装飾的又は背景的な図形と認識させるに止まるため、取引業界において採用し得る範囲での装飾等と認識されるものである。
そうとすると、請求人の製造及び販売に係る商品である「エアーサロンパス」は、該商品の胴体部分に付されている本願図形は自他商品の識別力を有するものではなく、その図形部分を背景とする「AIR」及び「SALONPAS」等の文字が、その商品の出所を表示する識別標識としての機能を発揮し、取引に資されているものと認められるから、請求人の提出に係る各証拠によっては、本願商標がその指定商品に使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできない。
よって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものに該当するということができないため、請求人の前記の主張は採用することはできない。
4 まとめ
以上の事実を総合勘案すると、本願商標に係る立体的形状は、その指定商品である「薬剤」を詰める容器(例えば、スプレー式缶)として通常採択し得る立体的形状であり、その商品の形状そのものの範囲を出ないと認識され、かつ、その商品の形状の一形態であることを容易に認識させるにすぎないものであると認められるため、前記の認定のとおり、その立体的形状のみをもって商品の出所を表示する識別標識としての機能を発揮しているものとして一私人に独占を認めるのは、妥当でないものと認められる。
そして、本願商標の構成中の赤色及び青色の大小の矩形等の図形部分である本願図形は、これに接した取引者、需要者をして当該立体的形状であるスプレー式缶等の白い胴体部分において、その商品の商品名、あるいは商品の品質・効能等を表示するための背景的な図形として認識されるにすぎず、もしくは、スプレー式缶等の商品としての美感を向上させるための装飾的又は背景的な図形と認識させるに止まるため、該図形部分が商品の出所を表示する識別標識としての機能を発揮しているものと認識されることはないものと認められる。
よって、本願商標をその指定商品である「薬剤」に使用しても、当該立体商標について全体観察した結果、これに接する取引者、需要者をして、結局、商品の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎず、商標全体として自他商品の識別標識としての機能を有する商標とは認識し得ないものであるために商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本願商標がその指定商品に使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることができないから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものに該当するということができない。
5 結語
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本願商標(色彩については原本参照)
(第1図)


(第2図)


(第3図)


(第4図)


(第5図)


別掲(2)証拠調べ通知の内容
1 本願の指定商品を取り扱う業界において、特にスプレー式鎮痛消炎剤等のスプレー式缶の胴体部分に文字並びに図形及び文字を組み合わせてなるものを表示して、一般に使用されている事実について(以下、文字の下線は当合議体が線引きしたものである。)
(1)「小林製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「アンメルツコールドスプレー 製品情報」を見出しのもと、「アンメルツコールドスプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「アンメルツコールドスプレー」の文字並びにその商品の品質・効能等を意味する「瞬間冷却」、「スプレー式消炎鎮痛剤」、「医薬品」及び製造会社名である「小林製薬」の文字等と共に走っている人を抽象化した図形の記載がある。
(http://www.kobayashi.co.jp/seihin/an_cs/index.html)
(2)「Kowa(興和グループ)」のウェブサイトにおいて、「バンテリンコーワ1.0%エアロゲル 製品情報」を見出しのもと、「バンテリンコーワ1.0%エアロゲル」を商品名として、その商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品である「バンテリンコーワ1.0%」、長四角形内に「エアロゲル」の文字並びにその商品の品質・効能等を意味する「筋肉・関節の痛みをとる」、「Aero Gel」、「第2類医薬品」及び製造会社名である「Kowa」の文字に人体図の背中の筋肉等を表した図形の記載がある。
(http://hc.kowa.co.jp/vantelin/aero_gel.php)
(3)「TOKUHON(株式会社トクホン)」のウェブサイトにおいて、「トクホンVダッシュ」を見出しのもと、「トクホンVダッシュ」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「トクホンVダッシュ」の文字並びにその商品の品質・効能等を意味する「COOL!!」、「スポーツの筋肉疲労に!」及び製造会社名である「TOKUHON」の文字等と共に背景図と認識される図形等の記載がある。
(http://www.tokuhon.co.jp/products/general/popup/v_dash.html)
(4)「ロート製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「アイスラブスプレー 製品情報」を見出しのもと、「アイスラブスプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名を欧文字により表記したものと認められる「ICE RUB」の文字を大きく表示し、及び「筋肉疲労・筋肉痛にアイスラブスプレー」の文字並びにその商品の品質・効能等を意味する「スポーツ後の筋肉・関節をすばやくアイシング!」及び「瞬間冷却消炎鎮痛剤」等の文字と共に図形等の記載がある。
(http://www.rohto.co.jp/prod/?jan=105281)
(5)「Sato(佐藤製薬株式会社)」のウェブサイトにおいて、「サロメチールID1%スプレー商品紹介」を見出しのもと、「サロメチールID1%スプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「サロメチールID1%スプレー」の文字並びにその商品の品質・効能等を意味する「筋肉・関節の痛みに」、「インドメタシン1%配合」、「肩こり」、「腰痛」、「関節痛」、「第2類医薬品」及び製造会社名である「Sato」の文字等と共に肩を押さえる人を抽象化した図形の記載がある。
(http://www.salomethyl.jp/products/s8.html)
(6)「第一三共ヘルスケア株式会社」のウェブサイトにおいて、「製品情報 救急パテックスIDスプレー」を見出しのもと、「救急パテックスIDスプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「救急パテックスIDスプレー」の文字並びにその商品の品質・効能等を意味する「瞬間冷却」、「インドメタシン1%配合」、「関節・筋肉・肩・腰の痛みに効く」及び製造会社名である第一三共ヘルスケアの商標等の文字とそれらの文字の背景に色を若干変えた背景図と認識される図形の記載がある。
(http://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/patecs_id_spray/index.jsp)
(7)「ケンコーコム」のウェブサイトにおいて、「メンフラアイススプレー120ml」を見出しのもと、「メンフラアイススプレー120ml」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「メンフラアイススプレー120ml」の文字並びにその商品の品質・効能等を意味する「痛みに インドメタシン 氷の泡で冷却」、「肩の痛み」、「関節の痛み」、「腰の痛み」、「筋肉の痛み」及び製造会社である大正製薬の商標等の文字と、それらの文字から人体の患部を指し示すような表示をしていると認識される図形の記載がある。
(http://www.kenko.com/product/item/itm_7741335072.html)
(8)「楽天市場 漢方のサツマ薬局 楽天市場店」のウェブサイトにおいて、「肩こり、腰痛、関節痛にワンプッシュスプレーサロメチール・ゾル130ml」を見出しのもと、「サロメチール・ゾル130ml」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「サロメチールゾル」の文字並びにその商品の品質・効能等を意味する「筋肉痛・関節痛肩こりに」、長四角形内に「うちみ・ねんざ・腰痛に」、「サリチル酸メタル配合」及び「Salomethyl」等の文字及び製造会社名である「sato」の文字等と共に患部である肩を押さえる人及び走ろうとする人を抽象化した絵の図形の記載がある。
(http://item.rakuten.co.jp/satuma/101117/)
2 本願の指定商品を取り扱う業界において、スプレー式缶を使用した商品の胴体部分に文字並びに図形及び文字を組み合わせてなるものを表示して、一般に使用されている事実について(以下、文字の下線は当合議体が線引きしたものである。)
(1)「小林製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「アッチQQ 製品情報」を見出しのもと、「アッチQQ」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「アッチQQ」並びにその商品の品質・効能等を意味する「ヒリヒリ痛いやけど」、「冷やして治す」、「第2類医薬品」及び製造会社名である「小林製薬」の文字等と共に該商品の処方をイラストにより表したものと認められるイラストの図形の記載がある。
(http://www.kobayashi.co.jp/seihin/aqq/index.html)
(2)「小林製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「キズアワワ 製品情報」を見出しのもと、「キズアワワ」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「キズアワワ 泡スプレー」並びにその商品の品質・効能等を意味する「泡で傷口を洗浄・消毒」、「医薬品」及び製造会社名である「小林製薬」の文字等の記載がある。
(http://www.kobayashi.co.jp/seihin/kaw/index.html)
(3)「小林製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「新キズドライパウダースプレー 製品情報」を見出しのもと、「新キズドライ」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「新キズドライ パウダースプレー」並びにその商品の品質・効能等を意味する「ジュクジュクした傷口をサラッとさせる殺菌消毒薬」、「第2類医薬品」及び製造会社名である「小林製薬」の文字等と共に該商品の処方を表したものと認められる絵の図形の記載がある。
(http://www.kobayashi.co.jp/seihin/kds/index.html)
(4)「小林製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「ヒリピタクール 製品情報」を見出しのもと、「ヒリピタクール」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「ヒリピタクール」並びにその商品の品質・効能等を意味する「日焼け後の痛みほてりに」の文字を長四角形内に記載し、「アイススプレー」、「皮ふ炎、ただれ、かぶれに」、「ブフェキサマク製剤」及び製造会社名である「小林製薬」の文字等と共に該商品の使用方法を表したものと認められるマスコットの絵の図形の記載がある。
(http://www.kobayashi.co.jp/seihin/hpc/index.html)
(5)「小林製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「タムチンキパウダースプレー 製品情報」を見出しのもと、「タムチンキパウダースプレーc」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「タムチンキパウダースプレーc」並びにその商品の品質・効能等を意味する「粉末タイプの水虫薬」、「ジュク ジュク水虫に」、「乾燥させて治す」及び製造会社名である「小林製薬」の文字等の記載がある。
(http://www.kobayashi.co.jp/seihin/tc_s/index.html)
(6)「第一三共ヘルスケア株式会社」のウェブサイトにおいて、「製品情報 マキロンsジェット&スプレー」を見出しのもと、「マキロンsジェット&スプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分の長四角形内に商品名である「マキロンsジェット&スプレー」の文字並びに同胴体部分に商品の品質・効能等を意味する「シュッと殺菌」、「シュッと清潔」、「第3類医薬品」、「殺菌消毒薬 外用専用 80ml」、「効能・効果 切傷、すり傷、かき傷、靴ずれ、創傷面の殺菌・消毒、痔疾の場合の肛門の殺菌・消毒」、「キズ口を清潔にするダブルスプレー方式」及び製造会社名である「第一三共ヘルスケア」の文字等が記載され、それらの文字の背景に色を若干変えた背景図と認識される図形の記載がある。
(http://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/makiron_s_jet/index.jsp)
(7)「第一三共ヘルスケア株式会社」のウェブサイトにおいて、「製品情報 ピロエースWパウダースプレー」を見出しのもと、「ピロエースWパウダースプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「ピロエースWパウダースプレー」の文字並びに商品の品質・効能等を意味する「みずむし・たむし用薬」、長四角形内に「抗生物質+抗真菌剤+鎮痔剤 配合 70g」、「第2類医薬品」及び製造会社名である「第一三共ヘルスケア」の文字等が記載され、それらの文字の背景に色を若干変えた背景図と認識される図形の記載がある。
(http://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/pyroace_w_spray/index.jsp)
(8)「大正製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「大正製薬製品情報 ダマリングランデパウダースプレー1日1回 かゆい水虫・たむしに サラサラのパウダー《テルビナフィン塩酸塩配合》」及び「ダマリングランデパウダースプレーの3大特長:【水虫治療薬】ダマリン」を見出しのもと、「ダマリングランデパウダースプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「ダマリン グランデ パウダースプレー」の文字並びに商品の品質・効能等を意味する「サラサラのパウダースプレー」、「かゆい 水虫・たむしに」、「1日1回」、「第2類医薬品」の文字等及び製造会社である「大正製薬」の商標が記載され、それらの文字の背景にらせん状のドリルのような図形の記載がある。
(http://www.catalog-taisho.com/03508.php)
(http://www.taisho.co.jp/dermarin/lineup/menu03.html)
(9)「大正製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「大正製薬製品情報 ダマリンパウダースプレー 水虫・たむしに パウダーでサラサラに」を見出しのもと、「ダマリンパウダースプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「ダマリンパウダースプレー」の文字並びに商品の品質・効能等を意味する「水虫・たむしに」、楕円形の図形内に「パウダーでサラサラに」、「第2類医薬品 90ml」、「かゆい 水虫・たむしに」等の文字及び製造会社である「大正製薬」の鷲の図形(商標)が記載され、それらの文字の背景に色を若干変えた背景図と認識される図形の記載がある。
(http://www.catalog-taisho.com/03460.php)
(10)「大正製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「フレッシュリアップ 薬用育毛トニック」を見出しのもと、「フレッシュリアップ」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「フレッシュリアップ」及びその欧文字により表記したものと認められる「Fresh RiUP」の文字並びにその商品の品質・効能等を意味する「スキッと爽快」の文字及び製造会社である大正製薬の鷲の図形(商標)等を記載し、「フレッシュリアップ」の文字の上に簡単な図形の記載がある。
(http://www.catalog-taisho.com/05721.php)
(11)「ロート製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、「メンソレータムADかゆみ止めスプレー 製品情報」を見出しのもと、「メンソレータムADかゆみ止めスプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「メンソレータムAD かゆみ止めスプレー」の文字並びに商品の品質・効能等を意味する「かゆみ・皮膚炎に」、「第3類医薬品」、「Wのかゆみ止め成分で」、「ムズムズ背中や」、「カサカサすねの」、「かゆみに効く!」、幼い看護婦の図形及び製造会社名である「ROHTO」の文字等が記載され、それらの文字の背景に色を若干変えた背景図と認識される図形等の記載がある。
(http://www.rohto.co.jp/prod/?jan=125012)
(12)「株式会社池田模範堂」のウェブサイトにおいて、「ムシペールパウダーインスプレー」を見出しのもと、「ムシペールパウダーインスプレー」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名と該会社の主力商品名とを併せて「ムヒ」、略四角形内に「虫よけ ムシペールPS」の文字並びに商品の品質・効能等を意味する「さらっとパウダーin」、「医薬品」、「虫よけ成分12%配合」、「しっかりガードで効き目長持ち」、「第2類医薬品」の文字等が記載され、それらの文字の背景に色を若干変えた背景図と認識される図形等の記載がある。
(http://www.ikedamohando.co.jp/products/repellent/mushipale_ps.html)
(13)「Kao(花王株式会社)」のウェブサイトにおいて、「花王 サクセス 薬用育毛トニック」を見出しのもと、「サクセス薬用育毛トニック無香料」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分の円形内に商品名を欧文字により表記したものと認められる「SUCCESS」の文字並びに同胴体部分にその商品の品質・効能等を意味する「New 黄杞エキス(抗酸化成分)新配合」、「3つの血行促進成分で 防ぐ!抜け毛 育てる!毛髪」、「EXTRACOOL」及び製造会社名である「Kao」の文字等を記載し、「SUCCESS」の文字と共に背景図と認識される図形の記載がある。
(http://www.kao.com/jp/success/scs_tonic_01.html)
(14)「ツムラライフサイエンス(ツムラライフサイエンス株式会社)」のウェブサイトにおいて、「モウガインセント 育毛剤」を見出しのもと、「モウガインセント 薬用育毛トニック無香料フレッシュリアップ」を商品名としてその商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「モウガ インセント INCENT」並びに長四角形内にその商品の品質・効能等を意味する「ジェットで爽快!」及び製造会社名である「ツムラライフサイエンス」の文字の記載がある。
(http://www.tsumura-ls.co.jp/products/hair/incent/)
3 本願出願人がその指定商品との関係についてスプレー式缶による商品を使用している事実について(以下、文字の下線は当合議体が線引きしたものである。)
(1)「Hisamitsu(久光製薬株式会社)」のウェブサイトにおいて、「商品情報」を見出しのもと、「エアーサロンパスEX」の項をクリックすると、該商品の商品特徴及び該商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分の長四角形内にそれぞれ商品名を欧文字により表記したものと認められる「AIR」、「SALOMPAS」及び「EX」の文字を、背景となる部分を青色に統一して白抜きで記載し、並びに同胴体部分に商品の品質・効能等を意味する「スプレー式鎮痛消炎剤」、「筋肉痛 筋肉疲労 打撲に エアー サロンパスEX」、「第3類医薬品」等の文字及び製造会社名である「Hisamitsu」の文字が記載され、それらの文字の背景及びその周辺に背景図と認識される図形等の記載がある(以下「使用態様1」という。)。
(http://www.hisamitsu.co.jp/healthcare/products/051.html)
(2)「Hisamitsu(久光製薬株式会社)」のウェブサイトにおいて、「商品情報」を見出しのもと、「エアーサロンパスインドメタシン1.0%」の項をクリックすると、該商品の商品特徴及び該商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分の長四角形内にそれぞれ商品名を欧文字により表記したものと認められる「AIR」、「SALOMPAS」及び「ID」の文字を、背景となる部分を赤色に統一して白抜きで記載し、並びに同胴体部分に商品の品質・効能等を意味する「インドメタシン1.0%」、「第2類医薬品」等の文字及び製造会社名である「Hisamitsu」の文字が記載され、それらの文字の背景及びその周辺に背景図と認識される図形等の記載がある(以下「使用態様2」という。)。
(http://www.hisamitsu.co.jp/healthcare/products/056.html)
(3)「Hisamitsu(久光製薬株式会社)」のウェブサイトにおいて、「商品情報」を見出しのもと、「エアーサロンパスDX」の項をクリックすると、該商品の商品特徴及び該商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分の長四角形内にそれぞれ商品名を欧文字により表記したものと認められる「AIR」、「SALOMPAS」及び「DX」の文字を、背景となる長方形部分を白抜きにして黒字で記載し、並びに同胴体部分に商品の品質・効能等を意味する「フェルビナク3.0%」、「第2類医薬品」等の文字及び製造会社名である「Hisamitsu」の文字が記載され、それらの文字の背景及びその周辺に背景図と認識される図形等の記載がある(以下「使用態様3」という。)。
(http://www.hisamitsu.co.jp/healthcare/products/058.html)
(4)「Hisamitsu(久光製薬株式会社)」のウェブサイトにおいて、「商品情報」を見出しのもと、「ブテナロックVエアー」の項をクリックすると、該商品の商品特徴及び該商品の写真が掲載され、それによるとスプレー式缶の胴体部分に商品名である「ブテナロックV エアー」の文字を記載し、並びに商品の品質・効能等を意味する「水虫・たむしに」、長四角形内に「殺菌 冷却ジェット」、「かゆみ止め成分配合 殺菌力 1」、「1日1回で効く」、「塩酸ブテナフィン配合」、「医薬品」等の文字及び製造会社名である「Hisamitsu」の文字が記載され、それらの文字の背景及びその周辺に背景図と認識される図形等の記載がある。
(http://www.hisamitsu.co.jp/healthcare/products/129.html)
4 医薬品及び医薬部外品等の表示義務について(以下、文字の下線は当合議体が線引きしたものである。)
(1)薬事法(昭和35年法律第145号)は、その第50条(直接の容器等の記載事項)において、「医薬品は、その直接の容器又は直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。1.製造販売業者の氏名又は名称及び住所 2.名称(日本薬局方に収められている医薬品にあつては日本薬局方において定められた名称、その他の医薬品で一般的名称があるものにあつてはその一般的名称) 3.製造番号又は製造記号 4.重量、容量又は個数等の内容量 5.日本薬局方に収められている医薬品にあつては、『日本薬局方』の文字及び日本薬局方において直接の容器又は直接の被包に記載するように定められた事項 6.一般用医薬品にあつては、第36条の3第1項に規定する区分ごとに、厚生労働省令で定める事項 7.第42条第1項の規定によつてその基準が定められた医薬品にあつては、貯法、有効期間その他その基準において直接の容器又は直接の被包に記載するように定められた事項 8.日本薬局方に収められていない医薬品にあつては、その有効成分の名称(一般的名称があるものにあつては、その一般的名称)及びその分量(有効成分が不明のものにあつては、その本質及び製造方法の要旨) 9.習慣性があるものとして厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、『注意-習慣性あり』の文字 10.前条第1項の規定により厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、『注意-医師等の処方せんにより使用すること』の文字 11.厚生労働大臣が指定する医薬品にあつては、『注意-人体に使用しないこと』の文字 12.厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、その使用の期限 13.前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項」と規定され、医薬品等の容器、包装もしくは直接の被包に、製造販売業者の氏名又は名称及び住所等の事項の記載が義務づけられている。
(2)「薬事法 Wikipedia」を見出しのもと、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器の取扱い」の「添付文書」の項に「医薬品及び医療機器は、原則として、当該製品に、警告、禁忌・禁止、使用上の注意、品目仕様、操作方法、包装単位などを記載した文書を添付しなければならない。これを『添付文書』という。」、同じく「表示」の項に「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器には、その容器、包装もしくは直接の被包に、製造販売業者の氏名又は名称及び住所、名称、製造番号又は製造記号など、法で定められた事項を記載する義務がある。」、同じく「広告規制」の項に「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器は、その承認もしくは認証の内容又は届出をした内容の範囲を超えた効能効果等を標榜することはできない。」の記載がある。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%AC%E4%BA%8B%E6%B3%95)
5 まとめ
前記1ないし3の事実より、本願の指定商品を取り扱う業界においては、その指定商品である「薬剤」を詰める容器としてスプレー式缶による商品は多数取引・流通されている事実が認められる。
次に、前記1及び2の事実より、本願の指定商品を取り扱う業界において、スプレー式缶として商品を使用する場合には、その胴体部分に該商品の商品名、該商品の製造会社名若しくは製造会社を示す商標、品質・効能等を意味する文字を表示し、さらにその文字に背景図形と認識させる図形若しくはその文字に該商品の使用方法・効能等を認識させる図形及び装飾図形が記載されている事実が認められる。
さらには、本願の指定商品を取り扱う業界において、スプレー式缶として商品を使用する場合には、その胴体部分等に図形のみを記載して使用されている事実は認めることができなかった。
次に、前記3の事実より、本願の請求人(出願人)による使用の事実においても、前記のとおり、スプレー式缶商品の胴体部分に商品名を表示し、その商品の製造会社名若しくは製造会社を示す商標を表示し、さらには品質・効能等を意味する文字にその背景図形及び装飾図形と認識される図形をあわせてなる構成・態様により使用されている事実が認められる。
そこで、本願商標の構成・態様と使用態様1ないし3を比較するに、本願商標の構成態様は、使用態様1ないし3と比して、スプレー式缶の胴体部分から商品名及び品質・効能等として記載する文字をはずした場合の背景図形と同一又は類似する図形と認められるものである。
また、前記4の事実より、薬事法(昭和35年法律第145号)は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保等のために、医薬品等には、その容器、包装もしくは直接の被包に、製造販売業者の氏名又は名称及び住所、名称、製造番号又は製造記号など、同法で定められた事項を記載する義務があり、さらには、前記1ないし前記3の事実よりも、実際に取引・流通されている商品には必ず商品名、製造販売業者名あるいは品質・効能等の表示が付されている事実が認められる。
以上の事実を総合勘案すると、本願商標は、その指定商品である「薬剤」を詰める容器(スプレー式缶)として通常採択し得る立体的形状であり、その商品の形状そのものの範囲を出ないと認識され、かつ、その商品の形状の一形態であることを容易に認識させるにすぎないものであると認められる。
そして、本願の指定商品は、取引・販売するにあたりその商品に商品名及び製造販売業者名等の表示をすることが法律により義務づけられており、前記1ないし3の各事実からも認められるように、一般的にその文字は需要者が注意や注目を惹くように背景図形としての図形部分を伴うものが数多く確認されるところである。
さらに、請求人は、本願商標の立体的形状に表された図形部分は図形商標として独自性や創造性を有する旨を主張しているが、前記の各事実より、該図形部分は、需要者がその商品の取引業界において採用し得る範囲での装飾等と認識するに止まるものであると認められる。
そうとすれば、本願の構成中の「赤色を付した長方形の図形部分」等は、これに接した取引者、需要者をして当該立体的形状であるスプレー式缶の白い胴体部分において、その商品の商品名、あるいは商品の品質・効能等を表示するための背景的な図形として認識されるにすぎず、もしくは、スプレー式缶の商品として美感を向上させるための装飾若しくは単なる地模様的な装飾と認識させるに止まるため、該図形部分が商品の出所を表示する識別標識としての機能を発揮しているものと認識されることはないものと認められる。
よって、本願商標をその指定商品中「スプレー式薬剤」に使用しても、当該立体商標について全体観察した結果、これに接する取引者、需要者をして、結局、商品の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎず、商標全体として自他商品の識別標識としての機能を有しないものと認められる。
したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、上記以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当するといわなければならない。

審理終結日 2010-12-06 
結審通知日 2010-12-13 
審決日 2011-01-05 
出願番号 商願2008-507(T2008-507) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X05)
T 1 8・ 17- Z (X05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 瀧本 佐代子
旦 克昌
代理人 上原 空也 
代理人 黒川 朋也 
代理人 工藤 莞司 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 佐藤 英二 

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