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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X141825
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X141825
管理番号 1231795 
異議申立番号 異議2010-900071 
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2011-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-03-19 
確定日 2011-01-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第5286515号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5286515号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5286515号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成21年4月21日に登録出願、第14類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年11月12日に登録査定、同年12月11日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由(要点)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、(1)の登録商標を引用し、申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
(1)申立人の引用する商標
申立人が引用する商標は、次のとおりであり(以下、これらの商標を総称するときは「引用各商標」という。)、いずれも現に有効に存続しているものである。
ア 登録第829905号商標は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和42年9月14日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同44年8月28日に設定登録されたものであり、その後、平成22年3月10日に指定商品を第14類、第18類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。
イ 登録第1370276号商標は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和49年7月16日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同54年1月30日に設定登録されたものであり、その後、平成21年3月11日に指定商品を第20類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。
ウ 登録第1995595号商標は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和59年7月25日に登録出願、第13類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同62年10月27日に設定登録されたものであり、その後、平成21年6月3日に指定商品を第6類、第8類及び第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。
エ 登録第2227511号商標は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和59年7月25日に登録出願、第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成2年4月23日に設定登録されたものであり、その後、平成22年6月9日に指定商品を第9類及び第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、申立人の世界的著名性を有する、モノグラム商標をモチーフにして作成されたことは明らかである。すなわち、本件商標の出願人名とはなんら関係のない「Y」と「S」を引用各商標とほぼ同程度の傾きや尺度で配し、そこにさらに体を「L」字型に湾曲させた擬人化された熊の図形を配してなるものである。
そして、引用各商標は、申立人の商標として、我が国のみならず世界中おいて極めて著名な商標であり、本件商標が当該指定商品について使用されると、その出所につき、少なくともいわゆる広義の混同を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、世界的著名性を有する引用各商標の当該著名性にフリー・ライドするものであり、かつその登録を維持することは国際信義にも反するため、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

3 本件商標の取消理由
商標権者に対して通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用各商標の著名性について
申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 イヴ・サン・ローラン(Yves Saint-Laurent)は、フランス領アルジェリア出身のファッションデザイナーであり、1962年に自身のレーベル「イブ・サンローラン(YSL)」を設立し、1989年に、ファッションブランドとして世界で初めてパリ証券取引所に株の公開をし、1993年に、パリで「デ・ドール賞」を受賞している。
そして、我が国においては、2001年9月29日に、イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュの旗艦店となる青山店がオープンし、2005年3月には、青山に次ぐ旗艦店が丸の内にオープンし、2006年2月には、表参道ヒルズに旗艦店がオープンしており、その外にも、札幌大丸、池袋西武、渋谷西武、渋谷東急、新宿伊勢丹、名古屋三越、京都大丸、大阪ハービスプラザ、うめだ阪急、そごう心斎橋等々にイヴ・サンローランの店舗が設けられている。
また、甲第6号証中には「(イヴ・サンローランは、)クリスチャン・ディオール、ココ・シャネル、ポール・ポワレらとともに、20世紀のファッション業界をリードした。(中略)サンローラン氏の名前と「YSL」のロゴは、最新トレンドと同意語になった。(中略)1960-70年代は、日本に続き、韓国や台湾の市場にも参入。世界のファッション界をリードした。」と記載されている。
さらに、インターネット検索サイトGoogleの画像検索(甲第10号証)によれば、引用各商標が本件商標の指定商品である「被服、ベルト、かばん類、袋物、時計」等を含む各種の商品に付され、膨大な数の商品として流通している事実が認められる。
以上の事実によれば、引用各商標は、申立人が「被服」をはじめとする数多くの商品について使用する商標として、本件商標の登録出願の時より前から、我が国はもとより、世界各国の取引者、需要者の間において広く知られていたものと認められ、その著名性は登録査定時においても継続していたものということができる。
イ 本件商標と引用各商標との類否について
本件商標は、別掲(1)に示したとおり、模様を施した「Y」と「S」の欧文字をやゝ右に傾け、かつ、該文字の一部が重なり合うように表されており、該「S」の文字の右側に、立ち上がっている状態の擬人化した熊をやや湾曲させるように配した構成からなるものである。
一方、引用各商標は、別掲(2)に示したとおり、「Y」と「S」と「L」の欧文字をやゝ右に傾け、かつ、「Y」と「S」及び「S」と「L」の各文字の一部が重なり合うように配された構成からなるものである。
そこで、この両商標を比較すると、本件商標構成中の「Y」と「S」の欧文字の配置は、引用各商標における「Y」と「S」の欧文字の配置と同じであるばかりでなく、本件商標構成中の熊の図形の配置も引用各商標における「L」の欧文字と同じ位置に配置されているものである。
そうとすれば、本件商標は、明らかに、引用各商標をモチーフにして作成されたものであって、容易に引用各商標を想起・連想させるものといわなければならない。
ウ 出所の混同のおそれについて
以上を総合してみれば、商標権者が本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者・需要者は、申立人の業務に係る著名な引用各商標を連想・想起し、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号について
上記の状況に照らしてみれば、本件商標は、申立人の使用に係る引用各商標と偶然に一致したものとは認め難いところであり、商標権者は、本件商標が申立人の業務に係る著名な引用各商標を想起・連想させることを承知のうえ、申立人に無断で、申立人が引用各商標を使用している商品と同一又は類似する商品を指定商品として、本件商標の商標登録出願をし、その登録を受けたものといわざるを得ない。
しかも、商標権者は、本件商標ばかりでなく、シャネルの著名な商標をモチーフにした商標(甲第11号証)やラルフ・ローレンの著名な商標をモチーフにした商標(甲第12号証)も出願している事実が認められる。
してみれば、商標権者のかかる行為によって出願された本件商標は、不正の目的をもってなされたものというべきであり、公正な取引秩序を乱し、公の秩序を害するものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反してされたものといわなければならない。

4 取消理由に対する申立人の意見(要旨)
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用各商標の著名性
著名性については、申立人の申立の理由において、引用各商標についての使用事実の証拠は記載されているが、引用各商標の著名性の事実についての証拠は何ら上げられていない。
イ 本件商標と引用商標との類否
本件商標は「Y」と「Sと覚しき欧文字」とを上下二段書きし、「Sと覚しき欧文字」の前面に「Sと覚しき欧文字」に重なり合うように特異な形態の熊の向こう側を、「Sと覚しき欧文字」の2倍の幅で配した構成であるから、前面に表示されている「特異な形態の熊」の図形が看者の注目する部分であるとするのが妥当である。
なぜなら、立ち上がり看者をにらみつけている特異な形態の熊の図形が前面に大きく表示され、欧文字「Y」、「Sと覚しき欧文字」は良く見慣れた、広く使用されているものであるからである。
したがって、本件商標は「特異な形態の熊の図形」の構成態様が本件商標の特徴的な部分であり、この部分が本件商標の要部であるとするのが自然である。
それに対して、取消理由通知によれば、「本件商標構成中の熊の図形の配置は引用各商標におけるLの欧文字と同じ位置に配置されている」と判断しているが、引用各商標における「L」の欧文字は「S」に対して下段に重なり合うように配置しており、本件商標の要部である特異な形態の熊は「Sと覚しき欧文字」と同じ高さであって、「Sと覚しき欧文字」に対して低い位置に配置されていないこと明白である。
さらに、取消理由通知には、本件商標の要部である熊の図形が何故、欧文字「L」と認識されるか全く開示されていない。
引用各商標は、「Y」と「S」と「L」の欧文字をやや右に傾け、かつ、「Y」と「S」及び「S」と「L」の各文字の一部が重なり合うように配された構成から成るものであり、その各文字を同一色で、しかも細線で表したものである。
この繊細な上下三段書きし、一部を重ね合わせた欧文字が著名商標であることは認識している。
この引用各商標と本件商標は全く異なるものである。すなわち、本件商標は特異な形態の熊の図形を主モチーフにしているため、この図形が全く表示されていない引用各商標と類似する点は全く見当たらない。
本件商標は、特異な形態の熊の図形が要部であり、この要部と引用各商標とは全くその外観・称呼・観念において同一にする点がない。
さらに、本件商標はこの要部を含めた全体の構成が愛嬌ある漫画的な印象を強く看者に訴えるのに対して、引用各商標はその全体的な構成が繊細な外観であるから、両者の全体的な外観・観念も著しく異なる。
なお、仮に本件商標の構成中の要部ではない欧文字「Y」と「Sと覚しき欧文字」と、引用各商標を構成する欧文字「Y」「S」とが類似するとしても、商標登録第3250480号、同第4791212号、同第1542962号、同第4197995号など欧文字「Y」と「S」とが重なり合う構成態様の商標が登録されている。
ウ 出所の混同のおそれについて
これらの事実を総合的に判断すると、本件商標は引用各商標を想起、連想させるものではないこと明白であるので、申立人又は同一と関係を有する者の業務に係るものであるとは何人も認識しないとするのが妥当であり、申立人の商品の出所について混同を生じるおそれがないので、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
以上のごとく、本件商標は、引用各商標を想起、連想させるものではないので、当然不正の目的をもって出願したものではない。
本件商標の商標権者は熊の図形を主モチーフとして、申立人の証拠である甲第11号証などを出願したものである。
してみれば、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反するものではない。

5 当審の判断
(1)前記3の取消理由のとおり、本件商標は、引用各商標をモチーフにして作成されたものであって、容易に引用各商標を想起・連想させるものであるから、商標権者が本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者・需要者は、申立人の業務に係る著名な引用各商標を連想・想起し、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じるおそれがあるものといわなければならない。
また、商標権者は、本件商標が申立人の業務に係る著名な引用各商標を想起・連想させることを承知のうえ、申立人に無断で、申立人が引用各商標を使用している商品と同一又は類似する商品を指定商品として、本件商標の商標登録出願をし、その登録を受けたものといわざるを得ず、商標権者のかかる行為によって出願された本件商標は、不正の目的をもってなされたものというべきであり、公正な取引秩序を乱し、公の秩序を害するものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第7号に該当する。
なお、引用各商標の著名性については、商標権者も意見書で、「引用各商標は、(中略)配された構成から成るものであり、その各文字を同一色で、しかも細線で表したものである。この繊細な上下三段書きし、一部を重ね合わせた欧文字が著名商標であることは認識している。」旨述べていることからも明らかである。
(2)商標権者は、前記3の取消理由に対し、「引用各商標と本件商標は全く異なるものであり、本件商標は特異な形態の熊の図形を主モチーフにしているため、この図形が全く表示されていない引用各商標と類似する点は全く見当たらない。よって、本件商標は引用各商標を想起、連想させるものではないので、申立人又は同一と関係を有する者の業務に係るものであるとは何人も認識しないから、申立人の商品の出所について混同を生じるおそれがない。」旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」の有無の判断においては、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきであると解される。
これを本件についてみると、本件商標と引用各商標とは、それぞれの構成中「Y」、「S(と覚しき欧文字)」及び「L」と「熊の図形」の各構成要素の配置を共通にし、引用各商標は、前記のとおり、我が国はもとより世界各国の取引者、需要者の間において広く知られていたものであり、本件商標の指定商品と引用各商標が使用されている商品は共にファッション関連の商品であって、取引者、需要者を共通にするものである。
そうとすると、これらを総合して考慮すれば、たとえ、本件商標は、その構成中に特異な形態の熊の図形を有しているとしても、これを商標権者がその指定商品に使用するときには、取引者、需要者をして、引用各商標を連想、想起させ、その商品が申立人若しくは同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならないから、この点についての商標権者の主張は採用できない。
また、商標権者は、「本件商標は、引用各商標を想起、連想させるものではないので、当然不正の目的をもって出願したものではない。」旨主張している。
しかしながら、本件商標が引用各商標を連想、想起すること、上述のとおりであり、しかも、商標権者は、本件商標ばかりでなく、シャネルやラルフ・ローレンの著名な商標をモチーフにした商標も出願している事実が認められる。
してみれば、本件商標は、不正の目的をもって出願されたものであって、公正な取引秩序を乱し、公の秩序を害するものといわなければならない。
よって、この点についての商標権者の主張も採用できない。
さらに、商標権者が、その主張の根拠として挙げた登録例は、いずれも本件商標とは商標の構成態様を明らかに異にするものであるから、本件についての判断の参考になり得ない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(色彩については原本参照)

(2)引用各商標



異議決定日 2010-12-10 
出願番号 商願2009-34312(T2009-34312) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (X141825)
T 1 651・ 22- Z (X141825)
最終処分 取消  
前審関与審査官 林 圭輔 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 2009-12-11 
登録番号 商標登録第5286515号(T5286515) 
権利者 西川 真理江
商標の称呼 ワイエス 
代理人 上原 空也 
代理人 山田 和明 
代理人 工藤 莞司 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 黒川 朋也 

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