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審決分類 |
審判 全部無効 商8条先願 無効としない X39 |
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管理番号 | 1231754 |
審判番号 | 無効2010-890049 |
総通号数 | 135 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-03-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-06-29 |
確定日 | 2011-02-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5300682号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5300682号商標(以下「本件商標」という。)は、「合格便」の漢字を標準文字で表してなり、平成21年3月25日に登録出願、第39類「車両による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,引越の代行,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,配達物の一時預かり」を指定役務として、同22年1月29日に登録査定がなされ、同年2月12日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 1 引用商標 請求人が引用する登録第5314688号商標(以下「引用商標」という。)は、「合格」の漢字を横書きしてなり、平成21年1月28日に登録出願、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,引越の代行,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,配達物の一時預かり,駐車場の管理」を指定役務として、同22年3月8日に登録査定がなされ、同22年4月9日に設定登録されたものである。 2 請求の理由 (1)出願日について 本件商標の出願日は、平成21年3月25日であり、引用商標の出願日は、同年1月28日であるから、引用商標が先出願であることは、明白である。 (2)本件商標と引用商標との類否について 呼称・外観判断では、引用商標は、「合格」であるのに対して、本件商標は、引用商標に一字のみを追加した「合格便」であり、類似と判断される。 本件商標は、「ゴーカクビン」と称呼し、引用商標は、「ゴーカク」と称呼するが、指定役務が同じ第39類であり観念を共有するため、同一又は類似の役務と判断される。 (3)指定役務 本件商標と引用商標とは、役務が類似する。 (4)本件商標と引用商標との登録関係の原因 引用商標は、出願後に手続補正があり、その期間およそ2ヶ月の間に、本件商標は、誤って登録されたものと考える。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べた。 請求人は、本件商標が引用商標に類似すると主張する根拠に、双方一字違いの文字構成を挙げているが、これは、甚だしい誤認によるものである。 さらに、請求人は、引用商標の手続補正の間げきを縫って本件商標が誤って登録されたと主張しているが誤解である。この答弁は、被請求人が本件商標に係る審査において、拒絶理由通知に対して提出した意見書の延長線上にあるもので、本件商標と引用商標との間に類似性がないとの判断は、既になされていると認識している。 被請求人は、第39類の中から「便」と付く区別された以下の登録例を示す。 OK便(登録3027051号)とOK(登録3099048号)。 ハロー便(登録3034909号)とハロー(登録5038094号)。 エース便(登録3116600号)とACE(登録3318767号)。 第4 当審の判断 商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である。 また、商標の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、したがって、上記3点のうち1点において類似するものでも、他の2点において著しく相違するなどして、取引の実情等によって、商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標とすべきではない(最高裁昭和43年2月27日判決・民集22巻2号399頁同旨。) さらに、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されない(最高裁昭和38年12月5日判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成20年9月8日判決・判例時報2021号92頁,判例タイムズ1280号114頁、平成22年(行ケ)第10101号平成22年8月19日判決同旨)。 これを本件についてみるに、本件商標は、前記第1のとおり、「合格便」の漢字からなるところ、これを構成する文字は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔をもって外観上まとまりよく一体に表してなるものであるが、その構成中の「合格」の文字は、「ある条件や格式に適合すること。入学試験・採用試験・資格試験などに及第すること。」等(「広辞苑第六版」2008年1月11日 株式会社岩波書店発行)の意味を有し、また、「便」の文字は、「たより。たのみ。よい都合。」等(前出「広辞苑第六版」)の意味を有するものであり、いずれも一般に親しまれた成語といえるものであるから、各文字の大きさ及び書体は同一であって、その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるとしても、その構成文字からみれば、「合格」と「便」の各漢字からなる結合商標と理解されるものである。 しかして、本件商標を構成する文字は、上記のとおり、外観上まとまりよく一体に表してなるものであり、これに相応して生ずる「ゴウカクビン」の称呼も冗長ではなく一気一連に称呼し得るものである。 そして、上記したとおり、本件商標の構成中の「合格」の文字は、「入学試験・採用試験・資格試験などに及第すること」等の意味を有し、「便」の文字は、「たより」等の意味を有するものとして、いずれも一般に親しまれた成語といえるものであるから、本件商標は、構成文字全体から「入学試験などに及第することのたより」の意味合いを生ずるものである。 ほかに、本件商標を「合格」と「便」との各文字に分離して観察しなければならない特段の理由は、見当たらない。 そうとすれば、本件商標は、その構成中の「合格」の文字部分のみが役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではないといえるから、「合格」の文字部分のみを抽出して、引用商標との類否の判断をすることは許されないというべきである。 以上によれば、本件商標は、その構成文字に相応して「ゴウカクビン」の称呼のみを生じ、「入学試験などに及第することのたより」の観念を生ずるといえる。 他方、引用商標は、前記第2のとおり、「合格」の文字からなるものであるから、「ゴウカク」の称呼を生じ、「入学試験などに及第すること」(前出「広辞苑第六版」)の観念を生ずるものといえる。 そこで、本件商標と引用商標との類否について検討するに、称呼においては、本件商標の称呼は、「ゴウカクビン」であるのに対し、引用商標の称呼は、「ゴウカク」であって、その構成音数も前者が6音、後者が4音と明らかに相違し、末尾において「ビン」の音の有無に差異を有するものであるから、これらが称呼全体に及ぼす影響は大きく、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合であっても、十分に聴別し得るものである。 また、本件商標は、「合格便」の漢字3文字からなるのに対して、引用商標は、「合格」の漢字2文字からなるものであり、比較的短い文字数からなる両商標においては、「便」の漢字の有無の顕著な差異により、外観においては、両商標は、時と所を異にして観察しても相紛れるおそれがない。 さらに、本件商標は、「入学試験などに及第することのたより」の観念を生ずるのに対して、引用商標は、「入学試験などに及第すること」の観念を生ずるものであるから、観念においては、両商標は、明らかに相違する。 この点に関して請求人は、「本件商標は、引用商標に一字のみを追加した」旨主張するが、本件商標と引用商標のように、漢字の2文字と3文字とでは、外観が明らかに異なるというべきであり、称呼及び観念においても、上記のとおり判断できるものであるから、かかる主張は、採用することができない。 してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれからみても、何ら相紛れるところのない非類似の商標である。 なお、請求人は、本件商標の登録を無効とする理由について、具体的な適用条文を明らかにしていないが、その主張の趣旨にかんがみれば、商標法第8条第1項の規定に該当すると主張したものと解される。 そうとすれば、本件商標は、商標法第8条第1項の規定に該当しない。 したがって、本件商標は、商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-30 |
結審通知日 | 2010-12-03 |
審決日 | 2010-12-14 |
出願番号 | 商願2009-21460(T2009-21460) |
審決分類 |
T
1
11・
4-
Y
(X39)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平澤 芳行、浦崎 直之、大島 康浩 |
特許庁審判長 |
井岡 賢一 |
特許庁審判官 |
小畑 恵一 末武 久佳 |
登録日 | 2010-02-12 |
登録番号 | 商標登録第5300682号(T5300682) |
商標の称呼 | ゴーカクビン、ゴーカク |