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審決分類 審判 査定不服 商品(役務)の類否 登録しない X44
審判 査定不服 商標の周知 登録しない X44
審判 査定不服 観念類似 登録しない X44
審判 査定不服 称呼類似 登録しない X44
管理番号 1231699 
審判番号 不服2009-11007 
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-12 
確定日 2011-01-26 
事件の表示 商願2008-38246拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第44類「入浴施設の提供」を指定役務として、平成20年5月19日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、福島県南会津郡南会津町所在の旅館・民宿等が役務『温泉浴場施設の提供』について使用し、本願商標の登録出願前より取引者、需要者間に広く認識されている商標『湯ノ花温泉』(以下、「引用商標」という。)と類似する商標と認められる『湯の華温泉』を有するものであり、かつ、前記役務と同一又は類似の役務に使用するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第10号について
商標法第4条第1項第10号において、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」は、商標登録を受けることができない旨規定している。
以下、本願商標について、本号の該当性について検討する。

2 本願商標の商標法第4条第1項第10号の該当性について
(1)引用商標の周知性について
引用商標は、「湯ノ花温泉」の文字よりなるところ、「湯ノ花」の文字は、日本郵便のウェブサイト(http://www.post.japanpost.jp/cgi-zip/zipcode.php?pref=7&city=1073680&cmp=1)によれば、「福島県南会津郡南会津町」における町域の一つを表すものである。また、「湯ノ花温泉」の文字は、「福島県南西部、南会津郡南会津町。湯ノ岐川の渓流に臨む塩化物泉。山間の湯で、北500mに石湯温泉がある。周囲は会津の秘境として知られ、紅葉が特に美しい。」(コンサイス日本地名事典第5版)の記載がある。
そして、「湯ノ花温泉」の文字は、以下の図書情報及びインターネットホームページの情報によると、本願の出願時及び査定時において、福島県南会津郡南会津町に存する旅館、民宿及び共同浴場等の施設が、その業務に係る役務、すなわち「入浴施設の提供」の役務について使用している事実を窺い知ることができる。
<図書情報>(以下、下線は、当合議体で付したものである。)
ア 「コンパクト版日本地名百科事典」(白井勝也編著 発行所 小学館
発行 1998年6月20日 1,359頁)
「湯ノ花温泉(福島県)」は、「県南西部、伊南川最上流部湯ノ岐川の段丘上の750mにある温泉。14世紀の開湯で、木賊温泉とともに、湿原植物で知られる田代山の登山口。」との記載がある。
イ 「全国温泉大事典」(野口冬人著 発行所 旅行読売出版社 発行 1997年12月18日 198頁)
「湯ノ花温泉」のタイトルの下、「・・・湯ノ岐川沿いには和風の宿が数件建ち並び檜風呂を持つ宿などもあり、・・・商業的なニオイが全くない、保養・静養向きの温泉だ。」との記載がある。
ウ 「とっておきの日帰り温泉 東北編」(編集部 IT・地図旅行グループ編 発行所 (株)ジエ・エ-・エフ出版社 発行 2007年11月 141頁)
福島県の共同浴場の一つとして、「南会津町湯ノ花温泉」、「湯端の湯」が紹介されている。
エ 「JTBの旅ノートプラス全国温泉案内 改訂7版」(企画・編修 るるぶ社国内ガイドブック編集部 発行所 JTB 発行 2000年1月1日 144頁)
「湯ノ花温泉」の記載がある。
オ 「『日本の旅が見えてくる』JGUIDE HOLIDAY 日本の温泉-東日本編」(旅行図書編集部編 発行所(株)山と渓谷社 発行 1998年4月 119頁)
「湯ノ花温泉」の記載がある。
<インターネット・ホームページ情報>
カ 「旅館清瀧」(福島県南会津郡南会津町湯ノ花1228)のサイトには、「湯ノ花温泉/奥会津の宿 清瀧」の記載がある。
(http://www.f-onsen.com/kiyotaki/index.html)
キ 「民宿かじや」(福島県南会津郡南会津町湯ノ花1000-1)のサイトには、「湯ノ花温泉 民宿かじや」の記載がある。
(http://www.caretv.jp/kaziya/)
ク 「旅館湯本屋」(福島県南会津郡南会津町湯ノ花1234)のサイトには、「天然温泉/湯ノ花温泉 いわなの宿/旅館湯本屋」の記載がある。
(http://www.f-onsen.com/ryokan-yumotoya/)
ケ 「和風ペンション山の音」(福島県南会津郡南会津町湯ノ花544)のサイトには、「奥会津 湯ノ花温泉 和風ペンション/山の音」の記載がある。
(http://www.f-onsen.com/yamanooto/)
コ 「福島県の温泉 湯の花温泉・共同浴場」のサイトには、「湯の花温泉/石湯」、「湯の花温泉/湯端の湯」、「湯の花温泉/天神湯」及び「湯の花温泉/弘法の湯」の4軒の共同浴場が紹介されている。
(http://yamapon65.fc2web.com/fukusima_3_yunohana.html)
また、「湯ノ花温泉」は、「南会津町 観光情報」のホームページ(http://www.minamiaizu.org/kanko/detail.php?id=33&cid=1)によると、700年前に開湯した歴史ある温泉郷であり、23軒余りの旅館・民宿及び4軒の共同浴場を有することからすれば、長年にわたり、入浴施設の提供を行ってきたことが確認できるものである。
してみると、引用商標は、本願の登録出願前から、福島県南会津郡南会津町在の旅館、共同浴場等の施設が使用する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものとみるのが相当である。

(2)本願商標と引用商標の類否について
本願商標は、別掲のとおり「湯の華温泉美肌の湯」の文字と、「美肌の湯」の文字の各漢字の上に、振り仮名様に小さく「び はだ ゆ」の平仮名を配置した構成よりなるところ、やや小さく細い書体で書された「湯の華温泉」の文字部分と、大きく太い書体で書された「美肌の湯(び はだ ゆ)」の文字部分とは、視覚上明らかに分離して看取されるものであり、かつ、本願商標を構成する各文字を、常に一体不可分のものとしてのみ観察しなければならない格別の理由は見いだせないものである。
そして、本願商標の構成中、「美肌の湯(び はだ ゆ)」の文字部分は、本願商標の指定役務に係る業界においては、肌に潤いを与えたり、保湿成分が含まれていること等の泉質を指称する語として、広く一般に使用され、よく知られているものであることからすれば、該文字は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないか、又は、その機能が極めて弱いというのが相当である。
そうとすると、本願指定役務との関係においては、それ自体独立して自他役務の識別標識としての機能を果たし得ると認められる「湯の華温泉」の文字部分が要部といえるものであり、該部分に強く印象を留め、これより生ずる称呼及び観念をもって役務の提供に当たる場合も決して少なくないものというのが相当である。
ところで、本願商標中の「湯の華温泉」の文字と、引用商標「湯ノ花温泉」の文字とは、「湯の華」と「湯ノ花」の文字に差異を有するものではあるが、広辞苑第六版によれば、「鉱泉中に生じる沈殿物」である「ゆのはな」は、「湯の華・湯の花」の両方の文字で表記されることからして、両者は同義であると認められる。
そうすると、本願商標中の要部である「湯の華温泉」の文字部分より、「ユノハナオンセン」の称呼を生じ、「(鉱泉中に生じる沈殿物である)ゆのはなの温泉」の観念が生ずるものである。
これに対し、引用商標は、「湯ノ花温泉」の文字よりなるものであり、これより、「ユノハナオンセン」の称呼を生じ、福島県南会津郡南会津町所在の「湯ノ花温泉」及び「ゆのはなの温泉」の観念が生ずるものである。
そこで、本願商標中の「湯の華温泉」の文字部分と、引用商標「湯ノ花温泉」との類否について検討するに、両者は、語頭及び語尾の文字を共通にすることから、外観において近似した印象を与え、「ユノハナオンセン」の称呼及び「ゆのはなの温泉」の観念を共通にする類似の商標であり、また、本願商標の指定役務は、該引用商標の役務と同一又は類似する役務であることが認められる。
したがって、本願商標は、福島県南会津郡南会津町の旅館及び共同浴場等の温泉施設等が「入浴施設の提供」の役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標と類似する商標であって、その役務又はこれらに類似する役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(3)出願人(請求人)(以下「請求人」という。)の主張
ア 請求人は、「引用商標は、福島県南会津郡南会津町にある温泉地域を指し、『温泉浴場施設の提供』の役務について個別の具体的な商標として使用されているわけではなく、原審における、『湯ノ花温泉』が役務『温泉浴場施設の提供』について使用されているとする指摘は事実とは認められず、本願商標とは何ら役務の出所の誤認混同のおそれがない。」旨、主張している。
しかしながら、前記2(1)で認定したとおり、福島県南会津郡南会津町湯ノ花所在の旅館及び共同浴場施設により、引用商標が「入浴施設の提供」の役務について使用されていることが認められるものである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
イ 請求人は、「本願商標『湯の華温泉美肌の湯』は、2008年7月18日グランドOPENしたスパリゾート施設『Spa Resort湯の華アイランド』における温泉スパの総称として使用されている。そして、この施設はオープンから約1ヶ月半後に来場者が同年8月31日に10万人、同年11月3日に20万人、その後も2009年1月1日には30万人、同年2月25日には40万人、同年5月2日には50万人と順調に伸ばし、同年5月3日付けの岐阜新聞において、『Spa Resort湯の華アイランド』が紹介されている。こうした本願商標の使用状況からすれば、本願商標は、2008年7月18日から継続使用された結果、需要者の間に広く認識されている。してみれば、本願商標『湯の華温泉美肌の湯』は、『湯の華温泉』の文字部分のみを捉えて取引されるものではなく、一連一体のものとして認識されるものであるから、本願商標と引用商標とは互いに非類似の商標というべきである。」旨主張し、甲第9号証ないし甲第14号証を提出している。
そこで、請求人が提出した前記証拠資料を見るに、甲第9号証は、請求人のウェブサイトの写しであり、本願商標の使用の事実と、その施設の来場者数が、2008年8月31日に10万人、同年11月3日に20万人、2009年1月1日に30万人、同年2月25日に40万人、同年5月2日に50万人に至っていると記載されている。甲第10号証は、請求人のウェブサイトの写しであり、本願商標の使用の事実と、『施設紹介』のタイトルの下、「『湯の華アイランド』は2008年7月18日オープンのスパリゾート施設です。」の記載がある。
また、甲第11号証は、スパリゾート施設のパンフレット抜粋であり、そこには、本願商標が使用されている。さらに、甲第12号証及び甲第13号証は、スパリゾート施設の30万人及び40万人来館達成記念サービス券の写しである。
さらにまた、甲第14号証は、岐阜新聞に掲載されたスパリゾート施設の紹介記事であり、「可児市土田の温泉施設『スパリゾート湯の華アイランド』の入浴客が二日、五十万人を突破した。」と記載されている。
上記の証拠資料を総合的に判断すると、本願商標が、岐阜県可児市に2008年7月18日にオープンしたスパリゾート施設における温泉施設の名称として使用され、2009年5月2日までに、当該スパリゾート施設に50万人の来場者があり、同年5月3日付け岐阜新聞に当施設に関する記事が掲載された事実は認められるものである。
しかしながら、本願商標を付した温泉施設は、岐阜県可児市での1軒のみの営業であって、また、該施設がオープンしたのも比較的最近である。
また、本願商標「湯の華温泉美肌の湯」は、「Spa Resort 湯の華アイランド」の一施設の名称にすぎないものであり、提出された証拠によれば、いずれも「Spa Resort 湯の華アイランド」の文字と共に使用されているものであり、さらに甲第12号証及び甲第13号証については、本願商標の表示は見あたらず、「Spa Resort 湯の華アイランド」の文字のみが使用されているものである。
そうとすれば、累計50万人の来場者があったとしても、一施設の名称である本願商標をどの程度の者が認識していたかは定かではなく、それをもって需要者の間に広く認識されているとまでいうことはできない。
さらに、新聞掲載記事中には、本願商標の記載はない。
してみれば、本願商標は、岐阜県内において、ある程度需要者・取引者に知られているものであるとしても、その周知度は、あくまでも一地域のみに限定されたものであり、その隣接県等にまで知られたものであるとは判断することができない。
したがって、本願商標が、需要者等に広く認識されているものとは認められないものであり、また、本願商標に接する需要者が、常に一連一体のものとしてのみ認識していることを証する事実も見出すことはできない。
そして、本願商標は、前記(2)で認定したとおり、その構成中の「湯の華温泉」の文字部分のみをもって取引に資される場合があるといえるものであるから、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定役務も同一又は類似するものと判断するのが相当である。
よって、「本願商標は、一連一体のものとして認識され、需要者の間に広く認識されているものであるから、本願商標と、引用商標とは、互いに非類似の商標である」とする請求人の主張は、採用することができない。
その他の請求人の主張をもってしても、原査定の拒絶の理由を覆すに足りない。

3 結論
以上によれば、本願商標が商標法第4条第1項第10号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)


審理終結日 2010-12-01 
結審通知日 2010-12-02 
審決日 2010-12-14 
出願番号 商願2008-38246(T2008-38246) 
審決分類 T 1 8・ 254- Z (X44)
T 1 8・ 255- Z (X44)
T 1 8・ 252- Z (X44)
T 1 8・ 253- Z (X44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 田中 亨子
豊瀬 京太郎
商標の称呼 ユノハナオンセンビハダノユ、ユノハナオンセン、ユノハナ、ビハダノユ、ビハダ 
代理人 菅原 正倫 

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