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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y16
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y16
管理番号 1231686 
審判番号 無効2009-890138 
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-12-22 
確定日 2011-01-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5264992号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5264992号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5264992号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成からなり、2005年10月11日にドイツ連邦共和国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成18年4月10日に出願された商願2006-32350に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同19年6月28日に登録出願され、第16類「印刷物(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),教材および説明書(器具に当たるものを除く。工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),パンフレット(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),カタログ(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),写真(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。)」を指定商品として、同21年8月7日に登録査定、同年9月11日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する商標は、以下の1及び2である。
1 登録第687391号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)の構成からなり、昭和37年12月25日に登録出願、第26類「雑誌」を指定商品として、同40年10月13日に設定登録されたものである。その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、また、指定商品については、平成18年2月22日、第16類「雑誌」に指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

2 登録第2050702号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)の構成からなり、昭和59年11月26日に登録出願、第26類「印刷物(文房具類に属するものを除く)書画、彫刻、写真、これらの附属品」を指定商品として、同63年5月26日に設定登録されたものである。その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、また、指定商品については、平成20年11月5日、第16類「 印刷物,書画,写真,写真立て」に指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第35号証を提出した。
1 請求の理由
(1)訴えの利益
請求人の出願に係る商願2009-83385及び商願2009-83386の審査において、本件商標が引用されて、商標法第4条第1項第11号に該当するとの拒絶理由の通知がなされた(甲第6号証及び甲第7号証)。
したがって、請求人には、訴えの利益がある。

(2)ミュロンの「円盤投げ」像について
ミュロンの「円盤投げ」像(以下「本件彫刻」という。)は、「円盤投げ」又は「円盤を投げる人」と称され、紀元前に活躍した古代ギリシャの彫刻家ミュロンの代表作として知られているものの原作は現存せず、その模刻がローマのランチェロッティ宮殿、大英博物館、アテネ国立美術館、ローマ国立美術館及びミュンヘン・グリュプトテークに展示されているほか、我が国においても長野市、東京都府中市及び国立競技場に展示されており、我が国はもとより各国でも知られている彫刻の一つである。
このことは、以下の事実により認められる。
ア 「オックスフォード西洋美術事典」(株式会社講談社1989年6月30日発行)に、「ミュロン MYRON(前5世紀中頃活動)アテネの彫刻家。主として青銅像をつくり、その動物像は迫真性のゆえに名高かった。《ディスコボロス(円盤投げ)》と《アテナとマルシュアス》の模刻が現存し、そのポーズは斬新な独創性を示している。」及び「ディスコボロスDISKOBOLOS「円盤を投げる人」の意。とりわけミュロンの同主題の青銅像(前450頃)に与えられた名称で、数種の模刻が現存する(ローマ国立博物館。ミュンヘン古代美術館など)。」との記載がある。

イ 「世界大百科事典」(平凡社1977年印刷)に、ローマ国立美術館蔵の模写とともに「ミュロンMyronギリシャの彫刻家。生没年不詳。前500年ころ、アッティカの北西部、ボイオティアの境界に近いエレウテライに生まれた。・・・しかし彼の得意とした、激しい運動表現の傑作である《円盤を投げる男》Diskobolosの像は数個の模写が残存する(ローマのランチェロッティ宮殿、大英博物館、アテネ国立美術館、ローマ国立美術館その他)。」との記載がある。

ウ 「新潮世界美術辞典」(株式会社新潮社昭和60年2月20日発行)に、「ミュローン Myron古代ギリシャの彫刻家。エレウテライ出身で、前460-前430年頃活躍した。・・・青銅彫刻を得意とし、たくさんの作が古代の文献にみえるが、原作は一つも残っていない。『ディスコボロス』『アテーナーとマルシュアース』の模作にみられるように、とくに刹那の動静表現にすぐれている。」及び「ディスコボロスDiskobolos『円盤を投げる人』の意。ギリシャ彫刻の主題の一つで、クラシック期以来競技優勝者の像として繰返し作られた。代表的な例としてはミュローンの作品が挙げられる。・・・青銅製の原作は失われたが、ローマ時代の大理石模刻が幾つか残されており、そのなかでも最も原作に忠実と推定されるのは、ローマのテルメ美術館にあるランチェロッティ旧蔵の像である。別に高さ30cmの小像ながら原作の動静をよく伝えるローマ時代の青銅の模作が伝えられている(ミュンヘン、グリュプトテーク)。」との記載がある。

エ 「グランド現代百科事典」(株式会社学習研究社1978年9月1日発行)に、ローマ国立美術館の模刻の写真とともに「ミュロンMyron生没年不詳。前480?前450年ごろ活動したギリシアの彫刻家。・・・青銅鋳造を得意とし、運動や動作の微妙な一瞬を捉えて表現した。『ディスコボロス』(『円盤を投げる人』の意)、『アテナとマルシュアス』がその代表作。」との記載がある。

オ 長野市ウェブページに、「円盤投げ」の見出しの下、「特別記念作品(昭和53年)ミュロン/作 長野国体のモニュメントとして設置された特別作品です。この作品は、世界の美術雑誌に必ず載っている2000年程前にギリシャで作られた有名な作品のコピーです。」との記載とともに本件彫刻に係る写真が掲載されている。

カ インターネットのウェブページに「円盤を投げる人」の見出しの下、「東京都府中市寿町2丁目」及び「ミュロン作」の各記載とともに、本件彫刻に係る写真が掲載されている。

キ 国立競技場に設置された彫像を紹介する独立行政法人日本スポーツ振興センターのウェブページに、「千駄ケ谷スロープ付近」の見出しの下、本件彫刻に係る写真とともに「『円盤投げ』ミロン作」との記載がある。

(3)商標法第4条第1項第11号の該当性について
ア 本件商標
本件商標は、ミュロンの「円盤投げ」の彫刻レプリカを撮影した写真であり、「ミュロンノエンバンナゲ」及び「ミュロンノエンバンナゲノチョウコク」の称呼及び「ミュロンノエンバンナゲ」及び「ミュロンノエンバンナゲノチョウコク」の観念を生じる。

イ 引用商標1
引用商標1は、ミュロン作の「円盤投げ」の彫刻を模した図形商標とその背景に請求人の法人名を英語表記した「BASEBALL MAGAZINE」の文字商標からなる結合商標である。すると、特段図形と文字とが、常に不可分一体として認識されることはなく、図形商標からは「ミュロンノエンバンナゲ」及び「ミュロンノエンバンナゲチョウコク」の称呼及び「ミュロンノエンバンナゲ」及び「ミュロンノエンバンナゲチョウコク」の観念を生じ、文字商標からは「ベースボールマガジン」の称呼及び「ベースボールマガジン」の観念を生じる。

ウ 引用商標2
引用商標2は、ミュロンの「円盤投げ」の彫刻を模した図形商標であるから、「ミュロンノエンバンナゲ」及び「ミュロンノエンバンナゲチョウコク」の称呼及び「ミュロンノエンバンナゲ」及び「ミュロンノエンバンナゲチョウコク」の観念を生じる。

エ 本件商標と引用商標の類否
(ア)外観
本件商標と引用商標の外観の特徴を比較すると、以下の点で同一性及び類似性がある。
(a)右手で円盤を持っている、(b)右手の挙がる角度、(c)左手は右膝位置にある、(d)左手の角度、(e)顔の角度、(f)右足と左足が交差している、(g)右足と左足の位置、(h)右足の裏面は全面が地面に接着している、(i)左足は、表面の爪先のみ地面に接着させ、踵部分は地面に接着していない、(j)そこから導かれる全体の形状。
本件商標と引用商標の外観に同一性及び類似性があるのは、本件商標はミュロン作の「円盤投げ」の彫刻レプリカを撮影した写真であり、また、引用商標もミュロン作の「円盤投げ」を模写したものだからであり、両者は、創作の出発点を同一にしているためである。
そして、ミュロンの「円盤投げ」像は、前記(2)のとおり、我が国はもとより各国でも知られている彫刻の一つと認められるものである。
以上の点を合わせ考慮すれば、本件商標と引用商標は、外観上同一又は類似の商標であるというべきである。

(イ)称呼及び観念
本件商標と引用商標は、「ミュロンノエンバンナゲ」及び「ミュロンノエンバンナゲチョウコク」の称呼及び「ミュロンノエンバンナゲ」及び「ミュロンノエンバンナゲチョウコク」の観念を共通にする、称呼上及び観念上同一又は類似の商標である。

エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念において同一又は類似の商標である。
また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、同一又は類似の商品である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に反して登録されたものである。

(2) 商標法第4条第1項第15号の該当性について
ア 引用商標の周知性について
(ア)請求人は、引用商標を出版物等に使用している(甲第8号証ないし甲第14号証)。
また、請求人は、引用商標を外部通信時に使用するレターヘッド及び封筒に使用している(甲第15号証ないし甲第17号証)。
さらに、請求人は、引用商標を請求人の広告の掲載記事に使用している(甲第17号証)。
加えて、請求人は、自社のホームページに「円盤投げ」の立体像を、2006年4月頃から掲載している(甲第18号証)。
このように、請求人は、引用商標を、本件商標の指定商品の業界において永年継続的に使用しており、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されている。

(イ)被請求人の主張
a 被請求人は、「請求人は、少なくとも10年以上の長きにわたり、引用商標を使用してはいない。」旨主張する。
しかしながら、請求人は、過去10年間に書籍、雑誌の目録、広告、カタログ等に引用商標を使用しているのであるから、「書籍及び雑誌」の業界において引用商標は、請求人の出所表示として周知・著名であるということができる(甲第19号証ないし甲第35号証)。
したがって、この点についての被請求人の主張は、失当である。

b 被請求人は、ウェブサイトでの商標使用(甲第18号証)について、「需要者が、書籍検索を行うときは、ウェブ書店等を使用するから、わざわざ、出版社のホームページを確認する需要者は、いわば少数派である。」旨主張する。
しかしながら、商標が出所表示として向けられる対象者には、最終消費者だけではなく、取引者も想定されているのである。
取引者が商取引を行う上では、取引先の総合情報を得るのが定石であり、その情報を得る最も便利なツールが取引先のホームページサイトなのである。
取引先のホームページサイトからは、取引対象商品の他、企業情報、最新刊の情報等ウェブサイト等では得られない情報を人手できるのである。
すると、被請求人の「出版社のホームページを確認する需要者は、いわば少数派である」という主張は、商標法が保護すべき対象者を誤認若しくは縮小解釈した主張である。
したがって、この点についての被請求人の主張は、失当である。

c 被請求人は、「請求人の商品は、『スポーツ・体育に関する書籍、雑誌』のみであり、被請求人の商品は、『工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるもの』に限られた極めて特化・専門家された分野の印刷物等であるから、出所の誤認混同が生じることはない。」旨主張する。
しかしながら、店舗販売等の場合、商品陳列は原則として、店の裁量に委ねられるものなのである。つまり、店舗側は、店舗の大きさ、分類区分け方法、売上向上のために最善の位置、目に留まる位置等を総合的に考慮して陳列場所を最終決定するのである。
すると、分野が相違するから、直ちに需要者及び取引者の出所混同は生じ得ないというのは、あまりにも商取引の実情を軽視した主張である。
また、今日、需要者及び取引者へ商品流通過程は多様化しており、例えば、店舗販売だけでなく、インターネット販売も主流になりつつある。分類区分け方法等はより、販売者の裁量権が拡大しているのが実情である。
さらに、請求人は、例えばスポーツの観点から「基礎から学ぶ!スポーツ救急医学」に関する書籍等も刊行しており(甲第33号証、(審判注)甲第35号証の誤りと思われる。)、被請求人の印刷物と同様のカテゴリーに陳列される可能性を否定できない。
したがって、この点についての被請求人の主張は、失当である。

イ 小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録になったものである。

(3)結語
本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、ミュロン作の「円盤投げ」の彫刻レプリカを撮影した写真と認められ、立体感のある図形を表してなるものである。
本件商標の彫刻部分の背景には、右膝辺りの高さを境として、上半分にまだら模様の入った灰色が、下半分に黒色が着色されており、この背景のまだら模様によって彫刻部分からオーラが発せられているような特徴的なイメージを看者に与える。
本件商標は、このように、極めて写実的な彫刻および特徴的な背景の写真からなるものであり、「ミュロンノエンバンナゲチョウコク」の称呼及び「ミュロン作の円盤投げの彫刻」の観念を生ずる。

イ 引用商標1
引用商標1は、ミュロンの「円盤投げ」の彫刻をそのまま写実的に表したものではなく、印象的・抽象的にデフォルメしており、それをアーチ状の「BASEBALL MAGAZINE」という文字と組み合わせ、平板に図案化したものである。
引用商標1の図形の人物像は、通常の「円盤投げ」の彫刻とは、かがむ角度や顔の向き、手の挙げ方、左右の脚の出し方などが異なっている。
また、引用商標1においては、彫刻の細かな部分は大きく省略され、印象的に印影が施されている。
このように、引用商標1は、平板かつ印象的・抽象的に図案化されたものであり、それがミュロン作の「円盤投げ」の彫刻をモチーフに作成されたことを否定しないとしても、さらなる創作的価値が付加された結果、もとのモチーフとは別物・別次元の「図案」となっている。
よって、引用商標1から「ミュロンノエンバンナゲチョウコク」、「ミュロンノエンバンナゲ」といった称呼及び「ミュロン作の円盤投げの彫刻」、「ミュロンの円盤投げ」といった具体的な観念が生じることはない。
引用商標1から称呼・観念が生じるとすれば、むしろ、称呼・観念が看取されやすい「BASEBALL MAGAZINE」の文字部分から、「ベースボールマガジン」の称呼及び「野球雑誌」の観念を生じるというべきである。
引用商標1の称呼・観念について百歩譲ったとしても、せいぜい、「ベースボールマガジンノエンバンナゲ」の称呼と「ベースボールマガジンの円盤投げ」の観念が生じるのみである。

ウ 引用商標2
引用商標2は、ミュロンの「円盤投げ」の彫刻を写実的に表しておらず、引用商標1よりもさらに印象的・抽象的にデフォルメされている。
引用商標2は、人物像から右方に向かって伸びる縦縞のストライプ状図形が組み合わされ、全体として立体感なく平板に表された図形からなる。
引用商標2は、引用商標1よりもさらに抽象化が進んでいるため、称呼及び観念は生じない。

エ 本件商標と引用商標の類否
(ア)外観
本件商標は、彫刻そのものの立体的で奥行きのあるイメージを見る者に与えるのに対し、引用商標は、抽象的で立体感のない平板なイメージを見る者に与える。
また、本件商標は、背景のまだら模様がオーラが発せられているかのような特徴的なイメージを与えるのに対し、引用商標には、そのようなイメージは全くない。
よって、このような明らかな外観・イメージの違いから本件商標と引用商標とを、需要者が紛らわしく感じ、混同を来すことはない。本件商標と引用商標とは外観・イメージにおいて全く異なり、区別することのできる非類似の商標である。

(イ)称呼及び観念
本件商標からは、「ミュロンノエンバンナゲチョウコク」の称呼及び「ミュロン作の円盤投げの彫刻」の観念を生ずる。
一方、引用商標1からは、「ベースボールマガジン」の称呼及び「野球雑誌」の観念を生ずる。
また、引用商標2からは、称呼及び観念は生じない。
よって、称呼上及び観念上、需要者が両者を紛らわしく感じ、混同を生ずることはない。

(ウ)本件商標と引用商標のように、モチーフが共通していると思われる図形を含む商標同士でも、その具体的な表現のされ方によって需要者が両者を充分区別でき、これらの商標を類似とすべきでない。

オ 小括
本件商標と引用商標は、外観・イメージの違いが顕著であり、称呼及び観念の点でも紛らわしくなく混同を生ずることのない非類似の商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の使用状況及び周知性について
請求人は、引用商標が現在に至るまでその指定商品に使用されており、これらが請求人のシンボルマークとして広く認識されていると主張している。
しかしながら、その主張は失当である。
乙第1号証は、1999年8月10に発行された「シャトルに訊け!長谷川博幸の実践バドミントン塾」(長谷川博幸著)という書籍の表紙及び奥付の写しであるところ、同号証のいずれの箇所にも引用商標は使用されていない。
乙第2号証は、2000年12月15日に発行された「勝負魂」(古賀稔彦著)という書籍の表紙及び奥付であるところ、引用商標は使用されていない。
乙第3号証は、2001年12月21日発行の書籍「不滅のゴルフ名言集」(摂津茂和著)であり、また、乙第4号証は、2007年7月31日発行の書籍「バドミントン教本Q&A」(財団法人日本バドミントン協会編集)であり、さらに、乙第5号証は、平成15年11月5日発行の雑誌「アスリートゴルフBOOK」、加えて、乙第6号証は、2008年3月25日発行の書籍「火の玉ボーイ」(山田暢久著)であるところ、これらの証拠のいずれにも、引用商標は使用されていない。
乙第7号証は、2008年5月30日発行の書籍「サッカーのない人生なんて!」(増島みどり著)の表紙、中表紙および奥付の写しであるところ、同号証にも、引用商標は使用されていない。「ベースボール・マガジン社新書」という文字商標が表紙や中表紙に、人の印影と思しき抽象図形からなる商標が中表紙に使用されているのみである。
乙第8号証は、雑誌「ベースボールマガジン」(2010年3月号)の抜粋写しであるところ、請求人の社名の代名詞ともいえる当該雑誌の中においてさえ、すでに、引用商標は使用されていない。
乙第9号証は、雑誌「ソフトボールマガジン」(2010年5月号)の抜粋写しであるところ、同号証にも、引用商標は使用されていない。
以上のとおり、請求人は少なくとも10年前の1999年ごろには、引用商標を書籍・雑誌へ使用しなくなっているからである。
また、甲第15号証ないし甲第17号証によると、請求人が通信用のレターヘッドや封筒、広告の募集案内に引用商標2を使用しているのかもしれないが(引用商標1の使用は認められない)、これは通信や広告案内を受け取る一部の会社にしか配布されることがなく、このことをもって、書籍や雑誌の需要者に広く引用商標2(ないし引用商標1)が知れ渡っているとの主張は無理があるといわざるをえない。なお、付言すると、広告の募集案内は、役務「広告」の提供を受ける者に対してなされる宣伝活動であり、商品「書籍、雑誌」についての引用商標の使用とは直接関連しない。
そうとすれば、本件商標の登録査定時点において、引用商標が請求人の発行に係る書籍や雑誌の出所識別標識として周知性を有していたとは到底認められず、その周知性を主張する請求人の主張は失当である。
また、請求人は、引用商標が「請求人の出所表示として業界において認識されている」等と述べている。
しかしながら、商品「書籍、雑誌」の「主たる需要者」は、出版業界の関係者ではなく、それを購読する一般消費者や専門家等である。商品「書籍、雑誌」は、一般消費者や専門家等の購読者に向けて企画販売される性質の商品であり、市場における商品の取捨選択もこれらの者によって行われ、商品の最終的な販売部数もこれらの者の間の評判によって左右されるからである。
したがって、周知性の判断も、これらの購読者を基準に行われるべきである。
また、請求人は、引用商標の周知性を立証する書証として甲第8号証ないし甲第14号証を提出しているが、これらも1973年から1985年までの発行に係るもので25年も前のものが最新であり、本件商標の登録査定時点で引用商標がその指定商品について周知であったことの証左に何らなるものではない。

(2)本件商標と引用商標の使用されている商品の関連性について
引用商標が現在に至るまで継続的に商品に使用されているとしても、過去から一貫して「ベースボール」等のスポーツ・体育に関する書籍、雑誌にしか使用されていない。
乙第10号証は、大阪府立図書館のインターネット上の検索システムによってその蔵書を検索した結果を抜粋印刷したものである。これによれば、2000年以降、請求人より発行された図書・雑誌は、ほとんどがスポーツ・体育関連のものであることが分かる。この事実からすれば、引用商標が過去から現在に至るまで商品に使用されて、もし万が一、周知になっているとしても、それはあくまでスポーツ・体育関連の書籍・雑誌についてのみでしかない。請求人が、関連会社を通じてスポーツにあまり関係のない分野の書籍や雑誌を出版したということはなく、また、あったとしてもレアケースである。
一方、本件商標の指定商品は、カッコ書きで限定がなされていることからも明らかなように「工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるもの」に限られた、極めて特化・専門家された分野の印刷物等である。
これは、引用商標が関係する書籍・雑誌とは分野が全く異なる商品であり、需要者の範囲も完全に異なる。
よって、これらの点を総合すると、本件商標の付された商品に接した需要者が、それを請求人やその関係会社によって出版されたかのような出所の誤認混同が生ずることはありえない。

(3)出願人がウェブサイトで使用する写真について
請求人は、甲第18号証として請求人会社のウェブサイトに表された円盤投げの彫刻の写真を提出している。請求人の意図は必ずしも明らかでないが、このことによって、本件商標と同様の円盤投げの彫刻を表した写真が、請求人の事業を表す商標として広く知られていると主張しているのかもしれない。
しかし、これによって、円盤投げの彫刻を表した写真が請求人の出版に係る書籍・雑誌の出所標識であると、需要者の間に認識ができあがっているという事実が立証されているものではない。
近年、需要者が書籍検索を行うときは、Amazon.com等のウェブ書店や図書館の提供するインターネット上の検索ソフトを使って行うことがほとんどである。わざわざ出版社のホームページを確認する需要者は多数派ではない。
このことを勘案すると、請求人会社のウェブサイトが多数の需要者によって閲覧されたとはとても考えられない。したがって、たとえ、請求人が2006年4月ごろからこの写真をウェブサイトにアップロードしていたとしても、この彫刻写真が請求人の発行に係る商品「書籍、雑誌」についての出所標識として認識されていたとは到底認められない。

(4)小括
需要者は請求人の業務との関係で商品につき出所の誤認混同を来すことはなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されてもいない。

3 むすび
以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反せず登録されたものであるから、その登録は同法第46条第1項第1号によって無効にされるべきでない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、別掲(1)のとおり、円盤を持った右の手が後方上部になるように右腕を振り上げ、左手が右膝の前方に位置するまで左腕を下げ、視線の先が後方にいくように顔を向け、全身を前方に傾斜させた男性の裸像をもって、円盤投げをする人物像を立体的に表した図形を中央に配し、その背景部を黒色の濃淡を違えグラデーション(階調)を施しているものである。

(2)引用商標
ア 引用商標1は、別掲(2)のとおり、円盤を持った右の手が後方上部になるように右腕を振り上げ、左手が右膝の前方に位置するまで左腕を下げ、視線の先が後方にいくように顔を向け、全身を前方に傾斜させた男性の裸像をもって、円盤投げをする人物像を顕著に表してなり、その下肢部近辺に「BASEBALL MAGAZINE」の文字を上に湾曲させた形態をもって表してなるものである。そして、上記の文字部分と図形部分とは、不離に融合した態様のものではなく、それぞれの部分が独立して自他商品の識別機能を果たし得るものである。

イ 引用商標2は、別掲(3)のとおり、円盤を持った右の手が後方上部になるように右腕を振り上げ、左手が右膝の前方に位置するまで左腕を下げ、視線の先が後方にいくように顔を向け、全身を前方に傾斜させた男性の裸像をもって円盤投げをする人物像を顕著に表してなり、その右側に、縦の細線を引いた縦長矩形の一部を背景的に配したものである。

(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、それぞれの外観構成が前記のとおりであり、対比してみれば表示形態や背景等で差異があるけれども、中央に顕著に表され看者の注意を集める部分である円盤投げをする人物像が、円盤を持った右の手が後方上部になるように右腕を振り上げ、左手が右膝の前方に位置するまで左腕を下げ、視線の先が後方にいくように顔を向け、全身を前方に傾斜させた男性の裸像である点において、基本的な構図において酷似した図形であり、その主要な部分において構成の軌を一にするものであるから、時と処を異にしてみた場合、前記差異は微差として印象が薄れ、あるいは捨象されて、これらより受ける印象は共通性の強いものとなるというのが相当であり、彼此相紛れるおそれがあるというべきものである。
また、両者は、表現の形態において差異があるけれども、「ミュロンの円盤投げの彫刻」をモチーフにしたものとの共通性をもって看取され得るものであり、ともに、当該図形に相応して、「エンバンヲナゲルヒト」の称呼をを生じることがあり、また、「円盤を投げる人」の観念もって取引に資される場合があるとみるのが相当である。
しかして、本件商標及び引用商標の上記の外観における共通性は、外観における相違点を優に凌駕し得るものというべきであり、また、その称呼や観念においても共通している。
してみれば、本件商標と引用商標の外観、称呼及び観念より受ける印象、記憶、連想を総合勘案してみた場合、これらをそれぞれ同一又は類似の商品に使用すれば、同一の事業者の製造あるいは販売に係る商品であるかの如く、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがあるといわざるを得ない。
そして、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、後掲(4)のとおり同一又は類似の商品といえるものである
したがって、本件商標は、引用商標に類似する商標といういうべきものであり、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定商品中「印刷物(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),教材および説明書(器具に当たるものを除く。工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),パンフレット(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),カタログ(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),」は、引用商標1の指定商品「雑誌」と同一又は類似の商品といえるものである。
また、本件商標の指定商品「印刷物(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),教材および説明書(器具に当たるものを除く。工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),パンフレット(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),カタログ(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。),写真(工業用内視鏡検査及び医療技術の分野におけるものに限る。)」は、引用商標2の指定商品中「印刷物,写真,写真立て」と同一又は類似の商品といえるものである。

(5)被請求人の主張等について
ア 被請求人は、「本件商標は、彫刻そのものの立体的で奥行きのあるイメージを見る者に与えるのに対し、引用商標は、抽象的で立体感のない平板なイメージを見る者に与える。また、本件商標は、背景のまだら模様がオーラが発せられているかのような特徴的なイメージを与えるのに対し、引用商標には、そのようなイメージは全くない。よって、このような明らかな外観・イメージの違いから本件商標と引用商標とを、需要者が紛らわしく感じ、混同を来すことはない。本件商標と引用商標とは外観・イメージにおいて全く異なり、区別することのできる非類似の商標である。」旨主張している。
しかしながら、被請求人の挙げる差異は、円盤投げをする人物像の全体からすれば微差であり、全体から受ける印象を明確に別異のものと感受させるまでに顕著なものとはいい難い。また、立体的であるか平面的であるかの点も、陰影等を施すことで立体的で近似した描写となっており、さらに、本件商標のまだら模様の背景が円盤投げをする人物像に特異な影響を与えているともいい難い。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用しない。

イ 被請求人は、審決例を挙げ、「本件商標と引用商標のように、モチーフが共通していると思われる図形を含む商標同士でも、その具体的な表現のされ方によって需要者が両者を充分区別でき、これらの商標を類似とすべきでない。」旨主張している。
しかしながら、商標の類否は、対比される商標のそれぞれの構成に基づき、個別具体的に判断されるべきものである上、被請求人が引用した審決例等は、本件とは、商標の構成等を全く異にする事案というべきであるから、本件商標と引用商標についての上記の類否判断を左右し得るものではない。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用しない。

2 むすび
以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標であり、かつ、引用商標の指定商品に包含される商品、あるいは、引用商標の指定商品と類似する商品について使用されるものと認められる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その余の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲


(1)本件商標




(2)引用商標1




(3)引用商標2





審理終結日 2010-08-24 
結審通知日 2010-08-26 
審決日 2010-09-13 
出願番号 商願2007-69215(T2007-69215) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y16)
T 1 11・ 26- Z (Y16)
最終処分 成立 
前審関与審査官 山田 忠司西田 芳子竹内 耕平金子 尚人 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小畑 恵一
末武 久佳
登録日 2009-09-11 
登録番号 商標登録第5264992号(T5264992) 
代理人 松井 宏記 
代理人 竹原 懋 
代理人 稲岡 耕作 
代理人 中村 政美 
代理人 川崎 実夫 
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