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審決分類 |
審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30 |
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管理番号 | 1229928 |
審判番号 | 取消2010-300232 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2010-03-01 |
確定日 | 2010-12-13 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4847925号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4847925号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4847925号商標(以下「本件商標」という。)は、「江戸深川七福神」の文字を標準文字により表してなり、平成16年8月18日に登録出願され、第30類「菓子」を指定商品として平成17年3月18日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張の要点 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第4、第51、第60ないし第78、第81、第90、第101ないし第103号証(いずれも枝番を含む。)を提出している。 <審決注> 第2号証の10の8、第4号証の2の8ないし10、第4号証の2の18ないし20、第5ないし第50号証、第52ないし第59号証、第73号証の3の15、第79号証、第80号証、第82ないし第89号証及び第91ないし第100号証は欠番である。 1 請求の理由 本件商標の商標権者(被請求人)は、故意に、指定商品について登録商標に類似する商標を使用して、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生ずるものを行っている。 したがって、本件商標は、商標法第51条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものである。 (1)被請求人が使用している商標(甲第2号証) 被請求人は、以下に示す各商標(以下、それぞれ順次「使用商標1」、「使用商標2」・・・という。)を商品「あられ」について使用している。 (ア)使用商標1ないし3(甲第2号証の1の1、同号証の2の1及び同号証の3の1) 使用商標1ないし3は、甲第2号証の1の1、同号証の2の1及び同号証の3の1に示すとおり、いずれも「あられ」が入れられた包装用紙箱の表面に表されているものであり、その包装用紙箱の右上部に「奥州仙臺」の文字を黒色で小さめに表し、その左に頭を揃えて「七福神」の文字を、「奥州仙臺」の文字の4倍ほどの大きさで、別の態様で、かつ、目立つように赤色で、縦二行になるように配して表されている。そして、これらの文字の左下に、七福神の図形が左から2人、3人、2人の並びで、全体がほぼ六角形になるように表されている。この七福神の図形は、「奥州仙臺/七福神」の文字から、「七福神」の観念を生ずることに、預かって力が大なるものがある。 上記各包装用紙箱の左と右の側面には、同じく、書体の異なる「奥州仙臺」の文字を小さく黒色で表し、少し間隔を空けて、「七福神あられ」の文字を、四倍以上の大きさで、かつ、目立つように赤色で表し、左側から横に「奥州仙臺 七福神あられ」となるように表示されている。 上記各包装用紙箱の裏面には、「七福神の起こり」と題する説明文、賞味期限、品名「米菓あられ」・製造者「(株)精華堂あられ総本舗」などの表示を含む商品説明表が印刷されている。賞味期限については、甲第2号証の1の1の包装用紙箱が「02.5.14」(平成14年5月14日、本件商標の出願日より前のものである。)と、同号証の2の1の包装用紙箱が「03.5.04」との押印による表示がされ、同号証の3の1の包装用紙箱が「05.12.12」と押印した小さな印刷片(「05.12.12」の押印部分はかなり退色している。)が貼付されている。 そして、上記各包装用箱の中には、いずれも「あられ」の入った包装用の中型の袋が入れられているところ、甲第2号証の1の1中の包装用中型袋の表面には、「七福神」の文字が、目立つように赤色で表示され、さらに、七福神の図形が表されている。 甲第2号証の2の1中の包装用中型袋の表面には、「深川七福神」の文字が表されており、その「深川七福神」の文字は、「七福神」の文字の上部に、別の白地の紙に赤色で「深川」の文字を印刷した小片を貼付し、縦に「深川/七福神」となるように構成して表示されていたものである。すなわち、白地の紙に赤色で表された「深川」の文字と、包装用中型袋の黄色の地に表された赤色の「七福神」の文字が、縦に「深川/七福神」となるように構成して表示されており、「深川」の文字と「七福神」の文字は、「白」と「黄色」の地の色によって、「七福神」の文字が独立して認識されるようになっているものである。 甲第2号証の3の1中の包装用中型袋には、「深川/七福神」の文字とともに、七福神の図形が表されている。 これら「七福神」の文字又は「深川/七福神」の文字と「七福神の図形」は、この使用商標1ないし3の「奥州仙臺/七福神」の文字から、「七福神」の観念を生ずることに、預かって力が大なるものがある。 また、上記各包装用中型袋の裏面には、いずれも「七福神」の文字が、目立つように赤色で表され、その下に、横書きした「えびす」、「毘沙門天」、「福禄壽」、「布袋尊」、「大黒天」、「辯才天」及び「壽老尊」の文字が、上下に七行になるようにして、黒色で表されている。 (イ)使用商標4(甲第2号証の4の1) 使用商標4は、「あられ」の入った包装用中型袋が入れられた包装用紙箱の表面に表されているものであり(賞味期限06.4.20:平成18年4月20日、本件商標の登録日より後のものである。)、上記包装用紙箱の右上部に「江戸/深川/七福神」の文字を印刷して表した別の紙を貼付して表示されているものである。甲第2号証の4の1に示す包装用紙箱の写し(正面)には、その貼付された商標片の下部の「神」の字の左下に、貼付される前に印刷されていた「奥州仙臺/七福神」の「神」の字の「示」と「申」の棒の下部の一部が二つの点となって残って見える。このような商標を表示された包装用紙箱に入れられた「あられ」は、平成18年4月20日以降まで販売されていたものである。 使用商標4を構成する「江戸」及び「深川」の文字は、「戸」の文字を「江」の文字より少し左に配して左斜めになるようにし、「川」の文字を「深」の文字より少し左に配して左斜めになるようにして表したものである。それら「江戸」及び「深川」の文字は、下部の「七福神」の文字より小さめのもので、両者は表現形式も異なり、「七福神」の文字が、目立つように表されているものである。 また、これらの文字の左下に、使用商標1ないし3に表示されたと同一の七福神の図形が表されている。この「七福神の図形」は、使用商標4の「江戸/深川/七福神」の文字から、「七福神」の観念を生ずることに、預かって力が大なるものがある。 上記包装用紙箱の左と右の側面には、同じく、「江戸」及び「深川」の文字を「戸」の文字を「江」の文字より少し下げて右斜めになるようにし、「川」の文字を「深」の文字より少し下げて右斜めになるようにし、かつ、「七福神」の文字よりかなり小さく表し、続けて「七福神あられ」の文字を「江戸」・「深川」の文字の四倍近いほどの大きな文字で、左側から横に「江戸/深川/七福神あられ」となるように表された別の紙を貼付して表示されている。 この両側面に別の紙を貼付して表示された「江戸」・「深川」の文字と「七福神」の文字は、標準文字の制度を利用して出願できるほどの、一連一体の横書きのものということができない。 この両側面の「江戸/深川/七福神あられ」の文字は、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼、ならびに、「七福神あられ」の観念及び「シチフクジンアラレ」の称呼が、容易に生ずる構成で表示されているものである。 そして、上記包装用紙箱の裏面には、「七福神の起こり」と題する説明文と、賞味期限として「06.04.20」の押印による表示(「06.04.20」の押印部分はかなり退色している。)、品名「米菓 あられ」、製造者「(株)精華堂あられ総本舗」などの表示を含む商品説明表が印刷されている。 また、上記包装用紙箱の中には、「あられ」入りの包装用中型袋が7個包装されており、その包装用中型袋の「仙臺/七福神」の文字が印刷されていたところに、「江戸/深川/七福神」の文字を縦一行になるように構成した商標を印刷した別の紙を、貼付して表示したものである(下記「使用商標5」の説明参照)。 すなわち、「江戸/深川/七福神」の商標が表された、同じ包装用紙箱の中の包装用中型袋の表面に、「江戸/深川/七福神」の文字と「七福神の図形」が表されているものである。この「七福神の図形」は、この「使用商標4」の「江戸/深川/七福神」の商標から、「七福神」の観念を生ずることに預かって力が大なるものがある(下記「使用商標5」の説明参照)。 さらに、その包装用中型袋の裏面には、「深川」の文字と「七福神」の文字が、頭を揃えて横二段になるように、目立つように赤色で左横書きして表され、その「七福神」の文字の下に、横書きの「えびす」、「毘沙門天」、「福禄壽」、「布袋尊」、「大黒天」、「辯才天」及び「壽老尊」の文字が、上下に七行になるようにして黒色で表されている。 (ウ)使用商標5(甲第2号証の5の1) 使用商標5は、「あられ」の入った包装用紙箱の両側面に、「江戸/深川/七福神あられ」の文字を印刷して表した別の紙を貼付して表示したものである(賞味期限06.04.20)。使用商標5を構成する「江戸」及び「深川」の文字は、「戸」の文字を「江」の文字より少し下に配して右斜めになるようにし、「川」の文字を「深」の文字より少し下に配して右斜めになるようにして表したものである。 それら「江戸」及び「深川」の文字は、「七福神あられ」の文字より小さめのもので、両者は表現形式も異なり、「七福神あられ」の文字が目立つように表されているものである。 (エ)使用商標6「江戸/深川/七福神」(甲第2号証の6の1) 使用商標6は、「あられ」の入った包装用中型袋の表面に表されているものであり(賞味期限06.04.20)、上記包装用中型袋の表面に「江戸/深川/七福神」の文字を印刷して表した、別の紙を貼付して表示したものである。その別の紙を貼付する前には、その箇所には、「仙臺/七福神」の文字が印刷されていたものである。 使用商標6を構成する「江戸」及び「深川」の文字は、「戸」の文字を「江」の文字より少し左に配して左斜めになるようにし、「川」の文字を「深」の文字より少し左に配して左斜めになるようにして表したものである。 それら「江戸」及び「深川」の文字は、「七福神」の文字より小さめのもので、両者は表現形式も異なり、「七福神」の文字が、目立つように表されているものである。 また、それらの文字の左下には、使用商標1ないし4に表示されたと同一の七福神の図形が表されている。この「七福神の図形」は、この使用商標6の「江戸/深川/七福神」の商標から、「七福神」の観念を生ずることに、預かって力が大なるものがある。 使用商標6は、上記使用商標4及び5が表示された包装用紙箱に入れられた包装用中型袋に表示されていたものである。 (オ)使用商標7(甲第2号証の7の1) 使用商標7は、上記使用商標6が表示された包装用中型袋の裏面に表されているものであり(賞味期限06.04.20)、「深川」の文字と「七福神」の文字を頭を揃えて、横二段になるように、目立つように赤色で左横書きして表され、その下に、横書きの「えびす」、「毘沙門天」、「福禄壽」、「布袋尊」、「大黒天」、「辯才天」及び「壽老尊」の文字が、上下に七行になるようにして、黒色で表されている。 このような商標を表示された包装用紙箱に入れられた「あられ」は、平成18年4月20日以降まで、販売されていたものである(甲第2号証の4の1)。 上記包装用紙箱と包装用中型袋に表されたいくつかの商標は、包装用中型袋の裏面に表された「深川/七福神」の二段書きの商標を見た後に、その包装用中型袋(「あられ」入りの)の入れられている包装用の紙箱の表面に表された「七福神の図」とともに表示されている「江戸/深川/七福神」の商標をみれば、需要者が江戸の「深川/七福神」又は「江戸深川/七福神」と認識するように表されているものである。 (カ)使用商標8(甲第2号証の8の1) 使用商標8は、「あられ」の入った包装用中型袋の表面に表されているものであり(賞味期限0?.05.11、本件商標の登録日より後のものと推測される。)、その包装用中型袋の右上部に「江戸/深川/七福神」の文字を印刷して表した別の紙を貼付して、表示したものである。 「江戸/深川/七福神」の文字を印刷して表した別の紙を貼付する前は、包装用中型袋のその場所に、「仙臺/七福神」の文字が印刷されていたものである(甲第2号証の8の2)。 使用商標8を構成する「江戸」及び「深川」の文字は、「戸」の文字を「江」の文字より少し左に配して左斜めになるようにし、「川」の文字を「深」の文字より少し左に配して左斜めになるようにして表したものであり、それら「江戸」と「深川」の文字は、下部の「七福神」の文字より小さめのもので、両者は表現形式も異なるものである。 また、それらの文字の左下に、使用商標1ないし4及び6に表示されたと同一の七福神の図形が表されている。この七福神の図形は、使用商標8の「江戸/深川/七福神」商標から、「七福神」の観念を生ずることに、預かって力が大なるものがある。 使用商標8が表された包装用中型袋の裏面には、賞味期限「0?.05.11」の押印による表示(「0?.05.11」の押印部分はかなり退色している。)、名称「米菓」、製造者「株式会社 精華堂あられ総本舗」などの表示を含む商品説明表が印刷され、さらに、「仙臺」の文字と「七福神」の文字を頭を揃えて、横二段になるように、目立つように赤色で左横書きして印刷され、その下に、横書きの「えびす」、「毘沙門天」、「福禄壽」、「布袋尊」、「大黒天」、「辯才天」及び「壽老尊」の文字がの文字が、上下に七行になるようにして、黒色で表されているものである。 (キ)使用商標9(甲第2号証の9の1) 使用商標9は、「あられ」の入った包装用紙箱の表面に表されているものであり(賞味期限2010.3.8)、七福神の7体の神仏の図を表し、その前に「江戸深川七福神」の漢字7文字を短冊状の縦長の四角の枠の中に表し、「七福神の図形」の背後には、「宝」の文字を表した船の帆らしき図及び結んだリボンらしき図を配したものである。 なお、被請求人は、「結んだリボンらしき図」からなる登録第5096886号商標を所有している(甲第102号証の1の2)。 <審決注> 請求人は、被請求人の使用に係る商標について、「参考使用商標」又は「使用商標」の語を用いているが、両者を区別して用いるべき理由がないので、「使用商標」の用語で統一した。また、請求人は、上記(ア)ないし(キ)に掲げる使用商標1ないし9のほか、被請求人以外の者が使用する商標・標章として、「件外会社使用商標1」ないし「件外会社使用商標5」(甲第3号証の1の1、同号証の2の1、同号証の3の1、同号証の4の1及び同号証の5の1)を挙げ縷々伸べているが、これらは本件とは関係のないものであるから、省略する。 (2)本件商標と使用商標との類否について 被請求人が「あられ」について使用する上記使用商標4ないし9は、以下のとおり、本件商標に類似する商標である。 (ア)使用商標4について 包装用紙箱の表面に表され、「あられ」について使用されている使用商標4は、「江戸」の文字と「深川」の文字に続けて、「七福神」の文字を、大きさと書体を異にし(「七福神」の文字の方が少し大きい)、全体としては縦一行になるように配して表したものである。 使用商標4は、「江戸」と「深川」の文字が、「七福神」の文字と文字の大きさが異なり、「江戸」と「深川」の文字のそれぞれが斜めに構成されて表されており、本件商標と同一の商標とはいえないものである。 しかしながら、使用商標4は、「江戸」の文字と「深川」の文字に続けて「七福神」の文字を配して表示されているものであるから、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼を生ずるものである。 結局、本件商標と使用商標4は、外観の相違点にもかかわらず、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念、及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼において、全体として類似する商標である。 (イ)使用商標5について 包装用紙箱の側面に表され、「あられ」について使用されている使用商標5は、「江戸」の文字と「深川」の文字に続けて、「七福神」の文字を、大きさと書体を異にし、全体としては横一連になるように配して表したものである。 使用商標5は、「江戸」と「深川」の文字が、「七福神」の文字と文字の大きさが異なり、「江戸」と「深川」の文字のそれぞれが斜めに構成されて表されており、本件商標と同一の商標とはいえないものである。 しかしながら、使用商標5は、「江戸」の文字と「深川」の文字に続けて「七福神あられ」の文字を配して表示されているものであるから、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼を生ずるものである。また、「あられ」の文字は、商品の普通名称を表示したものと認識されるものである。 結局、本件商標と使用商標5は、外観の相違点にもかかわらず、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念、及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼において、全体として類似する商標である。 (ウ)使用商標6について 被請求人が「あられ」について使用している使用商標6は、「あられ」の入った包装用中型袋の表面に表されているものであり、包装用中型袋の表面に「江戸/深川/七福神」の文字を印刷して表した、別の紙を貼付して表示したものである。 その別の紙を貼付する前には、その箇所には、「仙臺/七福神」の文字が印刷されていたものである。 使用商標6を構成する「江戸」と「深川」の文字は、「戸」の文字を「江」の文字より少し左に配して左斜めになるようにし、「川」の文字を「深」の文字より少し左に配して左斜めになるようにして表したものである。 それら「江戸」と「深川」の文字は、「七福神」の文字より小さめのもので、両者は表現形式も異なり、「七福神」の文字が、目立つように表されているものである。 また、それらの文字の左下に、七福神の図形が左から2人、3人、2人の並びで、全体がほぼ六角形になるように表されているものである。この七福神の図形は、この使用商標6から、「七福神」の観念を生ずることに、預かって力が大なるものがある。 使用商標6は、「江戸」と「深川」の文字が、「七福神」の文字と文字の大きさが異なり、「江戸」と「深川」の文字のそれぞれが斜めに構成されて表されており、本件商標と同一の商標とはいえないものである。 しかしながら、使用商標6は、「江戸」の文字と「深川」の文字に続けて「七福神あられ」の文字を配して表示されているものであるから、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼を生ずるものである。 結局、本件商標と使用商標6は、外観の相違点にもかかわらず、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼において、全体として類似する商標である。 (エ)使用商標7について 被請求人が「あられ」について使用している使用商標7は、「あられ」の入った包装用中型袋の裏面に表されているものであり、上記使用商標6が表された包装用中型袋の裏面に、表示されているものである。 使用商標7は、上記包装用中型袋の裏面に、「深川」の文字と「七福神」の文字を頭を揃えて、横二段になるように、目立つように赤色で左横書きして表されているものである。 このような商標を表示された包装用紙箱に入れられた「あられ」は、平成18年4月20日以降まで販売されていたものである(甲第2号証の4の1)。 包装用紙箱と包装用中型袋に表されたいくつかの商標は、包装用中型袋の裏面に表された「深川/七福神」の二段書きの商標を見た後に、その包装用中型袋(「あられ」入りの)が入れられている包装用紙箱の表面に表された、「七福神の図」とともに表示されている「江戸/深川/七福神」の商標をみれば、需要者が江戸の「深川/七福神」と認識するように表されているものである。 使用商標7は、「江戸」の文字が無く、「江戸」と「深川」の文字の横二段に構成されて表されており、本件商標と同一の商標とはいえないものである。 しかしながら、使用商標7は、包装用紙箱の表面に表された、「七福神の図」とともに表示されている「江戸/深川/七福神」の商標や、包装用紙箱の側面に表された、「江戸/深川/七福神あられ」の商標と相俟って、「深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「フカガワシチフクジン」の称呼を生ずるものである。 結局、本件商標と使用商標7は、外観の相違点にもかかわらず、「深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「フカガワシチフクジン」の称呼において、全体として類似する商標である。 (オ)使用商標8について 被請求人が「あられ」について使用している使用商標8は、「あられ」の入った包装用中型袋の表面に表されているものであり、その包装用中型袋の右上部に「江戸/深川/七福神」の文字を、印刷して表した別の紙を貼付して、表示したものである。 「江戸/深川/七福神」の文字を印刷して表した別の紙を貼付する前は、包装用中型袋のその場所に、「仙臺/七福神」の文字が印刷されていたものである。 使用商標8を構成する「江戸」と「深川」の文字は、「戸」の文字を「江」の文字より少し左に配して左斜めになるようにし、「川」の文字を「深」の文字より少し左に配して左斜めになるようにして表したものであり、下部の「七福神」の文字より小さめのもので、また、両者は表現形式も異なるものである。 使用商標8は、「江戸」と「深川」の文字が、「七福神」の文字と文字の大きさが異なり、「江戸」と「深川」の文字のそれぞれが斜めに構成されて表されており、本件商標と同一の商標とはいえないものである。 しかしながら、使用商標8は、「江戸」の文字と「深川」の文字に続けて「七福神」の文字を配して表示されているものであるから、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼を生ずるものである。 結局、本件商標と使用商標8は、外観の相違点にもかかわらず、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼において、全体として類似する商標である。 (カ)使用商標9について 被請求人が「あられ」について現在使用中の使用商標9は、「あられ」の入った包装用紙箱の表面に表されているものであり、七福神の7体の神仏の図を表し、その前に「江戸深川七福神」の漢字7文字を短冊状の縦長の四角の枠の中に表し、「七福神の図」の背後には「宝」の文字を表した船の帆らしき図及び結んだリボンらしき図を配したものである。 なお、被請求人は、「結んだリボンらしき図」からなる登録第5096886号商標を有している(甲第102号証の1の2)。また、使用商標9は、結んだリボンらしき図を結合して表しているので、被請求人所有に係る登録第4986137号商標(「江戸深川七福神」+図形)とも異なるものである。 上記包装用紙箱の左右の側面には、七福神の7体の神仏の図が横一列になるように表され、包装用紙箱の裏面には、「【七福神とは】」の表示がなされている。それら「七福神の図」及び上記表示中の「七福神」の文字は、紙箱の表面に表された「七福神の図」とともに、使用商標9から、「七福神」の観念を生ずることに、預かって力が大なるものがある。 なお、請求人は、「七福神の図」(横一列)からなる登録5285650号商標を有している(甲第81号証の1の10)。 使用商標9は、本件商標と、また、被請求人の所有に係る上記登録第4986137号商標とも、同一の商標とはいえないものである。 しかしながら、使用商標9は、「江戸深川」の文字に続けて「七福神」の文字を配して表示されているものであるから、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼を生ずるものである。 結局、本件商標と使用商標9は、外観の相違点にもかかわらず、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼において、全体として類似する商標である。 (3)請求人が使用する商標(甲第4号証) 請求人は、商品「あられ、おかき、せんべい」等の製造・譲渡・販売を業務としており、商品「あられ」等について以下(ア)ないし(テ)に記載の各商標(以下、それぞれ順次「引用商標1」、「引用商標2」・・・という。)を使用しているものである。なお、請求人は、本件商標の先願であって「七福神」の文字からなる登録第4004283号商標(指定商品第30類「菓子及びパン」)をはじめ、登録第2103179号(「THE SEVEN GODS OF GOOD FORTUNE」)、登録第2342717号(「お江戸七福神」)、登録第2463631号(「大江戸七福神」)、登録第4184246号(「大銀座七福神」)、登録第4271574号(「七福神あられ」+七福神図形)、登録第4576030号(「七福神あられ」+円形図形)、登録第4654632号(「深川七福神」)、登録第5070904号(「七福神おかき」)、登録第5070905号(「七福神せんべい」)、登録第5074179号(「七福神」)、登録第5079498号(七福神が乗った宝船の図)、登録第5079499号(七福神が乗った宝船の図)、登録第5096841号(「七福神シリーズ」)、登録5165649号(「七福神」)、登録第5285650号(七福神の図形)等の商標を所有している(甲第2号証の10の1ないし6、第81号証の1の1ないし10及び同号証の2の1)。 (ア)引用商標1(甲第4号証の1の1) 引用商標1は、包装用小袋に表示されたものであり、恵比寿・大黒などそれぞれ1体の図の上部に「七福神あられ」の文字を表し、それらの図形の下部にそれぞれ「えび味」、「shrimp」、「青のり味」、「seaweed」などの文字を配して表したものである。 引用商標1中の「七福神」の文字については、第30類「菓子及びパン」を指定商品とし、登録第4004283号商標として平成9年5月30日に登録され、平成18年12月26日に更新登録がされているものである(甲第2号証の10の3)。 また、「七福神あられ」の文字については、縦書きで、第30類「あられ」を指定商品とし、登録第5069835号商標として平成19年8月10日に登録されているものである(甲第2号証の10の7)。 (イ)引用商標2(甲第4号証の2の1ないし7) 引用商標2は、包装用中型袋に表示されたものであり、「七福神」の内の、恵比寿様などのそれぞれ1体の図の下部に「七福神あられ」の文字を表し、それらの図形の上部に「えび味」などの文字を配して表したもので、7体セットで譲渡・販売されているものである(甲第4号証の1の1、同号証の2の21ないし27参照)。 (ウ)引用商標3(甲第4号証の3の1) 引用商標3は、やや大きめの中型の包装用袋に表示されたものであり、「アメとあられの」と「七福神」の文字を二段に表し、その下部に円輪郭の中に「福」の文字を表した図形を帆印とした「七福神が乗った宝船」の図形を配してなるものである。 (エ)引用商標4(甲第4号証の4の1ないし7) 引用商標4は、引用商標2が使用されている包装用袋よりやや大きな包装用中型袋に表示されたものであり、引用商標2と同一の構成からなるものである。 (オ)引用商標5(甲第4号証の5の1) 引用商標5は、やや大きめの中型の包装用袋に表示されたものであり、「七福神あられ」の文字を表し、その下部に円輪郭の中に「福」の文字を表した図形を帆印とした「七福神が乗った宝船」の図形を配した構成からなるものである。 (カ)引用商標6(甲第4号証の6の1) 引用商標6は、大型の包装用巾着袋に表示されたものであり、円輪郭の中に「福」の文字を表した図形を帆印とした「七福神が乗った宝船」の図形の下部に、「七福神あられ」の文字を配した構成からなるものである。 (キ)引用商標7(甲第4号証の7の1) 引用商標7は、包装用紙に表示されたものであり、細い円輪郭の中に輪郭に接するようにして、上部右回りに「七福神」の文字を、下部左回りに「あられ」の文字を配した円形図形と、その円形図形の円輪郭の周りに七福神の7体の図形を360度に展開して表したものである。引用商標7は、第30類「あられ」を指定商品として平成11年7月8日に登録されている登録商標第4271574号と同一のものである(甲第1号証の2の2)。 なお、円輪郭の中に「七福神」及び「あられ」の文字を表した円形図形からなる標章は、登録第4576030号商標として登録されている(甲第2号証の10の5)。 (ク)引用商標8ないし11 引用商標8ないし11は、甲第4号証の8の1、同号証の9の1、同号証の10の1及び同号証の11の1に示すとおり、小型又は中型の包装用紙箱にそれぞれ表示されたものであり、いずれも縦書きの「七福神」及び横書きの「七福神」の文字からなるものである。 (ケ)引用商標12(甲第4号証の12の1) 引用商標12は、大型の包装用紙箱に表示されたものであり、細い円輪郭の中に輪郭に接するように、上部右回りに「七福神」の文字を、下部左回りに「あられ」の文字を表した図形を帆印とした「七福神が乗った宝船」の図からなるものである。新しい包装用紙箱には、「七福神」の文字からなる商標も表示されている(甲第4号証の12の2添付資料参照)。 なお、引用商標12の「七福神が乗った宝船」の図形中の船の帆に表されている、円輪郭の中に「七福神」の文字と「あられ」の文字を表した帆印の図形それ自体は、第30類「あられ」を指定商品とし、登録第2324524号商標として平成3年7月31日に登録されていたものであるが(甲第1号証の9の1)、現在においてはその登録が抹消されており、それとほぼ同一の商標が登録第4576030号商標として平成14年6月14日に登録されている(甲第2号証の10の5)。 (コ)引用商標13ないし15 引用商標13ないし15は、甲第4号証の13の1、同号証の14の1及び同号証の15の1に示すとおり、小型の正四角形又は中型の長方形の包装用缶に貼付されたラベルに表示されたものであり、いずれも「七福神あられ」の文字を縦書きし、その右に「かろやかな七つの風味」の文字を並記し、「七福神あられ」の下部に、四角の枠の中に「せんべい造り 百年 幸煎餅」の文字を三行にして印影状の図を表し、さらにそれらの右側に「招福七福神」の文字を帆印とする「七福神が乗った宝船」の図形を配してなるものである。 なお、「七福神あられ」の文字(縦書)からなる商標は、登録第5069835号商標として登録されている(甲第2号証の10の7)。 (サ)引用商標16(甲第4号証の16の1) 引用商標16は、小型の包装用手提げ袋の横面の下部に表示されているものであり、「かろやかな七つの風味」及び「七福神あられ」の文字を上下二段に横書きに表してなるものである。 なお、「七福神あられ」の文字(縦書)からなる商標は、登録第5069835号商標として登録されている(甲第1号証の2の4)。 (シ)引用商標17及び18 引用商標17及び18は、甲第4号証の17の1及び同号証の18の1に示すとおり、中型又は大型の包装用手提げ袋に表示されたものであり、いずれも「七福神あられ」の文字を横書きし、その下部に円輪郭の中に「福」の文字を表した図形を帆印とした「七福神が乗った宝船」の図形を表した構成からなるものである。 (ス)引用商標19(甲第4号証の19の1) 引用商標19は、注文商品送付用の中型の包装用ダンボール箱の横正面と横背面に表示されたものであり、「七福神あられ」の文字からなるものである。 (セ)引用商標20(甲第4号証の20の1) 引用商標20は、注文商品送付用の中型の包装用ダンボール箱に表示されたものであり、該ダンボール箱の横面に「七福神」の文字を表し、その正面には、「幸煎餅」の文字とその右に四角の枠の中に「せんべい造り 百年 幸煎餅」の文字を三行に表した印影状の図を配して表してなるものである。 (ソ)引用商標21ないし27(甲第4号証の21の1、同号証の22の1及び同号証の23の1、同号証の24の1、同号証の25の1、同号証の26の1及び同号証の27の1) 引用商標21ないし27は、いずれもインターネット上の映像面において、商品「あられ」について、その広告・宣伝を内容とする情報に電磁的方法により使用されていたものである(設定公表日 Dec 21,2003,「Internet Archive Wayback Machine」画面印刷参照)。 引用商標21は、甲第4号証の21の1に示すとおり、細い円輪郭の中に輪郭に接するように、上部右回りに「七福神」の文字を、下部左回りに「あられ」の文字を表した図形を帆印とした「七福神が乗った宝船」の図を配してなるものである。 引用商標22及び23は、甲第4号証の22の1及び同号証の23の1に示すとおり、「七福神」の図形又は「七福神あられ」の文字が表示されているものである。 引用商標24は、甲第4号証の24の1に示すとおり、「七福神あられ」、「紅白七福神あられ」、「招福七福神あられ」、「開運七福神あられ」、「福袋七福神あられ」、「ミックス七福神あられ」、「アメとあられの七福神」、「開運アメとあられの七福神」又は「寿七福神あられ」の文字、「七福神」の図形等が表示されているものである。 引用商標25ないし27は、甲第4号証の25の1、同号証の26の1及び同号証の27の1に示すとおり、いずれも「七福神」の図形、円輪郭の中に「福」の文字を表した図形を帆印とした「七福神が乗った宝船」の図形、「七福神あられ」、「紅白七福神あられ」、「招福七福神あられ」、「開運七福神あられ」、「福袋七福神あられ」等の文字が表示されているものである。 (タ)引用商標28(甲第4号証の28の1) 引用商標28は、包装用中型袋に表示されたものであり、「開運七福神あられ」の文字を表し、その下部に円輪郭の中に「福」の文字を表した図形を帆印とした「七福神が乗った宝船」の図形を配してなるものである。 (チ)引用商標29(甲第4号証の29の1) 引用商標29は、大型の包装用紙箱に表示されたものであり、「開運七福神あられ」の文字を横書きし、その下部に、「開運七福神あられ」の文字を帆印とした「七福神が乗った宝船」の図形を配してなるものである。 (ツ)引用商標30(甲第4号証の30の1) 引用商標30は、商品「あられ」についての包装用中型袋に表示されたものであり、「鎌倉七福神」の文字を縦書きし、その左側に鎌倉の大仏と鳥居の図形、さらにその前に「七福神」の図形を表し、その左下に四角の枠の中に「せんべい造り 百年 幸煎餅」の文字を三行に表した印影状の図を配してなるものである。 (テ)引用商標31(甲第4号証の31の1) 引用商標31は、商品「あられ」についての包装用中型袋に表示されたものであり、「日本橋七福神」の文字を縦書きし、その左側に、橋の図形、さらにその前に「七福神」の図形を表し、その左下に四角の枠の中に「せんべい造り 百年 幸煎餅」の文字を三行に表した印影状の図を配してなるものである。 <審決注> 請求人は、請求人の使用に係る商標について、「引用使用商標」、「引用使用標章」又は「参考引用使用商標」の語を「引用商標」の用語で統一した。以下、上記(ア)ないし(テ)に掲げる引用商標1ないし31及び請求人の所有する上記の登録商標をまとめて「引用商標」ということがある。 (4)請求人「株式会社幸煎餅」の営業活動について (ア)請求人は、「おかき、あられ、せんべい」等の製造・譲渡・販売業者として明治29年に東京日本橋において創業以来、明治42年に群馬県前橋市へ営業拠点を移した後、「幸煎餅本舗」の店名で個人営業を行い、その後、株式会社幸煎餅として組織変更を経て、100有余年の間、活発に営業活動を継続してきた(甲第51号証の1の1ないし10)。 (イ)平成20年4月現在、請求人は、群馬県前橋市千代田町4-19-3所在の本店をはじめ、群馬県、東京都及び静岡県の直営店並びに子会社店の合計4店を擁している(甲第51号証の2の1ないし3)。 請求人は、取扱店67店(三越銀座店、高島屋高崎店、ダイエー大宮店等)を通し、引用商標9である「七福神あられ」を付した「あられ」を主体とする米菓を幅広く譲渡・販売している(甲第51号証の2の4)。 (5)請求人による広告・宣伝について 請求人は、以下の各種媒体を通じ、引用商標を使用して商品の広告・宣伝等を行っている。 (ア)ホームページ 請求人は、インターネット上にホームページを平成14年1月ごろ開設した後、何度かの改訂をしている。請求人のホームページには、「送料無料幸煎餅のお試しセット」の表示とともに「商品のご紹介」の欄に、「七福神あられ」などの標章が表されている(甲第61号証の1の1)。 上記インターネット上の映像面に標章を表示して広告・宣伝する行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に当たるものである。 請求人は、楽天市場などのインターネット・モールにリンクを張り、引用商標を付した「あられ」を主体とする米菓についての広告・宣伝を行い、かつ、全国各地への通信販売(「全国通販」)の申し出も行っている(甲第61号証の1の2)。 (イ)新聞 ・「上毛新聞」:1988年5月31日ないし2009年7月5日、計22回(甲第62号証の1の1ないし22) ・「桐生タイムス夕刊」:1988年11月19日ないし1989年8月7日、計5回(甲第62号証の2の1ないし5) ・「東京中日スポーツ」:1996年2月27日、1回(甲第62号証の2の6) ・「菓子食品新報」:平成14年6月17日ないし平成15年1月13日、計8回(甲第62号証の3の1ないし8) ・「スポーツ報知」:2006年12月11日ないし2009年5月31日、計4回(甲第62号証の4の1ないし4) ・「スポーツニッポン(スポニチ)」:2006年12月11日ないし2009年5月20日、計6回(甲第62号証の5の1ないし6) ・「静岡リビング」:平成9年11月29日ないし平成10年11月28日、計3回(甲第62号証の6の1ないし3) ・「静岡新聞」:平成19年11月24日、1回(甲第62号証の7の1) ・「メトロガイド」:2009年1月号ないし2010年3月号、計15回(甲第62号証の8の1ないし15) ・「日刊スポーツ」:2009年5月18日ないし同年7月7日、計3回(甲第62号証の9の1ないし3) ・「毎日新聞 夕刊」:2009年6月23日、1回(甲第62号証の10の1) (ウ)雑誌 ・「文藝春秋」:平成7年7月1日ないし平成22年3月1日、計37回(甲第63号証の1の1ないし37) ・「全国 招福開運 寺社参り」:1995年1月10日、1回(甲第63号証の2の1) ・「アサヒグラフ」:1996年3月22日、1回(甲第63号証の2の2) ・「二人旅の宿」:1999年5月2、1回(甲第63号証の2の3) ・「オール讀物」:平成19年7月1日ないし平成21年10月15日、計8回(甲第63号証の2の4ないし8及び同号証の11ないし13) ・「週刊文春」:平成19年1月11日ないし平成21年6月25日、計2回(甲第63号証の2の9及び10並びに同号証の5の1及び2) ・「月刊 ぷらざ 高崎版」:2002年5月号ないし2003年3月号、計10回(甲第63号証の3の1ないし9及び12) ・「月刊 ぷらざ <前橋版>」:2003年1月号及び2月号、計2回(甲第63号証の3の10及び11) ・「月刊 ぷらざ」:2003年4月号及び2004年7月号、計2回(甲第63号証の3の13及び14) ・「月刊 パリッシュ」:2003年6月号、1回(甲第63号証の4の1) ・「月刊 パリッシュ 高崎版」:2003年12月号、1回(甲第63号証の4の2) ・「号外 パリッシュ」:2004年7月12日、1回(甲第63号証の4の3) ・「NHK ウィークリー ステラ」:平成19年6月15日及び平成20年6月13日(甲第63号証の6の1及び同号証の8の1) ・「クロワッサン」:2007年8月25日ないし2009年7月25日、計3回(甲第63号証の7の1、同号証の9の1及び同号証の10の1) ・「食楽」:2009年8月1日、1回(甲第63号証の11の1) (エ)請求人作成のちらし(甲第64号証1の1ないし8) ・平成1年7月15日?8月20日(プレゼントセール期間) ・平成3年11月15日?12月31日(プレゼントセール期間) ・平成12年5月1日?31日(プレゼントセール期間) ・平成12年7月1日?8月10日(プレゼントセール期間)、8万枚 ・平成13年3月23日?4月15日(プレゼントセール期間)、10万枚 ・「福はいらんかネ2003年冬」 平成15年11月?12月14日 ・「福はいらんかネ2004年冬」 平成16年11月11日?12月20日 (オ)高崎駅及び前橋駅における電飾サインボード(甲第65号証) (カ)請求人作成の商品パンフレット(甲第66号証) (キ)新橋演舞場のプログラム(甲第67号証) 平成7年12月ないし2008年6月公演のプログラム、計16回 (ク)請求人の商品の包装用金属製缶、包装用ダンボール箱及び包装用手提袋(甲第68ないし甲第70号証) (ケ)ラジオ広告(甲第70号証) 請求人は、TBSラジオの「大沢悠里のゆうゆうワイド」などの番組で、「七福神あられ」の商標を取り入れたラジオスポット広告(1989年12月?1990年11月)などを行ってきた(甲第70号証の7の1及び2)。 (6)請求人の「七福神」あられ関連商品の売上額(甲第70号証の6の1) 商標「七福神あられ」に関する商品「あられ」の売上額は、1997年から2006年までの10年間では、およそ26億4千6百万円を超えるものである。上記売上額には、商標「七福神」に関係しないものを含んでいない(甲第70号証6の1)。 「丸福七福神」、「紅白七福神」、「招福七福神」、「ミックス七福神」についての売上額は、1997年から2006年までの10年間ではおよそ39億円を超えるものである。 2007年ないし2009年の売上額は、商品「あられ」について、商標「七福神あられ」、「七福神」などに関するものであり、2009年における1年の売上額は、7億9千5百万円を超えるものである。 (7)被請求人商品の紹介情報 他者の作成に係る以下の資料の中で、引用商標を用いて請求人の商品が紹介されている。 (ア)商品カタログ(甲第71号証) ・「冬の逸品26選」(ゆうパック)カタログ(関東郵政局):平成5年11月1日?12月13日 ・「ふるさと小包」カタログ平成7年度全国版((財)ポスタルサービスセンター):平成7年4月1日、 ・「冬の逸品33選」カタログ(関東郵政局):平成7年11月1日?12月14日 ・「お歳暮ゆうパック」カタログ(関東ふるさと会):’93年ないし2004年版 ・「群馬のふるさと小包」カタログ(群馬県内郵便局):平成11年ないし15年版 ・「群馬の特選小包」カタログ(群馬県内郵便局):平成15年ないし平成17年版 ・「ぐんまの逸品」カタログ(社団法人群馬県物産振興協会):2004年3月 (イ)新聞(甲第72号証) ・「上毛新聞」:1994.5.10付、2006.12.19付、2009.5.4付及び2009.5.27付 ・「東京スポーツ新聞」:平成7年1月17日付 ・「日本経済新聞」:2003年3月31日付 ・「東京リビング新聞」:2003年5月8日付 ・「メトロガイド」:2008年11月号 (ウ)雑誌、書籍等(甲第73号証) ・「ポケットピュア」:’96夏号vol.10 ・「ゆう遊倶楽部」:2001.No.27 ・「名人の和菓子」:昭和63年9月25日発行 ・「日本の銘菓」:平成2年11月1日発行 ・「東京日帰りコース夏」:平成3年6月25日発行 ・「SEDA(セダ)」:1993年6月7日発行 ・「和菓子紀行」:平成6年7月10日発行 ・「銀座で買う贈り物100選」:1995年12月6日発行 ・「全国和菓子めぐり」:平成8年4月30日発行 ・「GUNMAじゃらん クチコミじゃらん03-04年版」:平成15年9月1日発行 ・「ノービア」:平成16年8月12日発行 ・「るるぶ情報版 中央区 銀座 日本橋 築地」:2004年11月1日発行 ・「るるぶ情報版 関東6 東京05」:2005年1月1日発行 ・「日経おとなの OFF」:2006年12月1日発行 ・「OZmagazine」:2006年12月18日発行 ・「るるぶ情報版 銀座」:2007年2月 ・「別冊 文藝春秋」:212号:平成7年7月1日発行 ・「散歩の達人」:平成9年6月1日発行 ・「週刊文春」:平成11年1月7日発行新年特大号 ・「でりじぇい!」:2003年1月号 ・「NHK ウィークリー ステラ」:平成19年6月15日及び平成20年6月13日発行 ・「文藝春秋」:平成19年7月号、同年12月号、同年12月臨時増刊号、平成20年6月号、同年7月号、同年12月号及び平成21年7月号 ・「saita」:2007年10月号及び2009年9月号 ・「CREA」:2007年11月1日発行 ・「サライ」:2008年6月10日発行 ・「婦人公論」:平成21年7月22日発行 170頁 (甲第73号証の4の19) (エ)ちらし(甲第74号証) ・「スズラン」:’97 WINTER GIFT及び’98 SUMMER GIFT ・「高島屋 高崎」:6月24日(水)→7月27日(月)(1998年) ・「イトーヨーカドー 藤岡・足利・前橋店」:売出し期間8/11→15(2000年) ・「media for young and active women b[bi:] 静岡リビング新聞」:2002年3月16日発行 ・「イトーヨーカドー 足利・伊勢崎・藤岡・前橋店」:2006 5/21まで ・「JUSCO」:関東 うまいもの 2007年3月17→18 ・「アピタ前橋店」:グランドオープン 3/10(土)→25(日) ・「高崎サティ」:MYCAL SATY 12/30(土)→31(日) ・「Takashimaya TAKASAKI」:高崎タカシマヤのおすすめギフト 群馬特選食料品特集 ・「今月の100円グルメ」:注文〆切日・12月10日 平成11年 ・「第73回 高崎 えびす講」:11月24日(土)[2001年] ・「Weekly Matsuzakaya」:2005年4月6日?19日 ・日本橋三越本店 デラックス ファッションバザール 帝国ホテル:2008年12月28・29日 (オ)吊り広告(甲第75号証) 雑誌・NHK「ステラ」車内吊り広告(広告期間・平成19年6月6日?8日) (カ)インターネット上の映像面(甲第76号証) (キ)寛仁親王牌第四回協賛商品(甲第77号証) (ク)花火大会のプログラム(甲第78号証) 前橋花火大会(<1999年>8月15日及び<2000年>8月15日) (8)商品の混同(商品の出所の混同)について (ア)請求人が使用する「七福神あられ」等の引用商標は、上記(4)ないし(7)に説明した如く、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者及び需要者の間に広く認識されているものである(甲第4号証の1の1ないし第78号証の2の2)。 「七福神あられ」の文字を要部とする請求人の商標が、指定商品「あられ」について需要者の間に広く認識されていることについては、取消審判2008-301427の審決の認定を参照されたい。 商標法第51条第1項は、同法第4条第1項第10号、同第19号などと異なり、また同法第4条第1項第15号と同様に「需要者の間に広く認識されている」ことが要件とはなっていない(「相当程度知られていたとした決定の認定に誤りはなく」とする、商標法第4条第1項第19号についての、平成18年(行ケ)第10178号、平成18年10月26日判決も参照されたい。)。 (イ)被請求人が、本件商標と類似する商標である上記使用商標4ないし9を「あられ」について使用する場合には、請求人が所有する「七福神」の文字からなる登録商標との関係で、その商品が恰も請求人の業務に係る商品であるか又は請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせ、又は商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものである。 (ウ)被請求人は、とりわけ、使用商標4ないし9についての使用により、請求人が「あられ」などについて使用する「七福神」商標等の引用商標1ないし31との関係で、他人の業務に係る商品と混同を生ずる不正な商標の使用をしているものである。 すなわち、使用商標4ないし9は、上記(1)において述べた構成態様で表されているところ、いずれも、構成中の「七福神」の文字部分が独立して商品の識別機能を有し、それぞれの商標の要部といえるものであり、引用商標とは、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を共通にするものであるから、外観の相違点を考慮しても、それらは、全体として引用商標と類似する商標である。 そして、使用商標4ないし9は、いずれも「あられ」について使用されているものである。 したがって、「七福神」の文字を要部とする被請求人の使用商標4ないし9に接する取引者及び需要者は、その商品が恰も請求人の業務に係る商品であるか、又は請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じるものである。 さらに、被請求人は、上記(1)で説明した使用商標1ないし3において、「七福神」商標に関わり、他人の業務に係る商品と混同を生ずる不正な商標の使用をしてきたものである。 (9)被請求人の故意 (ア)被請求人は、請求人が商品「あられ」などについて使用する「七福神」を要部とする引用使用1ないし31などを知った上で、「江戸深川七福神」の一連一体の本件商標を、「江戸」・「深川」と「七福神」の文字を、別々の態様・大きさで、「七福神」の文字を目立たせ、一般需要者が請求人の業務に係る商品と混同を生ずることを認識しながら、自己の業務に係る商品「あられ」について、「七福神」の文字を顕著に表した使用商標4ないし9を使用したものである。 さらに、被請求人は、使用商標4を使用するに至るまでに、使用商標1ないし3を不正に使用してきたものである。平成14年1月26日の被請求人の書簡(甲第101号証の3の1)、同年1月30日の被請求人の書簡(甲第101号証の3の2)及び同年2月7日の請求人の書簡(甲第101号証の3の3)を参照されたい。 「商標登録を受けているとしても、上記の他人の商標との抵触のおそれについての調査検討義務が不要になるわけではないことは当然である。」とする、平成14年(ネ)第4552号、平成15年3月13日判決も参照されたい。 (イ)請求人は、群馬県前橋市において米菓の製造・譲渡・販売を行っており(甲第101号証の1の1)、請求人の子会社が東京都中央区銀座地区に「あられ、おかき、せんべい」などの米菓の譲渡・販売拠点(株式会社幸煎餅「銀座店」)を有している(甲第101号証の1の2)。 被請求人株式会社精華堂霞総本舗は、東京都江東区清澄三丁目10番5号に本社を置き、「あられ」などの製造・譲渡・販売を行っており、請求人と同業者である(甲第101号証の2の1)から、両者の業務が競合していることは、明らかである。 (ウ)被請求人は、昭和53年(1978)10月26日出願に係る「精∞」図形からなる登録第605995号商標を始めとして、数多の登録商標を所有しており(甲第102号証の1の1及び2)、商標の登録を行うことを含めて、商標管理には相当留意し、そのためにかなりの経費も負担してきたものである。 (エ)上記(ウ)記載の被請求人所有に係る登録商標などの管理に当たって、とりわけ、本件商標及び「江戸深川七福神」の文字及び図形からなる登録第4986137号商標の登録に関わって、被請求人は、「あられ、せんべい」などについて請求人が登録し使用していた「七福神」及び「七福神」を要部とする「七福神あられ」などの各商標(登録第2324524号、登録第4271574号及び登録第4004283号)を、当然知悉していたものである。上記の被請求人の書簡(甲第101号証の3の1ないし3)を参照されたい。 (オ)請求人が「七福神」及び「七福神」の文字を要部とする「七福神あられ」などの商標を、「あられ、せんべい」などについて長年に渡り継続的に使用した結果、「七福神」商標は、遅くとも平成13年7月頃には、とりわけ、関東一円において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く認識されているものであり、被請求人は、その事実を当然知悉していたものである(甲第4ないし第72号証参照)。 すなわち、被請求人は、請求人の存在(関連会社、株式会社幸煎餅「銀座店」を含む。)、請求人が「あられ、せんべい」などの米菓の製造・譲渡・販売を行っていること、及び請求人が「あられ」などについて「七福神」商標及び「七福神」の文字を要部とする商標を使用していることを当然知悉していたものである。 (カ)被請求人は、他人の先願に係る既登録の「大江戸七福神」、「七福神」及び「深川七福神」などの商標が存在している状況において、「江戸深川七福神」商標が登録されたことを奇貨として、本件商標が「江戸深川七福神」の一連一体の構成からなるものであるところ、これを「江戸/深川」と「七福神」の文字を、大きさを異にし、別々の態様で表すなどして、「七福神」を目立たせ、あたかも「七福神」商標の一種(姉妹商標又はファミリーマーク)の如く、商品「あられ」の需要者に訴えようと、使用商標1ないし9を使用してきたものである。 (キ)平成18年1月30日の被請求人の文書に、「依頼人は、『七福神』、『深川/七福神』、『奥州仙臺七福神』等の使用中止を既に完了しています。」と記載されているとおり、被請求人は、「七福神」、「深川/七福神」及び「奥州仙臺/七福神」などの商標を「あられ」について使用していたものである(甲第2号証の1ないし8)。 (ク)結局、被請求人は、故意をもって、請求人の業務に係る商品と混同を生ずる商標を本件商標の指定商品について使用しているものである。 (10)結論 以上説明したところにより、被請求人が、故意に、指定商品について、本件商標に類似する商標を使用し、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものである。 よって、本件商標は、商標法第51条第1項の規定に該当し、同規定によりその登録を取り消されるべきものである。 2 弁駁の理由 (1)本件商標は同書同大の文字で一連一体のものとして登録されたものであるところ、被請求人は、一般需要者が「七福神」の文字に注目するように本件商標を変更し、「江戸」と「深川七福神」の文字からなるもの、あるいは、「江戸深川」と「七福神」の文字からなるものと認識されるような態様で使用してきたものである。 被請求人が使用する使用商標4及び9は、本件商標と類似する商標である。 (2)使用商標4及び9は、本件商標が登録されてから5年以内に使用されているものである。 すなわち、使用商標4は、賞味期限を2006年4月20日とする包装用紙箱に使用されていたもので(甲第2号証の4の1)、本件審判の請求前5年以内における商標の使用に当たるものである。 包装用紙箱の裏面に表された賞味期限の表示は、日付印による押印でなされたものであるが、その数字は、「06.04.20」と十分に判読できるものである。 また、使用商標9は、2010年3月6日を賞味期限とする包装用紙箱に使用されていたものである(審判請求書16頁の「賞味期限2010.3.8」は誤り。)。 (3)使用商標9は、本件商標と同一のものということができないし、本件商標と社会通念上同一性を有する商標ということもできないものである。 すなわち、使用商標9は、包装用紙箱に七福神の7体の神仏の図を表し、その前に「江戸深川七福神」の文字を短冊状の枠の中に表し、「七福神の図」の背後に「宝」の文字を表した船の帆らしき図、さらに、結んだリボンらしき図を配して表したものである。 使用商標9は、七福神の図形を結合した点において、本件商標「江戸深川七福神」と同一のものということはできないし、また、リボンらしき図形を結合した点において、商標登録第4986137号の図形商標(甲第102号証の1の3)と同一のものということはできないものである。 なお、「結んだリボンらしき図」は、商標登録第5096886号として登録されているものである(甲第102号証の1の4)。 (4)さらに、商標法第51条第1項の規定には、不使用取消の商標法第50条第1項と異なり、「社会通念上同一」といった要件の定めはない。 使用商標9は、本件商標と社会通念上同一といえるものでもない。 そして、使用商標9は、七福神の図形から生ずる「七福神」の観念及び「江戸深川七福神」の文字から生ずる「七福神」の観念並びに「シチフクジン」の称呼において、請求人の使用する「七福神あられ」などの各引用商標と商標が類似するものである。 被請求人が、商品「あられ」について使用商標9を使用することは、商品「あられ」などについて請求人の使用する各引用商標との関係で、「混同を生ずるものをした」との要件を充足するものである。 (5)「七福神」の顕著性について (ア)「七福神」の文字及び「七福神」の図形は、商品の識別標識として特別に顕著なものであり、「自他商品の識別標識として機能しにくいもの」ということができない。 すなわち、「七福神」の図形に関わるものとして、明治39年の登録の商標登録第28097号がある(甲第103号証の1の1)。 「七福神」の文字に関わるものとして、登録第1419353号商標、登録第2722565号商標などがある(甲第103号証の2の1及び2)。 「菓子、パン」を指定商品とする「七福神」の文字に関わるものとして、登録第608205号商標、登録第1268144号商標などの登録例がある(甲第103号証の4の1及び2)。 (イ)「七福神」が商品の識別標識として特別に顕著なものであることは明らかであり、「水神」、「天神」、「大仏」、「如来」の外、「ほてい」、「ゑびす」、「福禄寿」、「寿老人」、「弁財天」、「毘沙門天」、「大黒天」などの登録例がある(甲第103号証の5の1ないし4及び同号証の6の1ないし7)。 (6)「地理的表示+七福神」について (ア)被請求人が「江戸深川七福神」と「秩父七福神」を同列に扱っていることは、誤りである。 すなわち、「秩父七福神」は秩父地方に存する七福神といわれる具体的に観念できる、総持寺など7つの仏閣が特定されており、それらの神仏にお参りすることが現実に行われていることは、周知のことである。 これに対して、「江戸深川七福神」といっても具体的にどの寺社の神仏が「七福神」なのか分からず、仮に存在していたとしても、書籍で紹介されるほど知られているものではない。 なお、「大江戸七福神」及び「深川七福神」は、請求人の所有に係る登録商標である(甲第1号証の2の2及び6)。 (イ)本件商標を商品「あられ」について使用した場合、その需要者は、「江戸深川」の「七福神」あるいは「江戸」の「深川七福神」と認識するものである。 なぜなら、「東京都江東区の深川であること」を明示すべく、「江戸」の文字を冠したものと被請求人も述べているように、「江戸」及び「深川」の文字が、地理的名称であることは明らかである。 (ウ)「江戸深川七福神」の表示によって具体的な7つの神社・仏閣が認識されないところ、商品「あられ」に表された「江戸深川七福神」の標章を見たその需要者は、「江戸深川」又は「江戸」の文字を地理的表示と認識し、「七福神」に「江戸深川」が附加されたもの、あるいは「深川七福神」に「江戸」が附加されたものと理解するものである。 本件商標は、商品の産地・販売地を意味する「江戸深川」を「七福神」に附加したものと認識されるものである。 (エ)「秩父七福神」や「杉戸七福神」など「七福神」の文字を含む商標が数多登録され、それらの登録について登録異議の申立てや無効審判の請求がされなかったとしても、それだけで、関係する登録商標の中で互いに類似する商標であるものが無いということにはならない(昭和55年(行ケ)第170号、昭和57年12月23日判決参照)。 (7)被請求人は、「請求人の使用に係る商標との間で出所の混同を生じた事実はなく」、「証拠においても見当たらない」と述べているが、商標法第51条第1項の規定は、具体的な商品の混同を必須の要件としているものではない。 被請求人が使用してきた使用商標4及び9は、商標法第51条第1項にいう「登録商標に類似する商標の使用であって」、「他人の業務に係る商品もしくは役務と混同を生ずるもの」に該当するものである。 被請求人の他の使用商標は、被請求人が故意に「混同を生ずるものをした」ことを、明らかに示しているものである。 (8)被請求人は、故意に、指定商品について登録商標に類似する商標を使用し、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものである。 第3 被請求人の答弁の要点 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第23号証を提出している。 1 平成22年4月30日付け答弁書 (1)被請求人が使用する商標について 請求人は、被請求人が使用する商標として、使用商標1ないし9を指摘している。 しかしながら、本件商標の登録日が2005年3月18日であるのに対し、使用商標1の使用態様として提出された甲第2号証の1の1に徴すれば、その商品の賞味期限は「2002年5月14日」である。また、使用商標2の使用態様として提出された甲第2号証の2の1に徴すれば、その賞味期限は「2003年5月4日」である。請求人が取消事由として挙げる商標法第51条の規定は、登録商標のいわゆる不正使用を対象とするものであるから、これらの使用は、本件商標の登録前に係るものであって、本規定の対象外であることは明らかである。 また、使用商標3及び5ないし8については、その使用態様を示す甲号証に徴しても、「賞味期限」、その他製造年月日等を認識させる表示はなく、いつ販売された商品であるのか全く不明である。したがって、これらの証拠によって、商標権者が不正な使用を行っていたということもできない。 さらに、使用商標4については、その使用態様を示す甲第2号証の4の1に徴しても、その賞味期限の表示は不鮮明であって、いつ販売された商品であるのか不明である。したがって、当該証拠によっても、商標権者が不正な使用を行っていたということもできない。 使用商標9は、賞味期限として2010年3月6日と表示してあり、本件商標の登録後の使用に該当すると推測されるが、その使用商標は、本件商標と社会通念上同一性を有する商標であって、商標法第51条が適用される使用態様ではない。 (2)七福神について (ア)「七福神」とは「福徳をもたらす神として信仰される七体の神であって、恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、布袋、福禄寿、寿老人の七神」をいう。そして、近世においては、新年に七福神の寺社を巡拝して福徳を祈ることが盛んになり、これを「七福神詣で」あるいは「七福神参り」と呼ばれ、現在にも受け継がれている(乙第1号証)。 日本各地には、「地名」と「七福神」の文字からなるご当地の七福神が多数存在している。例えば、「秩父七福神」、「越生七福神」、「箱根七福神」、「武州七福神」、「銀座七福神」、「神戸七福神」、「伊東温泉七福神」、「伊豆国七福神」、「亀戸七福神」、「八溝七福神」、「佐倉七福神」、「三郷七福神」、「飯山七福神」、「杉戸七福神」等のごとくである(乙第2及び第3号証)。そして、ご当地の七福神を祭った寺社の門前町は、七福神詣での参拝客で賑わい、各門前町では、ご当地の七福神の名称を用いたお菓子を販売し、名物となっているものである。 (イ)上記した事情から、日本各地には、「地名」と「七福神」の文字からなるお菓子が多数存在しており、互いに区別して取引されているところ、このような状況を考慮して、特許庁においても、「秩父七福神」、「越生七福神」、「箱根七福神」、「武州七福神」、「銀座七福神」、「神戸七福神」、「伊東温泉七福神」、「伊豆国七福神」、「亀戸七福神」、「八溝七福神」、「佐倉七福神」、「三郷七福神」、「飯山七福神」、「杉戸七福神」等、ご当地の七福神の名称を表す、「地名」と「七福神」の文字からなる商標が、請求人所有の登録商標とは非類似と判断され、並存登録されており、互いに区別して取引されているものである(乙第4ないし第22号証)。 すなわち、この種商標にあっては、「地名」の部分は商品の産地、販売地を指すものではなく、「地名」と「七福神」とが一体となって日本各地に点在する七福神の名称を表すものであって、地名を冠しない「七福神」は、元々自他商品の識別標識として機能しにくいものであり、また、本来、特定の者が独占に馴染む商標ではない。 なお、被請求人は、「深川七福神」の「布袋尊」の近隣に所在するところ、本件商標「江戸深川七福神」は、当該「深川七福神」に由来するものであるが(乙第3及び第4号証)、「深川」という地名は東京都江東区以外に北海道の深川市(乙第1号証)等が存在することから、東京都江東区の深川であることを明示すべく、「江戸」の文字を冠したものであって、本件商標を付したお菓子は、深川七福神界隈の商品として愛されているものである(乙第23号証)。 上記したように、本件商標は請求人が使用する商標に化体する業務上の信用に肖ろうとする意図は全くなく、商標法第51条にいう「故意」による使用には当たらないものである。また、請求人の使用に係る商標との間で出所の混同を生じた事実はなく、そのような事実は請求人の主張及びその提出に係る証拠においても見当たらない。 (3)まとめ 以上述べたように、本件商標は、商標法第51条第1項の規定に該当するものではなく、その登録は取り消されるべきではない。 よって、請求人の主張は理由のないものであるから、本件審判の請求は成り立たない。 2 平成22年9月24日付け答弁書(第2回) (1)本件商標と使用商標4との同一性について 請求人は、使用商標4が本件商標と類似する商標であると主張し(弁駁書2頁)、その根拠として、「江戸深川」の文字の大きさと「七福神」の文字の大きさとが異なる』及び「『江戸』、『深川』の文字がそれぞれ斜めに構成されている」を挙げている(審判請求書13頁)。 しかしながら、本条における商標の同一は物理的な同一をいうものではなく、社会通念上の同一をいうものであることは、専用権の範囲外における不正使用を対象とする本条の趣旨からしても明らかであるところ、「江戸深川」と「七福神」との文字の大きさにおける差異及び「江戸」、「深川」の文字が斜めに構成されている点は、本件商標の構成と比較してみれば非常に微々たる差異であって、本件商標との同一性を害する程のものではない。 すなわち、使用商標4は、同じ書体、同じ色彩の文字を用いて「江戸深川七福神」の文字を縦書きした構成からなるものであって、これを全体で見れば、「江戸深川七福神」の文字を縦一列に一体的に表記したものと見るのが自然であって、看者をして「江戸深川」と「七福神」とに分離して把握させる程の事情までは見出せない。 法は、登録商標と物理的に同一の商標が使用されるケースが稀で、登録商標に多少の変更を加えて使用されるケースの方が圧倒的に多い取引の実情を踏まえ、登録商標と社会通念上同一性を有する商標を専用権の範囲の商標として保護するものであり、使用商標4の場合は専用権の範囲内の商標として本条を適用すべきものではない。 なお、請求人は、使用商標4に関して、その賞味期限が「2006年4月20日」を表す「06.04.20」の表示が十分に判読できると主張するが、そのように判読できる程に明瞭でないことは明らかであるし、仮にそのように判読でき、賞味期限が2006年4月20日であるからといって、そのことをもって本件審判請求前5年以内における商標の使用であると断定することはできない。 (2)本件商標と使用商標9との同一性について 請求人は、使用商標9について、「七福神の図形を結合した点において、本件商標『江戸深川七福神』の文字商標と同一のものということはできない」と主張する(弁駁書3頁)。 請求人は、包装用紙箱の表面全体を一つの商標と捉えてこれを使用商標9と特定し(審判請求書16頁)、本件商標との同一性を論じているようであるが、包装用紙箱の表面全体を一つの商標と見なければならない必然性は全くない。 被請求人は、七福神の図形を包装箱のデザインとして、その表面に大きく描き、商標である「江戸深川七福神」の文字をその右端に表記しているに過ぎない。商標は商品の目印であって、商品、商品の包装箱等の表面積のわずかな一部分を占めるワンポイントとして表示されるのが通常であり、包装箱の右下方部に「江戸深川七福神」の文字が明記されている限り、登録商標と同一性を有する商標を使用していることは否定できない。 (3)「江戸深川」について 請求人は、本件商標「江戸深川七福神」は、商品の産地・販売地を味する「江戸深川」を「七福神」に付加したものと認識されると主張している(弁駁書5頁)。 「江戸深川」自体が地理的名称であることは否定するものではないが、だからといって、「江戸深川七福神」において「江戸深川」の部分が商品の産地・販売地を表すということにはならない。第1回答弁書においても述べたように、地域名と七福神を結合させたご当地の七福神は全国各地に無数に点在するものであって、例えば「秩父七福神」、「箱根七福神」、「武州七福神」のごとくに、地域名と七福神とを結合させたものが一つの七福神の名称となっており、地域名を関することによってどこの七福神かが識別されているものである。「江戸深川七福神」についても「江戸深川」と「七福神」の全体で一つの七福神の名称を表したものと見るのが自然であって、「江戸深川」の部分が産地・販売地を表すものと見られるようなことはない。 したがって、請求人が主張するように、「七福神」との関係で出所の混同を生じさせるようなこともない。 なお、請求人は、被請求人が「江戸深川七福神」と「秩父七福神」を同列に扱っているとして、これを誤りであると主張している。これは、第1回答弁書の5頁における「なお、被請求人は、『深川七福神』の『布袋尊』の近隣に所在するところ、本件商標『江戸深川七福神』は、当該『深川七福神』に由来するものであるが(乙第3号証及び乙第4号証)」の記載中、登録商標「秩父七福神」を指す「乙第4号証」の表記に起因するものと推測する。 しかしながら、これは「深川七福神」が現存することを証する「乙第2号証」と表記すべきところを「乙第4号証」と誤って記載したものであって、請求人が指摘するような意図ではないので、ここに訂正しておく。 (4)まとめ 以上述べたように、本件商標は、商標法第51条第1項の規定に該当するものではない。よって、請求人の主張は理由のないものであるから答弁の趣旨のとおりの審決を求めるものである。 第4 当審の判断 1 本件審判について 本件審判は、商標法第51条の規定に基づき商標登録の取消しを求める審判であるところ、同条は、商標権者が故意に指定商品・役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品・役務に類似する商品・役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用をして一般公衆を害したような場合についての制裁規定である。商標権者は指定商品・役務について登録商標の使用をする権利を有するが、指定商品・役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品・役務に類似する商品・役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用は、法律上の権利としては認められていない。ただ、他の権利と抵触しない限り事実上の使用ができるだけである。そこで、このような商標の使用であって商品の品質の誤認又は商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものの使用を故意にしたとき、つまり、誤認、混同を生ずることの認識があったときには、請求により、その商標登録を取り消すこととしたのである。これは商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し、かつ、そのような場合に当該商標権者に制裁を課す趣旨である(特許庁編「工業所有権法逐条解説」第16版参照)。 かかる観点から、以下、本件について検討する。 2 被請求人の使用に係る「使用商標」について 請求人は、被請求人が商品「あられ」について使用している商標として使用商標1ないし9(甲第2号証の1の1ないし同号証の9の1)を掲げ、縷々主張するが、これら請求人の主張に係る使用商標は、文字と図形の組合せからなる商標を指しているのか文字のみからなる商標を指しているのか必ずしも明らかでないものや重複しているものなどが見られるが、請求人の主張及び証拠を総合すると、以下のように整理することができる。 (1)使用商標1ないし3 (ア)使用商標1ないし3は、いずれも商品「あられ」の包装用紙箱の表面に表示されたものであって、別掲(a)のとおり、「奥州仙臺」及び「七福神」の文字と七福神の七体の神を描いた図形とからなるものである。そして、上記七福神の図形を構成する個々の神は、後述の請求人の使用に係る引用商標のうちの七体の個々の神を描いた図形(例えば、甲第4号証の1の1及び2、同号証の2の1ないし7、11ないし17及び21ないし27、同号証の4の1ないし7、同号証の5の6、同号証の7の1ないし6、同号証の8の2、同号証の9の2、同号証の10の2、同号証の11の1等)と酷似するものである。 (イ)請求人は、使用商標1ないし3を別々のものであるかのごとき主張を行っているが、これらは、商標が付された包装用紙箱が異なるのみであり、商標自体は同一のものである。すなわち、それぞれの包装用紙箱に付記された賞味期限が、使用商標1については「02.5.14」とされ、使用商標2については「03.5.04」とされているものである。また、使用商標3については、請求人は、「『05.12.12』と押印した小さな印刷片(「05.12.12」の押印部分はかなり退色している。)が貼付されている。」と主張するが、請求人の提出に係る証拠を精査してみても、かかる印刷片は見出すことができず、使用商標3に係る商品の賞味期限は明らかでない。 (ウ)ところで、「賞味期限」とは、一般に「劣化が比較的遅い食料品を包装状態のまま所定の環境に置いた状態で、製造者が安全性や味・風味等の全ての品質が維持されると保証する期限を示す日時である。」(フリー百科事典「ウィキペディア」)とされることからすると、使用商標1及び2が付された商品は、少なくとも2002年5月頃又は2003年5月頃に販売されていたものというべきであり、使用商標1及び2は当該時期に使用されていたものといえる。また、使用商標3が付された商品の販売時期は不明であり、使用商標3の使用時期は不明といわざるを得ず、むしろ使用商標1及び2とほぼ同時期に使用されていたものとみるのが自然である。 そうすると、本件商標の登録は平成17年(2005年)3月18日であるから、使用商標1ないし3は、本件商標の登録前の使用であって、商標法第51条第1項に定める要件を充足するものではなく、本件審判の対象となるものではない。 (2)使用商標4 (ア)使用商標4は、商品「あられ」の包装用紙箱の表面に表示されたものであって、別掲(b)のとおり、「江戸深川七福神」の文字と七福神を描いた図形とからなるものであり、上記七福神の図形は、使用商標1ないし3中の七福神の図形と同一である。上記「江戸深川七福神」の文字部分は、別に印刷した紙を貼付したものと見られる。そして、上記包装用紙箱の裏側には賞味期限を表示した紙片が貼付されており、不鮮明ながら、「06.04.20」と思しき数字が押印されている。 (イ)被請求人は、上記賞味期限の表示は不鮮明であり、使用商標4が付された商品の販売時期は不明である旨主張しているが、請求人の提出に係る甲第101号証の3の4(被請求人代理人から請求人代理人に宛てた平成17年12月12日付書簡)によれば、商品の個包装・箱にシールを貼付したことを示す写真1及び2が添付されており、該写真及び甲第2号証の4の1(使用商標4が付された包装用紙箱)に徴すれば、該写真は、使用商標4が付された包装用紙箱を示すものとみるのが自然である。 そうすると、使用商標4を使用した商品は、少なくとも上記書簡が送付された平成17年(2005年)12月頃から販売されていたものと推認されるから、上記使用商標4が付された包装用紙箱の裏面に表示された賞味期限は、2006年4月20日を示すものとみても不自然ではない。 したがって、使用商標4は、本件商標の登録後である平成18年4月頃に使用されていたものとみるべきである。 (3)使用商標5 使用商標5は、商品「あられ」の包装用紙箱の両側面に表示されたものであって、別掲(c)のとおり、「江戸深川七福神あられ」の文字からなるものである。 請求人は、使用商標4と使用商標5とを別々の包装用紙箱に表示されたもののごとき主張を行っているが、証拠からみる限り、両商標は一個の包装用紙箱の表面と側面に表示されているものを指すものと判断される。 したがって、使用商標5は、使用商標4と同様、本件商標の登録後に使用されていたものとみるべきである。 (4)使用商標6 使用商標6は、使用商標4及び5が表示された包装用紙箱の中に入れられた包装用中型袋の表面に表示されたものというべきであって、別掲(d)のとおり、使用商標4と同一の構成からなるものといえる。 使用商標6は、使用商標4及び5が表示された包装用紙箱の中に入れられた包装用中型袋に表示されたものである以上、使用商標4ないし5と同様、本件商標の登録後に使用されていたものとみるべきである。 (5)使用商標7 使用商標7は、使用商標6が表示された包装用中型袋の裏面に表示されたものであって、別掲(e)のとおり、赤色の「深川」及び「七福神」の文字を二段に横書きし、その下部に黒色の「えびす」、「毘沙門天」、「福禄寿」等の文字を7段に亘って横書きしてなるものである。 使用商標7も、使用商標4ないし6と同様、本件商標の登録後に使用されていたものとみるべきである。 (6)使用商標8 使用商標8は、商品「あられ」の入った包装用中型袋の表面に表示されたものであって、別掲(f)のとおり、使用商標4及び6と同一の構成からなるものといえる。そして、甲第2号証の8の1によれば、「江戸深川七福神」の文字部分は別紙に印刷したものを貼付したものであり、貼付前は「仙臺七福神」の文字が印刷されていたことが窺える。 そして、請求人は、使用商標8が表示された包装用中型袋の裏面には、賞味期限「0?.05.11」の押印による表示がされている旨主張するが、上記甲第2号証の8の1を精査するも、賞味期限を示すシールに日付が押印されていることを確認することができず、使用商標8を付した商品の販売時期は明らかでない。 したがって、使用商標8は、本件商標の登録後に使用されていたものということはできないから、使用商標1ないし3と同様、商標法第51条第1項に定める要件を充足するものではなく、本件審判の対象となるものではない。 (7)使用商標9 使用商標9は、商品「あられ」の包装用紙箱の表面に表示されたものであって、別掲(g)のとおり、宝船に乗った七福神を描いた図形、リボン状の図形、短冊状の四角形内に表された「江戸深川七福神」の文字からなるものである。 そして、甲第2号証の9の4によれば、上記包装用紙箱の裏面には賞味期限として「2010.3.6」と表示されていることが認められる。 そうすると、使用商標9を付した商品は、少なくとも2010年(平成22年)3月頃には販売されていたものといえるから、使用商標9は本件商標の登録後に使用されていたものというべきである。 (8)小括 以上によれば、被請求人の使用に係る「使用商標」として、本件において対象とすべき商標は、使用商標4ないし7及び9というべきであり、また、使用商標4及び6はほぼ同一の構成態様からなるものといえる。 以上を前提にして、以下に検討する。 3 被請求人の使用に係る「使用商標」と本件商標との類否について (1)使用商標4及び6について (ア)使用商標4は、別掲(b)のとおり、七体の神である七福神の図形と毛筆風の「江戸深川七福神」の文字からなるものであるから、「江戸深川七福神」の文字のみからなる本件商標とは、上記図形の有無という顕著な差異を有し、社会通念上同一のものということはできない。 しかしながら、使用商標4は、その構成中の「江戸深川七福神」の文字自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえるから、これより本件商標と同一の「エドフカガワシチフクジン」称呼及び「江戸深川七福神」の観念を生ずるものであって、両商標は類似の商標というべきである。 (イ)使用商標6は、別掲(d)のとおり、使用商標4とは、「江戸七福神」の文字の位置が若干相違するのみで、ほぼ同一といえるものであるから、使用商標4と同様に、本件商標と類似する商標というべきである。 (ウ)請求人は、使用商標4及び6を構成する「江戸深川七福神」の文字部分は、「江戸」及び「深川」の文字が「七福神」の文字より小さめで両者の表現形式も異なり、「七福神」の文字が目立つように表され、単に「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を生ずる旨主張する。 しかしながら、上記「江戸深川七福神」の文字部分は、一体性を損なうほどの各文字の相違はなく、一連一体のものとして看取されるというべきであり、毛筆風で縦書きと標準文字で横書きという差異があるとしても、本件商標とは社会通念上同一といえる範囲のものである。 (2)使用商標5について 使用商標5は、別掲(c)のとおり、毛筆風の「江戸深川七福神あられ」の文字からなるものであるから、「江戸深川七福神」の文字からなる本件商標とは、「あられ」の文字の有無という顕著な差異を有し、社会通念上同一のものということはできない。 しかしながら、使用商標5は、その構成中の「あられ」の文字が、商品の普通名称を表示し、自他商品の識別力を有しないものであり、「江戸深川七福神」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たすものというべきであるから、これより「江戸深川七福神」の観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼をも生ずるといえるから、本件商標とは観念及び称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。 (3)使用商標7について 使用商標7は、別掲(e)のとおり、赤色の「深川」及び「七福神」の文字と黒色の「えびす」、「毘沙門天」、「福禄寿」等の文字からなるものであるから、「江戸深川七福神」の文字からなる本件商標とは、明らかな差異を有し、社会通念上同一といえるものではない。また、使用商標7は、赤色で表された「深川」及び「七福神」の文字部分が、看者の注意を強く惹き、それ自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえるとしても、本件商標とは、「江戸」の文字の有無という顕著な差異を有することから、別異の商標として認識し把握され、非類似の商標というべきものである。 (4)使用商標9について 使用商標9は、別掲(g)のとおり、七福神を描いた図形、短冊状の四角形内に表された「江戸深川七福神」の文字、及びリボン状の図形からなるものであるから、「江戸深川七福神」の文字からなる本件商標とは、外観上明らかな差異を有し、社会通念上同一といえるものではない。 しかしながら、使用商標9は、その構成中の「江戸深川七福神」の文字部分自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものというべきであり、これより「江戸深川七福神」の観念及び「エドフカガワシチフクジン」の称呼をも生ずるといえるから、本件商標とは観念及び称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。 なお、使用商標9の構成中の「江戸深川七福神」の文字部分は、本件商標とは、毛筆風で縦書きと標準文字で横書きという差異があるとしても、本件商標とは社会通念上同一といえる範囲のものである。 4 請求人の使用に係る「引用商標」について 請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、「七福神」の文字からなる登録商標及び「七福神あられ」の文字からなる登録商標を所有し、これら登録商標と社会通念上同一といえる商標が商品「あられ」について使用されていることが認められる。請求人は、自己の使用に係る商標を引用商標1ないし31として掲げているが(甲第4号証の1の1ないし同号証の31の1)、一部を除き、殆どの引用商標が「七福神あられ」の文字を自他商品識別標識としての要部とするものである。 そして、請求人は、群馬県、東京都及び静岡県に直営店を有するほか、請求人の商品の取扱店は67店に及ぶこと(甲第51号証の2の1ないし4及び第61号証の1の1)、請求人はインターネットを通じた通信販売も行っていること(甲第61号証の1の2)、「七福神あられ」の文字を要部とする引用商標を使用した商品「あられ」の売上高は、1997年から2006年までの10年間で約26億4千万円に達し、2007年から2009年までの3年間で22億1千万円となっていること(甲第70号証の6の1及び2)、請求人は新聞、雑誌、ちらし、パンフレット、ラジオ放送等の各種媒体を通じ、昭和63年(1988年)頃から現在に至るまで、「七福神あられ」の文字を要部とする引用商標を使用して商品の宣伝・広告を行っていること(甲第61号証の1の1ないし第67号証の16の1並びに第70号証の1の1及び2の1)、「七福神あられ」の文字を要部とする引用商標を使用した請求人の商品は、他人の作成に係る商品カタログ、ちらし等にも掲載されているほか、各種新聞、雑誌、書籍において紹介されていること(甲第71号証の1の1ないし第78号証の2の2)、などが認められる。 上記事実を総合すると、本件商標の登録出願時及び設定登録時はもとより、被請求人による使用商標の使用が行われた時点においても、引用商標は、「七福神あられ」の文字を要部とするものであって、請求人の業務に係る商品「あられ」に使用する商標として、群馬県ないし関東地域を中心に、取引者、需要者間に広く認識されていたものというべきである。 5 商品の混同について (1)上記3のとおり、被請求人の使用に係る使用商標4ないし7及び9は、全体としてみれば、使用商標7を除き、いずれも本件商標と類似するものであるが、使用商標4、6及び9の構成中の「江戸深川七福神」の文字部分は、本件商標と社会通念上同一といえるものである。また、使用商標4及び6の構成中の七福神を描いた図形は、請求人の使用に係る引用商標のうちの個々の七福神を描いた図形と同一視できるほどに酷似するものであり、引用商標中の上記図形自体はそれ程知られていないとしても、使用商標4及び6の構成中の上記図形は、引用商標中の上記図形を剽窃したものといわれても止むを得ないものである。 (2)そして、使用商標5は、別掲(c)のとおり、「江戸深川」の文字と「七福神あられ」の文字とは大きさが明らかに異なるばかりでなく、「江戸深川」の文字が商品の産地販売地としての地名を表したものと認識し把握される場合もあることとも相俟って、「七福神あられ」の文字が看者の注意を強く惹き、印象付けられ、記憶に残るものであり、これより生ずる称呼及び観念をもって取引に資される場合が決して少なくないものというべきである。してみれば、使用商標5は、「七福神あられ」の文字を要部とする引用商標とは、「シチフクジンアラレ」の称呼及び「七福神あられ」の観念を共通にする類似の商標といわなければならない。 (3)他方、請求人の使用に係る「引用商標」は、前示のとおり、「七福神あられ」の文字を要部とするものであり、取引者、需要者の間に広く認識されているものである。 また、使用商標4ないし7及び9が使用されている商品「あられ」は、引用商標が使用されている商品と同一又は類似の商品といえるものであって、商品の用途、原材料、品質等はもとより、流通経路、取引者、需要者等を共通にするものである。 (4)以上を総合すると、被請求人の使用に係る使用商標、特に使用商標5に接する取引者、需要者は、「七福神あられ」の文字部分に着目して、広く認識されている引用商標を連想、想起し、該商品が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。 6 被請求人の故意について (1)前示のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び設定登録時には既に取引者、需要者間に広く認識されていたものであること、被請求人は、請求人と同業者であって東京都江東区清澄に拠点を有し(甲第101号証の2の1)、請求人も群馬県前橋市における本社のみならず、東京都中央区銀座地区に販売拠点を有するなど、両者の業務に係る商圏も近接ないしは重複していること、使用商標1ないし4、6及び8の構成中の七福神図形は引用商標中の七福神図形と酷似していること、「七福神」商標に関し、平成14年1月26日付及び同月30日付で被請求人から秋元弁理士に宛てて書簡が提出されていること(甲第101号証の3の1及び2)、平成14年2月7日付で秋元弁理士から被請求人に宛てて商標「七福神」につき請求人と直接交渉するよう書簡が提出されていること(甲第101号証の3の3)、平成17年12月12日付で被請求人代理人から請求人代理人に宛てて、商標「七福神」に関してロールフィルムの裁断・破棄、商品の個包装・箱へのシールの貼付などの処理が完了した旨を通知する書簡が提出されていること(甲第101号証の3の4)、などからすると、被請求人は、請求人及び引用商標の存在を知らずに本件商標を登録出願し登録を受けたものとはいい難く、また、「七福神」の文字を含む商標の使用に問題があることも十分に認識していたものといわざるを得ない。 (2)そうすると、被請求人は、本件商標が登録されたことを奇貨として、前示のとおり、本件商標と類似する使用商標4ないし6及び9を使用し、その結果、請求人の業務に係る商品との混同を生ずるおそれがあることを十分認識していたものというべきである。とりわけ、使用商標5は、本件商標「江戸深川七福神」の文字に「あられ」の文字を付加し、さらに「七福神あられ」の文字が目立つような態様で表されており、引用商標に近づけようとする意図が窺えるものである。 つまり、被請求人は、故意に請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものと判断するのが相当である。 7 むすび 以上のとおり、本件商標権者である被請求人は、故意に、指定商品について本件商標に類似する商標の使用をし、他人である請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものであるから、商標法第51条第1項の規定に基づき、本件商標は、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 使用商標 (a) 使用商標1ないし3 (甲第2号証の1の1、同号証の2の1及び同号証3の1) (b) 使用商標4(甲第2号証の4の1) (色彩については甲第2号証の4の1参照) (c) 使用商標5(甲第2号証の5の1) (d) 使用商標6(甲第2号証の6の1) (色彩については甲第2号証の6の1参照) (e) 使用商標7 (甲第2号証の7の1) (色彩については甲第2号証の7の1参照) (f) 使用商標8(甲第2号証の8の1) (g) 使用商標9(甲第2号証の9の1) |
審理終結日 | 2010-10-14 |
結審通知日 | 2010-10-19 |
審決日 | 2010-11-01 |
出願番号 | 商願2004-76148(T2004-76148) |
審決分類 |
T
1
31・
3-
Z
(Y30)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田中 幸一 |
特許庁審判長 |
鈴木 修 |
特許庁審判官 |
小畑 恵一 瀧本 佐代子 |
登録日 | 2005-03-18 |
登録番号 | 商標登録第4847925号(T4847925) |
商標の称呼 | エドフカガワシチフクジン、シチフクジン |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 石川 義雄 |
代理人 | 小出 俊實 |
代理人 | 佐久間 光夫 |
代理人 | 吉田 親司 |
代理人 | 佐藤 久美枝 |
代理人 | 幡 茂良 |
代理人 | 潮崎 宗 |
代理人 | 橋本 良樹 |
代理人 | 村田 幸雄 |