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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない X16
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない X16
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない X16
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X16
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X16
管理番号 1226701 
審判番号 無効2010-890013 
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-02-22 
確定日 2010-11-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5219090号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5219090号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり、「サイト・イット!」及び「Site-it!」の文字を併記してなり、平成20年7月25日に登録出願、第16類「接着性を有する付箋,低粘着剤付き付箋,粘着剤付き付箋,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,紙製包装用容器,荷札,紙類,文房具類,学用品(文房具に当たるものに限る。),印刷物」を指定商品として、同21年2月6日に登録査定、同年4月3日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 引用商標
請求人が引用する登録商標は、以下のとおりであり、現に有効に存続しているものである。
ア 登録第2081504号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和54年10月15日に登録出願、第25類「接着テ-プ、その他の文房具類、その他本類に属する商品」を指定商品として、同63年9月30日に設定登録され、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、その後、指定商品については、平成20年10月8日に第16類「文房具類,紙類」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
イ 登録第3338554号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成7年5月25日に登録出願、第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,型紙,紙製テーブルクロス,紙製タオル,紙製手ふき,紙製のぼり,紙製旗,紙製ハンカチ,紙製ブラインド,紙製幼児用おしめ,裁縫用チャコ,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印刷用インテル,印字用インクリボン,活字,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,装飾塗工用ブラシ,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,封ろう,マーキング用孔開型板,郵便料金計器,輪転謄写機,観賞魚用水槽及びその附属品」を指定商品として、同9年8月8日に設定登録され、その後、同19年2月27日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
ウ 登録第4505271号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)のとおりの構成からなり、平成12年11月13日に登録出願、第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,型紙,紙製タオル,紙製テーブルクロス,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製のぼり,紙製旗,紙製ハンカチ,紙製ブラインド,紙製幼児用おしめ,裁縫用チャコ,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印刷用インテル,印字用インクリボン,活字,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,装飾塗工用ブラシ,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,封ろう,マーキング用孔開型板,郵便料金計器,輪転謄写機,観賞魚用水槽及びその附属品」を指定商品として、同13年9月7日に設定登録されたものである。
なお、上記引用商標1ないし3をまとめていうときは、以下「引用商標」という。
2 本件商標と引用商標との比較
本件商標と引用商標は、その後半部分が英語の代名詞である「IT」とハイフンとからなる点で共通している。また、本件商標と引用商標の前半部分は、共にローマ字4文字からなり、称呼における音も共に3音からなる。
また、本件商標の「SITE」は、「場所、会場、位置させる」を意味する語であり(甲第5号証)、引用商標の「POST」は、「持ち場、受け持ち地域、配置する」を意味する語である(甲第6号証)。したがって、両者はその意味合いを共通にしている。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、共通点が多いものである。特に、「-IT」なる構成は、商標においては余り例のないものであり、引用商標の特長ともなっており、この点を共通にしている本件商標は、引用商標と共通している度合いが高いと言える。
これらの事情にかんがみれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、引用商標との関係で商品の出所の混同を生じるものと言える。したがって、本件商標は、引用商標に類似するものと言える。
加えて、引用商標は、本件商標の指定商品である「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」の商標としては当該商品の代名詞となる程極めて著名なものである。引用商標の著名性は特許庁においても顕著な事実であると思われる。
「ウィキペディア(Wikipedia)」(甲第7号証)の中では、「『POST-IT(ポストイット)』が付箋の代表となっている」旨並びに「1980年以降『POST-IT(ポストイット)』という商品名で世界中に広まり現在では100カ国以上で販売されている」旨の記述があり、このことから、引用商標が著名であることは明らかである。
また、「POST-IT 3M」をキーワードにインターネットを検索したところ、666,000件のホームページがヒットした(甲第9号証)。この数は請求人の「POST-IT」が著名であるのに十二分すぎるものであることは明らかである。無論インターネットの検索結果は現在のものであるが、上述した「1980年以降『POST-IT(ポストイット)』という商品名で世界中に広まり」という記述から、本件商標の出願後に急激に「請求人のPOST-IT」に関するホームページの数が増えたとは考え難い。むしろ、本件商標の出願前でも同じような数のホームページがヒットしたであろうことは、経験則上容易に推測できる。したがって、現時点で「POST-IT 3M」をキーワードにインターネットを検索した結果出てきた数は本件商標の出願前の引用商標の著名作を立証できるものである。
商標に基づき商品を選択する際には、需要者はその頭の中に記憶された商標に多分に影響されるものである。常に、需要者は値段に変わりがなければ著名商標の商品を購入したいものである。そのため、普通であれば間違わない商標であっても著名商標と共通する点が見出せるものは、著名商標であると誤認混同されるものである。
現実の取引において、引用商標「POST-IT(ポストイット)」を付した接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」を購入したいと希望している需要者が、当該商品に使用された、引用商標の特長を備えかつ同じ文字数及び音数の本件商標に接した場合には、この「POST-IT(ポストイット)」が先入観念として強く働く結果、これに引きずられて本件商標を引用商標であると誤認混同することは必定である。
引用商標の著名性の故に、現実の取引において、本件商標が引用商標と誤認混同するおそれがある以上、本件商標は引用商標に類似するものとなる。
以上のことから明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第10号及び同第15号違反
本件商標が出願された2008年7月25日前より、引用商標は「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」について著名なものであった。このことも特許庁においては顕著な事実であると思われる。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号にも違反して登録されたものである。
さらに、引用商標は、「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」について著名なものであったことから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第19号違反
本件商標は、引用商標の「POST」を同じ字数、音数でかつ意味合いにおいて共通している「SITE」に置き換えたものに過ぎない。この点において、本件商標は引用商標の顧客吸引力にただ乗りする意図、すなわち不正の目的をもって採択されたものと言わざるを得ない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも違反して登録されたものである。
5 商標法第4条第1項第7号違反
商標は採択行為であったとしても、商道徳に反して商標を採択されることは許されるものではない。上述したように、本件商標は明らかに、多大なる企業努力により著名なものとし大いなる顧客吸引力を有する財産的価値あるものとなった引用商標にただ乗りし不正に利益を得ることを意図して採択されたものであるから、商道徳に反するものであると言わざるを得ない。
現に、本件商標と社会通念上同一のものと認められる商標が、引用商標が使用されてきた「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」に被請求人によって使用されている(甲第10号証)。「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」に使用される商標として、敢えて著名商標と多くの点て共通性を有するものを採択したことはこの著名商標の顧客吸引力を利用して不当に利益を得する意図に基づいたものであることは明白である。
商標法第4条第1項第7号の「公の秩序」には取引の秩序を維持する商標法の趣旨からして商道徳も含まれると解すべきである。
したがって、本件商標は、商道徳に反して採択登録されたものであるから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであると言える。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号、同第19号及び同第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第46条第1号の規定により無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の上記主張に対し、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 本件商標と引用商標との類否について
(1)本件商標は、前記1のとおり、「サイト・イット!」及び「Site-it!」の文字を併記してなるから、これより「サイトイット」の称呼を生ずるものである。
一方、引用商標は、別掲(2)ないし(4)のとおりの構成からなるところ、それぞれの構成文字全体から、「ポストイット」の称呼を生ずるものである。
そこで、本件商標から生ずる「サイトイット」の称呼と引用商標から生ずる「ポストイット」の称呼とを比較するに、両称呼は、称呼における識別上重要な要素を占める語頭音を含む前半部分において、音構成及び音質において明らかな差異を有する「サイト」と「ポスト」の音に差異を有するうえ、「Site(サイト)」の語は「敷地、用地、ウェブサイト」等を意味する英語として、また、「POST(Post)」の語は「郵便箱、ポスト」等を意味する英語として、いずれも広く知られていることとも相俟って、これらの音の差異が両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、両者は、これをそれぞれ一連に称呼するも、称呼上十分に区別し得るものである。
また、本件商標と引用商標の外観を比較するに、両商標の全体の外観は、本件商標の構成中上段に「サイト・イット!」の片仮名を有するから、引用商標とは全体の外観を異にするものである。また、両商標の欧文字部分についてみるに、両商標は後半部分において、ハイフンと「it(IT)」を共通にするにしても、構成前半部分において、「Site」と「POST(Post)」という字形に明らかな差異を有し、また末尾において「!」(感嘆符)の有無に差異を有することから、取引者、需要者の通常の注意力をもってすれば、その外観を見誤るおそれはないものというべきである。
さらに、両商標の観念についてみるに、いずれも、商標全体としては親しまれた意味合いを有する成語とは認められないものであるから、観念については比較すべくもないが、上記したとおり、「Site(サイト)」の語も「POST(Post)」の語も日常一般において広く知られ親しまれていることから、両語の明らかな意味合いの差異をもってすれば、互いに相紛れるおそれはないものというべきである。
そうとすると、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点よりみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)請求人は、本件商標の「SITE」は、「場所、会場、位置させる」を意味する語であり、引用商標の「POST」は、「持ち場、受け持ち地域、配置する」を意味する語であるから、両者はその意味合いを共通にしている旨主張する。
しかし、本件商標中の「サイト」及び「Site」の語は、「サイト、ホームページ、WWWなどで情報が置かれている場所」(甲第5号証)の意味を有する語としても知られている。一方、引用商標中の「POST/Post」の語は、「〔インターネットなどに情報を〕掲載する、載せる、投稿する、ポストする」(甲第6号証)の意味を有する語である。
したがって、両語は、その意味を異にすることは明らかである。
また、請求人は、本件商標と引用商標とは、共通点が多いものである。特に、「-IT」なる構成は、商標においては余り例のないものであり、引用商標の特長ともなっており、この点を共通にしている本件商標は、引用商標と共通している度合いが高いと言える旨主張する。
しかし、本件商標は、「Site」の文字と「it」の文字をハイフンで連結して、まとまりよく表現されているものである。一方、引用商標は、「POST」又は「Post」の文字と「IT」又は「it」の文字をハイフンで連結して、同様にまとまりよく表現されているものであるから、両商標から、語尾の「it」又は「IT」の2文字を抽出し、分離観察しなければならない特段の理由は見いだせないから、その前提において請求人の主張は失当であるといわなければならない。
2 引用商標の著名性について
請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は最初の糊付き付箋製品「ポスト・イット(Post-it)」を開発したメーカーであり、これを1980年の全米発売、現在では日本を含め100ヶ国以上で販売されいる。そして、糊付き付箋製品には、定番の黄色以外に蛍光色を用いたものや面積の大きいもの、先端に色の付いたもの、より強い接着面を持つものなど、さまざまなバリエーションのものが販売されている(甲第7号証ないし甲第9号証)と認められる。
そうとすれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」を表示する商標として、この種商品における取引者、需要者の間に広く認識されていたものであると認められる。
3 商標法第4条第1項第10号及び同第19号該当性について
本件商標は、前記1のとおり、引用商標に類似する商標と認めることができないものであるから、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当するものではない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、前記2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」を表示する商標として、この種商品における取引者、需要者の間に広く認識されていたものであるとしても、本件商標と引用商標とは十分に区別し得る別異の商標というべきものであり、他に混同を生ずるおそれがあるとみるべき格別の事情も見出し得ないから、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、別掲(1)のとおり、「サイト・イット!」及び「Site-it!」の文字を併記してなるものであり、その構成自体において、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような標章からなるものとは認められない。また、他の法律でその使用が禁止されているものにも当たらない。
さらに、引用商標とは、明らかに別異の本件商標を出願し登録した行為は、引用商標に由来し、これを剽窃等してなされたものであるとは到底いい難く、また、全証拠に照らしても、引用商標とは類似しない本件商標が請求人に不利益を与える目的等不正の目的をもって出願されたとすべき事情等を認めることはできないから、その出願の経緯において社会的妥当性を欠くものがあったとはいい得ない。
他に、本件商標の登録が商道徳に反するものであって、公正な取引秩序を乱すおそれがある、あるいは、国際信義に反するものであって、公の秩序に反するものに該当するとすべき理由は見いだせない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とは認められないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものとは認められないから、同法第46条第1項の規定によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)引用商標1


(3)引用商標2


(4)引用商標3


審理終結日 2010-06-10 
結審通知日 2010-06-14 
審決日 2010-06-25 
出願番号 商願2008-64833(T2008-64833) 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (X16)
T 1 11・ 271- Y (X16)
T 1 11・ 222- Y (X16)
T 1 11・ 22- Y (X16)
T 1 11・ 262- Y (X16)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 尚人 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 馬場 秀敏
小畑 恵一
登録日 2009-04-03 
登録番号 商標登録第5219090号(T5219090) 
商標の称呼 サイトイット、サイトアイテイ、サイト 
代理人 田島 壽 
代理人 青木 篤 

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