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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20104720 審決 商標
不服201127258 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない X03
管理番号 1226689 
審判番号 不服2009-18927 
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-05 
確定日 2010-11-01 
事件の表示 商願2008-80894拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「シャンパンハニージュレ」の文字を標準文字により表してなり、第3類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成20年10月3日に登録出願されたものである。そして、指定商品については、原審における平成21年6月24日付け手続補正書によって補正された結果、第3類「フランス国シャンパーニュ地方で造られる発泡性ぶどう酒を配合した化粧品,フランス国シャンパーニュ地方で造られる発泡性ぶどう酒を配合したせっけん類」となったものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、『シャンパンハニージュレ』の文字よりなるところ、構成中の『シャンパン』の文字は『シャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒』を意味するものとして一般需要者の間に広く知られているもので、『シャンパンハニージュレ』の語が、常に一体不可分のものとして認識しなければならない事情は認められないから、『シャンパン』の語を含む本願商標をその指定商品に使用するときは、著名な『Champagne』の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるものといえ、さらに、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるというのが相当であり、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
本願商標は、前記1のとおり、「シャンパンハニージュレ」の文字を書してなるところ、その構成中、「シャンパン」の文字は、「フランス北東部シャンパーニュ地方産の発泡ワイン」を意味する語であり、「ハニー」の文字は、「蜂蜜」を意味する語であり、「ジュレ」の文字は、「ゼリー」を意味する語であって(いずれも「コンサイスカタカナ語辞典(株式会社三省堂)」を参照)、それぞれ当該意味合いで一般に親しまれている語であるから、本願商標は、「シャンパン」、「ハニー」、「ジュレ」の各語からなるものと容易に認識させるものである。
そして、「シャンパン」に関しては、以下の事実が認められる。
(1)三省堂2005年10月20日発行「コンサイスカタカナ語辞典(第3版)」の「シャンパン[champagne]」の項には、「発泡ワインの1種.フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒.白ぶどう酒に糖分を加え発酵させ,香料を配し,びん詰にして1年以上貯蔵する.多量の炭酸ガスを含みさわやかな香味をもつ.祝宴に多く用いられる.シャンペンとも.日本では中国名『三鞭酒』を借りてシャンペンと読んでいた.シャンパーニュ地方以外でつくられる発泡ワインはスパークリング-ワインと呼んで区別される.」と記載されている。
(2)岩波書店2008年1月11日発行「広辞苑第六版」の「シャンパン【champagne】」の項には、「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。発酵の際に生じた炭酸ガスを含み、一種爽快な香味がある。」と記載され、同じく「シャンパーニュ【Champagne】」の項には、「フランス北東部、パリ盆地東部の地方(州)。ブドウ栽培・シャンペン製造で知名。中心都市ランス。」と記載されている。
(3)集英社2007年1月1日発行「イミダス2007」の「シャンパーニュ champagne」の項には、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡酒。シャンパンともいう。・・・女性の間で日常のお酒としての人気が急上昇しており、百貨店での売上高が前年比3割前後の増加という伸びを見せている。・・・シャンパーニュという名称はフランスのシャンパーニュ地方で作られたもののみ名乗ることができる。」と記載されている。
(4)柴田書店1982年5月20日発行「新版 世界の酒事典」には、「シャンパン(Champagne)」の見出の下に、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン.正式の名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という.世界の各地で、各種のスパークリング・ワインがつくられているが,このうちシャンパンと呼ばれるものは,フランスのシャンパーニュ地方,特にプルミェール・ゾーン(ランス山とマルヌ谷との一等地),ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落群)産のスパークリング・ワインにかぎると1911年の法律で定められている.」と記載され、柴田書店1995年8月1日発行「世界酒大事典」にも同様に記載されている。
(5)明治屋本社昭和63年8月1日再版発行「明治屋酒類辞典」には、「Champagne(仏)(英)シャンパン」の見出の下に、「フランスの古い州の名『シャンパーニュ』をとってワインの名に用いたものである。現在『統制された名称』であって,何ら形容詞を付けないで単に『シャンパーニュ』と称する資格を有するのは,マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし,その地域内で,『シャンパン法』でつくった『白』スパークリング・ワインである。最高生産量にも制限があって,それを越えた部分には形容詞がつく。」と記載され、また、[統制名称]の見出の下に、「シャンパンは,詳しくは『ヴァン・ド・シャンパーニュ』であるが,『シャンパーニュ』という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法律ができて,『シャンパーニュ』という名称が『法律上指定された』名となった。」、「要するにシャンパンの条件は(a)シャンパン地区の生産であること。(b)シャンパン法(ビン内で後発酵を行い,発生したガスをビン内に封じ込める)で製造したものであること。(c)白ワインであること。(原料ブドウには黒ブドウと白ブドウとを,メーカーの秘伝の比率で混和するけれど,でき上がりは白ワインである)(d)その年度の最高の生産高に制限があること,の4条件を具えなければならない。」、「戦前,わが国でもシャンパンの名称を乱用した歴史があるが,敗戦の結果,サンフランシスコ講和条約の効果として,マドリッド協定に加入を余儀なくされ,以来フランスの国内法を尊重している。」等と記載されている。
(6)角川書店1990年6月30日発行「世界の酒4 シャンパン」には、その6頁に、「シャンパーニュの丘」の見出の下に「シャンパーニュのワインの歴史に、さらにひとつの栄光のエピソードが加わった。それは発泡性のワインの誕生である。この画期的な発見、発明は、その後の研究者たちの努力によって、発泡性ワイン、シャンパンの名声を、ヨーロッパのみならず世界的なものにしたのであった。」と記載され、8頁に、「シャンパーニュのぶどう畑」との見出の下に「シャンパーニュというのは、この地方の古くからの一般的呼称である。・・・シャンパーニュには、他の産業もいろいろとあるが、何といってもシャンパンで世界的に知られている。」と記載されている。
(7)サントリー株式会社1998年12月1日発行「世界のワインカタログ1999 by Suntory」には、「シャンパーニュ Champagne」の項に、「シャンパーニュ(Champagne)A.O.C.ワイン地域図」としてワイン産地の地図が掲載され、「シャンパーニュ」の見出の下に、「フランスの葡萄産地としては最北部にあたるシャンパーニュは、言うまでもなく、あのシャンパンの産地です。この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界で最も有名なワインのひとつです。その名にふさわしく、大変手間のかかる伝統的な手法をかたくなに守り続けて、素晴らしい風味を生み出しています。・・・シャンパン表示のできるものは、このシャンパーニュ地方の指定地域内でとれた黒葡萄のピノ・ノワールとピノ・ムニエ、白葡萄のシャルドネの3種のみから生産され、発泡性をもたせるために瓶内で2回目の発酵を行い、それによって生じた炭酸ガスを瓶内に封じ込める方法でつくられたものに限る、とされています。」と記載されている。
(8)宙(おおぞら)出版1999年「はじめてのシャンパン&シェリー」には、22頁に、「シャンパンの定義」の見出の下に、「シャンパンというと、発泡性ワインの代名詞のようなイメージがありますが、正確には、フランスのシャンパーニュ地方で伝統的な醸造法を用いて造られた発泡性ワインのみを指します。シャンパンの規定は、フランスのワイン法(AOC)で細かく定められています。シャンパーニュ地方で栽培されたブドウを用いること、伝統的なシャンパーニュ方式で製造すること、製造の全工程を指定地域内で行うことなど、さまざまな条件を満たすことが義務付けられています。ほかの国や地域で、シャンパンと同様の製法を用いた発泡性ワインが造られたとしても、それをシャンパンと呼ぶことはできないのです。」と記載されている。また、同132頁及び133頁に、「一目で分かるシャンパンのデータ」の見出の下に、1998年における上位10カ国へのフランスからの国別出荷量等がグラフにより示されており、我が国への出荷量については、イギリス、ドイツ、アメリカ、ベルギー、スイス、イタリアに次いで多く298万本(750ml、以下同じ。)であること及びフランスからの総出荷量は、1993年が22909万本、1998年が29246万本であって、この間ゆるやかに上昇を続けている旨の記載がある。
(9)フランス食品振興会(SOPEXA)1987年発行「フランスのワインとスピリッツ」には、18頁及び19頁に、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれ2分され、(a)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)(b)V.D.Q.S.(上質指定ワイン)(c)ヴァン・ド・ペイ(地酒)(d)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質指定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されたものに限られ、製造の条件は法令化されていること、A.O.C.(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.Sワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件等の規準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.Sワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な規準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないことなどが記載され、また、同20頁には、産地別A.O.C.ワイン一覧表中に「シャンパーニュ(CHAMPAGNE)」が記載されている。
(10)1989年6月13日付け日本経済新聞夕刊では、「シャンパン人気急上昇」の見出の下に「結婚披露宴の乾杯用かクリスマス・ディナーの小道具--。これまで限られた出番に甘んじていたシャンパンなど発泡性ワインの人気が急上昇している。」などを内容とする記事があり、「発泡性ワイン輸入量5割増」との見出の下に「現在ではフランスの原産地名称国立研究所(INAO)により、『シャンパン』と名のれるのはその“生誕地”シャンパーニュ地方の発泡性ワインのみと規定されている。」と報道された。
(11)1990年11月16日付け朝日新聞東京朝刊では、「商品の外国地名使用ご用心」の見出の下に「祝賀パーティーの乾杯に欠かせないシャンパンといっても、厳密には『シャンパン』と『スパークリング(発泡性)ワイン』の区別がある。どちらも、泡の立つ白ワインに違いはないが、前者はフランスのシャンパーニュ地方産、後者はそれ以外の国や地域で醸造されたものをさす。・・・欧州共同体(EC)は『スパークリング・ワイン』を勝手に『シャンパン』として売るな、と主張している。」と報道された。
(12)1991年4月27日付け朝日新聞東京夕刊では、「スパークリングワイン 手ごろな値段で楽しめる」の見出の下に「・・・スパークリングワインが最近、人気を集めています。お祝いの席の乾杯の酒から、友人たちといつでも気軽に楽しめる飲み物に変わってきているようです。代表的な銘柄であるシャンパンの高級品は一本数万円しますが、・・・」、「シャンパンはシャンパーニュ地方で、瓶内発酵法によってつくるなど、法律で基準が細かく決まっており、この地方以外でつくられるスパークリングワインをシャンパンと呼ぶのは禁止されている。」と報道された。
(13)1996年11月8日付け日本食糧新聞では、「加州産シャンパン、シャブリ日本での販売中止へ」の見出の下に「シャンパーニュ委員会日本事務所・・・は、シャンパーニュの呼称保護策の一つとして、フランス本国の国立酒類原産地表示規制機構(INAO)と、シャンパーニュ酒造業者委員会(CIVC)の委嘱を受け、日本におけるカリフォルニア産シャンパンの販売中止を、輸入業者へ要請してきた。」と報道された。
(14)2005年9月18日付け朝日新聞東京朝刊では、「シャンパン呼称論争決着 EU・米、20年越し」の見出の下に「仏シャンパーニュ地方産以外の発泡性ワインは『シャンパン』とは名乗らない--。欧州連合(EU)と米国がワインの呼称規制について合意した。伝統の名称を守りたい欧州は、有名ブランドにあやかって売り上げを伸ばした米国と約20年にわたって対立してきたが、ようやく決着した。・・・欧州委員会によると、米国はブルゴーニュ、シャブリ、シャンパン(シャンパーニュ)・・・など地名にちなむ17の名前の使用を制限する。・・・欧州では、生産地やブドウの種類、製法などによって使える名前を法律で定め、ブランド価値を維持している例が多い。だが米国では、安い白ワインを『カリフォルニア・シャブリ』などと名付けて販売するメーカーがあり、欧州側が改善を求めていた。欧州委によると、今後さらに厳格な規定を米・EUで協議するという。」と報道された。
(15)「山梨県ワイン百科」のホームページにおいて、「世界のワイン 2:フランスのワイン」の項に、「(1)・・・4.AOC(原産地統制名称ワイン) フランスワインの約35%を占めるAOCワインは、原産地名がワインの名称となるわけで、1935年に制定された原産地統制名称法(AOC法)によって規制され、INAO(国立原産地名称研究所)によって管理されています。」、「(2)フランスワインの産地(A.O.C)・・・5 シャンパーニュ」との記載がある。
(http://www.pref.yamanashi.jp/wine/world_wine02.html)
(16)「アサヒビール株式会社」のホームページにおいて、「ASAHIWINE.COM」の「今日から使える基礎知識」の項に、「スパークリングワインとは?」の見出しの下、「強発泡性ワインには,フランスの、シャンパン、クレマンやヴァン・ムース・・・などがあり、・・・」との記載や、「シャンパンとは?」の見出しの下、「これらのスパークリングワインは、各々、使用ブドウ品種、産地、製法、貯蔵期間などの面で一定の法的規制を受けています。例えば、シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方の限定された地区で、限定された条件をクリアーして生産されたものだけが名乗れるAOCワインの名称です。強発泡性ワインの中で最も著名なものは、このシャンパンですが、・・・」との記載がある。
(http://www.asahibeer.co.jp/enjoy/wine/sparkling/kiso.html)
(17)「楽天市場」のホームページにおいて、「かわばた“セレクト” Champagne シャンパーニュ」の項に、「シャンパンとは?」の見出しの下、「シャンパンとは、シャンパン酒規制と言うフランスの法律で厳格に規定され、その製造規定に従い、シャンパーニュ地方の限定された地域で栽培された、規定されたブドウ品種のみを使用して、瓶内で自然発酵及び熟成をさせたお酒です。」との記載がある。
(http://item.rakuten.co.jp/k-wine/c/0000000717/)
以上の事実によれば、「Champagne」及び「シャンパン」の語は、フランス北東部の地名であり、また、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であること、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、我が国において数多くの辞典、書籍及び新聞などにおいてシャンパンについての説明がなされていること、シャンパンはフランスの法令によって規定され、その名称の使用も制限されていることなどが認められる。
してみれば、上記事実を総合すると、「Champagne」及び「シャンパン」の語は、我が国において、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られているというのが相当であり、「Champagne」及び「シャンパン」の名称は、法令に基づきINAOにより保護され、フランス国内外で該名称を保護する活動が行われているといえる。
しかして、本願商標は、前記1のとおりの構成からなるところ、前述のように、「シャンパン」、「ハニー」、「ジュレ」の各語からなるものとして容易に認識、把握させるものである。
そして、本願商標は、その構成全体をもって特定の意味合いを有する語として知られているものとはいえないのに対し、該構成中の「シャンパン」の文字は、前示のとおり、著名な原産地統制名称であるから、該文字部分が強く看者の印象に残るものというべきであり、他に、本願商標が常に一体不可分のものとしてのみ認識、把握されなければならない特段の事情を見いだせない。
ところで、原産地名称は、商品が産出された土地の地理的名称をいい、地理的名称に限定されること及びその商品の品質、社会的評価、その他の特性が、産出地固有の気候、地味等の自然条件又は産出地の人々が有する伝来の生産技術、経験若しくは文化等の人的条件といった地理的要因に基づくこと等の点において商標とは異なるが、商品の出所表示機能、品質保証機能及び広告機能を有する点において商標と共通しているものである。そうすると、著名な原産地名称の有する前記機能は、法律が許容する限り、著名商標の有するこれらの機能が商標法によって保護されているのと同様に保護されることが望ましいものである。したがって、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、著名な原産地名称を含む表示からなる商標を同法第4条第1項第17号によって商標登録を受けることができないとされているぶどう酒又は蒸留酒以外の商品に使用した場合に、当該表示へのただ乗り(フリーライド)又は当該表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがある等公正な取引秩序を乱すおそれがあると認められるものや国際信義に反すると認められるものも含まれると解すべきである。
以上を総合し、「シャンパン」の語が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること並びにフランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者・ぶどう酒製造者が永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることをも併せ考慮すれば、「シャンパン」の文字を含む本願商標をその指定商品に使用するときは、著名な「Champagne」及び「シャンパン」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本願商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものと判断するのが相当である。
なお、請求人は、「シャンパン」及び「Champagne」の語の使用が制限されるのは、アルコール類との関連において使用されるときにその品質を誤認させる又は原産地を誤認させるおそれがあるためであって、それを離れた商品との関係においては品質の誤認等のおそれはなく、使用制限が付されることはあり得ない旨主張し、また、本願商標を使用する商品はシャンパンを配合するものであるから品質や原産地の誤認は生じない旨、主張している。
しかしながら、「シャンパン」、「Champagne」は、厳しい基準の下で製造され、その品質の維持・向上に努めると共に、その名称を統制・保護するなど、永年の努力の結果によって著名性を獲得したものであるから、「シャンパン」の文字を商標中に使用することは、その商標を使用する商品の品質等について誤認を生ずるか否かとは別に、「シャンパン」の表示が有する顧客吸引力を利用し、その著名性にただ乗りすることであるといえ、当該表示の保護に努める者の感情を害するおそれがあるというべきであり、公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。
また、請求人は、「日本化粧品成分表示名称事典(日本化粧品工業連合会)」が参考にしている「国際化粧品原料事典(米国化粧品工業会発行)」に掲載の「International Nomenclature Cosmetic Ingredient名」において、「Wine Extract」と表記される成分名称の代替名(Technical Names)として「Champagne」が記載されているとして、「Champagne(シャンパン)」は、化粧品成分名称の「Wine Extract」の別名として定義づけられているものであり、「Champagne(シャンパン)」の名称を化粧品に使用することが、著名な名称表示のただ乗り希釈化を生じさせたり、或いはフランス国民の感情を害するおそれがあるとは、通常考えられていないものである旨、主張している。
しかし、甲第4号証によれば、「Wine Extract」の「Technical Names」に、「Champagne」が「Sparkling Wine」と並んで記載されているところ、たとえ商品の原料として「シャンパン」が使用され得るとしても、出所表示・品質保証・宣伝広告の各機能を有する商標について「シャンパン」の文字を使用したときは、前記のとおり、「シャンパン」の表示が有する顧客吸引力を利用し、その著名性にただ乗りすることであるといえ、結局、公の秩序を害するおそれがあるものといわざるをえない。
さらに、請求人は、「シャンパン」の語が種々の商品に使用され、言葉として普遍化していると述べ、当該言葉の使用により著名な名称表示のただ乗り希釈化を生じさせるおそれはなく、フランス国民の感情を害するとは言い得ない旨、主張している。
しかし、「シャンパン」の語が一般に使用されているという理由をもって、商標として登録することもまた許容されるべきとはいい難く、むしろ、商標登録によって、当該語の希釈化を進めるおそれがあるから、これは許されないというべきである。
加えて、請求人は、過去の登録例を挙げて、本願商標も登録されるべき旨述べているが、登録出願に係る商標が商標法第4条第1項第7号の規定に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、個別具体的に判断されるべきものであるから、それらの登録例に前記認定が左右されるものではない。
以上のとおり、請求人のいずれの主張も採用することができない。
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-09-02 
結審通知日 2010-09-03 
審決日 2010-09-17 
出願番号 商願2008-80894(T2008-80894) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (X03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 板谷 玲子
瀧本 佐代子
商標の称呼 シャンパンハニージュレ、ハニージュレ 
代理人 竹内 裕 

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