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審決分類 審判 査定不服 商3条1項4号 ありふれた氏、名称 登録しない X35
管理番号 1226647 
審判番号 不服2009-9888 
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-13 
確定日 2010-10-29 
事件の表示 商願2007-65492拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「三井」の文字を標準文字で表してなり、第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、平成19年6月22日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『三井』の文字を書してなるところ、ありふれた氏普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。また、出願人が使用している商標は、『三井物産株式会社』や、『三井物産』の文字からなるものであって、本願商標を一部に含むものの、同一とは認められないから、使用により識別力を有するに至ったということもできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第4号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「三井」の文字を標準文字で表してなるものである。
ところで、例えば、広辞苑第六版の「三井」の項に「姓氏の一つ。」との記載があること、NTT東日本発行の「50音別個人名ハローページ 東京都23区全区版下巻(掲載情報:2000.11.10)によれば、「三井」姓の同誌掲載者が約580名に及ぶこと、佐久間英「日本人の姓」(六藝書房発行)によれば、「三井」姓は約1万5千人で全国1012位であること、「日本の名字7000傑」のサイト(http://www.myj7000.jp-biz.net/1000/0100f.htm)によれば、「三井」姓は、約38900人で全国第513位に位置づけられていること、等よりすれば、「三井」の氏姓は、我が国において広く行き渡って存在する氏の一つであることが認められるものである。
してみれば、本願商標に接する取引者、需要者は、これをありふれた氏の一つである「三井」(みつい)を表したものと容易に理解し得るというのが相当であるから、本願商標は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。

(2)使用による識別力について
ア なお、請求人は、本願商標は、出願人及び三井系企業を指称するものとして、日本において周知・著名になっていると主張し、甲第1号証ないし第4号証を提出しているので、使用による識別力についても、商標法第3条第2項の要件に照らし、以下、検討する。
イ ところで、商標法第3条第2項の判断に当たっては、「商標法第3条第2項の要件を具備するためには、使用商標は、出願商標と同一であることを要し、出願商標と類似のもの(例えば、文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。なぜなら、同条項は、本来的には自他商品識別力がなく、特定人の独占にもなじまない商標について、特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり、実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして、登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると、同条項は、厳格に解釈されるべきものである。」(知財高裁平成18年(行ケ)第10054号 平成18年6月12日判決言渡)と判示されている。
そして、ありふれた氏と認められる商標について、使用による識別力を獲得したというには、長期間に亘って、全国的な範囲で独占的に使用されている状態が継続し、その結果、例えば、その商標に係る文字の態様から取引者、需要者の間から自然に想起される一定の出所表示としての観念が生ずるほどにそれらの者の間において、識別標識として通用していることが必要というべきである。
ウ そこで、以上の見解に立って、提出された証拠について検討する。
(ア)甲第1号証は、請求人の会社案内であるところ、「三井物産」、「三井物産株式会社」及び井桁図形と「三井物産株式會社」の文字を併記してなるものが記載されている。
(イ)甲第2号証は、三井商号商標保全会の「規則類」(平成16年5月1日現在)及び「三井商号商標保全会年報(26号)」(平成18年4月1日?同19年3月31日)の写しであるところ、三井系企業が「三井」商号・商標等を使用する際の規則及び三井商号商標保全会会員一覧が記載されている。
(ウ)甲第3号証は、平成10年(行ケ)第130号審決取消請求事件、平成11年1月26日付東京地裁判決の写しであるところ、三井系企業以外の者による「mitsui」を含む商標登録に係る判決の内容が記載されている。
(エ)甲第4号証は、請求人のウェブサイトの写しであるところ、「三井物産」、「三井物産株式会社」、井桁図形と「三井物産株式會社」の文字を併記してなるもの、及び「三井物産株式会社」と「MITSUI & CO.,LTD.」の文字を併記してなるものが記載されている。
エ 上記で認定したとおり、使用に係る商標は、「三井物産」、「三井物産株式会社」、井桁図形と「三井物産株式會社」の文字を併記してなるもの、及び「三井物産株式会社」と「MITSUI & CO.,LTD.」の文字を併記してなるものであり、本願商標が単独で使用されている例は存在しないから、本願商標と甲各号証に示された使用に係る商標とは、その構成態様を異にするものであり、本願商標との同一性は認められないものである。
オ そして、請求人提出の証拠を総合勘案しても、本願商標の周知性を客観的に示すものとして十分なものと認めるに足りるものではなく、本願商標は、その指定役務について使用された結果、請求人の業務に係る役務であることが取引者、需要者間に広く認識されているに至ったものと認めることはできない。
したがって、本願商標が使用による識別力を有するに至ったということもできない。

(3)請求人の主張について
請求人は、本願商標をローマ字表記したと認識される「mitsui」に係る判決例を挙げ、本願商標の審査においても参酌されてしかるべきである旨主張するが、登録出願に係る商標が登録され得るものであるかどうかの判断は、当該商標の構成態様に基づき、個別具体的に検討、判断されるべき性質のものであって、本願商標とはその構成態様が相違する商標が存在することに拘束されるべき理由はないから、請求人の主張は、採用することができない。

(4)まとめ
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するとした原査定は妥当であって、これを取り消すことはできず、また、使用による識別力を有するに至ったということもできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-07-15 
結審通知日 2010-08-06 
審決日 2010-08-18 
出願番号 商願2007-65492(T2007-65492) 
審決分類 T 1 8・ 14- Z (X35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 裕紀子 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 田中 亨子
小田 昌子
商標の称呼 ミツイ 
代理人 市原 俊一 

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