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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y09
管理番号 1226505 
審判番号 取消2009-300235 
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-02-17 
確定日 2010-10-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4710529号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4710529号商標の指定商品中第9類「データ処理のためのコンピューターソフトウエア,その他のコンピューターソフトウエア,その他の電子応用機械器具及びその部品」については、その登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4710529号商標(以下「本件商標」という。)は、「DXI」の文字を標準文字で表し、平成14年8月26日に登録出願、第1類「医学実験用の試薬,臨床試験分析用の試薬,その他の化学品」及び第9類「データ処理のためのコンピューターソフトウエア,その他のコンピューターソフトウエア,その他の電子応用機械器具及びその部品,化学分析用試料の自動サンプル取扱い装置,化学分析装置,その他の理化学機械器具,測定機械器具」を指定商品として、同15年9月19日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論と同旨との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第4号証を提出した。
(1)請求の理由
請求人の調査によれば、被請求人が過去3年間において本件商標の登録に係る指定商品中「第9類 データ処理のためのコンピューターソフトウエア,その他のコンピューターソフトウエア,その他の電子応用機械器具及びその部品」について本件商標を使用していた事実を発見することができない。 また、本件商標については専用使用権者又は通常使用権者の登録は存在しない。さらにまた、本件商標が上記商品について不使用であることに正当な理由があるとも考えられない。
したがって、請求人は、本件商標の指定商品中「第9類 データ処理のためのコンピューターソフトウエア,その他のコンピューターソフトウエア,その他の電子応用機械器具及びその部品」についての登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものと思料する。
(2)弁駁
ア 被請求人の答弁の趣旨及び乙号証からは、本件商標が本件審判請求に係る指定商品(以下「取消請求に係る指定商品」という。)に使用された事実を認めることはできないから、被請求人の上記主張は失当である。
イ 本件商標が通常使用権者によって使用された事実は認められない。
被請求人は、日本における子会社のベックマン・コールター株式会社(以下「ベックマン・コールター」という。)に対して本件商標を使用許諾し、ベックマン・コールターが通常使用権者として本件商標を取消請求に係る指定商品中の「コンピュータソフトウエア」に使用したと主張し、同社の会社概要を示すウェブサイト(乙第1号証)を提出している。しかし、上記証拠方法からは、ベックマン・コールターが被請求人から本件商標を使用許諾された使用権者に当たるという事実を確認することはできない。
したがって、被請求人は、本件商標が被請求人又は被請求人からの許諾を受けて本件商標を使用する権原を有する者によって、取消請求に係る指定商品に使用された事実を立証していない。
ウ 本件商標は取消請求に係る指定商品に使用されていない。
仮に、ベックマン・コールターが本件商標を使用する権原を有する者であったとしても、本件商標は取消請求に係る指定商品中の「コンピュータソフトウエア」に使用されたものとはいえない。
商標法における「商品」とは、市場において独立して商取引の対象として流通に供されるものでなければならないと解される(甲第3号証)ところ、上記のコンピュータソフトウエアは、「全自動化学発光酵素免疫測定装置」を「操作・コントロールする」ためのコンピュータソフトウエアとそのバージョンアップ用ソフトウエアであり、当該測定装置の機能の主要部分を構成するものであって、当該測定装置と一体のものとして、当該装置を購入又はリースしている顧客を対象に提供されるものである。
そうとすれば、これらのソフトウエアは、当該測定装置専用の部品もしくは付属品として把握されるものであり、当該測定装置とは別個独立に取引の対象となる「商品」、すなわち、商標法上の商品としての「コンピュータソフトウエア」には該当しないものである。
全自動化学発光酵素免疫測定装置と、当該測定装置を操作・コントロールするソフトウエアのバージョンアップ用ソフトを記憶したCD-ROMの各々において、全く同一の商品識別標識「UNICEL」及び「DXI」並びに商品記号「800」が使用されているという事実もまた、当該バージョンアップ用ソフトを記録したCD-ROMが全自動化学発光酵素免疫測定装置と一体的に取引される当該装置専用の部品又は付属品であることを示すものである。
また、売上伝票(乙第3号証の1)には、3品目が受注商品として記載されているが、当該伝票からは、この測定装置の「操作・コントロール」に関わるソフトウエアが「商品」として販売された事実は認められない。
さらに、リース販売契約書(乙第3号証の2及び3)中の「別紙」に記載された商品項目には、「(物件名)全自動化学発光酵素免疫測定装置 UniCelDxI 800、(数量)一式、(製造番号) 601033」といった表示(乙第3号証の2)、「(物件名) UniCel DxI800 システム、(数量)一式、(製造番号)600486」(乙第3号証の3)といった記載が存在するほかは、関連試薬及び消耗品の製品名及び数量の細目が記載されているのみであり、測定装置の操作・コントロールに関わるソフトウエアに関する記載は存在しない。
このことからも、当該ソフトウエアが独立して商取引の対象として需要者に販売される商品ではないことが明らかである。
以上の事実に照らせば、全自動化学発光酵素免疫測定装置を操作・コントロールするためのソフトウエアのバージョンアップ用ソフトウエアを記憶させたCD-ROMは、「全自動化学発光酵素免疫測定装置」から独立した単独のソフトウエア製品として商取引の目的とされ、市場に流通するものではなく、当該全自動化学発光酵素免疫測定装置の専用の部品もしくは付属品として当該測定装置と一体的に取引されるものであることが明らかである。
したがって、このようなソフトウエアを記録したCD-ROMは、取消請求に係る指定商品中の「コンピュータソフトウエア」に該当するものではなく、「全自動化学発光酵素免疫測定装置」の専用部品又は付属品として、当該全自動化学発光酵素免疫測定装置が包含される商品概念と同じ概念に含まれる商品とみるべきである。
商品パンフレット(乙第2号証の1)において、その第2頁?第3頁には「試薬の最大架設数は2500テスト分」「最大288本分の検体を装置内に保冷保管。必要な検体にすぐアクセスでき、再検査時や測定項目追加時にもすばやく対応できます」「検体をセットしたらカバーをしめるだけで測定がスタート」「全自動免疫測定装置として最大級の、同時50項目測定を実現」「最大50パックの試薬カートリッジ(2500テスト分)を収納し、基質液、洗浄液、廃液を2個同時にセットすることによりロングタイムウォークアウェイが実現しました」との記載があり、同第5頁には「CLEIA法(Chemiluminescent Enzyme Immunoassay:化学発光酵素免疫測定法)を採用。APLを標識酵素に用い、標識酵素の活性を安定性と発光効率にすぐれた化学発光基質Lumigen PPD(ジオキセタン誘導体)による化学発光で測定します)」との記載があり、同第6頁には「UniCel DXシリーズは、臨床検査室全体の将来を見据え、『お客様のニーズや検査室の規模に応じてフレキシブルに組み合わせることができる』をコンセプトとして開発を続けてきました。現在、免疫化学測定装置として化学発光酵素測定装置DXl 600/800,マルチアナライザー、Unicel DxC 600/800を発売しています。・・・生化学、免疫分析装置の統合にとどまらず、これから検査室の進化を考えたさまざまな製品を開発していきます」との記載があり、同最終頁には、測定対象項目として、「腫瘍マーカー、甲状腺、性ホルモン、循環器系、副腎/脳下垂体、貧血、骨代謝、血液ウィルス、感染症、炎症マーカー」等が記載され、「CEA、AFP、CA 19-9抗原」等の測定対象物資が例示されている。
これらの記載から、全自動化学発光酵素免疫測定装置は、臨床検査に用いられるものであって、化学発光酵素免疫測定法により検体の測定対象項目物質を全自動方式で測定する装置であることが認められる。
商標法施行令第1条別表の「商品及び役務の区分」及び商標法施行規則第6条別表に示された当該「商品及び役務の区分」に属する商品及び役務に従えば、「第9類」の「測定機械器具」の概念に包含される商品が例示されており、さらに、上記施行規則別表を受けて、特許庁の特許電子図書館「商品・役務名リスト」に記載されている商品名の例示によれば、以下の商品が「測定機械器具」の概念に包含されるものとして表示されている(甲第4号証)。
「免疫自動分析測定装置及びその部品」、「免疫反応測定器」、「抗原抗体測定器」、「抗原抗体反応測定用センサー」、「遺伝子分析装置」、「遺伝子分析用測定機械器具」、「遺伝情報データの記憶と分析に用いられる臨床化学用分析器」、「生化学物質測定器」、「生化学分析機械器具」、「生化学分析装置」、「化学発光測定器」、「酵素活性測定器」、「酵素反応測定器」
上記の商品例は、その使用目的、用途、機能、効果、需要者の範囲等の点で、被請求人が取り扱う上記の「全自動化学発光酵素免疫測定装置」と同種の性質の商品と考えられる。
以上の観点に照らせば、ベックマン・コールターが販売する「全自動化学発光酵素免疫測定装置」は、第9類の「測定機械器具」の概念に包含される商品であることが明らかである。
したがって、「全自動化学発光酵素免疫測定装置」の専用部品又は付属品に相当するバージョンアップ用コンピュータソフトウエアを記憶したCD-ROMもまた、第9類の「測定機械器具」の概念に包含される商品として把握されるものである。
よって、本件商標が取消請求に係る指定商品中の「コンピュータソフトウエア」に使用された、との被請求人の主張は失当である。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁(その2を含む。)し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、取消請求に係る指定商品について、日本国内において、本件審判の予告登録日前3年以内に、通常使用権者により使用された。また、今後も、継続して使用される予定である。
被請求人は、日本における子会社ベックマン・コールター(乙第1号証)を通じて、全自動化学発光酵素免疫測定装置(乙第2号証)を一括販売又はリース販売している(乙第3号証)。
同測定装置はコンピーターにより操作・コントロールされるものであり、このコンピュータに用いるコンピュータソフトウエアは、随時、バージョンアップされる。バージョンアップ用のコンピュータソフトウエアは、CD-ROMに収められ(乙第4号証)、測定装置を一括販売又はリース販売した顧客に対して提供される(乙第5号証)。
ベックマン・コールターは、資本金12億3000万円の全てを被請求人が出資する被請求人の完全子会社(乙第1号証)であり、被請求人が製造販売する商品の日本における販売を手掛けている。このため、被請求人は、ベックマン・コールターに対して、被請求人が保有する日本国登録商標の全てについてその使用を認めており、この中には、本件商標を取消請求に係る指定商品ついて使用する権利も含まれる。ベックマン・コールターは、本件商標を取消請求に係る指定商品ついて使用する権利を許諾された通常使用権者である。
全自動化学発光酵素免疫測定装置には、商標「UNICEL」の他、本件商標が使用されており、また、2種類の製品を識別するため「600」と「800」の商品記号が用いられている(乙第2号証)。
同測定装置は、日本の顧客に対して、一括販売、あるいは、リース販売される(乙第3号証)。
同測定装置の操作やコントロールは、同測定装置に接続されたコンピュータを通じて行われる(乙第2号証)。すなわち、同測定装置の操作・コントロールは、同測定装置に接続されたコンピュータのモニターに表示されたタッチパネルに触れることにより、行われる。このため、同測定装置の操作・コントロールのためには、同測定装置の操作・コントロール用のコンピュータソフトウエアが不可欠である。そして、被請求人は、常に、同コンピュータソフトウエアの改良・バージョンアップに取り組んでいる。
改良・バージョンアップされたコンピュータソフトウエアは、CD-ROMに収められ、上記測定装置を一括販売又はリース販売した顧客に対して提供される。CD-ROMには、商標「UNICEL」の他、本件商標と商品記号「800」が付されている(乙第4号証)。同CD-ROMを顧客に提供する際には、案内書が添えられる(乙第5号証)。
以上のように、本件商標は、通常使用権者「ベックマン・コールター」により、本件審判請求に係る指定商品中「コンピュータソフトウエア」について、日本国内において、本件審判の予告登録日前3年以内に使用されたことが明らかである。
(2)平成21年6月8日付差出の答弁書において述べたように、ベックマン・コールターが、被請求人が製造した全自動化学発光酵素免疫測定装置を日本国の顧客に一括販売あるいはリース販売しており、また、同測定装置の顧客に対して、同測定装置に接続し同測定装置を操作・コントロールするコンピュータソフトウエアを提供している。その例として、顧客に対する行為を挙げる(乙第3号証の1ないし3、乙第6号証ないし同第9号証)。
ベックマン・コールターは、広島市医師会臨床検査センターに対して、全自動化学発光酵素免疫測定装置(機種:UniCel DXI 800)を2008年10月28日に販売しており、その後、この測定装置の操作・コントロール用コンピュータソフトウエアがバージョンアップされたことに伴い、同ソフトウエアを記録したCD-ROMを2008年7月8日にベックマン・コールターの社員が広島市医師会臨床検査センターに持参し、引き渡している。
同様に、ベックマン・コールターは、株式会社江東微生物研究所(以下「江東微生物研究所」という。)に対して、全自動化学発光酵素免疫測定装置(機種:UniCel DXI 800)を2007年6月21日に販売しており、その後、この測定装置の操作・コントロール用コンピュータソフトウエアがバージョンアップされたことに伴い、同ソフトウエアを記録したCD-ROMを2008年7月26日にベックマン・コールターの社員が江東微生物研究所に持参し、引き渡している。
更に、ベックマン・コールターは、株式会社三菱化学ビーシーエル(以下「三菱化学ビーシーエル」という。)に対して、全自動化学発光酵素免疫測定装置(機種:UniCel DXI 800)を2006年3月27日に販売しており、その後、この測定装置の操作・コントロール用コンピュータソフトウエアがバージョンアップされたことに伴い、同ソフトウエアを記録したCD-ROMを2008年8月20日にベックマン・コールターの社員が三菱化学ビーシーエルに持参し、引き渡している。ちなみに、三菱化学ビーシーエルは、2009年4月1日付をもって他社と統合し、三菱化学メディエンス株式会社に名義変更している。
以上、被請求人の完全子会社であるベックマン・コールターは、被請求人製品の日本市場における販売を全面委託されることにより、被請求人から本件商標の通常使用権を許諾されている。そして、ベックマン・コールターは、被請求人の製品である全自動化学発光酵素免疫測定装置を日本において販売したのみならず、本件審判請求の登録日前3年の間に、同測定装置の操作・コントロール用コンピュータソフトウエア(バージョンアップされたもの、CD-ROM形式)を同測定装置の顧客に持参し、引き渡している。また、同コンピュータソフトウエア(CD-ROM)には、商標「UNICEL」の他、本件商標と商品記号「800」が付されている。
本件商標は、審判請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者により、取消請求に係る指定商品について使用されており、このことは充分に証明されたと信ずる。

4 当審の判断
(1)被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア ベックマン・コールターの商品カタログ(乙第2号証の1)には、表紙に、「全自動化学発光酵素免疫測定装置」として「UniCel DxI 600」が表示されている。そして、4頁には、「UniCel DxI 600」が表示された装置現物の全体が示されており、当該装置には、「タッチスクリーンにより操作方法がシンプルに。アイコン表示で機器の操作方法をその場で確認できます。」とする液晶モニタが備え付けられているのが認められる。その次頁には、「定評ある高度な測定法」として「CLEIA法」の説明・図示があり、「Access2」なる機器の現物も掲載されている。さらに、6頁には、「UniCel Dxシリーズは臨床検査室全体の将来を見据え・・開発・・。現在、免疫化学測定装置として化学発光酵素免疫測定装置DxI600/800・・を発売しています。」との記述があり、最終頁には、測定項目として「腫瘍マーカー CEA AFP」等々が表示され、主な仕様として「測定原理」「分析方法」等が示されている。 また、同人の商品カタログ(乙第2号証の2)には、表紙に、「全自動化学発光酵素免疫測定装置」として「UniCel DxI 800」が表示されている。そして、2頁には、「ユニセルDxI800は免疫検査装置として最大処理能力・・を実現し、検査業務の効率化・・」の記述と共に、「UniCel DxI 800」が表示され、液晶モニタ等を備えた装置現物の全体が示されており、5頁には、「タッチパネル」の様子が表示されている。前記「600」と同様、最終頁には、測定項目が表示され、主な仕様として「測定原理」「分析方法」等が示されている。
イ ベックマン・コールターの「売上伝票」(乙第3号証の1)によれば、ベックマン・コールターは、株式会社スズケンを介して、広島市医師会臨床検査センターに対し、2008年10月28日の注文に基づき、「UNICEL DXI 800 ACCESS IMMUNO ANALY Serial Number:600883」「UniCel DxI 800 C.A.R.E. Kit」及び「DxI 800 LAS Option Kit」の各1を翌日付で販売したことが認められる。
しかし、当該伝票には、商品「コンピュータソフトウエア」の取引に係ると認め得る記載等は見出せない。
ウ 「機器リースシステム販売契約書」(乙第3号証の2)によれば、ベックマン・コールターは、2007年6月5日、株式会社江東微生物研究所との間で「全自動化学発光酵素免疫測定装置 UniCel DxI 800 一式」を対象として、2007年6月21日から2012年6月20日までの5年間を契約期間とする「機器リース」契約を締結したことが認められる。
また、同名の契約書(乙第3号証の3)によれば、ベックマン・コールターは、2006年1月23日、株式会社三菱化学ビーシーエルとの間で、「UniCel DxI 800システム 一式」「Access2イムノアッセイシステム 一式」を対象として、2006年3月27日から2011年3月26日までの5年間を契約期間とする「機器リースシステム販売」契約を締結したことが認められる。
しかし、いずれの契約書にも、商品「コンピュータソフトウエア」の取引に係ると認められる記載等は見出せない。
エ 写真(乙第4号証)には、ベックマン・コールターに係るCD-ROM及びそのパッケージが写されており、両者には、「UniCel DxI 800」及び「Assay Protocol File(APF)」の表示がある。
オ 2008年7月のベックマン・コールターから顧客各位に対する「お知らせ」(乙第5号証)には、「・・UniCel DxI 800イムノアッセイシステム用APFを更新いたします。つきましては、お客様にてFDまたはCD-ROMのインストールを行い、APF更新を実施いただきますようお願いいたします。」との記載があり、「APF Version」の項に「UniCel DxI 800」については「CD-ROM type」である旨が表記されている。
カ 「宣誓書」(乙第6号証ないし同第9号証)によれば、前記イ及びウの顧客「広島市医師会臨床検査センター」「株式会社江東微生物研究所」「株式会社三菱化学ビーシーエル」に対して、順次、平成20年7月8日、同年7月26日、同年8月20日に、ベックマン・コールターの社員(従業員)が顧客先に出向き、バージョンアップしたコンピュータソフトウエアのインストール作業を行ったこと、同日、バージョンアップしたコンピュータソフトウエアを記録したCD-ROMを顧客側が受領した旨の陳述が記載されている。
(2)ベックマン・コールターは、被請求人の完全子会社であることが認められ(乙第1号証)、同人と被請求人との親子会社の関係及び被請求人の主張を併せみれば、口頭によるか黙示的かは定かでないとしても、ベックマン・コールターは、本件商標の使用について被請求人から許諾を受けた者(通常使用権者)と認めるのが相当である。
また、本件商標は「DXI」の文字を表してなるものであるところ、上記(1)の使用に係る商標は「DxI」が端的に表示されており、本件商標と社会通念上同一の商標と認め得るものである。
(3)本件における取消請求に係る指定商品は、第9類の「データ処理のためのコンピュータソフトウエア,その他のコンピュータソフトウエア,その他の電子応用機械器具及びその部品」である。
しかし、上記(1)において本件商標の使用を認め得る商品は、「全自動化学発光酵素免疫測定装置」と称されるものである。そして、当該商品は、被請求人の主張及び証拠(カタログ)の記載からすれば、臨床検査室等に配置して用いられる免疫化学測定装置であり、化学発光酵素免疫測定法により検体の測定対象項目物質を全自動方式で測定する装置であって、「測定機械器具」の範疇に属すべき商品というのが相当である。
ところで、近年において、工作機械器具をはじめ各種の精密機器、計測用機器、医療用機器等には、利用等されていないものはないといっても過言でない程に、電子技術がこれら機器の構成要素となっていることは、周知の事実といえる。
そして、上記の測定装置には、操作・コントロールのためにコンピュータを介しての電子技術が利用されていると認められる。しかしながら、当該装置は計測や分析等の測定が本質的機能及び用途というべきものであって、これを操作・コントロールするために組み込まれたコンピュータソフトウエアは、「全自動化学発光酵素免疫測定装置」の専用の部品あるいは附属品として、前記装置と一体化したものとして取引に供されているというべきである。
また、前記(1)エのとおり、前記装置を操作、コントロールするために組み込まれたコンピュータプログラムが記憶されたCD-ROMに商標が表示されているが、当該CD-ROMも、前記装置と一体化して取引に供されている附属品というべきものである。
したがって、上記(1)の事実によって、本件商標が測定機械器具について使用をされたと認め得たとしても、商品「コンピュータソフトウエア」自体について使用をされたと認めることや、電子応用機械器具に属する商品に使用をされたとみることはできない。
(4)被請求人は、同人が製造販売する前記測定装置の操作・コントロールのためには、同測定装置の操作・コントロール用のコンピュータソフトウエアが不可欠であり、常に、その改良・バージョンアップに取り組んでおり、改良・バージョンアップされたコンピュータソフトウエアは、CD-ROMに収められ、上記測定装置を一括販売又はリース販売した顧客に対して提供された旨主張して、陳述書(「宣誓書」)等(乙第3号証の1ないし3及び乙第6号証ないし同第9号証)を示している。
しかしながら、被請求人提出の全証拠によってみても、前記(1)のとおり、商品「コンピュータソフトウエア」自体の取引を窺わせる事実を見出すことはできず、また、陳述書(「宣誓書」)に述べられたコンピュータへのインストール作業は、前記測定装置のメンテナンスの一つとみられるものであり、たとえ、その際に用いられるCD-ROMにコンピュータプログラム等が記憶されており、それが顧客に引き渡されたとしても、当該CD-ROMは、前記測定装置用に既に組み込まれたコンピュータプログラム等の改良やバージョンアップのために顧客に提供される前記装置に専用の付属品とみるのが相当であって、これをもって、本件商標のもと、「コンピュータソフトウエア」自体が独立して取引の対象とされていたものということはできない。
(5)してみれば、被請求人の主張及び同人提出の証拠をもって、本件商標が商品「コンピュータソフトウエア」について使用をされたと認めることはできない。
他に、本件商標が「電子応用機械器具及びその部品」に属する商品について使用をされたことを示す証拠は見出せない。
(6)以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標を使用していることを証明したということはできないし、また、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-05-17 
結審通知日 2010-05-19 
審決日 2010-06-04 
出願番号 商願2002-72183(T2002-72183) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y09)
最終処分 成立  
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 岩崎 良子
内山 進
登録日 2003-09-19 
登録番号 商標登録第4710529号(T4710529) 
商標の称呼 デイエックスアイ 
代理人 小林 久夫 
代理人 木村 三朗 
代理人 佐久間 剛 
代理人 大村 昇 
代理人 柳田 征史 
代理人 安島 清 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 高梨 範夫 

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