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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010890099 審決 商標
無効2010680005 審決 商標
無効2009890127 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X3035
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X3035
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X3035
管理番号 1225112 
審判番号 無効2009-890110 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-10-07 
確定日 2010-10-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5229401号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5229401号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5229401号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成20年7月25日に登録出願、第30類「プリン,プリンの風味を有してなる菓子及びパン」及び第35類「プリンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,プリンの風味を有してなる菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品又は指定役務として、同21年3月24日に登録査定、同年5月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第27号証(枝番を含む。)を提出した。
1 引用商標
請求人の引用する登録第1457789号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおり、「天使」の漢字を横書きしてなり、昭和41年4月8日に登録出願、第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同56年3月31日に設定登録、その後、平成3年7月30日及び同13年3月27日に商標権存続期間の更新登録がなされ、また、指定商品については、同13年5月23日に指定商品の書換登録があった結果、第30類「菓子及びパン」とするものである。
同じく、登録第4278662号商標(以下「引用商標2」という。)は、「てんし」の文字を標準文字で表してなり、平成9年9月30日に登録出願、第29類「食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,食用たんぱく」、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,化学調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,アーモンドペースト,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「果実,野菜,ドライフラワー」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、同11年6月4日に設定登録、その後、指定商品については、商標権一部取消審判があった結果、その指定商品中「第31類 ドライフラワー」については、取り消す旨の審決がなされ、その確定登録が同15年10月8日になされているものである。
同じく、登録第4707979号商標(以下「引用商標3」という。)は、「てんし」の文字を標準文字で表してなり、平成14年9月18日に登録出願、第29類「食用油脂,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく,植物を主原料とする粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状・ゼリー状の加工食品」、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物(豆を除く。)を主原料とする粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状・ゼリー状の加工食品」、第31類「生花の花輪,釣り用餌,ホップ,食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜,糖料作物,果実,コプラ,麦芽,あわ,きび,ごま,そば,とうもろこし,ひえ,麦,籾米,もろこし,飼料用たんぱく,飼料,種子類,木,草,芝,ドライフラワー,苗,苗木,花,牧草,盆栽,獣類・魚類(食用のものを除く。)・鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。),蚕種,種繭,種卵,うるしの実,未加工のコルク,やしの葉」及び第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,ビール製造用ホップエキス,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、同15年9月5日に設定登録されたものである。
同じく、登録第5033542号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(3)のとおり、「てんし」の平仮名文字と「天使」の漢字と「テンシ」の片仮名文字とを上下三段に横書きしてなり、平成18年4月13日に登録出願、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物(豆を除く。)を主原料とする粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状・ゼリー状の加工食品」を指定商品として、同19年3月16日に設定登録されたものである。
同じく、登録第4598690号商標(以下「引用商標5」という。)は、「天使のショコラ」の文字を標準文字で表してなり、平成13年10月22日に登録出願、第30類「ココア,チョコレートの風味を有する菓子及びパン,チョコレートの風味を有する即席菓子のもと」を指定商品として、同14年8月23日に設定登録されたものである。
同じく、登録第4598691号商標(以下「引用商標6」という。)は、「天使のチーズスフレ」の文字を標準文字で表してなり、平成13年10月22日に登録出願、第30類「チーズスフレの菓子,チーズスフレの菓子のもと」を指定商品として、同14年8月23日に設定登録されたものである。
以下、これらを一括していうときは、「引用各商標」という。
2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、引用各商標と類似し、その指定商品及び指定役務も引用各商標に係る指定商品と同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
しかして、本件商標は、「天使」と「プリン」の2語を格助詞の「の」で結合した結合商標であるところ、「天使」は、宗教に基礎をおく想像上の存在であって、本来、食料品とは関連性のない語であることは明らかであるから、本件商標の「天使」は、食料品の品質、原材料や等級などを表す形容詞的な部分でなく、本件商標の指定商品等との関係において自他商品等識別機能(識別力)を十分に発揮する部分である。これに対して「プリン」は、食料品の分野では、洋菓子やデザートの一種を表す普通名称(甲第8号証)にあたるから、本件商標の「プリン」は、「プリン」又は「プリン」に関する商品等に特定された指定商品等との関連性が極めて強い部分である。したがって、本件商標は、互いに何ら観念的な結びつきを有しない「天使」と「プリン」を格助詞の「の」で単純に結合させただけのものであるから、上記2語が「分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人のエンゼルマーク及び企業シンボルたる「天使(エンゼル)」の著名性
請求人は、明治32年(1899年)の会社創立以来、キャラメル、チョコレート、ビスケット、アイスクリームなどの菓子類を製造販売している老舗の食品メーカーであり、「天使(エンゼル)」を創業の精神を体現するシンボルとして、明治38年(1905年)に天使の図柄を使用したエンゼルマーク(商標登録第23373号、甲第19号証)を採用した。以来、請求人は、大正、昭和と時代の変遷とともに態様を少しずつ変化させながら、エンゼルマークを1世紀以上の永きにわたって自社が提供する製品に使用(甲第20号証の1)し、その商標出願も積極的に行って自社製品の商標による保護の強化を図ってきた(甲第21号証)。特に、昭和26年から昭和61年まで使用されたエンゼルマーク(登録第437635号、甲第22号証の1)、及び、昭和61年から現在に至るまで用いられているエンゼルマーク(登録第2125472号、甲第23号証の1)は、特許庁においても防護標章登録が認められ、その著名性が認定されている(甲第22号証の2及び甲第23号証の2)。請求人の業務は、主たる商品であるチョコレート、ビスケット、アイスクリーム等の菓子類、ココア等の飲料、ホットケーキ(のもと)等の食品、サプリメントとよばれる栄養補助食品等といった飲食料品の製造販売にとどまらず、関係会社を含めると、飲食店経営などの外食産業、ゴルフ場経営などのリゾート開発産業、研究実験用試薬などの製造販売等、極めて多岐に及んでいる(甲第20号証の2)。
請求人は、戦前より新聞紙面を利用した宣伝広告を早くから実施してきた(甲第20号証の3)ところ、我が国で民間によるラジオ放送やテレビ放送が開始されるや、その情報伝播力と訴求力に注目して、当初よりこれを積極的に活用した(甲第20号証の4)。ラジオ放送では、プロ野球中継や連続ドラマの「永遠に答えず」などを提供したほか、昭和26年(1951年)には、ラジオ番組として提供した「森永エンゼルタイム」の放送の中で、エンゼルのテーマ曲である「エンゼルはいつでも」を制作しこれを流した。翌年の昭和27年(1952年)には、「やっぱり森永ネ」も制作(甲第20号証の4)し、これらの歌は、懐かしのCMソングとして現在でも広く親しまれている(甲第20号証の5)。テレビ放送では、昭和34年(1959年)4月10日の皇太子殿下御成婚式の中継をはじめ、現在に至るまで数々の人気番組を提供し、人気歌手や俳優など多数の人気タレントを起用するとともにエンゼルマークを表示したテレビCMを流している(甲第20号証の6)。
一方、請求人は、「天使(エンゼル、ANGEL)」の語を冠した商品の製造販売や、これらの語を冠した名称のキャンペーンやイベント等を積極的に行ってきた。例えば、昭和33年(1958年)に販売を開始した「エンゼルパイ」は、比較的商品サイクルが短い菓子類にあって、異例とも言える半世紀もの長期間継続して販売されているロングセラー商品であり(甲第24号証)、1998年度から2007年度までの10年間だけをみても、年間平均売上額が20億円を超える販売実績があるほど、現在でも消費者の間で高い人気を誇っている。請求人は、「工ンゼルパイ」の商品パッケージ上で、「エンゼルパイ」の商標だけでなく、エンゼルマークや天使の図形とともに、「天使」の商標を使用して(甲第24号証の3)、自己のブランド管理も鋭意努めている。請求人は、「天使(エンゼル)」の名にちなんだキャンペーン、イベントや企画として、「夢のエンゼル便!おいしさ(ハートの図)たのしさとどけ隊」(甲第25号証の1)、「リトルエンゼル育成」イベント(甲第25号証の2)、「エンゼルお菓子の国」フェア(甲第25号証の3)や、「天使の素敵な贈りもの」(甲第25号証の4)などを実施している。中でも昭和42年(1967年)に販売が開始された「チョコボール」における「おもちゃのかんづめ」は、鳥のくちばしに見立てた包装箱の取出目にエンゼル(天使)の図柄が低い確率で印刷されており、金色で印刷されたエンゼル(金のエンゼル)のくちばしならば1枚、銀色で印刷されたエンゼル(銀のエンゼル)のくちばしならば5枚を集めて応募すると、応募者全員がもれなく豆本まんがなどを入れた「おもちゃのかんづめ」をもらえるという40年以上もの間継続して実施されている人気企画である(甲第20号証の7)。飲食料品以外の分野における実績としては、昭和40年(1965年)に株式会社森永エンゼルボウル(後に、株式会社エンゼル・レジャーに改称)を設立してボウリング場経営等のレジャー産業へ進出し、昭和52年(1977年)には、森永エンゼルカントリー株式会社を設立してゴルフ場経営も開始した(甲第20号証の8)。また、天使(エンゼル)を共通のイメージコンセプトとする「天使のブラ」を、大手ランジェリーメーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンと提携して共同で販売(甲第25号証の5)、近年では、世界的に大ヒットしたハリウッド映画「ダ・ヴィンチ・コード」の続編である「天使と悪魔」の劇場公開にあわせて、映画タイトル「天使と悪魔」の「天使」と「エンゼルパイ」の「エンゼル(天使)」をかけたソニー・ピクチャーズエンターテインメント株式会社と特別優待割引券付きエンゼルパイを発売するタイアップキャンペーン(甲第25号証の6)など、「天使(エンゼル)」をキーワードとする異業種企業とのコラボレーションも積極的に行っている。
他方、請求人は、平成3年(1991年)に経済企画庁(現・内閣府)の認可のもと、「健全な肉体」の研究とその応用にも努めるべく、「財団法人エンゼル財団」(甲第25号証の7)を設立した。ここでは、生涯にわたって人間らしい生活を築くことを目標に、生涯学習ニーズにあわせた動画コンテンツの「森永エンゼル・カレッジ」(甲第25号証の8)がeラーニングによって提供されている。さらに、請求人は、「エンゼルのように地球にやさしく!!」をスローガンとする環境企業理念を提唱し、社会活動も積極的に行っている(甲第25号証の9)。こうした永年にわたる企業努力の結果、現在では、「天使(エンゼル)」は、請求人及びその関連会社に係る商品や業務を指称する著名な企業シンボルとして取引者及び需要者の間に広く知られるところとなっている。
イ 本件商標とエンゼルマーク及び企業シンボルとしての天使(エンゼル)との類似性の程度
既述のとおり、本件商標は、「天使」と「プリン」の2語が所有を示す格助詞の「の」で結合してなる結合商標と自然に認識されるものであり、「プリン」の部分は、識別力がないか又は極めて低い部分である。したがって、本件商標からは、「天使」が要部として認識され、ここから「テンシ」の称呼及び「神の御使い」たる観念が生じる。一方、請求人のエンゼルマーク及び著名な企業シンボルである「エンゼル(天使)」からも、「テンシ」の称呼及び「天使、神の御使い」の観念が自然に生じる。そうすると、本件商標は、請求人のエンゼルマーク及び「天使(エンゼル)」とは、要部から生じる称呼及び観念が同一又は類似する類似商標である。
ウ エンゼルマークの独創性の程度
天使(エンゼル)は、キリスト教やユダヤ教をはじめとする西洋宗教に基礎を置く存在であり、請求人が最初にエンゼルマークを採用した明治38年(1905年)当時、天使の概念は、一般に知られたものでなかった。したがって、天使をモチーフにした図案が一般に用いられることはなかったのであるから、請求人のエンゼルマークは、他に類例をみないほど斬新かつ独創的な商標であったことは明白である。
エ 商品間の関連性、取引者、需要者の共通性
請求人がエンゼルマーク及び企業シンボルたる「天使(エンゼル)」を用いる主たる商品は、菓子類を初めとする飲食料品であり、被請求人が本件商標を使用することを企図している指定商品等も菓子類に分類される飲食料品である。飲食料品は、広く消費者全般を需要者としており、特別な流通経路を経て市場で流通するものでもなく、陳列販売方式を採用するスーパーマーケットなどの同一の店舗などで取り扱われ、その販売と役務の提供が同一事業者により同一場所で行われる。したがって、本件商標と引用各商標は、それぞれ飲食料品という同一の商品について使用されるものであって商品及び役務間の関連性が極めて高いことはいうまでもないから、当然にその需要者及び取引者の範囲は一致する。
オ 本件商標の指定商品の需要者において普通に払われる注意力その他取引の実情
本件商標の指定商品は、日常的に消費される商品であり、その購入者には必ずしも商標について詳細な知識を持たない者も多数含まれる。このような商品については、商品の購入に際し、消費者がメーカー名などについて常に注意深く確認するとは限らず、小売店の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないことからすれば、需要者が商品購入時に払う注意力は高いものではなく(甲第26号証)、商標構成中の覚えやすく親しみやすい印象及び過去に購買した際の記憶に基づいてその商品を選択ないし購買すると考えられる。本件商標の「天使」は、幼児、年少者から高齢者に至るまで広く一般に知られた語であることからすれば、本件商標に接した需要者は、「天使」の部分に着目し、ここから単なる「テンシ」の称呼及び「天使」の意味合いを想起するにとどまらず、慣れ親しんだ請求人のエンゼルマークや請求人の企業シンボルとしての「天使(エンゼル)」を連想して、当該商品が請求人の業務に係るものと認識するであろうことは容易に想像される。
カ 特許庁における審査基準
商標法第4条第1項第15号に関する商標審査基準上「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする」とされている(甲第27号証)。エンゼルマーク及び企業シンボルたる「天使(エンゼル)」が請求人の取り扱いに係る商品及び役務を表すものとして需要者及び取引者の間に広く認識されている事情にかんがみれば、「天使」の文字を含む本件商標は、上記審査基準上にいう「他人の著名な商標と他の文字又は図形を結合した商標」にあたり、その外観構成がまとまりよく一体に表されていると否とにかかわらず、請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標として、商標法第4条第1項第15号に該当する。
キ まとめ
上記のとおり、(a)本件商標とエンゼルマーク及び企業シンボルたる天使(エンゼル)が、いずれも需要者の注意を引き、印象に残りやすい「テンシ」の称呼及び「神の御使い」の観念を生じる点において高い類似性を有すること、(b)請求人の業務に係る商品であることを表す著名なエンゼルマークが我が国において1世紀以上の永きにわたって使用された結果、エンゼルマーク及び天使(エンゼル)の企業シンボルは、本件商標の出願時及び登録査定時には、請求人の業務に係る商品であることを指称する著名性を獲得していたこと、(c)請求人のエンゼルマークは、我が国で最初に採用された明治38年当初において、極めて斬新かつ独創的なものであったこと、(d)本件商標の指定商品及び指定役務とエンゼルマーク及び天使(エンゼル)の企業シンボルが使用されて著名性を獲得した商品が、いずれも菓子類を中心とする飲食料品に関するものであって関連性が高いこと、(e)飲食料品は、日常的に売買費消される商品であって、需要者がその取引に当たって払う注意力はさほど高いものではなく、また、エンゼルマーク及び企業シンボルたる天使(エンゼル)に通じる「天使」の文字を有する本件商標に接した多くの需要者が、当該商品等が請求人の業務に係るものと認識すると考えられる取引の実情があること、及び、(f)特許庁の商標審査基準を総合して考慮すると、本件商標をその指定商品等に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、本件商標の「天使」に着目し、ここから請求人の著名なエンゼルマークや天使(エンゼル)の企業シンボルを想起・連想し、あたかも請求人若しくはその関連会社の取り扱い業務に係る商品であるかのごとく認識して取引にあたると考えられるため、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、と答弁し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第22号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用各商標の外観、称呼及び観念について
ア 外観について
本件商標は、「天使のプリン」を同一書体で同間隔に漢字、平仮名、片仮名を横方向に配置した商標である。しかも、本件商標を構成する「天」の文字は、正しい「天」ではなく「天」の一部が欠けている特徴がある。
これに対し、引用商標1は、「天使」を横書きした漢字2文字のみから成る文字商標である。引用商標2及び引用商標3は、平仮名3文字を一連に横書きした構成の文字商標である。引用商標4は、漢字2文字「天使」を中央に大きく横書きし、前記「天使」の真上には、小さい平仮名3文字で小さく「てんし」と振り仮名を横書きするとともに、真下にも片仮名3文字で小さく「テンシ」と振り仮名を横書きした構成の文字商標である。引用商標5は、漢字2文字「天使」と平仮名1文字「の」と片仮名4文字「ショコラ」を横一連に横書きした構成の文字商標である。引用商標6は、漢字2文字「天使」と平仮名1文字「の」と片仮名6文字「チーズスフレ」を横一連に横書きした構成の文字商標である。
イ 称呼について
本件商標の称呼は「テンシノプリン」である。これに対し、引用商標1ないし4の称呼は「テンシ」である。そして、引用商標5の称呼は、「テンシノショコラ」であり、引用商標6の称呼は、「テンシノチーズスフレ」である。このように本件商標の称呼と引用各商標の称呼とは、非類似の称呼である。
ウ 本件商標の観念は、造語であり特定の観念は生じないが、敢えて観念が生じるとすれば、以下の観念が生じる。
(ア)神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの(以下「天使」という。)が所有する卵・牛乳・香料などを混ぜ蒸し焼きにして柔らかく固めた洋菓子
(イ)天使が好んで食する卵・牛乳・香料などを混ぜ蒸し焼きにして柔らかく固めた洋菓子
(ウ)天使のような卵・牛乳・香料などを混ぜ蒸し焼きにして柔らかく固めた洋菓子
(エ)天使用の卵・牛乳・香料などを混ぜ蒸し焼きにして柔らかく固めた洋菓子
エ 引用各商標からは、本件商標の観念とは、全く異なる以下の観念が生ずる。
(ア)引用商標1「天使」には、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの」の観念のみが生じる。
(イ)引用商標2「てんし」及び引用商標3「てんし」からは、以下の観念が生ずる。
a.天命を受けて人民を治める者。国の君子。天皇。
b.神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの
c.天稟の容姿。生まれつきの姿
d.生まれっき。天性。天びん。
e.天からのたまもの。天子からのたまもの。
f.文を書いた紙を包む白紙
g.昆虫標本作成の際にチョウなどのつばさを水平に広げて固定すること。
h.中国の韻文の一体で、長短の句によって構成される歌曲。
このように、平仮名「てんし」からは、種々の観念が生じるものである(甲第8号証参照)。
(ウ)引用商標4「てんし\天使\テンシ」からは、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの。」の観念が生じる。
(エ)また、引用商標5「天使のショコラ」からは、以下の観念が生ずるほか、前記ウ(ウ)、(エ)等の観念も生じる。
a.天使が所有するカカオ豆を原料にした菓子
b.天使が好んで食するカカオ豆を原料にした菓子
(オ)引用商標6「天使のチーズスフレ」からは、以下の観念が生ずるほか、前記ウ(ウ)、(エ)の観念も生ずる。
a.天使が所有する泡立てた卵白の泡を使ってふっくらと仕上げるとともにチーズを加味したお菓子。
b.天使が好んで食する泡立てた卵白の泡を使ってふっくらと仕上げるとともにチーズを加味したお菓子。
このように、引用商標5及び引用商標6の指定商品は、何れも菓子であるが、これらの菓子は、各菓子毎に製造方法、味付け、形状、色合いなどが異なるものであることを考えれば、各菓子はそれぞれに特徴があり、それぞれの特徴から異なった観念が発生する。したがって、本件商標の観念と引用各商標の観念とは、極めて異なることが明らかである。
オ 本件商標の外観と引用各商標の外観が特に差異があり、商標の外観は、需要者がどの商品を購入するかを決定する際に最も重要であり、需要者の購買意欲を高める機能を与えるから、外観上の特段の差異は、極めて重要である。よって、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても全く異なり非類似の商標である。
(2)本件商標と引用各商標の類否判断手法にっいて
ア 本件商標に対する分離観察及び要部観察の妥当性について
本件商標の構成は、請求人が指摘しているように、「天使」と「プリン」を格助詞である「の」で結合されている構成である。ここで、格助詞とは、「助詞の一種。主として体言に付いて、その語が他の語に対して持つ関係を表す語」(講談社カラー版/日本語大辞典 乙第1号証)。このことを、本件商標の構成要素である「の」の格助詞の働きに当てはめると、「天使」と「プリン」の関係を示すために格助詞である「の」を配置したことから、「天使」と「プリン」との関孫は、「天使が所有するプリン、天使が好んで食するプリン、天使のようなプリン、天使に役立つプリン」との観念が生じる関係にある。上記の関係が「天使」と「プリン」間に密接不可分に生じることから本件商標を「天使」と「プリン」とを強制的に分離させて観察することは、不適切な観察であるといえる。本件商標は、同一書体、同一の大きさをもってまとまりよく表示されているのであり、「天使」と「プリン」間には、切っても切れない関係が存在するのであるから、本件商標を格助詞の「の」を度外視して「天使」と「プリン」に分離させて、本件商標と引用各商標との類否を判断すること及び本件商標の構成要素「天使」のみを取り出して要部観察を行うことは、許される観察手法ではない。
イ 本件商標の構成は、上記のとおりであり、全体に同一書体からなるとともに文字間の間隔は、同一間隔で、しかも「天使」と「プリン」の間に格助詞「の」が配置されている構成であるから「テンシノプリン」と一気に発音されることに違和感は全くない。また、簡易迅速を尊ぶ取引において称呼も冗長ではなく素直に発音されることがより聴く者に心地よささえ与える。よって、本件商標には、「の」が歴然と存在することを無視して「天使」と「プリン」に分離して「天使」のみを抜き出し「要部」と決めつけ観察する観察態度及び方法は妥当ではなく、到底容認することはできない。
ウ したがって、本件商標を「天使」と「プリン」に分離し、「天使」の構成部分に自他商品識別力があり、「天使」を識別力を有する要部であるとして、称呼及び観念が同一であるとする要部観察の手法は、本件商標のように構成文字の全体が一体的かつ不可分に結合している文字商標に対し適用することは妥当ではない。よって、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的して全体的に観察すれば、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼、観念において非類似の商標である。
(3)具体的な取引の実情
ア 本件商標の商標権者の本店は、茨城県下妻市大字小島925の6番地にあり、「煉瓦だいにんぐスズランロードハウス」を経営している(乙第2号証)。本店舗の形態は、居酒屋であり店舗内で本件商標の指定商品である「プリン」を来店客に提供している。店舗は居酒屋であるから、来店されたお客の特別に注文があった場合にのみ提供する商品であり、必要に応じて来店客から持ち帰りたいとの注文があれば、当該お客のためにのみ製造し販売するだけである。被請求人のホームページには、「天使のプリン」って?の欄があるように、主に来店客に提供しているものである。
イ これに対し、請求人は、資本金186億1千万円、従業員1814名の規模の食品会社であり、日本国内の津々浦々に事業所を有し、売上高約1429億円の巨大企業である(乙第3号証)。しかも、海外にも事業所があり海外にも食品を販売している企業である。このような大企業であるから、請求人の商品の販売方法は、全国にある大規模な百貨店は、もちろんのこと大規模スーパー、コンビニ、エンゼルショツプ、その他の食品小売店等を通して日本全国はもちろんのこと海外でも大量に販売している。
ウ このように、被請求人と請求人との商品の販売方法、販売規模、販売ルート等極めて異なるものであるから、具体的に取引の実情を考慮しても被請求人の商品と請求人の商品とは、出所の混同を生ずることはない。
エ 「天使、エンゼル、エンジェル、Angel」の識別力の減少
「天使、エンゼル、エンジェル、Angel」を含む商標が多数出願・登録されている(乙第11号証ないし乙第19号証)。インターネットで「天使」の2文字を検索欄に入力すると「天使の検索結果」として約9460万件がヒットする(乙第20号証)。このことは、「天使、エンゼル、エンジェル、Angel」の識別力はかなり減少している証拠である。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人のエンゼルマーク及び企業シンボルたる「天使(エンゼル)」の著名性
ア 過去において、天使が逆立ちしている「天使の図=エンゼルマーク」は、著名であったことを否定しない。現在では、「天使」はもちろんのこと、「天使の図」でさえ見ることはほとんど無い状態である。
現在、請求人が、登録している商標(甲第23号証の1)は、需要者が引用各商標の「天使」と直感するとは考えられない。請求人が提出した証拠は、何れも「エンゼル」との併記が圧倒的に多く「天使」の観念を直感させるものではない。
イ その多くが「エンゼル」であって「天使」の表記でない。
甲第19号証ないし甲第25号証の8には、「天使と思われる図形」(この図形が圧倒的に多い)、「はぱたくエンゼル」、「エンゼルマークの誕生」、「エンゼルレジャー」、「エンゼルフードという名のお菓子」、「森永エンゼルカントリー(株)」「(有)エンゼルリゾート蓼科管理」、「(財)エンゼル財団」、「森永エンゼルクイズ」、「エンゼルはいつでも」、「エンゼルと思われる格好をしたタレントの写真」、「エンゼルレジャー」、「天使の糧」、[エンゼルパイ]、「エンゼルパイミニ」、「エンゼル便り」、「エンゼルとともにはぱたく」、「リトルエンゼル育成」、「エンゼルお菓子の国」、「エンゼルパイストロベリー」、「『天使と悪魔』×エンゼルパイ」、「エンゼルマーク」、「エンゼルの精神」、「森永エンゼルカレッジ」、「エンゼルのように地球にやさしく」、「リトルエンゼル育成キャンペーン」、「エンゼルスマイル活動」等が表記されている。これらの証拠の表記は、請求人の商品に関する広告とはいえず、請求人の「天使」が著名商標であることを証明する証拠として採用できるものではない。
ウ 「天使」の表記がされている証拠方法は、以下のものだけである。
甲24号の3の「天使のマシュマロ いちご味」、甲25号の4の「天使の素敵な贈りもの」、甲25号の5の「天使のブラ」である。しかしながら、甲24号の3の「天使のマシュマロいちご味」は、商品名「エンゼルパイいちご味」を宣伝しているのであり「天使」ではなく、請求人の引用各商標の指定商品を広告宣伝している証拠とはいえない。また、甲25号の4の「天使の素敵な贈りもの」は、キャッチフレーズであって、商品や役務を表示する商標とはなり得ないのであるからこの証拠もまた採用すべきではない。さらに、甲25号の5「天使のブラ」の証拠であるが、ブラは女性下着であって本件商標の需要者の内、子供などとは、需要者を異にする。よって、請求人が提出した上記各証拠の表記には、「天使?」と漢字で「天使」が含まれているが、「天使」が引用各商標の商品を表示する著名な商標であることを証明する証拠とはなりえない。
エ 判例では、登録商標と他人の表示との類似性を判断基準としているが、請求人は、企業イメージ、企業精神から生じる観念と本件商標の類否を検討している。
また、請求人は、エンゼルマークと企業シンボルたる「天使」というのみで「天使」と「商品」との関係では論じていないし、この関係が不明瞭である。
さらに、請求人が、提出した証拠からは「天使」の著名性の立証がされていない。その多くは、「エンゼル」及び「天使の図=エンゼルマーク」の立証に追われていて最も重要な登録商標「天使」の著名性の立証が商品との関係からなされていない。
(2)本件商標とエンゼルマーク及び企業シンボルとしての「天使(エンゼル)」の類似性の程度
請求人は、「エンゼルマーク及び著名な企業シンボル」を強調し、エンゼルマーク、企業シンボルから「天使」の観念及び称呼が生じると独断的に判断するとともに、本件商標を分離し、「天使」の部分に要部が存在するとして、本件商標は、引用各商標と類似するとしている。しかしながら、本件商標と引用各商標とは、称呼、外観、観念上非類似の商標であることは前述している。
被請求人の本件商標と請求人の「エンゼルマーク及び著名な企業シンボル」との類似性ではなく、請求人が提示した引用各商標の「天使」が商品との関係で類似するかを論じるべきであるが、「商品」を基礎において類似性いかんが示されていない。
(3)エンゼルマークの独創性の程度にっいて
ア 独創性とは、他人の表示が独創的であることを要求しているのであり、既成語からなる商標ではなく創造語であることを要求しているのである。独創的である創造語とは、商標として極めて特異性のあるものであることが必要であると考えられる。本件商標と対比する表示(天使、エンゼルマーク=天使の図、エンゼル等)自体が独創性があるかどうかであって、採択過程や過去の表示の独創性のいかんによって独創性があるというものではない。したがって、採択過程や過去の表示の独創性を論じて、被請求人の前記表示である天使、エンゼルマーク=天使の図等が他に類例をみないほど斬新かつ独創的商標であるとするのは妥当でない。
イ また、請求人は、「請求人が最初にエンゼルマークを採用した明治38年(1905年)当時、天使の概念は、一般に知られたものでなかった。」と主張するが、「エンゼルマーク」を採用した明治38年当時、既に、「天使の像」等は普及していた(乙第22号証)。
したがって、エンゼルマーク=天使の図等が他に類例をみないほど斬新かつ独創的商標であるとは考えられない。
(4)商品関連、需要者の共通性にっいて
ア 商品の関連性は認める。
イ 但し、需要者の共通性は認めることはできない。その理由は、前記1(3)アないしウのとおりである。
(5)本件商標の指定商品の需要者において普通に払われる注意力その他取引の実情
ア 需要者において普通に払われる注意力について
(ア)請求人の引用各商標に係る指定商品の流通は、陳列販売方式を採用するスーパーマーケットなどの同一の店舗などで取り扱われ、その販売と役務の提供が同一事業者により同一場所で行われる流通形態であるから、消費者は一般の消費者であるから需要者としては、商品購入する際に払う注意力は高いものではない。
(イ)これに対し、本件商標の商品の流通は、前述したように被請求人の経営している居酒屋でありこの居酒屋で提供される商品である。ところで、居酒屋とは、酒類とそれに伴う簡単な料理を提供する飲食店であって、主に酒類を提供している点で一般のレストランと異なる。このような居酒屋には、居酒屋が提供している当該居酒屋特有のお酒や料理等を飲食するために何度も通うものでありなじみ客となる。なじみ客は、提供されるお酒、料理等に惚れ込んで通うのであるから、その居酒屋が提供する酒、料理等は店主が努力に努力を重ねて作り出された料理である。
(ウ)このようななじみ客(需要者)は、料理に対する関心は極めて高く提供される料理には極めて高い注意力が備わっている。本件商標の商品は、このような高い注意力を備わったお客に提供されるものであり持ち帰りされるのである。
イ 取引の実情について
(ア)請求人の商品の取引は、陳列販売方式を採用するスーパーマーケット等の同一の店舗などで取り扱われ、その販売と役務の提供が同一事業者により同一場所で行われる。
(イ)被請求人の商品の取引は、被請求人が経営する居酒屋に来店されるなじみ客に主に限定的に提供するとともに、来店されたお客が持ち帰りたいとの要望があるなじみ客にのみ手渡しする取り引き形態である。そのために、広域の消費者ではなく限定された地域の需要者にのみ手渡す取引である。
(ウ)このように、被請求人の商品の販売場所は同一場所や近接場所にあるものではないから取引の実情に照らしても全く取引の実情は、極めて異なるものである。したがって、このような事情からして出所の混同は生じることはない。よって、甲第26号証を認めることはできない。
(6)審査基準について
第4条第1項第15号に関する審査基準の内容は、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標」についての審査基準である。
本基準は、他人の商標は、必ず著名であると認定された上での審査上の取扱である。しかし、請求人が提出した証拠では、「天使」が著名であるとするには不十分であり認めることはできない。また、本基準は「原則として」と記載されているので必ず登録できない訳ではない。実際に「天使」を含んだ菓子の分野及び菓子分野以外でも極めて多数の登録例が存在する(乙第11号証及び乙第15号証参照。)。
よって、本審査基準を本件に適用することはできない。
(7)最後に
以上に述べた理由から、被請求人が本件商標を指定商品に使用したとしても、請求人の引用各商標であると取引者・需要者は、商品の出所の混同をすることはあり得ない。
3 結び
以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、登録は無効とされるべきでない。

第4 当審の判断
本件商標は、別掲(1)のとおり、容易に看取できる「天使のプリン」の文字よりなるものであるところ、その構成中の「天使」の文字は、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの。」を意味する語であり、指定商品又は指定役務との関係では、商品の品質、役務の質等を表すものではなく、十分に自他商品・役務の識別機能を発揮し得るものであるのに対し、「プリン」の文字は、被請求人もいうように、「卵・牛乳・香料などを混ぜ蒸し焼きにして柔らかく固めた洋菓子」のことであって、その指定商品又は指定役務との関係でみれば、対象となる商品又は取扱いに係る商品そのものを意味する普通名称又は役務の質を表すものであり、これが所有を意味する格助詞「の」を介して「天使のプリン」と表してみても、該構成中の「天使」の文字は、独立して取引に資される場合があるものというを相当とし、これよりは、漢字「天使」の外観、「テンシ」の称呼、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの。」の観念を生ずるものというべきである。
他方、引用商標1は、別掲(2)のとおり、「天使」の文字よりなるものであり、引用商標4は、別掲(3)のとおり、「てんし」の平仮名文字と「天使」の漢字と「テンシ」の片仮名文字とを上下三段に横書きしてなるものであるところ、これら「天使」の文字より、漢字「天使」の外観、「テンシ」の称呼、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの。」の観念を生ずるものといわざるを得ない。
してみれば、本件商標と引用商標1及び引用商標4とは、その外観、称呼及び観念を共通にし、同一又は類似する商標である。
そして、本件商標は、第30類「プリン,プリンの風味を有してなる菓子及びパン」及び第35類「プリンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,プリンの風味を有してなる菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品又は指定役務とするものであるのに対し、引用商標1は、第30類「菓子及びパン」を指定商品とし、また、引用商標4は、第30類「菓子及びパン」を含むものであるから、本件商標の指定商品第30類「プリン,プリンの風味を有してなる菓子及びパン」と引用両商標の指定商品第30類「菓子及びパン」とは、同一又は類似するものであり、本件商標の指定役務第35類「プリンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,プリンの風味を有してなる菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用両商標の指定商品第30類「菓子及びパン」とは、取り扱う商品を共通にする場合があり、需要者の範囲、商品と役務の用途等を同じくする類似というべきである。
そうとすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
なお、被請求人は、自らが経営する店舗の形態は居酒屋であり、店舗内で本件商標の指定商品である「プリン」を来店客に提供し、来店されたお客の特別に注文があった場合にのみ提供する商品であり、必要に応じて来店客から持ち帰りたいとの注文があれば、当該お客のためにのみ製造し販売するだけであるなど、被請求人と請求人とでは、両者の商品の販売方法、販売規模、販売ルート等極めて異なるものであるから、取引の実情に照らして出所の混同は生じることはない旨主張しているが、本号の適用に際して「商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すのであって、単に該商標が現在使用されている特殊的、限定的なものを指すものではない」(最高裁昭和49年4月25日判決言渡、昭和47年(行ツ)第33号)ものであるところ、被請求人の主張する商品「プリン」の製造・販売方法は、現在における特殊的、限定的な該商標の使用の実情であり、本件の判断において、かかる取引の実情は考慮すべきでなく、被請求人の主張は採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、他の請求の理由について論及するまでもなく、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>
(1)本件商標


(2)引用商標1


(3)引用商標4


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
審理終結日 2010-08-10 
結審通知日 2010-08-12 
審決日 2010-08-24 
出願番号 商願2008-60974(T2008-60974) 
審決分類 T 1 11・ 263- Z (X3035)
T 1 11・ 262- Z (X3035)
T 1 11・ 261- Z (X3035)
最終処分 成立 
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 酒井 福造
末武 久佳
登録日 2009-05-15 
登録番号 商標登録第5229401号(T5229401) 
商標の称呼 テンシノプリン、テンシノ、テンシ 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 小林 彰治 
代理人 廣中 健 
代理人 阪田 至彦 
代理人 中川 邦雄 
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