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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない X33
審判 全部無効 観念類似 無効としない X33
審判 全部無効 外観類似 無効としない X33
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X33
管理番号 1225106 
審判番号 無効2010-890001 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-12-30 
確定日 2010-10-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5237414号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5237414号商標(以下、「本件商標」という。)は、「千の風になって」の文字を標準文字で表してなり、平成19年2月15日に登録出願され、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同21年3月31日に登録審決、同年6月12日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4794052号商標(以下、「引用商標」という。)は、「千の風」の文字を標準文字で表してなり、平成16年1月6日に登録出願され、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年8月13日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び弁ばくを要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第22号証(枝番を含む。)を提出した。
2 請求の理由
(1)「千の風になって」の著名性について
曲名「千の風になって」の楽曲は、件外新井満により、作者不詳の英詩をいわゆる超訳して、作曲されたものである。
この点について、被請求人は、平成19年10月17日付け意見書で、「本願商標は、『千の風になって』という構成である。そして、本願商標は、2006年末のNHK紅白歌合戦に出場した歌手・秋川雅史の『千の風になって』という曲名と同一又は類似の称呼、観念などが生ずるものである。この当該曲名は、オリコンシングルチャートで1位を獲得したことは、知られているものである。」旨述べ、その証拠方法として意見書甲第1号証を提出し、「甲第1号証:曲名『千の風になって』は、歌手・秋川雅史が歌う以前・以後において、訳詩・曲を努めた新井満が歌い、新垣勉、中島啓江、宗田舞子、オユンナ、Yucca、さこみちよ等がカバーしていることをインターネットのホームページの写しにより立証する。」としているので、これらの主張及び証拠方法を本件審判手続に援用する。
(2)「千の風になって」と「千の風」の類似性について
曲名「千の風になって」は、「I am a thousand winds that blow(原詩)」ないし「I am in a thousand winds that blow(原詩の原詩)」の「1000の風(千の風)」に「になって」を付加して「千の風になって」としたものである。
このように、作者不詳の英詩において「千の風」が記載されていることと、楽曲の著名性とから「千の風になって」は「千の風」と同義として観念されることは明らかである。
そして、本件商標と引用商標を対比すると、両者は、「千の風」が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、「になって」からは出所識別標識としての称呼、観念が生じないことも明白である。
したがって、本件商標と引用商標は類似商標である。
(3)「千の風」の取引の実情について
ア 引用商標
(ア)新井満は、「日本酒」を含む第33類において、「千の風」の商標登録を得た(甲第1号証)。
(イ)「千の風」が「千の風になって」の要略ないし通称であることは、新井満の著作物等(甲第2号証ないし甲第4号証)、地方公共団体における、まちおこしプロジェクト(甲第5号証ないし甲第7号証)及び新聞、テレビ、出版業界における「千の風になったあなたへ贈る手紙」募集プロジェクト(甲第8号証)を見ても明白である。
イ 清酒「千の風」
(ア)請求人に対し日本酒について引用商標の使用許諾がなされている。
甲第9号証(枝番を含む。)は、清酒「千の風」を放映したテレビコマーシャルを示すもので「『千の風になって』がお酒になりました」をアピールするものであり、そのナレーションからも名曲「千の風になって」から「千の風」を観念することは明らかである。
また、新井満による「日本酒『千の風』誕生」の記載からも「千の風になって」が清酒の商標「千の風」になったことは周知である(甲第10号証)。
(イ)清酒「千の風」は、「千の風になって」をモチーフにした地酒や「千の風になって」をイメージした酒として、楽天はじめ酒類販売業者にて取り扱われている(甲第11号証ないし甲第18号証)。
ウ 千の風基金
千の風基金は、新井満が創設した社会貢献活動財団であり、その原資の一部に、引用商標の使用料を充てている(甲第20号証ないし甲第22号証、甲第2号証ないし甲第4号証、甲第8号証、甲第9号証の2及び3、甲第10号証)。
エ 本件商標
本件商標は「千の風」を商標の要部とする。そして、取引者・需要者は、指定商品「日本酒」において、「千の風になって」は「千の風」を観念し、請求人の清酒「千の風」を連想する。本件商標及びその商標権者は、新井満や千の風基金等とは無関係である。
オ まとめ
(ア)「千の風」は「千の風になって」の通称として用いられているので、その観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察してみれば、本件商標と引用商標とは、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似商標である。
(イ)本件商標と引用商標とは、「日本酒」において、強く支配的な印象を与える「千の風」で共通し、「になって」から出所識別標識としての称呼、観念が生じないので、類似商標である。
(ウ)「千の風になって」をテーマとする「千の風プロジェクト」とりわけ「千の風サミット」「千の風音楽祭」「千の風のふるさと」「千の風モニュメント」「千の風基金」等々の活動に見られるように、「千の風になって」は、「千の風」と要略されるから、日本酒の取引者、需要者は「千の風になって」イコール「千の風」と観念するのが取引の実情である。
(エ)請求人が「千の風基金」に対し清酒「千の風」の売り上げ金の一部を寄付していることが周知であるところ、被請求人が本件商標を清酒に使用すると、あたかも「千の風基金」に貢献するかのような印象を取引者、需要者に与えて、もって酒類取引に彼此誤認混同を生じるおそれがある。
(オ)以上のとおり、本件商標は、引用商標とは、少なくとも観念において相紛らわしい商標であり、商品取引の実情を勘案してみれば一層明らかなように、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれが存する類似商標であり、商標法第4条第1項第11号に該当する。
また、「千の風になって」は、「『千の風になって』がお酒になりました」で周知なように、指定商品「日本酒」を示す新井満使用の周知商標であり、したがって、本件商標は、他人の周知商標と同一又は類似の商標でもあるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)弁ばく
ア 清酒「千の風」について
(ア)甲第2号証ないし甲第4号証の書籍、甲第5号証ないし甲第8号証のホームページ、甲第9号証のテレビコマーシャルによって、請求人の販売に係る清酒「千の風」は、多くの需要者の目に触れることとなった。
また、甲第11号証ないし甲第18号証から明らかなように、請求人の製造販売に係る清酒「千の風」は、現在も販売されている。
これらの事実により、2004年(平成16年)の9月1日から約5年7ケ月後の現在に至るまでの長期間、「清酒 千の風」は継続して販売されており、しかも、「千の風」が「千の風になって」の要略ないし通称として用いられているという取引の実情は明白である。
以上の通り、清酒「千の風」における「千の風」は、「千の風になって」の要略ないし通称であって、このことは本件商標の出願時と登録審決時の双方の時点において周知事項であり、これに反する被請求人の主張は理由がない。
(イ)被請求人は、「当該引用商標である登録商標『千の風』は、楽曲『千のかぜになって』が発売され、人気が高まり周知になる以前の平成16年1月に商標登録出願され、同年8月には登録されたものである。このことからも引用商標である『千の風』は、楽曲名『千のかぜになって』の通称であるとか要略であるなどの主張は事実に反する独善的認識であり、後からこじつけた主張にすぎないこと明らかである。」旨、主張する。しかしながら、この主張は当を得ない。
すなわち、甲第10号証の「日本酒『千の風』誕生」に記載されているように、請求人と件外新井満との間で天上の桂子さん追悼の相談を持ち、その一環として請求人は清酒「千の風」の醸造を決めたものである。
(ウ)また、甲第3号証「『千の風になって』ヒストリー(第263頁?267頁)」に見るように、「千の風になって」が周知となり、そして、件外新井満に、「千の風になって」の要略である「千の風」で商標登録を得てもらい、請求人は売上金の一部を「千の風基金」に送ることとして商標使用権を許諾してもらったのである。
(エ)このように、清酒「千の風」における「千の風」は、これが「千の風になって」の要略である事実が先で、後は周知の通り、「千の風になって」現象が一世を風びし、甲第3号証の「『千の風になって』ヒストリー」に掲載されているように、本件商標の出願時においては既に、清酒「千の風」の商標「千の風」は「千の風になって」の要略ないし通称として周知されていたのである。とりわけ新潟県の酒類販売業者がこぞって「千の風になって」がお酒になりました。清酒「千の風」の宣伝販売に努めたことは、甲第1号証ないし甲第18号証から明らかである。
(オ)さらに、被請求人は、「当該清酒への商標『千の風』の使用は短期間の使用を示すのみで、その取引実態を具体的に示す証拠が全く示されていない。」と主張するが、失当である。
既に上記(ア)で述べたとおり、2004年(平成16年)9月1日から約5年7ケ月後の現在に至るまで「清酒 千の風」は販売されていて、商標「千の風」の使用は、決して短期間のものではないし、本件商標「千の風になって」の出願前に「千の風」が「千の風になって」の要略ないし通称として用いられている取引実情は明白である。
よって、この点に関する被請求人の主張も、失当である。
イ 商標法第4条第1項第11号について
本件商標「千の風になって」は、少なくとも指定商品「日本酒」におい
て、「千の風」の文字部分だけが独立して見る者の注意を引くように構成され、「千の風」が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、また、上述したように、「『千の風になって』がお酒になりました。清酒『千の風』」として「清酒 千の風」が販売されている取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すると、本件商標「千の風になって」と引用商標「千の風」は、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがある類似商標である。
ウ 商標法第4条第1項第10号について
「千の風になって」は、楽曲名が周知だからではなく、周知であるのは「『千の風になって』がお酒になりました。清酒『千の風』」であり、したがって、「千の風になって」は、「お酒」の商品識別標識である点において、指定商品「日本酒」を示す件外新井満及び請求人使用の周知商標である旨主張しているのである。よって、本件商標は、他人の周知商標と同一又は類似の商標なのである。
エ 「一事不再理の疑い」について
同一証拠は提出されておらず、疑いすらない。
オ まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反して登録されたものであるから、無効とされるべきである。

第4 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第22号証を提出した。
2 答弁の理由
(1)楽曲名と本件商標との本質的相違
請求人が主張する楽曲名と本件商標とは「千の風になって」と共通の文字構成である。しかし、当該楽曲のタイトルと自他商品識別標章(商標)とは、本質的に相違するものである。
当該楽曲名「千の風になって」は作者不明の英語原詩を、新井満氏が日本語詩に翻訳し・作曲したもののタイトルである。この楽曲は、新垣勉、綾乃ひびき、秋川雅史、宗田舞子など複数の歌手により歌われてきたが、そのうちEDISONが編曲したものを歌手の秋川雅史が歌ってタクミノートから2006年5月24日に発売したものだけが、じわじわと人気が出て2006年暮れの第57回NHK紅白歌合戦へ出場してから大きなヒット曲となり、オリコンシングルチャート1位になるなどしたものである。このような経過を経て「千の風になって」は楽曲として世間に広く知られるようになったものである(乙第2号証)。
それに伴って同名の本が出版されたりドラマが造られるなどのキャンペーンが行われたが、同名を酒類の商標として使用された事実はない。
当該楽曲名は、著作物の内容を示すタイトルであって、自他商品識別力を有する標章ではない。このため異なる楽曲について同一の曲名が付けられることが多い(乙第3号証)。
これに対し、本件商標は酒類の自他商品識別力を有する標章として「千の風になって」という字句を選定したものである。このように楽曲名(著作物の内容を示すタイトル)と酒類の自他商品識別標識(商標)とは、その表示対象も内容も機能も全く別異のものである。したがって、商標として選定した字句が、例え楽曲名と同一であるとしても、これによって指定商品について出所の混同や品質の誤認といった問題が起こることはない。
したがって、請求人の主張は、楽曲名と酒類の商標との本質的な相違を誤解・混同した主張をしている。
(2)清酒の登録商標「千の風」(引用商標)について
請求人は、引用商標は楽曲名として著名な「千の風になって」の存在を前提にしてその要略ないし通称であると主張する。しかし、それは請求人の独善的な思い込みであり、一般需要者の客観的な認識とは相違したものである。
なぜなら、楽曲「千の風になって」とは異なる歌曲として独自の日本語訳による楽曲「千の風」が存在している(乙第4号証、乙第5号証)。その楽曲は、原詩:作者不詳、訳詩:塩谷靖子、作曲:吉野慶太郎である。つまり本件についても同名異曲が存在している。この楽曲名「千の風」は、日本での楽曲名「千の風になって」の流行前に出来上がって発表され話題になっていた曲であったが、2007年2月21日にユニバーサル・ミュージックから発売された塩谷の同名のアルバムに収録された。このような事実から明らかなように楽曲「千の風」は、楽曲「千の風になって」が発表される以前からあったのであって、著名になった楽曲名「千の風になって」の通称や要略であるとの主張は事実ではない。
また、引用商標は、楽曲「千の風になって」が発売され、人気が高まり周知になる以前の平成16年1月に商標登録出願され、同年8月には登録されたものである。このことからも引用商標は、楽曲名「千の風になって」の通称であるとか要略であるなどの主張は事実に反するものである。
さらに、請求人は、引用商標の商標権について、日本酒に使用許諾がなされていると主張しているが、商標使用権の設定登録がされておらず、何の証拠も示されでいない。これでは第三者対抗要件もなく、被請求人としては認めるわけにはいかない不当な主張である。
さらにまた、請求人が提出している清酒「千の風」についての使用を示す甲第9号証ないし甲第22号証を提出しているが、いずれもつい最近のデータばかりであるうえ、清酒「千の風」そのものの発売が楽曲「千の風になって」が人気のでた2008年以後のものである。すなわち、当該清酒への商標「千の風」の使用は短期間の使用であることを示すのみで、その取引実態を具体的に示す証拠が全く示されていない。これでは清酒の商標「千の風」について、「他人の業務にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは、到底認められるものではない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
商標の類否判断は、商標の構成全体として有する外観、称呼又は観念により判断する全体観察が原則である。
本件の場合、この原則により両商標を比較すると、本件商標「千の風になって」は、一連不可分に記載された7文字からなる商標であり、引用商標「千の風」は一連不可分の3文字からなる商標である。構成文字数や称呼の音数には倍以上の差異があり、両者は外観及び称呼において非類似であること明らかである。
次に、観念について考察すると、「千の風になって」は、乙第1号証に示すように、アメリカ合衆国発祥の詩「Do not stand at my grave and weep」に日本語訳詩をつけたものとされている。その著作物である原詩の内容を表題としたものである。特に、原詩の3行目「I am a thousand winds that blow」を借りて「千の風になって」のタイトルがつけられたとされている。この著作物の内容を表わした意訳のタイトルが「千の風になって」であって、著作物の内容が単なる「千の風」ではないこと明らかである。
この原詩の要部「I am a thousand winds that blow」については、人々は「私はそよ吹く千の風」(乙第6号証)又は「私は千の風になって空を吹き渡り」(乙第7号証)のように翻訳している。これらの訳をみると、単なる「thousand winds」(千の風)ではなく、「I am a thousand winds that blow」として私は死んだ人の魂であり風になって吹き渡っていることを表現している。日本語の解釈としても需要者は誰でも単なる風のことではないことを認識するものである。すなわち、「千の風になって」と「千の風」とは観念的に別異のものと認識するのが一般的である。
よって、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
(4)商標法第4条第1項第10号について
請求人は、楽曲名「千の風になって」が、周知だから商標法第4条第1項第10号に該当する「千の風になって」旨主張する。しかし、この主張は、商標法の解釈を誤って適用したものである。
商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務にかかる商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品も若くは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するもの。」である。
当該規定の趣旨は、本件商標が周知商標と同一又は類似する商標の場合に、該当する旨の規定である。しかるに前述したように著作物である楽曲名は、商標(識別標識)ではない。すなわち、他人の周知商標そのものが存在しないのである。
本件のように楽曲名が周知又は著名になったとしても商標として周知になったわけではないので、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
そのことは以下のように商標登録の経験則からも明らかである。すなわち、楽曲の人気が高まり、オリコンチャート第1位を獲得したり、NHKの紅白歌合戦に出場したりして、全国的に広く知られるようになったとしても、その楽曲名と同一の字句を商標として選定した場合でも登録商標になっている例が次のように数多くある。
登録第4806302号商標「いい日旅立ち」(乙第9号証)、登録第1683542号商標「いい日旅立ち」(乙第10号証)、登録第4895094号商標「ジュピター/JUPITER」(乙第12号証)、登録第4926060号商標「JUPITER」(乙第13号証)、登録第4919474号商標「Rerl Face/リアルフェース」(乙第15号証)、登録第5073099号商標「RERL FACE」(乙第16号証)、登録第63281号商標「君が代」(乙第17号証)、登録第1313254号商標「君が代」(乙第18号証)、登録第753739号商標「君が代」(乙第19号証)、登録第1926961号商標「君が代」(乙第20号証)、登録第898183号商標「君が代」(乙第21号証)、登録第3093925号商標「君が代」(乙第22号証)。
上述したように、楽曲名として周知、著名であるからといって、それが登録商標になるべきではないという主張は、理由にならないこと明らかである。
(5)一事不再理の疑い
本件無効審判の請求前の平成21年11月4日に無効審判請求がなされている事実がある(無効2009-890118)。その請求の理由は、商標法第4条1項第10号及び同第11号に違反するから同法第46条第1項第1号に基づき無効にされるべきであると主張しているものである。
当該無効審判は、不適法な請求であるとして本件審判(無効2009-890118)の請求を却下するとの審決が確定している。つまり当該確定審決は、本件無効審判と同一審判、同一事実に基づくものである。もし同一証拠が提出されているのであれば、一事不再理に該当する疑いもある。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 本案前における被請求人の主張について
被請求人は、本件審判請求以前なされた無効審判請求(無効2009-890118号、以下「前審判請求」という。)は審決却下が確定しているが、当該確定審決は本件無効審判と同一審判、同一事実に基づくものであり、もし同一証拠が提出されているのであれば、一事不再理に該当する疑いがある旨主張する。
しかしながら、被請求人は、本件審判請求が前審判請求とどのような点において同一の事実及び同一の証拠に基づくものであるのか何も具体的に述べていないばかりでなく、前審判請求は、記録によれば、無効理由及び証拠方法については追って補充すると述べるのみで何ら具体的な理由及び証拠を明らかにしなかったため、請求の理由を欠く不適法な請求であって、その補正ができないものであることを理由として、審判請求を却下されたものであることが認められるから、本件審判請求と同一の事実及び同一の証拠に基づくものではない。
したがって、被請求人の本案前の主張は、理由がない。
2 本案の審理について
(1)引用商標の周知・著名性について
ア 甲各号証によれば以下の事実が認められる。
甲第2号証は、2006年(平成18年)12月4日第4刷発行の「千の風になって ちひろの空」と題する書籍の写しであり、56頁に「日本酒(新潟市、塩川酒造)」「千の風・基金(新潟市)」等の記載があるが、請求人の清酒についての商標「千の風」の記載はない。
甲第3号証は、2005年(平成17年)8月5日第三刷発行の「千の風にいやされて」と題する書籍の写しであり、267頁に「2004年9月1日 塩川酒造より追悼の意を込めて清酒『千の風』が発売される。」の記載があり、275頁には「千の風」と表示された商品の写真とともに「清酒」「千の風」「題字:新井満」「塩川酒造」等の記載がある。
甲第4号証は、2008年(平成20年)9月19日初版第1刷発行の「わたしたちの千の風になって」と題する書籍の写しであり、226頁には「千の風」と表示された商品の写真とともに「清酒」「千の風」「題字:新井満」「塩川酒造」等の記載がある。
甲第5号証は、2009年(平成21年)11月3日打ち出しのウェブページの写しであり、2/4ページには「千の風」と表示された商品の写真とともに「『千の風になって』の関連グッズや、ゆかりの都市の特産品を展示しました。」等の記載がある。
甲第6号証及び甲第7号証は、2009年(平成21年)12月11日打ち出しのウェブページの写しであり、これらには請求人の清酒についての商標「千の風」の記載はない。
甲第8号証は、2009年(平成21年)10月29日打ち出しのウェブページの写し、2009年9月5日発行の朝日新聞の写し及び作品募集のパンフレットであり、ウェブページの2/2ページに「千の風」と表示された商品の写真とともに「日本酒『千の風』」の記載がある。
甲第9号証の1は、2008年(平成20年)12月31日に放映された清酒「千の風」のテレビコマーシャルを収録したDVDであると請求人が主張するものであり、そこには、「千の風」と表示された商品の映像とともに「あの大きな空をふきわたっています。日本中が感動した名曲が清酒になりました。塩川酒造の清酒千の風」のナレーションが収録されている。なお、同DVDには、「2009新潟テレビ初詣1月1日(木)午後2時30分から生放送!」の字幕の入ったテレビコマーシャルも収録されている。
甲第10号証は、作成日等は不明であるが、清酒「千の風」の首掛け説明文であり、「塩川酒造は総力をあげて日本酒『千の風』を作り、世に問うことに決めたのであった。(中略)塩川酒造は、この酒の売り上げ金の一部を”千の風・基金“に送り、桂子さんがかかわっていた様々な社会貢献活動を応援することに決めたのだという。(中略)『千の風になって』とは、あとに残された人々に、悲しみをこえて生きる力、即ち”勇気と希望を与えてくれる奇蹟の詩“だったのである。(二〇〇四年春)」「あらいまん プロフィール」等の記載がある。
甲第11号証は、2009年(平成21年)11月3日打ち出しのウェブページの写しであり、「塩川酒造『千の風になって』をモチーフにした『日本酒の千の風』」の記載とともに、「千の風」と表示された商品の写真があり、そのラベルに「製造年月/19.3」の記載がある。
甲第12号証、甲第14号証ないし甲第18号証は、2009(平成21)年11月3日打ち出しのウェブページの写しであり、これらには「千の風」と表示された商品の写真とともに「塩川酒造(株式会社)」の記載がある。
甲第13号証は、2009年(平成21年)10月29日打ち出しのウェブページの写しであり、「千の風」と表示された商品の写真とともに「塩川酒造株式会社」「新井満作詞“千の風”になっての日本酒をインターネット販売」の記載がある。
甲第19号証ないし甲第22号証は、2009年(平成21年)10月29日打ち出しのウェブページの写しであり、これらに請求人の清酒についての商標「千の風」の記載はない。
(イ)以上によれば、請求人は、「千の風」の商標を付した日本酒を2004年(平成16年)9月1日に発売を開始し、その後本件商標の登録審決の日(平成21年3月31日)以降まで継続して販売、広告していることが認められる。
しかしながら、甲第2号証、甲第6号証、甲第7号証、甲第19号証ないし甲第22号証には、「千の風」の商標を付した日本酒についての記載を見いだすことができず、「千の風」の商標を付した日本酒についての記載のある甲第3号証ないし甲第5号証、甲第8号証ないし甲第18号証にしても、甲第4号証、甲第5号証、甲第8号証、甲第9号証及び甲第11号証ないし甲第18号証は、本件商標の登録出願の日(平成19年2月15日)以降のものであり、ましてや甲第5号証、甲第8号証、甲第11号証ないし甲第18号証は、本件商標の登録審決の日以降のものである。
そして、「千の風」の商標を付した日本酒の具体的な販売数量、売上高等は明らかでなく、また、一般の需要者に対しての広告、宣伝の事実を示す証拠は、テレビコマーシャルの放映が1回のみである。
そうとすると、商標「千の風」は、請求人の証拠によっては、本件商標の商標登録出願の時又は登録審決の時において、請求人の商品(清酒)であることを表すものとして取引者、需要者の間において広く知られていたものと認めることはできないというのが相当である。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標は、「千の風になって」の文字からなるところ、その構成文字は、同書、同大、同間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているものである。
そして、「千の風になって」の文字(語)は、その文字自体に熟語としての一般的な意味があるものではないが、2003年11月6日新井満氏が作者不詳(アメリカ人女性メアリー・フライの作品とする説もある。)の英語の原詩に訳詩・作曲し、曲名「千の風になって」として発表し、同曲は2006年(平成18年)5月24日に秋川雅史氏がシングルを発表し、その年の同氏の第57回NHK紅白歌合戦への出場を機に一般的に知られることとなった(乙第2号証)ものである。
そうとすれば、「千の風になって」の文字からなる本件商標は、曲名としての「千の風になって」の観念を生じ、その構成文字に照応して「センノカゼニナッテ」の称呼を生じるものといわなければならない。
イ 引用商標について
引用商標は、「千の風」の文字からなるところ、該構成文字に相応して「センノカゼ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
「千の風になって」の文字からなる本件商標と「千の風」の文字からなる引用商標とは、外観において、両者は、後半部で「になって」の文字の有無という明らかな差異を有するから、外観上相紛れるおそれはないものである。
また、本件商標から生ずる「センノカゼニナッテ」の称呼と引用商標から生ずる「センノカゼ」の称呼とを比較すると、両者は、後半部において「ニナッテ」の音の有無に差異を有し、その音数、音構成を明らかに異にするものであるから、称呼において相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標と引用商標とは、引用商標が観念を生じないものであるから、観念において、比較することができないものである。
エ 請求人の主張について
(ア)請求人は、「千の風になって」をテーマとする「千の風プロジェクト」とりわけ「千の風サミット」「千の風音楽祭」「千の風のふるさと」「千の風モニュメント」「千の風基金」等々の活動に見られるように、「千の風になって」は、「千の風」と要略されるから、日本酒の取引者、需要者は「千の風になって」イコール「千の風」と観念するのが取引の実情である旨主張し甲第2号証ないし甲第22号証を提出している。
しかしながら、前記(1)のとおり、商標「千の風」は、請求人の商品(清酒)であることを表すものとして取引者、需要者の間において広く知られていたものとは認めることはできず、また、「千の風になって」が「千の風」と略称等されると認めるに足る証拠も見いだせないから、請求人のこの主張は採用できない。
(イ)請求人は、本件商標は「千の風」を商標の要部とし、「になって」から出所識別標識としての称呼、観念が生じないので、本件商標と引用商標とは、「日本酒」において、強く支配的な印象を与える「千の風」で共通し、類似の商標である旨主張する。
しかしながら、本件商標は、「千の風になって」の文字を同書、同大、同間隔で外観上まとまりよく一体的に表されていものであって、前記アのとおり、曲名としての「千の風になって」の観念を生じるものであるから、「千の風になって」の構成文字全体を一体不可分のものとして把握すべきものである。したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(ウ)請求人は、曲名「千の風になって」は、「I am a thousand winds that blow(原詩)」ないし「I am in a thousand winds that blow(原詩の原詩)」の「千の風」に「になって」を付加して「千の風になって」としたものであり、作者不詳の英詩において「千の風」が記載されていることと楽曲の著名性とから、「千の風になって」は「千の風」と同義として観念されることは明らかである旨主張する。
しかしながら、前記アのとおり、我が国においては、曲名としての「千の風になって」が広く知られるものであって、その曲の英文原詩やさらにその英文原詩の原詩まで広く知られているとは認めることができず、また、これを認めるに足りる証拠の提出もないから、「千の風になって」が「千の風」と同義として観念されるとの請求人の主張も採用することができない。
オ まとめ
したがって、本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれの点からしても、相紛れるおそれのない非類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(3)商標法第4条第1項第10号について
前記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであり、しかも、前記(1)のとおり、本件商標の商標登録出願の時及び登録審決時において、商標「千の風」は、請求人の商品(清酒)であることを表すものとして取引者、需要者の間において広く知られていたものとは認めることはできないものである。
また、請求人は、「千の風になって」が新井満氏及び請求人が「日本酒」に使用する周知商標である旨述べるところがあるが、それを認めるに足る証拠は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-08-06 
結審通知日 2010-08-10 
審決日 2010-08-23 
出願番号 商願2007-12572(T2007-12572) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (X33)
T 1 11・ 261- Y (X33)
T 1 11・ 25- Y (X33)
T 1 11・ 262- Y (X33)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 吉田 静子 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 2009-06-12 
登録番号 商標登録第5237414号(T5237414) 
商標の称呼 センノカゼニナッテ 
代理人 森 正澄 
代理人 大津 洋夫 
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