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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効としない 003
管理番号 1225089 
審判番号 取消2009-300903 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-08-10 
確定日 2010-10-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第4073391号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4073391号商標(以下「本件商標」という。)は、「Virgin & Pink」の文字を横書きしてなり、平成8年5月14日に登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として、平成9年10月24日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。なお、本件商標の商標権者は、登録設定時においては、東京都品川区東五反田2丁目21番11号 DIK420号(その後、東京都品川区東五反田2丁目21番11号に表示更正され、その登録が平成13年3月5日にされた。)に所在の株式会社リバティーであったが、その後、商標権の移転より、東京都港区白金台2ー9ー27に所在の平野謙となった(平成13年5月16日登録)。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第37号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、すべての枝番号を引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標の通常使用権者(以下「本件通常使用権者」という。)による商品「化粧用ジェル」についての本件商標に類似する商標の使用は、その使用により、請求人並びにその使用許諾を受けた子会社及び販売代理店(これらをまとめていうときは、以下「請求人ら」という。)が製造販売する化粧用ジェル(以下「請求人商品」という。)と混同を生ずるものであるから、本件商標の登録は、商標法第53条第1項の規定により、取り消されるべきである。以下、その理由を述べる。
(1)引用商標
請求人は、昭和59年10月7日に、皮膚の汚れやしみ、色素の沈着を落とし美肌を保持する請求人商品を開発し、「エレガンスゼリー」の商品名で製造販売を行ったが、昭和62年2月ころから、請求人商品について「ヴァージンピンク」という商品名に変更した。請求人らは、請求人商品について、「ヴァージンピンク」の文字よりなる商標(以下「引用商標2」という。)を、別掲のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標1」という。)と併用、又はそれぞれ単独で(これらをまとめて、以下「引用商標」という。)使用した結果、引用商標は、遅くも平成元年6月ころまでには、請求人らの商品表示として需要者の間に広く認識されるに至っていた。
(2)請求人と本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)らとの関係
ア 請求人の販売代理店であった株式会社エムツウプロダクツ(以下「エムツウ」という。)が倒産し、平成3年2月1日、本件商標権者が代表者であった株式会社リバティー(以下「リバティー」という。)が、エムツウから営業譲渡を受けた。
本件商標権者は、リバティーを請求人の販売代理店として、請求人商品の宣伝広告を積極的に行うと共に、当時、請求人商品をリバティーに卸していた有限会社松川化学(以下「松川化学」という。)を通さずに、請求人から直接、請求人商品を仕入れたいと請求人に申入れてきた。
請求人は、請求人商品に力を入れていた松川化学を無視することはできなかったため、その申入れを断ったが、リバティーは、請求人商品の成分分析をして類似品を製造した。これを知った松川化学とリバティーとの間で訴訟に至る紛争となり、平成8年3月6日、リバティーが「ヴァージンピンク」を、松川化学が「バージンピンク」を使用するという旨の和解を、請求人に無断で成立させた。
イ 松川化学は、請求人に対して、上記リバティーとの紛争の関係にあるので、登録後には請求人に移転するとの条件で、以下の商標(これらをまとめていうときは、以下「請求人登録商標」という。)の出願を松川化学名義でさせて欲しいと懇願してきたため、請求人はやむを得ずこれを承諾した。
(ア)別掲のとおりの構成よりなる登録第4157557号商標(引用商標1:甲1の1)
登録出願日:平成8年12月24日
設定登録日:平成10年6月19日
指定商品 :第3類「化粧品」
(イ)「ヴァージンピンク」の文字を横書きにした構成よりなる登録第3371444号商標(引用商標2:甲1の2)
登録出願日:平成7年5月18日
設定登録日:平成14年11月15日
指定商品 :第3類「化粧品」
(ウ)「バージンピンク」の文字を標準文字で表した登録第4623575号商標(甲1の3)
登録出願日:平成12年2月2日
設定登録日:平成14年11月22日
指定商品 :第3類「化粧品」
(エ)「ヴァージン ピンク」の文字を標準文字で表した登録第4688295号商標(甲1の4)
登録出願日:平成12年2月9日
設定登録日:平成15年7月4日
指定商品 :第3類「化粧品」
ウ その後、請求人は、松川化学に対して、請求人登録商標を請求人に移転するよう請求したが、松川化学は、移転手続を先延ばしにすると共に、リバティーに倣って請求人商品の成分分析をして類似品を製造するようになった。
さらに、松川化学は、平成17年8月に、請求人登録商標に基づいて請求人とその代理店を被告として商標権侵害差止等請求訴訟を提起したが、請求人が直ちに反訴を提起して争った結果、請求人登録商標を請求人に移転し、上記類似製品の製造販売を中止すると共に、平成19年11月12日までにその在庫品を全て処分して市場に出ないようにする旨の条項で、平成18年5月12日に和解が成立した(甲1の5)。
エ 請求人は、平成20年10月17日に請求人商品につき「ヴァージンピンク」の商品名で医薬部外品製造販売承認申請を行い、平成21年2月18日に上記申請が承認された(甲1の6)。
オ 一方、リバティーもその間に、密かに出願して次の商標登録を行った。
(ア)「Virgin & Pink」の文字よりなる登録第4073391号商標(本件商標、甲2の1)
登録出願日:平成8年5月14日
設定登録日:平成9年10月24日
指定商品 :第3類「化粧品」
(イ)「ヴァージン & ピンク」の文字を標準文字で表した登録第4224557号商標(甲2の2)
登録出願日:平成9年10月13日
設定登録日:平成10年12月25日
指定商品 :第3類「化粧品」
カ リバティーは、平成13年1月31日付けで、本件商標権者を始めとする平野一族全員が役員を辞任すると共に、神奈川県川崎市の小山操を代表者とする役員が入れ代わったが、平成13年6月5日に、2回目の不渡りを出して銀行取引停止処分を受けて倒産した(甲4)。
その後、平成13年3月2日付けで、本件商標を含む上記オの商標は本件商標権者に移転された(甲2の1)。リバティーは、登記簿上はそのまま放置され、現在では実態のない会社である(甲4の3)。
本件商標は、本件商標権者が代表者であった当時のリバティーが請求人の販売代理店として販売していた請求人商品に付される引用商標と同一又は類似のものであり、リバティーは、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するものであることを知りながら商標登録出願を行ったものである。
また、リバティー倒産後は、本件商標権者は、請求人商品に類似する化粧品を販売する化粧品業者に本件商標の使用を許諾し、それらの化粧品と請求人商品との混同を図っている。すなわち、前記ウの請求人と松川化学との間の和解の成立は業界に知れわたり、平成19年11月12日まで類似品が出回る混乱があったものの、量的にはずっと少なくなってきていたが、そのころから、以下(ア)及び(イ)のとおり、請求人商品の類似品に「Virgin & Pink」、「ヴァージン & ピンク」の商標を付して請求人商品と同一の宣伝文句で売り出されるようになった。
(ア)株式会社ニッセン(以下「ニッセン」という。)は、当初、請求人の販売代理店である株式会社ベルス(旧株式会社ベルトゥリー・エンタープライズ、甲5の11ないし18、以下「ベルス」又は「ベルトゥリー・エンタープライズ」という。)を介して請求人商品を仕入れていたが、平成19年ころからベルスとの関係が切れて、類似商品を「Virgin & Pink」の商品名で販売するようになった(甲6の1ないし3)。
しかも、「Virgin & Pink」が売られるようになったのは、平成19年11月以降であるにもかかわらず、甲第6号証の1の2には「18年間ロングセラーがバージョンアップ」と記載されており、明らかに「ヴァージンピンク」、「Virgin Pink」として販売されてきた請求人商品との同一性を強調しているものである。
請求人は、ニッセンに対し、警告をしたところ、本件商標の使用許諾を受けているとの回答があり(甲7の1)、甲第6号証の2では「19年間ロングセラー」、甲第6号証の3では「20年間ロングセラー」と販売実績を高めてきている。
(イ)有限会社天意和ゴールド(以下「天意和ゴールド」という。)のウェブサイト(甲6の4)では、中央部に大きめに「ヴァージン&ピンク」と表示し、その下には「18年間愛された理由」として、請求人商品の販売実績を引用し、大きめの表示以外の所では「ヴァージンピンク」の商品名を用いており、広告者自身が請求人商品の表示と本件商標とを混同して用いている。
請求人は、「Virgin & Pink」、「ヴァージン&ピンク」の商品名で販売された類似商品の製造元に対して商標権侵害の警告をしたところ、いずれも本件商標の使用許諾を受けているとの回答があり、また、発売元として名前を出していた株式会社日本薬粧(以下「日本薬粧」という。)は既に破産手続に入っているとの回答があり(甲7の2)、極めて無責任な製造販売がなされている状態となっている。
キ 「Virgin & Pink」の商標が使われ始めたのは、平成19年11月以降と思われるが、それ以前に「Virgin & Pink」、「ヴァージン&ピンク」が使われているのを請求人らは見たことはない。
上記のような宣伝状態からみて、本件商標は、引用商標と完全に混同されており、このままでは、請求人が永年にわたって育ててきた請求人商品に対する信用が壊されてしまう状況となっている。
(3)むすび
以上のとおり、本件通常使用権者である天意和ゴールド及びニッセンが、本件商標の指定商品である化粧品に、本件商標を不当に使用して他人である請求人の業務に係る請求人商品と混同を生ずるものとしたものであるから、本件商標の登録は、商標法第53条第1項により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、引用商標を請求人商品に使用することについて、請求人が子会社や販売代理店に使用許諾したことを示す資料は一切提出されていない旨主張する。
しかしながら、エムツウやリバティーが請求人の販売代理店であった事実は、当時、リバティーの代表者として、請求人商品の取扱いをエムツウから引き継いでリバティーを請求人の販売代理店とした(甲29)のは、本件商標権者自身であるから、引用商標の使用許諾に係る子会社、販売代理店により引用商標が請求人商品に使用されたことは本件商標権者が十分承知していることである。
なお、被請求人は、甲各号証のいずれにも請求人を製造元とする表示が一切存在しないと主張するが、乙第1号証添付の在庫品目録における「容器」裏、「外箱」裏の写真には、製造元として請求人の名が明記され、販売代理店の松川化学が請求人の許諾を受けて引用商標を使用していたことが裏付けられている。
(2)被請求人は、請求人登録商標の権利者が平成18年7月11日まで請求人ではなかったこと、「ヴァージンピンク」の商品名で請求人商品について製造販売承認を得たのが平成21年2月18日であることから、それ以前において、請求人は他人に使用許諾をする権原を有していなかった旨主張する。
しかしながら、請求の理由で述べたように、請求人商品の元となった「エレガンスゼリー」は、請求人によって開発され、昭和60年12月7日には製造販売承認(甲3)を得ており、昭和62年2月ころから、この化粧品に引用商標を商品名として使用した(甲30)。
当時、請求人商品の製造ノウハウが請求人のものであって、第三者が類似品を製造することが困難であったため、当時の業界で爆発的人気があった請求人商品の取扱いを希望する多数の者が請求人の許諾を受けて販売代理店となっていた。
(3)被請求人は、請求人商品の製造許可における販売名が「ヴァージンピンク」となっていないことを理由として、請求人商品を「ヴァージンピンク」の商品名で製造販売することは法律上不可能である旨主張する。
しかしながら、化粧品・医薬品業界においては、薬事法による承認を受けた化粧品等の販売名と、実際に使用される商品名(商標)とが使い分けられているのが実情であり、このことは周知である。
すなわち、甲第31号証の美白クリームは、株式会社資生堂で「アクアレーベル/AQUALABEL」の商品名(商標)で販売されているが、化粧箱の説明書部には販売名として「資生堂Wエッセンスクリーム」と記載されており、この美白クリームは、販売名「資生堂Wエッセンスクリーム」で製造販売承認を受けていることが明記されている。
また、甲第32号証の洗顔クリームは、ロート製薬株式会社で「アクネス/Acnes」商品名(商標)で販売されているが、容器チューブ裏面の説明書部には販売名として「アクネスW」と記載されており、販売名「アクネスW」で製造販売承認を受けている。
したがって、被請求人の上記主張は理由がない。
(4)被請求人は、引用商標が請求人の販売代理店等によって使用された実績は存在しないと主張するが、甲第5号証の1ないし19、甲第8号証ないし甲第27号証により、引用商標が使用された事実は明らかである。
(5)本件商標と引用商標とが非類似であり、混同を生じないとする被請求人の主張について
ア 本件商標は、引用商標とは別異に商標登録がされているが、それは審査における机上の判断であって、一般消費者の感覚や取引の実情が勘案されたものではない。
現に、甲第6号証の4では、「ヴァージン&ピンク」の記載ほか、「&」のない「ヴァージンピンク」が記載され、「ヴァージンピンク」と「ヴァージン&ピンク」が混同して使用されている。
また、甲第7号証の1の1では、甲第6号証の1の2中の記載について「本件商品が18年間ロングセラーであるとの記載が存しますが、これは、本件商品が18年間販売されているという意味であり、弊社で18年間販売しているという意味ではございません。18年間販売の事実につきましても、弊社仕入れ先より確約をいただいております。」としている。
「ヴァージン&ピンク」が、この時点で18年間販売していないことは、その経緯から明らかなところであり、ここにいう「18年間販売」が引用商標の商品名による販売を同一のものと混同していることは明らかである。
イ 商標の類否に関する審査基準には、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」と示されている。
引用商標と本件商標を対比すると、外観上は「&」の差異のみであり、称呼上は「アンド」の差異のみであり、その差異を除けば本件商標には、引用商標中の「Virgin Pink」の文字構成が全て含まれており、上記審査基準に照らしても、本件商標は、外観及び称呼において、引用商標に類似するものである。
したがって、本件商標及び「ヴァージン&ピンク」の商品名を用いた化粧品は、取引者・需要者をして、請求人商品と出所について混同を生じさせるおそれがある。
(6)被請求人の「松川化学及び請求人は『ヴァージンピンク』なる商標を使用する権限を有しない」との主張について
ア 被請求人は、リバティーと松川化学との間の東京地方裁判所平成6年(ヨ)第22030号事件につき、成立した和解の条項(乙1)により、請求人は「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権限を有しないと主張する。
民事訴訟における判決が、形成効のある場合を除き訴訟当事者以外に効力を及ぼすことがないことは異論のないところである。
ましてや、当事者の合意によって成立した和解が第三者である請求人に効力を及ぼすなどという主張は全くの暴論と言うほかはない。同和解条項にいう利害関係人が、松川化学の代表者松川伸也を指称するものであることは、乙第1号証の当事者及び利害関係人目録にも明記されている。
被請求人の主張する条項部分は、同和解の当事者である松川化学と実質的当事者として関与した松川化学の代表者松川伸也が主体となって名称だけを変えて別人格を主張する場合を想定したものである。被請求人の主張はお門違いである。
イ 被請求人は、乙第1号証を根拠に、平成8年3月6日以降は「ヴァージンピンク」なる商標を「化粧品」について使用できるのはリバティーとそのライセンシーのみであると主張するが全くの勘違いである。同和解条項に拘束されるのは、その当事者及び利害関係人目録に記載されている当事者のみであることは、判決の相対的効力から考えても明らかなところである。
(7)被請求人は、本件商標は、天意和ゴールドの証明書(乙2)、太陽製薬株式会社(以下「太陽製薬」という。)の回答書(乙3)及び甲第6号証の1及び2から明らかなように、本件商標権者及びそのライセンシーにより少なくとも平成10年1月以降、通販大手のニッセン等により化粧品について使用されているので、引用商標よりも取引者・需要者の間に広く認識されている旨主張する。
ア しかしながら、少なくとも乙第1号証の平成8年3月段階では、本件商標権者は、引用商標中の「ヴァージンピンク」にこだわっており、本件商標に関心を持っていなかったことは和解条項の内容からしても明らかなところである。本件商標の出願は、平成8年5月14日であり、乙第1号証の和解成立後に「ヴァージンピンク」が使用できなくなった場合を想定して出願されたものとしか思われない。
イ また、天意和ゴールドの証明書(乙2)によれば、天意和ゴールドは、平成11年10月から現在まで「ヴァージン&ピンク」(登録第4224557号商標)を付した化粧品を販売しており、引用商標を付した化粧品の誤注文を受けたことがない。また、引用商標を付した化粧品は取り扱ったことがないとしている。
ところが、甲第6号証の4(天意和ゴールドのウェブサイト)では、請求の理由(2)オ(イ)で述べたとおり、「ヴァージン&ピンク」のほか、8箇所に「&」のない「ヴァージンピンク」を記載しており、引用商標中の「ヴァージンピンク」と混同させるように誘導しているものである。
さらに、上記女性の写真の右側には、強調文字で「18年間愛された理由」と記載され、あたかも「ヴァージン&ピンク」を付した化粧品が18年間愛されてきたかのように記載されているが、乙第2号証によれば、「ヴァージン&ピンク」を付した化粧品は、平成11年10月からであるから、18年間愛されてきたというのはというのは全くの虚偽である。
この時点で18年間にわたって販売が継続されているのは、請求人商品以外にないから、甲第6号証の4は、「ヴァージン&ピンク」を付した化粧品を引用商標を付した化粧品と混同させるためのものであることは明らかである。
ウ 乙第3号証は、太陽製薬が天意和ゴールド宛に、「ヴァージン&ピンク」を付した化粧品の医薬部外品申請が平成9年8月7日におりたこと、初出荷が平成10年1月13日、最終出荷が平成20年4月24日であることを回答したものである。
しかし、甲第7号証の2の1で、太陽製薬は、請求人に対し、「ヴァージン&ピンク」を付した化粧品の製造につき、破産手続に入った日本薬粧の依頼による受託製造であり、全品日本薬粧にのみ販売していると回答している。
そして、その後の甲第7号証の2の2では、日本薬粧の依頼で天意和ゴールドに商品を直送したことはあるが、同社とは面識がなく販売ルートも知らないと回答してきている。
エ 甲第6号証、甲第7号証からして、本件商標及び「ヴァージン&ピンク」を付した化粧品の販売者は、いずれも請求人商品を意識し、これとの混同を誘導するように行動していることは明らかである。
したがって、本件商標及び「ヴァージン&ピンク」が、引用商標よりも取引者・需要者の間に広く認識されているとの被請求人の主張は事実に反するものである。
オ 被請求人は、引用商標から生じる自然称呼は「バージンピンク」であり、本件商標から生じる自然称呼は「バージンエンドピンク」であるから、両称呼には「エンド」の3音の有無という顕著な差があり、混同のおそれはないと強弁するが、「エンド」は日本語の「と」を意味するだけの英語であることは日本においても知られているところである。
引用商標における「バージン」は、「ピンク」の修飾語的な要素を含んでいるものの、「バージン」と「ピンク」の結合商標的な要素も含んでいるため、「&」は和製英語的な感覚で無視されるものである。現に本件商標権者から許諾を受けているとする本件通常使用権者は、前記のように本件商標と引用商標を混同して用いているものである。
被請求人はさらに、「&」のないものと「&」を挿入したものとが先後願の関係にありながら、いずれも登録されていることを主張するが、これについては前記(5)主張のとおりである。
(8)本件審判の請求が権利の濫用であるとの主張について
ア 被請求人は、請求人には「ヴァージンピンク」なる商標の使用実績が全くなかったとして権利の濫用を主張するが、前記のように、請求人商品の元となった「エレガンスゼリー」は請求人によって開発され、昭和60年12月7日には、製造販売承認(甲3)を得ており、昭和62年2月ころから、この化粧品に引用商標を商品名として使用し(甲28)、平成元年6月ころまでには請求人商品の商品名として需要者及び業界に広く認識されるに至っていた。
イ 当時、請求人直接の製造販売では対応しきれなかったので、製造元として子会社や委託製造方式を利用し、販売元として販売代理店によっていたが、請求人商品の製造ノウハウが請求人のものであって、第三者が類似品を製造することが困難であったため、当時の業界では請求人商品の爆発的人気によって請求人の代理店として請求人商品の取扱いを希望する多数の者が請求人の許諾を受けて販売代理店となっており、これらの代理店等によって積極的な広告宣伝が行われた(甲5の1ないし18、甲8ないし甲27)。
ウ 被請求人は、エムツウ及びこれを引き継いだリバティーが請求人の販売代理店であったことを否認しているが、これらの会社が請求人の販売代理店として請求人商品を販売していた当時の請求人商品の容器用の印刷原稿フィルム、版下が請求人のもとに存在する(甲33及び甲34)。
(ア)甲第33号証は、平成元年12月12日に容器製造業者に渡した版下であり、左上端に「1.12.12」の記入がある。商標として使用されている商品名は、「Virgin Pink」であり、製造承認を得ている販売名は「ロッシヴァージンゼリー」となっている。また、発売元はエムツウ、製造元は請求人の100%子会社であるクー・インターナショナル株式会社(以下「クー・インターナショナル」という。)である。
(イ)甲第34号証の1は、平成3年10月22日に容器製造業者に渡した版下であり、商標として使用されているのは、「Virgin Pink」、製造元はクー・インターナショナルであるが、発売元はリバティーとなっており、リバティーが請求人の販売代理店であったことを明確に示している。
甲第34号証の2は、甲第34号証の1の前である平成2年2月21日に容器製造業者に渡した「Virgin Pink」の版下であり、販売名は「エレガンスゼリー」、発売元はエムツウ、製造元はクー・インターナショナルである。
すなわち、甲第34号証の1の版下は、リバティーがエムツウから請求人の販売代理店業務を引き継いだため、甲第34号証の2の版下から発売元の表示をリバティーに変更したものである。このころは、請求人商品の販売名を「エレガンスゼリー」及び「ロッシヴァージンゼリー」で製造販売承認を得ており、リバティーが販売代理店となったころの販売名は「ロッジヴァージンゼリー」であった。
甲第34号証の3は、エムツウが販売代理店であったころの請求人商品の容器に印刷した印刷サンプルである。
(ウ)上記のとおり、本件商標権者が代表者をしていたころのリバティーがエムツウから請求人の販売代理店業務を引き継いでいる(甲29)ことは明らかである。
その後、請求人は、平成6年4月7日付けで、請求人商品(Virgin Pink)を販売名「ヴァージンピンクエース」で医薬部外品として製造承認(甲35)と製造品目追加許可(甲36)を申請し、平成6年9月22日付けで承認を得ている。
また、平成7年7月11日には、請求人商品のシリーズ品としての美容液について「薬用オレイアホワイトニングエッセンス」の販売名で医薬部外品製造承認(甲37の1及び2)を得た化粧品についても、「Virgin Pink」を商品名(甲37の3及び4)として現在まで製造販売を継続している。
(9)以上のとおり、被請求人の主張がいずれも事実に反するものであることは、上記の各証拠によって明らかである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 本件商標の使用は請求人の業務に係る商品と混同を生じないこと
(1)引用商標の使用実績はないこと
請求人は、「ヴァージンピンク」及び「Virgin Pink」なる商標(引用商標)を昭和62年2月ころから請求人商品に使用した旨主張する。
しかしながら、請求人が昭和62年2月ころから引用商標を請求人商品に使用したことを示す資料は一切提出されていない。
しかも、甲第1号証の6によれば、請求人が「ヴァージンピンク」の商品名で請求人商品について製造販売承認を得た日は、平成21年2月18日である。してみれば、当該承認日以前に請求人が引用商標を請求人商品に使用することは法律上不可能であったことは明らかである。
したがって、請求人による引用商標の使用実績は存在しない。
(2)請求人の使用許諾にかかる子会社、販売代理店による引用商標の使用実績はないこと
ア 請求人は、引用商標が、請求人の使用許諾にかかる子会社、販売代理店により請求人商品に使用された旨主張する。
しかしながら、子会社や販売代理店に使用許諾したことを示す資料は一切提出されていない。
しかも、引用商標の商標権者が平成18年7月11日まで請求人ではなかった事実(甲1の1)及び「ヴァージンピンク」の商品名で請求人商品について製造販売承認を得た日が平成21年2月18日である事実に徴すれば、それ以前において、請求人は他人に使用許諾をする権原を有していなかったことは明らかである。
イ 同様に、ハイテクサービス株式会社(以下「ハイテクサービス」という。)、ベルス、エムツウ及びリバティーが請求人の販売代理店であることを示す資料も一切提出されていない。
むしろ、上述のように、請求人が平成21年2月17日以前においては製造販売承認を得ていなかった事実に徴すれば、請求人は製造元となり得るはずはない。このことは甲各号証のいずれにも請求人を製造元とする表示が一切存在しないことからも明らかである。
そして、請求人が製造元でない以上、請求人の販売代理店が存在することはあり得ない。
ちなみに、本件商標権者は、リバティーの代表者であったが、リバティーが請求人の販売代理店であったことは一度もない。
ウ したがって、請求人の使用許諾にかかる子会社、販売代理店による引用商標の使用実績は存在しない。
(3)松川化学及び請求人は、「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権原を有しないこと
本件商標権者が代表者をしていたリバティーは、「ヴァージンピンク」なる商標の使用実績を根拠に、平成6年に不正競争防止法に基づき、松川化学を債務者として東京地方裁判所に仮処分命令申立を行なった。その結果、東京地方裁判所平成6年(ヨ)第22030号審尋調書(和解)(乙1)から明らかなように、「ヴァージンピンク」なる商標は債権者たるリバティーが使用し、債務者たる松川化学はもとより、その利害関係人(松川伸也、松川商店、西日本エラン販売、西日本エラン販売株式会社及びその他のいかなる呼称を用いる場合も含む。)も、平成8年3月6日以降、「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を使用することができなくなり、松川化学は、医薬部外品製造承認申請における名称を「ヴァージンピンク」から「バージンピンク」に変更した。すなわち、松川化学及びその利害関係人は、平成8年3月6日以降「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を適法に使用する権原を有しないことが確定した。
しかるところ、請求人と松川化学との間に、請求人が本件審判の請求の理由で主張するような関係があるのであれば、請求人と松川化学は実質的に同一視でき、また、少なくとも同和解調書が規定する利害関係人は、上記のように「その他のいかなる呼称を用いる場合も含む」のであるから、請求人は、正に松川化学の利害関係人にほかならない。
したがって、松川化学及び請求人が、平成8年3月6日以後「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を使用することはあり得ない。それにもかかわらず、仮に松川化学及び請求人が「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を使用した、とするなら、それは正に法を無視した不正使用そのものであって、当該不正使用に法的保護が与えられないことは極めて当然であり、自ずと当該不正使用に基く主張は到底許されない。
(4)引用商標は、請求人商品の表示として需要者の間に広く認識されていないこと
請求人は、引用商標は請求人らの商品表示として需要者の間に広く認識されている旨主張する。
しかしながら、上述のように、引用商標は、請求人らによって使用された実績は存在しない。
したがって、引用商標が請求人商品の表示として需要者の間に広く認識されることはあり得ない。
むしろ、乙第1号証(和解調書)から明らかなように、平成8年3月6日以降は、本件商標の出願人たるリバティー及びそのライセンシーのみが「ヴァージンピンク」なる商標を「化粧品」について使用することができたのであり、「ヴァージンピンク」なる商標は、本件商標の出願人たるリバティーの商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていたのが実態である。
(5)引用商標と本件商標は非類似の商標であること
ア 引用商標から生じる自然称呼は「バージンピンク」であり、他方、本件商標から生じる自然称呼は「バージンエンドピンク」である。
そして、両称呼には「エンド」の3音の有無という顕著な差があり、明瞭に聴別し得ることは明らかである。
また、引用商標と本件商標は、看者の注意を惹く中央部において、「&」マークの有無という顕著の差があり、彼此混同のおそれはなく明確に識別し得ることは明らかである。
なお、引用商標と本件商標は、観念上の類似が問題となり得ないことは論ずるまでもなく自明である。
したがって、引用商標と本件商標は、称呼、外観、観念のいずれにおいても明確に区別して取引される全く非類似の商標である。
イ 以上に述べたところは、本件商標の後願にもかかわらず、登録第4157557号商標(「Virgin Pink」甲1の1)が非類似の商標として登録されている事実、登録第3371444号商標(「ヴァージンピンク」甲1の2)の後願にもかかわらず本件商標が非類似の商標として登録されている事実及び本件商標の後願にもかかわらず登録第4688295号商標(「ヴァージンピンク」甲1の4)が非類似の商標としてそれぞれ登録されている事実からも明らかである。
(6)本件商標権者による商標「ヴァージン&ピンク」(Virgin & Pink)の使用実績
天意和ゴールドの証明書(乙2)、太陽製薬の回答書(乙3)及び甲第6号証の1及び2から明らかなように、商標「ヴァージン&ピンク」(Virgin & Pink)は、本件商標権者及びそのライセンシーにより少なくとも平成10年1月以降現在に至るまで商品「化粧品」に適正に使用されている。
しかも、当該商標が使用された「化粧品」は、通信販売大手のニッセン等により広く販売されていることと相俟って、「ヴァージン&ピンク」(Virgin & Pink)なる商標は、少なくとも請求人による使用実績のない「ヴァージンピンク」なる商標に比し、取引者・需要者の間に広く認識されているものである。
(7)請求人の業務に係る商品と混同を生じないこと
前述のとおり、「ヴァージンピンク」なる商標は、リバティーのみが使用し得た商標で、同社の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていたこと、少なくとも本件商標権者及びそのライセンシーによる商標「ヴァージン & ピンク」(Virgin & Pink)の使用開始前に、請求人又はそのライセンシーや販売代理店により「化粧品」について引用商標の使用実績がないこと及び引用商標と本件商標が非類似であることに徴すれば、むしろ「化粧品」については、本件商標が取引者・需要者の間に広く認識されていることとも相俟って、本件商標を本件通常使用権者である天意和ゴールド、ニッセンが「化粧品」に使用しても請求人の業務に係る化粧品と混同を生じることはあり得ない。
したがって、商標法第53条第1項の規定により本件商標の登録を取り消すことはできない。
2 本件審判の請求は権利の濫用であること
請求人は、前述のように、「ヴァージンピンク」なる商標の使用実績が全くなかったにもかかわらず、かつ、松川化学が「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権原がないことを知りながら、松川化学が商標登録していることを奇貨とし、敢えて松川化学から当該「ヴァージンピンク」なる商標権を譲り受け、既に本件商標に化体している本件商標権者の業務上の信用を横取りし、不正の利益を得る目的を以って本件審判を請求したのが実態である。
よって、請求人は予備的に、本件審判の請求は濫用であり、到底許されるべきでないことを主張する。
3 請求人の事情に関する主張について
(1)請求人は、事情に関し種々主張しているが、具体的な根拠を示す資料は何ら提出されていないので、その真偽は不明である。
(2)本件商標権者に関わる部分については以下のとおり反論する。
ア 請求人は、本件商標権者は請求人から直接、請求人商品を仕入れたいと請求人に申入れてきた旨主張するが、そのような事実はない。このことは、当時請求人に請求人商品の製造販売承認がなかったことからも明らかである。
イ 請求人は、リバティーは請求人商品の成分分析をして類似品を製造した旨主張するが、リバティーが成分分析をした事実はない。
ウ 請求人は、リバティーが、本件商標権者が代表者であった当時に、請求人が開発した請求人商品を「Virgin Pink」、「ヴァージンピンク」の商品名で販売代理店として販売していたものであり、商標法第4条第1項第10号に該当するものであることを知りながら、本件商標の出願を行ったものである旨主張するが、前述のとおり、リバティーが請求人の販売代理店であった事実はなく、しかも、乙第1号証(和解調書)から明らかなように、当時「ヴァージンピンク」なる商標は、リバティー及びそのライセンシーしか「化粧品」に使用し得ず、同社の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていた以上、リバティーによってなされた本件商標の出願が商標法第4条第1項第10号に該当するものでないことは自明である。
4 むすび
以上のとおり、本件通常使用権者による本件商標の使用は、何ら請求人の業務に係る「化粧品」と混同を生じさせることがない以上、商標法第53条第1項に規定する取消理由が存在しないことは明白である。

第4 当審の判断
1 商標法第53条第1項は、「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれらに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。」と規定するところ、請求人は、本件通常使用権者による商品「化粧用ジェル」についての本件商標に類似する商標の使用は、その使用により、請求人らが製造販売する「化粧用ジェル」(請求人商品)と混同を生ずるものであるから、本件商標の登録は、商標法第53条第1項により取り消されるべきである旨主張するので、以下検討する。
2 本件通常使用権者について
請求人は、本件審判において、ニッセン、天意和ゴールドが本件通常使用権者であると主張し、これらの者の使用に係る商品「化粧用ジェル」(以下「本件使用商品」という。)について使用する商標を明らかにする証拠として甲第6号証を提出し、さらに、請求人が、ニッセン及び天意和ゴールドに本件使用商品を納品した太陽製薬に対してした警告に対する回答書等として甲第7号証を提出する。
(1)甲第6号証によれば、以下のとおりである。
ア ニッセンは、その発行に係るカタログ(2008年春号:カタログ有効期限2008年6月30日)において、「くすんできた部分に乙女ちっくな肌色を取り戻したい!」、「バストトップやデリケートゾーンはもちろん、からだの黒ずみやすい部分に。18年間のロングセラーが有効成分を増量してさらにバージョンアップ。」などの文字と共に、「薬用ヴァージン&ピンク」又は「ヴァージン&ピンク」なる商標を付した本件使用商品の広告をした(甲6の1)。
イ ニッセンは、その発行に係るカタログ(2008年秋号:カタログ有効期限2009年2月28日)において、「くすんできた部分が気になる!」、「バストトップやデリケートゾーンはもちろん、からだの黒ずみやすい部分に。19年間のロングセラーが有効成分を増量してさらにバージョンアップ。」などの文字と共に、「薬用ヴァージン&ピンク」又は「ヴァージン&ピンク」なる商標を付した本件使用商品の広告をした(甲6の2)。
ウ ニッセンは、その発行に係るカタログ(2009年春号:カタログ有効期限2009年6月30日)において、「くすんできた部分が気になる!」、「バストトップやデリケートゾーンはもちろん、からだの黒ずみやすい部分に。20年間のロングセラーが有効成分を増量してさらにバージョンアップ。」「薬用/効能・効果 メラニンの生成を抑制」などの文字と共に、「薬用ヴァージン&ピンク」又は「ヴァージン&ピンク」なる商標を付した本件使用商品の広告をした(甲6の3)。
エ 甲第6号証の4は、通販サイトであるところ、その掲載日及び掲載者の記載はないが、掲載のカレンダー日付「2008年8月」及び電話番号「(048)-885-1618」から、2008年8月掲載のものであって、天意和ゴールドが掲載したものと推認される。
なお、同サイトの作成者が天意和ゴールドであることについては、被請求人は争うことを明らかにしていない。
そして、天意和ゴールドは、同サイトにおいて、「薬用/ヴァージン&ピンク」、「18年間愛された理由/ピンク色と美白を実感したから・・」、「全身が美白色に染まる薬用ヴァージンピンク」、「ヴァージンピンクがリニューアルしました。」、「ヴァージンピンクは、メラニン色素を排除させてキレイな皮膚を復活させます。その成分は、美白等でも有名なプラセンターエキスとアロエエキスです。また、顔等の露出した部分のシミや色が白くないのも同様にメラニン色素が原因ですから、顔等にも使用して下さい。」などのように、「薬用ヴァージン&ピンク」のほか、「ヴァージンピンク」の文字よりなる商標を表示して、本件使用商品の広告をした。
(2)甲第7号証によれば、以下のとおりである。
ア ニッセンは、平成20年11月10日付けの回答書をもって、概ね以下のように回答した(甲7の1)。
ニッセンの販売に係る商品「薬用 ヴァージン&ピンク」は、東京都渋谷区桜丘町8ー17シャレー渋谷A803に本店所在地をおく、さくら薬品株式会社(以下「さくら薬品」という。)からの提案により採用した商品であって、当該商品の商品名は登録商標であり、さくら薬品が商標権者より許諾を受け使用しているので、請求人をはじめとする他社の商標権を侵害するものではない。ただし、ニッセンの知らないところで、請求人とさくら薬品との間に何らかの法的な問題が生じているのであれば、その旨を知らせて欲しい。ニッセンは、法的に問題のある商品については一切取り扱わない方針である。
イ 天意和ゴールドに本件使用商品(回答書には、商品名は明記していないが、本件使用商品と推認することができる。)を納品した太陽製薬は、平成20年11月13日及び同年同月20日付け文書で、概ね以下のように回答した(甲7の2:ただし、天意和ゴールドの回答書の提出はない。)。
太陽製薬は、本件使用商品を日本薬粧の依頼で製造し、天意和ゴールドに本件使用商品を直送した。委託元からは「ヴァージン & ピンク」(登録第4224557号商標)の商標を持っているとの説明を受け、容器、箱は支給されたものを使ったが、商標の関する点は、商標権者と話をして欲しい。
(3)前記(1)で認定した事実によれば、ニッセンは、平成20年6月(春)から平成21年6月末にかけて、「薬用ヴァージン&ピンク」又は「ヴァージン&ピンク」なる商標(これらを以下「使用商標1」という。)を使用し、化粧品の広告をしたことが認められる。また、天意和ゴールドは、平成20年8月ころに、使用商標1及び「ヴァージンピンク」の文字よりなる商標(以下「使用商標2」という。)を使用し、化粧品の広告をしたことが認められる。
しかしながら、前記(2)で認定した事実によれば、上記使用中、ニッセンは、本件使用商品の仕入れ先であるさくら薬品と商標権者との間においてした商標の使用許諾契約に基づく、使用に係る商標が付された本件使用商品の仕入れをし、カタログを介してこれを単に販売したにすぎないものと認めることができ、このことは、ニッセンの回答書中の「ニッセンは、法的に問題のある商品については一切取り扱わない方針である」との記載からも窺うことができる。また、天意和ゴールドの回答書は提出されていないものの、天意和ゴールドの場合も、本件使用商品の製造委託を受けた太陽製薬から商品を受け取り、単に販売のみを行っていたものと推認される。
そうすると、ニッセン及び天意和ゴールドは、日本全国に少なからず存在するであろう本件使用商品の小売業者の一つといえる者であり、本件商標の通常使用権を許諾された者とみることはできない。その他、ニッセン及び天意和ゴールドが、本件商標の通常使用権を許諾されたと客観的に認めるに足る証拠の提出はない。
したがって、ニッセン及び天意和ゴールドは、本件商標の通常使用権者と認めることはできない。
3 前記2のとおり、ニッセン及び天意和ゴールド(以下、まとめていうときは、「ニッセンら」という。)が、本件商標の通常使用権者と認めることはできないのであるから、本件審判においては、すでに商標法第53条第1項を構成する要件を欠くものと認めることができるが、商標法第53条第1項の他の要件について、念のため検討する。
(1)本件使用商品(化粧用ジェル)が本件商標の指定商品に含まれる商品であることについては、当事者間に争いがない。また、請求人は、ニッセンらによる本件使用商品についての使用商標の使用が、平成19年11月以降であると主張するが、これを認めるに足る証拠の提出はないから、ニッセンらによる使用商標の使用は、前記2(3)認定のとおり、ニッセンについては平成20年6月(春)以降、天意和ゴールドについては、平成20年8月以降と判断するのが相当である。
(2)本件商標と使用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、活字体で表した「Virgin & Pink」の文字を横書きしてなるものである。そして、本件商標は、「Virgin」、「&」、「Pink」の各文字の間に1文字程度の間隔があるとしても、これらの文字は、同一の書体をもって外観上まとまりよく表されているばかりでなく、これより生ずると認められる「ヴァージンアンドピンク」又は「バージンアンドピンク」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。さらに、本件商標を構成する「Virgin」の文字部分は、「処女、おとめ」などを意味する英語として、「&」は、「?と」を意味する英語「and」を表す記号として、また、「Pink」の文字部分は、「桃色」などを意味する英語として、いずれも我が国においてよく知られているものであるから、「Virgin」と「Pink」の各語を「&」で並列的に結合することにより、「おとめと桃色」なる意味合いを想起することはさほど困難を伴わないが、「おとめと桃色」なる意味合いは、親しまれた熟語的意味合いを有するものではなく、観念上判然としないものであるから、造語を表したと理解されるというのが相当である。そうすると、本件商標は、構成全体をもって、一体不可分の造語を表したと認識されるということができる。
したがって、本件商標は、「ヴァージンアンドピンク」又は「バージンアンドピンク」の一連の称呼のみを生ずる造語よりなるものといわなければならない。
イ 使用商標1は、前記2(3)のとおり、「薬用ヴァージン&ピンク」又は「ヴァージン&ピンク」の構成よりなるものであるところ、「薬用」の文字部分は、本件使用商品が、「薬用化粧品」の範ちゅうに属する商品であることを表示するものであるから、自他商品の識別機能を有しない部分である。そして、「ヴァージン&ピンク」の文字は、外観上一体的に表されているばかりでなく、これより生ずると認められる「ヴァージンアンドピンク」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。さらに、「ヴァージン」は、「処女、おとめ」などを意味する英語の「virgin」を、また、「ピンク」は、「桃色」などを意味する英語の「pink」を、それぞれ片仮名文字で表記したものと容易に理解されるものであって、これらの語を「?と」を意味する英語「and」の記号である「&」で結合したものであるから、これよりは、「おとめと桃色」なる意味合いが想起されるといえるが、本件商標と同様の理由により、造語の一種を表したと理解されるというのが相当である。そうすると、使用商標1は、構成全体をもって、一体不可分の造語を表したと認識されるということができる。
したがって、使用商標1は、「ヴァージンアンドピンク」の一連の称呼のみを生ずる造語よりなるものといわなければならない。
ウ 使用商標2は、前記2(3)のとおり、「ヴァージンピンク」の文字よりなるものであるから、これより「ヴァージンピンク」の称呼が生ずるものである。また、使用商標2は、「処女、おとめ」などを意味する英語の「virgin」と「桃色」などを意味する英語の「pink」を片仮名文字で表記し結合したものと理解されるとしても、これらが一体的に結合されることにより、直ちに特定の観念が想起されるものとはいえないから、造語の一種を表したものと理解されるとみるのが相当である。
したがって、使用商標2は、「ヴァージンピンク」の一連の称呼のみを生ずる造語よりなるものといわなければならない。
エ 本件商標と使用商標との対比
(ア)本件商標と使用商標1
上記ア及びイによれば、本件商標と使用商標1は、「ヴァージンアンドピンク」の称呼を同じくする類似の商標というべきである。
(イ)本件商標と使用商標2
上記ア及びウによれば、本件商標は、「Virgin & Pink」の文字よりなるものであるのに対し、使用商標2は、「ヴァージンピンク」の文字よりなるものであるから、両者は、外観上類似するものとはいえない。
また、本件商標より生ずる「ヴァージンアンドピンク」又は「バージンアンドピンク」の称呼と使用商標2より生ずる「ヴァージンピンク」の称呼は、語頭において、「バ」と「ヴァ」の音の差異があるとしても、これらの音は、近似する音といえるから、称呼全体に大きな影響を与えるものとはいえないが、中間部において、「アンド」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから、それぞれの称呼を一連に称呼するときは、その語調、語感が相違したものとなり、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、本件商標と使用商標2は、いずれも造語よりなるものであるから、観念上比較することはできない。
したがって、本件商標と使用商標2とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似の商標といわなければならない。
オ 以上によれば、ニッセンらが、本件使用商品について使用する使用商標1は、商標法第53条第1項に規定する「登録商標に類似する商標」の使用と認めることができる。
しかしながら、使用商標2は、同項に規定する「登録商標又はこれに類似する商標」の使用と認めることができない。
(3)出所の混同
ア 引用商標及びその周知著名性等について
(ア)請求人は、昭和62年2月ころから、請求人商品について、「ヴァージンピンク」ないし別掲のとおり筆記体で表した「Virgin Pink」の文字よりなる引用商標を使用し、その結果、引用商標は、遅くも平成元年6月ころまでには、請求人らの商品表示として需要者の間に広く認識されるに至っていた旨主張し、請求人商品の販売代理店が請求人商品を広告した事実を明らかにする証拠として、甲第5号証の1ないし18及び甲第8号証ないし甲第27号証を提出する。
甲第5号証の1ないし18及び甲第8号証ないし甲第27号証によれば、以下のとおりである。
a 東京都文京区本郷に所在のハイテクサービスは、1996年(平成8年)7月14日、同年7月30日、同年9月5日発行の「日本農業新聞」、1996年(平成8年)8月22日、同年9月17日、同年9月30日、同年10月23日、同年11月14日発行の「新潟日報」、平成8年10月23日発行の「農業共済新聞」、1996年(平成8年)11月21日発行の「山陽新聞」、のそれぞれに、「ボディの黒ずみで悩んでいませんか?」との見出しのもとに、「おなじみ、白く美しいお肌のための元祖『薬用ヴァージンピンク』がおかげ様で12周年を迎えました。」などと表示して、化粧品の広告をした。また、これら広告に掲載された化粧品の包装容器には、別掲のとおりの構成よりなる商標と同一の「Virgin Pink」の商標が大きく表示されている(甲5の1ないし10)。
b 大阪市浪速区幸町に所在のベルトゥリー・エンタープライズ(ベルス)は、1997年(平成9年)12月号及び1999年(平成11年)1月号「non・no」、1998年(平成10年)1月号「週刊女性」、同年2月号「ポポロ」、同年2月号「ブライダルノート」、1998年(平成10年)3月25日発行の「中国新聞」、同年3月31日発行の「産経新聞」、1999年(平成11年)5月号「MORE」に、「薬用ヴァージンピンク」、「ボディのくすみ・シミ・ソバカスをきれいにしませんか?」、「テレビ・ラジオでおなじみのベルトゥリーの『薬用ヴァージンピンク』」、「当社の商品は日本で初めて『薬用ヴァージンピンク』を開発したメーカーです。」、「いつもきれいでいたいなら『薬用ヴァージンピンク』」などと表示して、化粧品の広告をした。また、これら広告に掲載された化粧品の包装容器には、別掲のとおりの構成よりなる商標と同一の「Virgin Pink」の商標が大きく表示されている(甲5の11ないし18)。
c なお、請求人は、エムツウ及びリバティーが請求人の販売代理店であった事実を示す証拠として、平成2年から平成6年にかけて発行された女性週刊誌に掲載された広告の写しを提出するが、これらは、そのほとんどのものが不鮮明で、その記載内容や発行日等について判読することができないものであり、辛うじて「リバティー」や「ヴァージンピンク」の文字が判読できる程度ものである(甲8ないし甲27)から、引用商標の著名性を立証する証拠としてしては採用することができない。
(イ)前記(ア)で認定した事実によれば、「ヴァージンピンク」ないし「Virgin Pink」(引用商標)を付した化粧品が販売された事実は窺えるものの、これらの化粧品の広告は、平成8年から平成11年にかけてされたものであり、また、地方紙や女性週刊誌を中心にわずかに掲載された程度のものであるから、これらの広告をした事実を示す証拠のみをもってしては、引用商標が、請求人が販売代理店であると主張するハイテクサービス、ベルス、エムツウ及びリバティーの業務に係る商品を表示するものとして、平成元年6月ころまでに需要者の間に広く認識されていたと認めることは到底できないのみならず、使用商標1が使用され始めた平成20年6月(春)の時点及びその前後、使用商標2が使用された平成20年8月ころにおいても、需要者の間に広く認識されていたと認めることもできない。
また、上記広告には、請求人と関連づける記載は一切なく、他に、請求人商品に関し、請求人が関与したことを示す証拠は、製造年月日や販売時期、あるいは販売高などが明らかでない「ハイテク薬用ヴァージンピンク/ホワイトニングエッセンス(美容液)」(甲37の3及び4)及び平成11年2月末日以前に販売された「ヴァージンピンク エース(クリーム類)」なる商品(乙1)のみであるから、請求人が、昭和62年2月ころから、請求人商品について引用商標を使用した事実及び引用商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして、平成元年6月の時点において、需要者の間に広く認識されていた事実を明らかにする証拠はないというべきである。その他、引用商標が、平成元年6月の時点並びに平成20年6月(春)の時点及びその前後において、請求人らの業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた事実を明らかにする証拠は見出せない。
なお、請求人は、請求人商品が請求人によって開発された事実を証明するものとして、昭和60年10月7日付け化粧品製造品目追加許可申請書及び同年12月27日付け化粧品製造品目追加許可書(甲3)を提出するが、これらの書類は、販売名を「エレガンス ゼリー」とする「化粧水類」についてのものであり、また、化粧品製造品目追加の許可を受けた者は、「株式会社美光化学研究所」である。そして、当該「株式会社美光化学研究所」が請求人の委託製造会社であったことなど請求人との関係を示す証拠の提出はない。また、販売名を「エレガンス ゼリー」とする「化粧水類」が、請求人がいう「皮膚の汚れやしみ、色素の沈着を落とし美肌を保持する化粧用ジェル(薬用化粧品)」(請求人商品)と同一の商品であることを示す証拠の提出もなく、他に請求人が昭和62年2月ころから引用商標を付した請求人商品を製造販売したという事実を客観的に認めるに足る証拠は見出せない。さらに、販売名を「ヴァージンピンク」とする商品について、請求人名義による医薬部外品製造販売承認申請が承認された日付は、使用商標1の使用開始がされた平成20年6月(春)、使用商標2が使用された平成20年8月以降の平成21年2月18日である(甲1の6)。
したがって、昭和60年10月7日付け化粧品製造品目追加許可申請書及び同年12月27日付け化粧品製造品目追加許可書(甲3)は、請求人が請求人商品及びその元となったと主張する「エレガンス ゼリー」なる化粧品の開発・製造をしたという事実を裏付ける証拠として十分であるとはいえない。
(ウ)以上によれば、引用商標は、請求人らの業務に係る化粧品を表示するものとして、平成元年6月ころの時点並びに平成20年6月(春)の時点及びその前後において、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
イ 使用商標1と引用商標との類似性
使用商標1は、前記3(2)イの認定のとおり、「薬用ヴァージン&ピンク」又は「ヴァージン&ピンク」の構成よりなるものであって、その要部である「ヴァージン&ピンク」の文字より、「ヴァージンアンドピンク」の一連の称呼のみを生ずるものであって、特定の観念を有しない造語よりなるものである。
これに対して、引用商標は、前記第2の(2)イ(ア)及び(イ)のとおり、「Virgin Pink」又は「ヴァージンピンク」の文字よりなるものであるから、これより、「ヴァージンピンク」の称呼を生ずるものであって、使用商標2と同様の理由により、特定の観念を有しない造語よりなるものと認める。
そこで、使用商標1と引用商標とを比較すると、使用商標1と引用商標中の「ヴァージンピンク」は、中間部において、「&」の記号の有無の差異を有するものであるが、「&」の記号は、前記認定のとおり、「?と」を意味する接続記号として我が国においてよく知られているものであるから、該記号の有無の差異が両商標全体の構成に及ぼす影響は決して小さいものとはいえない。また、使用商標1と引用商標中の「Virgin Pink」は、上記差異に加え、片仮名文字で表されているか欧文字で表されているかの差異をも有するものである。
したがって、使用商標1と引用商標は、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上互いに見誤るおそれはないというのが相当である。
また、使用商標1より生ずる「ヴァージンアンドピンク」の称呼と引用商標より生ずる「ヴァージンピンク」の称呼は、中間部において、「アンド」の音の有無の差異を有するものであって、それぞれの称呼を一連に称呼するときは、該差異音により、両称呼全体の語調、語感が相違したものとなるから、互いに聞き誤るおそれはないというべきである。
さらに、使用商標1と引用商標は、いずれも造語よりなるものであるから、観念上比較することができない。
してみると、使用商標1と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似の商標といわなければならない。
ウ 使用商標2と引用商標との類似性
使用商標2は、前記3(2)ウの認定のとおり「ヴァージンピンク」の文字より、「ヴァージンピンク」の称呼のみを生ずるものであって、特定の観念を有しない造語よりなるものである。
これに対して、引用商標は、上記のとおり、「ヴァージンピンク」又は「Virgin Pink」の文字よりなるものであるから、これより、「ヴァージンピンク」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を有しない造語よりなるものと認める。
してみると、使用商標2と引用商標「ヴァージンピンク」とは、その外観、称呼及び観念を同じくする同一の商標であって、使用商標2と引用商標「Virgin Pink」とは、その称呼及び観念を同じくする類似の商標といわなければならない。
エ 出所の混同
上記アないしウ認定のとおり、引用商標は、使用商標1が使用され始めた平成20年6月の時点及びその前後、使用商標2が使用された平成20年8月ころにおいて、請求人らの業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。
なお、本件商標に類似する商標であって、ニッセンらが本件使用商品に使用する使用商標1は、引用商標と商標それ自体非類似の商標であるが、天意和ゴールドが使用する使用商標2と引用商標とは、同一又は類似の商標である。
そうすると、ニッセンが、平成20年6月(春)以降、天意和ゴールドが平成20年8月ころに販売した本件使用商品について、使用商標1を使用しても、その需要者をして、該商品が請求人らの業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあったと認めることはできない。
しかしながら、天意和ゴールドが平成20年8月ころに販売した本件使用商品について、使用商標2を使用した場合には、その需要者をして、該商品が請求人らの業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあったといい得る。
4 まとめ
以上のとおりであるから、ニッセンらによる本件使用商品(化粧品)についての使用商標1の使用は、引用商標に類似しないものであるから、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたと認めることができないうえ、ニッセンは、本件商標の通常使用権者とは認めることができないから、本件商標に係る通常使用権者として、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものとしたと認めることができない。
また、天意和ゴールドの使用商標2の使用については、引用商標と同一又は類似の商標といい得るものであるが、天意和ゴールドは、本件商標の通常使用権者とは認めることができないから、本件商標に係る通常使用権者として、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものとしたと認めることができない。
5 むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第53条第1項の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(登録第4157557号商標:引用商標1)


審理終結日 2010-02-04 
結審通知日 2010-02-08 
審決日 2010-02-23 
出願番号 商願平8-51788 
審決分類 T 1 31・ 5- Y (003)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 秀敏 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 井出 英一郎
鈴木 修
登録日 1997-10-24 
登録番号 商標登録第4073391号(T4073391) 
商標の称呼 バージンアンドピンク 
代理人 石川 幸吉 
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所 

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