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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 042
管理番号 1225021 
審判番号 取消2009-300356 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-03-26 
確定日 2010-09-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第3049121号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3049121号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、商標法一部改正(平成3年法律第65号)附則第5条第1項による使用に基づく特例の適用の主張を伴う出願として、平成4年9月25日に登録出願され、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定役務とする特例商標として、平成7年6月30日に設定登録されたものであるが、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号ないし第7号証(枝番を含む。ただし、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。また、「甲第○号証」の表示は、単に「甲○」と簡略表記する場合がある。)を提出した。

1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がない。したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁
(1)本件審判の請求の経緯
本件審判の請求は、請求人の適正な商標の使用に対し、本件商標の前権利者である株式会社日本ブレインウェア(以下「前権利者」という。)から本件商標を譲り受けた被請求人が、その商標権に基づき法的措置を取るとの警告状を発してきたことを発端とするものである。
この警告状に対処すべく、請求人は、自ら及び専門機関を通じ徹底的な商標使用調査を行い、本件商標が不使用であることを確信した上で,本権審判請求をした次第である。
(2)使用事実を立証する証拠について
ア 乙第5号証について
被請求人は、「乙第5号証は、前権利者の取引先であるCSJ Global社に対して発行された2007年5月31日付けの『PROFORMA INVOICE』(請求書)である。」と述べ、この書面は「国内の取引でいえば請求書に該当する書面である」と説明する。そして、乙第5号証の右上には、本件商標が付されていることから、これをもって指定役務に関する取引書類に登録商標が使用された事実を主張している。
ここで、乙第7号証中の上記「CSJ Global社」との取引情報を見てみると、その最終ページに以下のような記載がある(甲2)。
・注文書発行日「2007/5/18」
・あて先「CSJ Global」
・注文番号「CSJ-KSP-070518.1」
・品名「PX DVD-RW Firmware upgrade」
・金額(税抜)「3,000,000」
・見積番号「-(表示なし)」
・見積金額「-(表示なし)」
・見積発行日「-(表示なし)」
・納品書No「23NB7050701」
・納品書発行日「2007/5/7」
・受領書「空白(表示なし)」
上記の情報と、乙第5号証を照らし合わせた上で、差異点を考察すると、乙第5号証の「INVOICE No(請求書番号)」は空白であり、「DATE」欄には「May 31, 2007」との記載がある(甲3)。この空白の「INVOICE No」に、本来どのような番号が入るか考察するに、「株式会社フクガキ」(以下「フクガキ」という。)の見積書及び請求書(乙第8号証)を参考にしてみると、請求書番号として「24M03801」と記載されていることがわかる(甲4)。そして、この番号は、乙第7号証にある、フクガキとの取引情報によれば、「見積番号」に相当することがわかる。さらに、他の企業との取引情報をみると、「見積番号」と「納品書No」には、同一の番号が利用されていることがわかる。
これらを総合すると、前権利者は、その取引において、「見積番号」、「納品書No」及び「INVOICE No」について、全て同一の番号を用いていたことがわかる。
したがって、納品後、この請求書を発行したのであれば、乙第5号証の「INVOICE No.」には、納品書Noと同一の「23NB7050701」が、本来的には記載されているべきであるところ、「INVOICE No.」が空白である「PROFORMA INVOICE」が、果たして本当に取引において用いられた真正な書類であるか非常に疑わしいといえる。そもそも、一般的な企業取引において請求書番号が記載されていない請求書が発行されること自体、信じ難いというべきである。
また、乙第7号証中のCSJ Global社との取引情報によれば、注文書発行日が「2007/5/18」、納品書発行日が「2007/5/7」となっており、サービスが納品された後に注文されるという、整合性のないものとなっている。そして、乙第5号証における「DATE」欄には「May 31, 2007」との記載があることから、これらの日付について全く整合性がとれていないこともわかる。したがって、乙第5号証だけではなく、乙第7号証についても正確性・信憑性が非常に疑わしいと言わざるを得ない。
加えて、乙第5号証は、被請求人が主張するように、この「PROFORMA INVOICE」が、国内でいうところの請求書に相当するならば、国内における「請求書」と同様の書類であるといえる。しかし、乙第8号証には、どこにも本件商標が表示されていない(甲4)。これは、前権利者が、一般的な請求書等の取引書類については、本件商標を使用していなかったことを自白しているに等しい。
以上を総合すると、乙第5号証が真正な取引書類であると納得することは到底できない。特に、乙第5号証には、一定の箇所(例えば、「Brain」の文字、「PROFORMA INVOICE」の文字、「May 31,2007」の文字等)の印刷が不自然に惨んでいることがわかり、これらは何らかの書類を加工した形跡とも考えられる。このように、被請求人が証拠を偽造している可能性が存し、その他に提出された証拠の正確性・信憑性についても非常に疑わしいというべきであり、全ての証拠に証拠としての価値がないというべきである(「クリーンハンズの原則」最判昭和44.7.4等に同旨)から、乙各号証からは、登録商標の使用を立証することはできないというべきである。
なお、万歩譲って、仮に乙第5号証が真正なものであるとしても、この取引に関する役務の提供が日本国内で行なわれたことを立証する証拠はどこにもない。したがって、いずれにしても、乙第5号証には証拠価値はなく、本証拠から本件商標の使用を立証することはできない。
イ 乙第1号証について
乙第1号証の作成日や頒布の事実については、全く立証がされていない。したがって、乙第1号証は、前権利者の内部用として作成し、利用していたという可能性がある上、商標法第2条第3項第8号で規定する「役務に関する取引書類を頒布」したことを、これのみからは立証することはできないものである。以上より、乙第1号証は、証拠価値はなく、本証拠から本件商標の使用を立証することはできない。
なお、被請求人は、乙第1号証が「少なくとも・・2006年9月1日以降に作成されたものであることは客観的にも明らか」であることを立証するため、特許出願の公開公報を提出している(乙第2号証)。
しかし、乙第1号証は、一般的なワープロソフトを用いて、電子文書形式で作成されたものと見受けられる。当該会社紹介が、その内容を改ざんできない、又は、改ざんが困難であるような、外注したパンフレット形式で作成されているのであればともかく、このように電子文書形式で作成された書類については、被請求人は、本証拠提出の直前に、登録商標を当該会社紹介に表示させることも可能なのであるから、乙第2号証によって、登録商標の使用や証拠作成日を認定することはできないというべきである。したがって、被請求人が提出した証拠のみからは、乙第1号証の作成日を立証することはできず、これが本件審判請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に作成された事実も立証することはできない。
ウ 乙第3号証について
乙第3号証は、前権利者の事業内容の紹介を行なっているにすぎず、商標法第2条第3項第8号で規定する「広告」や「取引書類」に該当するものではない。また、指定役務である「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」との関係で使用されているものでもない。
さらに、乙第3号証の頒布の事実については全く立証されていない。それどころか、乙第3号証の右側上部には、「マル秘」の表示がされていることから、これが会社内部のみで利用されており、指定役務の提供を受ける者のために頒布されたものでないという事実を自白している。したがって、乙第3号証に登録商標を表示しても、商標法上の「使用」(商標法第2条第3項第8号)にも該当しない。
以上より、乙第3号証は、証拠価値はなく、本証拠から本件商標の使用を立証することはできない。なお、乙第3号証は、乙第1号証と同様、容易に後から改ざん可能な電子文書形式で作成されたと思われるところから、この表紙に記載の「平成19年8月」に基づいて作成日を認定することはできないというべきであり、乙第3号証が要証期間内に作成されたことは立証することはできない。
エ 乙第4号証について
乙第4号証は、乙第3号証(事業計画書)の評価等を行なっているものであり、その利用は会社内部のみであると考えられ、本件商標の指定役務の提供を受ける者が閲覧する性質のものではないことは明確である。
したがって、乙第4号証は、商標法第2条第3項第8号で規定する「広告」や「取引書類」に該当するものではなく、また、指定役務との関係で使用されているものでもない。
さらに、乙第3号証に「マル秘」が表示されていることに鑑みれば、乙第4号証が、会社内部のみで利用されており、指定役務の提供を受ける者のために頒布されたものでないということは明らかである。したがって、乙第3号証に登録商標を表示しても、商標法上の「使用」にも該当しない。以上より、乙第4号証は証拠価値がなく、本証拠から本件商標の使用を立証することはできない。
オ 乙第9号証の3ないし16について
乙第9号証の3ないし16によれば、確かに左上に「Brain」の表示を確認することができる。しかし、これらが表示されているウェブサイトの写しは、被請求人によるオリジナルのウェブサイトではなく、インターネットアーカイブである「Wayback Machine」を用いて表示されたものである(乙第9号証の1)。
被請求人は、「Wayback Machine」は、特許協力条約(PCT)における国際調査及び国際予備審査のガイドラインにおいて、ウェブサイトに掲載された公開情報の公開日を知るための技術的手段として採用されており(乙第10号証)、日付の認定においても一定の信頼を得ている旨主張する。
しかし、乙第9号証の3ないし16は、同一の頁上であるにもかかわらず、画面(画像)の表示が正常になされたものと、正常に表示されずにHTML言語で記述された代替テキストが表示されたものが混在しており(例えば、乙第9号証の3の2頁等)、「Wayback Machine」のシステムの正確性・信憑性は非常に疑わしいと言わざるを得ない。特に、同一の頁上において、ほとんどの画像が正常に表示されずに代替テキストとして表示されているにもかかわらず、頁の左側上部に「Brain」の画像だけが正常に表示されているものが存在する(乙第9号証の3の2頁等)というのは、アーカイブサイトの仕組みから見ても非常に不自然である。このように、部分的にウェブサイト上の画像(イメージファイル)が削除されていることから、元のウェブサイトに手が加えられた状態となっており、これらの複製が結果的に元のウェブサイトと同一性を保っていない以上、「Wayback Machine」の正確性・信憑性は否定されるべきものであり、その証拠価値はない。
さらに、乙第10号証からも明らかなように、PCTガイドラインにおいても、先行技術の公開基準時を知るために「考慮してもよい」、すなわち、「検討をする余地がある」と規定されているだけであり、これを参酌するかは裁量的なものにすぎない。つまり、PCTガイドラインの規定では、「Wayback Machine」がウェブサイトを完全な状態で保存していることを前提としてはいないし、ここで表示された保存日時を当該ウェブサイトにおける先行技術の公開基準時とすることも認めているわけではない。以上の理由からも、「Wayback Machine」を用いて表示されたウェブサイトを本件商標の使用証拠とすることは、その正確性・信憑性のなさからも妥当ではなく、乙第9号証の3ないし16は、すべて証拠価値がない。
仮に「Wayback Machine」の正確性・信憑性が認められたとしても、そもそも乙第9号証の3ないし16に表示されたウェブサイトが、被請求人によって作成・運営されていたものと認める証拠はないというべきである。すなわち、乙第9号証の1によれば、被請求人は「http://www.n-brain.co.jp」というURLを入力しているものの、このURLを被請求人が保有していた事実を立証するものがない。特に、我が国では「BRAIN」又は「ブレイン」という語を採用する企業は多いこと、また、本件商標は、破産したことに伴い所有者が変更されていること等を考慮すると、乙第9号証の3ないし16に表示されたウェブサイトが、本当に被請求人によって作成・運営されていたのか疑わしいというべきであって、このような理由からも、乙第9号証の3ないし16は、証拠価値がないものである。
また、仮に乙第9号証の3ないし16に表示されたウェブサイトが、被請求人によって作成・運営されていたと認められるとしても、以下のとおり、これらのウェブサイトに表示された「Brain」は、商標法上の登録商標の使用には該当しない。指定役務についての「登録商標の使用」というためには、指定役務である「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に関して行なう登録商標の使用でなければならないところ、乙第9号証の3ないし16をみると、必ずしも明確でないものの、被請求人は、乙第9号証の3の1頁目における「ソリューション事業」、同じく2頁目における「コンサルティング・ソリューション」の表示をもって、指定役務について登録商標を使用している旨を主張したいようである。
しかし、「ソリューション事業」や「コンサルティング・ソリューション」には、様々な内容のサービスが含まれるのであり、これらの表示だけではサービス内容がまったく具体的でなく、これに接する需要者は、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に関連する役務であるとは直ちに理解することはできないというべきである。
また、乙第9号証の3の3頁には、「通信制御」、「交通機関の安全運行システム」、「国内最大規模のスポーツデータベース」、「多種多様なサイト構築実績」等といったような、様々な表示がされているが、本ページにおけるこれらの表示だけでは、役務の提供を受ける需要者が、これを見ることで提供を受けることのできるサービス内容を具体的かつ明確に理解することができ、その取引の対価がどの程度必要であるかを把握することはできないというべきである。
すなわち、これらの表示は、具体的な役務の提供を目的とした広告とは言い難く、むしろ、単に、被請求人の営業内容や事業内容を宣伝することを主眼とした、被請求人自体の広告とみるのが相当である。
したがって、たとえ、これらのウェブサイトのページ上に登録商標の表示があったとしても、「指定役務の広告」について登録商標を「使用」しているとはいえないから、登録商標の使用とは認められないというべきである。
以上と同様の理由により、乙第9号証の4ないし16についても、これらは被請求人自体の広告であることから、「指定役務の広告」について登録商標を「使用」しているとはいえず、これらの証拠には、証拠価値がないといえる。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証(枝番を含む。ただし、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。また、「乙第○号証」の表示は、単に「乙○」と簡略表記する場合がある。)を提出している。

1 第1答弁
(1)被請求人と前権利者との関係について
本件商標は、前権利者のハウスマークとして長年使用されていた登録商標であり、前権利者の事業範囲の全てにおいて使用されていた。被請求人は、2008年4月30日付けで前権利者の事業を譲り受けたことに伴い、本件商標も前権利者から譲り受けたものであり、本件商標は、その指定役務について事業譲渡の直前まで前権利者により使用されていた。
(2)本件商標の使用について
ア 乙第1号証は、前権利者の2006年度版の会社紹介であり、前権利者の営業担当者が取引先に頒布していたものである。この会社紹介は、「第I部 事業戦略・事業概要」と「第II部 企業内容」の2部構成になっており、全ての頁の左上にハウスマークである本件商標が付されている。
「第I部 事業戦略・事業概要」の2頁に、事業構成として「ソリューション」事業が紹介されており、ICTソリューションの提供(企画提案から開発・運用・保守まで)を行なっていることを紹介している。
また、10頁に「ソリューション事業」と題して通信制御のファームウェア開発やデータベースの構築実績について具体的な事例と共に紹介し、11頁には、最新の開発事例の紹介が示されている。
なお、この会社紹介には作成日の記載はないが、現在出願中の特許のリスト(乙第1号証の15頁)に掲載されている特願2006-237386号「監視装置」の出願日が2006年9月1日と記載され、この日付については該当する特許出願の公開公報からも確認できることから(乙2)、少なくとも会社紹介は2006年9月1日以降に制作されたものであることは客観的にも明らかである。
イ 乙第3号証は、平成19年8月に作成された、前権利者の2007年度の事業計画書の要旨であり、提携会社に配布するための事業の成果と事業計画を紹介したパンフレットである。この事業計画書にも表紙及び各偶数頁の右下に本件商標が付されている。
この9ないし11頁には、「4.2 事業ラインナップ」と題して、ソリューション&開発事業の内容として、開発実績・収益及び事業戦略が紹介されている。
ウ 乙第4号証は、乙第3号証と関連する、前権利者の2007年度事業計画書に対する中身の検証・査定に関する報告書であり、乙第3号証に記載された内容の検証・評価を行っている。乙第4号証の3頁には、2007年10月後半から、潜在顧客、潜在資本・業務提携先などを訪問した訪問先及びミーティングの結果が掲載されており、2007年の事業計画書が関係各社に紹介・頒布されたことが示されている。また、11頁以降には、前権利者が2007年の時点においてソフトウェアの受託開発事業を行っていることが明示されている。
エ 乙第5号証は、前権利者の取引先であるCSJ Global社に対して発行された2007年5月31日付けの「PROFORMA INVOICE」(請求書)である。この書面は国際取引において、買い手からの注文書に対して、商品の明細や価格・請求先などの取引条件を明示した注文を承諾した旨を示す書面であり、国内の取引でいえば請求書に該当する書面である。
乙第5号証には、右上に本件商標が付されており、また、「DESCRIPTION OF GOODS」(明細)として、「PX DVD-RW Firmware Upgrade」の記載があり、シナノケンシ株式会社(以下「シナノケンシ」という。)のプレクスター(PLEXTOR)ブランド(品番コード:PX)のDVD-RWドライブのファームウェアのアップグレード作業を提供したことに対する請求であることが明示されている。
なお、シナノケンシが「PX」の品番コードをプレクスター(PLEXTOR)ブランドに使用していることは、乙第6号証(プレクスター製品の一覧)からも明らかである。また、乙第5号証の取引は、乙第7号証(見積及び納品伝票一覧)にも掲載されていることからも、前権利者がCSJ Global社に対して、記載の製品についてのアップグレード作業を日本において提供したことが窺える。さらに、乙第7号証については、例えば、フクガキに対して発行した「ホームページ作成費用」に関する見積書(乙8)の発行日及びその金額と乙第7号証の記載が合致することからみても、乙第5号証に示す取引の事実は確かなものといえる。
オ 乙第9号証の3ないし16は、インターネット・アーカイブ(http://www.archive.org)のウェブサイトである「Wayback Machine」より取得した前権利者の2006年4月15日から2007年12月30日までのホームページ履歴であり、乙第9号証の3ないし16のトップページの及びソリューション事業インフラストラクチャーなどを紹介するウェブページの左上には本件商標が付されている。
なお、「Wayback Machine」は、非営利団体であるインターネット・アーカイブ等により運営されているウェブサイトであり、1996年からの全世界のウェブページを収集しているサイトである。このサイトが提供する情報は、世界知的所有権機関の特許協力条約(PCT)における国際調査及び国際予備審査のガイドラインにおいて、「Wayback Machine」により公開されているウェブサイトの情報を、ウェブサイトに掲載された公開情報の公開日を知るための技術的手段として採用しており(乙10、154頁)、日付の認定においても一定の信頼を得ているウェブサイトといえる。
また、乙第9号証の3ないし16の各頁に記載のCopyright表示について、2006年のウェブページは、いずれも1984ないし2006の表示となっており、2007年、2008年のウェブページも同様に履歴の日付と表示年がいずれも合致している。また、乙第9号証の3ないし16の各ウェブページには、Topicsと題する新着情報が掲示されているが、これらの日付と履歴の日付についても合致している。これらの事実からすると本件「Wayback Machine」が示す乙第9号証の3ないし16が示す各ウェブサイトの収集内容及び日付は、十分に信用することができるものと認められる。
カ 乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証及び乙第9号証の3ないし16により、本件商標が審判請求登録前3年以内において「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に関する広告や取引書類に付されていることは明白であり、これらの事実は被請求人が示した上記以外の各証拠からも事実であることは明白であるといえる。

2 第2答弁
(1)弁駁書において、請求人は、本件審判を請求するに至った経緯について縷々述べているが、これらの主張はいずれも請求人の完全なる主観に基づくものであり、到底容認しがたいものである。
請求人が主張する本審判を請求した経緯に関し、以下のとおり答弁する。
ア 本件商標は、第1答弁書で述べたとおり、前権利者が人員を含む一切の事業の譲渡を被請求人に対して行ったことにより、商標法に規定する譲渡の本来の趣旨に沿って、営業を含む事業と共に被請求人に譲渡された権利である。そのため、前権利者は、事業上、被請求人に吸収され、被請求人の一部門として、前権利者の元社員により、事業の継続が行われている。
なお、この点について請求人は、前権利者が「倒産」したことにより、被請求人が本件商標を譲り受けた等と恣意的に曲解した主張を行っているが、前権利者は事業譲渡に伴い、休眠会社として存続しており、請求人が曲解したように前権利者の「倒産」により、清算手続を行った結果として被請求人に譲渡されたものではない(乙第11号証)。
イ また、本件商標は、前権利者によるIS09001の登録証やその更新審査の結果通知書(乙第12号証)といった第三者機関の認証からも明らかなように、前権利者は、本件商標に係る指定役務の事業を事業譲渡の直前まで継続的に行っている。なお、本件商標は、前権利者のハウスマークとしてその事業の全てに使用されていた登録商標であることは、第1答弁書でも主張したとおりである。
ウ 前権利者より事業譲渡を受けた被請求人は、事業の立ち上げが容易であった前権利者が保有していた商品について、本件商標を付して使用している。そして、前権利者の本来の事業であったものの、事業譲渡により一時的に中止していた役務「電子計算機用ブログラムの設計・作成又は保守」に関する事業の検討に際して、商標の使用状況の確認を行ったところ、多くの会社において本件商標が無断で使用されている事実を確認した。
これらの無断使用に対し被請求人は、これまで使用を行っていた事実を尊重し、商標の使用における共存共栄を図るべく、平和的解決を趣旨とする通知書を送付しており、既に3社の企業と被請求人の趣旨を理解し、合意に至っている。
しかしながら、請求人は被請求人からの平和的解決を趣旨とする申し出を一方的に反故にするばかりか、自己による商標管理の不備を棚に挙げ、刑法における業務妨害罪や弁理士会の懲戒請求など、-見するに桐喝とも取れる主張を繰り返しており、その主張の一環として本審判を請求するに至ったものといえる。
エ なお、請求人は、本審判請求後も商標法の手続きに沿って適切に対応しようとする被請求人に対し答弁を行わないように通告するなど、商標法の手続を蔑ろにするような主張を被請求人に対し行った上、本審判における弁駁書においても本来将来効を有する不使用取消審判について「本来不使用であるため無効」などと主張するなど、被請求人が事業承継を行い、使用意思を有するものの使用を行っていないことを殊更に取り上げ、何ら無効理由も有さない登録商標に対して、権利濫用などと主張すること自体、商標法制度を無視した主張に他ならないものであり、認められるべきものではない。

(2)第1答弁書及び証拠を補足すると共に、請求人の弁駁に対し、以下のとおり答弁する。
ア 乙第1号証について
乙第1号証について、『株式会社日本ブレインウェアが会社の内部用として作成し、利用していたという可能性が大いにある』とした上で、『商標法第2条第3項第8号で定義する「使用」の要件である役務に開する取引書類を「頒布」したことを立証できない』などと述べている。
しかしながら、本来、「会社紹介」という書類は、その会社の理念や事業内容を営業先や顧問先や融資先等、取引関係を有する関係各社等に広く示すための書面である。この乙第1号証も同様に、「会社紹介」という性質上、前権利者である株式会社ブレインウェアの事業戦略や事業内容等の会社の実像を明瞭に示すことで、前権利者の企業理念等の会社の宣伝・広告を目的とする書類であり、取引書類の類ではない。そして本件商標は、前権利者のハウスマークであり、会社紹介においてソフトウェアの開発事例を紹介する記載(乙第1号証の10頁及び11頁)は、そのまま本件商標の役務「電子計算機用ブログラムの設計・作成又は保守」の広告に該当するものである。
また、前権利者は、ソフトウェア開発企業であり、メール等による通信手段により書類の受け渡しが頻繁に行われるところ、メールなどの電子媒体による頒布が可能なように、電子データにより作成されたものを頒布している。また、乙第13号証の1のように、印刷会社に外注して作成したバンフレット形式の会社案内も頒布している(乙第13号証の1及び2)。なお、このパンフレット形式の会社案内は、乙第13号証の3に示されるように、作成に多額の費用がかかるため、一度作成するとそのバンフレッットを全て頒布しなければ、パンフレットの改訂が事実上困難であることから、改訂がされることのない会社の理念の他、メイン商品の紹介や実績等、普遍的な情報を掲載することが一般的に行われている。一方、改訂が行われることが多い会社概要や会社の沿革などについては、別途印刷したものをパンフレットに同封して頒布している。なお、乙第13号証の1のパンフレットの最終ページには差込用のポケットが設けられており(略台形状の部分)、前権利者は、乙第13号証の2の会社概要などの情報が掲載されている書面を同封して頒布している。なお、この乙第13号証の2の書面には情報が更新されることの多い会社概要や加盟団体、会社沿革、会社所在地が掲載されており、書面の右下には、更新された年月日が表示されている。
そして、この乙第13号証の1のパンフレットの表紙と裏表紙の右下部分にハウスマークである本件商標が付されている。また、2頁目のシステムソリューションの部分に「・・最適なITソリューションの提供(企画・提案から開発・運用・保守まで)および・・・プラットフォーム事業に関連するシステム構築を含むソリューションの提供をメインに展開します。」と記載されており、7頁以降には、これまでの「ソフトウェアの受託開発」の実績が具体的事例として記載されており、これらは「ソフトウェアの開発事業」に関する宣伝・広告であるといえる。
さらに、「会社案内」は、ダイレクトメールのように一度に大量に頒布されるものではなく、数年に亘って同じものを継続的に頒布するものである。乙第13号証の1における会社案内は、乙第13号証の3に示されるように平成17年7月に5000部印刷されたものであるが、前権利者が事業譲渡を行うまで継続的に乙第1号証の会社案内と同様に取引先に限らず、顧問先や融資先など関係各社等に対しても広く頒布することで、関係者に対して会社の紹介を行っている。
このことは、乙第13号証の2の右下には、「平成19年10月1日現在」と記載されていることから、少なくとも平成19年10月頃に頒布されていたことが明らかである。また、労働派遺業の紹介を受けるに際して、前権利者の会社の事業内容を知らせるため、乙第13号証の1及び2を広告的目的で頒布している事実が乙第14号証の1の送付状及び乙第14号証の3のメール文章からも明らかにされている。なお、これらの送付状は乙第14号証の2に示されるように2006年5月29日に作成されたものである。
したがって、乙第1号証及び乙第13号証の1等の会社案内を頒布する行為は、いずれも商標法第2条第3項第8号に該当する行為であり、これらの会社案内は、本審判請求登録日前3年以内に頒布されていたことは明らかである。
イ 乙第3号証
乙第3号証について、請求人は『乙第3号証の事業計画書は、商標法第2条第3項第8号で掲げる「広告」や「取引書類」に該当するものではない。』と述べている。
そもそも、事業計画書とはその企業の情報を開示するための書面であり、主にその企業の将来の展望や戦略を株主や銀行などの融資先やパートナーを希望する企業に対して開示するための書面である。また、事業計画書はその性質上、将来における事業展開を開示した書面であるため、いわゆる営業秘密に属する書面であるといえる。そのため、事業計画書を開示する際には、秘密保持契約を結んだ上で、開示されるものであり、マル秘の表示を行うことで情報を管理することは当然に行われるべきものである。
このように、自社の事業戦略を開示し融資先や取引先に協力を受けることを目的として作成される事業計画書は、取引の対象となる企業や融資先に際して使用するいわゆる営業ツールとしての意味合いを有する書面であるといえる。また、「広告」といえるためには不特定人に一斉に提供される情報のみが「広告」に該当するわけではなく、個別に特定人に開示される情報であっても、それが広く開示され、何らかの形で取引を誘引するものであれば、広告に該当するものであるといえる。
そして、乙第3号証の各ページには出所を示す本件商標が表示され、また、コンピュータ通信技術の開発に関する事業の実績(乙第3号証の9頁)が記載され、また最終ページには「是非当社へ一度ご来訪ください」との記載があることに鑑みれば、乙第3号証は、請求人が主張するような『会社内部にのみ利用されている書面』でないことは明白であり、またその記載内容から指定役務「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」に関する役務を開示し、取引関係を形成するための宣伝・紹介が行われたことは明らかであるといえる。
なお、乙第3号証については、乙第15号証の1における、2007年9月5日に送付された事業計画書の送付指示のメール文書や乙第15号証の2に示される2007年5月23日に作成・送付された(乙第15号証の3参照)事業計画書の送付書面からも乙第3号証の書面が送付されていたことは明白である。したがって、乙第3号証の事業計画書を頒布する行為は、いずれも商標法第2条第3項第8号に該当する行為である。
ウ 乙第4号証
乙第4号証に関し、請求人は、乙第3号証について「その利用は会社内部のみで行われていると考えられ、本件登録商標の指定役務である『電子計算機のブログラムの設計・作成又は保守』というサービスの提供を受ける者が閲覧する性質のものではない」と述べている。
この点、請求人の真意を測りかねる点もあるが、乙第4号証は、乙第3号証の事業計画書に関して第三者機関の検証を受けたものであり、乙第3号証を裏付ける資料である。そして、乙第3号証の事業計画書は、前述のとおりパートナーを希望する企業に対し、開示された事実、即ち取引関係を形成するための宣伝・紹介が行われたことを示すものである。また、請求人は「サービスの提供を受ける者が閲覧する内容ではない」と結論付けているが、商標法第2条第3項第8号の広告は、一般的な意味における広告と解すべきところ、直接的に取引関係を有する必要はないといえる。そして、その開示された内容が商品又は役務の取引関係を誘引するための内容であり、複数の特定人に開示する行為であれば、商標法第2条第3項第8号における「広告」に該当する行為であることは明白である。
エ 乙第5号証
乙第5号証について、請求人は「証拠を偽造している(刑法第159条第161条及び商標法第79条)極めて高い可能性が認められる」と主張して、自己の見解を纏々述べているが、いずれも前権利者である株式会社日本ブレインウェアとCSJ Global,lnc(以下、「CSJ Global社」とする)との関係や取引書類の経緯等を鑑みれば、何一つ不自然な部分はなく、乙第5号証は正式な取引書類であることは明白であるといえる。以下にその理由を詳述する。
i)株式会社日本ブレインウェアとCSJ Global社との関係
前権利者である株式会社日本ブレインウェアとCSJ Global社とは、開発メーカーと製造メーカーの関係にあり、前権利者が開発若しくは技術供与した製品をCSJ Global社が製造する関係にある(乙第4号証21頁)。また、CSJ Global社のCEOは、前権利者の取締役として活動しており(乙第1号証の会社概要14頁)、関係会社として緊密な取引が行われていた。
ii)両社の取引の実情について
また、両社間の受発注については、前権利者の担当者が韓国に出向き、その場で口頭による発注を受ける、そして作業が終了した後に形式上の見積処理を行う、との手続の流れによる処理が頻繁に行われており、緊密な関係だからこそできる手続処理による経理処理がなされていた。
そのため、書面による発注を介さずに納品を行い、その後、形式的な書面手続を行っているのが両社の間では通常の取引となっており、注文書発注日が納品書発行日よりも後になったとしてもなんら不自然なものではない。
iii)INVOICE No.について
また、INVOICE No.等については、前権利者である株式会社日本ブレインウェアが国内に関する見積書作成において使用していた見積を発番するシステム(見積発番システム)が外国案件に関しては、システム上適用されない仕様となっているためであり、乙第16号証の1に示されるように、CSJ Global社に発行されている他のINV0ICEについても、乙第5号証と同様のフォームとなっている。
なお、この乙第2号証をはじめとするPROFORMA INVOICEは、前権利者の仕訳帳に示される金額と一致することから(乙第16号証の2)、乙第5号証の書面が請求人の主張する類の書面ではなく、正式に作成された書面であることは明らかである。
iv)本件商標について
さらに、請求人は、被請求人が提出した甲第4号証(乙第8号証)等の国内における請求書には本件商標が付されていないにもかかわらず、乙第5号証については、本件商標が付されていることを指摘している。
しかしながら、前権利者は、乙第17証の1ないし21に示されるように本件商標を付した請求書も発行しており、請求人の主張は失当であるといえる。
V)役務の提供について
乙第5号証について、請求人は、「この取引に関する役務の提供が日本国内で行われたことを立証する証拠はどこにもない」と主張する。ここで、乙第5号証に記載されている明細には「PX DVD-RW Firmware Upgrade」と記載されているが、ここで「Firmware」とは、「電子機器に組み込まれたコンピューターシステムを制御するためのソフトウェア」(乙第18号証)である。即ち、乙第5号証において提供されている役務は、乙第6号証で示すプレクスター(PLEXTOR)製のDVD-RW製品を制御するソフトウェアのアップグレード(更新・改良作業)であり、これは「ソフトウェアのプログラムの更新(保守)」に該当する役務となる。
また、日本国内において提供した役務に関して日本国内で発行されたPROFORMA INVOICE(取引書類)を頒布する行為は、商標法第2条第3項第8号の役務に関する取引書類に標章を付して頒布する行為に該当することは明白である。
オ 乙第9号証
乙第9号証について、請求人は「同一ページ上にあるにもかかわらず、画面(画像)の表示が正常になされているものと、正常に表示されずにHTML言語で記述された代替テキストが表示されているものが混在しており、当該『Wayback Machine』のシステムの正確性・信憑性は非常に疑わしいといわざるを得ない」と述べている。
請求人の主張は、HPの表示において画像の一部が表示されていないことを根拠に信憑性が疑わしいと断じているが、それはウェブサイトの構造を理解しているものであれば、その事実を持って表示されている内容がなんら疑わしいものではないことは明白であるといえる。
そもそも、ウェブサイトの構造は、簡略化すると、HTML言語で記載されている部分と、画像ファイル等により表示される部分に大別される。
このHTML言語での記載は、ウェブサイト上の文字部分を表しており、画像ファイルにより表示される部分には画像部分を表しており、フォルダーの構造上、別々のファイルに保存されている。
この「Wayback Machine」の特徴は、自動的に全世界のウェブサイトを監視し、更新がなされたサイトの履歴を収集して保存している。しかしながら、何らかの原因により画像ファイルの居場所が特定できない場合に、その部分が欠落する(収集できない)場合がある。その原因としては、画像ファイルが複数にまたがっている場合などが考えられるが、HTML言語が格納されているHTMLファイルに関しては、確実に収集がなされており、その結果、欠落した画像部分にHTML言語に基づく、指示テキストが表示されている場合がある。
このことは、単に画像が収集できずに画像に欠落が出ることをもって、欠落した以外の部分の表示されている部分に関する信憑性を損なう理由にはならない。即ち、欠落した部分は見えないのみであって、有効な部分が改ざんされているわけではない。むしろ欠落した部分以外のテキスト部分や画象により、本件商標が指定役務について使用されているのであれば、十分その当時において本件商標は商標法第2条3項第8号により広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により使用されていたと判断されてしかるべきである。
また、請求人は、『これらの複製が結果的に元のウェブサイトと同一性を保っていない以上、この『Wayback Machine』の正確性・信憑性は否定されるべきものであり、証拠として価値はないものといえる」と主張する。
しかしながら、表示されたウェブサイトにおいて画像などが欠落していたとしてもその証拠能力はなんら否定されるものではないといえる。そもそも、商標法第50条が規定された趣旨は、商標法上の保護は商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であるところ、一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用も消滅するとしてその保護の対象がなくなると考えられることがら、規定されたものである。
そうであるならば、審判請求登録前3年の間に電磁的方法等により本件商標を使用されている事実が存在していることが推認できれば、その証拠における現在の表示状況と表示されていた当時における表示状況の同一性は必要ではない。そして、総合的に解釈して、本件商標が指定役務に使用されている事実が推認されれば、未だ蓄積されている信用は本件商標に化体していると考えるべきであり、一つの証拠中の一部の同一性が失われたからといって、それ以外の部分において本件商標が指定役務について使用されていることが明らかであるのであれば、本件商標は指定役務について使用されていたと見るのが商標法第50条の規定の趣旨からみて妥当なものといえる。
この点、平成16年(ワ)第10431号(乙第19号証)では、「米国NPOインターネット・アーカイブは、1996年、全世界のウェブの収集を開始し、2001年、100テラバイト、1600万サイト以上の巨大なコレクションとなった本件ARCHIVEの公開を「Wayback Machine」により開始したこと、世界知的所有権機関の特許協力条約(PCT)国際出願の国際調査及び国際予備審査の実務を規定するガイドラインは、ウェブサイトに掲載された公開情報の公開日を知るための手段の1つとして、本件ARCHIVEを挙げていることが認められる。」とした上で、審査経過の日付けを踏まえ、「本件ARCHIVEの示す収集内容及び日付は、十分信用することができるものと認められる。」と判示し、「Wayback Machine」において収集した日付を根拠として、その日付において掲載されているウェブサイトをその当時に表示されていた情報(公知文献)であると認定した上で、権利の無効を認定している。
本件商標は、乙第9号証のウェブサイトに掲載されている日付及び乙第1号証、乙第3号証、乙第4号証及び乙第13号証などの各証拠からも事実であることは明白であるといえる。
よって、乙第9号証に掲載されている内容は、いずれも商標法第2条第3項第8号における役務に関する広告に標章を付して電磁的方法により提供する行為であることは明白である。

3 まとめ
上述のように本件商標は、その指定役務「電子計算機のブログラムの設計・作成又は保守」について本件審判請求登録前3年以内に被請求人の前権利者が商標権者であるときに使用していたことが明らかであり、商標法第50条第1項の規定には該当しない。

第4 当審の判断
1 本件商標の権利者について
本件商標は、商標登録原簿の記載によれば、役務の区分及び指定役務を第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」とし、商標権者を東京都豊島区池袋2丁目38番2号に所在の株式会社日本ブレインウェア(前権利者)として、平成7年6月30日に設定登録されたところ、その商標権は、特定承継により、東京都港区芝公園一丁目6番8号(平成21年6月17日受付で表示の変更があった。)所在のアイピックス株式会社に移転され、その登録が平成20年10月3日にされている。

2 乙各号証について
(1)乙第1号証は、表紙に「会社紹介」と表示された印刷物であるが、その右下には「株式会社日本ブレインウェア」の文字が表示され、同右上には、本件商標と同一の構成態様よりなる「Brain」の文字(以下「使用商標」という。)とその下に小さく「NIHON BRAIN WARE CO.」と横書きされた文字とからなる商標が表示されている。なお、使用商標は、乙第1号証のいずれの頁にも表示されている。
同号証3頁は、「事業構成」の項目であるところ、「ソリューション」として、「当社が長年かけて培った技術・ノウハウを活用し、企業様の問題解決を図る最適なICTソリューションの提供(企画提案から開発・運用・保守まで)およびプロダクツ事業・プラットフォーム事業に関連するシステム絡みのソリューションの提供を積極的に展開しています。」と記載されている。
同号証10頁は、「ソリューション事業」の項目であるところ、ここには、「当社の価値創出のコアとなるのがソリューション事業です。コンピュータ通信技術をバックボーンに当社を創立したときから、制御・通信系に関する技術には高い評価をいただいております。その後、さまざまなシステム開発を通して、ネットワーク、データベースそして画像処理等に関する高度な技術・ノウハウを蓄積してまいりました。」と記載され、「インフラストラクチャー・テクノロジー」の説明として、「通信制御のファームウェア開発/当社のファームウェア開発部門は、センサ/ドライバ等の制御を含む広大な領域を視野に入れた通信制御・機器制御のシステム開発を行っています。・・」、「鉄道や飛行機・高速道路の安全運行システム/高速大量移動手段としての鉄道交通の安全運行システムは、なにより安全に人を運ぶことを第一の使命としています。当社は鉄道にとどまらず、飛行機や高速道路の安全運行システム(合流ポイントにおける信号制御)もファームウェア事業の基盤と位置づけています。」などと記載され、また、同11頁には、「最新の開発事例」が記載され、その下には、「コンサルティング・設計から運用までのトータル・ソリューションを提供」と記載されている。
同号証14頁は、「会社概要」の項目であるところ、「本社所在地」には、住所等のほか、「URL:http://www.n-brain.co.jp」の記載がある。
同号証15頁は、「特許・商標」の項目であるところ、そのうちの「現在出願中の特許(その2)」(16頁)には、「No.24」として、「出願番号:2006ー237386」、「名称:監視装置」、「出願日:2006/09/01」と記載されている。
(2)乙第2号証は、公開特許公報(特開2008-61066)であるところ、公開の対象となる特許に関する情報は、「出願番号:特願2006ー237386」、「出願日:平成18年9月1日(2006.9.1)」、「出願人:株式会社日本ブレインウェア」、「発明の名称:監視装置」等である。
(3)乙第3号証は、表紙にある横長長方形の枠内に、使用商標に緑色を施した商標(色彩を同一のものとすれば、使用商標と同一の構成よりなる商標。以下、使用商標には、この商標も含める。)、「株式会社日本ブレインウェア」及び「事業計画書」の各文字が表示され、該横長長方形の枠の下には、「平成19年8月」と、また、同右上には、赤色で「マル秘」が表示された印刷物である。
各頁には、欄外右上に、「株式会社日本ブレインウェア 事業計画書 2007」と、右下に、使用商標が表示されている。
同号証7頁には、「事業内容/事業概要」として、「当社は、1984年9月にソフトウェア開発企業として設立し、当初から今現在まで新幹線の列車制御、光多重化伝送を始めとした基幹システムのソフトウェアの受託開発を行って来ました。これが当社の技術ベースとなっている『ソリューション&開発事業』です。」などと記載され、同9頁には、「事業ラインナップ/ソリューション&開発事業」として、交通機関の安全運行システム開発等に関する説明が記載されている。
同号証34頁以降には、前権利者の開発した新製品などその事業に関する、2005年1月11日、同年8月1日、同年10月6日、同年11月1日のニュースリリースポータルサイト及び2006年8月10日、2005年10月5日、同年10月28日、同年12月5日の新聞掲載記事が紹介されている。
(4)乙第4号証は、2007年11月14日現在の「株式会社日本ブレインウェアの『事業計画書の中身の検証・査定』及び『事業別の知的財産の評価算定』に関する報告書」であるところ、その3頁には、「2007年10月後半から、(株)日本ブレインウェアの潜在顧客、潜在的資本・業務提携先あるいは共同事業者などを訪問し、そのニーズを探り、・・」と記載され、訪問先として、「(株)USEN」、「ヤフー株式会社」、「(株)サイバーエージェント」、「(株)インデックス」等が記載されている。また、11頁以降には、「SoftWareの受託開発事業」など前権利者の事業内容が記載されている。
(5)乙第5号証は、前権利者から韓国ソウルに所在のCSJ Global社に宛てた2007年5月31日付け「PROFORMA INVOICE」であるところ、「DESCRIPTION OF GOODS」欄には、「PX DVD-RW Firmware Upgrade」の記載があり、「UNIT PRICE」欄には、「\3,000,000」の記載がある。なお、乙第5号証の右上には、使用商標が表示されている。
(6)乙第6号証は、シナノケンシのホームページであるところ、同社の取扱いの「製品名」には、「PX-」を冠した記号が使用されている。
(7)乙第7号証は、前権利者の作成に係る「見積及び納品伝票一覧」であるところ、その最終頁(7枚目)の「24期(2007・H19/4/1?2008・H20/3/31)」の箇所に、「注文書発行日:2007/5/18」、「あて先:CSJ Global」、「注文番号:CSJ-KSP-070518.1」、「品名:PX DVD-RW Firmware Upgrade」、「金額:3,000,000」、「納品書No.:23NB7050701」、「納品書発行日:2007/5/7」の記載があり、また、その5行下には、「注文書発行日:2007/5/16」、「あて先:フクガキ」、「注文番号:20070501」、「品名:ホームページ作成費用」、「金額:399,000」、「見積番号:24M03801」、「見積金額:399,000」、「見積発行日:2007/3/23」、「受領書:2007/8/8」の記載がある。
(8)乙第8号証は、前権利者からフクガキに宛てた平成19年3月23日付け「御見積書」(No.24M03801)と平成19年7月26日付け「御請求書」(No.24M03801)であるところ、これらには、「件名:ホームページ作成費用」、「合計:\399,000(税込)」の記載がある。
(9)乙第9号証の1は、ウェブサイト「Internet Archive Wayback Machine」のトップページであり、同号証の2は、「Wayback Machine」において、前権利者のURL(http://www.n-brain.co.jp)より検索した結果の、2001年から2007年までの前権利者のホームページがインターネット上に掲載された履歴が示されているものである。
同号証の3ないし16は、同号証の2より検索された前権利者のホームページ履歴であるところ、これらの最上段には「株式会社日本ブレインウェア」の文字が表示され、その下には、使用商標が表示されている。
また、業務内容の一つに挙げられている「ソリューション事業」には、「通信制御/広大な領域を視野に入れた通信制御・機器制御のシステム開発を行っています。」、「交通機関の安全運行システム/鉄道交通の安全運行システムは、高速大量移動における安全第一を使命としています。当社は鉄道にとどまらず、飛行機や高速道路の安全運行システムもソリューション事業の基盤と位置づけています。」などと記載されている。
さらに、これらホームページに掲載された「Topics & NewsRelease」の最新年月日は、同号証の3が「2006/03/07」、同号証の4ないし6が「2006/08/01」、同号証の7が「2007/2/9」、同号証の8が「2007/02/22」、同号証の9が「2007/06/15」、同号証の10ないし12が「2007/07/03」、同号証の13が「2007/08/16」、同号証の14及び15が「2007/09/07」、同号証の16が「2007/11/28」である。
(10)乙第10号証は、世界知的所有権機関の特許協力条約における国際調査及び国際予備審査のガイドラインであるところ、「第11章 先行技術」の「開示の形式/インターネット上の開示」には、「信頼度のわからないウェブ・サイトで行われた開示」(153頁)について「このようなウェブ・サイトの例は、私人、民間団体(たとえばクラブ)、商業ウェブ・サイト(たとえば広告)等に属するものを含む。かかるインターネット開示が国際調査中に検索され、それが開示の本文において公表日の明示的な表示を与えない場合、機関は公表日を明らかにするよう試みるために自己の利用できる技術的手段の利用を考慮してよい。」、「かかる技術的手段は、以下のものを含む。(a)-省略-(b)-省略-(c)商業インターネット・アーカイビング・データベース(例えば、「Internet Archive Wayback Machine」)上で、そのウェブ・サイトに関して利用できる情報」と記載されている。

3 上記2で認定した事実によれば、以下のことが認められる。
(1)前権利者は、同人が2006年(平成18年)9月1日以降に作成したものと認めることができる「会社紹介」(乙第1号証)に使用商標を表示し、その業務に係る役務「ソリューション事業」について、「当社が長年培った技術・ノウハウを活用し、企業様の問題解決を図る最適なICTソリューションの提供(企画提案から開発・運用・保守まで)およびプロダクツ事業・プラットフォーム事業に関連するシステム絡みのソリューションの提供を積極的に展開しています。」などと記載して、広告をしたものと認めることができる。
さらに、平成19年8月に作成した「事業計画書」(乙第3号証)においても使用商標を表示すると共に、前権利者が提供する「ソリューション事業」について広告をし、2007年(平成19年)10月後半からは、上記「事業計画書」に基づいて、その取引関係企業に前権利者の提供に係る業務についての売り込み、すなわち、広告をしたことなどを認めることができる。
そして、前権利者の「会社紹介」及び「事業計画書」に記載された前権利者の行う「ソリューション事業」は、上記「当社が長年かけて培った技術・ノウハウを活用し、企業様の問題解決を図る最適なICTソリューションの提供(企画提案から開発・運用・保守まで)およびプロダクツ事業・プラットフォーム事業に関連するシステム絡みのソリューションの提供を積極的に展開しています。」との説明や、「通信制御のファームウェア開発」、「鉄道や飛行機・高速道路の安全運行システム」、「コンサルティング・設計から運用までのトータル・ソリューションを提供」等の説明によれば、本件商標の指定役務である「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の範ちゅうに属する役務と認めることができる。
(2)使用商標は、前記2(1)のとおり、本件商標と同一の構成態様よりなる「Brain」の文字が大きく表され、また、やや図案化された構成よりなることとも相俟って、看者の注意を最も強く引く部分であるといえるから、「Brain」の文字部分が独立して自他役務の識別機能を発揮する部分と認めることができる。
してみると、使用商標は、本件商標と外観上同視できる商標といえるばかりでなく、「ブレイン」の称呼及び「頭脳」等の観念をも同じくするものである。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということができる(なお、使用商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標であることについて、請求人は争うことを明らかにしていない。)。
(3)前権利者は、2007年(平成19年)5月頃に、韓国所在のCSJ Global社との間で、「PX DVD-RW Firmware Upgrade」に関する取引を行ったこと、また、2007年3月から同年8月にかけて、フクガキとの間で、「ホームページ作成」に関する取引を行ったことを推認することができる。
そして、「Firmware(ファームウエア)」もソフトウエアの一種であり、また、「ホームページ」もソフトウエアの開発(作成)を伴うことから、これらの作成に係る役務は、本件商標の指定役務の範ちゅうに属する役務と認めることができる(なお、この点に関し、請求人は争うことを明らかにしていない。)。
(4)前権利者は、2006年(平成18年)4月頃から2007年(平成19年)12月頃にかけて、そのホームページ上に、使用商標を表示する共に、前権利者の事業の一つである「ソリューション事業」について、「通信制御・器機制御」のシステム開発や、「交通機関の安全運行システム」の開発等を行っていることの広告をしたことを認めることができる。
(5)上記(1)ないし(4)を総合すると、前権利者は、本件審判の請求の登録(平成21年4月17日)前3年以内に日本国内において、「会社紹介」及び「事業計画書」並びにインターネット上において、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を、そのハウスマークとして表示すると共に、本件商標の指定役務である「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の範ちゅうに属する役務である「ソリューション事業」についての広告をし、また、要証期間内において、本件商標の指定役務の範ちゅうに属する役務についての取引を行ったことを優に推認することができ、これは、少なくとも会社紹介を頒布した結果であることが窺われる。
そして、上記前権利者の行為は、商標法第2条第3項第8号に規定する「商品若しくは役務に関する広告・・取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものである。

4 請求人の主張について
(1)請求人は、乙第5号証(PROFORMA INVOICE)が偽造された可能性が高いとして、
ア 乙第7号証に記載された他社との取引からみて、乙第5号証における「INVOICE No.」には、納品書No.と同一の「23NB7050701」が記載されていなければならないところ、空白であり、一般的な企業取引において請求書番号が記載されていない請求書が発行されること自体信じ難い。
イ 乙第5号証の「DATE」欄には「May 31, 2007」の記載があるところ、乙第7号証中のCSJ Global社との取引情報においては、注文書発行日が「2007/5/18」、納品書発行日が「2007/5/7」となっており、サービスが納品された後に注文されるという、整合性のないものとなっている。
ウ 乙第5号証には、本件商標が表示されているが、乙第8号証(フクガキ宛の見積書及び請求書)には、本件商標が表示されておらず、前権利者が、一般的な請求書等の取引書類については、本件商標を使用していなかったことを自白しているに等しい。
エ 乙第5号証には、一定の箇所(例えば、「Brain」の文字、「PROFORMA INVOICE」の文字、「May 31, 2007」の文字等)の印刷が不自然に惨んでおり、何らかの加工した形跡とも考えられる。
オ 仮に乙第5号証が真正なものであるとしても、この取引に関する役務の提供が日本国内で行なわれたことを立証する証拠はどこにもない、などと主張する。
(2)そこで、上記主張について、以下、検討する。
ア 乙第7号証に記載された前権利者と各社との間の取引に関する情報によれば、「見積番号」と「納品書No.」とが記載された取引は、全体の取引からみれば、さほど多いとはいえないが、その中において、「見積番号」と「納品書No.」とが一致しているものが多く含まれる。
しかし、乙第7号証に記載された取引には、「納品書No.」と「見積番号」とが一致していないものも存在するのみならず、「納品書No.」が記載されていないもの、「見積番号」と「受領書」発行日だけしか記載されていないもの等様々な取引形態があること、CSJ Global社との取引においては、「見積番号」、「見積金額」、「見積発行日」にいずれも空欄であり、見積りがされなかったとみるのが相当であること、などが認められることからすれば、請求人主張のように、「INVOICE No.」には、本来的に納品書No.と同一の番号が記載されるべきであるとは、必ずしもいうことができない。
また、たとえ「PROFORMA INVOICE」の「INVOICE No.」が空白であるとしても、これが取引一般からみて格別不自然なものとみることはできず、これをもって「PROFORMA INVOICE」が偽造されたものとみることはできない。
イ 「PROFORMA INVOICE」の日付は2007年5月31日であり、これが被請求人がいうように、請求書であるならば、納品書発行日である2007年5月7日の後に発行されたものであるから、取引の経緯としては何ら不自然なものではない。また、注文書発行日(2007/5/18)と納品書発行日(2007/5/7)との整合性についてみれば、例えば、乙第7号証の最終頁のCSJ Global社との取引情報の18行上の「シャープシステムプロダクト(株)」においても、注文発行日(2007/10/13)と納品発行日(2007/1/15)とが前後しているところ、前記3で認定したとおり、乙各号証を総合すれば、登録商標の使用事実を推認できるのであるから、これらは、いずれも単なる入力ミスと認められ、これをもって、乙第7号証全体が偽造されたものとみることはできない。
ウ 乙第8号証には、請求人主張のとおり、使用商標の表示はないが、見積書や請求書といった取引書類に商標を表示しないことは、取引上普通に行われていることであり、乙第8号証に本件商標の表示がないことが取引上格別不自然なものということはできない。
エ 乙第5号証が後から加工され、その印刷が不自然に惨んでいると認められるような箇所は、客観的にみて、どこにも存在しない。
オ 乙第5号証における「PX DVD-RW Firmware Upgrade」の記載中の「PX DVD-RW」は、日本企業のシナノケンシの製造、販売に係る製品(争いのない事実)であり、該製品について、ファームウェアのアップグレードなる役務の提供がされたのであるから、乙第5号証における取引は、日本においてされたとみるのが相当である。
カ 以上のとおり、乙第5号及び第7号証が偽造されたものと認めることはできないから、請求人の上記主張は、いずれも理由がない。
なお、付言すれば、前権利者は、使用商標をハウスマークとして使用しており、その下で、フクガキに対し要証期間内に、本件請求に係る指定役務に含まれる「ホームページの作成」なる役務の提供をしたと認め得るところである(当事者間に争いのない事実)から、この使用をもって、前権利者は、要証期間内に、本件請求に係る指定役務に含まれる「ホームページの作成」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたということもできる。
(3)請求人は、乙第1号証に関し、その作成日や頒布の事実について立証されていない旨主張するが、乙第1号証は、その目的からして、特段の事情がない限り、頒布されることが予定されているとみるのが自然というべきであり、また、乙第1号証が要証期間内に頒布されたと推認されることは、少なくとも乙第5号及び第8号証における取引が要証期間内にあったと認められることからも明らかである。
さらに、請求人は、乙第1号証は、後から容易に改ざん可能な電子文書形式で作成されたと思われるものであるから、ここに記載の内容を根拠にして、登録商標の使用や、証拠作成日を認定することはできない旨主張するが、ここに記載された事業計画内容や特許出願・商標登録出願の出願日・登録日などからみて、平成18年9月1日以降に作成されたとみることに何ら不自然なところは見出せない。
その他、乙第1号証の記載内容、作成日等について、改ざんされたものであると認めるに足る的確な証拠も見出せない。したがって、乙第1号証に関する請求人の上記主張は理由がない。
(4)請求人は、乙第3号証に関し、前権利者の事業内容の紹介をしているにすぎず、商標法第2条第3項第8号でいう「広告」や「取引書類」に該当するものではないし、また、本件商標の指定役務との関係で使用されているものでもない。さらに、乙第3号証の頒布の事実については立証されておらず、むしろ、「マル秘」の表示から、これが会社内部のみにおいて利用されており、指定役務の提供を受ける者のために頒布されたものでないという事実を自白している旨主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、乙第3号証が、2007年10月後半から、前権利者の潜在顧客、潜在的資本、業務提携先あるいは共同事業者などを訪問し、これら取引事業者に配布され、前権利者の事業計画の評価を受けていたことは、乙第4号証から推認することができるものであり、また、乙第3号証の7頁及び9頁等には、本件商標の指定役務の範ちゅうに属する「ソリューション&開発事業」として、前権利者の事業内容が記載されているところである。
したがって、乙第3号証の表紙に「マル秘」が表示が付されていたとしても、これは大々的に一般に公表するものではない、程度の意味合いを表すものということができるから、請求人の上記主張は理由がない。
さらに、請求人は、乙第3号証は、乙第1号証と同様、後から容易に改ざん可能な電子文書形式で作成されたと思われるものであるから、その作成日を認定することはできない旨主張するが、乙第1号証と同様、ここに記載された業務計画内容、34頁以降に添付されたニュースリリースや新聞記事の記載内容等から判断して、その作成日の信用性は高いというべきである。
(5)請求人は、乙第4号証に関し、本件商標の指定役務の提供を受ける者が閲覧する性質のものではないから、商標法第2条第3項第8号で規定する「広告」や「取引書類」に該当するものではなく、また、指定役務との関係で使用されているものでもない。さらに、乙第3号証が「マル秘」の表示がされていることを鑑みれば、乙第4号証が、会社内部のみにおいて利用されており、指定役務の提供を受ける者のために「頒布」されたものでないということは明らかである旨主張する。
しかしながら、上記(3)のとおり、乙第4号証は、乙第3号証が2007年10月後半から、前権利者の取引関係者に配布したことを明らかにするための証拠といえるから、これをもって、本件商標の使用の事実を直接的に立証するものではないことは明らかである。したがって、乙第4号証に関する請求人の上記主張は、当を欠くものである。
(6)請求人は、乙第9号証の3ないし16に関し、部分的にウェブサイト上の画像(イメージファイル)が削除されていることから、元のウェブサイトに手が加えられた状態となっており、これらの複製が結果的に元のウェブサイトと同一性を保っていない以上、この「Wayback Machine」の正確性・信憑性は否定されるべきものであり、その証拠としての価値はないものといえる。さらに、PCTガイドライン(乙10)の規定では、当該「Wayback Machine」が、ウェブサイトを完全な状態で保存していることを前提としてはいないし、ここで表示された保存日時を当該ウェブサイトにおける先行技術の公開基準時とすることも認めているわけではないから、被請求人が提出した乙第9号証は、すべて証拠としての価値がないものである旨主張する。
しかしながら、乙第9号証が全く信用性に欠けるものであるということはできないのみならず、乙第9号証のみによって、本件商標の使用の事実を立証する場合であればともかく、本件においては、他に本件商標の使用の事実を証明するする証拠が提出されているのであるから、提出された証拠を総合すれば、乙第9号証のウェブサイトにおける本件商標の使用も、信用性が備わっているものと認めることができるのである。したがって、上記に関する請求人の主張は理由がない。
また、請求人は、仮に「Wayback Machine」の正確性・信憑性が認められたとしても、そもそも乙第9号証の3ないし16に表示されたウェブサイトが、被請求人によって作成・運営されていたものと認める証拠はないというべきである旨主張し、さらに、「http://www.n-brain.co.jp」の保有に関し、我が国では「BRAIN」又は「ブレイン」という語を採用する企業は多いこと、本件商標は、破産したことに伴い所有者が変更されていること等などを関連づけて、被請求人によって作成・運営されていたのか疑わしいなどと主張する。
しかし、乙第9号証の3ないし16に表示されたウェブサイトは、被請求人によって作成・運営されていたものではなく、前権利者により作成・運営されていたものとみるのが相当である。このことは、2006年(平成18年)9月1日以降に作成された乙第1号証に、「URL:http://www.n-brain.co.jp」の記載がある(14頁)ことからも明らかであり、また、他に前権利者以外の者がいかなる利益をもって、前権利者の業務内容について、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を表示してインターネット上で広告をするのか、取引社会一般の通念からみて考えることはできない。したがって、請求人の上記主張は、前提において誤りがあり、失当である。
さらに、請求人は、乙第9号証の3ないし16における「ソリューション事業」や「コンサルティング・ソリューション」は、サービス内容が全く具体的でなく、これに接する需要者は「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に関連する役務であるとは直ちに理解することはできないから、指定役務の広告について登録商標を使用しているとはいえない旨主張する。
しかし、前記認定のとおり、乙第9号証の3ないし16には、「ソリューション事業」として、「通信制御/広大な領域を視野に入れた通信制御・器機制御のシステム開発を行っています。」、「交通機関の安全運行システム/鉄道交通の安全運行システムは、高速大量移動における安全第一を使命としています。当社は鉄道にとどまらず、飛行機や高速道路の安全運行システムもソリューション事業の基盤と位置づけています。」などと記載され、本件商標の指定役務の範ちゅうに属する役務であることの説明がされているのであり、上記役務の提供を受けるその需要者は、一般の消費者ではなく、これら役務を使いこなす、いわば専門家といえるから、これらの説明をもって、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に関連する役務の広告であると理解するとみるのが相当である。したがって、請求人の上記主張は、理由がない。
(7)なお、請求人は、本件審判の請求につき、種々述べ、また、被請求人が請求人に対してした使用権設定の契約の強要は、本件商標の不使用であるため本来無効である権利に基づき、使用権設定による使用料を不当に得ることを目的とする行為であるから、被請求人の行為は権利の濫用といえるものである旨主張する。
しかしながら、本件においては、前記認定のとおり、本件商標は要証期間内にその指定役務について前権利者により使用されていた事実を認めることができるのみならず、請求人主張の上記事実関係を認めることができる証拠の提出はない。
その他、請求人の主張はいずれも理由がなく、前記認定を覆すに足る的確な証拠の提出もない。

5 むすび
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において、前権利者が本件請求に係る指定役務中の「通信制御のファームウェアの開発・設計、鉄道や飛行機、高速道路の安全運行システムの開発・設計」等に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したと認め得るところである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)




審理終結日 2010-07-23 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-10 
出願番号 商願平4-228730 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (042)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 瀧本 佐代子 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 野口 美代子
小川 きみえ
登録日 1995-06-30 
登録番号 商標登録第3049121号(T3049121) 
商標の称呼 ブレイン 
代理人 浜田 廣士 
代理人 上原 空也 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 工藤 莞司 
代理人 正林 真之 
代理人 黒川 朋也 
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