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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない Y41
管理番号 1224977 
審判番号 不服2009-9363 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-30 
確定日 2010-09-16 
事件の表示 商願2006-104821拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「心理分析士」の文字を標準文字により書してなり、第16類及び第41類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成18年11月10日に登録出願されたものである。そして、指定商品及び指定役務については、当審における平成21年4月30日付け手続補正書により、第41類「人間関係・人生設計・カウンセリング・心理学に関する知識の教授,人間関係・人生設計・カウンセリング・心理学の教授に関する情報の提供,人間関係・人生設計・カウンセリング・心理学に関する研究会・座談会・セミナー又はシンポジウムの企画・運営又は開催,人間関係・人生設計・カウンセリング・心理学についての資格の付与のための資格試験の実施及び資格の認定・資格の付与並びに検定,話し方の教授,カウンセリング・相互カウンセリング・ヒプノセラピー(催眠療法)・心理療法および身体心理療法の施術の教授」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
(1)本願商標は、『心理を分析する一定の資格を持った者』程の意を認識させる『心理分析士』の文字を標準文字により書してなるものであるから、これを本願指定商品「印刷物」中上記照応の内容の商品に使用するときは、単に商品の品質(内容)を表示するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の該商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)本願商標は、『心理分析士』の文字よりなるところ、『士』の語は『一定の資格・役割を持った者』の意であり、国家資格や民間資格などがある中で、一般国民は末尾に『士』の付された名称に接した場合、弁護士、弁理士、税理士、司法書士、行政書士、不動産鑑定士等々を見るまでもなくその経験より一定の国家資格を付与された者を表していると理解することが多いというのが自然である。そして、かかる実情と本願商標の構成を併せて考えれば、本願商標がその指定商品・役務に使用された場合、それに接する一般公衆に対し、その標章が国家資格に基づいた者を表示したものと誤解させ、それらによって制作・提供されたものと誤信させるおそれがあることからすれば、本願商標は一般公衆を誤認させ、公の秩序を害するおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

3 当審の判断
(1)本願の指定商品及び役務は、前記1のとおり補正された結果、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する商品は、全て削除されたと認められるものである。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとした拒絶の理由は、解消した。
(2)末尾に「士」が付された名称について
本願商標は、「心理分析士」の文字からなるところ、その構成中の「士」の文字は「一定の資格・役割をもった者。」を意味する語(広辞苑第六版)であり、また、「三省堂五十音引き漢和辞典」(2004年2月10日発行)によれば、「特定の資格を公認された人。」等の意味を有する語で、その用語例として、「学士・修士・博士・栄養士・会計士・代議士・弁護士」との記載がある。ここにいう一定の資格に何が含まれるかについては、格別の制限が付されていないから、形式的には、国家資格(法令に根拠を有するもの)、民間資格(それ以外のもの)のいずれをも含み得ると理解できるものである。
しかして、末尾に「士」の付された名称の中で、一般国民にとって接する機会が多く、一般国民にとって知られている度合いの大きいものの多くは、弁護士、栄養士、公認会計士を始め、税理士、建築士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、行政書士など国家資格に係るものであり(なお、前記「代議士」は、衆議院議員の俗称であって、法令に基づく名称ではないが、衆議院議員が法令に基づく地位であることは明らかであるから、国家資格に係る名称であることに変わりはない。)、しかも、その状態が古くから続いてきていることは、当審において顕著である。
また、末尾に「士」の付された名称のうち、国家資格に係るものは、国家が、公共の福祉その他政策上の目的のために、国民の職業選択の自由を制限してでも、一定の能力を有すると判定された者に限って一定の地位ないし権限を付与する必要があると認めて、法令をもってそのように定めたものであり、そのために、国家資格に伴う地位ないし権限は、必然的に対世的かつ排他的なものとなる。これに対して、民間資格は、上記のような必要に基づくものでも、法令に根拠を有するものでもなく、対世的かつ排他的な地位ないし権限の付与を伴うものでもない。
このように、国家資格と民間資格とでは、一般国民に対して現実に果たしている役割の重要性において比較にならない相異がある。
これらの事情の下では、一般国民は、末尾に「士」の付された名称に接した場合、一定の国家資格を付与された者を表していると理解することが多いとするのが相当である。
(3)本願商標について
本願商標は、「心理分析士」の文字よりなるところ、その構成中「心理」は、「心の働き。意識の状態または現象。行動によって捉えられる心的過程をも指す。」を意味する語であり、「分析」の文字は、「ある物事を分解して、それを成立させている成分・要素・側面を明らかにすること。」等を意味する語(ともに広辞苑第六版)であることから、「心理分析士」の文字に接する需要者は、構成文字全体より、例えば「心の働きや意識の状態または現象などを分析するための資格を有する者」ほどの意味合いを、容易に理解、把握し、もって本願指定役務に係る業務を含む請求人(出願人)の業務の内容と関連づけて認識するとみるのが相当である。
ア ところで、我が国には、「心理学」に関する公的資格は存在しないものの、例えば、文部科学省の認可する財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験に合格し、認定を受けることで取得できる「臨床心理士」がある。
上記協会のウェブページによれば、「臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”です。日本には心の問題に取り組む職種として、心理カウンセラー、サイコセラピスト、心理相談員などの名称で呼ばれる人々がいますが、それぞれに明確な資格があるわけではありません。それに対して「臨床心理士」は、文部科学省の認可する財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験に合格し、認定を受けることで取得できる“心理専門職の証”となる資格です。・・・(中略)・・・臨床心理士に求められる専門行為とは、種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通していること。一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っていること。地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持していること。自らの援助技法や査定技法を含めた多様な心理臨床実践に関する研究・調査とその発表等についての資質の涵養が要請されることなどです。」また、「日本臨床心理士資格認定協会が設立され、臨床心理士の資格認定がスタートしたのは昭和63(1988)年です。平成21(2009)年4月30日現在で19,830名の「臨床心理士」が認定されています。」等との記載があり(http://www.fjcbcp.or.jp/)、なかでも、「種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通していること。」の記載がある。
イ また、文部科学省の認可する社団法人日本心理学会が認定する「認定心理士」がある。該学会のウェブページによれば、「日本心理学会認定心理士とは大学における心理学関係の学科名が学際性を帯びてきて、必ずしも『心理学』という、直接的名称が使われていない場合が多いことから、心理学の専門家として仕事をするために必要な、最小限の標準的基礎学力と技能を修得している、と日本心理学会が認定した人のことです。」等との記載がある(http://www.psych.or.jp/n_about1/index.html)。
ウ これらの実情等によれば、心理学に関する国家資格はないものの、公的機関が教育に関連して認定した資格が存在し、なかには文部科学省が認可する資格もあることからすれば、「心理分析士」の文字からなる本願商標に接する需要者は、これよりは、公的機関が認定した資格であるかの如く誤信する場合があることは、否定できないところである。
エ してみれば、一私人である請求人(出願人)が、本願商標をその指定役務に使用するときは、正しい資格名称及びその内容を具体的に認識していない一般の国民にとって、あたかも該役務が公的な資格を有する者の取り扱いに係る役務であるかのような印象を抱かせるものであり、一般世人をして誤信せしめ、他の国家資格等の制度に対する社会的信頼を失わせることにもなり、ひいては社会公共の利益に反するおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標が同法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-07-16 
結審通知日 2010-07-20 
審決日 2010-08-04 
出願番号 商願2006-104821(T2006-104821) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (Y41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 明訓 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 野口 美代子
田中 亨子
商標の称呼 シンリブンセキシ 
代理人 豊栖 康司 
代理人 豊栖 康弘 

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