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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y16
管理番号 1224883 
審判番号 無効2009-890123 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-11-16 
確定日 2010-09-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4827714号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4827714号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4827714号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第16類「雑誌,新聞」を指定商品として、平成15年3月20日に登録出願された商願2003-22312を原出願とする商標法第10条第1項の規定による商標登録出願(分割出願)として、平成16年2月12日に登録出願、同年12月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし第61号証(枝番を含む。)を提出した。

1 無効理由について
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。

2 請求の利益について
請求人及び請求人の関連会社は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとして、「都市名又は地域名」を示す語と「ウォーカー(Walker)」の語を結合した商標(以下「請求人使用商標」という。)を使用した雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を多数発行している。
そうすると、本件商標が使用された印刷物が市場で販売された場合には、その印刷物が請求人によって製造または販売されているものと需要者に誤認混同を与えることがあり、請求人の利益が阻害されるおそれがある。
したがって、請求人は、本件無効審判請求をすることについて利害関係を有する者である。

3 本件商標と請求人の商標及び請求人の主張の要旨
(1)本件商標の構成等について
ア 本件商標は、別掲のとおり、漢字の「函館」とその右側にカタカナの「ウォーカーズ」及び「マニュアル」の語を二段に横書きにした商標であって、第16類の商品「雑誌、新聞」を指定商品とするものである。この本件商標全体から生ずる称呼「ハコダテウォーカーズマニュアル」は、長音を含めて全体で13音と長く、常に一連に称呼されるものではない。また商標中の「マニュアル」の語は「手引き書」を意味する語であって、本件商標の指定商品との関係において、識別力を有する語ではない。さらに「マニュアル」の語は、「ウォーカーズ」の語の下に配置されるものであって、横に一連に記載された「函館ウォーカーズ」の語と「マニュアル」の語とは、分離して認識し得るものである。したがって、本件商標は、「ハコダテウォーカーズ」の称呼をも生ずる。
イ また、本件商標中の「函館」の語は、我が国の北海道南西部に位置する広く知られた都市名であり、「ウォーカーズ」の語は、「歩く人たち」「歩行者たち」又は「歩く人の」「歩行者の」を意味する英語の「WALKERS」又は「WALKER’S」の称呼を表す語である。また、上述したように「マニュアル」の語は「手引き書」を意味する語であって、本件商標の指定商品との関係において、識別力を有する語ではない。したがって、本件商標からは、「ウォーカーズ」(「歩く人たち」「歩行者の」等)の文字の前方に都市名が付されており、「函館という都市又は地域を散歩する人」という観念が生じる。
(2)請求人使用商標及び登録商標について
ア 請求人は、平成2年(1990年)3月、「東京」を中心とした首都圏の都市情報誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を創刊した。この雑誌は、「東京のテレビ番組、新作商品、映画、グルメ、ファッション、旅行、ドライブ等、さまざまな分野の情報を網羅して、雑誌を通して読者に提供する」というコンセプトで創刊されたものである。
雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」は、上記コンセプトが需要者のニーズに合致し、破竹の勢いで需要者の人気を獲得し、現在に至っている。
イ 請求人は、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を皮切りに、同様のコンセプトで「関西」を中心とした都市情報を提供する雑誌「関西ウォーカー/KansaiWalker」を平成6年(1994年)6月に発刊し現在に至っている。また、請求人は、平成6年(1994年)12月「ゲーム情報」に特化した情報誌「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」を発行した。これらの雑誌も好評を得た。これらの雑誌が好評を得たことから、請求人は「ウォーカー/Walker」の語を含む以下のような各種の情報誌(定期刊行物)を現在までに発行した。
・「マンスリーウォーカー/MONTHLY WALKER」
(平成7年[1995年]6月?平成8年[1996年]10月)
・「東海ウォーカー/TokaiWalker」
(平成8年[1996年)7月?)
・「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」
(平成8年[1996年]11月?平成12年[2000年]9月)
・「ワールドウォーカー/World Walker」
(平成9年[1997年]1月?平成10年[1998年]12月)
・「九州ウォーカー/KyushuWalker」
(平成9年[1997年]6月?平成21年[2009年]6月)
*後継誌として同月「福岡Walker」創刊
・「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」
(平成10年[1998年]3月?)
・「千葉ウォーカー/ChibaWalker」
(平成11年[1999年]6月?平成21年[2009年]3月)
・「神戸ウォーカー/KobeWalker」
(平成12年[2000年]6月?平成20年[2008年]3月)
・「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」
(平成12年[2000年]6月?)
・「大人のウォーカー」
(平成16年[2004年]9月?平成21年[2009年]4月)
・「ファミリーウォーカー/Family Walker」
(平成16年[2004年]3月?)
・「シネコンウォーカー」
(平成17年[2005年]10月?)
・「ハイウェイウォーカー/Highway Walker」
(平成17年[2005年]4月?)
ウ 上記のように、請求人は、雑誌等の媒体を通じて提供される情報の内容・テーマ・対象を明確に示す「『都市又は地域』又は『ゲーム』、『ファミリー』等の情報を示す語(以下、総称して「情報を示す語」という。)」と「ウォーカー/Walker」の語とを結合した「○○ウォーカー/Walker」という構成から成る商標を使用している。
そこで以下の説明では、「東京ウォーカー/TokyoWalker」のように「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」の語を結合させた商標を「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」と記載し、「ゲームウォーカー/Game Walker」のように「ゲーム」、「ファミリー」等の「都市又は地域」以外の情報を示す語と「ウォーカー/Walker」の語を結合させた商標を「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」と記載する。また、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標と「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標の両方を含めて総体的に表現する場合には、「○○ウォーカー/Walker」と記載する。
エ 上記実際に使用された商標の中でも、とりわけ「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」等の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌は、統一された書体で、内容も統一されてシリーズ化した雑誌として発行され、需要者・取引者に広く認識されている。
さらに、請求人は「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」のみならず、「○○ウォーカー/Walker」全体のブランド力を高めるために、定期的に発行される上記雑誌等の他に、流行や読者層の興味に沿ったタイムリーな情報を提供すべく、「○○ウォーカー/Walker」という構成から成る商標を使用した雑誌や、ムック、書籍、フリーマガジン等を種々発行している。
(3)請求人主張の要旨
ア 請求人は、本件商標の登録出願時及び査定時において、全国の主要都市を中心に「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」というコンセプトで統一された商標を使用した雑誌を、シリーズとして東京を含め8誌発行し、その部数は膨大な量になる(甲第3号証ないし甲第11号証及び甲第13号証ないし甲第15号証)。
イ これらの雑誌の増刊号・特別号・ムック・フリーマガジンの発行(甲第26号証ないし甲第29号証等)、雑誌の内容(甲第4号証ないし甲第12号証等)、インターネットヘの事業展開(甲第31号証等)、異業種の企業とのタイアップ(甲第32号証ないし甲第35号証)、その他種々の企画やイベント(甲第16号証及び甲第30号証)を行っていること等、請求人使用商標の使用実績から、需要者・取引者間において、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」からなる商標は、雑誌が対象とする都市名又は地域名によって「都市名又は地域名」の部分を変えて、シリーズ化された雑誌を発行し、またその関連で増刊号やムック・フリーマガジンを発行しているということは十分に認識されている。
ウ このことは、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌が全国で流通する全国紙(誌)や書籍において多数紹介されている事実(甲第37号証ないし甲第42号証)、また、第三者の調査結果・アンケート等からも、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が請求人の使用する商標であると広く認識されていることは明らかである(甲第36号証、甲第44号証ないし甲第46号証、甲第49号証及び甲第50号証)。
エ 上記の各事実から、請求人の「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が著名となり、かつ、これらの著名商標を含む複数種類の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用している実績から、あらゆる「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した印刷物は、請求人又はその関連する会社が発行する出版物であるとの認識が需要者・取引者に形成されている。
一方、本件商標は、日本でも有名な都市名である「函館」の語と「ウォーカー」の語を含む商標である。
したがって、本件商標の構成中に「都市名又は地域名」である「函館」の語と「ウォーカー/Walker」の語を結合した文字を含むことから、本件商標を使用した「雑誌、新聞」に接した需要者・取引者は、その出所について請求人の業務にかかわるものと誤認するおそれがある。

4 請求人商標の使用実績及び周知著名性について
(1)請求人による使用実績について
ア 出版物の発行・販売の事実及び部数等
(ア)使用の事実
甲第3号証の1ないし8は、請求人が公開する平成19年(2007年)10月のホームページの情報であり、その時点で、定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した定期刊行誌が8誌あることを示している。また、甲第3号証の9ないし16の2は国立国会図書館のデータベース(URL:http://opac.ndl.go.JP/)から検索した前記8誌に関する情報である。
なお、甲第3号証の1に示す「東京ウォーカー/TokyoWalker」は平成2年(1990年)3月の創刊から平成16年(2004年)5月までは週刊雑誌であったが、それ以降は隔週刊雑誌へと変更された。その他の甲第3号証の2ないし8に示す「関西ウォーカー/KansaiWalker」や「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」は、それぞれ創刊当初より現在に至るまで隔週刊雑誌である。なお、平成19年(2007年)3月より「神戸ウォーカー/KobeWalker」は隔週刊雑誌から月刊雑誌へと変更され、平成20年(2008年)3月に、また、「千葉ウォーカー/ChibaWalker」は、平成20年(2008年)3月に休刊した。「九州ウォーカー/KyushuWalker」に変えて、平成20年(2008年)6月に「福岡Walker」(月刊誌)を創刊し、「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」は、平成20年(2008年)3月に「北海道Walker」とロゴを変更し月刊誌として新装刊した。
これらの証拠より、本件商標の登録出願時及び査定時において、定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した定期刊行誌が8誌あることは明白である。
甲第4号証の1ないし甲第11号証の12(末尾の枝番含む)等に示されるように、請求人は「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」等の「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」の語とから構成される商標を商品「雑誌」について長年にわたって継続して使用している。
さらに、請求人の主張を立証すべく甲第4号証の2ないし19(末尾の枝番含む)に「東京ウォーカー/TokyoWalker」の雑誌、甲第5号証の2ないし9(末尾の枝番含む)に「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」の雑誌、甲第6号証の2ないし10(末尾の枝番含む)に「千葉ウォーカー/ChibaWalker」の雑誌、甲第7号証の2ないし11(末尾の枝番含む)に「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」の雑誌、甲第8号証の2ないし13(末尾の枝番含む)に「東海ウォーカー/TokaiWalker」の雑誌、甲第9号証の2ないし15(末尾の枝番含む)に「関西ウォーカー/KansaiWalker」の雑誌、甲第10号証の2ないし9(末尾の枝番含む)に「神戸ウォーカー/KobeWalker」の雑誌、甲第11号証の2ないし12(末尾の枝番含む)に「九州ウォーカー/KyushuWalker」の雑誌の記事を提出する。また、各雑誌の記事内容及び提出の趣旨を列挙した一覧として甲第4号証の1、甲第5号証の1、甲第6号証の1、甲第7号証の1、甲第8号証の1、甲第9号証の1、甲第10号証の1、甲第11号証の1を提出する。また、さらに実際に誌面に提出趣旨を記載した雑誌「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」及び「東京ウォーカー/TokyoWalker」の写しを甲第12号証の1及び2として提出する。
(イ)雑誌の販売部数に関するレポート(写し)及び印刷部数について
甲第13号証の1ないし14は、社団法人日本ABC協会から発行された雑誌の販売部数に関するレポート(1992年?2005年上半期)の写しである。甲第13号証の1ないし14には、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他4件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の各年における1号あたりの販売部数が記載されている。なお、販売部数とは、市場に流通した部数ではなく、実際に需要者に購入された部数である。
甲第14号証(枝番を含む)は、請求人が印刷会社から発行してもらった印刷部数等の証明書の写しである。これらの証明書から、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を印刷した部数は明らかである。
なお、「東京ウォーカー/TokyoWalker」の平成12年(2000年)以前の印刷部数証明は入手していないため、甲第15号証の2に示すように請求人会社内の管理データを元に平均印刷部数を記載した。
甲第13号証の1ないし14に示される、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他4件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の販売部数は、本件商標の出願日及び登録査定前、さらには登録後においても、雑誌(週刊誌、隔週刊誌及び月刊誌も含む)の販売部数としては非常に多いといえる。
また、印刷部数からも明らかなとおり、販売部数同様、大量に印刷された事実があることがわかる。したがって、この大量の印刷部数は、それだけ多くの「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が市場に流通し、かつ、需要者・取引者の目に触れる機会があることを示している。
さらに、他の雑誌と比較して販売部数が多いことは、発行頻度を考慮して、2週間に販売される部数を比較した場合であっても明白である。例えば、請求人の「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が8誌出揃った時期である平成12年(2000年)において『「東京ウォーカー/TokyoWalker(週刊):平均約17.3万部×2」+「関西ウォーカー/KansaiWalker(隔週刊):平均約30.1万部」+「東海ウォーカー/TokaiWalker(隔週刊):平均約160.7万部」+「九州ウォーカー/KyushuWalker(隔週刊):平均約16.7万部」+「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker(隔週刊):平均約17.5万部」=平均約115.6万部』と平均100万部を優に超えている。
加えて「千葉ウォーカー/ChibaWalker」が約13.4万部、「神戸ウォーカー/KobeWalker」が約14.4万部、「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」が約15.6万部ずつ、各号ごとに発行されており、多数の需要者を早期に獲得していたという事情を考えれば、総販売部数は150万部前後となり、全国誌である週刊誌「週刊朝日」(約31万部×2=約62万部)、「週刊新潮」(約51万部×2=約102万部)、「週刊ポスト」(約61万部×2=約122万部)よりもはるかに多い。
以上の比較からしても、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が大量に発行され、その結果、著名性を獲得していることは疑う余地がない。
(ウ)ウォーカークラブ等について
甲第16号証の1は、平成12年(2000年)6月から平成15年(2003年)4月まで実施された「WalkerClub」開始の告知の写しである。これは、全国の書店で他の地域の「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が購入できる書店である。なお、甲第5号証の3の4や甲第6号証の4の2等に示すように、この告知は雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「関西ウォーカー/Kansai Walker」等に多数掲載されている。
この「WalkerClub」に参加した書店は、甲第16号証の1等から示されるように全国で約400店舗存在し、これらの店舗には各地における有力な大型店が多数含まれている。
なお、上述の「WalkerClub」において、北海道では創刊間もない「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」が多くの書店で購入され、また他の地域の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌も購入されている事実が分かる。
(エ)「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌について
請求人は、雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を通して提供される情報の対象を「都市・地域」というカテゴリではなく、「ゲームの情報」や「家族向けの情報」のように情報を特定の内容に特化した「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等も本件商標の出願日より前から現在に至るまで多数発行している(甲第20号証ないし甲第25号証等)。
甲第20号証の1ないし甲第23号証の4等に示す、「月刊ゲームウォーカー/Game WALKER」、「マンスリーウォーカー/MONTHLY WALKER」、「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」(「マンスリーウォーカー/MONTHLY WALKER」の後継誌にあたる)、「World Walker」は、本件商標の登録出願日より以前に発行されていた定期的に発行される雑誌であった。
甲第20号証ないし甲第23号証に示す請求人が発行していた種々の「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌のうち、定斯的に発行していた雑誌については、印刷会社から印刷部数等の証明書を入手しており、上述したように、その写しを甲第14号証(枝番を含む)として提出する。
印刷部数証明から各号あたりの平均印刷部数は、甲第14号証に示したとおりである。
このように「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌もまた、数年にわたり刊行され、市場に流通していたということが明らかである。
これらの定期的に発行される「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌とは、提供される対象とする情報の内容・性質の違いはあるものの、ともに「情報を示す語」と「ウォーカー/Walker」の語を結合させた「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の一つとして雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」等と相互に関連性を持って発行されたものであった。
このことを裏付けるものとして雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」と「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」等の雑誌が相互に関連し合っている、若しくは「東京ウォーカー/TokyoWalker」から派生しているものであることを示す「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」等の雑誌の媒体資料を甲第17号証の1ないし3として提出する。また、「TokyoWalker」と「Game Walker」の商標が付されたノベルティグッズである巾着袋を写真撮影したものを甲第18号証として提出する。
これらの資料から、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」と雑誌「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」等は完全に別個独立した雑誌として事業展開されたものではなく、相互に関連して事業展開されていたことは明白である。
そして、相互に関連して事業展開を行っていたことから「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌内においても「東京ウォーカー/TokyoWalker」や「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」のような「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の広告(例えば甲第22号証の4の1に示したように雑誌「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」において雑誌「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」の広告)を積極的に掲載してきた。
また、「東京ウォーカー/TokyoWalker」等と合同の企画や合同の懸賞を企画したり、合同イベントを開催した際には、例えば、雑誌「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」内に、関連して「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が存在していることが認識できる記事も複数掲載されている(甲第22号証の6の2)。
以上より、定期的に発行される「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標が使用された雑誌を読んだ需要者・取引者は、その誌面において「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の存在を認識させる広告や記事が頻繁に掲載されていることから、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の存在を改めて認識することになる。すなわち「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標の使用実績もまた、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の著名性に寄与していることは明らかである。
(オ)増刊号、ムック、書籍、フリーマガジンについて
請求人は、定期的に発行している「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌以外でも、流行や読者層に沿ったタイムリーな情報を提供し、また雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の使用により形成されたブランド力をさらに高めるために、これらの雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジンを種々発行している。
甲第26号証(枝番を含む)は、定期的に発行している「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の増刊号・臨時号等の特別版として発行されたもののうち、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した増刊号・ムック・書籍・フリーマガジン等の出版物が複数種類存在していることを示す証拠である。これらの出版物の多くは全国的に流通しており、その一例は、甲第26号証の1、甲第26号証の15、甲第26号証の20の1、同2、甲第26号証の24の1ないし同3、甲第26号証の26、甲第26号証の37及び甲第26号証の42のとおりである。
これら甲第26号証(枝番を含む)に示す資料から、請求人が多種多様の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の出版物に使用していることが明白な事実としてわかる。
甲第27号証は、定期的に発行している「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の雑誌の増刊号・ムック・フリーマガジン等の出版物のうち、「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した増刊号・ムック・書籍・フリーマガジン等の出版物である。これらの出版物についても多くは全国的に流通しており、その一例は甲第27号証の5、甲第27号証の15の2、甲第27号証の23、甲第27号証の24の1及び2、甲第27号証の30の3及び甲第27号証の43のとおりである。
これらの増刊号やムック等の多くには、表紙に「TokyoWalker増刊号」、「KansaiWalker増刊号」、「TokyoWalker編集」等の表示が記載されている。これらの記載は、増刊号やムックに接した需要者・取引者に、定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の存在をより知らしめることになる。
さらには、甲第26号証に示した「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した増刊号・ムック・フリーマガジンが複数種類存在している事実は、あらゆる「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌・ムック・フリーマガジン等の出版物は請求人の製造・販売にかかる商品であると認識させることになっていることは明らかである。
したがって、これらの増刊号やムック等の発行実績もまた、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の著名性獲得に寄与していることは明らかであるとともに、疑いがない。
なお、これらの増刊号・ムック・フリーマガジン等についても一部は印刷部数証明を入手している(甲第14号証(枝番を含む))。
また、請求人の会社内の発注に関するデータベースから、印刷所に発注した数値を一覧にしたものを甲第15号証の3として提出する。この表の右の「NM_BUSU」の欄が製作部数である。例えば、本件商標の登録出願前のTokaiWalker増刊号「東海遊べるMAP」(甲第27号証の27)は9万部(甲第15号証の3の1枚目下段)、TokaiWalker増刊号「東海Onsen Walker」(甲第27号証の40の1)は8.5万部(同の1枚目下段)、KansaiWalker増刊号「広島ウォーカー/HiroshimaWalker」(甲第26号証の20の2)は、8万部(同5枚目上段)、KyushuWalker増刊号[’00九州温泉ドライブ](甲第26号証の22)は10.5万部(同6枚日の上段)、TokyoWalker増刊号「SoulWalker」(甲第26号証の24の1)は7.5万部(同7枚日の下段)、TokyoWalker増刊「東北ウォーカー」(甲第26号証の25)は11.5万部と大量の部数が印刷されている。
なお、甲第15号証の1及び3については、社内の管理用データということもあり、増刊号等のタイトルが必ずしも本件の書証で使用しているタイトルと一致した表記ではない場合があるが、いずれにせよ、甲第15号証の1及び3より、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標をはじめ、このような複数種類の「○○ウォーカー/Walker」の構成から成る商標が使用された出版物の部数の合計量は極めて大量と評価すべきである。
また、このほか、甲第28号証に示すように、「都市名又は地域名」以外の複数種類の「○○ウォーカー/Walker」も、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の関連で発行されている事実がある。
以上より、請求人が、複数種類の「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した増刊号・ムック・書籍・フリーマガジン等の出版物を、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と関連性を持って発行してきたことは明らかであり、その結果として、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標のブランド力を向上することに寄与していることも明白である。
(カ)他の企業や団体等との共同による出版物の発行について
請求人は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標のブランド力を活用したいと考える他の企業や団体等とともに「他の企業や団体等の商標」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせて、他企業や団体等の商品やサービスに関する情報を掲載した増刊号やフリーマガジンを多数発行している。
イ 宣伝・広告等の販売促進活動について
(ア)店頭等におけるキャンペーンについて
請求人は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌について需要者・取引者に広く認識してもらうために、雑誌の創刊時にはキャンペーンを戦略的、かつ、大々的に行ってきた。また、多くの需要者が見込める時期(例えば、入学時期や入社時期の4月やゴールデンウィーク等)や、雑誌創刊○○周年記念の時期も同様に戦略的、かつ、大々的にキャンペーンを行ってきた。
甲第30号証の1の1は、請求人が行ってきた書店の店頭や大学生協の店頭での販売の様子を示す写真の写しである。これらの写真からは、多数の需要者が、「TokyoWalker」や「Game Walker」等の「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を手に取る姿が写されていることがわかる。なお、これらの写真は平成4年(1992年)?平成9年(1997年)の間に請求人により撮影されたものである。日付等が明確でない写真も含まれているが、写真の内容に「創刊キャンペーン」や「創刊○○号記念」といった看板が出ていることから、その当時に撮影されたものであることは明らかである。
甲第30号証の1の2は、広告を担当した株式会社電通の報告による「北海道ウォーカー創刊プロモーション/関係モニター集」の写しである。北海道ウォーカーの創刊時期は、平成12年(2000年)7月である。この資料から、路上やデパートに大きな広告を掲げ、また街頭でキャンペーンを行っていることがわかる。
甲第30号証の1の3は広告を担当した株式会社電通九州の報告による「『九州ウォーカー』全九州県庁都市キャラバンキャンペーンパブリシティ一覧」の写しである。この資料から、株式会社電通九州は、「KyushuWalker」の創刊時に関して多数の新聞媒体に取り上げられたことを請求人に報告してきていることが明らかである。
以上の証拠は、請求人が「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を販売するために多額の費用をかけて大々的なキャンペーンを行ってきたことは明らかである。
(イ)各種媒体での広告等について
上述のように請求人は街頭でのキャンペーンの他に、新聞広告・電車の中吊り広告及びラジオやテレビなどの広告等によっても販売促進活動を行ってきた。
甲第30号証の2の1ないし21は、新聞に掲載された広告の写しの例である。特に甲第30号証の2の19、同17及び同20の広告は甲第30号証の5の10及び12に示す「Walkerフェスティバル」等のイベント開催の前に掲載されたものである。このような朝日新聞や読売新聞等の全国紙での全面広告掲載が、多大の費用を要すること及び多大の宣伝効果を発揮することは、証左するまでもなく明らかであろう。なお請求人はこれらの提出済みの証拠の他にも新聞広告を行っている。
甲第30号証の3(枝番を含む)は電車の中吊り広告の写しである。なお、甲第30号証の3の3、5及び7については、1枚目に全体図を表示し、2枚目・3枚目はその内容を拡大したものである。また、甲第30号証の3の12ないし19は電車の中吊り広告を行った事実を示す費用に関する資料の一部である。
甲第30号証の4の1及び2は、「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌のテレビ・ラジオの広告を行ったことを示すものである。
なお、甲第37号証の247、甲第38号証の15及び17等に示す新聞記事からもテレビ・ラジオで広告が行われたことは明らかである。
甲第30号証の4の3ないし5は、屋外広告を行ったことを示すものである。
これら各種媒体での広告等も、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が全国の需要者に周知・著名となったことを裏付けている。
(ウ)請求人が開催するイベントについて
請求人は創刊時だけではなく、販売促進活動の一環として定期的に「TokyoWalker」や「KyushuWalker」の商標を使用したイベントを各都市・各地域において開催している。また、これまで説明してきたように「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を各都市・各地域に出版していった結果、シリーズの雑誌として全国に拡大することになった。これに伴い、甲第30号証の5の2、7及び10ないし12に示すように、請求人は「全国ウォーカーまつり」、「Walkerミーティング」といった全国一斉のイベントを開催してきた。
甲第30号証の5の1ないし14に示す資料は、上述した各イベントの実施報告書である。報告書は、甲第30号証の5の4を除き株式会社電通により作成されたものである。また、甲第30号証の6の1ないし4に示す資料は、甲第30号証の5の2に示す「Walkers’ Festival ’98秋」の際に、各地のFM局と連動して行われた、ラジオの特別番組の実施報告である。
さらに、甲第30号証の5の11に示す「全国Walkerミーティング」においては、そのイベントタイトルにおいて、「Walkerまつり」の横に「東京ウォーカー/TokyoWalker」から「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」までの8つの商標が列記されており、甲第30号証の5の11の3枚目の上部のイベントの様子の写真(ラフォーレ会場の写真)からも明らかなように、これらの8つの商標がはっきりと表示されている。
したがって、「全国Walkerミーティング」に参加した全国の需要者・取引者は、請求人が「都市名及び地域名+ウォーカー/Walker」の商標という統一された名称の下で同種の雑誌をシリーズ化して複数発行している事実を容易に認識することができたのである。
甲第30号証の5の1ないし14の報告書から明らかなように、これらのイベントは非常に多くの企業からの協賛を得ている。協賛企業は、「ウォーカー/Walker」のブランドを冠したこのイベントに多くの観客(需要者)が集まることが確実であるからこそ協賛しているのであり、協賛企業の数も、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の著名性を裏付けるものである。
そのほか請求人は、甲第9号証の9の2に示すように「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の商標を冠して、ミスコンテストを行うなど販売促進活動の一環としてのイベントも行っている。
以上のように、請求人は、多大な広告費を投じて大々的なキャンペーンや種々のイベントを開催し、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を需要者・取引者、に広く認識させる活動を行ってきた。
ウ 雑誌の誌面について
上述したように「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌・増刊号・ムック・フリーマガジン等の出版物は、統一された名称の下、ひとつのまとまったシリーズとして全て同様のコンセプトで発行されている。それだけではなく「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が使用された出版物は、請求人と関係する商品であると需要者・取引者に確実に認識される記事が多数掲載されている。
(ア)創刊記事
新たな「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が創刊される際には、必ず既存の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌にその事実が掲載される。
例えば、甲第4号証の10の1や甲第23号証の3の1に示すように雑誌「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」が創刊された際には、「東京ウォーカー/TokyoWalker」や「ワールドウォーカー/World Walker」にその事実が掲載された。
(イ)合同による懸賞・試写会・企画・イベント開催等の告知について
上記の創刊時における記事の掲載のみならず、「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の各地域の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌には、「関西ウォーカー/KansaiWalker」等の他の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が存在していることを認識できる記事が多数掲載されている。
「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」等、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の発行に伴って、請求人は「東京ウォーカー/TokyoWalker」と「関西ウォーカー/KansaiWalker」等の複数の各雑誌で、合同のイベント・合同企画や合同懸賞を行っている(甲第4号証の10の4、甲第5号証の2の1、甲第6号証の2の1、甲第7号証の7の2、甲第8号証の7の3、甲第9号証の12の5、甲第10号証の4の1、甲第11号証の3の4等)。
そして、このようなイベントや企画が行われた際には、各誌において「『東京ウォーカー/TokyoWalker』『関西ウォーカー/KansaiWalker』・『東海ウォーカー/TokaiWalker』合同企画である○○が行われた」という記事が必ず掲載される。なお、上記の請求人は「全国ウォーカーまつり」、「Walkerミーティング」といった全国一斉のイベントを開催してきた事実も当然にして記事として掲載されている(甲第4号証の13の6、甲第6号証の3の4、甲第9号証の9の5、甲第11号証の5の4等)。
また、合同懸賞の際には「『東京ウォーカー/TokyoWalker』・『関西ウォーカー/KansaiWalker』・『東海ウォーカー/TokaiWalker』合同プレゼントクイズ」等の見出しで懸賞が行われている。
したがって、例えば雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」のみの読者も、他の地域に雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」と同種の情報を提供する「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌がシリーズとして複数存在していることを認識することができる。
(ウ)各記事のタイトルやミニ情報欄の名称について
請求人は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌において種々のコーナーを設けて情報を提供している。
請求人は、これら各記事のタイトルに頻繁に種々の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の表記を使用している。このような記事タイトルを設けるのはあらゆる「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の標章は、請求人が発行する雑誌等の商標となんらかの関連があるものであるということを、需要者に浸透させることを意図しているためである。すなわちこれらの記事タイトルの存在は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」のブランドイメージを雑誌等の内容と関連付けて需要者の記憶の中に形成していくために、請求人が積極的に採用してきた商標戦略の一つの表れである。
例えば、「東京ウォーカー/TokyoWalker」で渋谷の特集を掲載した際には「渋谷ウォーカー」(甲第4号証の8の1)、「東海ウォーカー/TokaiWalker」で東海4県の特集を掲載した際に「岐阜Walker」「三重Walker」「豊橋・浜松Walker」(甲第8号証の7の1)等がある。
請求人は、これらの記事タイトルやミニ情報掲載欄のコーナー名が商品「雑誌」についての商標として使用されていると考えているわけではない。
しかしながら、「東京ウォーカー/TokyoWalker」のように「ウォーカー/Walker」の語を含む雑誌タイトルが付いた雑誌内に、雑誌のタイトルと同様の構成から成る「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という記事タイトルを複数種類存在させるという構成を採ることにより、請求人は、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成からなる商標についての統一されたブランドイメージを需要者・取引者に形成してきたのである。
また、頻繁にコーナー名に種々の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の表記を使用するなどして、それを長年継続使用することにより、「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせた語が請求人の発行する「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌におけるコーナー名であると読者(需要者)に深く印象付けられていることは疑いがない。
そして、このようなコーナー名であっても、長年にわたって継続して使用されている場合には、仮にある地域の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という商標が使用された雑誌が発行された場合には、需要者・取引者は、実際に発行されている「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌及びその雑誌内に存在するコーナー名の名称を想起し、その都市又は地域の情報を特集した同種の雑誌、すなわち請求人が発行する雑誌が発行されたものと認識するのである。
事実、このようなコーナー名と同一の雑誌である「新宿Walker」が発行されていることは、甲第26号証等に示したとおりである。
以上のように、請求人の雑誌の記事内容や広告により、他の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が存在していることを認識させるとともに、あらゆる「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標は、請求人が発行する雑誌等の商標と何らかの関連があるものであることを、需要者・取引者に浸透させるために、雑誌の編集や構成について工夫を凝らしていることは明らかである。
エ 公式サイト「Walkers Net」「Walkerplus」について
請求人は、インターネット上のウェブサイトを出版物と連動させて、相乗効果を生み出すことを平成7年(1995年)頃から開始しており、現在、請求人は「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の公式サイト「Walkerplus」(旧名称「Walkerplus.com」)を各地域の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と連動し、また時には独立したサービスとして展開するに至っている。
このように現在のウォーカープラスの事業が開始される5年前から請求人は雑誌、ムック等の印刷物とウェブサイトの連動を図ってきており、ウェブサイトで発信する情報を印刷物に掲載し、又は、印刷物に掲載する情報をウェブサイトで発信するという事業展開を行ってきた事実がある。
そしてこれらの事業展開が評価され、上記及び後記(2)イのように記事として紹介されるのは、定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が使用された各雑誌が、それぞれの主要配布地域を中心に広く需要者に知られている雑誌であり、かつ、好評を得ていたから、すなわち情報誌として「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が圧倒的な知名度を誇っていたからに他ならない。
そして、この各雑誌の圧倒的な著名性も手伝って、「ウォーカーズネット/Walkers Net」や「ウォーカープラス/Walkerplus」の公式サイトも、広く需要者・取引者に知られるものとなっている。
広く需要者・取引者に知られる公式サイト「ウォーカーズネット/Walkers Net」や「ウォーカープラス/Walkerplus」が存在していることは、全国の需要者に「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌の存在を広く知らしめることに寄与している。
すなわち、甲第31号証からも明らかなとおり、これらの各サイトには、各地域に「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が複数存在していることを、需要者・取引者に認識させるように構成されている。
インターネットは地域を問わず日本全国からアクセスできるものである。例えば、九州在住の需要者・取引者が、九州地方を中心に広く配布されている雑誌「九州ウォーカー/KyushuWalker」に関する情報や九州地方におけるグルメ情報をウェブサイトから入手するために、「ウォーカーズネット/Walkers Net」や「ウォーカープラス/Walkersplus」にアクセスすると、そのサイト内において他の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌(例えば、「東京ウォーカー/TokyoWalker」)が存在していることを認識する。
これらの実績から、請求人が全国の地域情報を提供するサイト「Walkers Net」や「Walkerplus」を各地域の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と連動して、また時には独立したサービスとして展開してきたことは、全国の需要者に「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌の存在を広く知らしめることに寄与していることは明らかである。
オ 他社とのタイアップによる「ウォーカー/Walker」商標の活用について
これまで説明してきたように、定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌は、さまざまな情報を提供する雑誌として確固たる著名性を有していることは明らかである。
この著名性を利用して、請求人は、他の企業とタイアップを行い出版物のみならず、さまざまな分野の事業展開を行ってきた。
(ア)独立して流通する出版物について
定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の著名性を利用して、請求人は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標のブランド力を活用したいと考える他の企業や団体等とともに「他の企業や団体等の商標」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせて、他企業や団体等の商品やサービスに関する情報を掲載した増刊号やフリーマガジンを多数発行している。また、甲第29号証の1及び2に示すように、請求人自身もこの種の増刊号やフリーマガジンの発行について自社の宣伝媒体で広告している。
・甲第28号証の1
増刊号:「マックウォーカー/Mac Walker」(平成7年[1995年]3月発行)共同発行者(依頼人):アップルコンピュータ株式会社
・甲第27号証の17の1及び4等
増刊号:「アイモードウォーカー/imode Walker」(平成12年[2000年]4月発行)共同発行者(依頼人):株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
・甲第28号証の15
フリーマガジン:「ウォーカーズリビング/Walker’s Living/レオパレスマガジン」(平成13年[2001年]11月発行)共同発行者(依頼人):株式会社レオパレス21
・甲第28号証の45
フリーマガジン:「ローソンWalker」(平成17年[2005年]7月発行)共同発行者(依頼人):株式会社ローソン
・甲第28号証の49
フリーマガジン:「NEC soft Walker」(平成17年[2005年]9月発行)共同発行者(依頼人):NECソフト株式会社
・甲第28号証の53
フリーマガジン「オーロラモールジュンヌウォーカー/Aurora Mall JUNNU Walker」(平成17年[2005年]10月発行)共同発行者(依頼人):株式会社そごう(千葉店)
また、上述した「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」及び「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の出版物の中には、以下に示すように、他の企業や団体等との共同で(又は依頼を受けて)制作されたものもある。
・甲第26号証の28
増刊号「TokyoWalker/WindowsXP」(平成13年[2001年]12月発行)共同発行者(依頼人):マイクロソフト株式会社
・甲第26証の34
フリーマガジン「TokyoWalker/おサイフケータイスペシャル」(平成16年[2004年]7月発行)共同発行者(依頼人):株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
・甲第26号証の36の1ないし5
フリーマガジン「TokyoWalker/EZナビウォークスペシャル」他(平成16年[2004年]12月発行)共同発行者(依頼人):KDDI株式会社
・甲第26号証の38の1及び3
フリーマガジン「TokyoWalker/TYO SPECIAL」(平成16年[2004年]?平成17年2005年]季刊)共同発行者(依頼人):東日本旅客鉄道株式会社
・甲第26号証の42
フリーマガジン:「香港ウォーカー/HongkongWalker」(平成17年[2005年]9月発行)共同発行者(依頼人):香港政府観光局
・甲第26号証の46
フリーマガジン:「アキバウォーカー/AkibaWalker」(平成17年[2005年]11月発行)共同発行者(依頼人):秋葉原電気街振興会
・甲第26号証の48
フリーマガジン「TokyoWalker/旅」(平成18年[2006年]1月発行以降月刊)共同発行者(依頼人):株式会社エーティービー
・甲第28号証の6(枝番含む)
雑誌「Uniform Walker」(平成11年[1999年]2月以降年刊)共同発行者(依頼人):株式会社ボンマックス
・甲第27号証の6
増刊号「ドライブウォーカー/drive/Walker」(平成11年[1999年]8月発行)共同発行者(依頼人):本田技研工業株式会社
・甲第27号証の30及び甲第28号証の31(枝番含む)
雑誌「キャンパスウォーカー/Campus Walker」(平成12年[2000年]6月以降年刊)共同発行者(依頼人):各大学
・甲第28号証の18(枝番含む)
雑誌「就職ウォーカー/SHUSHOKU Walker」(平成13年[2001年]11月以降、年に2回発行)共同発行者(依頼人):株式会社ジェイ・ブロード
・甲第27号証の37
増刊号「Walker style」(平成14年[2002年]8月発行)共同発行者(依頼人):株式会社東急ハンズ他
・甲第28号証の33の1ないし4
フリーマガジン「トラベルウォーカー/Travel Walker」(平成16年[2004年]、平成17年[2005年]発行)共同発行者(依頼人):富士重工業株式会社
・甲第28号証の58
フリーマガジン「サイエンスウォーカー/Science Walker」(平成18年[2006年]4月発行)共同発行者(依頼人):文部科学省
・甲第28号証の60の1及び同2
フリーマガジン「ウォーカーダイジェスト/Walker digest」(平成16年に004年)11月?平成18年[2006年]11月まで月刊)共同発行者(依頼人):住友生命保険相互会社
・甲第28号証の62の1ないし4
フリーマガジン「ハイウェイウォーカー/Highway Walker」(平成18年[2006年]4月以降月刊)共同発行者(依頼人):ネクセリア東日本株式会社
なお、これらの出版物の発行部数については判明しているものについては甲第14号証及び甲第15号証等に示したとおりである。
これらの出版物の共同発行者(又は依頼者)を見ると、我が国の一般需要者に広く知られた有名企業や、政府機関等が多数含まれている。
すなわち上記証拠は、一般需要者に何らかの情報を提供するための媒体として、著名な「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の揺るぎないブランド力を利用して、自社の商品等に関する情報を提供しようと試みる企業や団体が多数存在していることを示している。
(イ)別冊付録・綴じ込み冊子等について
「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌には、別冊付録や綴じ込み冊子が含まれているものも多数存在する。
このような綴じ込み冊子や別冊付録の多くは、広告主からの要望で、雑誌とは別に、フリーマガジンとして、単独で需要者に配布される場合も多々ある。したがってこのような冊子は、実際に独立した紙媒体として広告主の商品等を宣伝・広告することに寄与している。
例えば、甲第28号証の8に示すフリーマガジン「Docomo Walker」などは、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの依頼を受けて作成され、請求人の雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」に綴じ込み冊子として頒布され、また、後に販売促進キャンペーンの際において、単独で配布されたものである。そのほか、甲第27号証の8に示す「KyushuWalker/TOYOTA SPECIAL」(トヨタ自動車株式会社からの依頼)、甲第28号証の73に示す「Konaka Walker」(株式会社コナカからの依頼)、甲第28号証の14に示す「Zaurus Walker」(シャープ株式会社からの依頼)、甲第28号証の50に示す「ZIPANG Walker」(宝酒造株式会社からの依頼)等も同様である。なお、甲第14号証の1の4枚日?5枚目から「Konaka Walker」について本誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の部数とは別にフリーマガジンとして印刷した部数についても証明されている。
このような綴じ込み冊子や別冊付録が広告主からの依頼により多数制作されている事実は、「一般需要者に何らかの情報を提供するための媒体として、著名な『都市名又は地域名+ウォーカー/Walker』の商標をはじめとする『○○ウォーカー/Walker』の揺るぎないブランド力を利用して、自社の商品等に関する情報を提供しようと試みる企業や団体が多数存在している」との主張をさらに裏付けるものである。
(ウ)ラジオ番組・テレビ番組への「○○ウォーカー/Walker」の商標の活用
請求人は、上記のインターネット事業の展開以外にも、出版物と他の媒体(ラジオ・テレビ等)と連動させて相乗効果を出すというマルチメディア戦略をとっている。すなわち、雑誌で圧倒的な販売部数を誇る「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を、雑誌やムック等の出版物の範囲にとどまることなく、ラジオ・テレビにおいても展開してきたのである。
また、請求人は、出版・放送等の分野以外の、他の業種の企業との提携も積極的に行っており、その事業展開にも多数、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を用いている。
請求人は、ニッポン放送とタイアップをして平成11年(1999年)10月に「サウンドウォーカー」というタイトルのラジオ番組放送を開始した。これは、首都圏の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の雑誌(すなわち「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」、「千葉ウォーカー/ChibaWalker」の3誌)と連動しており、各エリアのグルメ、ファッション、イベント情報を放送するものであった。さらにはウェブサイトとも連動していた(URL:http://www.soundwalker.com・ただし現在は存在していない。)。
この「サウンドウォーカー」は、甲第32号証の1に示すように大々的な記者会見も開かれ、また、人気の女性タレントがラジオのパーソナリティを務めることもあって、多数の新聞媒体や雑誌媒体に紹介された(甲第37号証の133、甲第37号証の171、甲第42号証の17他)。
この番組は平成11年10月から平成14年(2002年)9月末まで放送され、3年間という長期にわたって放送された番組である。長年の放送実績があることから、多数のリスナー(聴取者)が存在していたことは、容易に理解できる。
また、テレビ番組についても同様に、平成10年3月から数年にわたり、テレビ神奈川と共同で「横浜ウォーカーTV」を放送し(甲第33号証)、平成12年(2000年)4月には、甲第4号証の12の3に示すようなテレビ東京で雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」に掲載の情報や番組独自の取材による話題の者のマル秘ネタを紹介する情報番組「TV Walker」を放送した。
このように、請求人は雑誌とテレビやラジオなどの番組と連動させて「ウォーカー/Walker」という商標を含んだ事業を行ってきたのである。
さらに「サウンドウォーカー」や「TV Walker」以外でもラジオやテレビなどの番組において「○○ウォーカー/Walker」の語は活用されていることが甲第37号証、甲第42号証、甲第38号証等(枝番を含む)に紹介されているとおりである。
このように他の企業と連携し、かつ他のメディアを通じた事業展開が行えるのは、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標のブランド力が高いからこそである。
なお、これらの紹介されているもの以外でも、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標をインターネット上で活用してきたことが甲第37号証、甲第42号証等(枝番を含む)にも紹介されている。
(エ)その他の事業者との協賛・提携について
請求人は出版・放送・インターネット等の分野はもちろんのこと、それ以外の業種の企業とも積極的に提携を進め、さらにその提携後の事業展開でも「ウォーカー/Walker」の語を含む商標を使用してきた。
出版・放送・インターネット等の分野以外の業種の企業との「○○ウォーカー/Walker」の商標の活用事例は、甲第37号証、甲第42号証、甲第38等(技番を含む)に紹介されているとおりであり、例えば、東洋水産とのタイアップによる「東京ウォーカー/TokyoWalker」等のカップラーメンは、各地域の[都市名又は地域名+ウォーカー/Walker]の商標を使用した雑誌で広告がなされ、全国で販売されたことは甲第11号証の5の5や甲第10号証の2の2からも明らかである。すなわちこのようなタイアップを経て、請求人は「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という統一された商標を使用した同種の雑誌がシリーズ化されていることを全国の需要者・取引者に認識させてきたのである。なお、実際に販売された商品の写真を甲第35号証として添付する。
このように請求人が雑誌・ムック等の出版物とは異なる商品・役務に「ウォーカー/Walker」の語を含んだ商標を使用することができるのは、雑誌・ムック等の印刷物について請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標が非常に高いブランド力を有しているからに他ならない。
そして、このような印刷物以外の商品・役務に「ウォーカー/Walker」の語を含んだ商標を使用することにより、請求人の主たる商品である雑誌・ムック等の「印刷物」についての「○○ウォーカー/Walker」の商標、その中でもとりわけ「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を需要者・取引者にさらに周知・著名に認識させることができるという相乗効果を生み出している。
(2)第三者による著名性の評価(調査結果、新聞記事、アンケート等)
これらの使用実績の結果、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標に対して需要者・取引者にどのように認識しているかを示す各種調査結果や新聞や雑誌等に掲載された記事について説明する。
ア ビデオリサーチ雑誌閲読率ランキングについて
甲第36号証の1の1ないし7の3は、株式会社ビデオリサーチによる「雑誌閲読率ランキング」の写しである。
株式会社ビデオリサーチはテレビ番組の視聴率調査等で有名な、マーケティング調査全般を行う企業である。また、「閲読」とは、その雑誌がどれだけの人に読まれているかを示すものであり、例えばコンビニエンスストアで立ち読みした場合や知人から借りた場合のように、購人しなくとも読んでいれば「閲読している」ということになり、このような閲読する需要者のパーセンテージを示すものが「閲読率」になる。すなわち「雑誌閲読率ランキング」における閲読率は、需要者における雑誌の認知度を判断する上で一つの重要な指標となるものである。
具体的な閲読率の算出方法は以下のとおりである(甲第36号証の14・[2枚目?3枚目上段参照])。
この「閲読率」の調査対象は以下の7地区である。
東京30km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島
そして、例えば、「東海ウォーカー/TokaiWalker」であれば、名古屋地区だけが調査対象とされている。すなわち、名古屋以外の地域の調査対象者には、「東海ウォーカー/TokaiWalker」についての質問はされず、名古屋以外の地区に住んでいて「東海ウォーカー/TokaiWalker」を読んでいる人は、調査対象とならない。
一方、閲読率を算出する際には、全国7地区の合計を母数として計算されている。
仮に、全国7地区の推定人口が50000人であり、名古屋地区の推定人口10000人でその地区の有効回答者数が100人あった場合において、回答者1人は100人分の意見を代表することになる。
そして「東海ウォーカー/TokaiWalker」を読んでいると回答した人が有効回答者数100人中20人だったとすると、その回答者1人1人は100人分の意見を代表していることになるので、名古屋地区において「東海ウォーカー/TokaiWalker」を閲読した人数は2000人と計算される。そして閲読率を算出する際には、全国7地区合計を母数として計算されることになるため、閲読率は「2000/50000=4%」となる。
各地域の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌についても同様の計算方法が採用されているから、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌について全国での閲読率がわかることになる。
したがって、「Walker7地区合計」という数字は、上記のように定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌について全国での閲読率がわかっているので、それらを単純合計した数字になる。
以上より、「Walker7地区合計」という数字は上記の7地区において、定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を読んだことがある人数の割合を示す数字となる。
甲第36号証の1の1ないし7の3に、個人全体の「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌全体の閲読率のランキングが示されている。
「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌全体である「Walker7地区合計」は、第3位又は第4位という圧倒的に商い順位の閲読率を、平成11年(1999年)以来、7年間という長期にわたって、一貫して維持している。また、「Walker7地区合計」の閲読率よりも閲読率が高い雑誌は、7年間を通して、少年向けコミック詰である「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年マガジン」、そして会員誌の「JAFMate」だけであり、たとえば有名な女性週刊誌「女性自身」や写真週刊誌「FRIDAY」と比較しても、「Walker7地区合計」の閲読率は、非常に高いといえる。また、20代の女性では平成11年(1999年)から5年連続で首位を獲得している(甲第36号証の1の3、甲第36号証の2の3、甲第36号証の3の3、甲第36号証の4の3、甲第36号証の5の3)。
したがって、発行部数や販売部数という観点からだけではなく、需要者の閲読率という観点から見ても、請求人の「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌は非常に多数の需要者・取引者によって認知されていることは明白である。
さらに、このような調査対象が一地域のみであるにもかかわらず、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌の閲読率が、他の全国誌と同等の閲読率であることは、各地域においていかに多くの需要者・取引者が、定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を目にしているかを示すものである。(また、甲第36号証の8ないし14に示すように雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」、「千葉ウォーカー/ChibaWalker」等は、一地域内の調査であるにもかかわらず、全国誌と同等かそれ以上の閲読率を誇っていることは明らかである。)。
なお、甲第13号証の12の1に示す資料に示すように、同じくビデオリサーチの調査によれば「2002年の東海地区における20代男女」の「東海ウォーカー/TokaiWalker」の閲統率は「28.6パーセント」という驚異的な数値を示している。この数値から、閲読率の計算の分母を一地域とした場合には、各地域における「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌の閲読率はきわめて高いものとなることは必定である。
以上より、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌がそれぞれの主要な配布地域で非常に多数の需要者・取引者に広く読まれていることは明白である。
イ 新聞・雑誌に掲載された記事について
「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする[○○ウォーカー/Walker]の商標を使用した事業は、全国紙・地方紙問わず多数の新聞媒体にも取り上げられている。
これらの記事には上記(1)の項目で述べてきた請求人が主体的に「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の構成から成る商標を使用してきた事実及びその評価をさらに裏付けるものである。
なお、甲第37号証の1の1ないし甲第40号証の376は主に新聞雑誌記事データベース「日経テレコン21」収録の記事をプリントアウトしたものであり、甲第41号証の1ないし57は、請求人が保存していた新聞記事の写しである。
(ア)「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」に関する記事
「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の使用実績について中心に述べられた新聞記事として、甲第37号証の1の1ないし376、甲第41号証の1ないし57を提出する。
甲第37号証の2(朝日新聞・平成4年「1992年」5月21日)
「雑誌では全国調査にもかかわらず首都圏の娯楽情報を満載した『TokyoWalker』(角川書店)が同種の『ぴあ』を抜き1位。3位の『少年ジャンプ』(集英社)と4位の『AERA』(朝日新聞社)が200余票とほぼ肩を並べた。」
甲第37号証の67[枝番含む](日本経済新聞・平成8年[1996年]6月22日)
「新たに創刊されるのは角川書店の隔週刊『東海ウォーカー』。首都圏と関西で同様の雑誌を出し、後発にもかかわらず各地域のタウン誌・情報誌の中で最も多くの読者を獲得した実績を持つ。(中略)出版取り次ぎ最大手トーハンの出版科学研究所では『コンパクトに整理された情報を求める読者ニーズと合致し、東海版もかなり売れる』と予想する。」
甲第37号証の114(東京新聞・平成10年[1998年]4月10日)
「メチャクチャ売れました。創刊誌で増刷したのは、二十三年前の『月刊プレイボーイ』以来だって取次会社さんからも言われましたよ『TokyoWalker』で成功した角川書店が、全国で五誌目となる『YOKOHAMAWalker』(隔週刊)を出した。創刊日の三月二十四日即日売り切れとなり、五万部増刷したがそれもまた完売したのである。」
甲第37号証の159(毎日新聞・平成11年[1999年]6月6日)
「今月8日、タウン情報誌『千葉ウォーカー』(角川書店)が創刊される。食べ歩きやレジャー情報を満載した『○○ウォーカー』シリーズは首都圏では東京、横浜に続き3誌目。創刊号の発行部数は33万部で、昨春創刊された『横浜ウォーカー』の平均部数30万部を上回る。」
甲第37号証の177[枝番含む](産経新聞・平成11年[1999年]9月16日)
「角川書店(角川歴彦社長)の人気都市情報誌『ウォーカー』シリーズの初の海外版『台北ウォーカー』(中国語、隔週発行)が十七日、台湾で創刊される。発行部数は二十一万部で、台湾ではいきなり部数トップ級の雑誌になるとあって話題を呼んでいる。」
これらの記事から、平成2年(1990年)に創刊された「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」が「都市情報誌」として非常に高い著名性を誇っていることがわかる。
さらに、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌は、一般誌や経済誌の雑誌媒体及び書籍にも取り上げられ、紹介されている(甲第42号証の1ないし68)。甲第42号証の1ないし59は、雑誌・ムック・書籍等の出版物及び出版物以外の事業展開(ウェブ等)も含めたウォーカーシリーズに関する雑誌記事の写しであり、甲第42号証の60ないし68は単行本(書籍)に「東京ウォーカー/TokyoWalker」等が掲載された事実を示すものである。
例えば、甲第42号証の3に示す雑誌「日経ビジネス」(日経BP社発行・平成5年[1993年]11月)には、「角川書店がタウン情報誌『東京ウォーカー』関西版の創刊準備を進めている。(中略)『東京ウォーカー』はこの2、3年で急速に発行部数を伸ばし、『ぴあ』を抜いた首都圏最大のタウン情報誌に成長した。」という記事がある。
また、甲第42号証の63に示す「マスコミ就職読本2/新聞出版篇2001」では、「もうひとつ、この1年ほど絶好調なのが、『東京ウォーカー』などの都市型エンタテインメント情報誌である。(中略)『ウォーカー』群全体では膨大な発行部数になるはずである。」(20頁上段)と就職関係の出版物にも紹介されている。
さらに、甲第42号証の68は、著名な週刊漫画雑誌である「ビッグコミックスピリッツ」誌上に連載された、時事的トピックを織り交ぜた漫画「気まぐれコンセプト」の単行本「気まぐれコンセプトクロニクル」(1984年以降の23年分を再編集)の写しである。このような著名な週刊漫画雑誌に連載される時事漫画にも、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」に関する情報が掲載されたのである。
甲第37号証(枝番含む)、甲第42号証(枝番含む)、甲第41号証(枝番含む)に示す新聞・雑誌記事が掲載されているものの中には、全国紙や全国的に販売される雑誌も多数含まれている。したがって当然にして北海道地方においても、「東京ウォーカー/TokyoWalker」が紹介されていたのである。
また、甲第42号証(枝番含む)に示すように、新聞・雑誌のみならず、全国で販売される書籍や全国の需要者に広く読まれる書籍や漫画雑誌の記事においても「東京ウォーカー/TokyoWalker」等が掲載されていることからしても、特定の地域に偏らず全国の需要者に「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用したシリーズ化された雑誌の存在が認識されていたことは明白である。
(イ)「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」に関する記事
「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と同様に、「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等は多数の新聞媒体にも取り上げられている(甲第38号証の1ないし94)。
甲第38号証の14(枝番含む)(日本経済新聞・平成9年[1997年]1月20日)
「(前略)ほとんどの購入者が男性というのが洗顔料の『メンズビオレ スクラブウォッシュ』(花王)と雑誌『メンズウォーカー』(角川書店)だ。(中略)昨年十一月創刊の『メンズウォーカー』は、情報誌『週刊東京ウォーカー』の男性版だ。仕事と余暇の両方に役立つビジネスマン向け情報を提供。」
甲第38号証の15(東京新聞・平成9年[1997年]1月31日)
「(前略)『東京ウォーカー』(角川書店)の姉妹誌として『ワールドウォーカー』(同)が創刊された。(中略)ツアー情報を満載した旅行雑誌で、世界全体をエリアにしたタウン誌というノリだ。」
甲第38号証の60(産経新聞・平成15年[2003年]9月29日)
「(前略)情報誌『東京ウォーカー』(角川書店)がこのほど、『大人のウォーカー』を発刊した。(中略)やはり、地域に根ざした独自情報を充実させることで、他誌との差別化を図りたいという。」
以上に示すように各種の「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌等についての記事が様々な新聞に取り上げられている。
「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌等の存在が広く知られている事実は、最終的には、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の著名性獲得に寄与していることは上述したとおりである。
(ウ)他の企業との提携
他の企業と提携して「ウォーカー/Walker」の商標を使用してきた事実についてもまた新聞・雑誌に掲載されている。
甲第38号証の43[枝番含む](日本経済新聞・平成12年[2000年]3月10日)
「良品計画は『無印良品』の商品紹介や商品を使ったライフスタイルを提案する雑誌『無印良品ウォーカー』を角川書店から発売した。(中略)全国の一般書店で二十万部を販売する予定。」
甲第38号証の75(産経新聞・平成18年[2006年]3月20日)
「文部科学省が無料の冊子『サイエンスウォーカー』を初めて作成した。(中略)『東京ウォーカー』『関西ウォーカー』(角川書店)にとじ込んで配布するほか、同日から全国の駅頭やコンビニエンスストア、ファミリーレストランなどの店頭に置いて無料配布する。」
(エ)ネットでの展開について
「Walkers Net」や「Walkerplus」をはじめとするパソコン通信やウェブサイトを用いた請求人の事業展開についても多数の新聞・雑誌媒体に記事が掲載され、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と関連して展開されていることや、「ウォーカーズネット/Walkers Net」や「ウォーカープラス/Walkerplus」の公式サイトも、広く需要者・取引者に受け入れられていることが紹介されている。(甲第39証の1の1ないし甲第40証の93、甲第42証の21、25、30及び37他)。
甲第37号証の53の1(日本経済新聞・平成7年[1995年]6月1日)
「(前略)首都圏のタウン・イベント情報誌『週刊東京ウォーカー』など角川の人気雑誌二誌のダイジェスト版を提供する。(中略)『週刊東京ウォーカー』『月刊ゲームウォーカー』のダイジェスト版をオンラインで見られる。」
甲第39号証の11(日経産業新聞・平成11年[1999年]5月5日)
「(前略)二位の『Walkers Net』(角川書店)は雑誌の高い人気がウェブにもそのまま反映した。」
甲第39号証の13(産経新聞・平成11年[1999年]8月2日)
「東京Walkerなどでおなじみの角川書店の『Walkers Net』(http://walkers.channel.or.JP/index.html)もお勧めだ。タウン情報イベント・映画・コンサートといった先取りしたい全国の街の最新エンターテインメント時報が入手できる。」
甲第40証の1の1(日経産業新聞・平成12年[2000年]2月7日)
「角川書店は月内にも新会社を設立し、国内の都市別にタウン情報やエンターテインメント情報を発信する『地域ポータル(玄関)サイト』の運営を始める。(中略)雑誌の『ウォーカー』シリーズとも連動した多メディア展開を加速する。」
このように「Walkers Net」や「Walkerplus」もまた「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の著名性とあいまって広く認識されており、その結果、全国の需要者に「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用したシリーズ化された雑誌が存在していることを再度認識させることに寄与している。
(オ)広告について
請求人が多大な費用を費やして宣伝・広告してきた事実についても、多数の新聞媒体にも取り上げられている。
甲第37号証の41(毎日新聞・平成6年[1994年]10月4日)
(「関西ウォーカー/KansaiWalker」創刊に関して)
「日本出版販売大阪支店も『関西ウォーカーは実売で二十九万部から三十万部に達しており、関西情報誌のトップに立ったことは間違いない』とみており、その背景に宣伝力と、選択・提案型の編集を挙げる。(中略)角川書店がウォーカーの関西進出につぎ込んだ宣伝費は三億円強といわれ、一般に全国をマーケットに創刊される雑誌の宣伝費に相当するという。」
甲第37号証の85(朝日新聞・平成9年[1997年]6月12日)
(「九州ウォーカー/KyushuWalker」創刊に際して)
「五月下旬から九州各県の書店などを回り、キャンペーンをしてきた。(中略)テレビCMなどを含めた宣伝費の総額は、三億五千万円にのぼるという。」
甲第37号証の247(北海道新聞・平成12年[2000年]8月26日)(「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」創刊に際して)
「新雑誌がいきなり大部数を獲得したのは、道内では例がない大がかりな宣伝攻勢の効果が大きい。角川書店は、創刊PRのため広告費三億円を投入。盛んにテレビCMを流したほか、人気アイドルを起用したポスターをJR札幌駅などで大量に張り出すなどして浸透を図った。」
また、甲第42号証の7に示す記事には「東海地区に誕生したリージョナル誌/戦略的な創刊キャンペーンで25万部を完売/角川書店・東海ウォーカー」という見出しが付けられ、「東海ウォーカー」及び創刊の際のキャンペーンを高く評価する記事が掲載されている。
これらの新聞記事・雑誌記事からも、各種のキャンペーンが成功してきたことが裏付けられている。
(カ)請求人の各雑誌が一連のシリーズ化されていると認識されている記事
請求人の雑誌がシリーズとして展開されていること(さらには、請求人の種々の事業展開全体が一連の事業として展開されていること)を新聞や雑誌の記事を執筆する側も認識していたことが記事内容からも明らかである。
甲第37号証の75(1997年3月28日・産経新聞朝刊)
「角川書店は人気タウン情報誌『ウォーカー』シリーズの第四弾として六月に『九州ウォーカー』(隔週刊)を創刊する。」
甲第42号証の22(2000年2月14日・日経ニューメディア)
「タウン・行楽地情報では、『ウォーカー・シリーズ』など角川書店のタウン誌の情報を活用」
甲第38号証の55(2002年7月5日・日経産業新聞朝刊)
「年内に主力の情報誌『ウォーカー』シリーズや『ザテレビジョン』などでも通販を展開する。」
甲第40号証の2(2000年4月7日・日本工業新聞朝刊)
「タウン情報誌『ウォーカー』シリーズの情報収集・発信ノウハウを生かすとともに‥」
甲第39号証の4(1997年10月6日・日本経済新聞朝刊)
「角川書店は東京をはじめ四地域で発行している都市情報誌『ウォーカー』シリーズの編集を九十七年度末までにDTP(デスクトップ・パブリッシング)に全面的に切り替える」
さらに、甲第34号証として、「東洋水産のカップ麺」事業を発表した際のプレスリリースを提出する。このプレスリリースは、原告が作成したものではなく、タイアップ先である東洋水産株式会社が独自に作成したものである。このとおり、タイアップ先の東洋水産が、「Walkerシリーズ誌」というものが存在すると認めていたことがまさに裏付けられている。
このような記事が多数存在することは、請求人の「ウォーカー/Walker」の語を商標の構成中の後半部分に含んだ商標「○○ウォーカー/Walker」を使用した事業がシリーズ化されており、またこれらの商標を使用した商品群(または商品及び役務群)が存在していることを需要者が認識していかるからこそ、このような総称・略称がなされるのである。
以上、新聞や雑誌で紹介された事実を(ア)?(カ)の項目に分けて一例を列挙したが、このように多数の新聞や雑誌において請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という統一された商標を使用した事業が紹介されている事実は、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という統一された商標の著名性をさらに裏付けるものである。
なお、甲第37号証、甲第42号証(いずれも枝番含む)等に示す新聞・雑誌記事の一部には、近年、インターネットの普及が主な原因で「○○ウォーカー/Walker」の雑誌の発行部数・販売部数が低下している旨の記事がある(例えば、甲第42号証の42及び48)。このことは否定し得ない事実ではあるが、発行部数・販売部数の低下は請求人の発行する「○○ウォーカー/Walker」の雑誌に限ったことではなく、雑誌(その中でもとりわけ情報誌)全体の部数が低下しているのである。
また、近年の情報誌の発行部数や販売部数が減少している代表例として「○○ウォーカー/Walker」の雑誌が取り上げられていることは、「○○ウォーカー/Walker」の雑誌が、インターネットの普及前から、需要者・取引者にとって圧倒的に認知されている雑誌であることを裏付けるものである。
さらに、このような状況においても、「○○ウォーカー/Walker」の雑誌全体の販売部数は、いまだ他の一般誌と比較しても多く、閲読率も高順位に位置している。この事実は「ウォーカーシリーズ」が、現在もなお著名であり、高いブランド力を誇っているからに他ならない。
ウ 他社の存在・警告等
(ア)「ウォーカー/Walker」の語をタイトルに含む第三者の雑誌・新聞について
これまで述べてきたことから、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」というコンセプトが統一された名称の下、シリーズ化された同種の雑誌が請求人から発行され、それらの商標は需要者・取引者間に広く認識されていることは明らかである。
そして、増刊号やムック、フリーマガジンや雑誌の記事内容からあらゆる「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した出版物は請求人の事業にかかわる商標であるという認識が需要者・取引者に形成されていることは明らかである。
需要者・取引者がこのような認識を持つに至った理由は、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が広く需要者・取引者に受け入れられたことはもちろんであるが、さらに請求人以外の第三者が商品「印刷物」について「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成から成る商標を、一般的、かつ、大々的に使用している事実・状況が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において請求人の知る限り存在しないということが挙げられる。
甲第44号証は、国会図書館所蔵の雑誌について調査を行った報告書であって、請求人が原告となった平成20年(行ケ)第10363号審決取消請求事件において請求人が提出したものの写しである。この報告書の内容から、国会図書館に所蔵されている「和雑誌新聞」のうち、「ウォーカー」又は「Walker」の文字が含まれるものは、請求人を含む角川グループ(タイアップを含む)を除き、酣灯社の「スカイウォーカー」の1件のみであった。この「スカイウォーカー」は「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の態様ではない。
そればかりか、国会図書館に所蔵されている「ウォーカー/Walker」の語をタイトルに含む雑誌の号数は932号であるところ、「スカイウォーカー」はそのうちのわずか1号に過ぎないものであり、「スカイウォーカー」なる雑誌が著名雑誌等の特段の事情もないため、「スカイウォーカー」なる雑誌が、需要者・取引者の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の認識形成に何らかの影響を与えたものであるとは到底認められない。
甲第45号証は、甲第19号証に示した「マガジンデータ」(旧誌名:「会員社発行雑誌媒体資料」)等を発行している社団法人日本雑誌協会の証明書であって、請求人が原告となった平成20年(行ケ)第10363号審決取消請求事件において請求人が提出したものの写しである。
この証明書から、過去に発行された「マガジンデー夕」(旧誌名:「会員社発行雑誌媒体資料」)に、請求人が発行する雑誌以外の雑誌のタイトル中に「ウォーカー/Walker」の語を含む雑誌が掲載されたことがないことが判る。
甲第46号証は、国内で発行されている新聞・雑誌をはじめ、極めて多数の定期刊行物を調査収録した年鑑「雑誌新聞総かたろぐ」を発行するメディア・リサーチ・センター株式会社の証明書であって、請求人が原告となった平成20年(行ケ)第10363号審決取消請求事件において請求人が提出したものの写しである。
この証明書から、過去に「雑誌新聞総かたろぐ」に掲載された、雑誌・新聞のタイトル中に「ウォーカー/Walker」の語を含む雑誌・新聞は本件商標の「函館ウォーカーズマニュアル」と「Handai Walker」(請求人注:阪大ウォーカー)の2件以外は皆、請求人の雑誌であることが判る。
「Handai Walker」については、請求人はその存在を把握していたものの、学内で配布され、極めて限定された範囲で配布される学内報にすぎず、市場に流通していないため、需要者・取引者の認識を形成するにいたらないものである。しかも、甲第47号証に示すように、「Handai Walker」のロゴの態様や表紙の構成を見れば請求人の商標のパロディであることは明らかであるから、特別な対応をとっていないのである。
以上、これらの証明書や調査結果より、請求人以外の第三者が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用している事実がないことは明白であり、この事実は第三者が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標に接した場合に、市場における商標の使用状況から請求人の業務に係るものと認識することは当然である。
(イ)他社への警告について
上述のとおり、請求人以外の第三者が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用している事実がないことは明白である。しかしながら、請求人の「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が、全国的に著名性を獲得していくにしたがって、そのブランドイメージにフリーライドまたは利用しようとする(あやかろうとする)第三者の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の使用や商標出願が、多くなってきたという事情があった。
請求人は、自社のウォーカーシリーズのブランド力を低下させず、またはブランド力を損なわないように、商標出願された第三者の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」や、実際に市場に流通している第三者の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」、そして市場に流通する可能性があるという情報を得た第三者の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の使用準備及び使用に対して強い姿勢で対応しており、地道に使用排除の効果を上げてきた。
このような請求人の努力の甲斐もあって、甲第44号証ないし甲第46号証に示した調査報告書や証明書で示されたように、請求人以外の第三者が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を定期刊行物等の出版物に使用している事実は存在しないのである。
エ アンケート結果等
甲第49号証は平成20年11月に請求人が書店の販売員向けに行ったアンケートの結果であり、甲第50号証は、インターネットを利用した読者アンケートの結果である。
これらのアンケート結果は、平成20年(行ケ)第10363号審決取消請求事件において請求人が提出したものの写しである。
この訴訟におけるアンケートの立証の趣旨は、『○○ウォーカー/Walker』の構成からなる商標が角川グループの業務に係るものであると認識するか否か』を立証するものであった。しかしながら、このアンケートの回答結果からも請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」が需要者・取引者にとって著名な商標であることが裏付けられている。
オ 日本有名商標集への掲載について
以上に述べた使用実績が考慮されて、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の登録商標のうち定期的に発行している8誌に係る登録商標が日本有名商標集に選定されている。
甲第51号証の1に示す書籍は、社団法人日本国際知的財産保護協会(AIPPI・JAPAN)が、日本における有名商標と選定したものを収録し、平成16年(2004年)に発行した書籍「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」(日本有名商標集)の写しである。
(3)裁判所及び特許庁における過去の判断について
請求人の「○○ウォーカー/Walker」の商標(その中でもとりわけ「東京ウォーカー/TokyoWalker」)が全国的に周知・著名な商標であることは、特許庁及び裁判所においても認められている(甲第52号証ないし甲第59号証(枝番を含む。)。
これらの甲第52号証ないし甲第59号証(枝番を含む。)に示す特許庁及び裁判所における判断からも、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が全国的に著名な商標であることは疑いようのない事実であることが明らかである。
(4)請求人商標の使用実績及び周知著名性についての小括
以上、上記(1)ないし(3)で説明した使用実績及び証拠から、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌は、主要配布地域を中心にして多数の需要者に読まれており、著名性を得ていることは明白である。
さらに、各雑誌に掲載された記事内容、WalkersNetやWalkerplusの公式サイト、雑誌・新聞における紹介記事、他企業とのタイアップ等の事実から、例えば、主として関西地方において流通している「関西ウォーカー/KansaiWalker」に、シリーズとして他の地域(例えば、首都圏)においても同様の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の雑誌(例えば、「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」)が存在していることを、需要者が認識できる記事が多数掲載されていることを意味するものであり、すなわち、「関西ウォーカー/KansaiWalker」の需要者であっても、他の地域(例えば、首都圏)においても同様の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の雑誌(例えば、「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」)が存在していることを認識していることを意味するものであることは明白である。
したがって、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」他7誌を実際に目にする機会が、主要な配布地域ほどではない地域であっても、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」他7誌の存在は全国の需要者に広く知られるところとなっていることは明らかである。
また、甲第13号証の12の1に示す配本比率から明らかなように、全国各地で「東京ウォーカー/TokyoWalker」が配本されていたこと、インターネットにおいて「東京ウォーカー/TokyoWalker」を購読することが可能であったこと、そして「WalkerClub」という企画が各地で成立していることから、全国の需要者が「東京ウォーカー/TokyoWalker」の実際の雑誌を居住する地域に限定されることなく購入できたことは明らかである。
さらに、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」他7誌のみならず、請求人は、上記で述べたように、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」他7誌の関連で、例えば、増刊号「京都ウォーカー/KyotoWalker」(甲第26号証の37)、増刊号「埼玉ウォーカー/SaitamaWalker」(甲第26号証の29)、フリーマガジン「筑後ウォーカー/ChikugoWalker」(甲第26号証の17)、書籍「ニューヨーク・ウォーカー」(甲第26号証の1)、綴じ込み冊子「大分ウォーカー」(甲第11号証の12の3の綴じ込み)のように複数種類の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の雑誌・ムック・フリーマガジン等の出版物を発行している。
このような雑誌・ムック・フリーマガジン等の出版物についての「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の使用実績に鑑みれば、商標の構成中に「都市名又は地域名を表す語」と「ウォーカー/Walker」の語を含む商標は、請求人が発行する雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の商標として、需要者・取引者の間に広く認識されているものである。

5 無効理由について
(1)最高裁判所の判断基準について
商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の判断基準については、最高裁判所平成12年7月11日第三小法廷判決(民集54巻6号1848頁、平成10年(行ヒ)第85号)の判決に判示されており、この判断基準に従えば、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについては、本件商標が請求人使用の商標との類似性の程度だけでなく、請求人使用商標全体の周知著名性及び独創性の程度、用途又は目的における関連性の程度及び取引実情等も踏まえて総合的に判断すべきである。
(2)当該商標と他人の表示との類似性の程度
本件商標は、別掲のとおり、漢字の「函館」とその右側にカタカナの「ウォーカーズ」及び「マニュアル」の語を二段に横書きにした商標であって、第16類の商品「雑誌、新聞」を指定商品とするものである。
本件商標は「函館/ウォーカーズ/マニュアル」と「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成に「(ウォーカー)ズ/マニュアル」という点で主たる請求人使用商標との相違点は存在する。
しかしながら、この登録商標全体から生ずる称呼「ハコダテウォーカーズマニュアル」は、長音を含めて全体で13音と長い音であり、常に一連に称呼されるものではない。また商標中の「マニュアル」の語は「手引き書」を意味する語であって、本件商標の指定商品との関係において、識別力を有する語ではない。さらに「マニュアル」の語は、「ウォーカーズ」の語の下に配置されるものであって、横に一連に記載された「函館ウォーカーズ」の語と「マニュアル」の語とは、分離して認識し得るものである。そして、もう一つの相違点である「ズ」は複数形又は所有格を示すものであって、商標を識別するにあたり重要な部分ではない。
したがって、「函館/ウォーカーズ」の部分が分離して認識された結果、「ハコダテウォーカーズ」の称呼及び「(函館という)都市又は地域を散歩する人たち」又は「(函館という)都市又は地域を散歩する人の」という観念が生ずることは疑いない。なお、甲第1号証の2に示されるように、審査において「ハコダテウォーカーズ」の称呼が生ずるものとして審査されていたことは明らかである(甲第1号証の2の【称呼(参考情報)】の欄を参照のこと。)。
一方、請求人使用商標は、商標の構成において、「都市名又は地域名」を示す語と、「散歩する人」、「歩く人」を意味する英語「ウォーカー/Walker」の語とを結合するという構成からなり、「都市名又は地域名の称呼(例えば「トーキョー」)+ウォーカー」の称呼と「(例えば東京という)都市又は地域を散歩する人」という観念が生ずる。
したがって、被請求人商標は「都市名又は地域名」の後に「ウォーカー/Walker」の語を含むという点で、請求人使用商標と同じコンセプトで構成されたものであり、また、「商標中に示される都市又は地域を散歩する人たち」という請求人使用商標と限りなく同一の観念を生じさせるものである。
以上、本件商標と請求人使用商標との相違点があるとしても、その相違点が商標の識別において重要な要素を占める部分ではないことを考慮すれば、本件商標と請求人使用商標との類似性は高いというべきである。
すなわち、著名な「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌との関係で、増刊号・ムック・フリーマガジン等への請求人使用商標の使用実績からすれば、「函館/ウォーカーズ/マニュアル」の「ズ・マニュアル」という相違は混同が生ずるおそれ程度を判断するに当たり、殆ど影響を与えるものではないことは明らかである。
(3)独創性の程度
請求人使用商標の旗艦商標である「東京ウォーカー/TokyoWalker」が独創的な商標かという点に関して見ると、この商標は「東京を散歩する人」のようなイメージを生じさせるものの、全体として既存の名詞や用語などではなく、請求人の独創的な商標、すなわち造語の商標である。このことは甲第44号証等に示すように、請求人が雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を発行する以前に、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」が存在していないこと勿論のこと、「○○ウォーカー/Walker」という構成からなるタイトルの雑誌は国立国会図書館のデータベースによれば、1件も存在していなかった。
また、甲第52号証や甲第54号証に示す判決及び審決においても、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」が造語の商標であることを示している。
したがって、請求人使用商標「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」は造語の商標であることは明らかである。
(4)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
請求人商標を使用している対象は主として雑誌・ムック・書籍・フリーマガジン等の出版物であり、対象となっている商品は「雑誌、新聞」であるため、商品はまさに同一である。
(5)商品等の取引者及び需要者の共通性
本件の対象となる商品は「雑誌、新聞」であるため、印刷会社・出版社・書店・広告会社等、取引者を共通にすることは説明するまでもない。
請求人がターゲットとしている需要者は一般消費者であり、また、被請求人の出版物も一般消費者をターゲットにした出版物であることは甲第1号証の3等から明らかである。
したがって、商品等の取引者及び需要者は共通するものである。
(6)その他の取引実情
本件において、請求人使用商標の著名性ゆえに、仮に存在しない「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」の語が使用された商標は請求人の業務に係るものであるという認識を需要者・取引者が持つという特殊性を除き、考慮すべきその他の取引実情は存在しない。
(7)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力
請求人使用商標は主として雑誌・ムック・フリーマガジン等の出版物のタイトルや関連するウェブサイトの名称として使用されている。すなわち、雑誌、ウェブサイトの最も目を引く部分に請求人使用商標は使用されている。
また、被請求人も請求人と同様出版物のタイトルとして目を引く形で本件商標を使用していることは、甲第1号証の3等に示したとおりである。
(8)総合的な検討
以上のとおり、請求人使用商標の使用実績から、需要者・取引者間において、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」からなる商標は、雑誌が対象とする都市名又は地域名によって「都市名又は地域名」の部分を変えて、シリーズ化された雑誌を発行し、またその関連で増刊号やムック・フリーマガジンを発行しているということは十分に認識されている。
そして、本件商標「函館/ウォーカーズ/マニュアル」は、「函館」という明確な都市名又は地域名と「Walker/ウォーカー」の語とを結合させた造語商標ということができる。
本件商標は、長年にわたって使用してきた請求人使用商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成から成る商標と同じコンセプトに基づく商標である。そして、請求人は、前記「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成から成る商標を複数種類かつ大量に雑誌・ムック・フリーマガジン等を含む商品「印刷物」に使用しており、その結果、本件商標の登録出願前より、各種の販売促進活動を行うことにより、登録出願時はもとより登録査定時においても、需要者・取引者間において、著名性を獲得していた。
また、他に「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」と同様の構成から成る商標を商品「印刷物」に使用している第三者が実質的に存在していないこと、略称・総称として「ウォーカーシリーズ」や「ウォーカー」と新聞や雑誌等において報道されており、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という統一されたコンセプトにより構成された同種の雑誌をシリーズ商品として複数発行していること、そして増刊号・ムック・フリーマガジン等についても「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を複数種類使用していること等の様々な実情があることに鑑みれば、本件商標「函館/ウォーカーズ/マニュアル」という商標が、「雑誌、新聞」に使用された場合、それに接した需要者・取引者は、本件商標が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」というコンセプトで構成された商標であるという点に強い印象を受け、コンセプト及び構成の共通性ゆえに、その商品が請求人若しくは請求人と営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品、又は請求人の業務に係る雑誌・ムック等の出版物のシリーズ商品の一つであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは必定である。
そして、本件商標が有効であるということは、例えば、第三者が「上野ウォーカーズマニュアル」や「お台場ウォーカーズマニュアル」といった商標も有効に登録できるという先例を作ることになる。このような他人の商標が乱立して登録され、また使用されることになれば請求人が20年近くに渡って形成してきた「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」のブランドイメージを明らかに損なうことになり、また同時に需要者・取引者においても商品の出所について誤認・混同を引き起こすことになり、需要者・取引者の保護にも欠けることは明白である。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることは明白である。

6 答弁に対する弁駁
(1)「地域性出版書籍と全国雑誌との価値観の相違」に対する弁駁
請求人は、被請求人が同人の出版する書籍は編集方針の違いや配布地域を限定したことにより、請求人の業務とは混同が生ずるおそれはないと主張したものと善解して反論を進める。
本件は、被請求人が平成15年(2003年)3月20日に出願し、平成16年(2004年)12月24日に登録を受けた指定商品「雑誌、新聞」についての登録商標「函館/ウォーカーズ/マニュアル」が請求人の業務と混同のおそれがある商標か否かが商標法第4条第1項第15号の争点なのであり、実際に使用された定期的に刊行される被請求人の書籍「函館/ウォーカーズ/マニュアル」の配布地域や編集方針などによって、商標法第4条第1項第15号の判断は左右されるものではない。被請求人が登録を受けた「函館/ウォーカーズ/マニュアル」の指定商品は、あくまでも「雑誌、新聞」なのであって、この指定商品には編集方針や配布地域による限定などは存在しないのであり、請求人の業務と取引者、需要者層は共通するのである。
商標法の規定からすれば、被請求人がどのような目的で商標を選択したとしても、また、被請求人が他人の商標を全く意識していなかったとしても、被請求人の選択した商標が需要者・取引者の間で、混同が生ずるおそれがある商標であれば、その商標は登録を受けられず、また仮に登録を受けた場合であってもその登録は無効理由を有するものと判断されなければならない。
(2)「マニュアルの識別性について」に対する弁駁
被請求人のいう「識別力」の語の意味については、その主張内容からは全く理解しかねるが、この項目の主張と「商標の類似性について」の主張とを併せて考えると、次のような主張をしているものと推測する。
「被請求人の登録商標と請求人の『都市名又は地域名+ウォーカー/Walker』の商標とは、『ズ・マニュアル』の部分が相違することによって、請求人の業務に係る出版物のシリーズ商品とは区別できる」
しかしながら、本件商標「函館/ウォーカーズ/マニュアル」で最も需要者の目を引く商標の語頭からの構成が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成をとる商標であり、この部分が請求人の使用する「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標と共通である以上、語末の「ズ・マニュアル」の相違があるとしても、商品の出所について誤認・混同を引き起こす可能性のほうが高いことは疑いようもない。
請求書でも述べたとおり、本件商標中の「マニュアル」の語は「手引き書」を意味する語であって、本件商標の指定商品との関係において、識別力を有する語ではない。さらに「マニュアル」の語は、「ウォーカーズ」の語の下に配置されるものであって、横に一連に記載された「函館ウォーカーズ」の語と「マニュアル」の語とは、分離して認識し得るものである。そして、もう一つの相違点である「ズ」は複数形又は所有格を示すものであって、商標を識別するにあたり重要な部分ではない。
したがって、「函館/ウォーカーズ」の部分が分離して認識された結果、「ハコダテウォーカーズ」の称呼及び「(函館という)都市又は地域を散歩する人たち」又は「(函館という)都市又は地域を散歩する人の」という観念が生ずることは疑いない。これは、被請求人自身も、本件商標全体の観念が「函館を歩く人たちの手引き書」であると認めていることからも明らかである。
一方、請求人使用商標(例えば「東京ウォーカー/TokyoWalker」)は、商標の構成において、「都市名又は地域名」を示す語と、「散歩する人」、「歩く人」を意味する英語「ウォーカー/Walker」の語とを結合するという構成からなり、「都市名又は地域名の称呼(例えば「トーキョー」)+ウォーカー」の称呼と「(例えば東京という)都市又は地域を散歩する人」という観念が生ずる。
したがって、被請求人商標は「都市名又は地域名」の後に「ウォーカー/Walker」の語を含むという点で、請求人使用商標と同じコンセプトで構成されたものであり、また「商標中に示される都市又は地域を散歩する人たち」という請求人使用商標と限りなく等しい観念を生じさせるものである。
よって、「ズ・マニュアル」の相違をもって混同が生じないとする被請求人の主張は失当である。
また、本件商標が有効であるということは、例えば、第三者が「上野ウォーカーズマニュアル」といった商標も有効に登録できるという先例を作ることになる。
このような他人の商標が乱立して登録され、また使用されることになれば請求人が20年という長い年月をかけて形成してきた「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」のブランドイメージは明らかに損なわれることになり、また同時に需要者・取引者において、商品の出所について誤認・混同を引き起こすことになり、需要者・取引者の保護にも欠ける事態が発生することになるのは明白である。

7 まとめ
以上において述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べた。

1 地域性出版書籍と全国雑誌との価値観の相違
被請求人が「函館ウォーカーズマニュアル」と命名したのは、目的のもとにすんなりとつけたものである。函館ウォーカーでは、そもそも名前の発声も締まりがなく、考えたことすらない。肝心の語彙としては、ガイド書としての意味合いとして、函館ウォーカーズマニュアルでなければならない理由があった。
「函館を歩く人たちの手引き書」である。内容としては、雑誌やメディアではほとんど紹介されないお店や隠れた名店をあえて紹介するという主旨のもと行われている。すべて取材記事であり、広告的な考えを廃したものである。まさに地元に暮らす人たちのバイブルのようなものであり、地域に根ざしたものとなり、多くの人の愛読書となった。函館マニュアルとさえいえなくもない。
全国展開する雑誌と、限られたエリア・地域で、被請求人のように地元向けに展開する書籍のようなものとは、タイトル命名の価値観に相違がありすぎるのではないか。地域は、地域性を持つ名前が必要であり、全国ブランド名だからといって、地域での名称まで取り上げてしまうような議論になるとしたら、それでは地域の文化が成り立たない。元々議論に成りようもないはずである。

2 商標の類似性について
函館ウォーカーズマニュアルのようなポケットサイズの本としては、ウォーカーズマニュアルが二段で記載されていても、それはまさにデザインと収まりゆえのことであり、切り離して考える意図などあるはずもない。しかも、ウォーカーズと書いてある。ウォーカーマニュアルではない。ウォーカーズは、複数形と所有格の意味があり、別の意味を持つ単語として商標としても考えなければならないほどである。
模倣というのは論外であり、実際に、見たこともなく、まして意識したこともなく、まったく参考にする必要性のないものを模倣だというのは、はっきりいって言いがかりといわざるを得ない。

3 マニュアルの識別性について
ウォーカーズマニュアルは、市販する雑誌として、意味があって命名したものであるから、商標として登録されたのである。実際、意味があって内容を示すものであるから、氾濫して使用されてはいない。当社の本は、函館のマニュアルとして指摘する人も多い。まさに他と区別するための重要な語句である。

第4 当審の判断
請求人が本件審判の請求をする利害関係を有するか否かについては当事者間に争いはなく、かつ、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと認められるので、本案に入って審理する。

1 商標法第4条第1項第15号について
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」の有無については、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。(最高裁判所第三小法廷、平成10年(行ヒ)第85号)」と解すべきである。
そこで、この判断に沿って、本件商標が、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるか否かについて、以下検討する。

2 請求人使用商標の周知著名性
(1)請求人使用商標及びその使用事実について
請求人は、図書及び定期刊行物の販売、フリーペーパーの発行等を業とする会社であり、平成2年3月、東京を中心とする首都圏のイベント、レジャー、映画、音楽、スポーツ、テレビ番組、演劇、ドライブ、飲食店の情報等について掲載する都市情報誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を創刊し、その後、該雑誌をさきがけとして、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「九州ウォーカー/KyusyuWalker」、「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」等のタイトルを付した都市名又は地域名ごとの総合情報誌を発刊していったことが認められる。
なお、増刊号「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」も平成11年7月に発行されている(甲第26号証の19)。
そして、該雑誌の表紙は、いずれも、上部に横書きで「TokyoWalker」、「KansaiWalker」、「TokaiWalker」等のように英文字により雑誌名を表し、中央に若手の女性タレント等の写真及び中央から下部にかけて特集記事の表題等をそれぞれ配置するなどの構成であることが認められる。
雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」は、平成2年(1990年)3月に創刊され(甲第37号証の1)、社団法人日本ABC協会発行の「雑誌 公査レポート(1992年?2005年上半期)」(甲第13号証の1ないし14)によれば、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の各号ごとの販売部数のおよそは、平成4年[1992年]は約28万部、平成5年[1993年]は約38万部、平成6年[1994年]は約42万部、平成7年[1995年]は約42万部、平成8年[1996年]は約40万部、平成9年[1997年]は約37万部、平成10年[1998年]は約29万部、平成11年[1999年]は約24万部、平成12年[2000年]は約17万部、平成13年[2001年]は約14万部、平成14年[2002年]は約11万部、平成15年[2003年]は10万部、平成16年[2004年]は10万部、平成17年[2005年]は9万5千部であり、いずれも、大学生、20歳代の若い社会人を主な読者層として、長年に亘り相当の販売部数を維持していることが認められる。
また、甲第13号証の12の1は、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の2003年1?6月の平均報告部数と、2003年7月1日号の配本比率であるところ、その配本比率は、東京、神奈川、埼玉、千葉が多いものの、広く全国各地に配本されていたことが認められる。
(2)雑誌の閲読率ランキングについて
甲第36号証の1の1ないし7の3は、株式会社ビデオリサーチによる雑誌閲読率のランキングであるところ、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの全国7地区計の「個人全体(%)」は、平成11年[1999年]は第3位(11.2パーセント)、平成12年[2000年]は第3位(10.8パーセント)、平成13年[2001年]は第3位(10.0パーセント)、平成14年[2002年]は第3位(9.5パーセント)、平成15年[2003年]は第4位(8.5パーセント)、平成16年[2004年]は第4位(7.2パーセント)、平成17年[2005年]は第4位(7.3パーセント)となっており、第3位又は第4位という上位の閲読率であり、平成11年(1999年)以来、7年間という長期に亘り維持していることが認められる。
(3)広告等について
甲第30号証の1の1ない1の3、甲第30号証の2の1ないし2の21、甲第30号証の5及び同6によれば、請求人は、ウォーカーシリーズの販売促進活動として、店頭等におけるキャンペーン、各種媒体での広告等、各種イベントの開催を行ったことが認められる。
また、甲第30号証の3(枝番を含む。)によれば、請求人は、電車の中吊り広告を行い、甲第30号証の4の1及び4の2によれば、テレビ、ラジオで広告を行い、さらに、甲第37号証ないし甲第41号証によれば、各種の新聞に記事が掲載されていたことが認められる。
そして、甲第11号証の2の3は、1997No.11の「KyushuWalker」であるところ、「WalkersNet」、「11月11日[火]スタート」と記載し、「1996年の秋にスタートしたTokyoWalkerNetがいよいよ全国の情報を網羅します。全国4エリアのウォーカーの強力な取材力を駆使してできた日本最大のエンターテイメントホームページがWalkersNet」との記載があり、「KansaiWalker」、「TokyoWalker」、「TokaiWalker」及び「KyushuWalker」の情報等を検索可能としたウェブサイトが紹介され、その後、「YOKOHAMAWalker」が開設されたことが認められる。
さらに、甲第31号証の1によれば、「WalkersNet」の検索可能なサイトは、「TokyoWalkerNet」を始め、「KansaiWalkerNet」、「KyushuWalkerNet」、「YOKOHAMAWalkerNet」及び「TokaiWalkerNet」であり、甲第31号証の2によれば、「ウォーカープラス/Walkerplus」を運営し、そのウェブサイトにおいて、グルメ、映画、ウエディングなどの情報を提供していることが認められる。
(4)まとめ
以上の事実を総合勘案すれば、請求人は、平成2年3月に、都市情報誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を創刊し、その後、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「九州ウォーカー/KyusyuWalker」、「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」等のタイトルを付した都市名又は地域名ごとの総合情報誌を発刊し、平均販売部数が明らかとなっている「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker 」、「九州ウォーカー/KyushuWalker」及び「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」については、各対象とする地域及びその周辺地域で多数の販売部数を得てきたこと、また、これらの「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」との雑誌については、請求人又はその関連する会社が発行する、各対象地域のイベント、レジャー、映画、音楽、スポーツ等の情報を掲載する同種の雑誌として、統一した名称の下での合同の販売促進活動や各雑誌内で他の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の存在について言及されるなどしており、本件商標の出願時である平成15年3月及び登録査定時である平成16年7月の時点において、「東京ウォーカー/TokyoWalker」を始めとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の都市情報誌は、すでに、請求人又はその関連する会社が発行する定期刊行雑誌として、全国で周知著名となっていたと認められる。
そして、その周知性は、査定時以降も継続していたものと認められる。

3 混同について
(1)請求人使用商標の独創性の程度について
請求人使用商標のひとつである「東京ウォーカー/TokyoWalker」は、「東京ウォーカー」の文字と「TokyoWalker」の欧文字とを横書きしてなるものであるところ、その欧文字の態様は、「T」と「W」が大文字、その余が小文字の欧文字であり、「Tokyo」と「Walker」との間にスペースを設けることなく「東京ウォーカー」及び「TokyoWalker」とそれぞれ一体に書してなるものである。
そして、その前半の「東京」及び「Tokyo」の文字部分は、「我が国の首都」を表し、後半の「ウォーカー」及び「Walker」の文字部分は、「歩行者。歩くことを趣味にする人。」(例文で読むカタカナ語の辞典第二版 小学館発行)の意味を有する英語及びその読みであり、「都市名又は地域名(漢字/英語)」と「ウォーカー/Walker」との組み合わせからなるところに独創性がみられるものである。
そして、請求人使用商標は、「雑誌」に使用されるところ、上述のように「都市名又は地域名(漢字/英語)」+「ウォーカー/Walker」の題号をもって雑誌を発行し、シリーズ化し、また、雑誌にとどまらずムック等にも使用し、さらにはテレビ、ラジオ、各種イベントにて紹介されるに伴い、独創性のある造語商標としてその周知著名性は一層高まったということができる。
(2)本件商標と請求人使用商標との類似性の程度について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲のとおり「函館」の文字を横書きに大きく表し、その右に「ウォーカーズ」の文字と「マニュアル」の文字を二段に配し、いずれも赤色で縁取りされた黄色の文字で表されてなるものである。
そして、本件商標中の「函館」の文字部分は「北海道渡島(おしま)半島の南東部に位置する市。」(広辞苑第六版)であって、一般に知られた北海道の一「都市名」を表すものであり、その右上段の「ウォーカーズ」の文字は「歩行者。歩くことを趣味にする人(複数)。」の意味を有する英語である「walkers」の読みを、また、「マニュアル」の文字は、「手引き書。行動や作業の定型・手順をまとめた小冊子類。」(それぞれ例文で読むカタカナ語の辞典第二版 小学館発行)の意味を有する英語の「manual」の読みを表した、いずれも良く知られた語であり、全体としては「函館を歩く人の手引き書」程の意味合いを看取させるものである。
しかして、本件商標中の「マニュアル」の語は、上記のとおりの意味を有することから、その指定商品中「雑誌」との関係からすれば、雑誌の内容(手引き書)を表すものといえることから自他商品識別標識としての機能は極めて弱いか、若しくは果たし得ない文字部分といえるものであるから、本件商標は、その構成中「函館ウォーカーズ」の文字部分が、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものである。
そうとすれば、本件商標は、「函館ウォーカーズ」の文字部分に相応して「ハコダテウォーカーズ」の称呼を生じ、「函館を歩く人(複数)」程の観念を生ずるものである。
そして、本件商標の「函館ウォーカーズ」の文字部分は、「都市名又は地域名」である「函館」と、「ウォーカーズ」の文字との組み合わせにより表したものと容易に認識させるものである。
イ 請求人使用商標について
請求人使用商標のひとつである「東京ウォーカー」及び「TokyoWalker」は、都市名又は地域名である「東京/Tokyo」と、「ウォーカー/Walker」の文字との組み合わせにより表したものである。
そして、その構成文字に相応し「トウキョウウォーカー」の称呼及び「東京を歩く人」程の観念を生ずるものであって、同様に、他の請求人使用商標も、それぞれ「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせて一体的に表したものが多数を占めており、その構成文字に相応し、「○○(都市名又は地域名)ウォーカー」の称呼及び「○○(都市名又は地域名)を歩く人」程の観念を生ずるものである。
ウ 本件商標と請求人使用商標との比較
そこで、本件商標中、要部と認められる「函館ウォーカーズ」の文字部分と、上記組み合わせからなる請求人使用商標とを比較するに、先ず、その構成中の「函館」の文字部分と、請求人使用商標のひとつである「東京/Tokyo」の文字部分とは、共に「都市名又は地域名」を表したものであり、その構成要素を共通にするものである。
また、本件商標の構成中「ウォーカーズ」の文字部分と、請求人使用商標の「ウォーカー/Walker」の文字部分とを比較すると、その差異点は、語尾における「ズ」の有無のみであるが、我が国において、複数、単数等の違いは、観念上、明確に区別して捉えない場合が多く、加えて「ズ」の音は、それ自体響きの弱い有声摩擦子音「z」と母音「u」の結合した音で、比較的聴取され難い語尾に位置することからすれば、「ズ」の音の有無が称呼全体に及ぼす影響は決して大きいとはいえないから、互いに聴き誤るおそれがあるものと判断するのが相当である。
そして、本件商標と上記組み合わせからなる請求人使用商標は、ともに「都市名又は地域名」と、「ウォーカー/Walker」又は「ウォーカーズ」との組合せからなるものといえ、観念上、極めて同一性の程度の高い商標というのが相当である。
(3)本件商標の指定商品と請求人使用商品「雑誌」との関係について
本件商標の指定商品中「雑誌」は、請求人使用商品「雑誌」と同一の商品であり、購読の目的を同じくし、取引者、需要者も共通にするものである。
(4)まとめ
以上を総合勘案すると、本件商標は、少なくとも上記著名な請求人使用商標である「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「九州ウォーカー/KyusyuWalker」及び「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」と、その構成において極めて類似性の程度の高い商標といえ、かつ、請求人が主として販売する商品「雑誌」と本件商標の指定商品中の「雑誌」とは同一の商品である。
そして、請求人使用商標は、本件商標の登録出願前より、請求人の取扱いに係る商品「雑誌」について、東京をはじめとする多くの都市又は地域に関する、ファッション、グルメ、娯楽等の情報を紹介する「都市情報雑誌」の題号として永年に亘り使用され、その間、新聞、テレビ等の媒体を通じて広範な宣伝、広告活動を行った結果、本件商標の登録出願時はもとより登録査定時においても、上記商品の題号を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識され、周知・著名性を獲得していたものと認められる。
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、普通に払われる注意力において、本件商標中「函館ウォーカーズ」の文字部分から著名な請求人使用商標を連想、想起し、その商標等のシリーズの一つと容易に認識し、その商品が請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。

4 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきでものある。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 <本件商標> (色彩は、原本を参照されたい。)




審理終結日 2010-07-08 
結審通知日 2010-07-12 
審決日 2010-07-28 
出願番号 商願2004-11819(T2004-11819) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y16)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大井手 正雄鈴木 修 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 野口 美代子
田中 亨子
登録日 2004-12-24 
登録番号 商標登録第4827714号(T4827714) 
商標の称呼 ハコダテウオーカーズマニュアル、ウオーカーズマニュアル、ハコダテウオーカーズ、ウオーカーズ 
代理人 西浦 ▲嗣▼晴 

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