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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201120614 審決 商標
不服20083949 審決 商標
不服200914979 審決 商標
不服200914970 審決 商標
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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y30
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Y30
管理番号 1224858 
審判番号 不服2007-9933 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-06 
確定日 2010-09-08 
事件の表示 商願2005-12368拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第30類「冷麺用のめん」を指定商品として、平成17年2月15日に団体商標として登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『盛岡冷麺』(『麺』の文字は旧字体で表してなる)の文字を書してなるところ、『盛岡』は、岩手県の県庁所在地でもある盛岡市を表すものであって、『冷麺』は、朝鮮料理のめん料理の1種であるから、これをその指定商品に使用しても、『盛岡で製造あるいは販売された冷麺用の麺』の意を表したものと認識させ、単に商品の産地・販売地を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、別掲1のとおり、「盛岡冷麺」(ただし、「麺」の字は旧字体)の文字よりなるところ、構成中の「盛岡」の文字は、「岩手県中部、北上盆地の北部にある市。県庁所在地。」を、また、「冷麺」の文字は、「朝鮮料理。そば粉にいも澱粉か小麦粉を加えて製した麺をゆでてから冷やし、焼豚・キムチ・野菜などをのせて冷めたい汁をかけたもの。」を意味するものである(共に「広辞苑」第六版)。
そして、これらの文字を結合した「盛岡冷麺」の文字は、それぞれの文字の意味から構成全体として、「盛岡において生産ないし販売される冷麺」程の意味合いを容易に認識させるものである。
そうとすれば、本願商標をその指定商品「冷麺用のめん」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、「盛岡において生産ないし販売される冷麺用のめん」であること、すなわち、その商品の産地、販売地あるいは用途を表したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識として認識し得ないものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。

2 商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標は商標法第3条第2項により登録されるべきである旨主張し、証拠方法として、原審で提出した添付書類第1号ないし第81号を援用し、さらに当審において添付書類第82号ないし第152号(枝番号を含む。以下「第○○号」と略す。)を提出している。
(1)団体商標について
本願商標は団体商標であるところ、工業所有権法逐条解説[第17版](特許庁編 1199頁及び1200頁)によれば、「団体商標とは、事業者を構成員に有する団体がその構成員に共通に使用させる商標であり、商品又は役務の出所が当該団体の構成員であることを明らかにするものである。・・・『自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務について使用をする商標』には、構成員だけでなく団体も使用する商標も含まれるが、団体のみが使用する商標は含まれない。」と説明されており、実際の使用については、請求人のみならず、構成員の使用が必要と解される。

(2)商標法第3条第2項の趣旨
ところで、商標法第3条第2項は、本来識別性がないものについて、現実の使用に基づいて例外的に商標登録を認めることから、登録が認められるための要件としては、1)実際に使用している商標が、判断時である審決時において、取引者・需要者において何人の業務に係る商品であるかを認識することができるものと認められること、2)登録が認められる商標及び指定商品は、実際に使用している商標及び商品と同一であること、と解されている。また、登録により発生する権利は、全国的に及ぶ独占権であることも考慮すると、同条同項は、厳格に適用されるべきである、旨判示されている。(知財高裁平成18年(行ケ)10441号判決及び平成19年(行ケ)10243号判決参照)
そこで、以上の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備しているか否かについて検討する。

(3)本願商標が、取引者・需要者において請求人の業務に係る商品であるかを認識することができるか否かについて
ア 請求人提出の証拠等について
第1号及び第6号は、平成17年10月31日付け及び平成18年2月7日付けの全国製麺協同組合連合会の会長名の証明書で、「『盛岡冷麺』が岩手県生めん協同組合の組合員の製造に係る名産、特産品として指定を受けた『生めん類』に関する商標として、広く知られている事実を証明する。」を内容とするものである。
第2号及び第3号は、公正取引委員会からの「生めん類の表示に関する公正競争規約施行規則」の一部変更についての承認書の写並びに承認に関する告示の写である。
第4号及び第5号並びに第7号ないし第30号は、冷麺の製造販売業者、上部団体、市長、商工会議所、県外の同業者団体等からの本願商標の周知性に関する証明書で、「岩手県乾麺工業組合(以下「乾麺組合」という。)並びに岩手県生めん協同組合(以下「生めん組合」という。)の依頼により、周知性について証明する。本願商標は・・・岩手県の特産品である『盛岡冷麺』の麺についての商標として、全国的に広く知られるようになり、今日に至っている。事実に相違がない。」を内容とするものである。
第31号は、「盛岡冷麺」の自主基準に関する請求人からの陳述書及び該自主基準の内容である。
第32号ないし第71号は、盛岡冷麺に関する記事が掲載された新聞、雑誌(活性化情報、ふるさとだより等)として提出されたものである。
第72号ないし第78号は、盛岡冷麺の商品開発の経緯を示す書類として提出された、研究開発、情況視察等の報告書あるいは起業化事業、活性化事業等の実施報告書である。
第79号ないし第81号は、乾麺組合が発行した「盛岡麺づくし 麺のまち盛岡」と題する冊子及び盛岡冷麺に関するポスターである。
第82号ないし第122号は、県外の同業者団体による本願商標の周知性に関する証明書である。
第123号及び第124号は、盛岡冷麺の生産量、販売量に関する証明書である。
第125号は、優良企業等表彰受賞者の功績概要である
第126号は、注目発明選定証である。
第127号及び第128号は、アンテナショップである「いわて銀河プラザ」(東京銀座)及び「jengo」(大阪心斎橋)において配布されるとするリーフレット(案内書)である。
第129号ないし第152号は、平成20年8月8日付の「構成員以外に本願商標を使用している者がいる」旨の証拠調べ通知書に対する応答書類として提出された組合員名簿、盛岡冷麺普及推進協議会(以下「協議会」という。)に関する資料、生めん組合の組合員、乾麺組合の組合員あるいは協議会の会員等の陳述書である。
イ 証拠資料の検討
以上の資料を総合的に判断すると、以下の(ア)ないし(オ)の事実が認められる。
(ア)冷麺の製造販売業者、上部団体、市長、商工会議所、県外の同業者団体等の同業者等から、「盛岡冷麺」が出願人(請求人)及びその組合員の製造に係る名産、特産品として指定を受けた「生めん類」に関する商標として、広く知られているとする証明がなされていること(第1号、第4号ないし第30号、第82号ないし第122号)。
(イ)「盛岡冷めん」は、研究開発等の結果、その品質を向上させてきたこと、「盛岡冷めん」は、厳格な基準に基づき管理され、その基準を満たす麺のみが、「名産、特産」等を表示することができること等、管理がされていること。そして、冷麺の開発や改良努力により農林水産大臣賞を受賞(平成4年)し、冷麺の製造方法について岩手県と共に注目発明に選定(平成10年)されたこと(第2号及び第3号、第31号、第72号ないし第78号、第125号及び第126号)。
(ウ)請求人に関する記事が新聞、雑誌等に掲載されていること(第32号ないし第71号)。
(エ)請求人は、「盛岡麺づくし 麺のまち盛岡」と題する冊子及び盛岡冷麺に関するポスターやリーフレット(案内書)を作成し、本願商標に関する広告を行っていること。そして、「盛岡麺づくし 麺のまち盛岡」と題する冊子は、新聞記事情報(第56号ほか)によると一万部作成され関係先に配布されたこと(第79号ないし第81号、第127号及び第128号)。
(オ)平成7年、12年、17年の請求人に係る「盛岡冷麺」及び「盛岡冷麺用ミックス粉」の販売数量を証明するとともに、乾麺組合あるいは協議会の会員等の陳述書には、請求人が商標登録を得ることを承諾する旨の記載がされ、請求人の組合員中に、「盛岡冷麺のめん」を販売している者が存在すること(第123号及び第124号、第129号ないし第152号)。
しかしながら、同業者等が作成した本願商標の周知性を証明する証明書は、その内容がほぼ同一のものであって、証明についての客観的事実を示す根拠等が明らかにされておらず、その信憑性を客観的に証明し得ないものである。
また、公正取引委員会の承認書の写し、自主基準等に関する陳述書、商品開発の経緯・改良努力等を示す書面等は、盛岡冷めんのこれまでの研究開発の経緯、自主基準による管理等を示すものであって、本願商標の使用の事実や周知・著名性を証明するものではない。。
さらに、盛岡冷麺に関する新聞記事等として提出された新聞、雑誌等は、その内容が、例えば、起業家事業費の補助についての記事(第32号、岩手日報)、乾麺組合の紹介記事(第33号、中央会ニュース)、乾麺組合の歴史・活動の紹介記事(第34号、活性化情報)、乾麺組合が50周年及び60周年の記念式典を開催したとの記事(第39号ないし第42号及び第62号、全国乾麺新聞、食品産業新聞、麺業新聞)、乾麺組合が農林大臣賞を受賞したとの記事(第43号ないし第46号、全国乾麺新聞、食品時報、岩手日報)、協議会に関連した記事(第49号及び第50号、盛岡タイムズ、河北新報)、県内産の盛岡冷麺に「特産」「本場」などの明記が可能になるとの記事(第53号及び第54号、岩手日報)、盛岡の4大めんを紹介する記事(第55号、岩手日報)、乾麺組合がPR誌(麺食文化・麺料理メニュー等を扱った「麺のまち盛岡」と題する冊子)を発刊したとの記事(第56号、第57号及び第59号、米麦日報、全国乾麺新聞、麺業新聞)、あるいは「盛岡冷麺」の始まり等を紹介した記事(第64号及び第66号、北海道新聞、シティリビング)等々が中心であることに加え、前記記事等のうち、第38号、第48号、第52号及び第53号、第55号、第58号、第60号、第65号、第67号ないし第70号については、請求人(組合名)が確認できず、また、第32号ないし第34号、第39号ないし第46号、第48号、第65号については、本願商標の表示を見いだすこともできないものであるから、これらの新聞記事情報が、請求人及びその構成員が本願商標「盛岡冷麺」をその指定商品に使用していることを実証するものとはいい難いものである。
さらにまた、冊子「盛岡麺づくし 麺のまち盛岡」の内容からすると、盛岡冷麺が盛岡を代表する麺であることは掲載されているものの、請求人と商品「冷麺のめん」との関係を確認することはできず、また、盛岡冷麺に関するポスターは、いずれも請求人名の表示はなく、作成枚数、作成時期、配布地域等も明らかでない。そして、リーフレットについても、「盛岡冷麺」は岩手県の代表的な特産品として紹介されてはいるものの、請求人に関する記載はなく、また、配布に係る時期・配布冊数等も明らかでない。
そして、第123号及び第124号は、盛岡冷麺の生産量、販売量に関する証明書として提出されたもので、平成7年、12年、17年の「盛岡冷麺」及び「盛岡冷麺用ミックス粉」の販売数量を証明するものとあるが、このうち「盛岡冷麺の生産量」については、組合員が実際に販売した数量を集計したものと説明されているところ、重複を排除した乾麺組合及び生めん組合の合計の構成員数は24と認められるのに対し、前記証明書では13社となっており、残りの11社については説明もなく、その生産量が定かではない。また、「盛岡冷麺用ミックス粉」については、請求人が述べるとおり、冷麺の生産用にミックス粉を使用しない場合もあるとすると、提出された証明書の数字がその全てと認めることはできない。そうとすれば、「盛岡冷麺」全体の販売量が明らかにされたということはできず、さらに本願に係る指定商品は「冷麺のめん」であるところ、日本で販売されている「冷麺」には、「盛岡冷麺」以外に「韓国冷麺」や「平壌冷麺」等も含まれることからすれば、前記証明書のみからでは、「冷麺」市場全体における請求人の市場占有率等を確認することができない。
ウ 小括
そうとすれば、提出された各証拠資料からでは、本願商標が請求人を表示するものとして、周知性を得るに至っているものとは、直ちに判断し得えないものである。
その他、本願商標が請求人を表示するものとして、周知性を得るに至っていると判断し得る証拠は認められない。
してみれば、本願商標が、取引者・需要者において請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとはいえないと判断するのが相当である。

(4)出願商標と実際に使用している商標の同一性について
ア 前記2で述べたとおり、使用により識別力が認められるとするためには、本願商標と使用商標の同一性が求められるところ、提出された書類中の第51号、第79号において、指定商品「冷麺用のめん」について、請求人の構成員と認められる(株)小山製麺、(株)北館製麺及び(株)菊正による「盛岡冷麺」の商標の使用が認められるものであるが、その表示は、例えば横書き「盛岡」の下に縦書き「冷麺」を表したもの、又は「盛岡」と「冷麺」(「麺」は新字体。以下同じ。)の漢字を上下二段に表したもの、あるいは左から右に斜めに表した「盛岡」の「盛」の文字の下に「冷麺」の文字を表示した構成から成るものであって、別掲1のとおり、「麺」の字を旧字体で表した横一列の構成からなる本願商標「盛岡冷麺」とは、その構成態様が明らかに相違するものである。また、実際の使用は定かではないが、第74号中には採用されたとする商品の外装袋のデザインが表示されているところ、デザイン中に表示されている商標も本願商標と同一のものとは認められない。
そうとすれば、提出された各書類からでは、本願商標と、請求人または構成員により実際に使用されている商標が同一であると認めることはできない。
イ また、当審で行った職権によるインターネット調査によれば、請求人の構成員と認められる、(株)兼平製麺所、(株)戸田久、(有)吉清水商店、(株)中原商店による使用が、別掲2に示すウエブサイト等において確認できるものの、本願商標とほぼ同様の態様で使用しているものは(株)中原商店のみであって、他の3社については、やや小さく書された平仮名「もりおか」と漢字「冷麺(新字体)」を縦に併記して表示((株)兼平製麺所)、同様の文字を上下二段に表示、あるいは特徴を持たせた漢字「盛岡冷麺」を横書きして表示((株)戸田久)、4倍程度と大きさの違う漢字「盛岡」と「冷麺」とを上下に表示するものであって、本願商標と同一の態様とは認められない。このほか、証拠調べ通知で提示した者の中で、本願指定商品「冷麺のめん」への本願商標の使用が確認できる(株)北舘製麺(カップめん)、(有)吉田製麺、(株)KYコーポレーション、七福製麺所、(有)君乃家食品についても、その使用態様はいずれも本願商標と同一とは認められない。

(5)まとめ
以上によれば、「盛岡冷麺」の語が、盛岡産の冷麺(麺料理)を表示するものとして一定程度知られていることは、推認することはできる。
しかしながら、提出にかかる書類から、請求人あるいはその構成員が、本願商標「盛岡冷麺」をその指定商品「冷麺用のめん」について使用している事実を確認できるものは上記のとおり、第51号及び第79号に表示された僅か3社のみであり、かつ、使用されている商標も、本願商標と同一のものとは認められないものである。また、職権による調査によっても、構成員等により使用されている商標のうち、本願商標と同様の態様のものは少なく、そのほとんどが本願商標と同一とは認められないものである。
このほか、提出に係る全書類を総合的に勘案しても、本願商標が使用された結果、商品の出所と請求人との関連を認識することができる程度の識別性を有するに至ったものと、認めることはできない。
したがって、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであるとする請求人の主張は採用することができない。

(6)参考
別掲3のインターネット情報によれば、「盛岡冷麺」の商標が付された商品「なま冷めん」が、請求人の構成員以外の者と認められる「株式会社良品計画」により、47都道府県で販売され、あるいはネット上からも購入できる状況にあることが確認できるものである。

3 結論
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備しないとした原査定は妥当であって、取り消すべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 (本願商標)



別掲2 (請求人の構成員による使用)
(株)兼平製麺所 http://www.kanehira.co.jp/hanbai/view.php?
(株)戸田久 http://item.rakuten.co.jp/todakyu/337829/#337829
http://item.rakuten.co.jp/todakyu/c/0000000114
(有)吉清水商店 http://www.moriokareimen.com/yosimizunomoriokarei
men-seihinshoukai.htm
(株)中原商店 http://www.moriokareimen.com/p-sha-moriokareimen-
seihinshoukai.htm

別掲3 (参考:他人の使用に係る商標)
http://www.muji.net/store/cmdty/detail/4548718182640



審理終結日 2010-06-30 
結審通知日 2010-07-02 
審決日 2010-07-28 
出願番号 商願2005-12368(T2005-12368) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (Y30)
T 1 8・ 13- Z (Y30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 達夫土井 敬子 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 豊田 純一
小川 きみえ
商標の称呼 モリオカレーメン 
復代理人 岡村 信一 
復代理人 岡村 信一 

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