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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効としない Y30
審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y30
審判 一部無効 観念類似 無効としない Y30
審判 一部無効 外観類似 無効としない Y30
管理番号 1222986 
審判番号 無効2009-890074 
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-06-22 
確定日 2010-09-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5049553号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標登録の無効の審判
1 本件商標
本件登録第5049553号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成18年9月4日に登録出願,第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」を指定商品として,同19年5月7日に登録査定,同年5月25日に設定登録されたものである。
2 本件商標登録の無効の審判
本件商標登録の無効の審判は,本件商標の指定商品中「菓子及びパン」につては,本件商標が商標法4条1項11号に違反して登録されたものであるとして,同法46条1項により本件商標の登録を無効にすることを請求するものである。

第2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2497944号商標(以下「引用商標」という)は,「サクラサク」の片仮名を横書きしてなり,平成2年4月12日に登録出願,第30類「菓子,パン」を指定商品として,同5年1月29日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録は,指定商品中「菓子及びパン」について無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,審判請求書及び口頭審理陳述要領書において,その理由(要旨)を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし同第8号証を提出した。
本件商標は,その指定商品中「菓子及びパン」について商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号により,その登録を無効とすべきものである。
1 本件商標と引用商標との類否
(1)本件商標は,その指定商品中の「菓子やパン」において,特に受験シーズンに販売される季節商品としての菓子やパンに使用されると,特徴的な部分は「サクラサク」となるため引用商標と同一又は類似するものである。
ア 本件商標は,桜を模した5弁の花の図形中に,「きっと,サクラサクよ。」の文字を配置した構成からなるところ,その構成中の文字部分は,上段の「きっと,」と下段の「サクラサクよ。」とが物理的に分離されると共に,「サクラサク」の部分のみが片仮名となっている点に特徴がある。
そして,「きっと」は副詞であり,「サクラサク」の意味を強調するに過ぎないから,需要者の受ける印象は弱い。
また,「サクラサク」は,「桜の花が咲く」を意味するが,大学などの入学試験の合格を知らせる合格通知電報の定型文として広く使用されており,助詞や係助詞が挿入されず表現された点に特徴があり,現在でも,入学試験や各種受験で合格を意味する語として広く一般に使用され,特に,受験シーズンにおいては,合格を意味する縁起のよい(験担ぎ)語としても使用されている。
さらに,「よ。」は,終助詞として「自分の判断を示し,相手に同意を求めたり念を押したりする意を表す。」ものであり,本件商標においては最後尾に配され「サクラサク」の意味を強調する語に過ぎないので,需要者の受ける印象は弱い。
加えて,本件商標の構成中の図形部分は,桜の花びらが開花した状態を直感させるに過ぎず,文字以外の称呼や観念は生じない。
このように,本件商標は,特徴的な部分である「サクラサク」に省略化される。そうでないとしても,「サクラサク」が合格通知電文を連想させる験担ぎの語として認識され,取引者・需要者の注意を強く惹きつける。
イ 引用商標は,「桜の花が咲く」という意味合いを看取しないわけではないが,特に受験シーズンに販売される季節商品においては,合格通知電文ないし受験合格の意味合いを強く直感させるものであり,その称呼は,「サクラサク」である。
ウ 本件商標は,「必ず,サクラサク(桜が咲く,または受験に合格する)よ」の観念を生じ,引用商標は,「サクラサク(桜が咲く,または受験に合格する)」の観念を生じる。
両者を比較すると,本件商標の観念は,引用商標の観念を含んでおり,「きっと,」「よ。」の「サクラサク」を強調する観念が付加されているにすぎないから,観念上類似するというべきであり,また,簡易迅速を尊ぶ取引界においては,「サクラサク」が,分離,抽出して認識されるものであり,その場合には,両者は観念が同一である。
エ 本件商標は,「キットサクラサクヨ」,「サクラサクヨ」及び「サクラサク」の称呼が生じるが,「キットサクラサクヨ」及び「サクラサクヨ」は,「キット」と「ヨ」が「サクラサク」の意味合いを強調するために用いられ,「キット・・・・ヨ」において相違するにすぎないから,引用商標の「サクラサク」の称呼と称呼上類似する。また,「サクラサク」が分離,抽出して認識される場合には,引用商標の称呼と同一である。
オ 本件商標の構成中の図形部分は,「サクラサク」の意味合いを視覚的に直感ないし連想させるものである。また,「きっと,サクラサクよ。」は,「サクラサク」の部分のみが片仮名で表記され,引用商標と印象を同じくするものであるから,本件商標と引用商標とは,外観上類似する。また,簡易迅速を尊ぶ取引界においては,「サクラサク」が分離,抽出して認識されるから,その場合,両者は外観が同一又は類似する。
カ 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,その観念が同一又は類似し,称呼,外観のいずれにおいても,取引者,需要者間で誤認混同を生ずるおそれがあり,同一又は類似する商標ということができる。
(2)本件商標の指定商品中には,引用商標の指定商品「菓子,パン」が含まれ,いずれも受験シーズンの季節菓子やパンを含んでいる。
2 被請求人の主張に対する反論
(1)本件商標がチョコレート菓子の「KitKat」商品(以下「キットカット商品」という。)に用いられていることは認めるが,本件商標の使用が周知であるとの主張は誤りである。引用商標は,平成5年に登録されて以来16年以上も存続し,ライセンスなどにより使用している商標権である。本件商標が引用商標と類似する場合,本件商標の使用は違法な状態で使用を開始したのであり,周知性を獲得することはない。
(2)被請求人は,本件商標と引用商標とは,現在の事象と将来の事象との時制的な観念が相違すると主張するが,「サクラサク」は合格通知電報の定型文であって事象に応じて変化するものではない。また,「キット」の部分は,キットカット商品に使用するので,需要者に「きっと勝つ」を連想させる部分であるから,本件商標は,「サクラサク」の部分が分離して認識されるものである。
したがって,本件商標は,全体で発音すると冗長であること,外観上統一性が見られないことも相俟って「サクラサクよ」又は「サクラサク」の部分が分離抽出され,合格通知電報の定型文として合格の意味合いを有する「サクラサク」の観念が生ずる。
(3)被請求人が主張する過去の審査例のうち,出願無効になったものは参考にならない。登録例も本件商標とは構成が異なるものであるから,参考にならない。また,被請求人は,IPDLの商標称呼検索の結果を基に「キットサクラサクヨ」は「サクラサク」とは類似の範囲外と主張するが,IPDLの称呼検索は類似の目安に過ぎず,特許庁における商標の類似判断を示すものではない。
3 したがって,被請求人の主張は合理的な理由がなく,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念において誤認混同を生ずる類似の商標といわなければならない。
よって,請求の趣旨のとおりの審決を求める。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,第2答弁書及び口頭審理陳述要領書において,その理由(要旨)を次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第21号証を提出した。
1 本件商標と引用商標との類否
(1)本件商標と引用商標とは,バラ色,墨書の色違いもあり,これらの外観が全く異なることは一見明白であり,外観上非類似の商標である。
また,本件商標は,「キットサクラサクヨ」の9音の称呼を生じ,引用商標は,「サクラサク」の5音の称呼を生ずるから,本件商標と引用商標とは,9音と5音との二倍程度の音数長短の顕著な相違のみならず,「キット」と「ヨ」の有無により,語韻語調の全く異なる称呼上非類似の商標である。
さらに,本件商標は,「必ず桜は咲くよ」が転じて,「必ず入試は合格するよ」を連想し観念せしめるもの(受験応援文言)であり,また,将来の事象を意味する未来形の文である。一方,引用商標は,「桜が咲いた」,「桜が咲いている」などの現在の事象を観念する現在形ないし現在完了形の文であり,さらに,入学・入社試験の『合格』を連想し観念せしめるものであるから,本件商標と引用商標とは,その意味内容は大きく相違し,観念が顕著に異なる非類似の商標である。
したがって,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念いずれからして顕著に相違する非類似の商標である。
(2)被請求人が出願した「きっと,サクラサクよ。」及び「キット,サクラサクよ。」の文字からなる商標又はこれらと桜の花びらと思しき図形を組み合わせた商標が,指定商品に「菓子,パン」を含み,引用商標と区別して,過去に設定登録又は登録査定がなされている。また,被請求人以外を権利者とし,「菓子,パン」を指定商品とする「サクラサクラ」及び「サクラ」なる商標が,引用商標と区別し登録されている過去の登録例に照らしても,本件商標と引用商標が非類似であることは明らかである。
(3)本件商標と引用商標との類否判断は,最高裁昭和43年2月27日判決(昭和39年(行ツ)第110号),最高裁平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号第二小法廷)及び最高裁昭和39年(行ツ)第110号第三小法廷(昭和43年2月27日)判決の判断基準に則って考察されなければならない。
本件商標は,本件商標権の使用権者たる件外ネスレコンフェクショナリー株式会社が販売するキットカット商品の正面右上に表示されている。しかも,本件商標は,いわゆる受験生応援製品として受験シーズンのみに販売される商品に用いられている。
そして,多くの受験生が合格を祈念して,当該キットカット商品を求め,4人に1人が受験会場に持参するといわれるほど着目される商品にあって,本件商標を付した商品と引用商標が使用される商品とを混同することは皆無ということができる。
また,「サクラサク」は,本件商標が使用される受験シーズンにあっては「合格」を意味する。それ故,本件商標が使用されるキットカット商品が販売される時期において,「サクラサク」は,「合格」を連想し得ても,請求人の登録商標を想起するものでないことは明白である。
そして,引用商標が使用される商品はいわゆる袋菓子であり,キットカット商品とは全く異なる商品形態及び製品態様であり,験(げん)を担ぐ受験生が,本件商標の商品と引用商標の商品とを取り違えるといったことは,余程のことがない限りあり得ないことが明白である。
このように,商品取引の実情を勘案してみれば一層明らかなように,本件商標と引用商標との間で,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれは皆無である。
2 請求人の請求理由に対する反論
(1)請求人は,「サクラサク」を特徴的部分と捉え,「きっと,…よ」の差異点を付加的な要素に過ぎない旨主張しているが,「きっと,…よ」は,単なる付加的な要素でなく,これを付加することにより出所識別標識としての観念(未来形の応援メッセージ)を生ぜしめる重要な言葉であることが明らかであるから,当該請求人の主張は,前掲最高裁「商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼などによって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想などを総合して全体的に考察すべきもの」とする規範から逸脱するものであることが明白である。
(2)また,請求人が主張する「サクラサク」のみを中心とする類否判断は,前掲最高裁の「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合を除き,許されないというべきである。」に徴しても明らかに誤りである。
そして,前記2の(1)のとおり,本件商標は,「きっと,…よ」が加わることにより,全く異なる観念を生じるものであり,さらに,商品取引の実情が全く異なるものであるから,引用商標とは非類似であって,請求人の主張する類否判断は誤りである。
3 したがって,本件商標と引用商標とは,外観,観念及び称呼が異なるのみならず,商品取引の実情も顕著に相違し,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれが存在しないから,非類似の商標であることが明らかである。
よって,答弁の趣旨どおりの審決を求める。

第5 当審の判断
1 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は,別掲のとおり,バラ色系の色彩が施され右肩上がりに傾いた桜と思しき5弁の花びらの図形中に「きっと,」と「サクラサクよ。」の句読点を含む文字を二段に配置した構成からなるものであるところ,その構成中の「きっと,サクラサクよ。」の文字部分が独立して自他商品識別標識として機能を果たし得るものと認められる。
そして,この「きっと,」と「サクラサクよ。」は,濃いバラ色の輪郭の籠文字により,双方が右肩上がりに傾いた五弁の花びらに沿う形でほぼ円弧状に,外観上まとまりよく配置され,その構成文字全体が一体のものとして認識し得るものであり,これから生ずる「キットサクラサクヨ」の称呼も格別冗長なものでもなく,無理なく一連に称呼し得るものである。
また,これは,「桜が咲く」又は合格通知電報の定型文であって「試験に合格したこと」ほどの意味を有する「サクラサク」の文字に,「確実に行われることを予測・期待するさま。必ず。」などを意味する副詞の「きっと(屹度・急度)」と,「自分の判断を示し,相手に同意を求めたり念を押したりする意」を表す終助詞の「よ」が付加されたものであって,全体として,「必ず桜が咲くよ」又は「必ず試験に合格するよ」ほどの意味合いの将来の事象を認識させる熟語を形成しているものとみるのが相当である。
そうすると,本件商標は,「きっとサクラサクよ」の文字部分全体に相応し,「キットサクラサクヨ」の一連の称呼のみを生じ,「必ず桜が咲くよ」又は「必ず試験に合格するよ」との将来の事象を認識させる観念を生ずるものとみるのが自然である。
一方,引用商標は,「サクラサク」の片仮名からなるものであるから,「サクラサク」の称呼を生ずるものであり,前記のとおり,「桜が咲く」又は「試験に合格した」との現在又は過去の事象を認識させる観念を生ずるものとみるのが自然である。
そこで,本件商標と引用商標の称呼を比較すると,両者は「キット」及び「ヨ」の音の有無という構成音数の差,音構成の差などにより,明瞭に区別し得るものであり,また,観念についても,将来の事象を認識させるものと,現在又は過去の事象を認識させるものとの相違があり,さらに外観も判然と区別し得る差異を有するものである。
そうすると,本件商標と引用商標とは,その外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号には該当しない。
2 当事者の主張について
「サクラサク」が合格通知電報の定型文であって「試験に合格したこと」ほどの意味を有する語であって,特に受験シーズンにおいて合格を意味する縁起のよい(験担ぎ)語として使用されていることについては,請求人及び被請求人の間において争いはないところである。
そして,請求人は,「サクラサク」の文字を含む本願商標が,「菓子,パン」において,特に受験シーズンに販売される受験に関連する季節商品に使用されると,「サクラサク」の部分が需要者の注意を惹く部分として着目され,当該部分が独立して自他商品識別機能を発揮する旨主張する。
しかし,「サクラサク」が上記意味合いを有する語として広く知られているとしても,前記1で認定したとおり,本件商標中の「きっと,サクラサクよ。」の文字部分は,全体を一体のものとして把握されるとみるのが自然であるから,本件商標は,その構成文字全体から生ずる称呼及び観念をもって取引されるものと言わざるを得ない。
さらに,両者の主張する取引の実情を考慮したとしても,本件商標について「サクラサク」の文字のみを抽出し,これが独立して自他商品識別標識としての機能を発揮し得るとする特段の事情も見あたらない。
したがって,請求人の主張は,採用できない。
3 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから,商標法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)

(色彩は原本参照のこと)


審理終結日 2010-02-03 
結審通知日 2010-02-05 
審決日 2010-02-18 
出願番号 商願2006-82264(T2006-82264) 
審決分類 T 1 12・ 263- Y (Y30)
T 1 12・ 261- Y (Y30)
T 1 12・ 26- Y (Y30)
T 1 12・ 262- Y (Y30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 信彦 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 石田 清
小林 由美子
登録日 2007-05-25 
登録番号 商標登録第5049553号(T5049553) 
商標の称呼 キットサクラサクヨ、キット、サクラサクヨ 
代理人 清水 良二 
代理人 森 正澄 
代理人 森田 政明 
代理人 西 良久 

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