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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200820796 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項4号 ありふれた氏、名称 登録しない X35
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X35
管理番号 1222974 
審判番号 不服2009-14586 
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-12 
確定日 2010-08-12 
事件の表示 商願2007-63406拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「OGINO」の欧文字を普通に用いられる方法で表してなり、第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、平成19年6月20日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、ありふれた氏姓の一つと認められる『荻野』を欧文字表記したものとしか認識し得ない『OGINO』の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。なお、出願人は、意見書において本願商標は、商標法第3条第2項に該当するものであると主張し、証拠として甲第1号証ないし甲第17号証(枝番を含む。)を提出しているが、これらの証拠表示された商標は本願商標と構成態様が異なり、かつ、店舗も山梨県を主として長野県2店舗、神奈川県1店舗にすぎないから、これらの証拠によっては本願商標がその指定役務について使用された結果、本願商標の登録出願時はもとより査定時においても需要者間に広く認識されるに至っていたものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第4号について
本願商標は、上記1のとおり、「OGINO」の欧文字からなるものである。そして、日常の商取引において、日本人の姓氏を表す場合、必ずしも漢字のみならず、平仮名、片仮名、又は欧文字等で表す場合も決して少なくないことからすれば、本願商標は、これに接する取引者、需要者に、我が国においてありふれた氏の一つである「荻野」を欧文字で表したものと極めて容易に理解されると判断するのが相当である。そこで、「荻野」が姓氏の一つという点については、例えば、株式会社岩波書店発行「広辞苑 第六版」に、「荻野」について「姓氏の一。」との記載があり、また、「荻野」の姓が、ありふれた氏という点については、例えば、「NTT東日本株式会社」発行の「50音別 個人名 ハローページ 東京都23区全区版 上」(1996.3?1997.2)に多数(約800名以上)掲載されていることや、佐久間英著「日本人の姓」(1972年3月8日 六藝書房発行)に「多い姓の六千傑」中、「順位 353位、人数 約5万」との記載があることからも裏付けられる。
そして、請求人は、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当することについて何ら意見を述べていない。
(2)商標法第3条第2項について
請求人は、「本願商標は、出願人の業務に係る役務を表示するものとして以前より継続的に使用されており、現在では既に出願人の業務に係る役務を表すものとして取引者、需要者に広く認識されるに至っているので、商標法第3条第2項に該当し、登録されるべきものである。」旨主張し、証拠方法として、原審において甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。)及び当審において甲第18号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出しているので、以下この点について検討する。
ア 商標法第3条第2項の趣旨
知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10054号判決(判決言渡 平成18年6月12日)は、「・・・商標法3条2項は,商標法3条1項3号等に対する例外として,『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できることができるもの』は商標登録を受けることができる旨規定している。その趣旨は,特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には,当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に,当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上,他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから,当該商標の登録を認めようというものであると解される。上記のような商標法3条2項の趣旨に照らすと,同条項によって商標登録が認められるためには,以下のような要件を具備することが必要であると解される。
(ア)使用により自他商品識別力を有すること
商標登録出願された商標(以下「出願商標」という。)が,商標法3条2項の要件を具備し,登録が認められるか否かは,実際に使用している商標(以下「使用商標」という。)及び商品,使用開始時期,使用期間,使用地域,当該商品の生産又は販売の数量,並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して,出願商標が使用された結果,判断時である審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる『自他商品識別力(特別顕著性)』の獲得の有無)によって決すべきものである。
(イ)出願商標と使用商標の同一性が認められること
商標法3条2項の要件を具備するためには,使用商標は,出願商標と同一であることを要し,出願商標と類似のもの(例えば,文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。なぜなら,同条項は,本来的には自他商品識別力がなく,特定人の独占にもなじまない商標について,特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり,実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして,登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると,同条項は,厳格に解釈し適用されるべきものである。・・・」と判示しているところである。
イ 本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて
そこで、上記アの判決を踏まえて、原審において提出された甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。)及び当審において提出された甲第18号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)の証拠に基づいて、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったか否かを検討する。
(ア)会社案内など
a 会社案内(甲第1号証)
会社案内には、本願商標が表示されているものの、表紙、3頁「リバーシティショッピングセンター」及び「オギノ茅野ショッピングセンター」の写真、5頁「オギノカード」の写真、8頁「お客様をご招待した産地研修会」の写真、9頁「生鮮センター」及び「貨物トラックのコンテナ後部」の写真並びに裏表紙には、本願商標とともに、赤地の正方形内に片仮名の「オ」の文字を図案化したと思しき図形を白抜きで表した商標(以下「図形商標」という。)が表示されており(例えば、オギノ茅野ショッピングセンターの店舗屋上に、看板として大きく注意を引く態様で使用されている。)、本願商標のみの使用とは認められない。
b ■チェーン店の全容(甲第2号証)
請求人が、甲府市を本部として、山梨県内及び隣接県に出店していることがうかがえるが、本願商標は表示されていない。また、請求人の全ての店舗において、本願指定役務と同一の役務が提供されているのか明らかではない。
c 山梨県内主要スーパーの店舗数(甲第18号証の1)
請求人の店舗が、山梨県内において、同業者に比較して多数出店されていることがうかがえるが、本願商標は表示されていない。また、請求人の全ての店舗において本願指定役務と同一の役務が提供されているのか明らかではない。
(イ)店舗の写真、商品券、ちらし、新聞広告、書籍の記事など
a 貢川店の写真(甲第3号証の2)、春日居店の写真(甲第3号証の4)、朝日店の写真(甲第3号証の6)、イ-ストモール店の写真(甲第3号証の9)、湯村店の写真(甲第3号証の10及び16)、茅野店の写真(甲第3号証の11)、リバーシティ店の写真(甲第3号証の12及び15)、リバーシティ店の看板写真(甲第4号証の1)、湯村店の看板写真(甲第4号証の2)、イーストモール店の看板写真(甲第4号証の3)、イーストモール店のフロアガイドの写真(甲第5号証の6)、エレベーター入り口の案内板の写真(甲第6号証の1)、ショッピングカートの写真(甲第7号証の3及び4)、紙製包装用袋の写真(甲第9号証の1)、ビニール製レジ袋の写真(甲第9号証の2)、紙製包装用紙(甲第9号証の3)、店員の名札及びエプロンの写真(甲第10号証の2)、店員の名札の写真(甲第10号証の3)、店舗内の掲示物写真(甲第11号証の1ないし3)、商品券の写真(甲第12号証)、ちらし(甲第13号証(枝番号を含む。))、新聞広告(甲第14号証(枝番号を含む。))、ギフトカタログなど(甲第15号証(枝番号を含む。))及びホームページの写し(甲第26号証の2)には、本願商標とともに図形商標が表示されており、本願商標のみの使用とは認められない。また、それぞれの店舗において、本願指定役務と同一の役務が提供されているのか明らかではない。
b 「三菱UFJビジネススクエア SQUET」(甲第27号証)の記事中の店舗の写真、「プレジデント」(甲第28号証)の記事中のポイントカードの写真及び「CRM2006ベストプラクティス白書」の記事中の図表(甲第32号証)には、本願商標とともに、図形商標が表示されており、本願商標のみの使用と認めることはできない。
c 昭和店の写真(甲第3号証の1)、敷島店の写真(甲第3号証の8)、イーストモール店の写真(甲第3号証の9)、リバーシティ店東口の写真(甲第3号証の13)、リバーシティ店の入り口写真(甲第3号証の14)、リバーシティ店のフロアガイドの写真(甲第5号証の1及び2)、ショッピングカートのご使用方法の写真(甲第7号証の1)、ベビーカートの案内板の写真(甲第7号証の2)、車椅子の写真(甲第7号証の5)、食品トレー・牛乳パックの回収箱及び灰皿の写真(甲第8号証の1)、傘袋回収箱及び営業日・営業時間案内板(甲第8号証の2)及び店内の売場コーナーの写真(甲第11号証の4)には、それぞれ、本願商標とともに「jOY」、「Kirara City」、「vario」又は「RIVER CITY」の文字が表示されており、本願商標のみの使用とは認められない。また、それぞれの店舗において、本願指定役務と同一の役務が提供されているのか明らかではない。
(ウ)証明書など
a 甲府商工会議所の証明書(甲第16号証)及び取引先企業の証明書(甲第17号証(枝番号を含む。))は、文面自体としては、本願商標が本願指定役務について、昭和63年頃から一部の店舗で使用が開始され、平成10年頃から現在に至るまで継続的に全店舗で使用され、現在では、取引者及び需要者間で、直ちに請求人の本願指定役務を表示するものとして認識するほどに周知著名であることを証明する内容となっている。しかしながら、いずれも定型の文章で作成されたものに記名押印したものであって、証明者がいかなる根拠に基づき、取引者及び需要者間で本願商標が周知著名な商標と確実に認められていることを証明したのか、その証明の判断の客観的な過程が明らかではない。
b 株式会社サンニチ印刷の折り込みちらしに関する証明書(甲第19号証)は、文面自体としては、請求人が、本願指定役務について本願商標を使用したちらし広告を、平成10年頃より、継続して製作し、少なくとも週一回(一回あたり5万ないし10万枚)山梨日日新聞、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞等の日刊新聞に折り込みで、山梨県全域に配布した内容となっている。しかしながら、資料として添付された平成21年7月30日発行のちらしには、本願商標とともに図形商標が表示されており、本願商標のみの使用とは認められない。また、ちらし広告の対象となる請求人の店舗において、本願指定役務と同一の役務を提供しているのか明らかではない。さらに、そのちらし配布地域も山梨県内にすぎない。
c 株式会社サンニチ印刷の新聞広告に関する証明書(甲第20号証)は、文面自体としては、請求人が、本願指定役務について本願商標を使用した日刊新聞紙における広告を、平成10年頃より、継続して製作し、毎週水曜日に山梨日日新聞に掲載した内容となっており、当該新聞は、約21万部(平成20年1月現在)発行されている(甲第21号証)。しかしながら、資料として添付された平成21年7月27日発行の新聞広告には、本願商標とともに図形商標が表示されており、本願商標のみの使用とは認められない。また、新聞広告の対象となる請求人の店舗において、本願指定役務と同一の役務を提供しているのか明らかではない。さらに、山梨日日新聞も、全国紙ではなく、山梨県域を対象とする地方紙にすぎない。
d 株式会社獏広告事務所のテレビ広告に関する証明書(甲第23号証)は、文面自体としては、請求人が、本願指定役務について本願商標を使用したテレビ放送における宣伝広告を、平成10年頃より、継続して製作し、株式会社山梨放送、株式会社テレビ山梨を放送局として年平均約650本を放送した内容となっている。しかしながら、資料として添付された平成19年11月頃製作の絵コンテ(オギノ『JOY特別感謝祭07秋』編TV-15秒)には、本願商標とともに図形商標あるいは「jOY」の文字が表示されており、本願商標のみの使用とは認められない。また、テレビ放送による広告の対象となる請求人の店舗において、本願指定役務と同一の役務を提供しているのか明らかではない。
さらに、絵コンテ(甲第24号証(枝番号を含む。))においても、本願商標とともに図形商標あるいは「jOY」の文字が表示されており、本願商標のみの使用とは認められない。また、テレビ放送による広告の対象となる請求人の店舗において、本願指定役務と同一の役務を提供しているのか明らかではない。
そして、「平成20年度(株)オギノ様 UTYテレビ山梨 テレビCM放送実績」(甲第22号証)には、UTYテレビ山梨でスポットCMを344本放送したとあるが、当該テレビ局の放送地域は、山梨県内にすぎない。
(エ)インターネットホームページ
請求人ホームページのアクセス件数表(甲第25号証)は、平成20年7月から平成21年6月までのアクセス件数の一覧と総計であるが、本願商標は表示はされていない。また、ホームページの写し(甲第26号証の1)中の店舗の写真には、本願商標が単独で表示されているが、当該店舗において、本願指定役務と同一の役務を提供しているのか明らかではない。さらに、ホームページの写し(甲第26号証の2)中には、本願商標が表示されているが、上記(イ)aのとおり、本願商標のみの使用とは認められない。
(オ)本願商標の使用開始時期、使用期間について
上記(ウ)aのとおり、甲府商工会議所及び取引先企業の証明書(甲第16号証及び甲第17号証(枝番号を含む。))は、請求人が、本願商標を本願指定役務について、昭和63年頃より一部の店舗で、平成10年頃より全店舗において現在に至るまで継続的に使用している旨の文面であるが、証明者がいかなる根拠に基づき証明をしたのか、その証明の判断の客観的な過程が明らかでないから、それらの証拠価値を高く評価することはできない。また、上記(ウ)b.c.dのとおり、株式会社サンニチ印刷及び株式会社獏広告事務所の証明書(甲第19号証、甲第20号証及び甲第23号証))は、本願指定役務について本願商標を使用した広告を、平成10年頃より、継続して製作し、広告している旨の文面であるが、当該広告においては、本願商標のみの使用とは認められない上に、ちらし、新聞広告及びテレビ放送による広告の対象となる請求人の全ての店舗において、本願指定役務と同一の役務が提供されているのか明らかではない。さらに、その他の提出された証拠をみても、2003(平成15年)年8月6日付けの新聞広告(甲第14号証の1)が、もっとも古い日付のものとして確認できるにすぎない。そして、当該新聞広告においても、上記(イ)aのとおり、本願商標のみの使用とは認められない上に、当該新聞広告の対象となる請求人の店舗において、本願指定役務と同一の役務が提供されているのか明らかではない。してみれば、本願商標が本願指定役務について、長期間にわたり、継続して使用されたということはできない。
(カ)商標の使用地域(出店地域、営業の規模、広告の方法、回数及び内容)について
a 上記(ア)のとおり、請求人が、山梨県において、同業の他社に比較して多数の店舗(37店舗)を出店していることがうかがえる(甲第1号証、甲第2号証及び甲第18号証の1)ものの、本願商標が使用されたものとは認められない。また、これらの店舗の全てにおいて本願指定役務と同一の役務を提供しているものとは認められず、かつ、それら店舗の出店地域は、全国的にみれば、山梨県とその隣接県である長野県岡谷市及び同県茅野市並びに神奈川県横浜市青葉区という限られた地域にすぎない。
b 請求人の総売上高については、「・・・二〇〇六年二月期の売上高は七四二億円に達している。・・・」(甲第27号証)、「・・・売上高を、二〇〇六年二月期には七四二億円・・・」(甲第28号証)及び「・・・山梨県のオギノ・・・年商755億円・・・」(甲第34号証)との記載がある。しかしながら、そのうち、本願指定役務を提供する店舗に相当する総合スーパーのみの売上金額は明らかではない。さらに、全国の百貨店、総合スーパーの総売上高において、どの程度の比率を占めているのかも不明である。そこで、「総務省統計局発行 総務省統計研修所編集 第五十九回 日本統計年鑑 平成22年」中「第13章 商業・サービス業」の「統計表13-4小売業の産業,販売形態別年間商品販売額」(http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y1304000.xls)中の百貨店,総合スーパーの年間商品販売額を参照してみると、それらの年間商品販売額は、約十五兆円(151,560億円)である。この統計の額は、平成19年(2007年)のものではあるが、上記の雑誌記事などと、ほぼ同時期といえるものであるところ、請求人の全ての売上高を考慮しても、上記統計値に対して極めて微少な額(約二百分の一)にすぎない。
c 上記(ウ)b.c.dのとおり、ちらし配布地域は、山梨県内(甲第19号証)にとどまり、また、広告を掲載する山梨日日新聞の発行部数は、210,518部(2008年1月)にすぎない(甲第20号証及び第21号証)地方紙である。さらに、テレビ広告は、株式会社山梨放送又は株式会社テレビ山梨を放送局とするもの(甲第23号証)であり、山梨県内の需要者に対して行われているにすぎない。してみれば、全国の一般需要者が、これらに接する機会が多いということはできない。
(キ)雑誌など又はインターネットにおける記事掲載の回数及び内容
a 「三菱UFJビジネススクエア SQUET」(甲第27号証)、「プレジデント」(甲第28号証)、「CRM2006ベストプラクティス白書」(甲第32号証)、「店のちから」(甲第33号証)及び「シジシーニュース」(甲第34号証)についてみると、「プレジデント」を除いて、それらの発行部数は不明である上に、これらの記事も、その記事の内容、性質からみて、過去に一度だけ掲載されたものにすぎず、一定の期間に反復継続して掲載されたものということはできない。
また、上記の雑誌などは、いずれも本願指定役務の需要者である一般的な消費者が、普段、目にするようなものとも認められない。
さらに、上記(イ)bのとおり、「三菱UFJビジネススクエア SQUET」(甲第27号証)、「プレジデント」(甲第28号証)及び「CRM2006ベストプラクティス白書」(甲第32号証)に掲載された写真及び図表からは、本願商標のみの使用と認めることはできない。
b インターネットのアクセス件数(甲第25号証)には、2008年7月から2009年6月までのアクセス件数が記載されているが、一日あたり平均600件程度のアクセスにすぎず、全国の需要者に知られるに至っているものとは、認められない。
(ク)本願指定役務と請求人の提供する役務の同一性について
本願の指定役務の特徴は、小売業を行う者が、衣料品、飲食料品及び生活用品の各範疇にわたる商品を一括して1事業所で扱い、それらの商品の売上げがいずれも総売上高の10%?70%程度の範囲内にあることである。そして、本願指定役務は、具体的にいうならば、百貨店又は総合スーパーが提供する役務である。そこで、提出された証拠をみると、「・・・売上高は七四二億円に達している。その内訳は、食品が六六%、衣料品が一六%、住宅関連用品が八%、その他一〇%となっており、食品主体のスーパーとして、オーガニック野菜の充実や食肉部門の生産履歴(トレーサビリティ)公開など、特に生鮮食品部門の強化を図ることで、消費者の高い支持を得ている。」との記載(甲第27号証)及び「同社の店舗はキャロット店(売場面積90坪)、中型店(同300?500坪)、大型店(SM+衣料SS同1000坪、ショッピングセンター(GMS)の4タイプがあるが、今後は中型店(SM500坪型)と大型店に店揃えしてゆく考えだ。」との記載(甲第34号証)があることからすれば、請求人は全ての店舗ではないものの、一部店舗において、本願指定役務と同一の役務を提供していることが推認される。
(ケ)本願商標の単独での表示について
a 会社案内3頁の「オギノ田富店」の写真及び4頁の「オギノ山梨ショッピングセンター」の写真(甲第1号証)、国母店の写真(甲第3号証の3)、城東店の写真(甲第3号証の5)、都留店の写真(甲第3号証の7)、湯村店の自動ドア(部分)の写真(甲第3号証の17)、湯村店のフロアのご案内の写真(甲第5号証の3ないし5)、オギノ甲州店の写真(甲第33号証101頁)並びに富士吉田店の写真(甲第34号証)には、本願商標が単独で表示されている。しかしながら、上記の店舗において、本願指定役務と同一の役務が提供されているのか明らかではない。また、上記の店舗は、中巨摩郡田富町、山梨市、甲府市、都留市、甲州市又は富士吉田市に所在し、いずれも山梨県内の店舗(甲第2号証)にすぎない。
b エスカレーターわきの案内板の写真(甲第6号証の2)及び店員の制服の背部の写真(甲第10号証の1)には、本願商標が単独で表示されている。しかしながら、当該写真の撮影された店舗において、本願指定役務と同一の役務が提供されているのか明らかではない。また、当該店舗が、いずれの店舗であっても山梨県、長野県及び神奈川県(甲第2号証)内の店舗にすぎない。
c ホームページの写し(甲第26号証の1)中の店舗の写真には、本願商標が単独で表示されている。しかしながら、当該店舗において、本願指定役務と同一の役務を提供しているのか明らかではない。また、当該店舗が、いずれの店舗であっても山梨県、長野県及び神奈川県(甲第2号証)内の店舗にすぎない。
ウ まとめ
以上からすれば、本願商標と同一の商標が、本願指定役務と同一の役務について使用されたということはできない。したがって、提出された証拠によっては、本願商標が、永年の継続的な使用によって、自他役務識別力を獲得したということはできず、本願商標がその指定役務について使用をされた結果、需要者が請求人の業務に係る役務であることを認識することができるものとは認めることはできない。
してみれば、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するものではなく、ありふれた氏普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわざるを得ないから、本願商標を商標法第3条第1項第4号に該当するとした原査定は、妥当であって、取り消すべき限りでない。
エ 請求人の主張について
(ア)請求人は、図形商標が表示されている点について、単に2つの商標を併記した場合があるにすぎないから、使用されている商標と本願商標とは同一と解すべきであると主張する。
しかしながら、本来的には、自他役務識別力がなく、特定人の独占になじまないものである、ありふれた氏を、普通に用いられる方法で表したにすぎない本願商標と、それ自体として自他役務識別力を有している図形商標とでは、需要者に与える印象・記憶に格別の差があると優に認められ、両商標が併用された場合において、本願商標が単独で自他役務識別力を獲得したとは認めがたいものであるから、請求人の主張を採用することはできない。
(イ)請求人は、「『特許庁における商標法第3条第2項の運用』(審決注:請求人は、『特許庁における商標法第3条第2項の運用』なる文書について、出典を明らかにしていない。)においても、原則として、『使用による識別力を判断する際には、全国レベルで需要者の間に周知であることが必要である』としながらも、『例外的に特定の需要者による識別性があるか否かの判断で十分なケースが存在する』としている。本件出願をみてみるに、出願人の業務は、いわゆるスーパーにおける食品・衣料品等の販売である。スーパーにおける業務は、本来、地域に密着して展開されるものであり、その店舗が特定の地域に限定されるものであるから、商標法第3条第2項の適用を判断するに当たっては、その点が十分に考慮されるべきである。」と主張している。
しかしながら、本願指定役務は、具体的には、百貨店や総合スーパーが提供するものであるところ、請求人の「本件出願をみてみるに、出願人の業務は、いわゆるスーパーにおける食品・衣料品等の販売である。」との主張が、単なる食品スーパーや衣料品店を意図するならば、その主張は、本願指定役務とは異なる役務についての主張となり、その前提において誤りである。また、本願指定役務が特定の地方に限って提供される役務であるとか、需要者層が極めて限定される特殊な役務であるとはいえず、その需要者層もごく一般的な需要者といえるものである上に、商標法第3条第2項の適用により、商標登録された商標権の効力も、全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮するならば、その主張を採用することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-06-03 
結審通知日 2010-06-08 
審決日 2010-06-30 
出願番号 商願2007-63406(T2007-63406) 
審決分類 T 1 8・ 14- Z (X35)
T 1 8・ 17- Z (X35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 津金 純子原田 信彦 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官
内田 直樹
岩崎 良子
商標の称呼 オギノ 
代理人 浅川 哲 

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