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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z03
管理番号 1219970 
審判番号 取消2009-300191 
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-02-06 
確定日 2010-07-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4455388号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4455388号商標(以下「本件商標」という。)は、「イノア」の片仮名文字と、これに比してやや大きめの「INOA」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成12年2月28日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,香料類,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として、同13年2月23日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用をしていないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は、取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 本件商標の使用は立証されていない。
被請求人が本件商標を使用しているとして提出した乙第1号証及び乙第2号証は、被請求人との関係が不明な法人が自ら作成した書類に過ぎず、何ら証拠としての客観性を見いだすことができないから、本件商標の使用を立証するものではない。
イ 乙第1号証について
乙第1号証は、商品名「INOA EMOLLIENT GELL」とされる容器の外観を撮影した写真であるが、これには、撮影日等を立証する資料は何もないから、審判請求の登録日前に使用された事実を立証するものとはいえない。
ウ 乙第2号証について
乙第2号証は、商品名「イノアエモリエントジェル」の納品伝票(控)であるところ、以下のような不備があり、その真正な成立に疑問があるといわざるを得ない。
(ア)審判において、書証の申し出として文書を提出する場合は原本を提出することが必要とされるところ、被請求人は納品伝票の写ししか提出していない。また、納品伝票には、作成者の記名、捺印がなく、その作成者は全く不明である。
登録商標の使用事実の証拠として提出された売上伝票の証明力については、原本を提出しなかった案件について、原本の存在及び成立の真正に疑義の余地があるとする審決例(甲第1号証の1)及び東京高等裁判所における裁判例(甲第1号証の2)がある。
(イ)当該納品伝票の発行者は「株式会社レ・ジーナ」であるところ、当該法人と商標権者(被請求人)の関係は不明であり、当該法人が本件商標の専用使用権者又は通常使用権者であるとの立証はないから、該納品伝票は、本件商標が商標権者又は使用権者によって使用された事実を立証するものとはいえない。
(ウ)さらに、納品伝票は「株式会社レ・ジーナ」から「レ・ジーナ直販」に宛てて発行されたものであるところ、名宛人はその名称から推断して発行者となんらかの関係を有するものであるか、若しくは同一人であるものと思われる。このような納品伝票は、客観的な第三者の関与なしに、いつでも、単独で随意に作成することができる書面に過ぎないものであって、その日付・内容ともに機械上の操作により容易に変更を加えることが可能なものであるから、なんら客観的証拠としての価値を見出すことはできず、他にこれらの納品伝票が審判請求日以前に作成されたものであることを客観的に立証する資料(例えば、顧客が発行した発注書等)は提出されていないから、少なくとも、かかる納品伝票をもって本件商標が審判請求の登録日前に使用された事実が立証されたということはできない。
(エ)加えて、当該納品伝票には、品番(000800)が同一の商品であるにもかかわらず、納品伝票により単価が区々であるという不自然な点がある。
(オ)小括
以上を総合勘案すれば、乙第2号証は、そもそもその真正な成立に多大な疑義がある上、被請求人との関係が不明な法人の名義にかかるものであって、その作成者も不明であり、かつ、何ら客観的裏付けもなく、その内容にも不自然な点が認められるものであって、被請求人において、本件商標の取消を免れるために審判請求の日以後に作成されたものである可能性を否定し得ないといわざるを得ないものであるから、乙第2号証をもって本件商標が審判請求の登録日前に使用された事実が証明されたとはいえない。
この点、前出東京高等裁判所判決(甲第1号証の2)にかかる判決例に照らしてみても、上記請求人の主張は首肯される。
エ 使用商標と本件商標の社会通念上の同一性について
(ア)本件商標は片仮名文字の「イノア」及び欧文字の「INOA」を上下2段に分かち書きしてなる商標であるところ、乙第1号証に認められる商標は円の中に「I」と「C」を組み合わせた図形を上段に、「INOA」を中段に、その下に小さく「COSMETIC」の文字を結合した商標(以下「使用商標1」という。)及び「イノア」を上段に、その下に「エモリエントジェル」をそれぞれ横書きにしてなる商標(以下「使用商標2」という。)であり、乙第2号証に認められる商標は「イノア エモリエントジェル」を横一連に書してなる商標である(以下「使用商標3」という。)。
そこで、使用商標1ないし3と本件商標の態様とをそれぞれ対比すると、これら使用商標が本件商標と「同一の商標」ではないことは明らかである。
(イ)次に、使用商標1ないし3が本件商標と「社会通念上同一の商標」といえるか否かを検討する。
A 庁審判便覧に基づく検証
庁審判便覧によると、商標法第50条の規定による取消審判において登録商標の使用と認められる事例として「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」が挙げられている(商標審判便覧53一01参照)。
しかるに、本件商標上段の「イノア」は特定の観念を有しない造語と考えられ、他方「INOA」も我が国国民の間において親しまれた英単語ではなく、同じく特定の観念を有しない造語と考えられる。
してみれば、本件商標は審判便覧に挙げられている「上段及び下段の各部が観念を同一とする」ものとはいえないから、その一方である「イノア」又は「INOA」単独の使用は、本件商標と「社会通念上同一の商標」の使用と認めることができない。
B 使用商標1について
使用商標1は「INOA」の上段に顕著な構成を有する「IC」のロゴマークが結合され下段に「COSMETIC」の文字が一体的に結合されているから、外観において本件商標とは大きく相違するものであり、仮に中段の「INOA」の文字部分を抽出して考察しても、上記Aに述べたとおり、「INOA」単独の使用は、社会通念上同一の商標の使用とはいえない。
さらに、親しまれた語ではない「INOA」は、これより生じる称呼も特定し得ないものであり、我が国において馴染まれた英単語や外来語の用例に倣い「イノア」の称呼の他、「アイノア」、「インオア」等の称呼も生じ得る。
そうすると、使用商標1は、本件商標とは外観上大きく異なる上に、観念上の同一性も無く、称呼の上での同一性も認められないから、本件商標と社会通念上同一の商標と認める余地はない。
C 使用商標2及び3について
使用商標2及び3は外観上本件商標と相違する上、使用商標2及び3のうち「イノア」の文字部分を取り出して考察してみても、上記Aに述べたとおり、「イノア」単独の使用は、本件商標と「社会通念上同一の商標」の使用はいえない。
さらに、需要者・取引者の間において「イノア」が「INOA」と同一の観念を有すると認識されている事実は無く、また、欧文字の「INOA」は「イノア」の他「アイノア」又は「インオア」の称呼をも生じ得るものであるから、「イノア」が「INOA」の表音表記であると認識されている事実もない。したがって、使用商標「イノア」から必然的に「INOA」が想起・認識されるということもない。
してみれば、使用商標2及び3は、本件商標とは外観上相違する上、「INOA」の欧文字と結合された本件商標とは観念上の同一性も無く、称呼の上での同一性も認められないものであるから、社会通念上同一の商標と認めることはできない。
(ウ)小括
以上のとおり、使用商標1ないし3は本件商標と同一の商標ではなく、本件商標と社会通念上同一と認められるものでもないから、仮に被請求人において使用商標1ないし3を使用した事実があったとしても、そのことをもって本件商標の使用があったと認めることはできない。
オ 商品について
本件商標の指定商品は「化粧品,せっけん類,香料類,つけづめ,つけまつ毛」であるところ、被請求人が主張するところによれば、商品「イノアエモリエントジェル」(以下「本件使用商品」という。)は、「超音波美顔器を購入した顧客に対して美顔器使用時の消耗品として販売している」ものである。
してみれば、本件使用商品は、被請求人が販売する「超音波美顔器」に従属する商品に過ぎず、「化粧品」として独立した取引の対象とされる商品ではないと考えられる。
よって、仮に本件商標と同一の商標が当該商品に付されていたとしても、それは、本件の指定商品についての使用と認めることはできない。
不使用についての正当な理由について
被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることは何ら主張立証していない。
キ 結語
以上のとおり、被請求人が提出した乙第1号証及び乙第2号証は、それ自体、本件審判請求の登録前3年以内に本件商標が日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によってその指定商品について使用された事実を立証するものではない。
仮に、本件審判請求の前3年以内に使用商標1ないし3が本件使用商品に付されていた事実があるとしても、それは本件商標の本件指定商品についての使用とは認められないものであり、また、被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを何ら主張立証していない。
よって、本件商標は商標法第50条第1項の規定によってその登録を取り消されるべきものである。

3 当審における被請求人に対する審尋(平成21年9月4日付け)
被請求人は、本件商標を使用していたとする事実を証明するものとして、乙第1号証及び乙第2号証を提出しているが、該証拠のみでは、本件使用商標が請求人にかかる商品であることを確認することができず、また、実際に取引が行われていたことを証明するものとしては信ぴょう性に欠けるものであり、さらに、提出された取引書類に示された社名と被請求人との関係が不明であり、かつ、商品単価が異なっていることから、取引書類として疑義が生ずる。
そこで、取引書類に記載の会社と被請求人との関係、及び商品の単価が相違することの説明をするとともに、本件商標を付した「化粧品」が、本件審判請求の登録の日前三年以内に、実際に取引が行われていたことを明らかにするため、該商品が販売されていたことを確認できる取引書類を提出されたい。

4 被請求人の答弁
被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。(なお、審尋回答書において提出された乙第1号証及び乙第2号証は、答弁書で提出した乙第1号証及び乙第2号証に、商品写真あるいは取引書類等を追加したものとなっている。また、審尋回答書で提出した乙第2号証中の納品書(控)については、原本も提出されている。)
(1)答弁の要旨
本件商標は、その指定商品について、継続して日本国内において使用しており、本審判請求理由に副わないものである。
証拠方法として、商品写真(乙第1号証)及び納品伝票(乙第2号証)を提出する。
なお、該当商品は、商標権者が経営する会社において、おもに超音波美顔器を購入した顧客に対して美顔器使用時の消耗品として販売している商品の性質上、実際の使用方法などについて口頭で説明するため、特にカタログ等は制作していない。
(2)審尋回答書の要旨
前記3の審尋に対する回答は、以下のとおりである。
ア 本件使用商品についての証拠方法
商品写真と発売元及び製造元の記載、並びに化粧品の性能が記載されている商品裏側の拡大写真を提出する(乙第1号証)。
これにより、被請求人が代表取締役である株式会社レ・ジーナが本件使用商品の発売元であること並びに本件使用商品が「化粧品」であることを証明する。
イ 取引書類についての証拠方法
本件使用商品に関する納品伝票と領収証を提出する(乙第2号証)。
なお、本件使用商品の販売は対面販売や電話注文のため、請求書(注文書)はなく、また、納品書は商品納品の証として購入者に渡しているため、商品の納品の証拠は納品書(控)となる。
さらに、購入者からの入金事実の証拠として商品代金の領収証及び郵便払込取扱票を追加で提出する。
また、本件使用商品の製造を発注したことの証明として、製造発注時の請求明細書も提出する(乙第3号証)。
ウ 「レ・ジーナ」並びに「イノア」と被請求人との関係についての証拠方法
「レ・ジーナ」並びに「イノア」と被請求人との関係に関する証拠として、「株式会社レ・ジーナ」及び「有限会社イノア」の現在全部事項証明書を提出する(乙第4号証及び乙第5号証)。これにより、被請求人と株式会社レ・ジーナ代表取締役と有限会社イノア代表取締役が同一人であることを証明する。
また、納品書(控)における「株式会社レ・ジーナ」、「レ・ジーナ本社」及び「レ・ジーナ直販」という表記は全て同一のものを指し、別個の会社が三社あるわけではない。通常、「株式会社レ・ジーナ」は卸売を主としており、直接販売の時に卸売と区別するために、取引書類の卸売先名が記載される箇所に、「レ・ジーナ本社」または「レ・ジーナ直販」という名称を使用している。
エ 本件使用商品の価格について
商品の価格には、「参考上代」の設定はあるが、実際の販売では購入者の取引回数や購入金額等に応じた割引を行っているため、購入者により価格が変動している。納品書には、割引後の価格のみを記載しているため、価格が複数存在するように見え、取引書類として疑義を生じさせたものと推察する。

5 当審の判断
(1)被請求人は、本件商標をその指定商品(化粧品)について使用している旨主張し、乙第1号証ないし乙第5号証を提出しているので、以下提出に係る証拠について検討する。(なお、審尋に対する回答書において提出された乙第1号証及び乙第2号証は、答弁書で提出した乙第1号証及び乙第2号証に、更に取引書類が追加されたものであるから、証拠の検討については、回答書で提出された号証で行う。)
ア 乙第1号証は、本件使用商品写真(正面部及び裏面部の全体写真、並びに正面部の文字部分及び裏面部の商品の説明等の部分の拡大写真)と認められるところ、該写真の商品の正面部には、上から順に、「IC」と思われる文字をその内部に有する円図形、「INOA」及び小さく表した「COSMETIC」の欧文字とを3段に表示し、さらに、その下部に「EMOLLIENT GEL」の欧文字を縦に配したものが表示されている。
また、裏面部にも、上から順に、「イノア」、「エモリエントジェル」、横長楕円内に配された「保湿ジェル」、さらに、「お肌しっとり、」「うるおいキープ。」の各文字が表示され、その下に「海藻から抽出した…肌に保ちます。」の商品説明、及び原材料並びに容量が表示され、更にその下に、発売元の名前「株式会社 レ・ジーナ」及び住所並びに製造元の名前「株式会社 シュア」及び住所が表示されている。
イ 乙第2号証は、本件使用商品にかかる取引書類とするものであるところ、福島県郡山市在の「株式会社 レ・ジーナ」が作成したものと認められる「納品書(控)」(原本及び写し)並びに当該取引に関する入金事実の証拠とする仙台貯金事務センターからの通知あるいは商品代金領収証が、以下の(ア)ないし(キ)に示すとおり7セット提出されている。(なお、09年3月19日付けの納品書(控)及び取扱年月日を平成21年3月23日とする払込通知は要証期間内に該当しないため、証拠として採用できない。)
(ア)06年06月02日付け(No.60035/1、なお、Noは原本にて確認。)納品書(控)には、宛先を「レ・ジーナ本社」、「【購入者】 A子」、コード・商品名を「800 イノア エモリエントジェル」及び単価を「3,000」等との記載があり、また、口座番号「02100-2-21496(加入者名「株式会社レジーナ」の口座記号番号)」に払込みがあったとする、通知番号10号の仙台貯金事務センターからの通知には、納品書(控)の払込合計額と同額の払込金額が表示されている。
(イ)06年8月22日付け(伝票No. 808)納品書(控)には、宛先を「レ・ジーナ直販」、「000091【購入者】 B子」、コード・商品名を「000800 イノア エモリエントジェル」及び単価を「4,410」との記載があり、また、前記(ア)と同形式の仙台貯金事務センターからの通知(通知番号22号)には、納品書(控)の合計額と同額の払込金額が表示されている。
(ウ)07年1月31日付け(伝票No.4174)納品書(控)には、宛先を「レ・ジーナ直販」、「000091【購入者】 A子」、コード・商品名を「000800 イノア エモリエントジェル」及び単価を「3,150」との記載があり、また、前記(ア)と同形式の仙台貯金事務センターからの通知(通知番号32号)には、納品書(控)の合計額と同額の払込金額が表示されている。
(エ)07年2月14日付け(伝票No.4442)納品書(控)には、宛先を「レ・ジーナ直販」、「000091【購入者】 B子」、コード・商品名を「000800 イノア エモリエントジェル」及び単価を「4,410」との記載があり、また、前記(ア)と同形式の仙台貯金事務センターからの通知(通知番号34号)には、納品書(控)の合計額と同額の払込金額が表示されている。
(オ)08年5月17日付け(伝票No. 170)納品書(控)には、宛先を「レ・ジーナ直販」、「000091【購入者】 C子」、コード・商品名を「000800 イノア エモリエントジェル」及び単価を「6,300」との記載があり、また、購入者あての「化粧品代として」とする領収書には、当該納品書の合計額と同額の金額が表示されている。
(カ)08年11月5日付け(伝票No.2602)納品書(控)には、宛先を「レ・ジーナ直販」、「000091【購入者】 A子」、コード・商品名を「000800 イノア エモリエントジェル」及び単価を「3,150」との記載があり、また、購入者あての「化粧品代として」とする領収書には、当該納品書の合計額と同額の金額が表示されている。
(キ)09年2月10日付け(伝票No.4016)納品書(控)には、あて先を「レ・ジーナ直販」、「000091【購入者】D子」、コード・商品名を「000800 イノア エモリエントジェル」及び単価を「6,300」との記載があり、また、購入者あての「化粧品代として」とする領収書には、当該納品書の合計額と同額の金額が表示されている。
ウ 乙第4号証は、被請求人と「株式会社レ・ジーナ」との関係について証明するものとして提出された現在事項全部証明書であるが、該証明書には会社の目的として「2.化粧品の販売」が記載され、代表取締役(平成18年6月28日重任)として被請求人の氏名が掲載されている。また、乙第5号証は、被請求人と「有限会社イノア」との関係について証明するものとして提出された現在事項全部証明書であるが、該証明書には会社の目的として「2.化粧品の販売」が記載され、代表取締役として被請求人の氏名が掲載されている。

(2)前記(1)で認定した事実を総合してみれば、以下のとおり判断するのが相当である。
本件使用商品(容器)の全体を写した写真には、その表面部に「COSMETIC」、「EMOLLIENT GEL」の表示、及び裏面部に「保湿ジェル」、「お肌しっとり、うるおいキープ。」の各文字及び商品説明等の表示があり、これらの表示からすれば、本件使用商品は保湿効果を有するジェル状の化粧品と認められるものであって、本件審判の請求に係る商品中の「化粧品」の範ちゅうに属するものといえる(乙第1号証)。
また、被請求人(商標権者)である「高橋 早知子」は、平成18年6月28日に株式会社レ・ジーナの代表取締役に就任しているものであるから、本商標権についての黙示の使用許諾を、株式会社レ・ジーナに対して与えていたものとみるのが自然である(乙第4号証)。
そして、上記イの(ア)ないし(キ)で認定した「納品書(控)」(乙第2号証)の日付け及び仙台貯金事務センターの取扱年月日は、いずれも、本件審判請求の登録前3年以内(平成18(2006)年2月23日から同21(2009)年2月24日)になるものであること、及びそれら納品書(控)には、いずれにもコード・商品名「000800 イノア エモリエントジェル」との記載があり、その商品名は商品写真(乙第1号証)における裏面部の記載「イノア」及び「エモリエントジェル」の表示と一致することが認められ、そして、該納品書(控)のあて先は、「レ・ジーナ本社、レ・ジーナ直販」になっているものではあるが、それぞれ個別の購入者名が記載されていることからすれば、被請求人の通常使用権者と認められる「株式会社レ・ジーナ」から、各購入者にあてたものであると十分に推認できるものであり、本件使用商品に係る取引が要証期間内に行われていたということができるものである。
さらに、使用商標については、本願商標の構成が、上記1のとおり「イノア」と「INOA」の文字とを二段に横書きしたものではあるが、商取引の実際においては登録商標が配列又は配置その他の態様について少なからず変更が加えられて使用されることを考慮すれば、商品写真(乙第1号証)の正面部には「INOA」が、及び裏面部には「イノア」の各文字が識別標識として機能すべく表示してあり、両者はその称呼を共通にし、かつ容器の表・裏面部に同程度の大きさで対応すべく、相互な関係をもって一体的に表されているものと認識できるから、当該商品(容器)における使用は、本件商標と社会通念上同一といえるものである。
そうとすれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者を通じて、本件審判の請求に係る指定商品中の「化粧品」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたと認めることができるものである。

(3)請求人の主な反論について
ア 請求人は、乙第1号証に表示されている商品は、その写真の撮影日等を立証するものがなく、審判請求登録日前に使用された事実を立証するものとはいえない旨、また、乙2号証の取引書類も、被請求人との関係が不明な法人の名義にかかるものであって、その作成者も不明であり、その内容にも不自然な点が認められるものであるから、本件商標が審判請求の登録日前に使用された事実が証明されたとはいえない旨、さらに、納品伝票に記載の商品単価が同一の商品であるにもかかわらずまちまちで、取引書類の成立に多大な疑義がある旨主張している。
しかしながら、乙第1号証は本件使用商品の写真であり、その商品の取引事実については、当審の審尋に対する回答書で提出された納品書(控)原本あるいは貯金事務センターからの入金の通知等の取引書類(乙2号証)から、要証期間内の取引及び本件商標の使用が認められること、また、取引書類の発行者が通常使用権者と認められること前記(2)のとおりである。そして、価格の違いについての、被請求人の「購入者の取引回数や購入金額等に応じて割引を行っているため、価格が違っている。」とする回答は、一般的に取引状況に応じた割引等が行われている現状からすれば、容認できるといえるものであり、また、購入者毎の価格がそれぞれ一致しているものであることからすれば、取引書類の成立に疑義があるとまでいうことはできないものであり、請求人の上記主張は採用することはできない。
イ 請求人は、使用商標と本件商標が同一の商標ではなく、社会通念上同一とも認められないから、本件商標の使用があったと認めることはできない旨主張しているが、本件商標と乙第1号証の商品写真に表示された「INOA」及び「イノア」の商標が、社会通念上同一と認められるものであること前記(2)のとおりであるから、請求人の主張は採用することはできない。
ウ 請求人は、被請求人が証拠に対する追記として記載した「本件使用商品は、超音波美顔器を購入した顧客に対して美顔器使用時の消耗品として販売している」という部分を基に、本件使用商品は、被請求人が販売する「超音波美顔器」に従属する商品に過ぎず、「化粧品」として独立した取引の対象とされる商品ではないから、仮に本件商標と同一の商標が当該商品に付されていたとしても、それは、本件商標の指定商品についての使用と認めることはできない旨主張するが、答弁書の趣旨及び納品書(控)原本の記載からすれば、本件使用商品は、美顔器使用時の消耗品として、「超音波美顔器」とは別に取引(販売)されていることは明らかであるから、独立した商品ではないとする請求人の主張は採用することはできない。

(4) 結語
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者を通じて、本件審判の請求にかかる指定商品中の「化粧品」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものということができる。
したがって本件商法の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-05-07 
結審通知日 2010-05-11 
審決日 2010-05-25 
出願番号 商願2000-17957(T2000-17957) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z03)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 小川 きみえ
野口 美代子
登録日 2001-02-23 
登録番号 商標登録第4455388号(T4455388) 
商標の称呼 イノア、アイノア 
代理人 阪田 至彦 
代理人 廣中 健 

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