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審決分類 審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05
審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05
管理番号 1218369 
審判番号 無効2008-890053 
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-06-12 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4926734号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成21年2月4日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10071号平成21年10月28日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4926734号の指定商品中、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液,創傷被覆材」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4926734号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成よりなり、平成17年5月20日に登録出願、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」及び第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液,創傷被覆材」を指定商品として、同18年1月18日に登録査定、同年2月3日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲1ないし264(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、よって、商標法第46条第1項第1号に該当するので、同規定によりその登録を無効とされるべきものである。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 引用商標
請求人の引用する登録第4640129号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、平成14年4月4日に登録出願、第5類「ばんそうこう,粘着包帯,包帯,創傷被覆材,医療用シート状粘着テープ,カテーテル固定用粘着テープ,その他の医療用粘着テープ,医療用テープ」を指定商品として、同15年1月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

イ 本件商標と引用商標との指定商品の類否
本件商標の第5類の指定商品中「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,創傷被覆材」は、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品である。

ウ 本件商標と引用商標との商標の類否
(ア)引用商標は、別掲(2)のとおり、漢字の「優肌」と欧文字の「YU-KI」を横書きして二段に併記したものであり、該漢字の「優肌」の上方に平仮名で「ゆうき」が書されてなるものである。
そして、その構成各文字の大きさの比率は、約3(「優肌」)対2(「YU-KI」)対1(「ゆうき」)となっており、平仮名と漢字と欧文字との三段構成であることから、それぞれの部分が独立して看守される可能性のある態様である。
また、下記で述べるように「優肌」が相当の使用実績を有し請求人を指標する周知・著名性を獲得していることにかんがみれば、引用商標に接する取引者、需要者は、「優肌」の部分に特に強い印象を受けるといえるのである。
以上の点からすれば、取引者及び需要者が、引用商標中の「優肌」の漢字部分に着目し、この「優肌」をもって、取引に資する場合もあるといえる。

(イ)そこで、引用商標を構成する「優肌」と本件商標の「肌優」について検討をするに、漢字の「優」及び「肌」は、一般の社会生活で使用する漢字の目安とする常用漢字表に掲載されている文字であり、また、比較的馴染みのある平易な漢字であることから、漢字の「優」からは、「優しい」さまが想起され、「肌」からは、「人などの表面」、「皮膚」等の意味合いを有することから、人体の「肌」が容易に想起されるものである(甲3及び4)。 また、引用商標の指定商品と同一又は類似関係にある、本件商標の指定商品中の商品は、人体の肌に直接触れる商品や人体の肌に直接関連性が高い商品であることにかんがみれば、本件商標を構成する「肌」から、人体の「肌」が直接的に想起されることが明らかである。

(ウ)そうすると、これに接する取引者、需要者は、本件商標と引用商標とを構成する「優」と「肌」から、「肌に優しい」の観念を直ちに理解可能といえる。
この点、かかる観念を構成する「優しい」の語は、その語の前に有する語又は後ろに続く語を修飾する修飾語であり、「肌」の語は、名詞に該当するものである。
そうすると、本件商標と引用商標との観念を表す「肌に優しい」を構成する「優しい」の語と「肌」の語順を前後に入れ替えたとしても、「『優しい』・『肌』に」のように、結局のところ、修飾語の「優しい」が、名詞である被修飾語の「肌」を修飾することになるのである。
すなわち、「肌優」と「優肌」のように「優」の語と「肌」の語の語順が入れ替わったとしても、被修飾語と修飾語の関係が維持されるという理由からも観念の共通性が基礎付けられるのである。
したがって、本件商標と引用商標とは、「肌に優しい」との観念を共通する類似商標といえるのである。

(エ)そして、引用商標の指定商品と同一又は類似関係にある本件商標の指定商品中の前記商品は、「衛生医療商品」、「衛生医療用品」等の分野に含まれる商品であり、一般のスーパーマーケットやドラッグストア等の小売店やインターネット等を通じて、老若男女を問わず一般的な人々が日常的に、かつ、気軽に買い求めるものであって、価格もさほど高価なものではないから、これら商品に付された商標に対して払う需要者の注意力はそれほど高くない。
そうすると、子細にその文字の異同を吟味することなく、時には全体的直感に頼って買い求めるという経験則及びこれら商品の需要者等の取引の実情からみても、両商標は、これが上記指定商品に使用された場合には、「肌優」と「優肌」とを見誤ることも決して少なくないといえる。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観においても相紛らわしく、その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるといえる。

(オ)さらに、本件商標と引用商標とは、その称呼においても非常に相紛らわしいのである。
本件商標の構成文字中「肌優」の文字に照応して、「キユウ」、「ハダヤサ」、「ハダユウ」の称呼を生ずる。
一方、引用商標は、上記したように、他の平仮名部分や欧文字に比して大きく表された漢字部分の「優肌」に着目して引用商標の取引に資する場合もあり、また、「優肌」が相当の使用実績を有し請求人を指標する周知・著名性を獲得していることにかんがみれば、引用商標に接する取引者、需要者は、「優肌」の部分に特に強い印象を受けるといえるのである。
そこで、取引者及び需要者が、引用商標中の「優肌」の漢字部分に着目し、この「優肌」をもって、取引に資する場合があることを踏まえ引用商標の称呼を検討すると、引用商標を構成する漢字の「優肌」の文字から「ユウキ」、「ヤサハダ」、「ユウハダ」の称呼を生ずるものといえる。
以上を踏まえ本件商標と引用商標との称呼を検討すると、本件商標の「肌優」と引用商標を構成する漢字「優肌」とは、単に「優」の語と「肌」の語とが、前後に入れ替わっているにすぎないものである。
さらに、両商標の指定商品に係る商品群は、一般のスーパーマーケットやドラッグストア等の小売店やインターネット等を通じて、老若男女を問わず一般的な人々が日常的に、かつ、気軽に買い求めるものであって、価格もさほど高価なものではないから、これら商品に付された商標に対して払う需要者の注意力はそれほど高くはないものである。
そうであるなら、時と処を異にしてなされることの多い商取引の実際及び上述したようなそれほど高くない本件商標及び引用商標に係る指定商品分野における需要者の一般的な注意力にかんがみれば、いずれの語が前又は後に配置されていたかが曖昧なものとなり、本件商標と引用商標との称呼を互いに誤るおそれがある。
したがって、本件商標と引用商標とを称呼した場合、その音節が前後に入れ替わっているにすぎないことから、その語感・語調についても相紛らわしい類似商標である。

エ 特許庁の審判例の参酌
上述した請求人の主張は、2語からなる商標について、その2語が置換の関係にある商標の類否について争われた事例で両商標を類似するとの判断を行っている特許庁の審判例(甲86?101)からも容易に裏付けることができるのである。

オ 以上、述べた点を総合して本件商標と引用商標との類否を検討すると、(a)本件商標と引用商標とは、「肌に優しい」の観念を共通にするものある。(b)本件商標と引用商標とは、音節が前後に入れ替わっているにすぎず、その語感・語調は称呼上相紛らわしいものである。(c)本件商標の「肌優」と引用商標を構成する漢字「優肌」とは、その語順が入れ替わっているにすぎないことから、外観上相紛らわしいものである。

カ よって、本件商標と引用商標とは、観念が共通し、称呼が近似し、外観が相紛らわしい類似商標であるため、本件商標の第5類の指定商品中「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,創傷被覆材」は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

キ 以上のとおり、本件商標は、本件商標の登録出願日前の商標登録出願に係る請求人の引用商標に類似する商標であって、引用商標に係る指定商品と同一又は類似する商品であることから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標及び商標「優肌」の周知・著名性
請求人である日東電工株式会社(以下、単に「日東電工」という。)は、我が国のみならず世界を代表する粘着シートや光学フィルム等の専門メーカーとして広く知られており(1918年創業、2008年3月期の売上高7,452億5900万円(甲5))、また、医療用粘着シート等製造販売については、1968年頃から開始しており、医療等の分野においても相当の歴史を有する企業である(甲6)。
引用商標及び商標「優肌」は、日東電工及び日東電工のグループ会社が販売する医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム、医療用包帯等を指標する商標として1994年頃より使用が開始され、現在に至っている経緯がある。

イ 請求人は、日東電工のグループ会社である日東メディカル株式会社(以下「日東メディカル」という。)のインターネットホームページをプリントアウトしたものを提出する(甲7及び8)。
甲7及び8によれば、「優肌」又は「優肌」シリーズとして、大々的に使用されていることがわかる。

ウ 株式会社矢野経済研究所の発行する「<06?07年版>医療・衛生用品の市場実態の製品別需要動向」によれば(甲9)、「固定テープ・巻絆創膏」に限定したシェア及び出荷額について、日東メディカルの2005年度の売上高が「470百万円」(4億7千万円)との記載があり(甲9の44頁)、さらには、業界の販売シェア7.6パーセントを獲得する規模を誇っている。
なお、甲9に記載の売上及びシェアは、いわゆる医科向けの商品に限定したものであり(甲9の44頁の下から2行目参照)、医科向け以外の商品、例えば、日東電工のグループ会社である「株式会社ニトムズ」等を通じて販売する商品は前記売上には含まれないのであり(甲10?14)、医科向け以外の商品の売上を加算した総売り上げは、甲9の44頁に記載される金額を遥かに上回るものとなる。

エ 引用商標及び商標「優肌」について、さらに請求人に係るブランドとして広く需要者に浸透させるべく、雑誌等を通じて並々ならぬ宣伝活動を行っている。
宣伝広告実績については枚挙にいとまがないが、ほんの一例を挙げれば、へるす出版の発行する月刊誌「臨床看護」、日本看護協会出版の発行する月刊誌「Nursing Today(ナーシング・トゥデイ)」、学習研究社の発行する月刊誌の「月間ナーシング(nursing)」、照林社の発行する月刊誌の「Expert Nurse(エキスパートナース)」に掲載を行っている事実がある(甲15?68)。
そうすると、日東電工の知名度及び継続した宣伝広告の結果、引用商標及び「優肌」は、医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム、医療用包帯等の商標として広く知られるに至ったものと考えるのが自然である。
また、商品パンフレット及び商品カタログの写しを甲70ないし74として提出することにより、遅くとも1996年頃から現在まで「優肌」の文字を含む商標、引用商標及び商標「優肌」を継続して使用した事実を立証する。
さらに、請求人に関する情報は、新聞等においてもとりあげられていることから、請求人は、新聞記事の写しを提出する(甲75?78)。

オ 商標「優肌」を使用した商品に関する受賞実績
商標「優肌」を使用した「医療用粘着テープ及び医療用粘着フィルム」は、性能面や機能面においても優れていることから、経済産業省等が主催する「ものづくり日本大賞」(2005年(平成17年)8月)において、優秀賞を受賞した事実がある(甲79及び80)。
また、商標「優肌」を使用した「医療用粘着テープ」は、日本産業皮膚衛生協会の特別奨励賞を受賞した事実がある(1996年(平成8年)5月)(甲81及び82)。
これらの請求人に係る商品の受賞実績によって、「医療用粘着テープ及び医療用粘着フィルム」を取り扱うこの種業界においても、商標「優肌」が請求人に係るものとして、深く印象付けられることになるのである。

カ このような請求人による大々的、かつ、継続的な宣伝広告活動を通じて全国的に使用した結果、引用商標及び商標「優肌」は、請求人のブランドを指標するものとして需要者や取引者に広く認識させるものに至り、引用商標及び商標「優肌」は本件商標の登録出願のとき(平成17年(2005)5月)にはすでに周知・著名な商標となっていたものであることは疑う余地はないのである。

キ 他方、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の適用の項において述べたように、引用商標及び商標「優肌」と外観・称呼・観念のいずれにおいても相紛らわしいことが明らかであり、請求人と何らかの関係があるかの如く印象を与えるおそれを有するものである。
このことは、請求人が、前記宣伝広告資料等において、「肌に優しい優肌シリーズ」や「肌への『優しさ』を追求しています。」等、肌に優しい商品であることを強調して販売していることからも、引用商標等に全く無関係の他人が、本件商標を使用した場合、これに接する取引者や需要者は、あたかも請求人の商品、あるいは請求人と何等かの関連ある者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所につき混同を生じせしめるおそれがあるものといわざるを得ない。

ク 本件商標の指定商品について
「医療用粘着テープ及び医療用粘着フィルム、医療用包帯」と本件商標の指定商品の「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液,創傷被覆材」は、医療等の分野に属する商品であって、関連性の高い商品である。
ケ 特許庁の審判例の参酌
上述した請求人の主張は、特許庁の審判例からも容易に裏付けることができ、特許庁においても、2語からなる商標について、その2語が置換の関係にある商標との無効が争われた事例において、引用商標の周知性が勘案され、無効とする判断を行っている事実がある(甲102)。

コ 以上のとおり、本件商標を第5類の上記指定商品に使用するときは、これに接する取引者や需要者は、あたかも請求人の商品、あるいは請求人と何等かの関連ある者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所につき混同を生じせしめるおそれがあるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 観念について
(ア)被請求人は、「『優』の漢字は、請求人が主張するような『優しい』の意味合いだけではなく、『優れている』『ゆたかな』『まさっている』といった意味合いにおいても、一般に使用されている多義的な語」であり、「特定の意味合いを看取させない造語商標として認識され」、「比較すべき観念が生じない」ことから、観念上非類似である旨主張しているところ、引用商標の指定商品と同一又は類似関係にある本件商標の指定商品が、人体の肌に直接触れる商品や人体の肌に直接関連性が高い商品であることにかんがみれば、本件商標を構成する「肌」から、人体の「肌」が直接的に想起される。

(イ)さらに、請求人が提出した甲各号証の宣伝広告資料等において、「肌に優しい優肌シリーズ」や「肌への『優しさ』を追求しています。」、等、肌に優しい商品であることを強調して販売していることから、漢字の「優」からは、「優しい」さまが想起される。

(ウ)本件商標と引用商標との観念を表す「肌に優しい」を構成する「優しい」の語と「肌」の語順を前後に入れ替えたとしても、「『優しい』・『肌』に」のように、結局のところ、修飾語の「優しい」が、名詞である被修飾語の「肌」を修飾することになり、「肌優」と「優肌」のように「優」の語と「肌」の語の語順が入れ替わったとしても、被修飾語と修飾語の関係が維持されるという理由からも観念の共通性が基礎付けられるのである。

(エ)したがって、辞書に複数の意味合いが記載されているとしても、本件商標と引用商標とは、「肌に優しい」との観念を共通する類似商標といえるのである。

イ 称呼について
(ア)被請求人は、「商品パッケージにこれらを記載するのが一般的であるところ、商品パッケージに記載された商標部分の文字のみを、右から左へ読むことは極めて不自然である」旨主張するが、本件商標及び引用商標の指定商品に係る商品群は、一般的な人々が日常的に、かつ、気軽に買い求めるものであり、価格もさほど高価なものではないことから需要者の一般的な注意力もそれほど高いとはいえず、あわせて、時と処を異にしてなされることの多い商取引の実際をもかんがみれば、いずれの語が前又は後に配置されていたかが曖昧なものとなり、右から左へ読まれる場合も考えられるのである。

(イ)被請求人は、「漢字部分の読み仮名と自然に理解できる平仮名『ゆうき』、欧文字『YU‐KI』が併記されているため、『ユウキ』の称呼を特定するものである」旨主張するが、引用商標は、他の平仮名部分や欧文字に比して大きく表された漢字部分の「優肌」に着目して引用商標の取引に資する場合もあり、引用商標を構成する漢字の「優肌」の文字から「ユウキ」、「ヤサハダ」、「ユウハダ」の称呼をも生ずるものといえる。

(ウ)被請求人は、登録第4027245号の意見書を引用し、「(b)『優肌』は、ふりがながなければ、『ゆうき』とは、通常称呼されないと認識している。これらの認識に従えば、本件商標からは『キユウ』の称呼は生じ得ない」旨主張するが、本審判事件に請求人が引用していない商標(登録第4027245号)の意見書の内容が引用商標の称呼の特定に影響を与えるものではない。
また、どのような「認識に従えば、本件商標からは『キユウ』の称呼が生じえない」のか意味が不明であり、単なる主張では、全く意味をなさない。
(エ)よって、被請求人の主張には理由がなく、本件商標と引用商標とを称呼した場合、その音節が前後に入れ替わっているにすぎず、その語感・語調についても相紛らわしい類似商標である。

ウ 外観について
被請求人は、外観上非類似の商標である旨主張するが、請求の理由のとおり、商品の取引の実情からみて、「『肌』と『優』の文字は、一般社会において親しまれた平易な漢字で」あったとしても、両商標は、これが本件商標及び引用商標に係る指定商品分野に使用された場合には、「肌優」と「優肌」とを見誤ることも決して少なくないことから、両商標は、相紛らわしい類似商標である。

エ 特許庁の審決例の参酌に対する反論
(ア)被請求人は、「漢字2字からなる構成態様の場合には、過去の審決例からも裏付けられるように、上述した請求人の主張が正当なものであることが容易に理解できる。」旨、主張しているところ、被請求人が挙げる審判例は、いずれも観念上非類似と判断された例であって、特に観念において紛らわしく類似する本審判事件にあてはまるものではない。
(イ)確かに、乙4ないし7の各事例における漢字部分は、2字で構成されているが、該事案は、いずれも漢字部分が修飾語と修飾語の関係になく、また、本審判事件のように、引用する商標の周知性が立証されたかも不明である。
したがって、被請求人が提出する審決の判断基準は、本審判事件において参酌されるべきものではないことが明らかである。

(ウ)また、被請求人は、語順が入れ替わった商標例を乙8ないし15として提出しているが、単なる登録例を挙げても本審判事件と全く関係がなく意味をなさず、被請求人が並存関係にあるとする上記商標例について、仮に無効審判などでその登録の有効性が争われた場合、並存関係は、崩れる可能性は十分にあるのである。
すなわち、被請求人が指摘する登録商標が現時点において存在していることを示していることを表すにすぎないものであり、本審判事件とは、全く関係ない。
なお、被請求人は、この項で、「このように市場において、語順を入れ替えた商標が多数採択され、」と主張するが、上記の程度では、多数とはいえない。

オ 異議2006-90188について
確かに上記異議申立事件においては、登録維持の決定がなされたが、本件審判事件では、引用商標の使用実績から導き出される類似性や取引実情などを主張・立証し、その登録の有効性を争っているのである。

カ 取引の実情について
被請求人主張の「取引の実情」については、ユニ・チャーム株式会社(以下「ユニ・チャーム社」という。)が自己の出願商標と本件商標とを類似すると考えたにすぎないものであり、本審判事件になんらの影響を与えるものではない。

(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 被請求人が、「2005年単年度の売上高だけをもって、周知・著名であるとはいえない」と主張していることから、2000年から2007年度までの「優肌」及び「優肌」シリーズの「医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム」の売上金額と出荷数をまとめた一覧(甲104)を提出する。

イ 上記一覧表に示すとおり、「優肌」及び「優肌」シリーズの「医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム」の売上は、2000年度から2007年度までの期間において、75億2千8百万円に上り、「優肌」及び「優肌」シリーズの「医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム」の出荷数は、粘着テープ類において、8千7百54万巻、粘着フィルム類については、7千5百56万枚出荷している。

ウ そうすると、「優肌」及び「優肌」シリーズの「医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム」を1994年ころから現在まで14年以上に渡り継続して販売していること、さらに、近年の1年間の売上実績が約15億9千万円を達成しており、2000年から2007年まで、年々順調に売上高が増加し、出荷数量についても順調に増加していることにかんがみると、「優肌」及び「優肌」シリーズの名称は、「医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム」の取扱者及び需要者に対して、広く知られるに至っており、さらには、「優肌」及び「優肌」シリーズのブランドの名声及びブランドの指標性が年々高まっていることが明らかである。
特に、本件商標の登録出願時期(平成17年5月)に近い2004年度からは、粘着フィルム類の出荷数が増加し、前年(2004年度)の9億円台から2005年度の売上は、11億円以上に一気に増加しているのである。
エ 請求人提出の甲各号証の雑誌の購読数について
インターネット情報によると、「Expert Nurse(エキスパートナース)」は、毎号10万部が発行され、「月刊ナーシング(nursing)」は、毎号7万5000部が発行され、「Nursing Today(ナーシング・トゥデイ)」は、毎号7万部が発行され、また、月刊誌「臨床看護」は、毎号10万部発行されていることがわかる(甲105)。

オ 以上より、引用商標及び商標「優肌」は、本件商標の登録出願のとき(平成17年(2005)5月)にはすでに周知・著名な商標となっていたものであることは疑う余地がない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判請求の費用は請求人の負担とする。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし27(枝番を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)観念の比較
ア 請求人は、本件商標と引用商標は「肌に優しい」の観念において共通する類似の商標である旨主張する。
しかしながら、本件商標及び引用商標からは、いずれも特定の観念を生じるものではない。
本件商標「肌優」は、辞書等に掲載されている既成語ではなく、商標権者が創出した造語であり、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標より何らかの意味合いを理解、認識することはない。
一方、引用商標は、漢字「優肌」と欧文字の「YU‐KI」を横書きして上下二段に書してなり、漢字部分の「優肌」の上方に平仮名で「ゆうき」と書してなるところ、漢字「優肌」からなる既成語は存在せず、さらに、引用商標は「ゆうき」と平仮名を併記してなることから、「ユウキ」と称呼される造語商標であると認識されるのが自然である。

イ 本件商標及び引用商標を構成する漢字「肌」や「優」が常用漢字表に掲載されている文字であり、比較的馴染みのある平易な漢字であることは、被請求人も否定するところではないが、「優」の漢字は、請求人が主張するような「優しい」の意味合いだけではなく、「優れている」「ゆたかな」「まさっている」といった意味合いにおいても、一般に使用されている多義的な語である(乙1及び2)。
そして、本件商標及び引用商標が既成語ではなく造語商標であるところ、取引者や需要者は、構成文字より、「優しい」「優れた」「ゆたかな」などの意味やイメージを受け取ったとしても、それは抽象的で漠然としたものであり、「優しい」といった意味合いに限定されるものではない。
むしろ、本願商標及び引用商標は、それ自体が辞書等に掲載されていない造語商標であるから、「優しい」「優れた」といった意味合いを暗示させるにすぎず、特定の意味合いを看取させない造語商標として認識されるのが自然である。

ウ このように、造語商標については、使用された結果特定の観念が生じた場合以外は、特定の観念が生じないのが経験則であって、実務上もこの経験則に従っているものであるから、請求人の主張は、この経験則を無視ないし軽視したもので、無理のある主張といわざるを得ない。
よって、本件商標と引用商標は、比較すべき観念が生じないのであるから、観念上非類似の商標である。

(2)称呼の比較
ア 請求人は、本件商標と引用商標は、称呼においても相紛らわしいと主張する。
現代社会においては、横書きに書された文字は、左から右へ読むのが通常であり、本件商標及び引用商標の指定商品である医療補助品の分野においては、人体の健康に影響を与える商品の特性から、商品の取り扱い方法や効能などを取引者や需要者に説明すべく、商品パッケージにこれらを記載するのが一般的であるところ、商品パッケージに記載された商標部分の文字のみを、右から左へ読むことは極めて不自然である。
さらに、引用商標は、上述したように、欧文字「YU‐KI」の文字もその構成中に含むところ、欧文字は、全世界共通に左から右に文字を認識するものであり、漢字「優肌」は併記された欧文字「YU‐KI」の文字と相まって、「優」から「肌」の順番で読まれるのが自然である。
よって、本件商標は「ハダユウ」「ハダヤサ」の称呼を生じるものであり、一方、引用商標は、「ユウキ」の称呼が生じるものであって、両商標は、称呼においても非類似の商標である。

イ 請求人は、取引者及び需要者が、引用商標中の「優肌」の漢字部分に着目し、この「優肌」をもって、取引に資する場合があることを踏まえ引用商標の称呼を検討すると、引用商標を構成する漢字の「優肌」の文字から「ユウキ」、「ヤサハダ」、「ユウハダ」の称呼を生ずるものといえると主張する。
しかしながら、引用商標は、上述したように、漢字「優肌」と欧文字の「YU‐KI」を横書きして上下二段に書してなり、漢字部分の「優肌」の上方に平仮名で「ゆうき」と書してなるものである。
そして、漢字「優肌」は造語商標であるところ、漢字部分の読み仮名と自然に理解できる平仮名「ゆうき」、欧文字「YU‐KI」が併記されているため、「ユウキ」の称呼を特定するものである。

ウ このことは、請求人に係る「優肌絆」と横書きにし、平仮名で「ゆうきばん」のふりがなを表示し、下段は英文字で「YU‐KI BAN」を二段に横書きした構成よりなる商標(登録第4027245号)において提出された意見書(乙3)においても明らかである。
すなわち、請求人は上記意見書において、「本願商標『優肌絆』の前半部『優肌』については、『ゆうき』のふりがながなければ、通常、一般の取引者、需要者がすぐに『ユウキ』と称呼することができないものであると考えます。」と主張している。
つまり、(a)請求人は、商標の構成中の平仮名部分が称呼の特定において重要な要素であることを認識しており、(b)「優肌」はふりがながなければ、「ゆうき」とは、通常称呼されないと認識している。これらの認識に従えば、本件商標からは「キユウ」の称呼は生じ得ないし、また、引用商標からは、「ユウキ」の称呼が生じるとみるべきである。
以上よりすれば、本件商標は「ハダユウ」「ハダヤサ」の称呼が生じるものであり、一方の引用商標は「ユウキ」の称呼が生じるものであって、本件商標から生じる称呼と引用商標の称呼は明らかに非類似の商標である。

(3)外観の相違
文字商標の外観においては、構成する文字の語順がその外観に大きく影響を与えるものであるところ、本件商標と引用商標の漢字部分は、「肌」と「優」の語順が異なるものである。
また、「肌」と「優」の文字は、一般社会において親しまれた平易な漢字であり、その字体の形象は大きく異なるものであるから、「肌」と「優」の文字は-見して直ちに識別し得る。
加えて、引用商標は、平仮名文字と漢字と欧文字とを上下三段に書してなるものであるから、本件商標とはその外観構成において、明らかに非類似の商標である。

(4)特許庁の審判例の参酌
ア 請求人は、過去の特許庁における2語が置換関係にある商標の類否について争われた事例で両商標が類似すると判断された審決例を挙げている。
しかしながら、請求人が挙げる審決例は、英単語2語の語順が異なるものや、熟語2語の語順が異なるものであって、本件商標と引用商標のように漢字2字(並びにその称呼を特定する仮名文字及び欧文字)からなる極めて簡潔な構成態様からなるものとは、全く事例を異にするものであり、該審決と同様に判断することはできない。
漢字2字からなる構成態様の場合には、特許庁の過去の審判例(乙4?15)からも裏付けられるように、市場において、語順を入れ替えた商標が多数採択され、登録出願されているということは、取引社会においては、このような商標は非類似の商標であって、互いに相紛れることはないと認識されているから、特許庁においても、このような語順を入れ替えた商標については非類似であると判断し、登録を認めているものと思料する。
イ 本件商標に対しては、引用商標他1件の登録商標を引用商標として異議を申し立てられたが、登録維持の決定を受けている(異議2006-90188:乙16)。
異議決定においては、本件商標と引用商標の称呼について、「本件商標は、『肌優』の文字を横書きにしてなるところ、該文字は、特定の意味合いを有する成語を表したものとはいえないものであって、『肌』及び『優』の各文字に相応して、『キユウ』『ハダユウ』『ハダヤサ』の称呼を生じるものというのが自然である。他方、」・・・引用商標は、「『ゆうき』の平仮名文字が『優肌』及び『YU‐KI』の文字の読みを特定したものと無理なく認識し得る」と認定し、「本件商標と引用商標は、称呼において互いに相紛れるおそれはないというのが相当である」と認定している。
また、外観及び観念については、「本件商標と引用商標は、それぞれ前記したとおりの構成よりなるところ、外観においても充分に区別し得るものであって、かつ、共に、特定の意味合いを生ずることのない造語であることから、観念においても比較することはできない」と認定しており、結論として、本件商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念にいずれの点よりみても互いに類似しない商標といわなければならないと判断している。

(5)取引の実情
ア 上記したように、取引社会においては、語順を入れ替えた商標は非類似であると認識されているところ、本件商標についても、次のような事実がある。

イ 被請求人は、ユニ・チャーム社に対し、本件商標の使用を許諾している(乙17)。この経緯は、ユニ・チャーム社が、自社の新商品につき「肌やさスリム」及び「ソフィ/肌やさスリム」という商標を使用するにあたり、登録出願を行ったところ、被請求人所有の本件商標の存在を知り、「肌やさスリム」「ソフィ/肌やさスリム」と本件商標「肌優」が類似すると判断して、被請求人に対し、本件商標の使用許諾を求めたものであり(乙18及び19)、現在、ユニ・チャーム社は、被請求人より使用許諾を受け、生理用ナプキンに「肌やさスリム」を使用している(乙20)。

(6)以上、本件商標は、引用商標とは観念、称呼及び外観のいずれにおいても非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知・著名性について
ア 請求人は、引用商標及び商標「優肌」が商品「医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム及び医療用包帯等」に使用して、著名であって、これを本件商標の指定商品に使用したときは、請求人の業務に係る商品と出所について混同を生ずるおそれがある旨主張する。
しかしながら、請求人の提出した証拠によれば、商標「優肌」を使用した商品、「優肌絆」「優肌包帯」など「優肌」を組み合わせた商標を、「医療用粘着テープ」等に使用していることは認められるものの、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、著名であるものとはいえないものである。 請求人の提出した証拠によれば、請求人のグループ会社である日東メディカルの2005年度の売上高が提出されているが、日東メディカルは、「優肌」シリーズ以外の医療用粘着テープ等も販売しており(乙21)、この数字は「優肌」又は「優肌」シリーズに限ったものではなく、2005年単年度の売上高だけをもって、周知・著名であるとはいえない。
また、請求人は、広く需要者に浸透させるべく、雑誌等を通じて並々ならぬ宣伝活動を行っていると主張するが、請求人が提出したそれらの雑誌は4誌でしかなく、いずれも看護師向けの雑誌であって、一般需要者が購読しているものではない。
さらに、雑誌「臨床看護」は、2001年から2005年において広告を掲載しているが、年に1、2回程度であり、雑誌「月刊ナーシング」については、2001年から2005年と2007年に広告されているが、年に2、3回程度である。
最も長く広告を掲載している雑誌「Nursing Today」についてもおおむね隔月であり、「Expert Nurse」については、2004年に1度広告を掲載したのみであり、これらの雑誌の購読数及び広告宣伝費については立証されていない。
してみれば、請求人は、引用商標及び「優肌」が周知・著名であると主張するが、その立証はない。
仮に、一部の看護師には知られているとしても、多くの取引者や一般需要者においては、知られたものとはいえない。

(2)したがって、引用商標は、「医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム及び医療用包帯等」に使用しているが、少なくとも本件商標の登録出願時及び登録査定時では著名どころか周知でもないものであるから、何ら出所の混同を生ずるおそれはないというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。

3 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とされるものではない。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号)。
以下、本件商標と引用商標との類否を判断するに当たって、上記の点を考慮して判断する。

(1)取引の実情
甲5、6、9、105、114ないし117、119ないし132、134、259ないし261及び個々に摘記した証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 引用商標に係る指定商品等の取引の実情等
(ア) 引用商標は、請求人が製造し、日東メディカルが販売する固定テープ・巻絆創膏市場における商品に使用されている(平成8年に日東メディカルが設立される前は、請求人において製造及び販売をしていた。)。
固定テープ・巻絆創膏とは、粘着剤を裏面に塗布したテープ形状の製品を言い、患部の固定や保護のために使用される。
固定テープ・巻絆創膏には、医家向けと薬局・薬店向けがあるが、市場全体では、約65パーセントが医家向け、約35パーセントが薬局・薬店向けである。
医家向け製品の用途は、主に固定の用途であり、固定の対象は、脱脂綿・ガーゼ・穿刺針、カテーテル、チューブ、副木等多様である。
民間の調査機関である株式会社矢野経済研究所の調査によれば、固定テープ・巻絆創膏の市場規模は、平成16年度、同17年度とも売上高62億円(メーカーの出荷金額ベース)である。
そのうち、請求人の関連会社である日東メディカルの平成17年度の売上高(出荷金額ベース)は4億7000万円であり、市場でのシェアは7.6パーセントとされている。
引用商標を付した商品は、そのほとんどが医療機関向けとして販売されている。

(イ) 近年は、患者のQOL(Quolity of Life:生活の質)の向上が求められ、テープかぶれに対し、創傷、ストーマケア、失禁ケアの看護を中心に関心が強く、かぶれ発現の機構や低減の工夫について、看護学会で発表され、また、看護雑誌へ投稿され、医療現場の看護師からは、巻絆創膏の製造販売業者に対して、かぶれのないことのほか、剥がすときに痛くない製品の開発が要望されている。
個別の医療分野で見ても、慢性腎不全により人工透析を受ける患者は年々増加し、透析療法の技術の向上により、透析歴が20年を超える患者も存在し、透析は週に2、3回行われるが、その都度、穿刺針や血液回路の固定にテープが使用され、テープによるかぶれや掻痒の苦痛を訴える患者が多い。 皮膚の弱い老人等にも、テープの使用による、はがす時の表皮のはがれ等の苦痛を訴える者が多い。
また、褥瘡を生じやすい患者等についても、使用するテープへの配慮が必要である。

(ウ)このような製品に対する需要を踏まえて、粘着テープの業界においても、固定の機能を維持しながら皮膚の損傷を低減するための改良がされた低刺激絆創膏が種々開発されるようになった。
このような肌に優しい絆創膏として、請求人は、「優肌絆」の商標を付した絆創膏を、遅くとも平成6年11月ころには販売を開始した(甲195)。
その後、日東メディカルは、優肌シリーズとして、平成8年に優肌絆不織布、平成11年に優肌パッド、平成13年に優肌絆アルファ、平成14年に優肌絆スキンカラー、優肌パーミエイド(カテーテル固定用材)、平成15年に優肌パーミパッド(創傷部位の保護材)、平成16年に優肌パーミロール(防水性創傷部位等保護材)の販売を開始している(甲116の別表2)。
固定テープ・巻絆創膏の分野で請求人よりも売上高で上位を占めるニチバン、スリーエムヘルスケア、祐徳薬品工業も、現在では、皮膚に対し刺激の少ない絆創膏の販売を開始している。

イ 引用商標の使用態様
日東メディカルは、現在、優肌絆(優肌絆不織布、優肌絆スキンカラー、優肌絆プラスチック、優肌絆アルファを含む)、優肌パッド、優肌パーミエイド、優肌パーミパッド、優肌パーミロールの各製品の包装箱の上面及び側面に大きな文字で「優肌絆」「優肌パッド」「優肌パーミエイド」「優肌パーミパッド」「優肌パーミロール」の標章を使用している。
このうち、「優肌絆」及び「優肌パッド」の「優肌」文字の上には、それぞれ平仮名で小さく「ゆうきばん」「ゆうき」の振り仮名が記載されている。
そして、後記ウの宣伝広告に記載された包装箱の写真からみて、前記アの時期に各商品が販売されたころから(優肌絆については甲195が発行された平成6年11月以降、優肌パッドについては甲205が発行された平成12年4月以降、優肌パーミエイドについては甲216が発行された平成14年10月以降、優肌パーミパッドについては甲229が発行された平成16年5月以降、優肌パーミロールについては甲217が発行された平成16年8月以降には包装箱に上記のような表示があったことが認められる。)、既に包装箱に上記各表示があり、その後継続的に使用されていることが認められる。

ウ 請求人らによる雑誌等への宣伝広告の掲載
請求人及び日東メディカルは、請求人を製造元、日東メディカルを販売元として(日東メディカル設立前は請求人を製造販売元として)、月刊誌「臨牀看護」(甲15?21、甲211?217)、月刊誌「Nursing Today」(甲27?53、甲193)、「月刊ナーシング」(甲56?68、甲194?210)、月刊誌「透析ケア」(甲137?185)等に、平成6年12月以降、本件商標が登録された平成18年2月3日までの間に、多数回にわたって、「優肌絆」「優肌パーミエイド」「優肌パーミパッド」「優肌パーミロール」等の宣伝広告をし、その中で「肌への思いやり」、「肌にやさしい」等の表現により、請求人製品の特色を宣伝した。また、日本透析医学会、日本皮膚科学会、日本看護学会等において優肌絆等の商品のパネル展示を行い、同内容の宣伝をした。

エ 引用商標を使用した商品の取引者、需要者とその認識等
引用商標を使用した商品の取引者、需要者は医療関係者であり、前記固定テープ・巻絆創膏市場における取引者、需要者の関心事項、本件商標の使用態様、請求人らによる宣伝広告の内容からみれば、取引者・需要者は引用商標の「優肌」の文字について、肌にやさしいという意味を有するものとして理解しているものと解される。

オ 本件商標に係る取引の実情
被請求人が製造、販売する商品に本件商標を使用していることは本件証拠によっても認められない。
乙17ないし20、23の1ないし3によれば、被請求人は、平成18年8月10日、ユニ・チャーム社との間で本件商標の使用許諾契約を締結し、ユニ・チャーム社は、その販売する生理用品に「ふわごこち肌やさスリム」という商標を使用している。
その使用態様は、包装袋の中央部に「ふわごこち」と大きく書かれた文字の下に、やや小さい文字で「肌やさスリム」記載されたものであり、かつ、本件商標と異なって「肌やさ」と一部平仮名を用い、かつ「スリム」の文字と組み合わせたものであるため、本件商標が商品識別機能を果たしている態様で使用されているということはできない。
上記生理用品の取引者・需要者は、一般消費者である。

カ 肌にやさしいタイプの絆創膏等の商品に付された商標等の状況
肌にやさしいタイプの絆創膏等の商品の市場規模は、平成17年(2005年)時点で、16億ないし20億円であった。メーカーはそれぞれ異なった商標を使用しており、ニチバンは「スキナゲート」、祐徳薬品工業は「ユートク」、スリーエムヘルスケアは「マイクロポア」の各商標を有し、これを商品に付して使用している。

(2)本件商標と引用商標の類否
上記認定した事実を考慮して、本件商標と引用商標の類否を判断する。
ア 観念における対比
(ア)引用商標の識別機能を有する部分について
引用商標は、別掲(2)のとおり、中段に漢字「優肌」が、その上に平仮名「ゆうき」が、下段に欧文字「YU-KI」が、それぞれ横書きされ、中段と下段との間には、間隔が空けられて表記されている。
上段に横書きされたひらがな「ゆうき」は、「優肌」の振り仮名を、下段に横書きされた欧文字「YU-KI」は、「優肌」の読みを、それぞれ示したものと理解されるから、「ゆうき」、「YU-KI」の部分は取引者、需要者の注目を惹く態様のものではなく、漢字で記載された「優肌」部分が、出所識別機能を有する特徴のある部分(要部)と解すべきである。
この点について、被請求人は、「優肌」は造語であり、いくつかの読みがあるから、看者は、その読みを探索しようとして、振り仮名である上段の「ゆうき」部分、及び下段の「YU-KI」も平仮名部分を認識するから、「優肌」のみが、出所識別機能を有する部分とはいえないと主張する。
しかし、上段のひらがな「ゆうき」部分は、漢字「優肌」部分の4分の1以下の大きさであること、通常の字体で表記され、特段注目を惹くものではないこと、称呼を示すために付加表記された趣旨が明らかであること、また、下段の欧文字「YU-KI」部分は、漢字「優肌」部分と大きさにおいて変わりがないが、独立の外国語として意味を有するものではないこと、上段と同様、読みを示すために付加記載された趣旨が明らかであることから、「ゆうき」部分及び「YU-KI」部分のいずれも、中央の「優肌」の称呼を確認した後には、看者に対して強い印象を与えるものではないといえる。
前記(1)で認定した取引の実情等を考慮しても、引用商標の出所識別機能を有する部分は、中央に記載された漢字「優肌」部分というべきである。

(イ) 対比
a 引用商標は、漢字「優」の右に「肌」を配置させて、組み合わせた語からなる商標であって、「優」は、「優しい、優美な、優れた、優雅な、上品な、気品のある」等を意味する語(形容詞的に用いられる。)であり、「肌」は「人の体の表皮、皮膚」等を意味する語(名詞的に用いられる。)であり、既存の語ではないものの、消費者、需要者に対して、「肌に優しい」、「優しい肌」、「優美な肌」等の観念を生じさせる。
本件商標も、漢字「肌」の右に「優」を配置させて、組み合わせた語からなる商標であって、既存の語ではないものの、消費者、需要者に対して、「肌に優しい」、「優しい肌」、「優美な肌」等の観念を生じさせる。特に、左右の配置は異なるものの、漢字「肌」は名詞として、漢字「優」は修飾語として用いられることに照らすならば、配置の相違が観念の相違を来すことはなく、引用商標と本件商標は、観念において同一であるといえる。

b 前記(1)で認定した取引の実情を踏まえると、引用商標からは、医療関係者を含む取引者、需要者に対して、「肌に優しい」等の観念を生じさせる。
特に、造語であることに照らすならば、引用商標は、需要者、取引者に対して、強い印象を与えるものというべきである。
本件商標からも、医療関係者を含む取引者、需要者に対して、同様に「肌に優しい」等の観念を生じさせる。
なお、指定商品中には、医療関係商品のみならず、衛生関係商品も含まれるが、その多くは肌(皮膚)に接して使用する商品であるといって差し支えないから、「肌に優しい」等の観念を生じる点で、変わりはない。

c そうすると、本件商標と引用商標は、観念において同一(又は類似)である。

イ 外観における対比
前記アで述べたとおり、引用商標は、漢字「優」の右に「肌」を配置させて、組み合わせた語からなる商標であり、本件商標は、漢字「肌」の右に「優」を配置させて、組み合わせた語からなる商標である。
他方、本件商標は、引用商標中の漢字2字の左右を入れ替えて、配置、表記したものである。
引用商標と本件商標とを対比すると、両者とも、(1)既存の語を利用した商標ではなく、新しく創作された語(造語)であるため、確定した固有の意味を有していないこと、(2)したがって、商標を構成する文字(漢字)そのものも持つ意味が、重要な判断の要素となること、(3)各商標を構成する2つの漢字、すなわち、「優」と「肌」とが共通すること、(4)「優」、「肌」の漢字は、いずれも指定商品と関連性の強い文字が選択されていること、(5)各商標とも、横書きであるため、取引者、需要者は、語順を正確に記憶して理解することが必ずしも容易でない場合があること等の諸点を総合考慮するならば、離隔的に観察するときには、両商標の外観は、紛らわしいものということができるから、両者は、外観においても、類似する。

ウ 称呼における対比
本件商標は、「ハダヤサ」「ハダユウ」又は「キユウ」の称呼を生じるのに対し、引用商標は「ユウキ」の称呼を生じ得る。
本件商標が「ハダヤサ」、「ハダユウ」との称呼を生じる限りにおいては、引用商標と本件商標とは、称呼において類似しない。
また、本件商標が、「キユウ」の称呼を生じる場合においても、「キユウ」と「ユウキ」とでは、冒頭及び末尾の音が相違することから、称呼において類似しない。

エ 取引の実情等について
前記(1)で認定したとおり、請求人は、平成6年ころから、長年にわたって、引用商標中の「優肌」を含む商標(「優肌シリーズ」、「優肌」、「優肌絆」、「優肌包帯」、「ゆうきばん/優肌絆」、「優肌パミロール」、「優肌パーミエイド」等)を、請求人の製造に係る商品(医療用粘着テープ、医療用粘着フィルム、医療用包帯等の商品)の包装箱に継続的に使用し、また、雑誌等の宣伝広告媒体に掲載していること、絆創膏等の商品について、複数のメーカーが存在するが、各メーカーは、例えば、ニチバンは「スキナゲート」、祐徳薬品工業は「ユートク」、スリーエムヘルスケアは「マイクロポア」の各商標を有して、互いに異なった商標を使用していること等の事情に照らすと、「肌優」が本件商標の指定商品中請求に係る指定商品に使用されると、取引者、需要者は、同一の出所に由来するものと誤認する可能性があるという意味で「優肌」と類似する商標と理解するというべきである。

オ 小括
以上のとおり、取引の実情を考慮して、本件商標と引用商標とを対比すると、観念及び外観において類似する。本件商標と引用商標がいずれも造語であり、特に本件商標については、複数の称呼が生じ得ることにかんがみると、本件商標と引用商標の類否を判断するに当たり、本件において称呼を重視するのは妥当とはいえない。
そして、本件商標に係る指定商品のうち、ばんそうこう、包帯、創傷被覆材は、引用商標の指定商品と同一である。また、本件審判の請求に係るその他の指定商品が引用商標の指定商品と類似することは、前審決を取消した判決(平成21年(行ケ)第10071号)において、認定されている。
そうすると、本件審判の請求に係る指定商品「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液,創傷被覆材」は、引用商標の指定商品と同一又は類似する。

2 結論
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、請求人の主張するその余の点について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、指定商品中、第5類「結論掲記の商品」についての登録を無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲


(1)本件商標




(2)引用商標







審理終結日 2009-01-19 
結審通知日 2009-01-21 
審決日 2009-02-04 
出願番号 商願2005-44585(T2005-44585) 
審決分類 T 1 12・ 261- Z (Y05)
T 1 12・ 263- Z (Y05)
最終処分 成立 
前審関与審査官 杉山 和江 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 酒井 福造
末武 久佳
登録日 2006-02-03 
登録番号 商標登録第4926734号(T4926734) 
商標の称呼 ハダユウ、キユウ、ハダヤサ 
代理人 加藤 ちあき 
代理人 藤倉 大作 
代理人 富岡 英次 
代理人 工藤 莞司 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 上原 空也 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 松尾 和子 
代理人 小和田 敦子 
代理人 黒川 朋也 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 佐藤 英二 
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