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審決分類 審判 全部無効 商8条先願 無効としない Y30
管理番号 1218365 
審判番号 無効2009-890043 
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-05-01 
確定日 2010-05-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第5065548号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5065548号商標(以下「本件商標」という。)は、「ケフィア倶楽部の」の文字及び「ピュアメープルシロップヌーボー」の片仮名文字を二段に横書きしてなり、平成18年8月8日に登録出願され、第30類「メープルシロップ」を指定商品として、平成19年7月27日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5148919号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ヌーボー」の文字を横書きしてなり、平成19年3月6日に登録出願、第30類「角砂糖,果糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,メープルシロップ」を指定商品として、平成20年7月4日に設定登録されたものである。
(2)登録第5148920号商標(以下「引用商標2」という。)は、「メープルシロップヌーボー」の文字を横書きしてなり、平成19年3月6日に登録出願、第30類「メープルシロップ」を指定商品として、平成20年7月4日に設定登録されたものである。
(以下、一括していうときは「引用各商標」という。)

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし第7号証を提出した。
<請求の理由>
本件商標の出願審査過程において提出された補正書(平成19年4月11日付け提出)は、要旨を変更するものであるため、本件商標の出願日は、前記補正書が提出された平成19年4月11日であり、本件商標は、当該出願日以前に出願された引用商標1及び2と同一又は類似するものであるから、商標法第8条第1項に違反して登録されたものである。
(1)本件商標について
本件商標は、上段に大きく「ケフィア倶楽部の」の文字を、下段に片仮名で小さく「ピュアメープルシロップヌーボー」の文字を配してなる構成からなり、平成18年8月8日付けで、第32類「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」を指定商品として出願され、平成19年4月11日付け提出の補正書により、前記商品区分及び指定商品を、第30類「メープルシロップ」に変更し、平成19年7月27日付けで登録されたものである。
そして、本件商標からは、その構成文字に対応して「ケフィアクラブノピュアメープルシロップヌーボー」という称呼が発生すると共に、少なくとも、下段の片仮名文字「ピュアメープルシロップヌーボー」に対応して、「ピュアメープルシロップヌーボー」及び「ピュア」が「純粋」という識別力の少ない文字であり、「メープルシロップ」が、本件商標の指定商品に係る普通名称であるため、「メープルシロップヌーボー」及び「ヌーボー」の各称呼が発生するものである。
(2)引用各商標について
ア 引用商標1
引用商標1は、その構成文字に対応して、「ヌーボー」の称呼が発生する。
イ 引用商標2
引用商標2は、その構成文字に対応して、「メープルシロップヌーボー」の称呼が発生すると共に、「メープルシロップ」が引用商標2の指定商品に係る普通名称であるため、「ヌーボー」の称呼が発生する。
(3)補正が要旨変更であることについて
本件商標の指定商品は、出願時においては「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」であり、第32類「清涼飲料,果実飲料」(29C019)に包含される商品「シロップ」のうち、「カエデの木から採取した樹液を原料とする」「シロップ」であった。
商品「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」飲料は、従来から現に存在する商品であり、例えば「暮らし考房」の発売している「メープルサップ」(商品名)には、「・・水のようにサラリとして、そのまま飲むこともできます。『メープルサップ』は、イタヤカエデの樹液100パーセント。・・・1993年に・・商品化し・・」と記載されている(甲5)。また、この商品は、テレビ番組「めざましテレビ」(2009年4月13日)において、「スタジオに用意されていたカエデの樹液100%で作られた自然飲料。メープルシロップとは異なり、色は透明。試飲したキャスター達は『甘い! 樹液ってこんなに甘いの? なんかカブトムシになったみたい』と驚いていた。」と紹介されると共に、「食物種:シロップ」と紹介されている。さらに、甲第7号証に示す「メープルベリー」もまた、メープルシロップを含む飲料である。
以上のように、本件商標の登録出願時の指定商品である第32類「シロップ」に、「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」飲料が現に存在する以上、これを、非類似商品である「メープルシロップ」(第30類)に変更することは、要旨の変更といわざるを得ないのである。
以上より、本件商標の登録出願日は、商標法第9条の4の規定により、補正書が提出された平成19年4月11日であることは明らかである。
(4)本件商標と引用各商標との類否
上述のとおり、本件商標より生ずる「ヌーボー」及び「メープルシロップヌーボー」の称呼は、引用商標1より生ずる「ヌーボー」の称呼並びに引用商標2より生ずる「ヌーボー」及び「メープルシロップヌーボー」の称呼と同じものである。
また、指定商品についても、本件商標及び引用各商標とは、商品「メープルシロップ」を含む点で共通する。
以上より、本件商標と引用各商標は、それぞれ類似する関係にある。
(5)結論
以上より、本件商標の登録出願日は、前記補正書が提出された平成19年4月11日であり、本件商標は、本件商標の登録出願日以前に出願された引用各商標と同一又は類似するものであるから、商標法第8条第1項に違反するものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、乙第1号証ないし第6号証を提出した。
(1)本件商標について
ア 本件商標は、第32類「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」を指定商品として、平成18年8月8日付けで登録出願したところ、平成19年4月9日付けで、以下の拒絶理由通知が発せられた。
「本件商標は、政令で定める商品及び役務の区分第32類の商品(役務)を指定したものとは認められない。したがって、本件商標は、商標法第6条第2項の要件を具備しない。『メープルシロップ』は、第30類に属する商品であるから、指定商品の表示を、例えば、次のように補正されたい。
第30類『カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ(メープルシロップ)』又は第30類『メープルシロップ』」
イ 以上のことから、審査官は、「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」という指定商品の記載は、第30類のメープルシロップと指定することと等価なものであると認定している。
ウ 上記認定に従って、被請求人は、平成19年4月11日付け提出の手続補正書において、その商品の区分及び指定商品を、第30類「メープルシロップ」に補正し、本件商標は、登録に至ったものである。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、前記(1)における指定商品の補正が、出願の要旨を変更するものであるから、その登録出願日が手続補正書提出日と認定されるべきであり、そうとすれば、当該日前に登録出願された引用各商標の存在により、本件商標の登録は無効である旨主張する。
しかしながら、請求人の上記主張は、審査時における審査官の認定に反するものである。
被請求人は、以下に、上記審査官の認定に誤りがないことを立証する。
まず、請求人は、甲第5号証の記事を根拠に、「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」は、メープルシロップではないと主張し、同時に「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」をメープルサップであるかのような主張をしている。
しかしながら、サップとは英語で「sap」のことで、樹液のことである。
「カエデの木から採取した樹液」がメープルサップである。
「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」は、メープルシロップであって、本件商標は、「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」を指定商品として登録出願をしたものである。
イ 前記被請求人の主張の根拠として、以下の証拠資料(乙第3号証ないし第6号証)により証明する。
a.乙第3号証の「ウィキペディア」によれば、「メープルシロップ」は、「サトウカエデの樹液を濃縮した甘味料」という説明があり、「メープルシロップ」は、樹液そのものではなく、樹液を濃縮したものであるという説明である。
b.乙第4号証の「ウィキペディア」の英語版には、その冒頭の部分に、「メープルシロップ(syrup)は、メープルトリー(かえでの木)の樹液(sap)から作られる・・・」といった意味の文章が記載されている。
c.乙第5号証の「はてなキーワード」というサイトには、「メープルシロップ」を説明する2/5ページに、カエデの樹液がサップであること、及び樹液を煮詰めてできたものがシロップであることが記載されている。
d.乙第6号証によれば、その文献の冒頭の部分に、「メープルトリー(かえでの木)の樹液からメープルシロップを作る作り方を最初に発見した人を誰もはっきり知らない・・」といった意味の文章が記載されており、この文献には、メープルサップ(sap)とメープルシロップの(syrup)違いが非常によく分かるように記載されている。
(3)むすび
以上のように、「メープルシロップ」と「メープルサップ」とは別物であり、「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」は、メープルシロップであることに疑う余地がない。すなわち、審査時における審査官の認定に誤りはなく、第32類「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」という指定商品の記載を第30類「メープルシロップ」に補正することは、出願の要旨を変更するものではない。

5 当審の判断
(1)本件商標の指定商品の補正について
ア 職権による調査並びに乙第1号証及び第2号証によれば、本件商標は、その商品区分及び指定商品を、第32類「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」として、平成18年8月8日に登録出願されたものである。
そして、平成19年4月9日付け拒絶理由通知書において、「本願商標は、政令で定める商品区分第32類の商品を指定したものとは認められないから、商標法第6条第2項の要件を具備しない。『メープルシロップ』は、第30類に属する商品であるから、商品区分及び指定商品を、例えば、第30類『カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ(メープルシロップ)』又は第30類『メープルシロップ』と補正すべき」旨の通知が発せられた。
前記拒絶理由通知を受けて、出願人(本件被請求人)は、平成19年4月11日付け提出の手続補正書をもって、その商品区分及び指定商品を、第30類「メープルシロップ」と補正したことが認められる(当事者間に争いのない事実。)。
イ ところで、「広辞苑(第六版)」によれば、「メープルシロップ」とは、「北アメリカ産の砂糖楓(さとうかえで)の樹液の濃縮液。ホットケーキなどにかける。楓糖蜜。」のことであり、また、乙第3号証にも、同趣旨の記載が認められる。
さらに、「シロップ」についても、前記「広辞苑」によれば、「濃厚な砂糖溶液。単舎利別(たんシャリベツ)。シラップ。砂糖蜜。果実シロップに同じ。」と記載されている。
そうすると、本件商標の登録出願当初の指定商品であった「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」からなる表示は、その表示自体からして飲料としての「シロップ」を表したものと理解されるというよりは、まさに、「カエデの木から採取した樹液を原料とする『濃厚な砂糖溶液』ないし『濃縮液』」であると理解されるものであるから、これと同義である商標法施行規則別表第30類「四 調味料」の「(三) 角砂糖 果糖 氷砂糖 砂糖・・」の範ちゅうに含まれる「メープルシロップ」を表しているというべきである。
ウ そして、原審において出願人は、上記拒絶理由通知を受け、審査官の指摘する商品区分及び指定商品に補正したことが明らかであり、拒絶理由通知の記載内容からしても、当然のことながら、審査官がその補正について要旨を変更するものであるとして、却下をしていないことも明らかである。
そうすると、平成19年4月11日付け提出の手続補正書をもって補正された指定商品である第30類「メープルシロップ」は、願書に記載された指定商品の要旨を変更したものということはできない。
(なお、付言すれば、商標法第6条第2項違反が無効理由に該当しないことは、同法第46条第1項の規定から明らかである。)
(2)請求人の主張
ア 前記(1)アに関し、請求人は、甲第5号証ないし甲第7号証を提出し、本件商標の登録出願時の指定商品である第32類「シロップ」に、「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」飲料が現に存在する以上、これを、非類似商品である「メープルシロップ」(第30類)に変更することは、要旨の変更といわざるを得ない、と主張するので、以下検討する。
a.甲第5号証には、「『暮らし考房』のメープルサップ」の見出しの下、商品説明として、「・・水のようにサラリとしていて、そのまま飲むこともできます。『メープルサップ』は、イタヤカエデの樹液100パーセント。・・暮らし考房では、1999年3月にメープルサップとメープルシロップを商品化し・・」と記載され、また、「販売価格」欄には、「イタヤカエデの樹液100%をろ過、瓶詰め・加熱殺菌した飲料水」と記載され、イタヤカエデの樹液100パーセントの「メープルサップ」なる飲料が販売されていることが認められる。
b.甲第6号証には、「メープルサップ」の表示のもと、「スタジオに用意されていたカエデの樹液100%で作られた自然飲料。メープルシロップとは異なり、色は透明。」、「食物種:シロップ」などと記載されていることが認められる(請求人の主張によれば、甲第5号証の商品と甲第6号証の商品は同一ものである。)。
c.甲第7号証には、「メープルベリー」なる商品の紹介記事が掲載されているところ、商品説明に「類まれなるカナダの味のリンゴとベリーにメープルをほんの少し加えました」、「炭酸入り果汁飲料」などと記載され、また、「品名」欄には、「清涼飲料水(※日本では炭酸飲料に分類されると思う)」と、「原材料」欄には、「濾過水、ブドウ糖、果糖、濃縮果汁(リンゴ、レモン、ブルーベリー)、メイプルシロップ、香料、炭酸」と、それぞれ記載されており、この商品の原材料の一つに「メープルシロップ」が使用されていることが認められる。
イ 他方、乙第5号証によれば、サトウカエデ等の樹液がサップであり、無色、透明で全体の約97.5%は水、残りの大半が蔗糖で構成されていること、その樹液中の66%の水を蒸発させるまで煮詰めてできたものがメープルシロップであることが記載されている。
ウ 前記ア及びイによれば、カエデの樹液を「サップ」あるいは「メープルサップ」といい、この樹液100%からなる飲料が「メープルサップ」として市場に出回っていること、「サップ」あるいは「メープルサップ」といわれる樹液を煮詰めて、その水分を蒸発させ濃縮したものを「メープルシロップ」ということが認められ、「メープルサップ」は、一般的に飲料として用いられる場合が多いといえる。
そして、「メープルサップ」が、第32類「清涼飲料」に属する商品であるとしても、これが請求人がいうところの「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」飲料と称されている事実を認めるに足る証拠は見出せない(甲第7号証の商品は、単に商品の原材料にメープルシロップが使用されているというにすぎないものであり、これについても「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」飲料と称されている事実を認めることができない。)。
エ なお、甲第6号証の商品には、「食物種:シロップ」と記載されているが、これと同一の商品である甲第5号証の商品には、「カエデの樹液100%をろ過、瓶詰め・加熱殺菌した飲料水」と記載されており、他の証拠の記載を総合勘案すれば、上記認定のとおり、「メープルサップ」を「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」飲料であると認めることは困難であり、したがって、甲第6号証の商品に「食物種:シロップ」と記載されていたことのみをもって、これが「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」飲料であると、直ちに認めることはできない。
オ 以上によれば、「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」飲料が、本件商標の登録出願及び登録査定の時点において、取引の対象として市場に普実に流通していたものと認めることはできない。
してみると、飲料としての「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」の表示は一般的なものではなく、本件商標の登録出願当初の指定商品の表示から、直ちに想起される一般的、具体的な商品表示であって、かつ、その商品範囲も実質的に同一のものといえる第30類「メープルシロップ」に補正するように指示をした審査官の判断は、適切なものであったということができる。
したがって、甲第5号証ないし第7号証を根拠にして、「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」飲料が現に存在するから、平成19年4月11日付け提出の手続補正書をもって補正された指定商品は、願書記載の指定商品の要旨を変更するものであるとする請求人の主張は、理由がなく、採用することができない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録出願日は、前記のとおり、平成18年8月8日であり、この日付は、引用各商標の登録出願日前であるといえるから、その余の点について判断するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第8条第1項に違反してされたものということはできない。
したがって、本件審判における請求人の無効の理由は、前提を欠くものであって、失当というべきものであるから、本件商標の登録は、商標法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-10-27 
結審通知日 2009-10-29 
審決日 2009-11-11 
出願番号 商願2006-74210(T2006-74210) 
審決分類 T 1 11・ 4- Y (Y30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 信彦 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 小田 昌子
野口 美代子
登録日 2007-07-27 
登録番号 商標登録第5065548号(T5065548) 
商標の称呼 ケフィアクラブノピュアメープルシロップヌーボー、ケフィアクラブノ、ケフィアクラブ、ピュアメープルシロップヌーボー、ピュアメープルシロップ、ピュアメープル、メープルシロップヌーボー、ヌーボー 
代理人 中尾 真一 
代理人 加藤 雄二 

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