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審決分類 審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない X43
管理番号 1218290 
審判番号 不服2009-5250 
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-11 
確定日 2010-05-28 
事件の表示 商願2007-11139拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「金比羅製麺」の漢字を標準文字で表してなり、第43類「麺類を主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成19年2月12日に登録出願されたものである。

第2 原査定における拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、香川県仲多度郡琴平町所在の宗教法人金刀比羅宮の著名な略称である『金比羅』の文字をその構成中に含むものであり、かつ、その者の承諾を得ているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第8号について
商標法第4条第1項第8号において、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」は、商標登録を受けることができない旨規定している。
そして、 最高裁平成16年(行ヒ)343号判決(判決日 平成17年7月22日)において、この規定の趣旨は、「人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても、一般に氏名、名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には、本人の氏名、名称と同様に保護に値すると考えられる。」旨、判示されている。
2 本願商標の商標法第4条第1項第8号の該当性について
(1)本願商標の構成について
本願商標は、前記第1のとおり、「金比羅製麺」の文字からなるところ、「金比羅」が「金毘羅」とともに、「仏法の守護神の一つ,香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)のこと。」を、また、「製麺」が「麺類を製造すること。」(ともに、広辞苑 第六版)をそれぞれ意味する語であることが認められる。
(2)「金比羅」の著名性について
本願商標の構成中「金比羅」の文字が、「金刀比羅宮」の略称として全国的に知られていることは、以下の新聞記事情報からも明らかであり、該文字は、「香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)を表示する標章であって著名なもの」に該当するものと認められる。
ア「朝日新聞」(2007年11月9日付け、大阪夕刊9頁)
「『金比羅宮 書院の美』 これが若冲の空間 美術家・田窪恭治さんと歩く【大阪】」の見出しの下、「『讃岐のこんぴらさん』金刀比羅宮の神域が広がる香川県琴平町の琴平山は日増しに秋色を深めている。境内で整備を進めていた『文化ゾーン』の完成を記念して5会場を公開する『金刀比羅宮 書院の美』(同宮、朝日新聞社主催)は、季節の移ろいを肌で感じ、お宮に伝わる数々の文化遺産を目の当たりにできるまたとない機会だ。若い日、金刀比羅宮の障壁画に接したことで芸術の道に進み、7年前から同宮文化顧問を務める美術家の田窪恭治さんに、5会場の内、メーンの書院3棟(表書院、奥書院、白書院)を案内してもらった。」の記載がある。
イ「北海道新聞」(2007年10月9日付け、夕刊4頁)
「<私のなかの歴史>前道漁連会長 北島哲夫さん*11*変遷の海に生きて*家族*人生観変えた息子の死」の見出しの下、「それまでは神仏にはまったく無関心だったのですが、息子の死をきっかけに手を合わせるようになりました。子どもが亡くなった年に香川県の金刀比羅宮へ行き、『今後、三十年間お参りしますから』と願をかけたのです。陸に上がって経営をするようになると、人様の命を預かって船を出すことにもなるわけですから。結局、金比羅(こんぴら)さんへは三十二年間毎年通い、必ず社殿に上がってお祈りしました。」の記載がある。
ウ「読売新聞」(2007年2月28日付け、西部朝刊33頁)
「有田焼陶板で巨大壁画 四国・金比羅さんの休憩所用 1000枚に絵付け=佐賀」の見出しの下、「有田焼の陶板を使った染付意匠の巨大壁画(横25メートル、高さ6メートル)を、香川県の現代美術家が地元窯元2社の協力を得て有田町で制作している。四国・金刀比羅宮周辺の環境整備を進める『琴平山再生計画』の一つとして建築されている新休憩所の内壁を飾るもので、7月上旬までに大小計4面の壁画を焼き上げて完成させる予定。有田の磁器でつくられた壁画では最大ではないかという。制作しているのはフランスにある中世の礼拝堂再生などで知られる現代美術家・田窪恭治さん(58)(香川県琴平町)。田窪さんは同国の『芸術・文化勲章オフィシェ』、『村野藤吾賞』(建築)などを受賞。同再生計画は金刀比羅宮の文化顧問として手掛けている。休憩所は山の中腹にある斜面を利用した地下式の鉄筋コンクリート2階建て、延べ693平方メートル。9月末にオープンする。休憩所一帯の山は野生ヤブツバキが群生しており、『金比羅さんの象徴』としてツバキ絵の壁画採用を固め、3年前から構想に着手した。」の記載がある。
エ「読売新聞」(2006年9月17日付け、東京朝刊10頁)
「[日曜の広場]親孝行 土産に恵比須様 主婦・田村純代60(甲府市)」の見出しの下、「高校の修学旅行でのこと。関西から船で四国に渡り、金刀比羅宮を参拝した。(中略)家に帰ってすぐに、両親に金比羅さんのお土産だと手渡した。」の記載がある。
オ「産経新聞」(2006年3月12日付け、東京朝刊9頁)
「【探訪】高松市・琴電の旧型車両 アツい走りの『大正気質』」の見出しの下、「総延長六十キロ。沿線に『こんぴらさん』として知られる金刀比羅宮を抱えている。乗客は住民や学生に交じって金比羅参りの観光客。さらに讃岐平野をゴトゴトと走る姿にひかれた『琴電詣で』のファン。」の記載がある。
カ「北海道新聞」(2005年11月30日付け、夕刊5頁)
「<私のなかの歴史>福原名誉会長 福原治平さん*14*商いは誠心誠意*経営統合*大手に対抗『アークス』に」の見出しの下、「一九九○年代に入り、株式の店頭公開のセミナーを聞く機会がありました。講師の人が言うには『香川の金比羅(こんぴら)さん(金刀比羅宮)に行くと、参道の脇に神社へ寄進した人たちの名が彫ってあるが、現在も続いている商店は一軒もない』というのです。」の記載がある。
キ「産経新聞」(2005年7月29日付け、大阪朝刊31頁)
「【あの戦争 読者の60年】大阪大空襲 懸命に生きた姿を尊敬」の見出しの下、「昭和十九年、戦火が激しくなると大阪市内の小学生の集団疎開が始まった。現在は、福島区で印刷業を営む井口正徳さん(七三)も金刀比羅宮で知られる香川県琴平町に九月から疎開した。六年生だった。(中略)地元の児童との兼ね合いで授業は午後から。午前中は農作業をしたり、『鍛錬』と称して金比羅さんの階段を上り下りした。」の記載がある。
ク「朝日新聞」(2004年8月27日付け、大阪26頁)
「県内のレベル抜群、76人入選 日本伝統工芸展発表 /石川」の見出しの下、「朝日新聞社賞の内野薫さんは『金比羅さんのおかげです』とほほ笑んだ。(中略)転機は香川県・琴平町の金刀比羅宮。輪島市の県立輪島漆芸技術研修所の教務課長だった5年前、同宮の33年に一度の『遷座祭』に合わせた仕事を依頼された。」の記載がある。
ケ「読売新聞」(2004年4月24日付け、大阪朝刊32頁)
「[四国『食』紀行]清酒『金陵』 香川県高松市 心とらえる深い辛口=香川」の見出しの下、「江戸期の一七八九年に、香川県琴平町の金刀比羅宮門前で生まれた清酒『金陵』は、参拝客から『こんぴら酒』として親しまれてきた。その伝統を守る酒造会社『西野金陵』(本社・高松市)は参道沿いの創業地に、古い酒蔵を再現した資料館『金陵の郷(さと)』を設け、豊かな歴史を伝える。迎えてくれた資料館代表の小川忠義さん(60)は『歴代の杜氏(とうじ)によると、こんぴらさんを参った森の石松も飲んだそうです』と誇らし気だ。そう言えば、浪曲や講談で、大親分清水次郎長の子分、石松の名場面はあの『すし食いねぇ、酒飲みねぇ』。これは、次郎長の代参として金比羅宮へ向かう道すがら、最寄りの多度津港を目指す船でのやり取りという。」の記載がある。
コ「読売新聞」(2004年2月3日付け、東京朝刊37頁)
「伊香保町、石段街『三大名段』宣言 香川の金刀比羅宮、山形の山寺と並び=群馬」の見出しの下、「金刀比羅宮は『金比羅さま』と親しまれ、信仰を集める。」の記載がある。
サ「朝日新聞」(2002年9月2日付け、大阪夕刊15頁)
「公用車で金比羅参り 府議に引かれて大阪狭山市長 【大阪】」の見出しの下、「市長が参加したのは、同市選出の坂本充府議(62)の後援会が1泊2日で主催した『金比羅(こんぴら)さん栗林公園・瀬戸内海遊覧ツアー』。後援会員約200人が参加した。市民団体『南河内広域見張り番』(加藤邦彦代表)が市情報公開条例に基づいて請求して開示された資料などによると、市長は土曜日に当たる6月1日の昼過ぎに大阪狭山市を出発し、山陽自動車道、瀬戸大橋などを通って午後4時半ごろ現地に到着。金刀比羅宮を訪れた後、午後6時からの後援会の宴会に出席した。帰路もほぼ同じコースで午後11時50分ごろ同市に戻った。」の記載がある。
シ「東京新聞」(2002年3月12日付け、朝刊17頁)
「旅特集 四国絶景 至極感激 瀬戸大橋 強さと美しさと 金刀比羅宮 楽しい石段駕籠 桂浜 竜馬の志をしのぶ 四万十川 シバツケ漁見学 内子町 江戸時代を遊ぶ 道後温泉 名湯にくつろぐ」の見出しの下、「日本の科学技術の粋を見た後は、古き良きものの観光が待っている。内陸に入ると、『讃岐の金比羅さん』として、庶民の信仰を集めてきた金刀比羅宮がある。」の記載がある。
ス「毎日新聞」(2001年4月14日付け、中部朝刊11頁)
「[女の気持ち]石段 愛知県小牧市・能登谷きみ子(主婦・75歳)」の見出しの下、「785段--ビルの階段?それともテレビ塔の非常階段?いえいえ、四国は讚州金刀比羅宮の石段の数といえば思い出し、懐かしむ人もいると思う。『金毘羅船船、追い手に帆かけてシュラシュシュシュ』の歌詞で親しまれている金比羅さんの階段は、785段もあるそうだ。今回、私は初めて金比羅さんもうでに参加した。」の記載がある。
セ「読売新聞」(1999年11月23日付け、大阪朝刊28頁)
「テクテク両詣の旅 帝塚山大生ら15人が40キロ、のぼり掲げ法被姿で=奈良」の見出しの下、「交通手段の発達でスピード化した現代の『観光旅行』を考え直そうと、奈良市の帝塚山大生ら十五人が二十二日、江戸時代から庶民信仰で知られる香川県琴平町の金刀比羅宮(金比羅さん)と岡山県倉敷市の瑜伽山蓮台寺(瑜伽さん)を巡る二泊三日の『両詣(もうで)』に出発した。」の記載がある。
ソ「朝日新聞」(1998年10月6日付け、大阪)
「古式ゆかしく讃岐の秋告げる 9日から金比羅宮の例大祭 /高知」の見出しの下、「讃岐の秋を告げる香川県仲多度郡琴平町、金刀比羅宮(琴陵容世宮司)の例大祭が九日から十一日まで三日間、繰り広げられる。最大の呼び物、みこし渡御行列『お頭人(とうにん)さん』のポスターが町内のあちこちに張られ、祭り気分を盛り上げている。」の記載がある。
タ「中日新聞」(1991年11月26日付け、朝刊16頁)
「豪華船で金比羅参りいかが 1月12日鳥羽を出港 定員30人」の見出しの下、「【三重県】昨年九月に建造された商船三井客船の豪華客船『にっぽん丸』(二二、〇〇〇トン=写真)が来年一月、鳥羽湾内に立ち寄り、伊勢志摩地方の人たちを乗せて香川県の金刀比羅宮参りの航海をする。」の記載がある。
(3)「他人の承諾」を得たものであるかについて
請求人は、「香川県仲多度郡琴平町892-1」在の「金刀比羅宮」から、本願商標を登録することについての承諾を得たことを証明するための書類(承諾書等)を提出していない。
したがって、本願商標は、これを登録することについて、他人の承諾を得たものとは認められない。
(4)まとめ
前記(1)ないし(3)で認定したとおり、本願商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標であって、かつ、当該他人の承諾を得ているものとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものといわざるを得ない。
3 請求人の主張(要旨)について
(1)請求人は、本件商標は「金比羅製麺」の文字を一体に切れ目無く配する態様であり、「製麺」の語は一般に宗教法人を想起させる語ではない。また、「製麺」の語は宗教法人とかかわりの深いと考えられる業態等を観念する語とも考え難いことから、本件商標に接した需要者が宗教法人金刀比羅宮との関係を念頭におくことは極めてまれである旨、主張する。
しかしながら、本願商標構成中の「製麺」の文字は、本願指定役務「麺類を主とする飲食物の提供」との関係においては、その提供するもの(麺)を容易に想起させるものであり、自他識別力を有しないか、極めて弱いものというのが相当である。
また、讃岐地方(香川県)で生まれ、作られてきた「讃岐うどん」が、うどん店や家庭などで好んで食されている食べ物であることは顕著な事実であり、金刀比羅宮が存する香川県琴平町にも、讃岐うどん店が多数軒を並べている事実が認められる。
そうとすると、「金比羅製麺」の文字からなる本願商標がその指定役務に使用された場合には、これに接する取引者・需要者は、その構成中の「金比羅」の文字に着目し、これより金刀比羅宮を想起するというのが相当であるから、請求人の主張は採用することができない。
(2)請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべきである旨主張しているが、その構成及び態様等が異なり、事案を異にするものであり、かつ、具体的事案の判断においては、過去の登録例に拘束されることなく検討されるべきものであるから、この請求人の主張も採用することができない。
その他の請求人の主張をもってしても、原査定の拒絶の理由を覆すに足りない。
4 まとめ
以上によれば、本願商標を商標法第4条第1項第8号に該当するものとした原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-03-26 
結審通知日 2010-03-29 
審決日 2010-04-13 
出願番号 商願2007-11139(T2007-11139) 
審決分類 T 1 8・ 23- Z (X43)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢代 達雄 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 小川 きみえ
豊瀬 京太郎
商標の称呼 コンピラセーメン 
代理人 神谷 岳 

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