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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y1641
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y1641
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y1641
管理番号 1216424 
審判番号 無効2009-890031 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-04-09 
確定日 2010-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4762128号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第4762128号商標(以下「本件商標」という。)は、「cavallino」の欧文字を横書きしてなり、平成15年1月20日に登録出願、第16類「印刷物,書画,写真」及び第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),小型自動車競走の企画・運営又は開催,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影」を指定商品又は指定役務として、同16年2月27日に登録査定、同年4月9日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第30号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)請求人及び請求人標章について
ア 請求人は、1947年にエンツォ・フェラーリ氏によってイタリア国にて設立された世界有数のスポーツカー製造業者であり、1950年から世界最高峰の自動車レースである「フォーミュラ・ワン(F1)」に出走するなど、これまで自動車レース活動を積極的に行ってきた。また、市販用のスポーツカーやGTカーも製造しており、世界各国にて販売する他、関連グッズとして、模型自動車等のおもちゃ、衣服、かばん、アクセサリー類等、広く商品展開を行っている。
請求人の名声は、F1への参加及びスポーツカー等の販売活動を通じて、特定のモータースポーツ愛好家のみならず、広く一般人にも及んでいるということは顕著な事実であって、請求人の市販用スポーツカーは高額で取引されており、その結果、請求人のスポーツカーは高級かつ高性能であるとのブランドイメージが、一般の需要者に幅広く浸透している。
イ 請求人は、創始以来、「Ferrari」のロゴとともに、後足で立ち上がった馬(跳ね馬)をモチーフにした紋章を、コーポレートシンボルとして採択使用している。
この跳ね馬の紋章は、イタリア語で「cavallino rampante」という愛称で広く親しまれており、請求人は、当該愛称及びその略称「cavallino」(以下、合わせて「請求人標章」という。)を、自動車の販売、自動車レース、関連グッズの販売といった請求人のあらゆる事業活動に用いている。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
ア 請求人標章の周知・著名性
請求人標章は、請求人の長年にわたる大規模な活動の結果、請求人のコーポレートシンボルである跳ね馬の紋章の愛称及びその略称として、広く認識されている。
甲第5号証の1ないし5は、オリンパス株式会社の製造する請求人の跳ね馬紋章を施したデジタルカメラが、2003年10月頃に世界で1万台、日本でそのうち1千台限定で販売開始された事実を示している。説明文中で、「フェラーリF1チームの象徴である『キャバリーノ・ランパンテ(はね馬)』のロゴがレンズバリアに施されています。」と述べられている。
甲第6号証の1及び2は、日本エイサー株式会社の製造する請求人の跳ね馬紋章を施した液晶ディスプレイモニターが日本国内で販売された事実を示す。説明中で「前面には有名な『跳ね馬』(カヴァリーノ・ランパンテ)のエンブレム。」と記載されている。また、日本エイサー株式会社は、甲第6号証の1に示す液晶モニターの他、2005年9月にも請求人の跳ね馬紋章を付したノート型パソコンを限定販売している(甲第7号証)。
甲第8及び第9号証は、請求人の跳ね馬紋章をあしらったマグカップを日本国内の需要者向けに販売するウェブサイトのプリントアウトであり、説明文中に、「Ferrariの象徴でもある、キャバリーノ・ランパンテ(跳ね馬)が描かれた」と述べられている。
甲第10ないし第12号証は、請求人の跳ね馬紋章をあしらったデニムシャツ、ロンパース(ベビー服)、ポロシャツを日本国内の需要者向けに販売するウェブサイトのプリントアウトであり、商品名中に、「キャバリーノ」の文字が記載されている。
甲第13号証は、請求人の跳ね馬紋章をあしらったホイールキャップ等の自動車関連アクセサリーを日本国内の需要者向けに販売するウェブサイトのプリントアウトであり、商品名中に、「カバリノ」「Cavallino」の文字が記載されている。
以上のように、請求人標章は、請求人のコーポレートシンボルである跳ね馬紋章の愛称及びその略称を意味するものとして広く知られており、イタリア語で「跳ね馬」を意味するとしても、イタリア語に普及度の低い日本においては、むしろ請求人固有の愛称として周知されている。跳ね馬紋章が請求人の業務全体の表示として認知されていることも合わせて考慮すると、請求人標章は、単なる愛称ではなく、請求人の業務全体に係る商品・役務を表示する商標として、需要者の間で、広く認知されるに至っている、ということができる。
イ 請求人標章と本件商標との類似性
本件商標からは、「キャバリーノ」「カバリーノ」の称呼が生じる。
他方、請求人標章は、「キャバリーノ(カバリーノ)・ランパンテ」の称呼が10音(長音含む)と比較的冗長であること、及び「cavallino rampante」が、結合された熟語として一般の日本人に比較的親しみのないイタリア語であることからすれば、「キャバリーノ(カバリーノ)・ランパンテ」の称呼以外に「ランパンテ」を省いた「キャバリーノ」と省略して称呼され得る。また、上述のとおり、実際に、請求人標章あるいは跳ね馬の紋章が「キャバリーノ」「Cavallino」「カバリノ」と略称して取引に用いられている事情が存在する(甲第10ないし第13号証)。
したがって、本件商標及び請求人標章の称呼は共通し、互いに聞き違えられるおそれがあり、外観、観念を比較するまでもなく、請求人標章と本件商標の類似性は極めて高いということができる。
ウ 請求人の業務及び本件商標の指定商品・役務との関連性について
(ア)請求人標章は、請求人のコーポレートシンボルである跳ね馬紋章の愛称及びその略称を意味するものとして周知であり、すなわち、請求人の業務に係る商品・役務を表示する商標として、広く認知されているものである。
請求人の業務は、主に、スポーツカーに関連するものであるが、自動車産業としての側面のみならず、モータースポーツ、すなわちエンターテインメントとしての側面も備えており、幅広い分野に関連するといっても過言ではない。
また、請求人は、多種多様な関連グッズを自ら、あるいはライセンシーを通じて販売しており、これは、多角的に商品・役務が展開される可能性を示している。
(イ)本件商標の指定商品中、第16類「印刷物、書画、写真」は、関連グッズとして、請求人自身あるいはそのライセンシーによって取り扱われる可能性の非常に高い商品である。
また、本件商標の指定役務中、第41類「スポーツの興行の企画・運営又は開催、小型自動車競走の企画・運営又は開催」は、請求人のモータースポーツ業務に直接的に関連する役務であり、これらの役務以外の第41類に属する役務についても、同じエンターテインメント分野として、密接に関連する役務である。
(ウ)以上のとおり、本件商標に係る指定商品・役務はいずれも、請求人の業務に係る商品・役務と密接に関連するものである。
エ まとめ
以上のように、(a)請求人標章が請求人固有の愛称として広く認識されていること、(b)請求人標章と本件商標との類似性が高いこと、(c)請求人業務が多角的に展開されていること、(d)請求人業務と各指定商品・役務とが重複、あるいは密接に関連性していることからすれば、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用した場合、これに接した需要者及び取引者は、請求人、または同人と資本関係または業務提携関係を有する者の業務に係る商品または役務であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれは十分に存在する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 請求人標章の周知性について
請求人標章は、請求人のコーポレートシンボルである跳ね馬の紋章の愛称及びその略称として、請求人の大規模な活動の結果、広く一般の重要者及び取引者に認識されているということができる。
また、これは、日本国内に限らず、スポーツカーの販売やF1レースヘの参戦を通じた請求人の世界的な活動の結果、国外の需要者及び取引者にも同様に認識されていることは容易に推測できる。
イ 請求人標章と本件商標の類似性について
請求人標章からは、「キャバリーノ・ランパンテ」のみならず、「キャバリーノ」の称呼が生じ得るので、本件商標と請求人標章とは称呼が共通し、互いに類似するというべきである。
不正の目的について
被請求人は、雑誌、書籍の出版を業とする法人である(甲第14号証)。被請求人の発行する雑誌には、自動車やモータースポーツに関するものが多く(甲第15号証)、そのうち「SCUDERIA」なる雑誌は、請求人のスポーツカー及びレーシングチームを主題とするものである(甲第16号証)。
以上の事実を考慮すると、被請求人は、請求人標章が請求人を示すものとして認知されていることを、本件商標の出願時点において知悉していたことは明らかであって、偶然の一致とは考えがたい。また、被請求人は、常習的に、著名な自動車製造業者の所有する商標を、第16類、第41類及びその他の商品区分で取得している。すなわち、本件商標は、著名な請求人標章、あるいはその略称の表音である「キャバリーノ」の文字が、本件商標に係る指定商品及び指定役務について登録されていないことを奇貨として、先取り的に出願したものであるといえ、請求人標章の有する出所表示機能を希釈化させる目的で出願したものである。
エ まとめ
以上より、本件商標は、請求人の業務に係る商品または役務を表示するものとして日本国内または外国における需要者の間に広く認識されている請求人標章と類似し、また、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。
(4)商標法第4条第1項第7号該当性について
被請求人は、請求人標章が請求人を示すものとして認知されていることを、本件商標の出願時点において知悉しながら、本件商標を、請求人の承諾を得ることなく、登録出願したものである。かかる出願は、その経緯に社会的相当性を欠くものであって、また、指定役務に関する本件商標の使用は、社会公共の利益に反する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。
2 弁駁の理由
(1)商標法第4条第1項第15号について
被請求人は、愛称はあくまでも「rampante」、「ランパンテ」と結合された「cavallino rampante」「キャバリーノ・ランパンテ」であり、略称として、「cavallino」が一般的に使用されている事実は存在しておらず、「cavallino」が「跳ね馬の紋章の愛称及び略称として、広く認識されている」事実は存在しない旨述べているが、この主張に基づいて本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性を否定するのは失当である。
まず、少なくとも「cavallino rampante」「キャバリーノ・ランパンテ」の表示が、著名な「跳ね馬紋章」の愛称として関連需要者の間で広く知られていることは甲第3ないし第9号証から明らかであり、これらの表示が、請求人の出所表示標識として認識され得ることは疑う余地はない。
さらに、甲第10ないし第13号証に示すように、「cavallino」「キャバリーノ」の表示が、請求人商品を表示する目的で実際に使用されている事実は存在するのであり、これは、「跳ね馬紋章」あるいは「cavallino rampante」「キャバリーノ・ランパンテ」の愛称が、その取引の実情において、関連需要者及び取引者によって、「cavallino」あるいは「キャバリーノ」と略称され得るという明白な事実を示すものである。
これらの事実は、本件商標「cavallino」が、実際の取引において、請求人商品又は役務の出所を表示するものとして使用される蓋然性を有することを示すものである。また、乙第13及び第14号証に関する答弁書における被請求人の主張及び甲第30号証によれば、「CAVALLINO」なる題号の請求人のスポーツカーを専ら題材としている雑誌が米国において古くから発行され、日本にも輸入されていることが窺える。この事実は、「CAVALLINO」の文字単独であっても、それに接する需要者・取引者によって、請求人またはそのライセンシーの業務が連想され得る、という推認をより強固にするものである。
また、被請求人は、これらの使用例は、「Ferrari」の商品であることが明示されるか、「Ferrari」の表示とともに、商品名の一部分として「キャバリーノ」が使用されているにすぎない、と述べる。
しかしながら、請求人の商品に、ハウスマークかつ商号の要部である「Ferrari」の表示を件って使用することは至極当然であり、甲第10ないし第13号証の使用態様を見ても、「Ferrari」の表示と外観的にも観念的にも一体不可分に使用されているとまでは言い難いことからすれば、これらの使用例やかかる被請求人の論拠は、「cavallino」「キャバリーノ」の表示が、独立した出所識別標識として認識され得る可能性を否定するものではなく、むしろ、「rampante」の表示が、請求人の出所を表示するために必須ではないことを推認させるものである。
さらに、被請求人は、「cavallino」がイタリア語の普通名詞で「若駒」を意味し、請求人の「標章」を意味している単語ではない、「rampante」が、「(【紋】動物の側面から描いた図柄で)足で立った」を意味し、一般的な伊和辞典において、「cavallino rampante」が請求人の標章を意味しているなどとする趣旨の例文や説明などが存在しない、と述べる。
イタリア語の普及度の高くない日本においては、各語を、単なるディクショナリーワードとして認識しないのが自然であり、また、イタリア語の熟語として存在しない以上、「cavallino rampante」全体が一体不可分な語として必ずしも認識されないということができる。むしろ、上述のように「cavallino」または「キャバリーノ」と略称されている事実からは、本件商標は、関連需要者をして、請求人の代表的出所標識である「跳ね馬紋章」を優先的に想起させるというべきである。
さらにまた、被請求人は、「cavallino rampante」が周知、著名であればあるほど、本件商標「cavallino」と明瞭に識別され、出所が誤認、混同されることはない、と述べる。
この点、商標が周知著名であるほど出所混同が生じやすい、あるいは、知的財産権の保護強化の観点から要保護性が高いというのが原則論であって、上述の論拠が正当化される場合とは、両商標の称呼または外観が近似するにもかかわらず、商標の知名度により周知著名商標の観念が固定化され、観念上の相違が際立つことにより、出所混同の可能性が否定される場合である。
すなわち、答弁書において被請求人の前提とする、周知・著名な商標と、その一部と「共通」する商標とを対比する場面において用いられる理論ではなく、本件とは事案が全く異なるというべきである。また、本件商標「cavallino」がイタリア語でいう「若駒」を意味することが日本の需要者には浸透しているならまだしも、上述のとおり、そのような事実は存在しないのであるから、本件商標と「cavallino rampante」とは、依然として観念上相紛らわしいというべきである。
以上のことから、本件商標は、請求人標章との関係で、請求人の業務と出所混同を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべきである。
(2)商標法第4条第1項第19号について
被請求人は、本件商標「cavallino」が「不正の目的をもって使用するもの」ではない旨主張するが、これは失当である。
乙第3号証によれば、被請求人雑誌「SCUDERIA」に、ルカ・コルデロ・ディ・モンテゼモロ氏の氏名、写真とともに「A warm greeting to all Japanese”Ferrarisil”」の文字が掲載されたことが窺えるが、この掲載内容の真偽は不明であるし、被請求人の述べるように「SCUDERIA」の発行を歓迎して寄せられたものであるか否かも、乙第3号証のみでは明確ではなく、少なくとも「SCUDERIA」という表題の使用を被請求人に対して承諾した事実まで認めることはできない。また、この事実は、本件商標の出願登録を是認した事実を決して証明するものではない。
むしろ、乙第3号証は、被請求人が、請求人に関する深い知識を有しているのみならず、請求人関係者と一定の関係を有していたことを、被請求人自身が自認するものであり、これは、本件商標の出願が、請求人と全く無関係に、請求人標章に依拠せずになされたものではないことを確信させるものである。
また、被請求人は、乙第13及び第14号証に関連して、アメリカ合衆国において、「CAVALLINO」を表題とする雑誌が古くから刊行されている、と述べる。
乙第13及び第14号証は、まさに請求人のスポーツカーを専ら題材とする専門誌であり、被請求人が、請求人を題材とする雑誌に、(「cavallino rampante」「キャバリーノ・ランパンテ」ではない)「CAVALLINO」の文字が実際に用いられていることを、本件商標の出願時において認識していたことは明らかである。この題号「CAVALLINO」が、請求人の「跳ね馬紋章」の愛称に依拠したものであることは明らかであり、少なくとも被請求人がそれを知らないはずはない。
以上の被請求人の認識は、本件商標と請求人の「跳ね馬紋章」の愛称「cavallino rampante」とは異なるものであるとする被請求人の主張と、全く矛盾するものである。
よって、本件商標が請求人の「跳ね馬紋章」に由来して、採択されたものであり、本件商標が日本において登録されていないことを奇貨として、これに蓄積された名声、顧客吸引力にただ乗りすることを目的に出願したものである。これは正しく、商標法第4条第1項第19号に定める「不正の目的」に他ならない。
以上のことから、仮に本件商標が請求人業務との関係で出所混同を生じさせないとしても、被請求人の出願時での認識、知識を考慮すると、本件商標の登録出願に関する被請求人の不正の目的は明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものというべきである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
被請求人は、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性に関して、請求人主張が失当である旨述べるが、上述のとおり、「Cavallino」の表示と請求人の「跳ね馬紋章」との関連性を本件商標の出願時点において知悉しながら、また、甲第30号証に示すように、請求人を題材とする雑誌への本件商標の使用を意図して、本件商標が日本において登録されていないことを奇貨として、請求人の承諾を得ることなく、登録出願したものである。かかる出願は、その経緯に社会的相当性を欠くものであって、また、指定役務に関する本件商標の使用は、社会公共の利益に反するというべきである。
(4)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、第15号及び第19号に違反して登録されたものであるから、同法46条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由の要旨を次のように述べ、証拠方法として、乙第1ないし第14号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(1)請求人は、本件商標「cavallino」が、イタリアの自動車メーカー「Ferrari」の「後足で立ち上がった馬(跳ね馬)をモチーフにした紋章」の愛称である「cavallino rampante」の略称であるとの誤った事実を前提として、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であり、商標法第4条第1項第15号に該当すると主張している。
しかしながら、本件商標「cavallino」が前記「跳ね馬の紋章」の愛称「キャバリーノ・ランパンテ」「cavallino rampante」の略称である旨の請求人の主張は事実に反しており、そもそも前提を欠くというべきであり、本件商標「cavallino」が「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」は存在せず、請求人の上記主張は誤っている。
(2)請求人は、「キャバリーノ」「cavallino」が、同人の「コーポレートシンボルである跳ね馬の紋章の愛称及びその略称として、広く認識されている。」と主張しているが、事実に反しており誤りである。
すなわち、請求人が、「Ferrari」について、「後足で立ち上がった馬の紋章」を使用しており、「跳ね馬」、イタリア語で「cavallino rampante」(キャバリーノ・ランパンテ)という愛称があるとしても、愛称はあくまでも「rampante」、「ランパンテ」と結合された「cavallino rampante」「キャバリーノ・ランパンテ」であり(甲第3号証)、略称として、「cavallino」が一般的に使用されている事実は存在しておらず(甲第4号証の1ないし4)、「キャバリーノ」が「跳ね馬の紋章の愛称及び略称として、広く認識されている」事実は存在しない。
(3)請求人の「標章」は、「後足で立ち上がった馬の紋章」及び「cavallino rampante」、「キャバリーノ・ランパンテ」であって、「cavallino」、「キャバリーノ」が使用されている事実はない(甲第3ないし第13号証)。
請求人は、「cavallino」、「キャバリーノ」が、請求人の「跳ね馬の紋章の愛称及び略称として、広く認識されている」根拠として、甲第5ないし第13号証を指摘しているが、いずれも「跳ね馬紋章」(cavallino rampante、キャバリーノ・ランパンテ)を使用していることが明瞭であって、商品そのものについて「cavallino」、「キャバリーノ」の文字が請求人の「標章」の略称として使用されていないことは争う余地がない。
例えば、甲第5号証の1ないし5においては、「『キャバリーノ・ランパンテ(はね馬)』のロゴがレンズバリアに施されています。」とされ、甲第6及び第7号証においては、「前面には有名な『跳ね馬』(カヴリーノ・ランパンテ)のエンブレム。」、「フェラーリの跳ね馬エンブレムが備わる」というのであり、甲第8及び第9号証においても、「キャバリーノ・ランパンテ(跳ね馬)」が描かれていることが明らかであり、また、甲第11ないし第13号証においても同様である。
なお、甲第10及び第12号証の一部の商品には、「Ferrari」の表示は窺えるものの「跳ね馬紋章」(cavallino rampante、キャバリーノ・ランパンテ)は使用されておらず、「Ferrari フェラーリ」、「Ferrari Storeのフェラーリ純正アイテムです。」と表示されたうえで、商品名の一部に「キャバリーノ」が使用されているに過ぎない。
請求人の「標章」は、「跳ね馬紋章」(cavallino rampante、キャバリーノ・ランパンテ)であって、「cavallino」「キャバリーノ」がその略称として使用されている事実は存在しない。
「跳ね馬紋章」は、「cavallino rampante」、「キャバリーノ・ランパンテ」であり、「cavallino」、「キャバリーノ」ではないことが銘記されなければならない。
請求人の前記主張は、事実に反している。
(4)さらに、請求人は、「cavallino rampante」が、「『キャバリーノ・ランパンテ』の称呼以外に『ランパンテ』を省いた『キャバリーノ』と省略して称呼され得る。」と強弁し、「請求人標章あるいは跳ね馬の紋章が『キャバリーノ』『Cavallino』『カバリノ』と略称して取引に用いられている事情が存在する。」として、甲第10ないし第13号証を指摘している。
しかしながら、「請求人標章である跳ね馬紋章」は「cavallino rampante」、「キャバリーノ・ランパンテ」であって、「rampante」、「ランパンテ」が結合され特徴づけられて他と識別されていることは前記のとおりである。
請求人が根拠であると主張する甲第10ないし第13号証記載の各商品は、いずれも「Ferrari フェラーリ」、「Ferrari Store〔フェラーリ純正アイテム〕」、「Ferrari Other!」との表示のもとに、「Ferrari」の商品であることが明示されたうえで「Ferrari」、「跳ね馬紋章」が表示されているものであり、商品名の一部分として「キャバリーノ」が使用されているに過ぎないことも前記のとおりである。
しかも、商品名として一部分に「キャバリーノ」が使用されている場合であっても、多くは「Ferrari Cavallino」のように「Ferrari」が結合されていることに留意すべきである。
請求人標章が、「『キャバリーノ・ランパンテ』の称呼以外に『ランパンテ』を省いた『キャバリーノ』と省略して称呼され得る。」とする根拠は存在しない。
(5)本件商標「cavallino」は、イタリア語の普通名詞で「若駒」を意味する標章であるが、イタリア語の「cavallino」が請求人の「標章」を意味している単語でないことはいうまでもない(乙第1号証)。
なお、「rampante」はイタリア語の形容詞で、「(【紋】動物の側面から描いた図柄で)足で立った」を意味しているが(乙第2号証)、一般的な伊和辞典においては、「cavallino rampante」が請求人の標章を意味しているなどとする趣旨の例文や説明などが存在しないことも明瞭である。
「cavallino rampante」、「キャバリーノ・ランパンテ」が、イタリア語において、「キャバリーノ」、「cavallino」、「カバリーノ」と略称されることがないばかりでなく、日本において、そのような「略称」が「称呼され得る」とする根拠は存在しない。
請求人の主張は、牽強付会も甚だしいというべきである。
(6)請求人は、「跳ね馬紋章」の愛称として「cavallino rampante」、「キャバリーノ・ランパンテ」が「広く認識されている」と主張するのであるが、仮に、そうであるならば、「跳ね馬紋章」の愛称が単に「cavallino」、「キャバリーノ」と称呼されることはない。
すなわち、東京高裁平成4年3月10日判決、判時1413号114頁の判示に照らしても、「cavallino rampante」、「キャバリーノ・ランパンテ」が周知、著名であればあるほど、本件商標「キャバリーノ」と明瞭に識別され、出所が誤認、混同されることはない。
2 商標法第4条第1項第19号に関する主張について
(1)請求人は、本件商標「cavallino」が、「跳ね馬紋章」の愛称「cavallino rampante」、「キャバリーノ・ランパンテ」の略称であるとの誤った事実を前提として、被請求人の業務を誹誘し、本件商標「キャバリーノ」をあたかも「不正の目的をもって使用するもの」であるかのように論難しているが、事実を誤っているばかりでなく、意図的に歪曲したうえでなされており、誠実さを欠く主張であって失当である。
(2)請求人は、被請求人が1995年以降フェラーリをテーマとする雑誌「SUCUDERIA」を刊行していることについて、「不正の目的」があるかのように主張しているが、請求人自身が、被請求人が発行する雑誌「SCUDERIA」の発刊を歓迎していたことを没却して、不当に非難するものであるといわざるをえず、遺憾であるというほかはない(乙第3及び第4号証)。
乙第3号証は、雑誌「SCUDERIA」創刊号であるが、冒頭に、「Ferrari S.p.A.社長 ルカ・コルデロ・デイ・モンテゼモロ」氏が雑誌「SCUDERIA」の発刊を歓迎する挨拶を寄せていることを想起すべきである(乙第4号証参照)。
(3)被請求人は、本件商標「cavallino」が請求人の「跳ね馬紋章」の愛称「cavallino rampante」を略称したものであるとの誤った前提のもとに、「本件商標は、著名な請求人標章、あるいはその略称の表音である『キャバリーノ』の文字が、本件商標に係る指定商品及びその指定役務について登録されていないことを奇貨として、先取り的に出願したものであるといえる。」などと主張しているが、「cavallino」が「cavallino rampante」とは異なっていることを無視している立論であるというほかはない。
アメリカ合衆国においては、「CAVALLINO」を表題とする雑誌が古くから刊行されているが(乙第13及び第14号証)、同国においても「CAVALLINO」は、「cavallino rampante」とは明瞭に識別されていることが銘記されなければならない。
(4)請求人の商標法第4条第1項第19号に関する主張は、事実の前提を欠いており、根拠のない誹謗であるというべきである。
3 商標法第4条第1項第7号の該当性について
(1)請求人の主張は、前記のとおり、誤った前提に立脚して独善的な主張を重ねるものであって、論外である。
(2)本件商標「cavallino」が商標法第4条第1項第7号に該当するなどという請求人の主張は、根拠を欠いており、失当である。
4 本件商標に無効事由は存在しない
請求人の主張は、以上のとおり、いずれも事実に反し誤っており、失当である。本件商標「cavallino」に無効事由は存在しない。

第4 当審の判断
1 請求人標章の著名性について
(1)請求人は、請求人標章は請求人が自動車の販売、自動車レース、関連グッズの販売といった請求人のあらゆる事業活動に使用していることにより、需要者の間に広く認識されていることを前提に、本件商標が商標法第4条第1項第15号、第19号及び第7号に該当する旨主張する。
ところで、商標法第4条第1項第15号及び第19号を適用するには、その商標登録出願が、出願時、かつ、査定時において当該各号に該当しなければならないものと解される(商標法第4条第3項)。
そこで、請求人が提出した甲各号証が、出願時(平成15(2003)年1月20日及び査定時(同16(2004)年2月27日)における事実を立証するものであるか否かを踏まえ、前記請求人の主張について以下のとおり検討する。
甲第3号証は、ウェブサイト掲載の「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』のフェラーリ」の項目であり、「フェラーリは、現在フィアットグループの傘下にあり、高級GTカー及び高級スポーツカーのみを製造している、イタリア、モデナ県マラネッロに本社を置く自動車メーカーである。」との記載のほか、請求人の「沿革」や「日本における販売」などに関する記載がなされている中、「カヴァッリーノ・ランパンテ」の項が設けられ、その説明として「イタリア語で後足で立ち上がった馬の紋章を使用するため、「跳ね馬」の愛称をもつ[9]。・・・」→「9.この紋章はイタリア語で『カヴァッリーノ・ランパンテ』(Cavallino Rampante)といい、直訳では『立ち馬』であるが、英訳でも『跳ねる馬』(Prancing Horse)となっている。」などの記載がなされているが、これらの記事のウェブサイトへの掲載日を特定する記載はない。
甲第4号証の1ないし4は、「カヴァリーノ・ランパンテ(キャバリーノ・ランパンテ)」の語義を説明したブログと認められる。
甲第4号証の1には「Published On:7 10,2004」の記載及び2004年7月のカレンダーの表示がある。甲第4号証の4には掲載日を特定する記載はなく、記事中に「2008.02/04[Mon]ディーノさんのお誕生日」の記載がある。そして、甲第4号証の2及び3には掲載日などを特定する記載はない。
甲第5号証の1ないし5は、オリンパス株式会社が販売した跳ね馬紋章が施されたデジタルカメラに関するウェブサイトの記事と認められる。そのそれぞれの説明文中に、デジタルカメラに「キャバリーノ・ランパンテ(はね馬)」のロゴが施されている旨の記載があり、また、甲第5号証の1には「2003年9月17日」の記載及び説明文中に「ご購入予約開始日(日本国内)として、2003年10月10日」の記載、甲第5号証の2には「2004年3月4日」の記載、甲第5号証の3及び4には2003年9月26日の記載、甲第5号証の5には同月17日の記載がある。
甲第6号証の1及び2並びに同第7号証は、日本エイサーが販売した跳ね馬紋章が施された液晶ディスプレイなどに関するウェブサイトの記事と認められる。その各々の説明文中には、製品に「キャバリーノ・ランパンテ(はね馬)」のロゴ又は「はね馬」のエンブレムが施されている旨の記載がある。また、甲第6号証の2には「2005/11/10 更新」の記載及び説明文中に「・・・2005年11月下旬より発売すると発表した。・・・」の記載があり、甲第7号証には「2005年8月31日 更新」の記載及び説明文中に「・・・2005年度モデル『Ferrari4000』を発表した。9月22日発売で、・・・」の記載がある。そして、甲第6号証の1には掲載日などを特定する記載はない。
甲第8及び第9号証は、跳ね馬紋章が施されたマグカップに関するウェブサイトの記事と認められ、それぞれの説明文中に「キャバリーノ・ランパンテ(はね馬)」の記載はあるが、甲第8号証には掲載日を特定する記載はなく、記事中に営業カレンダーとして、2009年4月及び同年5月のカレンダーの表示があり、甲第9号証には登録情報として、「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2008/9/22」の記載がある。
甲第10ないし第13号証は、跳ね馬紋章が施されたデニムシャツ、ジャケットなどの商品に関するウェブサイトの記事と認められ、それら商品の説明として「キャバリーノ」、「カバリノ」及び「Cavallino」などの文字が使用されていることは認められるが、いずれにも掲載された商品の販売年月日及び当該記事のウェブサイトへの掲載日などを特定する記載はない。
以上の甲各号証における記載及び請求人の主張から、請求人が1947年に設立されたイタリア国のスポーツカー製造業者であり、創始以来、跳ね馬紋章をコーポレートシンボルとして使用し、その跳ね馬紋章は、請求人又は請求人が参戦するFIレースにおける請求人チームの象徴として、請求人の取り扱うスポーツカーの需要者やFIレースの観戦者の間に広く認識されていたであろうことが推認される。
そして、その跳ね馬紋章が、イタリア語で「cavallino rampante」と称されること、また、それが「キャバリーノ・ランパンテ」、「カヴァリーノ・ランパンテ」などの表記で日本にも紹介され、請求人又はその関係者が取り扱う跳ね馬紋章が施された商品の説明に、「キャバリーノ」、「カバリノ」、「Cavallino」などの文字が使用されていることが認められる。
しかし、甲第3ないし第13号証によっては、「cavallino rampante」又は「cavallino」、もしくは、その表音と認められる「キャバリーノ・ランパンテ」、「カヴァリーノ・ランパンテ」及び「キャバリーノ」などの文字の日本における使用開始時期を特定することができないか、また、特定できるとしても、その日にちはいずれも本件商標の出願日以降のものである。
そうすると、上記甲第3ないし第13号証によっては、請求人標章が本件商標の出願時に跳ね馬紋章の愛称又は略称、もしくは、請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)請求人は、請求人標章がイタリア国を含む外国で使用されている事実を示すものとして、甲第24ないし第29号証を提出したので、上記(1)と同様に、これらが出願時及び査定時における事実を立証するものであるか否かを踏まえ、以下のとおり検討する。
甲第24及び第25号証は、英国法人TSS&P社が1999年及び2000年に発行した請求人のオフィシャルグッズのカタログと認められる。これらには、跳ね馬紋章が施された帽子とTシャツなどの商品が掲載され、「Cavallino cap」、「Cavallino T-shirt」のように、商品名又は説明文中に「Cavallino」の文字が使用されていることが認められる。
甲第26及び第27号証は、請求人に関連する商品のカタログと認められる。その商品のカタログの説明文中に「Cavallino」の文字が使用されていることが認められるが、カタログの発行日などを特定する記載はない。
甲第28号証は、請求人のウェブサイトの商品紹介ページと認められる。これには、商品名として「Cavallino neck scarf」などの記載はあるが、「Scuderia Ferrari Spring/Summer 2009 Collection」と記載され、その掲載日は2009年であることが推認される。
甲第29号証の1ないし20は、イタリアの雑誌記事と認められ、それぞれの記事中に「Cavallino rampante」又は「Cavallino」などの文字が記載され、そのうちの同第29号証の1ないし6及び20には、年表示と認められる箇所に、本件商標の出願日以前と認められる「Maggio 1998」又は「15 Aprile 1998」の記載がある。しかし、甲第29号証の7ないし19には、年表示と認められる箇所に、いずれも2006と記載されている。
以上のとおり、上記各号証には、いずれも「Cavallino rampante」又は「Cavallino」の文字が記載されていることが認められが、これらの証拠のうち、甲第26及び第27号証並びに第29号証の7ないし19は、本件商標の出願時の使用の事実を証明するものではない。そして、これら以外の出願日前の使用が確認できる証拠にしても、そのほとんどが「Cavallino rampante」又は「Cavallino」文字が跳ね馬紋章と共に、その紋章の説明として用いられているものであり、かつ、当該文字の商品を表すものとして使用が確認できるものは、甲第24及び第25号証のみである。
さらに、請求人は、アメリカ合衆国において、「CAVALLINO」を表題とする雑誌(乙第13号証)が古くから刊行されていることから、同国において、「Cavallino」が「Cavallino rampante」と明瞭に識別されている旨主張するが、当該雑誌には「JUNE/JULY 2009」と記載され、2009年発行のものと認められる。これをもって、本件商標の出願時における「Cavallino」の著名性を立証するものとはいえない。
そうすると、上記甲第23ないし第27号証及び乙第13号証は、「Cavallino rampante」又は「Cavallino」の文字の本件商標の出願時以前の使用を立証するには十分なものとはいえず、請求人標章が、本件商標の出願時に、跳ね馬紋章の愛称又は略称、もしくは、請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、イタリア国を始めとする外国における需要者の間に広く認識されている商標であると認めることはできない。
(3)以上のとおり、請求人及び被請求人の提出の証拠を精査しても、請求人標章が、本件商標の出願時に、跳ね馬紋章の略称又は愛称、もしくは、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標であるということはできない。
2 請求人標章と本件商標との類否について
請求人標章は、「Cavallino」及び「Cavallino rampante」の欧文字からなるところ、これらは、イタリア語を表したものであって、「Cavallino」は若駒の意味を、「Cavallino rampante」は、全体として「跳ね馬」の意味を有するものと認められる(乙第1及び第2号証)。そして、これらはそれぞれの構成文字から「キャバリーノ」又は「キャバリーノランパンテ」と無理なく称呼し得るものといえるが、日本におけるイタリア語の普及度からすると、双方とも特定の観念を生じない造語みるのが相当である。
一方、本件商標は、「Cavallino」の文字よりなるから、「キャバリーノ」の称呼を生ずるものであり、また、これが我が国において特定の意味を持って親しまれた語とはいえないから、特定の観念を生じないものである。
そこで、「cavallino rampante」と本件商標とを比較すると、それぞれから生ずる「キャバリーノランパンテ」と「キャバリーノ」の称呼は、「ランパンテ」の音の有無という構成音数の差、音構成の差などにより明瞭に区別し得るものである。
そして、両者は、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得るものであり、また、観念上は比較することができない。
そうすると、「cavallino rampante」と本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れることのない非類似の標章である。
次に、「Cavallino」と本件商標とを比較すると、両者は、観念において比較することができないものであるが、外観及び「キャバリーノ」の称呼を同一とする類似の商標といえる。
これに対して、請求人は、跳ね馬紋章が「Cavallino」と略称して取引に用いられている事情がある旨主張するが、前記1のとおり、跳ね馬紋章が「Cavallino」と略称して需要者の間に広く認識されているとはいえないから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
3 不正の意図について
請求人は、被請求人は請求人のスポーツカー及びレーシングチームを主題とする「SCUDERIA」を含む、著名な自動車製造業者の所有する商標を常習的に第16類、第41類などについて取得していることから、本件商標も、著名な請求人標章が本件商標の指定商品及び指定役務について登録されていないことを奇貨として、先取り的に出願したものであり、請求人標章の有する出所表示機能を希釈化させる目的で出願したものである旨主張するが、請求人の主張する被請求人所有の登録商標の出願経緯などについて社会的妥当性を欠くなどとする不正な目的があったとする具体的な証左はなく、また、本件商標の出願についても、その出願経緯などについて社会的妥当性を欠くなどとする不正な目的があったとする事実は認められない。
4 商標法第4条第1項第15号、第19号及び第7号の該当性について
前記1ないし3において認定した事実を前提に、本件商標が商標法第4条第1項第15号、第19号及び第7号に該当するものであるか否かについて検討する。
前記2のとおり、請求人標章中の「Cavallino」は、本件商標と類似する標章である。
しかしながら、前記1のとおり、請求人標章は、本件商標の登録出願時に、跳ね馬紋章の愛称又は略称、もしくは、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内における需要者の間に認識されていたものといえないから、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用した場合に、これに接する需要者が、直ちに請求人標章ないし請求人を連想し、想起するようなことはないというべきであり、該商品及び役務が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
また、前記1ないし3のとおり、請求人標章は、請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして本件商標の登録出願時に日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標とはいえず、本件商標が不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の目的)で出願し、登録を受けたものともいえない。さらに、本件商標の出願が社会的妥当性を欠きその使用が社会公共の利益に反するものということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び第7号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、第15号及び第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-11-18 
結審通知日 2009-11-20 
審決日 2009-12-22 
出願番号 商願2003-8006(T2003-8006) 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (Y1641)
T 1 11・ 271- Y (Y1641)
T 1 11・ 22- Y (Y1641)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 鈴木 修 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 久我 敬史
小林 由美子
登録日 2004-04-09 
登録番号 商標登録第4762128号(T4762128) 
商標の称呼 キャバリーノ、カバリーノ 
代理人 田中 光雄 
代理人 寺田 花子 
代理人 勝見 元博 
代理人 鮫島 睦 
代理人 河野 敬 
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