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審決分類 審判 一部無効 商標の周知 無効としない Z14
管理番号 1216373 
審判番号 無効2007-890106 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-07-04 
確定日 2010-04-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4582053号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4582053号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成13年8月8日に登録出願され、第14類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として平成14年7月5日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の指定商品中、第14類「身飾品」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第20号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)請求の利益について
請求人は、商品「シルバーアクセサリー」に請求人所有の米国登録商標から抽出したワンポイントマークを、狭い箇所に刻印する必要から採用した未登録商標「王冠とGの図形」を略章として使用していたところ、被請求人から本件商標に基づき、商標権侵害の警告を受けたので、本件審判請求をするについて利害関係を有する。
(2)無効理由について
本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その指定商品も使用に係る商品と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項10号の規定に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきである。
(3)請求人の商標
(ア)請求人は、1998年12月ガボラトリー・インクのガボール・ナギー(1999年死亡:以下「故ガボール」という。)の遺言により、GABORブランドのシルバーアクセサリーのマスターピース(原型)及び鋳型、職人達と使用している商標と共に事業を引き継いだスティーブ・ガーラック(以下「スティーブ」という。)が設立したガボラトリー・インターナショナル・インク(アメリカ合衆国ネバダ州所在。以下「ガボラトリーインターナショナル」という。)が出願し登録した下記a)ないしc)の3件の商標権と共に商品に直接刻印する「G」マーク及び「王冠とGの図形」の未登録商標の使用権を、ガボラトリーインターナショナルから譲渡を受けた(2006年1月10日アメリカ合衆国特許庁登録済;甲第2ないし第4号証)ので、アメリカ合衆国では商標権者となった。
a)アメリカ合衆国商標登録第2695716号(甲第2号証及び第2号証の1。以下「米国商標1」という。)
商標の構成:「GABOR」
登録出願日:2001年6月13日
登録日 :2003年3月11日
指定商品 :第14類「銀、ゴシックスタイルの宝飾類、即ちブレスレット、チェーン、チョーカース及びリング」
b)アメリカ合衆国商標登録第3039819号(甲第3号証及び第3号証の1。以下「米国商標2」という。)
商標の構成:「王冠とGの図形+GABORATORY」(別掲(2)のとおり)
登録出願日:2001年5月29日
登録日 :2006年1月10日登録
指定商品 :第14類「銀、ゴシックスタイルの宝飾類、即ちブレスレット、チェーン、チョーカース及びリング」
c)アメリカ合衆国商標登録第3039823号(甲第4号証及び第4号証の1。以下「米国商標3」という。)
商標の構成:「王冠とGの図形+GABORATORY INTERNATIONAL」(別掲(3)のとおり)
登録出願日:2001年7月30日
登録日 :2006年1月10日
指定商品 :第14類「銀、ゴシックスタイルの宝飾類、即ちブレスレット、チェーン、チョーカース及びリング」
(イ)請求人は、上記米国商標1ないし3の使用権及び販売権を獲得し(甲第5号証及び第5号証の1)、その米国商標2及び3から抽出したワンポイントマークを、小さい商品に刻印する必要性から採用した商品に直接刻印する「G」マーク及び「王冠とGの図形」を略章として使用した商品を販売して周知にさせた。
(ウ)アメリカ合衆国において商品に直接刻印する略章として使用していた「王冠とGの図形」を故ガボールから引き継いだガボラトリーインターナショナルの未登録周知商標は、1999年故ガボールの死後2003年まで営業を休止していたマリア・ナギー(以下「マリア」という。)のガボラトリー・インクが、「王冠とGの図形」の商標登録が日本に無いのを奇貨として、マスターピース(原型)及び鋳型、職人達を持たず、会社実体が無いにも拘わらず、日本に2001年(平成13年)8月8日に登録出願、2002年(平成14年)7月5日に登録されたのである。
(エ)雑誌「ASAYAN」増刊2002VOL.1「最新ワイルドシルバー読本」「海外&国内人気ブランド最新シルバーアクセ700アイテム LA取材・独占スクープ ヘルス・エンジェルスとシルバーの絶対関係 ガボラトリー・インターナショナルの真実」(甲第6号証)の026頁上段の記事(甲第6号証の1)から判るように、故ガボールの死後、ガボラトリー・インクの社長になったその妻マリアに関する記述がある、即ち、「ガボールが死んで、そのブランドについての権利みたいなものの所有者が明白なかたちで存在しなくなってしまったのは事実だ、そして、マリアがたしかにガボールの奥さんだということも真実だけど、『ガボール』という『ブランドについてのビジネス』には、マリアは全くの素人なんだよ、そして今、このブランドに関して最も近い存在にいるのはスティーブのほかにはいないんだ」と、故ガボールの妻マリアは社長にはなったが、ビジネスには直接関与していなかった事実を示唆し、さらにこう付け加えた。「その昔、スティーブはバイクに乗ってて大事故を起こしたんだ。そんな瀕死の状態だった彼の命を救ったのがガボールだったんだよ、その恩に感謝して、スティーブはガボールの仕事を手伝うようになったんだよ。そして、職人として腕を磨いてきた、その努力に、ガボールも彼のことをパートナーとして、いや、それ以上の存在として認めたよ」との記載のとおり、請求人は、本件商標の出願前に、アメリカの「GABOR」の商標権者「ガボラトリーインターナショナル」が「1999年死亡した、故ガボールの遺志を受け継ぐ正真正銘の職人衆は彼らしかいない」の記述のとおり、商標「王冠とGの図形」を広く周知させたものである。
更に、上記雑誌等において次のようなガボラトリーインターナショナルの案内広告等が掲載されてる。
a)ガボールの激レアアイテムが商品化!?(甲第6号証の2)
b)世界初のオンリー・ショップが4月20日、日本で誕生!(甲第6号証の3)
c)4.20 sat. GRAND OPEN! Gaboratory International Japan 1F6-6-1, UENO, TAITO KU, TOKYO 110-0015 頁広告(甲第6号証の4)
d)雑誌「ASAYANシルバーマスター 36ブランド2000アイテム」表紙及びガボールインターナショナルのTシャツ広告(甲第7号証及び第7号証の1)
e)「SILVER ACCESSORIES聖銀辞典 今すぐ買える02年度版、シルバーアクセ最速!ブランドカタログ」表紙及び代理店募集広告(甲第8号証及び第8号証の1)
f)「asayan増刊海外&国内の人気シルバーアクセサリー800点掲載!!ワイルドシルバー読本VOL.2、2003」表紙(甲第9号証)
g)上記雑誌中「新生ガボールがこだわり続けるのは”ファミリーオペレーション”」の記事中3段目、「スティーブはガボラトリーの現場の全てを任されるほど故ガボールから絶大なる信頼を受けていたし、事実(ガボール)をリーガルに運営するための重要な書類などは、すべてスティーブに託していたのである(商標を容易に取得出来たのもそのためだ)」の記載(甲第9号証の1)
h)上記雑誌中「偉大なる故ガボールの遺志を守りつつさらなる飛躍を志す」のタイトルの頁に、「つまり、どちらを選ぶかはユーザーの判断に委ねられているということなのだ。ガボラトリーにてシルバー製作に直接携わっていた職人。スティーブが手掛ける作品を選ぶか、そうでないかを。」(甲第9号証の2)
i)上記雑誌中「ナギーの秘蔵子”スティーブ ガーラック”が発信する究極のコレクション」の記載があるGABORATORYマークのあるフランチャイズ店募集広告頁(甲第9号証の3)
j)「聖銀辞典SILVER ACCESSARIES III」表紙(甲10号証)、047頁(第10号証の1)の「偉大なるシルバースミス、ガボール・ナギーの遺志を継承する職人達」のタイトルの頁下段に、「90年、順風満帆に見えたガボラトリーに突然悲劇が訪れた。偉大なるシルバースミス、ガボール・ナギーの他界である。シルバー界の首領とも言うべきガボールがこの世を去った後、ガボラトリー内では権力闘争やクオリティの劣化などのゴタゴタが相次いで発生し、一時は存続の危機にまで陥った。しかし、それらの問題に区切りをつけガボール・ブランドを立て直したのは、ガボールからシルバー作りに対するアティチュードやテクニックの全てを叩き込まれた職人、スティーブ・ガーラックであった。ガボールの右腕として晩年のガボラトリーを支えてきたスティーブは師匠の遺志を継承するべく、パートナーのマリアーノと共に”ガボラトリー・インターナショナル”を設立。ガボール存命中のクオリティを維持することをコンセプトに掲げ、日夜マシーンを握り続けている。」とスティーブの「ガボラトリー・インターナショナル」設立の秘話を明らかにし、「GABOR」商標とビジネスの正当な承継人である事を明らかにしている。
(4)周知商標とは
自己の業務に係る商品もしくは役務を表示するための標識、即ち社会的事実としての商標として使用され、かつ、このようなものとして需要者、取引者の間に広く認識され、客観的にも取引社会において商標としての機能を広く営んでいる商標をいうもので、他人の業務に係る商品もしくは役務を表示するものとして広く知られている商標、すなわち他人の周知商標と同一又は類似の商標で、その商標により表示される商品もしくは役務と同一又は類似の商品もしくは役務について使用されるものを周知商標と抵触する商標といい、不登録要件であり、商標法第4条第1項第10号は主として未登録周知商標について適用される。
周知商標として他人の商標の登録を排除するためには、それが取引者・需要者の間において広く認識されていなければならない。ただし、その地域的範囲は必ずしも全国的に知られている事を必要とせず、北海道一円、九州一円等相当広範囲の需要者・取引者間に知られていれば足りる。
商標法は、未登録周知商標と抵触する商標が過誤登録等により登録された場合においては、審判請求によりこれを無効とすることが出来る旨を定めている。
(5)本件商標について
(ア)慢性のアルコール中毒による肝硬変が急速に悪化していた故ガボールが長くないことを悟り、1998年スティーブにマスターピース(原型)、鋳型、職人達を引き継ぐよう遺言を残した(甲第12号証、同号証の1及び2)。
1999年1月16日心不全で故ガボールが突然死亡した後、ガボラトリー・インクは休業し、故ガボールの右腕として晩年のガボラトリーを支えてきたスティーブは、師匠の遺志を継承するべく、「GABOR」の名前、ガボラトリー・インクの職人達(第13号証及び同号証の1)、マスター・ピース及び鋳型と共に新会社ガボラトリーインターナショナルを2001年5月29日に設立し、アメリカ合衆国特許庁に出願した米国商標1ないし3の下に「GABOR」商標ビジネスを引き継いだ(第12号証、同号証の1及び2)。
(イ)故ガボールの死後、ガボラトリー・インクの社長に就任し会社の運営に参加した妻のマリアは、販売利益を会社を通さずに私し、また販売担当重役ピーター・ストハノフも商品を横流しして私服を肥やし、両者は会社の経理内容を筆頭株主たるパスカル・ザザに知らせず会社に損害を与えた。
パスカル・ザザは、マリアとピーター・ストハノフを背任横領と詐欺の容疑で告発した(甲第11号証及び同号証の1)。
(ウ)マリアのガボラトリー・インクは何故か米国商標1の登録には異議を申し立てず、米国商標2及び3の登録に対してのみ、異議申立をしたが全て却下された。その結果、ガボラトリーインターナショナルは、アメリカ合衆国において米国商標1ないし3の商標権者として確定した。
(エ)マリアのガボラトリー・インクが日本において出願し登録された本件商標は、ガボラトリーインターナショナルがアメリカ合衆国に出願した米国商標2及び3の図形商標から一部抽出して略章としてガボラトリーインターナショナルが使用している未登録周知商標「王冠とGの図形」と同じである。
(オ)ガボール・インコーポレーテッド・ユー・エス・エーの筆頭株主である請求人は、ガボラトリーインターナショナルから、シルバーアクセサリーのマスター・ピース(原型)、鋳型、熟練した職人達を引き継ぎ(第14号証及び同号証の1)、日本及びアジア全域に米国商標1ないし3の使用及び商品の製造・販売の独占権を取得した(甲第5号及び同号証の1)。その米国商標2及び3から抽出したワンポイントマークを、商品の狭い箇所に刻印する必要から採用した未登録商標「王冠とGの図形」を略章として米国及び日本において使用し、周知させていた。
(カ)その後、ガボラトリー・インクとガボラトリーインターナショナルは商標権の帰属について争い、ガボラトリーインターナショナルの一部役員・株主との訴訟上の和解が成立し、和解契約書には空白の商標権の譲渡証が添付されてエスクローに預託された。
和解契約書には、ガボラトリーインターナショナルの米国商標1ないし3は、前記パスカル・ザザが告発したマリアとピーター・ストハノフの背任横領と詐欺の容疑の判決の結果によって、空白の商標権の譲渡証の譲受人名義欄をパスカル・ザザにするかマリアにするか他の会社名にするとの条項があったが既に効力を失った。
したがって、アメリカ合衆国においては、マリアは、単に亡夫ガボールの妻としての相続人であり、マスター・ピース(原型)、鋳型、熟練した職人達を擁さないので真正商品を製造する能力のない、実体のないガボラトリー・インクの名目上の社長であり、米国商標1ないし3の商標事業の相続人ではない。
(キ)2001年9月21日発行のブランド・マガジンMen’S!(甲第16号証及び同号証の1)によれば、ガボラトリー・インクからガボラトリーインターナショナル所有のガボールのオリジナル・モールド(マスタ一・ピースの鋳型)の提供の依頼を受けたが、ガボラトリー・インク側の契約違反及び経営破綻の結果、結局ガボラトリー・インクはガボラトリーインターナショナルよりマスター・ピース(原型)及び鋳型を取得できなかった経緯がある。
(ク)日本及びアジア全域に亘る商標の使用、製造販売の独占権を取得した請求人は、2001年から積極的に日本において米国商標1ないし3及び「王冠とGの図形」を付したガボール・インク・ユーエスエー社製造の商品を展開して広く周知させた。
したがって、本件商標の出願時(平成13年8月8日)には既にこの「王冠とGの図形」商標は、請求人の商品を表示する商標としてアメリカ合衆国は勿論のこと日本において周知であった。
(6)商標法第4条1項10号において、いわゆる商標を周知させた者とは「継続的使用により獲得出来るものであるが、その間の使用者は必ずしも同一のものでなくとも、当該商品又は役務に係る業務の承継があった場合には承継した者が本号の他人に該当し、周知の獲得は当業者の承継者にも認められている」と解されている。
請求人は、日本において米国商標1ないし3及び「王冠とGの図形」商標を周知せしめたもので、米国商標1ないし3のアメリカ合衆国における商標権者でもあり、米国商標2及び3から抽出したワンポイントマークを、商品の狭い箇所に刻印する必要性から採用した未登録商標「王冠とGの図形」を略章として米国及び日本において使用し、周知させていたから、名実共に「王冠とGの図形」商標関連事業の真の承継人である。
(7)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人の米国商標権について反論する。
(ア)アメリカ合衆国カリフォルニア州中部地区連邦裁判所の平成19年(2007年)11月6日付判決(乙第1号証)及び同年11月30日判決(乙第2号証)は、乙第1号証の訳文第2頁で明らかなように、ガボラトリーインターナショナル(GIUSA)が、アメリカ合衆国特許商標庁において2003年と2006年に米国商標1ないし3を登録した。被告(被請求人)ガボラトリー・インクが同一の商標を登録しようとしたが GIUSAの商標と混同するおそれがあるとの理由で受理されず、ガボラトリー・インクはこの決定を不服として上訴したが、この上訴は最終的に商標審査委員会(TTAB)によって再訴不可の形で却下された、との記載があり、ガボラトリー・インクはアメリカ合衆国において現在も上記3件の商標権者ではない。
(イ)乙第1号証の訳文第30頁の上段に、原告(請求人)は、3つの標章それぞれにつき請求人を「当該標章の最後の登録所有者」と明らかに表示した米国特許商標庁の記録の写しを添付してある(同上文献、第3-5号証)。原告(請求人)は、また彼が当該譲渡証を2007年4月6日に米国特許商標庁に登録したことを示す3つの書式の写しを添付している(同上文献、第 8-10号証)。登録には、当該譲渡証は2003年8月24日付けで作成、署名されたとの記載がある。
更に中段で、原告(請求人)は、実際の登録証明書を書証として訴状に添付はしていないものの、裁判所は却下の申立について決定をする目的で、原告(請求人)の書証を「商標の実際の登録の証拠として認める(訴状、第3-5号証、第8-10号証)」として米国特許商標庁に原告(請求人)の商標権が登録されていることを明瞭に認めている。
その結果、乙第2号証の訳文に示すように、2007年11月6日に当裁判所は、訴え変更のための20日の期間を与え被告らの訴え棄却の申立を認容したが、原告(請求人)から訴え変更の申立書が提出されなかったので裁判所は上記事件を棄却する旨の判決を言渡した。原告(請求人)は請求を却下されただけで米国の商標権を所有しないとの判決を受けたものではない。
(ウ)乙第3号証の極秘和解契約書及び免責証(2004年8月)、乙第4号証の商標譲渡証書(2004年8月)は、いずれも先に締結された請求人の甲第5号証2003年8月24日付け契約書、甲第17号証2003年7月31日付けの契約書、甲第18号証2003年9月3日付けの商標権3件の譲渡及びガボール事業全部の譲渡契約書により、明らかに商標権及びガボール事業の2重譲渡による無効の契約である。
(2)請求人の登録第4877069号「Gマーク」の無効の審決については、被請求人の本件商標を引用して商標法第4条第1項第11号により、無効になったもので、先に米国商標1ないし3の商標権及びガボール事業の譲渡を受けた請求人が本来所有すべき商標を引用されたものである。請求人はこの無効審決を不服として高裁に出訴する予定である。
(3)現在審理中の東京地方裁判所平成19年(ワ)第4876号「商標権侵害差止等請求事件」において、上記の証拠類を提示して米国商標1ないし3の譲渡及びガボールより事業全部の譲渡を受けた契約書により、本件商標は請求人が本来所有すべき商標であることを立証する。
(4)GABOR関連事業の流れをここに改めて説明する。
(ア)1998年12月10日付けの事業の譲渡契約(甲第20号証及び同号証の1)により、ガボラトリー・インクの故ガボールから一切の事業に関する権利の譲渡を受けたガボラトリーインターナショナルは、更に2003年9月5日(甲第19号証及び同号証の1)ガボラトリーインターナショナルの全ての商標権、著作権、製造権、販売権、顧客、事業の暖簾を請求人の代表者である福永洋幸に譲渡した。
請求人は、ガボラトリーインターナショナルと当初商品の販売契約を締結し、後に一切のガボール事業の譲渡を受けたものである。
(イ)ガボラトリー・インクの故ガボールは日頃、多量のアルコール摂取によりその死亡証明書(甲第15号証及び同号証の1)記載のとおり、慢性の肝臓病を患い、病気により死期が追っていることを知り、永年シルバー・ジュエリー製作の片腕であったスティーブに後継者になることを望んだ。スティーブはシルバー・アクセサリーの職人であり、事業を経営する経験も無く、事業を始める資金も無かったので、故ガボールとスティーブの永年の友人であったマリオン・イエハンスが相談を受け、マリオン・イエハンスが新しい事業の財政と経営を引き受け、ガボラトリーインターナショナルをネバダ法人として設立し、スティーブはシルバー・アクセサリーの職人としてデザイン及び製作を担当して、故ガボールとガボラトリーインターナショナル間に1998年12月10日付けで事業の譲渡契約が締結された(甲第20号証及び同号証の1)。
(ウ)平成11年(1999年)故ガボールの死後、ガボラトリー・インクのガボールから一切の事業に関する権利の譲渡を受けたガボラトリーインターナショナルは、契約に従い、残されたマスター・ピース(原型)とその鋳型と職人達を引継ぎ、故ガボールの死亡により妻マリアはボラトリー・インクを閉鎖した。ガボラトリーインターナショナルは、アメリカ合衆国特許商標庁に米国商標1ないし3を出願し、それぞれが登録された。
(エ)福永洋幸の請求人は、アメリカ合衆国及び日本における輸出・販売業者として、スティーブとマリオン・イエハンスのガボラトリーインターナショナルと商品の販売に関し、2003年7月31日付けの契約書(甲第17号証及び同号証の1)、2003年9月3日付けの契約書(甲第18号証及び同号証の1)、2003年8月24日付けの契約書(甲第5号証及び同号証の1)を締結した。更に2003年9月5日(甲第19号証及び同号証の1)の商標権譲渡契約書に基き、2003年12月10日(甲第20号証及び同号証の1)の契約書によりガボラトリーインターナショナルの全ての商標権、著作権、製造権、販売権、顧客、事業の暖簾の譲渡を受けた。
(オ)請求人は、故ガボールとガボラトリーインターナショナル間において1998年12月10日付けで締結された事業の譲渡契約(甲第20号証及び同号証の1)に基づき、ガボラトリーインターナショナルよりガボール・ブランドのシルバー・アクセサリー商品の提供を受け、日本各地の販売業者に未登録の周知商標であるガボール・ブランドの商品の供給を継続していたところ、故ガボールの妻が突然閉鎖していたガボラトリー・インクを再開した。故ガボールとの結婚証明書及び死亡証明書を日本特許庁に提出して法律上の相続人である事を主張して、平成13年(2001年)に「GABOR」商標を日本に出願し、平成19年(2007年)登録する事を得た。
(カ)日本及びアジア全域に亘る商標の使用、製造販売の独占権を取得した請求人は、積極的に日本国内に米国商標1ないし3を付したガボール・インク・ユーエスエー社製造のシルバー・アクセサリーの商品を積極的に展開して広く周知させた。
(キ)請求人の代表者福永洋幸は、ガボラトリーインターナショナル所有であった米国商標1ないし3の商標権の譲渡を受け(甲第2ないし第4号証)アメリカ合衆国では名実共に商標権者となった。
故に、再開したガボラトリー・インクのマリアは、単に故ガボールの妻としての相続人であり、アメリカにおいても日本においても、「GABOR」関連商標のシルバー・アクセサリー事業の承継人ではない。
請求人は、日本において未登録周知商標である「GABOR」関連商標を周知せしめたもので、アメリカにおける商標「GABOR」関連の商標権者であり、商標「GABOR」関連事業の真の承継人である。
(ク)以上のように、本件商標の出願時には、ガボラトリーインターナショナルが故ガボールより1998年12月10日付け契約により商標及び事業の譲渡を受け、ガボラトリーインターナショナルが製造した商品を、請求人が日本において、ガボール・ブランドの販売を継続して未登録周知商標として広く周知せしめたものである。
その後、請求人はガボラトリーインターナショナルから商標権を含む全ガボール事業の譲渡を受けたので、「王冠とGの図形」商標は請求人の商品を表示する未登録周知商標として日本においても既に周知になったものである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第9号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の利益について
被請求人が本件商標の商標権に基づき、請求人子会社の日本におけるディストリビューターに対して商標権侵害に基づく訴えを提起している事実はある。
2 無効理由について
(1)請求人の商標
(ア)米国特許商標庁の登録上、請求人が米国商標1ないし3の登録名義人となっていることは認める。しかし、請求人がそれらの登録商標の商標権者でないことは、米国カリフォルニア州中部地区連邦裁判所の平成19年(2007年)11月6日付判決(乙第1号証)及び同年11月30日付判決(乙第2号証)により確定している。
(イ)ガボラトリーインターナショナルが米国商標1ないし3の所有者であったこと、請求人が上記米国商標1ないし3を譲り受け権利者となったことはいずれも否認する(乙第3、第4及び第1号証)。
(ウ)請求人が本件商標を付した商品を日本で販売し、同商標を周知させたという主張は否認する。
(エ)被請求人代表者(マリア)についての記述についてはこれを争う。
(オ)甲第6ないし第10号証の雑誌はいずれも平成14年(2002年)以降に発行された雑誌であり、これらの雑誌の記述は、請求人が本件商標を出願日(平成13年(2001年)8月8日)以前に日本で周知させたという主張をサポートするものではない。
(2)請求人の主張(5)について
ガボラトリーインターナショナルが故ガボールより本件商標の商標権を含む「GABOR」事業を引き継いだこと、及びガボラトリーインターナショナル及び請求人が本件商標「王冠とGの図形」を日本において広く知らしめ本件商標の登録出願日には既にこの「王冠とGの図形」の商標が、請求人の商品を表示する商標として日本において周知であったという主張は否認する。後述するように、本件商標を日本において周知させたのは被請求人である。
(3)被請求人の主張
(ア)本件商標「王冠とGの図形」は、被請求人の商品を表示する商標として周知性を獲得している(乙第5号証)。
(イ)被請求人は、請求人の所有する商標登録第4877069号「Gマーク」を本件商標に類似しているとして商標法第4条第1項第11号等に基づき平成19年1月15日付で上記登録商標に対し、無効審判請求を特許庁に対し申立て、特許庁は被請求人の申立てを認め平成19年11月5日付で、登録無効の審決をした(乙第5号証)。
(ウ)特許庁審判官は、審決書(乙第5号証)において、本件商標の周知性について要旨以下のとおり判断している。
「請求人(本件被請求人)の証拠を総合すれば、本件商標の出願時の相当以前から、ガボール・ナギーはアクセサリーデザイナーのカリスマ的存在でもあり、同人に係るシルバーアクセサリーは米国をはじめ我が国においても多大の人気を博していたと認められる。そして、引用商標は、ガボール・ナギー亡き後においても、上記アクセサリー等に使用され、本件商標の登録時はもとよりその出願時において既に、我が国のシルバーアクセサリーをはじめとする身節品の取引者や需要者の間で、ガボール・ナギーに由来する身飾品(シルバーアクセサリー)の商標として、広く認識されるに至っていたものと認められる。」
上記のとおり、審判官は、本件商標は、故ガボールに由来する身飾品(シルバーアクセサリー)の商標として、身飾品の取引者や需要者の間で広く認識されるに至っており、上記引用証拠から、被請求人の業務にかかわる商品の商標として周知性を獲得していると認定していること明らかである。
(エ)被請求人は、平成6年(1994年)頃から今日に至るまで本件商標を付した故ガボールのデザインに係るシルバーアクセサリーを日本でも継続的に広告、販売しており、故ガボールの名前及び彼のデザインに係るシルバーアクセサリーは特許庁においても周知なものとして取り扱われている(乙第7号証)。
(オ)これに対し、ガボラトリーインターナショナル及び請求人らは、故ガボール、マリア、被請求人らの許可を得ることもなく、無断でガボールのデザインに係るシルバーアクセサリーを製造し、これに本件商標を付して、米国、日本において販売しているものである(乙第8号証)。
ガボラトリーインターナショナルの設立が平成13年(2001年)5月29日付で、本件商標の出願日が平成13年(2001年)8月8日であることを考えると、ガボラトリーインターナショナルがわずか2ヶ月程度で本件商標を広めるほどの販売、広告をしたとはとても信じられないのである(この会社設立の日付を考えると、請求人の商品が平成13年8月8日頃までに日本で流通されていた可能性は低いと考えざるを得ない。)。
そもそも、上記わずか2ヶ月の期間における日本での売上、広告、宣伝及びその費用等も明らかにせず、請求人が「2001年(平成13年)から積極的に日本において米国商標1ないし3及び『王冠とGの図形』を付したガボール・インク・ユーエスエー社(請求人の米国子会社)製造の商品を展開して広く周知させた。したがって、平成13年(2001年)8月8日にはすでにこの『王冠とGの図形』商標は、請求人の商品を表示する商標として日本において周知であった」と主張しても、この主張自体空虚なものであるとともに、その主張(周知性)を裏付ける具体的な証拠も何一つ提出されていないのである。
(カ)商標法第4条第1項10号の要件として、同法第4条第3項は、登録商標の出願時点での当該商標の他人の商品表示としての周知性を要求している。本件商標の請求人商品の表示としての周知性を立証する資料として、請求人は甲第6ないし第10号証を提出しているが、これらの雑誌はいずれも平成14年(2002年)以降に発行された雑誌であり、本件商標の出願日が平成13年(2001年)8月8日であることを考えると、これらの雑誌の記述が請求人の主張する周知性をサポートする証拠になり得ないこと明らかである。
(キ)上述のように、被請求人も本件商標は既に取引者及び需要者間で故ガボールに由来するシルバーアクセサリーの商標として周知になっていると考えるが、それはあくまでも被請求人の商品の出所表示としての周知性であって、請求人は、この周知性ただ乗りして無権限で本件商標を使用しているにすぎないのである。
(ク)東京地方裁判所平成19年(ワ)第4876号「商標権侵害差止等請求事件」における裁判所の見解
現在、被請求人及びその代表者のマリアは、被請求人の所有する本件商標及びマリアの所有する登録商標「GABOR」(登録第4962301号)の各商標権に基づき請求人のシルバーアクセサリーを輸入する株式会社トムスジャパンを相手に東京地方裁判所に商標権侵害差止等請求訴訟を提起し、現在同事件は審理中である(乙第8号証)。
当然のことながら、同事件の被告株式会社トムスジャパンは、本件商標が商標法第4条1項第10号に該当し無効であり、原告(被請求人)は本件商標に基づく権利を行使できない旨主張している。
しかしながら、担当裁判官は、本件商標には無効事由がなく有効であり、かつ被告の使用する「王冠とGの図形」及び「Gマーク」は、本件商標権を侵害することは明らかであるとして、損害論に入ることにし、平成19年12月26日までに、(i)被告の平成19年11月分までの売上高及び売上利益を明らかにするとともに、(ii)併せて、上記の売上高及び売上利益の裏づけ資料をしておく旨、被告に指示している(乙第9号証)。
上述のように、被告は、上記訴訟事件においても、本件商標につき本件審判におけるのと同じ商標法第4条1項10号に基づく無効を主張しているが、裁判官は、当該主張を全く考慮していない。
したがって、上記訴訟手続においても、本件商標に対する無効主張は認められないこと明らかである。
(4)請求人は本件商標の所有者である旨主張するので、この点につき反論する。
(ア)ガボラトリーインターナショナルは、ガボール製品の商標及びデザインに係る権利の譲渡を受けていない。
請求人は、ガボラトリーインターナショナルが、ガボールブランド製品の商標(本件商標を含む)、デザインを含む事(営)業を故ガボールから承継し、更に請求人が上記営業権をガボラトリーインターナショナルから譲り受けたと主張しているが、ガボラトリーインターナショナルは、上記営業権を故ガボールあるいは被請求人より譲り受けておらず、請求人の主張は成り立たない。
(イ)請求人は、ガボラトリーインターナショナルが、ガボールブランド事業の譲渡を受けたことを示す証拠資料を提出していない。請求人は、事業譲渡を証明する証拠として故ガボールの遺言書と証する文書(甲第12号証)を提出しているが、これは、遺言書といえる法的文書でないことは明らかである(上記訴訟事件における裁判所も同意見である)。
通常、包括的な事業譲渡であれば、営業譲渡契約書(金型、設計図、商標、デザイン、従業員、取引先等商権等の移転と対価の支払等が明記される)が、また、個別の商標、デザイン等の知的財産権の譲渡であれば、個別的権利譲渡証が存在するはずであるが、請求人からはそのような営業譲渡契約書あるいは個別的権利譲渡証は何も提出されていない(あるはずがないのが現実であろう)。そのような証拠も提出せずに、ただ、権利の承継を受けたと主張しても、裁判所や特許庁では通用する議論ではないこと明らかである。
(ウ)ガボラトリーインターナショナルは、ガボールブランド事業の権利者でないことを認めている(乙第3及び第4号証)。
被請求人は、米国商標1ないし3の不正出願登録及び前記商標並びに故ガボールのデザイン(意匠)の無権限使用の取消し、差止め等を求めて平成15年(2003年)7月29日にガボラトリーインターナショナルをカリフオルニア州連邦地方裁判所に提訴し、同地方裁判所を通じて、平成16年(2004年)8月に当該訴訟につき、原告(本件被請求人)、被告(ガボラトリーインターナショナル)間で和解(乙第3及び第4号証)が成立した。
この和解で、ガボラトリーインターナショナルは、米国商標1ないし3を含む「GABOR」及び「GABORATORY」関連商標及び故ガボールのデザイン(意匠)に対する権利を有していないことを認めている。
本件審判請求との関係では、本和解契約書のポイントは以下の点である:。
a)ガボラトリーインターナショナルは、米国商標1を(本件)被請求人側に譲渡すること(譲渡証書作成交付済;乙第4号証)(米国商標1の被請求人側への譲渡)
b)ガボラトリーインターナショナルは、米国商標2及び3の出願を放棄すること、また、ガボラトリーインターナショナルらは「GABOR」もしくは「GABORATORY」の語句を含む標章、あるいは混乱を来たすほどこれらの標章に酷似した標章の登録等は一切試みないこと(ガボラトリーインターナショナル商標出願の放棄)
c)被請求人は米国特許商標庁商標審判部にガボラトリーインターナショナル出願の放棄を通知し、商標無効審判手続きを終了させるための手続きをとること(商標無効審判申立の取り下げ)
d)ガボラトリーインターナショナルらは、被請求人の商標出願番号78/078278「GABORATORY」、商標出願番号78/078466 「GABORATORY」(紋章デザイン付)、及びその他被請求人が「GABOR」もしくは「GABORATORY」の語句を含む標章の登録出願をすること及び被請求人による「GABOR」もしくは「GABORATORY」標章の使用に対し、反対せず、また異議の申立てもしないこと(被請求人による商標登録及び商標使用に対し異議申立てをしないこと)
e)ガボラトリーインターナショナルらは、ガボラトリーインターナショナル自身、その承継人、ライセンシー、代理店のいずれも「GABOR」もしくは「GABORATORY」の標章あるいは混乱を来たすほどこれらの標章に酷似した標章を含んだ宝飾品、アクセサリーを一切提供、製造、ライセンス許諾、市販、販売あるいはそれらについての広告の掲載、頒布をしないこと(商標不使用の同意)
f)ガボラトリーインターナショナルらは、ガボラトリーインターナショナル自身、その承継人、ライセンシー、代理店のいずれも「被請求人のカタログ」もしくは「ガボラトリーインターナショナル カタログ」に描写されている商品と殆ど同一のものか、あるいは酷似しているために被請求人の製品を知悉しているバイヤーが、当該製品は当然被請求人が製造したものと信じ込まれてしまう可能性のある宝飾品又はアクセサリーを一切、製造、ライセンス許諾、市販、販売あるいはそれらについての広告の掲載、頒布をしないこと(ガボールデザイン(意匠)不使用の同意)
g)本契約の署名と同時に、ガボラトリーインターナショナルらは、ガボラトリーインターナショナル又はその関係会社、それらの従業員、役員が占有あるいは管理しているガボラトリーインターナショナルカタログに掲載されている宝飾品、アクセサリーも含め、故ガボールのデザイン(意匠)に基づいている宝飾品、アクセサリーの製造に使用されていた、又は使用可能なオリジナルの金型及び生産用の金型をすべて被請求人代理人に引き渡すこと(金型の引き渡し)
(エ)請求人は、ガボラトリーインターナショナルより本件商標を含む「GABOR」関連の営業を譲り受けておらず、したがって、本件商標を含む「GABOR」及び「GABORATORY」関連の商標所有者ではない(乙第1及び第2号証)。
米国カリフオルニア州中部地区連邦地方裁判所の平成19年(2007年)11月6日付判決により、請求人は、「GABOR」及び「GABORATORY」関連商標及び故ガボールがデザインしたシルバーアクセサリーにかかわる著作権(日本での意匠権に相当)の所有者でない旨の言渡しがなされた(乙第1号証)。
請求人は、被請求人及びマリア等を被告として平成19年(2007年)6月15日に米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に、商標権侵害、不正競争防止法等に基づき、「GABOR」、「GABORATORY」関連の商標を使用した故ガボールのデザインにかかわるシルバーアクセサリーの製造、販売、広告等の禁止を求める訴訟を提起した。
これに対し、上記被告ら(被請求人ら)は、平成19年(2007年)8月30日に、原告(請求人)は商標及びデザインにかかわる著作権に対する所有者ではないことの確認を求め、請求却下の申し立て(motion)を提出した。
そして、上記連邦地方裁判所は、Trialを含む本案審理に入ることなく、上記判決書をもって原告(請求人)は、「GABOR」及び「GABORATORY」関連の米国登録商標の所有権者でないこと、及び故ガボールがデザインしたシルバーアクセサリーにかかわる著作権(日本の意匠権に相当)の所有者でないことを宣告し、原告(請求人)の訴えを却下した。原告(請求人)は、20日以内に訴状訂正の上、再出訴することが認められていたが、かかる再出訴期間内に再出訴しなかったため本件訴え却下が確定している(乙第2号証)。
本件審判における請求人の主張は、請求人が上記商標及びデザインに対する米国法上の各所有権を有しているということを前提とするもので、上記判決により米国法上の所有権者でないことが明確にされた以上、請求人の主張は全て理由がないこと明らかである。
(5)結び
上記のとおり、請求人は、ガボール事業に関し、何ら正当な権限を有してはおらず、請求人のなしている主張はいずれも、知的財産権法秩序に真っ向から反する放埒なもので、断じて認めることはできない。
したがって、本件商標は、何ら無効原因を包含せず、商標法第4条第1項第10号、同法第46条第1項第1号に基づく請求人の請求は、成り立たない。

第4 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、当審も、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと判断するので、以下、本案に入って審理する。
2 請求人の商標について
(1)請求人のいう「王冠とGの図形」の商標(以下「請求人商標」という。)は、請求人の提出に係る証拠及びその主張の全趣旨によれば、米国商標2及び3の構成中の上方の王冠図形と図案化された「G」の文字とを組み合わせた図形部分を抽出したものであって、本件商標と同一の構成からなるものと認められる。
(2)請求人は、ガボラトリーインターナショナルからガボール・ブランドのシルバー・アクセサリー商品の提供を受け、日本各地の販売業者に該商品の供給を継続していたが、2003年9月5日には米国商標1ないし3及び請求人商標を含む全ての商標権、著作権、製造権、販売権、顧客、事業の暖簾を譲り受け、日本においてガボール・ブランドの販売を継続して請求人商標を広く周知せしめた旨主張し、証拠を提出している。
しかしながら、請求人商標の周知性を立証するために提出された甲第6号証及び同号証の1ないし4、第7号証及び同号証の1、第8号証及び同号証の1、第9号証及び同号証の1ないし3並びに第10号証及び同号証の1の各雑誌は、いずれも本件商標の登録出願後に発行されたものであるから、これらの証拠をもって、請求人商標が請求人の業務に係る商品を表示する商標として本件商標の登録出願時に取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
その他、請求人が、本件商標の登録出願前に我が国において、請求人商標を使用した商品を販売した事実、例えば該商品の販売数量、売上高、市場占有率、宣伝広告等を具体的に示す証左は一切提出されておらず、本件商標の登録出願前における請求人商標の実際の使用態様すら明らかでない。
また、請求人は、商標法第4条第1項第10号にいう「他人」には継続的使用をしていた者の承継人も含まれるとし、ガボラトリーインターナショナルが使用していた請求人商標及び米国商標1ないし3を同人から譲り受け、米国及び日本において使用し周知せしめていたのであるから、請求人商標関連事業の真の承継人である旨主張する。
確かに、商標の周知性は継続的使用により獲得されるものであり、その間の使用者は必ずしも同一のものでなくとも、当該商品に係る業務の承継があった場合には、その承継人も含めて使用者といえるとしても、請求人に請求人商標を譲り渡したガボラトリーインターナショナルは、本件商標の登録出願日である平成13年(2001年)8月8日の2ヶ月程前の2001年5月29日に設立されたものであり、その設立から2ヶ月程の間における請求人商標を使用した商品の取引状況や宣伝広告等の具体的事実を示す証左は一切提出されておらず、上記わずか2ヶ月の間に請求人商標を使用し取引者・需要者の間に広く認識されるに至ったものとは到底認め難い。
(3)したがって、請求人商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
3 本件商標について
(1)被請求人の提出に係る乙第6号証の1及び2は、本件商標の登録出願前に我が国において発行された雑誌の写しと認められるところ、同第6号証の1の雑誌中には「ガボール・ナギー/ハンガリー/ブダペスト出身。18年前にアメリカに渡って、キャリアを積んだ後に、’88年にスタジオ設立。以来シルバーアクセサリーの大御所として不動の地位を誇っている。」、「いくらコピーが増殖しても本物を超えることは不可能だ。」、「数限りないコピーや模造品に悩まされるのは、カリスマにとって避けられない道。中でも<ガボール>ほど、ヒステリックにコピーされるジュエリーもないだろう。」との記載があり、同第6号証の2の雑誌中には「GABOR ガボール」の表題の下に「高貴な無骨シルバー」として「ガボールのシルバーは、ファクトリーである”ガボラトリーU.S.A.”で信頼のおける3人のアソシエイトとガボールの4人で作られている。ガボールのシルバーを付けていると、それだけでアメリカでは一目も二目も置かれる。なぜなら、いくら金があってもコネクションが無ければガボールの作品は買えないからだ。」との記載がされ、本件商標と同一といい得る商標が刻印された商品の写真が掲載されていたことが認められ、本件商標は、故ガボールのデザインに係るシルバーアクセサリーについて使用する商標として紹介されていたことが認められる。
そうすると、本件商標の登録出願時には、故ガボールはシルバーアクセサリーのカリスマ的デザイナーとして知られ、同人のデザインに係るシルバーアクセサリーは米国をはじめ我が国においても人気を博していたものというべきであり、上記シルバーアクセサリーについて使用する本件商標は、故ガボールのデザインに係るシルバーアクセサリーの商標として認識されていたものということができる。
(2)請求人は、請求人商標及び本件商標等の帰属を巡って請求人及びガボラトリーインターナショナルと被請求人及びマリアとの間に紛争が生じたが、請求人商標を含むガボラトリー関連事業の真の承継人は請求人であって、請求人商標を周知せしめたのも請求人である旨主張している。
しかしながら、前記のとおり、請求人の提出に係る証拠によっては、請求人商標は請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されているものとは認められないばかりでなく、むしろ、上記(1)のとおり、被請求人に係る本件商標が、故ガボールに由来する商標として取引者・需要者の間に広く認識されているものというべきである。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録出願時において、請求人商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されていたものとは認められないから、たとえ、本件商標と請求人商標とが同一又は類似のものであり、かつ、本件商標の指定商品と請求人商標の使用に係る商品とが同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
(1)本件商標


(2)米国商標2


(3)米国商標3



審理終結日 2008-06-04 
結審通知日 2008-06-11 
審決日 2008-06-24 
出願番号 商願2001-72294(T2001-72294) 
審決分類 T 1 12・ 255- Y (Z14)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 末武 久佳
前山 るり子
登録日 2002-07-05 
登録番号 商標登録第4582053号(T4582053) 
代理人 若林 拡 
代理人 中川 康生 
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