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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y38
管理番号 1216362 
審判番号 取消2009-300869 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-07-28 
確定日 2010-04-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4965614号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4965614号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4965614号商標(以下「本件商標」という。)は、「bAccessInside」及び「ビーアクセスインサイド」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成17年12月22日に登録出願、第38類「電気通信(放送を除く。),放送,報道をする者に対するニュースの供給,データ通信カード・電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」を指定役務として、平成18年6月30日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べた。
(1)請求の理由
本件商標に関する商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、商品及び役務の区分第38類における指定役務「電気通信(放送を除く。),放送,報道をする者に対するニュースの供給,データ通信カード・電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」について継続して3年以上日本国内において当該登録商標の使用をしていない。よって、本件商標は、商標法第50条の規定に該当し、その登録を取り消されるべきである。
(2)弁駁
ア 指定役務についての使用について
被請求人は、乙第3号証ないし乙第11号証によって、本件商標は本件商標の指定役務である電気通信について使用されている旨主張するが、被請求人が主張する商品(以下「使用商品」という。)についての使用は、本件商標の指定役務について使用するものではない。
乙第3号証ないし乙第11号証は、被請求人が使用していると主張する商標(以下「使用商標」という。)を商品の包装箱に付しているものである。
ここで、役務についての商標の使用とは、「役務の提供に当りその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為」(商標法第2条第2項第3号)、「役務の提供に当りその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」(同項第4号)等、利用に供する「物」に標章を付する行為等と規定されているところ、利用に供する物の「包装」に標章を付する行為は、役務についての商標の使用に該当しない。これは、商品についての商標の使用については、「商品」と「商品の包装」を列記して規定されていることからも明らかである(同項第1号及び第2号)。
そうすると、被請求人が提供する電気通信の役務においては、役務の提供を受ける者の利用に供する物は、商品であるデータ通信端末であり、その包装箱ではない。そして、使用商標が付されているのは、商品の包装箱のみであって、商品であるデータ通信端末には一切付されていない。
よって、使用商標の使用は、本件商標の指定役務について使用するものではない。
イ 登録商標の使用について
被請求人は、乙第3号証ないし乙第11号証によって、本件商標と社会通念上同一の商標が被請求人により使用されている旨主張するが、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標には該当しない。
(ア)本件商標は、公報掲載の構成態様のとおり、欧文字で“bAccessInside”と一連の横書きで表示し、その下段にカタカナ文字で“ビーアクセスインサイド”と一連の横書きで表示した構成からなる商標である。
(イ)一方、使用商標は、緑色の円のほぼ中心に欧文字の“b”を大きく表示し、その下部に“Access”の欧文字を“b”の文字の約5分の1の高さで表示し、“b”の文字の左側から“Access”の文字の下側に7個の白色の小円をC字状に配し、更に、緑色の円の円周の内側に12個の“INSIDE”の欧文字を円状に配置した構成からなるものである。
(ウ)ところで、商標法第50条第1項は、本件商標と使用商標の同一性の有無に関し、(a)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、(b)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、(c)外観において同視される図形からなる商標、(d)その他当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標、であれば両商標は同一としている。
本件においては、本件商標と使用商標は前記のとおりであるから、上記(a)(書体の変更)、(b)(片仮名とローマ字等)及び(c)(外観同視図形)に該当しないことは明らかであるから、(d)の「社会通念上同一」と認められるかどうかが問題となる。
(エ)そこで、使用商標が本件商標と社会通念上同一と認められるかどうかについて検討する。使用商標は、緑色の円のほぼ中心に配した“b”の文字と“Access”の文字を囲むように7個の白色の小円がC字状に配され、それを12個の“INSIDE”の文字が円状に囲む構成から、文字と図形が融合して、全体がアイ・キャッチャーとなっているものである。そうすると、使用商標は、文字商標というよりは、むしろ、全体がひとつの図形商標として把握されるとみるのが妥当である。
また、使用商標の各構成文字について検討すると、“b”の文字と“Access”の文字は二段に書され、文字の大きさ及び書体が異なることから一連の文字とは把握されず、別々の文字として把握されるものである。この場合、“b”の文字は商品の型式や品番を表わす記号として認識され、“Access”の文字は「情報に対する操作の総称。特にコンピューターで、記憶装置や周辺装置にデータの読み出しや書き込みをすること。」等の意味を有するため(岩波書店「広辞苑」第五版)、使用商標を付した使用商品との関係において自他商品役務の識別力を欠くものである。また、12個の“INSIDE”の文字は、各文字が小さく、かつ、全体で円形状を形成するため、使用商標の構成においては、文字要素としてよりも、むしろ、使用商標を装飾する図形要素若しくは模様として認識されるものである。
そうすると、使用商標の自他商品役務の識別力は、その外観において発揮され、称呼及び観念は発生しないとみることが妥当である。
この点、被請求人は、「使用商標を付した商品は、家電量販店等で販売されている。このような商品の包装箱においては、需要者の目を引くために、文字を図案化し、あるいは、配置を工夫するなど、視覚上の印象を高めるためにデザインを施すなど多様な表現手段を用いて表すことは、取引社会においては広く行われているところである。」と述べているが、これは、被請求人も使用商標がアイ・キャッチャーとなっていることを自認していることに他ならない。
一方、本件商標は、“bAccessInside”の欧文字と“ビーアクセスインサイド”のカタカナ文字を二段に書した外観からなり、構成文字に相応して「ビーアクセスインサイド」の称呼が生じる商標である。そして、本件商標は特定の観念の生じない造語であるとみるのが妥当である。
よって、本件商標と使用商標は、文字商標と図形商標という明らかな相違があるうえ、商標の外観、称呼及び観念のいずれも共通するところがないから、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標とはいい得ない商標である。
(オ)使用商標における“b”の文字と“Access”の文字から「ビーアクセス」の称呼が発生するとしても、“b”及び“Access”の文字と12個の“INSIDE”の文字の間には相当の広さの余白部分があり、「ビーアクセスインサイド」といった一連の称呼を認定することは極めて不自然である。また、使用商標の“INSIDE”の文字は12個あるから、それらから「インサイド」の称呼が1回だけ発生するとする理由は何もない。また、“INSIDE”の文字を12個円周上に等間隔に配置してなる構成から、需要者・取引者が「インサイド、インサイド、インサイド、インサイド、インサイド、インサイド、インサイド、インサイド、インサイド、インサイド、インサイド、インサイド」と同一の読みが連続する称呼を、簡易迅速を尊ぶ商取引において、認識し、これをもって取引にあたることも到底ありえない。よって、使用商標の構成文字から称呼が生じるとしても、唯一「ビーアクセス」であり、“INSIDE”の文字部分はアイ・キャッチャーとしての図形として自他商品識別力を発揮するものであるから、本件商標と同一の称呼「ビーアクセスインサイド」は生じないとみるべきである。
(カ)なお、被請求人は使用商標から「bAccessという無線インターネット・コントローラーを装備した」というような観念を表したものとみることができるから、本件商標と観念が同一であると主張する。
しかし、そもそも本件商標は特定の観念を有さない造語商標とみるべきである。被請求人の主張によれば、本件商標を構成する“bAccess”の語は被請求人が提供する無線インターネット・コントローラーを表すとのことである。しかし、“bAccess”の語はアルファベットの“b”と英単語“Access”を結合した造語とみるのが自然であり、また、被請求人は、需要者・取引者が“bAccess”の語から被請求人の提供する無線インターネット・コントローラーの意味を認識すると認め得る証拠を何ら提出していない。
よって、“bAccess”の語は造語と認識されるものであり、“bAccess”と“Inside”を一連一体に表した本件商標も特定の観念が生じない造語とみるべきである。一方、使用商標から特定の観念が生じないことは、上記の(エ)で述べたとおりである。
(キ)以上のとおり、本件商標と使用商標は、共に特定の観念の生じない商標であるところ、外観は明らかに相違し、称呼も同一の称呼は発生し得ないものである。よって、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標とはいうことはできず、むしろ、全く異なる商標といい得るものである。
(ク)パリ条約5条C(2)は、「商標の所有者が一の同盟国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合には、その商標の登録の効力は、失われず、また、その商標に対して与えられる保護は、縮減されない」旨を規定する。そして、「登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えて使用する商標」とは、社会通念上登録商標と同一と認められる範囲に含まれる商標と解することができる。
そこで、本件商標と使用商標についてみると、上述のとおり、外観は明らかに相違し、称呼も同一の称呼は発生し得ないものであり、使用商標における構成部分の変更は、通常の取引において加えられ得る変更の程度を超えている。即ち、使用商標は、本件商標との商標の同一性が損なわれているものであり、本件商標の識別機能に影響を与える程の変更が施されているものである。
よって、パリ条約5条C(2)の趣旨からも、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標ということはできず、使用商標の使用は登録商標の使用とは認められないものである。
(ケ)特許庁審判便覧には、「登録商標の使用に当たるか否かの認定に当たっては、登録商標に係る指定商品及び指定役務の属する産業分野における取引の実情を十分に考慮し、個々具体的な事例に基づいて判断すべきものであるが」とあることから(53-01 3(2))、取引の実情の面からも検討する。
乙第3号証ないし乙第11号証によれば、各商品の包装箱の正面中央には“b-mobile ONE”、“b-mobile hours 150h”、“b-mobile DAY TIME”等の文字が大きく目立つ態様で表示され、使用商標は包装箱の正面左上または正面左下の隅のほうに比較的小さく表示されているものである。そして、このような乙第3号証ないし乙第11号証の各包装箱において、需要者・取引者の目に最も付きやすい表示は中央部の“b-mobile ONE”等の表示である。一方、使用商標については、“b”の文字と7個の白色の小円からなるC字状は比較的目に付きやすいものの、“Access”及び12個の“INSIDE”は、文字が小さく容易には視認し難いものである。
また、被請求人の主張によれば、使用商品は、主に卸代理店からヨドバシカメラ、ビックカメラ、コジマといった家電量販店、大学生協、その他の販売会社を経て、最終需要者に販売されるものであるから、使用商品は、家電量販店等の店頭に陳列されて販売されることが多いものと推測される。
そうすると、簡易迅速を尊ぶ商取引において、使用商標が付された商品に接する需要者・取引者は、第一に包装箱中央部の“b-mobile ONE”等の表示をもって取引にあたることが予測されるが、仮に使用商標をもって取引にあたる場合には、“b”の文字と7個の白色の小円からなるC字状に強い印象を受け、それを記憶して取引にあたることが想定されるものであり、“Access”及び12個の“INSIDE”の文字には特段の印象を受けることなく、記憶に残ることはないと考えられる。
よって、このような取引の実情をも考慮すれば、本件商標と使用商標は、商標の外観、称呼及び観念が異なる商標であり、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
(コ)被請求人は、乙第28号証ないし乙第31号証の審決例を挙げ、当該審決に係る各使用商標と登録商標が社会通念上同一であるとすれば、本件使用商標も、本件商標と社会通念上同一であるといえると主張する。
しかし、乙第28号証ないし乙第31号証の審決と本件は事案を異にするものであり、これらの審決において使用商標と登録商標が社会通念上同一であると認定されたからといって、本件の使用商標と本件商標が社会通念上同一であると認める理由にはならない。
乙第28号証の審決は、使用商標における各文字がまとまりよく一体的に表されていることから、登録商標と社会通念上同一であると認定し、乙第29号証ないし乙第31号証の審決は、同一の称呼、観念が生じることから、使用商標が登録商標と社会通念上同一であると認定しているものであるが、いずれも、使用商標中に登録商標の要部が残っているものである。
これに対し、本件の使用商標における各文字は、文字の書体、大きさが異なるほか、その配置も“b”及び“Access”の文字と12個の“INSIDE”の文字の間には相当の広さの余白部分があり、一体的には把握できないものである。
このように、本件の使用商標と本件商標のとの相違は、乙第28号証ないし乙第31号証の審決例のいずれにも当てはまるものではなく、通常の取引において加えられ得る変更の程度を超えており、使用商標中に本件商標の要部が残っていないものである。即ち、本件の使用商標は、本件商標の識別機能に影響を与える程の変更が施され、商標の同一性が損なわれているものである。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第31号証を提出した。
(1)被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件審判予告登録前3年以内に、日本国内において、その指定役務である「電気通信」に使用している。
(2)被請求人の会社概要について
本件商標の商標権者であり、被請求人である日本通信株式会社は、1996年5月24日、東京都千代田区に携帯電話の法人向けサービス・プロバイダーとして設立された。被請求人は、2000年6月、「bモバイル」の名称で、各種アプリケーションやコンテンツを携帯電話ブラウザで提供するアプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)事業を提供した後2001年には、データ通信MVNO(Mobile Virtual Network Operator)事業を開始し、「bモバイル・プリペイド・サービス(現「bモバイル」)」の名称で、データ通信カードと1年間のワイヤレス・インターネット使用料をパッケージ化した商品をPC量販店で提供を開始した(乙第1号証)。「bモバイル」とは、データ通信の通信料、インターネットの接続料、データ通信端末のほか、無線LANスポットの使用料および無線インターネットコントローラー(「bアクセス」)といった、モバイルでインターネットを利用するために必要なものがすべて入ったオール・イン・ワン・パッケージの商品(使用商品)である(乙第2号証)。需要者は、「bモバイル」という使用商品を購入し、開通手続きを行うことにより、容易にモバイルインターネットを利用することができる。
(3)商標使用の事実
ア 使用証拠
被請求人は、以下の9種類の使用商品を販売している(乙第3号証ないし乙第11号証)。
各使用商品の包装箱には、緑の丸の中に「b」「Access」及び「INSIDE」がまとまりよく配置された本件商標と社会通念上同一の使用商標が付されている。乙第3号証ないし乙第11号証より、使用商標が使用されていることが明らかである。
イ 商標の使用者
各使用商品の包装箱には、被請求人の名称が、問い合わせ先及び電気通信事業者として記載されていることから、被請求人が使用商標を使用していることが明らかである。
ウ 商標の指定役務への使用
使用商標の使用商品への使用が、本件商標の指定役務である電気通信に該当することを証明するために、上記使用商品のパンフレットを提出する(乙第12号証ないし乙第15号証)。各使用商品はインターネットに接続するすべての費用が含まれたオール・イン・ワンパッケージである。各使用商品を購入した者は、データ通信端末をコンピュータまたはPDAに差し込むだけで、簡単にインターネットにアクセスすることができる。インターネットヘのアクセスは、PHS通信ネットワークまたは無線LANスポットから、被請求人のb-mobileプラットフォームを経由して行われる(パンフレット参照)。
各使用商品は、電気通信事業者である被請求人が、自社の電気通信サービスを提供することを目的として販売している商品であり、使用商標の使用商品への使用は、商標法第2条第3項第3号の、役務(すなわち、電気通信サービス)の提供に当り、その提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む)(すなわち、商品)に標章を付する行為に該当する。したがって、被請求人が、指定役務について、使用商標を使用していることが明らかである。
エ 商標の使用時期
使用商標を付した使用商品は、主に卸代理店からヨドバシカメラ、ビックカメラ、コジマといった家電量販店、大学生協、その他の販売会社を経て、最終需要者に販売される(乙第16号証)。
使用商標が、本件審判予告登録前3年以内において、被請求人によって、使用されていることを証明するため、各使用商品の取引書類を提出する(乙第17号証ないし乙第25号証)。
乙第17号証ないし乙第23号証の日付は、本件審判予告登録日である平成21年8月11日以前のものである。したがって、被請求人は、本件審判予告登録前3年以内において、使用商標を付した使用商品の注文を受け、使用商品の納品を行っており、当該取引はその後(乙第24号証及び乙第25号証)も継続的に行われている。
オ 被請求人はニッポン・ニュー・マーケット「ヘラクレス」に上場しており、大阪証券取引所の規則にもとづき、情報開示を行っている。「b-mobile KuRiKa」の販売開始につき、情報が開示されている。ニュースリリースは、大阪証券取引所サイトにアクセスして入手したものである(乙第26号証)。
これは、被請求人は新製品「b-mobile KuRiKa」(商品番号:BM-K1U-20H)(乙第10号証)を、2007年7月5日より、全国の家電量販店やオンライン・ショッピングサイトなどで販売開始をする、という情報(ニュースリリース)を開示している。ニュースリリースには、使用商品の包装箱の写真が掲載されており、この写真を拡大すると、使用商品の包装箱に付されている使用商標が確認できる(乙第27号証)。
カ 上記取引書類及びニュースリリースから、被請求人が、本件審判予告登録前3年以内に、日本国内において、指定役務に関して、使用商標を、指定役務に使用していたことが明らかである。
(4)商標の同一性
本件商標は、欧文字「bAccessInside」及びカタカナ文字「ビーアクセスインサイド」を二段に書してなる。一方、使用商品に使用されている使用商標は、本件商標の欧文字を構成する「b」「Access」及び「INSIDE」よりなるものである。使用商標は、緑の丸の中に、「b」「Access」及び「INSIDE」がまとまりよく描かれており、これらの構成要素から「ビーアクセスインサイド」という称呼が生ずる。「bAccess」とは、被請求人が提供する無線インターネット・コントローラーのことである。確かに、被請求人の使用商標は、本件商標と同一のものとはいうことはできないとしても、商標の使用は、商標を付する対象に応じて適宜変更を加えて使用されるのがむしろ通常である。本件の場合、使用商品は、家電量販店等で販売されている。このような使用商品の包装箱においては、需要者の目を引くために、文字を図案化し、あるいは、配置を工夫するなど、視覚上の印象を高めるためにデザインを施すなど多様な表現手段を用いて表すことは、取引社会においては広く行われているところである。かかる取引の実情を考慮すると、使用商標における各文字は、まとまりよくー体的に表されていて、全体をもって「ビーアクセスインサイド」、bAccessという無線インターネット・コントローラーを装備したというような観念を表したものとみることができる。そうとすれば、本件商標と使用商標は、構成文字、そこから生ずる称呼及び観念が同一であり、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標であると判断するのが相当である。
なお、乙第28号証ないし乙第31号証に示す取消審判の審決において、使用商標が登録商標と社会通念上同一の商標であるとして、各登録商標はいずれも、商標登録の取消しを免れている。
上記各使用商標と登録商標が社会通念上同一であるとすれば、本件使用商標も、本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
(5)結語
以上述べたとおり、被請求人は、審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、指定役務中の「電気通信」について本件商標と社会通念上同一とされる商標について使用していることが明らかであり、商標法第50条第1項の規定に該当しない。

4 当審の判断
(1)被請求人の提出に係る乙各号証によれば、次の事実を認めることができる。
ア 乙第2号証は、被請求人のウェブサイトであり、そこには、「データ通信料+プロバイダ接続料+端末料などモバイル・インターネットに必要なものがすべて入ったオール・イン・ワン・パッケージの商品です。」と使用商品の説明が記載されている。
イ 乙第3号証は、使用商品の一つである「b-mobile ONE」の包装箱であり、そこには別掲に示すとおりの使用商標が表示され、「6ヶ月パッケージ」「BM-U1C2-6M」「日本通信株式会社」の文字が表示されている。
ウ 乙第4号証は、同じく「b-mobile ONE」の包装箱であり、そこには別掲に示すとおりの使用商標が表示され、「1年パッケージ」「BM-U1C2」「日本通信株式会社」の文字が表示されている。
エ 乙第5号証は、同じく「b-mobile hours 150h」の包装箱であり、そこには別掲に示すとおりの使用商標が表示され、「150時間パッケージ」「BM-H1C3-150H」「日本通信株式会社」の文字が表示されている。
オ 乙第6号証は、同じく「b-mobile DAY TIME」の包装箱であり、そこには別掲に示すとおりの使用商標が表示され、「1年パッケージ」「BM-T1C」「日本通信株式会社」の文字が表示されている。
カ 乙第7号証は、同じく「b-mobile hours 70h」の包装箱であり、そこには別掲に示すとおりの使用商標が表示され、「70時間パッケージ」「AP-H1C2-70H」「日本通信株式会社」の文字が表示されている。
キ 乙第8号証は、同じく「b-mobile」の包装箱であり、そこには別掲に示すとおりの使用商標が表示され、「6ヶ月パッケージ」「AP-U100C3-6M」「日本通信株式会社」の文字が表示されている。
ク 乙第9号証は、同じく「b-mobile」の包装箱であり、そこには別掲に示すとおりの使用商標が表示され、「1年パッケージ」「AP-U100C3」「日本通信株式会社」の文字が表示されている。
ケ 乙第10号証は、同じく「b-mobile KuRiKa」の包装箱であり、そこには別掲に示すとおりの使用商標が表示され、「10ヶ月パッケージ(300日)」「BM-K1U-20H」「日本通信株式会社」の文字が表示されている。
コ 乙第11号証は、同じく「b-mobile hours」の包装箱であり、そこには別掲に示すとおりの使用商標が表示され、「150時間パッケージ」「BM-H1U-150H」「日本通信株式会社」の文字が表示されている。
サ 乙第12号証ないし乙第15号証は、使用商品のパンフレットであり、いずれにも、「日本通信株式会社」の表示がある。
シ 乙第17号証ないし乙第19号証、乙第21号証、乙第24号証及び乙第25号証は、ダイワボウ情報システム株式会社が発行した商品注文書であり、これらの右上に、発注日として、「’07年03月16日」(乙第17号証)、「’09年04月09日」(乙第18号証)、「’09年04月20日」(乙第19号証)、「’09年06月29日」(乙第21号証)、「’09年08月17日」(乙第24号証)、「’09年09月09日」(乙第25号証)、その下に「ダイワボウ情報システム株式会社」、左上に「日本通信株式会社」、中央部の商品コード欄に「AP-H1C2-70H」(乙第17号証)、「AP-U100C3-6M」(乙第18号証)、「BM-U1C2-6M」(乙第19号証)、「AP-U100C3」(乙第21号証)、「BM-H1C3-150H」(乙第24号証)、「BM-K1U-20H」(乙第25号証)、左下の納品先欄に「ディーアイエス物流株式会社」と表示されている。
ス 乙第20号証は、発注書であり、右上に注文日「2009/05/11」、左上に「日本通信株式会社」、その下に御請求先として「株式会社シネックス」、中央部の製品名/型番欄に「型番:BM-T1C」と表示されている。
セ 乙第22号証及び乙第23号証は、発注書兼納期回答書であり、右上に発注日として「2009/07/08」(乙第22号証)、「2009/07/31」(乙第23号証)、左上に「日本通信(株)」、中央部の商品名欄に「BM-U1C2」(乙第22号証)、「BM-H1U-150H」(乙第23号証)、左下の納入先欄に「ソフトバンク・フレームワークス(株)」と表示されている。
ソ 乙第26号証は、被請求人が公表した2007年6月29日付けのニュースリリースであり、そこには、使用商品の説明とともに商品の包装箱が掲載され、その包装箱の拡大写真(乙第27号証)には別掲に示すとおりの使用商標が表示されている。
タ 乙第2号証ないし乙第27号証には、「bAccessInside」「ビーアクセスインサイド」及びこれらを二段書きした表示はみあたらない。
(2)上記において認定した事実によれば、次のことを認めることができる。
ア 使用商品の取引について
乙第2号証ないし乙第23号証及び乙第26号証によれば、本件審判の請求の登録前3年以内に、被請求人は、取消請求に係る指定役務中「電気通信」について、少なくともその提供を受ける者の利用に供する商品(使用商品)の包装に使用商標を付し、それを取引(譲渡)したと推認でき、また、当該役務について、使用商標を付して広告したものと認められる。
イ 本件商標と使用商標の同一性について
本件商標は、「bAccessInside」及び「ビーアクセスインサイド」の文字を上下二段に横書きしたものであるのに対し、使用商標は、別掲に示すとおりの構成からなるものである。
そこで、本件商標と使用商標を比較してみると、本件商標は、その構成文字「bAccessInside」及び「ビーアクセスインサイド」が、それぞれ、同書、同大、同間隔で一体的に表され、不可分一体のものと認識されるとみるのが自然であり、その構成文字に相応して「ビーアクセスインサイド」の称呼を生じ、特定の観念を有しない造語と認められる。
これに対し、使用商標は、別掲のとおり、緑の丸の中央に大きく「b」の文字を表し、その下に小さく「Access」の文字を表し、「b」の左から「Access」の下側へ弧を描くように7個の白い小円を配し、これらを囲むように「Access」よりもさらに小さな「INSIDE」の文字12個を緑の丸の縁に沿って配したものである。
そして、使用商標は、その構成から中央に比較的大きく表された「b」と「Access」の文字部分に相応して「ビーアクセス」の称呼を生じるものであるが、当該文字を囲むように小さく表された「INSIDE」の12個の文字は、これから単に「インサイド」の称呼を生じるとみるより、むしろ輪郭図形と認識されるとみるのが自然であり、「ビーアクセスインサイド」の称呼は生じないものであって、特定の観念を有しないものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標及びその構成中「bAccessInside」の文字部分と使用商標とは、外観において、その構成が明らかに相違し、称呼においては、両者から生じる「ビーアクセスインサイド」と「ビーアクセス」とは、後半の「インサイド」の有無という明らかな差異を有し、さらに、共通の観念をもって看取されるものとは認められないものである。
してみると、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができないといわなければならない。
ウ そして、被請求人提出の乙各号証には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の表示はみあたらない。
(3)被請求人の主張について
被請求人は、「商標の使用は、商標を付する対象に応じて適宜変更を加えて使用されるのがむしろ通常であり、本件の場合、使用商標を付した使用商品は、家電量販店等で販売されている。このような使用商品の包装箱においては、需要者の目を引くために、文字を図案化し、あるいは、配置を工夫するなど、視覚上の印象を高めるためにデザインを施すなど多様な表現手段を用いて表すことは、取引社会においては広く行われているところである。かかる取引の実情を考慮すると、使用商標における各文字は、まとまりよくー体的に表されていて、全体をもって『ビーアクセスインサイド』、b Accessという無線インターネット・コントローラーを装備したというような観念を表したものとみることができる」旨主張している。
確かに商標の使用に際してデザインを施すなど多様な表現手段を用いて表すことは、取引社会において広く行われている。
しかしながら、本件商標は、「bAccessInside」の文字が不可分一体のものであって、このような商標と別掲のとおり、緑の丸の中央に、大きく「b」を表し、その下に小さく「Access」の文字を表し、「b」の左から「Access」の下側へ弧を描くように7個の白い小円を配し、これらを囲むように「Access」よりもさらに小さな「INSIDE」の文字12個を緑の丸の縁に沿って配する構成からなる使用商標とは、外観、称呼が明らかに相違し、観念においても共通するものでないこと上記(2)イで述べたとおりである。
そうとすれば、使用商標は、本件商標を、商標を付する対象に応じて適宜加えられる程度の変更の範囲を超えて表されたものであって、本件商標とは別異のものと認識されるものといわなければならない。
したがって、被請求人の主張によっては、上記(2)イの判断は左右されない。
さらに、被請求人は審決例を挙げて、本件の使用商標についても本件商標と社会通念上同一の商標と認められるべきである旨主張している。
しかしながら、それら審決例は、本件商標と構成を明らか異にする商標に係るものであるし、使用に係る商標が登録商標と社会通念上同一の商標と認められるものであるか否かは、個々の商標ごとに具体的事情に即して判断されるべきものであるから、これによって前記判断は左右されないものである。
(4)まとめ
以上よりすると、役務「電気通信」の提供を受ける者の利用に供する物(の包装)に使用商標が表示されているとしても、その使用商標をもって、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用があったということはできない。
他に、本件商標が使用されていると認め得る証拠はない。
(5)結語
したがって、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、その指定役務について、本件商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 使用商標


(色彩については、原本参照)

審理終結日 2010-03-01 
結審通知日 2010-03-04 
審決日 2010-03-16 
出願番号 商願2005-120854(T2005-120854) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y38)
最終処分 成立  
前審関与審査官 篠原 純子 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 2006-06-30 
登録番号 商標登録第4965614号(T4965614) 
商標の称呼 ビーアクセスインサイド、ビイアクセスインサイド、アクセスインサイド、ビイアクセス、アクセス、インサイド 
代理人 前田 大輔 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 中村 知公 
代理人 大岸 聡 
代理人 熊谷 美和子 

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