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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X09
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない X09
管理番号 1216333 
審判番号 不服2008-32915 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-26 
確定日 2010-04-23 
事件の表示 商願2007-127561拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第9類属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成19年12月27日に登録出願されたものであるが、その指定商品については、原審における同20年9月16日付け手続補正書により、第9類「避難器具,避難はしご」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原審の拒絶の理由において、「本願商標は、赤色正方形図形内に、指定商品との関係において、左から順に火と思しき図形、及び人が載っているはしごと思しき図形、並びに下向き矢印の図形を各々白抜きにして表示してなるものと認められるが、赤色正方形図形がJIS規格あるいはISO規格における安全標識等において用いられていること、白抜きした火の図形はこれと類似するものが火を示す図形としてJIS規格で用いられていること、人及び矢印の図形の組み合わせは、人の動く方向を示す案内用図記号(JIS規格)に用いられていること、インターネット記事において避難はしごが多数販売されていることから、本願商標は全体としてありふれた赤色正方形図形内に火、避難はしご、避難はしごを利用する人及び矢印からなる白抜き図形を、いまだ普通に用いられる域を脱しない程度に表示してなるものであり、『火災時に、階下に避難するためのはしご』の意味合いを図示したものと認められる。そうすると、本願商標をその指定商品中の『避難はしご』に使用しても、これに接する取引者・需要者は、その商品が『火災用のものであること』等の意味を表示したものと認識するにとどまり、単に商品の品質(内容、機能)、用途、用法を表したにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨の通知をした上で、原査定は、「本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知(要旨)
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、下記の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して平成21年12月9日付けで、証拠調べの結果を通知し、相当の期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。

1 本願商標を構成する「赤色の正方形内に配された、人がはしごに乗っていると思しき白抜きされた図形、下向き矢印の白抜きされた図形及び炎と思しき白抜きされた図形」等に関して行った職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。
2 JIS(日本工業規格)における記載
(1)別掲アの絵記号が、「火」を表す絵記号として使用されている(「JIS T0103 コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」34頁 財団法人日本規格協会 平成17年4月20日発行)。
(2)消防はしごを表す安全標識の図記号として、別掲イのとおり、はしご及び火を認識させる図形が併記して使用されている(「JIS Z 9104 安全標識-一般的事項」12頁 附属書2(参考)ISO7010図記号集 財団法人日本規格協会 平成17年10月20日発行)。
(3)別掲ウの指示図記号の矢印が、「下方へ」を表す矢印として使用されている(「JIS Z8210 案内用図記号」38頁 解説図8 矢印の使用方法 財団法人日本規格協会 平成14年3月20日発行)。
3 書籍における記載
(1)法規で定められた危険物の輸送用外装ダンボールなどの表面に、当該物質の危険性の種類(複数の場合もある)を表すマーク中に、「可燃性ガス、引火性液体、可燃性固体、自然発火しやすい物質、水と作用して可燃性ガスを発生する物質、酸化性物質、有機過酸化物」の表示とともに、別掲エのとおり、炎の図形が使用されている(「記号の事典【セレクト版】第3版」197頁 株式会社三省堂発行 1996年9月10日発行)。
(2)「電熱器具の注意マークの使用例」において、別掲オのとおり、炎の図形に×を記載した図形の説明として、「もえやすいものの近くでは使わないでください。」との記載がある(前掲「記号の事典【セレクト版】第3版」200頁)。
(3)「79 避難器具に関する用語」において、別掲カのとおり、避難はしごと人を組み合わせたイラスト図形がある(「イラストでわかる消防設備士用語集」165頁 株式会社学芸出版社 2003年8月10日発行)。また、「80 避難器具および避難はしごに関する用語」において、別掲キのとおり、避難はしごの種類として「固定避難はしご」、「つり下げはしご」及び「立てかけはしご」のイラスト図形がある(前掲「イラストでわかる消防設備士用語集」167頁)。さらに、「81 避難はしごに関する用語」において、別掲クのとおり、避難はしごと人を組み合わせたイラスト図形がある(前掲「イラストでわかる消防設備士用語集」169頁)。
4 インターネットにおける検索
(1)「株式会社ミナカミ」のウェブサイトにおいて、「避難はしごの取扱方法」の見出しのもと、「7 おちついて、足の位置を確認しながら降りて下さい。」との記載があり、別掲ケのとおり、8に避難はしごを降りる人がイラスト図形で表示されている(http://www.minakami.co.jp/top001.htm)。
(2)「ミドリ安全.com」のウェブサイトにおいて、「側面貼付標識 829-48 避難はしご 左矢印」の項に、「商品名 側面貼付標識 829-48 避難はしご 左矢印」との記載があり、かつ、別掲コのとおり、人が手足を避難はしごにかけたイラスト図形で表示されている(http://ec.midori-anzen.com/shop/g/g4068829480/)。
(3)「びんちょうたんコム」のウェブサイトにおいて、「わが家の防災心得。日頃の備えが被害を最小限に防ぎます。」の項に、別掲サのとおり、人が手足を避難はしごにかけたイラスト図形が表示されている(http://www.binchoutan.com/bousai/index.html)。
(4)「防災グッズ プラス1」のウェブサイトにおいて、「2階からの緊急脱出用具として最も簡易的な避難用具といえるでしょう」の項に、「[商品名]避難はしご ステップダン2、 2階用 災害時の緊急避難用」との記載があり、かつ、別掲シとおり、人が避難はしごを降りるイラスト図形が表示されている(http://shop.yumetenpo.jp/goods/d/plus-one.ne.jp/g/2001/index.shtml)。

第4 証拠調べ通知に対する意見(要旨)
請求人は、前記第3の証拠調べ通知に対して、平成22年1月8日付け意見書において、以下のように意見を述べた。
1 本願商標に示されている「炎」と思しき図形は、JIS規格で示されている「火」を表す絵記号と一見して識別可能であり、また、「人が昇降しているはしご」と思しき図形も、「炎」と思しき図形も十分なオリジナリティが認められるものであり、さらに、「炎」と思しき図形と「人が昇降しているはしご」と思しき図形とを、左右に並べて配置し、なおかつ斜め下向き矢印も合わせて不離一体のものとして組み合わせたものは、引用された各資料には、表現されていない。
2 本願商標である「赤色の正方形内に配された、炎と思しき白抜きれた図形と、人が昇降しているはしごと思しき白抜きされた図形と、斜め下向きの白抜きされた矢印」は、これら3つのものを組み合わせることによって避難はしごを想像させるのであって、「炎と思しき図形」や「人が昇降しているはしごと思しき白抜きされた図形」あるいは「斜め下向きの白抜きされた矢印」だけからは、何れも避難はしごを想像させること出来ない。
3 図形商標にあっては、指定商品の「効能」や「用途」を暗示する図形を採用するのは図形商標としては通常行為としてなされることであり、同様の「効能」や「用途」を暗示する図形は1つに特定できるものではなく、多数考えられることからすると、本願商標を登録しても、第3者に不測の不利益を与えるとは考えられない。
4 商標の図形が、指定商品の品質(内容、機能)、形状、用途を表したものと理解できる物として従来、以下に述べるものが登録されている。
(1)交通標識において禁止を表示するものとして良く知られている丸に左上から右下に向う斜め線を配したものと火炎とを組み合わせた図形商標であって、火災を鎮圧することを容易に推認させることのできるものが、「消火器」を指定商品として登録されている(登録第4786253号)。
(2)図形「鐘」からなる図形商標であって、警鐘を鳴らして周囲に異常を知らせることを容易に推認させることのできるものが、「火災報知機」、「盗難警報器」を指定商品の一部として登録されている(登録第4113767号)。
(3)図形「鐘」からなる図形商標であって、警鐘を鳴らして周囲に異常を知らせることを容易に推認させることのできるものが、「火災報知機」、「ガス漏れ警報器」、「盗難警報器」を指定商品の一部として登録されている。(登録第4268623号)。
(4)内部に矢印を配設した四辺形とデザイン化した人とを組み合わせた図形商標であって、インターホーンや異常通報機器などの通信機器を示すものとして容易に推認できるものが、「電気通信機械器具」を指定商品として登録されている。(登録第4455137号)。
これら、既登録商標は、指定商品との関係でみた場合、本件商標と指定商品との関係と何ら変わるところは無いものである。
5 以上のことから、本願商標は、その商品の品質(内容、機能)、形状、用途を間接的に表現したものと判断するべきであり、その商品の品質(内容、機能)、形状、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標には該当しない 。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本願商標は、別掲のとおり、赤を地色とした正方形内の左上部に炎と思しき白抜きされた図形、その右側に人が昇降しているはしごと思しき白抜きされた図形と、及びその右側下部に斜め下向きの矢印を白抜きされた図形を配した構成からなるところ、前記第3の証拠調べ通知に記載した事実によれば、日本工業規格において、構成中の左上部にある炎と思しき白抜きされた図形とほぼ同一の図形が、火を表す絵記号(前記第3の2(1))として使用され、構成中の左上部にある炎と思しき白抜きされた図形と中央部にあるはしごと思しき白抜きされた図形とほぼ同様な構成をもつ図が、消防はしごを表す安全標識の図記号(前記第3の2(2))として使用され、さらに、構成中の右下部に斜め下向きの矢印を白抜きされた図形とほぼ同一の図形が、指示図記号の矢印が、「下方へ」を表す矢印(前記第3の2(3))として使用されている事実が認められる。
そして、避難はしごを取り扱う業界においては、本願商標を構成する人が昇降しているはしごと思しき白抜きされた図形とほぼ同様な構成の図形が、火災時等の避難を目的とした避難器具(避難ばしご)をイラスト図形化したものして使用されている実情が認められる(前記第3の3(3)、4(1)ないし(4))。
以上のことからすれば、本願商標は、「炎」、「人が昇降しているはしご」及び「斜め下向きの矢印」を表す図形からなるものと容易に認識させるものであり、これをその指定商品中「避難はしご」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、この商品が「避難はしご」であることを表示するものとして容易に理解するにすぎず、単に商品の品質・用途を表示したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識としては認識しないというべきであり、また、本願商標を前記商品以外の「避難器具」に使用するときは、あたかも避難はしごであるかのように、その商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
なお、前記第2のとおり、原審は、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨の拒絶の理由を通知し、原査定において、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶したものである。
しかし、商標法第56条第1項で準用する特許法第158条の規定により、「審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても、その効力を有する。」とされているため、当審において、本願商標の商標法第4条第1項第16号の該当性についても判断した。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、炎の図形、人が昇降しているはしご及び斜め下向き矢印の配置には充分なオリジナリティが認められる旨主張するが、本願商標を構成するそれぞれの図形は、前記のとおり、炎、人が昇降しているはしご及び斜め下向きの矢印を表すものとして使用されているものであるから、たとえ、これらの組み合わせが日本工業規格等において記載されていないとしても、ことさら、これらの図形の配置や組み合わせ自体に識別力があるとはいい難いものである。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
(2)請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべきと主張するが、それら過去の登録例は、指定商品の内容及び商標の具体的構成等において本願商標とは事案を異にするものであり、また、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるか否かは、当該商標の構成態様と指定商品に基づいて、個別具体的に判断されるものであるから、それらの登録例に拘束されるべき理由はない。
したがって、請求人の上記主張も、採用することができない。
3 むすび
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原審の拒絶の理由は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標

(色彩については、原本参照。)

証拠調べ通知において引用した図形(以下、色彩については、原本参照。)
(別掲ア)


(別掲イ)


(別掲ウ)


(別掲エ)


(別掲オ)


(別掲カ)


(別掲キ)


(別掲ク)


(別掲ケ)


(別掲コ)


(別掲サ)


(別掲シ)


審理終結日 2010-02-15 
結審通知日 2010-02-19 
審決日 2010-03-03 
出願番号 商願2007-127561(T2007-127561) 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (X09)
T 1 8・ 13- Z (X09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古森 美和鈴木 斎 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 榎本 政実
末武 久佳
代理人 鈴江 正二 

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