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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2008890041 審決 商標
取消2008300287 審決 商標
無効2011890049 審決 商標
無効2008890042 審決 商標
無効200689180 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X29
管理番号 1216270 
審判番号 取消2008-301542 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-12-05 
確定日 2010-04-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5158470号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5158470号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5158470号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、第29類「スピルリナ・クロレラ・花粉・緑茶・海草・種子類・ほうれん草・朝鮮人参・アルファルファ・小麦・大麦・オート麦を主成分とした粉末状の加工食品」を指定商品として、平成19年5月1日に登録出願、同20年8月8日に設定登録されされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)請求人商標の著名性について
ア 請求人商標の使用について
請求人である日本薬品開発株式会社は、業として健康食品(健康補助食品)の製造・販売を行っている。特に、大麦若葉の持つ豊富な栄養素に着目し、これを乾燥・粉末化したいわゆる「青汁」の製造・販売に注力している。
そして、請求人は、特に摂取時の当該栄養素の吸収率を高めた製品を「青汁」製品の中でも上級品と位置付け、1991年(平成3年)より、請求人が案出した「PROGREEN」(別掲3、以下「引用商標1」という。)及び「プログリーン」(別掲4、以下「引用商標2」といい、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)を当該製品に付して販売を開始した(甲第2号証)。
その後、甲第3号証に示すように北海道から沖縄まで全国に約500店舗の薬局・薬店を会員とする「All japan green association」(以下「AGA会」という。)を販売窓口とし、引用商標を付した製品(以下「PROGREEN製品」という。)を現在に至るまで、約17年間継続して販売している(甲第4号証)。
請求人の商品パッケージには、その両表面の一方に引用商標1の「PROGREEN」のロゴを付し、他方に引用商標2の「プログリーン」のロゴが大きく表示してされており(甲第5号証の1ないし3)、当該パッケージデザインは販売開始当時から現在に至るまで変更されていない。
イ PROGREEN製品の宣伝広告について
請求人は、自社発行紙や各種雑誌にPROGREEN製品の宣伝記事を掲載している(甲第6号証の1ないし甲第8号証の2)。また、AGA会の機関紙「AGA通信」にもPROGREEN製品に関する記事が毎回掲載されている(甲第9号証の1ないし38)。そして、AGA会の会員である個々の薬局・薬店も地元紙にPROGREEN製品に関する広告を掲載し、折込チラシを配布している(甲第10号証の1ないし4)。なお、2・3年ほど前までは、インターネット上においても積極的に宣伝広告活動を行っていた。
さらに、PROGREEN製品は、その品質の高さから、有名芸能人が愛用する、健康・美容に効果の高いサプリメントとして数多くの女性誌に取り上げられ(甲第11号証の1ないし3)、職業柄、健康に人一倍注意を払う力士にも愛飲されている(甲第12号証)。
このような宣伝広告活動の結果、PROGREEN製品は、請求人の製品として日本において広く知られるに至っている。このことは、「PROGREEN」の語をインターネットにて検索すると最初に請求人のPROGREEN製品に関するAGA会のウェブサイトが検出されることからも明らかである(甲第13号証)。
ウ PROGREEN製品の売上個数について
甲第2号証に示すとおり、1991年のPROGREEN製品発売以降、現在に至るまで、PROGREEN製品の売上個数は順調に伸びており、現在の売上個数は約7万4千個に上る。
エ 小括
このように、引用商標1の「PROGREEN」及び引用商標2の「プログリーン」は、請求人の製造販売に係る商品「麦類若葉を主原料とする粉末状・錠剤状・粒状・液状・顆粒状加工食品」を表示するものとして、本件商標の出願時には既に日本国内における当該商品の取引者の間で周知となっていたものであることが明らかである。
また、本件商標の指定商品の取引者と請求人の商品の取引者とが重複する以上、本件商標の指定商品の取引者の間においても、引用商標が請求人の商品を表示するものとして、本件商標の出願時に既に日本において周知となっていたと考えるのが相当である。
(2)本件商標と使用商標の類似性について
商標権者である被請求人の使用する商標(以下「使用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなるものである。
本件商標と使用商標の態様を比較すると、本件商標と使用商標とは「multi」の文字部分の書体及び大きさが異なるものの、上段に「multi」の文字を、下段に「ProGreens」の文字を配置するという商標の基本的構成は同一である。よって、使用商標は外観において本件商標に類似する。また、両商標は、称呼及び観念において同一である。このように、本件商標と使用商標とは全体として類似する商標である。
そして、商標権者は、使用商標を本件商標の指定商品である「スピルリナ・クロレラ・花粉・緑茶・海草・種子類・ほうれん草・朝鮮人参・アルファルファ・小麦・大麦・オート麦を主成分とした粉末状の加工食品」に使用している(甲第14号証及び甲第15号証)。
以上より、商標権者は、本件商標の指定商品について本件商標と類似する商標を使用している(以下、当該使用行為を「本件使用」という)。
(3)商品の出所の混同について
ア 具体的混同のおそれが存在すること
商標法第51条第1項にいう「混同」とは、具体的混同のおそれさえあれば良いものと解される(甲第19号証)。これは、具体的混同のおそれがあるにもかかわらず現実の混同が生じていないことを理由に登録を取り消しえないとすれば、需要者保護を目的とする商標法の趣旨に反するものと解されるからである。
上述のとおり、引用商標の「PROGREEN」及び「プログリーン」は、日本において既に周知である。また、引用商標と使用商標とは、後述するように商標類似の関係にある。これらの事情を考慮すれば、本件使用により請求人の業務に係る商品と具体的な出所の混同を生じるおそれがあるといえる。
イ 引用商標と使用商標の類似性について
(ア)使用商標の要部について
商標権者の使用商標「multi/ProGreens」の態様は、上記のとおり、「multi」の文字書体と「ProGreens」の文字書体とが著しく異なっており、さらに「multi」の文字は「ProGreens」の文字に比して非常に小さく書されている。また、その構成より、視覚上、上段の「multi」の文字と下段の「ProGreens」の文字とが分断して把握されることは明らかである。
ここで、「multi」の語が「多数の」という意味を有する英単語として日本人に広く馴染まれていることは、特許庁において顕著な事実と思料する。また、昨今の健康食品ブームにより、各種健康食品・サプリメントが薬局やドラッグストアの店頭に並ぶ現在、「multi」の語は、いわゆる「マルチビタミン(各種ビタミンを配合したサプリメント)」や、複数の栄養素を材料とするサプリメントであることを表示する語として日本において広く知られるに至っている(甲第16号証ないし第18号証の2)。使用商標の使用対象商品がいわゆる健康食品(サプリメント)の範鷹に属するものであることを考慮すれば、当該使用商標中「multi」の文字部分は、自他商品識別力の極めて弱い部分であるといえる。
このように、「multi」の文字部分が自他商品識別力の極めて弱い部分であること、及び、視覚上「multi」と「ProGreens」とが分離把握されることから、使用商標において出所標識としての機能を果たす部分は、下段に配置された「ProGreens」の文字部分であるといえる。このように、使用商標の要部は「ProGreens」の文字部分であるから、後述する引用商標との類否判断においては、使用商標の「ProGreens」の文字部分と引用商標とを比較し、判断すべきである。
(イ)引用商標1の「PROGREEN」と使用商標との類否について
引用商標1の「PROGREEN」と使用商標中「ProGreens」の文字部分とを比較すると、前者からは「プログリーン」の称呼が、後者からは「プログリーンズ」の称呼が生じる。両称呼の相違点は語尾の「ズ」音の有無であるが、当該語尾音は消え入るように発音されるため、当該語尾音の有無は微差に過ぎず、称呼の類否判断に影響を及ぼすものではない。よって、両商標は称呼において相紛らわしく、類似する。
また、両商標の外観上の相違点は語尾の「S」のみであるところ、引用商標1が全て欧文字で記載されていること、及び、平易な英単語「PRO」と「GREEN」とを結合してなるものであることから、多数の日本人は引用商標1の「PROGREEN」を英単語又は英単語に擬した造語であると容易に理解できる。そして、英単語の単数形の語尾に「S」を付することにより複数形にすることができることは、義務教育を受けた日本人であれば誰もが学習していることであり、周知の事実であるといえるから、使用商標中「ProGreens」の文字部分は英単語又は英単語に擬した造語である「ProGreen」に複数形の「s」を付したものと容易に理解される。よって、両商標は外観において類似するといえる。
そして、上述のとおり、使用商標中「ProGreens」の文字部分は、英単語又は英単語に擬した造語である引用商標1の複数形であると理解されるから、両商標は観念において類似する。
以上より、引用商標1の「PROGREEN」と使用商標中「ProGreens」の文字部分とは、称呼、外観、観念の全てにおいて類似する。よって、引用商標1と使用商標とは類似するものである。
(ウ)引用商標2の「プログリーン」と使用商標との類否について
引用商標2の「プログリーン」と使用商標中「ProGreens」の文字部分とを比較すると、前者からは「プログリーン」の称呼が、後者からは「プログリーンズ」の称呼が生じる。両称呼の相違点は語尾の「ズ」音の有無という微差に過ぎず、称呼の類否判断に影響を及ぼすものではないから、両商標は称呼において相紛らわしく、類似する。
また、使用商標中「ProGreens」の文字部分は、上述のとおり英単語又は英単語に擬した造語である引用商標1の「ProGreen」の複数形であると理解される。そして、「プログリーン」は「ProGreen」の文字の音訳に過ぎないから、「ProGreens」は「プログリーン」の複数形に過ぎないと理解される。よって、引用商標2の「プログリーン」と使用商標中「ProGreens」の文字部分とは、観念において類似する。
両商標は、外観において欧文字と片仮名という差異を有する。しかしながら、簡易迅速を旨とする商取引の実際にあっては、口頭又は電話による商取引が普通一般に行われていることを勘案すれば、ある商標と他の商標が称呼において類似することによる出所混同の可能性は、外観類似の場合に比べて高いといえる。また、本件商標の指定商品の属するいわゆる健康食品の分野においては、昨今の健康食品ブームにより、その評判が口コミで需要者の間に広まる傾向が強いという実情があり、この点からも、称呼及び観念における類否が商標全体の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
よって、このような取引実情に鑑みれば、引用商標2の「プログリーン」と使用商標中「ProGreens」の文字部分とは類似すると判断されてしかるべきである。
(エ)小括
このように、引用商標が日本において広く知られていること、及び、引用商標と使用商標とが類似することから、少なくとも、本件使用行為により商標権者の商品と請求人のPROGREEN製品との間で具体的な出所の混同を生じるおそれがあるといえる。
ウ 具体的な「混同」の事実
上記(1)アの「請求人商標の使用について」において述べたとおり、請求人は、PROGREEN製品をAGA会に属する薬局・薬店等に販売し、当該薬局等を通じてPROGREEN製品を一般消費者に販売しており、それ以外のルートでの販売は行っていない。もちろん、PROGREEN製品を海外で販売したこともない。それにもかかわらず、約8年前から、請求人は、商標「ProGreens」を付した健康商品をインターネット等で見たAGA会に属する薬局・薬店から「PROGREEN製品を海外で販売しているのか」との問合せを多数受けている。その一例を甲第20号証として提出する。請求人は、その都度、商標「ProGreens」を付した商品と請求人のPROGREEN製品とが別製品である旨説明しなければならなかった。
このような問合せをAGA会に属する薬局等から受けたという事実は、商標「ProGreens」を付した商品と請求人のPROGREEN製品との間で、現実に出所の混同が生じていることを示している。そして、この「商標『ProGreens』を付した商品」とは、米国Nutricology社製の健康食品「ProGreens」であり、商標権者は当該健康食品を米国より輸入し、日本国内において販売している。後述のとおり、商標権者は、少なくとも2006年6月12日までは商標「ProGreens」を、その後は使用商標「multi/ProGreens」を使用しているが、「ProGreens」の文字部分が使用商標の要部であること、及び、上記混同の事実を考慮すれば、本件使用行為により、商標権者の商品と請求人のPROGREEN製品との間で現実に出所の混同が生じているといえる。
エ 小括
以上より、商標権者の本件使用行為により、請求人の業務に係る商品と混同が生じている、又は、混同を生じるおそれがあると判断されてしかるべきである。
(4)故意について
以下に述べるとおり、商標権者には、本件使用行為により請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあることについて故意がある。
ア 交渉の経緯
商標権者と請求人との交渉の経緯は以下に示すとおりである。
平成3年引用商標の使用開始
平成17年6月3日引用商標の商標登録出願
平成18年2月3日引用商標の登録
平成18年2月21日請求人による商標権者あて第1回通知書の発送
平成18年3月20日商標権者より請求人あて第1回回答書の発送
平成19年4月13日商標権者あて第2回通知書の発送
平成19年5月1日商標権者による本件商標の商標登録出願
平成19年5月8日商標権者より第2回回答書の発送
イ 交渉の内容
(ア)請求人による引用商標の使用開始から商標権者あて第1回通知書の発送まで
上記のとおり、請求人は、平成3年より日本国内において請求人の健康食品に引用商標の「PROGREEN」及び「プログリーン」を使用してきたが、平成17年6月3日付にて、両引用商標について「麦類若葉を主原料とする粉末状・錠剤状・粒状・液状・顆粒状加工食品」等を指定商品とする出願を行い、平成18年2月3日付けにて商標登録を受けた(商標登録第4925351号及び同第4925352号)。これを機に、請求人は、引用商標を無断で使用する複数の第三者に対し、当該使用を中止するよう申入れた。
一方、商標権者は、「ProGreens」なる商標が付された健康食品(以下、「ProGreens製品」という。)を米国から輸入し、エム・エヌ・ジャパン社の商品販売用ウェブサイトにおいて当該製品を掲載するとともに、当該製品を「プログリーン」と称して日本国内において販売していた(甲第21号証)。
ここで、上記(3)アの「具体的混同のおそれが存在すること」にて述べたとおり、使用商標「ProGreens」は、引用商標の「PROGREEN」及び「プログリーン」と類似している。また、使用商標「プログリーン」と引用商標2の「プログリーン」とは同一の商標である。よって、商標権者が「ProGreens製品」を輸入する行為、及び、自社の商品販売用ウェブサイトに「ProGreens製品」を掲載する行為は、それぞれ、商標法第2条第1項第2号にいう「標章を付した商品の輸入」及び「標章を付した商品の譲渡のための展示」に該当する。また、商標「プログリーン」を用いた「ProGreens製品」の宣伝広告行為は、商標法第2条第1項第8号にいう「商品に関する内容を目的とする情報に標章を付して電磁的方法による提供する行為」に該当する。このように、商標権者による上記行為は全て、引用商標の「PROGREEN」及び「プログリーン」の「使用」に該当するため、当該行為は引用商標に係る商標権の侵害を構成する(商標法第25条及び商標法第37条第1号)。
そこで、請求人は、平成18年2月21日付配達証明郵便にて、商標権者による「ProGreens製品」の宣伝広告及び輸入行為が引用商標1及び引用商標2に係る商標権を侵害する旨警告し、当該行為の中止及び誠意ある回答を求める通知書を商標権者あてに送付した(甲第22号証)。
(イ)商標権者から受領した第1回回答書の内容
上記第1回通知書に対し、商標権者より、平成18年3月20日付配達証明郵便にて回答書が送られてきた(甲第23号証)。当該回答書によれば商標権者は、「ProGreens製品」の宣伝広告及び輸入行為を中止するとともに、「ProGreens製品」の取り扱いを止めるか、又は、商標権者が保有の登録商標「MultiProGreens/マルチプログリーン」(甲第24号証、商標登録第4091664号。なお、回答書において、当該登録商標が「MultiProGreens/マルチプログリーンズ」と記載されているが、誤記と思われる。)を使用するとのことであった。
(ウ)第1回回答書受領後から第2回通知書の発送まで
第1回回答書の内容を受けて、請求人は、その時点での商標権の行使を差し控え、実際に当該侵害行為が中止されるかどうか様子を見ることとした。
商標権者は、当該回答書が送られてきた後、少なくとも2006年6月12日の時点では、自社ウェブサイトにて「ProGreens製品」を「プログリーン」と称し、宣伝広告、輸入及び日本国内における販売行為を継続して行っていた(甲第25号証)。その後、請求人は、2007年4月12日の時点で、商標権者が「ProGreens」の文字の上段に「multi」の文字を付して「ProGreens製品」を販売していることを確認した(甲第26号証)。
商標権者が平成18年3月20日付回答書にて今後使用すると述べていた登録商標「MultiProGreens/マルチプログリーン」(商標登録第4091664号)は、欧文字「MultiProGreens」と片仮名「マルチプログリーン」とをそれぞれ同書同大に書し、上段に「MultiProGreens」の文字を、下段に「マルチプログリーン」の文字を配置した二段書きの構成をとるものである。
これに対し、使用商標「multi/ProGreens」の態様は、「multi」の文字書体と「ProGreens」の文字書体とが著しく異なっており、さらに「multi」の文字は「ProGreens」の文字に比して非常に小さく書されている。また、その構成より、視覚上、上段の「multi」の文字と下段の「ProGreens」の文字とが分断して把握されることは明らかである。そして、下段の「ProGreens」の文字部分が請求人の案出した造語である引用商標に類似することは上述のとおりである。
よって、商標権者による商標「multi/ProGreens」の使用は、引用商標に係る商標権侵害に該当する。
そして、これまでの商標権者との交渉の経緯及び引用商標の周知性に鑑みれば、商標権者の商標「multi/ProGreens」の使用により、請求人のPROGREEN製品と出所の混同を生ずるおそれは十分あるといえる。
そこで、請求人は、商標権者に対し、平成19年4月13日付配達証明郵便にて二度目の警告を行い、商標「multi/ProGreens」の使用が請求人保有の商標権を侵害する行為であるから、当該使用を中止し、誠意ある回答を行うよう求めた(甲第27号証)。
(エ)商標権者から受領した第2回回答書の内容
上記第2回通知書に対し、商標権者は、平成19年5月8日付配達証明郵便にて、上記「multi/ProGreens」の使用は引用商標に係る商標権を侵害するものではないとの見解を示すとともに、妥当な対応策がないか検討するとの回答書を請求人に送付した(甲第28号証)。当該回答後も、商標権者による商標「multi/ProGreens」の使用は、甲第14号証に示すとおり、「multi」の書体を変え、非常に小さく書した態様で継続されている。
(オ)小括
本件商標「multi/ProGreens」は上記二度目の警告後の平成19年5月1日に出願されたものである。
上述のとおり、本件商標の態様は、上段の「multi」の文字及び下段の「ProGreens」の文字とが同書同大に書されており、商標権者はこれを登録した。しかし、使用商標では「multi」の文字を殊更に小さく、一見したところ見えにくい大きさにし、その結果、周知の引用商標と出所の混同を生じるような商標態様にしたもので、これは、本件商標の出願時までの商標権者と請求人との交渉経緯を考慮すると、商標権者が、引用商標とは異なる本件商標を出願しておきながら、引用商標と混同を生じる使用商標を故意に使用するものであることは明らかである。
(5)結論
以上より、本件商標の商標権者は、故意に、本件商標に係る指定商品について本件商標に類似する商標の使用であって、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものであるから、本件商標は、商標法第51条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。

2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標と使用商標の類似性について
被請求人は、「本件商標と使用商標を対比すると、使用商標の上段が本件商標の上段に比べて小さく書されているものの、称呼・観念を共通にするものであるから、両者は社会通念上同一とみるべきである」旨主張する。
しかしながら、「登録商標と社会通念上同一の商標」という概念は商標法第50条に特有のものであって、他の規定における「登録商標」についてまで一律にその範囲を拡大させる一般的規定ではない(甲第29号証)。
不使用取消審判では、本来使用をしているからこそ保護を受けられるのであり、使用をしなければ取り消されてもやむをえないのに対し、不正使用取消審判では、商標の不当な使用によって一般大衆の利益が害されるような事態を防止し、かつ、そのような場合には当該商標権者に制裁を科する規定である。したがって、登録商標との同一性の概念を認めるとしても、専ら自己の登録商標との同一性のみを考慮して第三者の商標を考慮する必要がない商標法第50条第1項と、自己の登録商標と第三者の商標との関係を問題とした上で登録商標との同一性を論ずる必要がある商標法第51条第1項とでは、登録商標の同一性の範囲が異なることは当然である。
ところで、被請求人は、使用商標と商標「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」を自己の輸入販売に係る「スピルリナ・クロレラ・花粉・緑茶・海草・種子類・ほうれん草・朝鮮人参・アルファルファ・小麦・大麦・オート麦を主成分とした粉末状の加工食品」に一貫して使用している旨主張する。そこで、被請求人の使用商標の態様の変遷をみると、1996年の時点では、被請求人は、商標「Multi/ProGreens」を当該加工食品に使用している(乙第10号証)。しかし、その後使用商標を「ProGreens」に変更したことは被請求人も自認するところであり(甲第23号証)、2006年1月5日の時点では商標「ProGreens」の使用が確認できるものの、商標「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」の使用は見当たらない(甲第21号証)。そして、被請求人は、平成18年(2006年)2月21日付請求人の申し入れ(甲第22号証)に対して商標の使用態様を変更する旨の回答(平成18年3月20日付、甲第23号証)を行った後も、少なくとも2006年6月12日までは商標「ProGreens」を使用し続けた(甲第25号証)。その後、請求人の再度の申し入れに応じる形で使用態様を「multi/ProGreens」に変更するまでは、商標「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」が使用された痕跡は、答弁書において提出された証拠のいずれにも見当たらない。
ここで、1996年当時に使用されていた商標「Multi/ProGreens」の態様と、請求人の申し入れに応じて変更され、現在も使用されている「multi/ProGreens」の態様とを比較してみると、1996年当時の使用商標は乙第10号証のとおりであり、現在の使用商標は甲第14号証及び乙第27号証にしめすとおりである。1996年当時の使用商標も二段書きの構成を採り、上段の「Multi」の文字が下段の「ProGreens」の文字よりも比較的小さく書されているため、「Multi」の文字と「ProGreens」の文字とが視覚上分離して把握されうる。そして、「ProGreens」の文字部分と引用商標1の「PROGREEN」及び引用商標2の「プログリーン」とは類似することから、1996年当時の使用商標も商標全体として引用商標に類似する商標であるといえる。
しかしながら、現在の使用商標は、「multi」の文字が著しく小さく書され、また「PROGREEN」の文字と別書体、しかも白抜き書体というかなり特徴的な書体で書されているため、1996年当時の使用商標よりも更に「multi」の文字と「ProGreens」の文字が分離して把握され、その結果、引用商標により一層類似する態様となっている。このように、被請求人はその使用する商標の態様を引用商標と同一の態様に近づく方向に変更しており、このような変更は本件商標の使用上普通に行われる程度の変更を加えたものと解することはできず、商標法51条1項にいう「登録商標に類似する商標の使用」に当たると認めるのが相当である(東京高等裁判所平成9(行ケ)153審決取消請求事件(不正使用取消審判)判決同旨)。
以上より、被請求人の使用商標は本件商標に類似するものであって、本件商標の同一性の範囲内に属するものではないから、「被請求人の使用商標の使用は本件商標と同一の商標の使用である」との被請求人の主張は成り立たない。
(2)引用商標の著名性について
被請求人は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」について判示した「レールデュタン事件」(最高裁判所 平成10(行ヒ)85 審決取消請求事件)に基づいて、同法第51条にいう「混同を生ずるおそれ」を解釈している。しかしながら、商標法第4条第1項第15号は未登録周知商標の保護を目的としているのに対し、商標法第51条は、商標権者の不適切な商標の使用による「出所の混同」という不利益から一般公衆を保護することを目的とした規定である。このように、両者の法の趣旨が根本的に異なる以上、「混同を生ずるおそれ」の解釈も異なるのが当然であって、「レールデュタン事件」での商標法第4条第1項第15号に関する解釈を本件にも適用せよとの被請求人の主張は、商標法第51条の法の趣旨を誤ったものである。
そもそも、商標法第51条は、条文上、他人の商標の周知性は要件としていない。また、商標権者の不適切な商標の使用により一般公衆が害されるのを防止するとの商標法第51条の法の趣旨に鑑みれば、出所の混同を生ずるかどうかは当該他人の商標が周知であると未周知であるとを問わずに判断されるべきである。周知性は混同のおそれの有無の判断材料の一つに過ぎず、周知でなくても使用さえしていれば具体的混同を生ずるおそれを認定し得る場合もあるからである(甲第30号証)。
よって、「引用商標に周知性が認められないから具体的な出所の混同を生じるおそれはない」との被請求人の主張は成り立たない。
(3)引用商標と使用商標の類似性について
被請求人は、使用商標は「multi」の文字を上段に、「ProGreens」の文字を下段に配置して構成される二段書きの商標であるが、使用商標は被請求人商品の販売当初から、常に「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」の文字と共に使用されているため、全体として一連一体のものとして認識されるものであるから、引用商標とは外観、称呼及び観念のいずれの点から見ても非類似の商標である旨主張する。
しかし、甲第21号証及び甲第25号証には商標「ProGreens」のみが使用され、商標「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」は使用されていない。よって、被請求人は、一時期、商標「proGreens」のみを被請求人商品に使用し、商標「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」を使用していなかったと推測するに難くない。よって、使用商標が被請求人商品の販売当初から常に「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」の文字と共に使用されていたとの前提自体が成り立たない。
仮に、被請求人が使用商標と商標「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」とを常に使用しているとしても、使用商標は需要者の目に付き易い商品容器の正面中央部分に大きく目立つ態様で付されているのに対し、「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」の文字は当該容器背面に小さく付されているに過ぎない。需要者は必ずしも商品を手にとって当該容器全体を隈なく確認するとは限らず、当該容器の正面部分のみを見て商標を把握する者も多いのが通常であるから、これらの商標が需要者に常に共に把握されているとは言い難い。
以上より、使用商標が常に「multiProGreens」及び「マルチプログリーン」の文字と共に使用されていることを前提として使用商標が一連一体のものとして認識されるとの被請求人の主張は成り立たない。
そして、(a)使用商標が「multi」の文字部分が「ProGreens」の文字部分と異なる書体で上下段に分かれて書され、しかも「ProGreens」の文字部分と比べて著しく小さく書されていることから、各文字部分が外観上分離して把握されること、(b)使用商標の要部が当該「proGreens」の文字部分であると認識されること、及び、(c)使用商標の要部である「ProGreens」の文字部分と引用商標1の「PROGREEN」及び引用商標2の「プログリーン」とが類似するため、商標全体としても使用商標が引用商標と類似する。
上記(a)及び(b)について、被請求人は、「multi」の語が接頭語という性質から後続の語と一連一体で使用されるものであると主張する。しかし、「multi」の文字部分と「ProGreens」の文字部分とが外観上分離して把握されることは、その使用態様より明らかである。
また、複数の語の結合からなる商標において、各語が有する識別力の強さに強弱がある場合は、通常、識別力の強い語(文字部分)が出所識別機能を果たしている。そして本件審判請求書において述べたとおり、いわゆる「健康食品」や「サプリメント」の分野における商品については「multi」の語が殆ど識別力を有さないのに対し、「ProGreens」の語は造語であって強い識別力を有するから、使用商標において出所識別機能を果たす部分(商標の要部)は「ProGreens」の文字部分であると考えるのが自然である。
上記(c)については、使用商標の要部である「ProGreens」と実質的に同一の商標である国際登録第935803号「PROGREENS」(甲第31号証)の審査において、当該商標が引用商標1の「PROGREEN」及び引用商標2の「プログリーン」と類似するとの拒絶査定(発送日:2008年12月11日)が確定していることからも明らかである(甲第32号証及び同第33号証)。
以上より、使用商標と引用商標とは類似するものであり、これに反する被請求人の主張は成り立たない。
(4)取引の実情について
ア 被請求人は、請求人商品と被請求人商品とは使用している原材料を全く異にし、パッケージ及び使用形態においても異なっているから、両商品の出所混同が生じるおそれはない旨主張する。
しかし、被請求人商品に関する被請求人のウェブサイトをプリントアウトした甲第14号証によれば、「美味しい召し上がり方」として、「朝食前に付属のスプーン2杯分(8.8g)を約240ccの水によく溶かし、1日1杯を目安にお召し上がりください。」との文章が記載され、絵による解説も行われている。この「水に溶かして飲む」という摂取方法(使用方法)は、請求人商品の摂取方法と同じである。
また、服用の適否を判断するのに専門的な知識を必要とする薬剤と異なり、いわゆる健康食品は専門的知識に乏しい一般消費者であっても手軽に摂取できることがセールスポイントの一つである。そのため、健康食品の需要者層は、健康に特に気を使い、やや専門的な知識を有する人々から、健康に特に気を使っているわけではないが、身体に良いと聞いた物はとりあえず試してみるといったレベルの人々にまで広がっている。このような様々なレベルの需要者の全員が原材料を吟味した上で健康商品を購入しているとは到底考えられず、むしろ、商品名(商標)を口コミで知ることにより、当該商品名のみを頼りに商品を購入する需要者も多数存在すると考えるのが妥当である。そうとすれば、被請求人の使用商標と引用商標とが類似する本件の場合は、その原材料の相違にかかわらず、これらの商標を付した商品の間で出所の混同が生じるおそれが十分あるといえる。特に、被請求人が答弁書において自認するとおり、被請求人商品は口コミによる紹介、又は、インターネットを通じた通信販売の手法を取って販売されており、このような販売形態では需要者が商品購入の際に専門家の意見を聞く機会を得ることは困難である。よって、需要者が商品名のみを頼りにインターネット検索を行い、引用商標と類似する使用商標が付された被請求人商品を請求人商品であると誤って認識し、購入するおそれは十分あると考えられる。
イ 被請求人による使用商標の使用により被請求人商品と請求人商品の間に出所の混同が現実に生じていることの証拠として請求人が提出した甲第20号証(電子メールのプリントアウト)について、被請求人は、当該メールの日付が2008年11月14日付で発信されたものであるから、本件審判請求に向けて用意されたものであって信憑性がない旨主張する。
しかしながら、甲第20号証は、引用商標1及び引用商標2が商標登録を受けたことを機に、第三者による引用商標に類似する商標の使用への対応策を検討する過程で請求人が行った情報収集活動で入手されたものであり、メールの発信日付が本件審判請求と近接しているのはむしろ当然のことといえる。
そして、そのこと自体は甲第20号証に示すメール内容の信憑性に何ら疑いを生じさせるものではない。
(5)故意について
被請求人は、引用商標と混同を生じるおそれのある使用商標を本件商標の指定商品に使用することにつき、具体的故意性がなかった旨主張する。
ここで、第51条にいう「故意」とは、「商標権の類似の範囲内での使用の結果、誤認又は混同を生ずることの認識があること」をいうと解される(甲第30号証及び同第34号証)。これを本件に当てはめて検討すると、被請求人の使用商標と引用商標との類似性に鑑みれば混同が生じるおそれがあることは明らかであること、また、請求人と被請求人との交渉の経緯から、被請求人は、使用商標を自己の商品に使用することにより請求人商品との間で出所の混同が生じるおそれがあることは十分認識していたというべきである。
さらに、被請求人は、請求人から商標「ProGreens」の使用中止の申し入れを受けて商標の使用態様を変更する際、「Multi」の文字部分と「ProGreens」の文字部分の書体が同一であった1996年当時の使用商標に戻すのではなく、あえて「multi」の文字部分を「ProGreens」の文字部分よりも著しく小さく、しかも白抜き書体というかなり特徴的な書体で書した現在の使用態様を採用した。これには、商標全体から「ProGreens」の文字部分が分離して認識、把握されるような態様に商標を変更することにより、商標変更後も被請求人商品と請求人商品との間で出所の混同が生じるおそれのある状態を維持しようという被請求人の意図が働いたものと容易に推測できる。
これらの事実より、請求人商品と混同を生じさせるおそれのある商標の使用につき、被請求人が故意であったことが十分推認できるものであるから、「引用商標と混同を生じるおそれのある使用商標を本件商標の指定商品に使用することについて具体的故意性がなかった」との被請求人の主張は成り立たない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第34号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 答弁の理由
(1)商標法第51条第1項の趣旨について
商標法第51条第1項の趣旨は、「商標権者が、故意に、指定商品についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品に類似する商品についての登録商標と同一又はこれに類似する商標を使用して、商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをした場合の、商標権者に対する制裁として、その商標の登録を取消すというものである。すなわち、被請求人が上記類似範囲にある商標の使用をすることにより、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるものをしたこと、及びその使用について故意があったこと、つまり商品の出所の混同を生じさせることを認識していたことが要件となると解される。」
そこで、被請求人は、上記を踏まえその観点から以下のとおり答弁する。
(2)被請求人の本件商標の使用について
ア 1995年(平成7年10月)に被請求人は、アメリカのUnion Nature Companyを通じて、Allergy Research Group/NutriCology社(以下「製造元」という。)から「ProGreens」(以下「製造元商標」という。)なる健康補助食品をサンプルで輸入、販売を開始した(乙第1号証ないし乙第4号証)。
しかし、間もなく日本において食品として認可されない物質が含まれていたことがわかり、製造元にその物質を除いて製造するよう要請したものの、製造元は製造元商標で該製品を製造販売していたことから、被請求人は同一名で輸入することができず、1996年1月に「multi」を付加することで輸入、販売を再開することができた(乙第5号証ないし乙第7号証、乙第8号証の1、2)。それ以来現在まで販売を継続している。
そこで、1995年(平成7年12月8日)に「multi」を付加した商標「MultiProGreens/マルチプログリーン」(以下「販売元商標」という。)を出願し、1997年(平成9年12月12日)に設定登録がなされた(乙第9号証)。
イ 請求人の主張する本件商標が付された商品は、その容器、パンフレット、通関の請求書などから、3とおりの表示で商標を使用しており、その表記は販売当初の1996年からほぼ変わらない。また、それらの表記については、次に挙げる(a)ないし(c)である(乙第10号証ないし乙第12号証)。
(a)本件商標の使用商標を使用
(b)販売元商標の上段前半部を欧文字の小文字、後半部を欧文字の大文字と小文字を組合わせて「multiProGreens」と横書きしてなる商標を使用(以下「販売元使用商標1」という。)
(c)販売元商標の下段を片仮名で「マルチプログリーン」と横書きしてなる商標を使用(以下「販売元使用商標2」という。)
そこで(a)の本件商標と使用商標を対比すると、使用商標の上段が本件商標の上段に比べて小さく書しているものの、称呼、観念を共通にするものであるから、両者は社会通念上同一とみるべきである。
また、上記(b)は販売元商標の上段前半部の文字の大きさ、書体に多少変化を加えた同一の文字からなるものであり、称呼を共通にするうえ、観念上の変動もなく、(c)は販売元商標の下段と同一である。したがって、販売元商標の上段と下段を分離して使用する程度の使用は、社会通念上観念、称呼において同一と解して妨げはないものとみるべきである。
よって、(a)と本件商標及び(b)、(c)と販売元商標の使用は、取引者又は需要者並びに看者にとって、ことさら別異のものとして認識されるものではなく、社会通念上同一の使用を本件商標の指定商品に使用しているといえる。
ウ また、被請求人のパンフレットには、「multiProGreens(マルチプログリーン)は、NutriCology社製品を製造している専属工場と被請求人が、共同で日本市場向けに研究開発したグリーンフードです。」と記載している(乙第12号証)。
エ また、該商品の販売方法は口コミによる紹介、インターネットショッピングモールにおいて一般需要者向けの通信販売である。
(3)商品の出所の混同について
使用商標と引用商標とは具体的に誤認混同は生じない。
混同を生ずるおそれ」は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等との他人の業務に係る商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁判所平成10(行ヒ)85審決取消請求事件)。
これらを踏まえて、引用商標が取引者及び需要者の間に周知性は認められないこと、また、両者が商品の出所について誤認混同を生じさせないことなどを以下に述べる。
ア 引用商標の著名性について
引用商標に著名性は認められない。
(ア)請求人は、引用商標を付した商品を1991年(平成3年)より販売し、本件商標の出願時(2007年5月1日)には既に日本国内における該商品の取引者の間で周知となっている旨主張しているが、被請求人は、1995年(平成7年12月)に既に販売元商標を出願し、1996年1月には販売元使用商標1及び2並びに使用商標を付した商品を販売していることから、請求人は、本件商標の出願時ではなく、むしろ販売元商標の出願時に既に日本国内において周知著名であったことを主張すべきである。
(イ)そこで、被請求人は販売元商標の出願時までの引用商標の周知性について検討する上で、まず、請求人が甲第2号証で証明している1991年から1995年4月までの売上個数をみることとする。
(a)1991年5月?1992年4月までの年間の売上個数は、4,064個(月平均338個)、
(b)1992年5月?1993年4月は、42,123個(月平均3,510個)、
(c)1993年5月?1994年4月は、67,572個(月平均5,631個)、
(d)1994年5月?1995年4月は、55,479個(月平均4,623個)、
しかし、請求人の売上個数は、業界の売れ行きから勘案すると決して高売上の商品とは言えず、まして人気商品ということは出来ない。また、請求人の販売先数からすれば非常に少ない売上個数であるから、それだけで到底周知の商品ということはできない。
例えば、人気のある著名サプリメント「キュウサイの青汁」についてであるが、2000年4月13日の決算によると2月までの売上は126億4100万円、単価6,300円として年間販売個数が約200万本(月間17万本)、また、「ファンケルの青汁」は、2008年12月度の月次売上をみると3億円、単価約6,500円として、月間約46,000個である。(乙第13号証、乙第14号証)。
(ウ)さらに、上記(イ)のデータは、請求人が独自で作成したものであり、甲第6号証は使用開始日を裏づける証拠とはいえず、また、販売元商標出願時に周知著名であったとする証拠ともいえない。
(エ)したがって、被請求人が1996年から販売元商標及び本件商標を使用していたことから、それ以前に引用商標が周知であったとの主張は認められず、まして請求人が本件商標の登録をもってそれ以前に周知性があるなどとの主張は成り立たない。
仮に引用商標が本件商標の登録前に周知性があったと主張しても、上記(イ)のとおり甲第3号証の薬店、薬局の割合に比べると売上数量が非常に少な過ぎるし、また、自社発行紙や請求人のAGA会員誌等の掲載を以って周知性があるとの主張は認められない。
イ 引用商標1及び2と使用商標の類似性について
引用商標と使用商標とは非類似の商標である。
請求人は、被請求人の商品の容器正面に表示されている使用商標のうち、上段の「multi」と下段の「ProGreens」の書体が著しく異なり、さらに上段は下段に比べて非常に小さく書され、視覚上、上段と下段とは分離して把握される上、上段の「multi」は、複数の栄養素を材料とするサプリメントであることを表示する語であるから、自他商品の識別力が極めて弱く、出所標識としての機能を果たす部分は下段であるから、引用商標と使用商標とは類似すると主張している。そこで被請求人は、以下のとおり反論する。
(ア)まず、使用商標は本件商標の構成欧文字と同一の欧文字綴りであり、互いに二段に表記され、上段が下段より小さく表示されているものの、外観において類似し、観念、称呼において変動のない同一のものであり、上記(2)イのとおりである。
(イ)次に、使用商標の付された商品の容器は、いずれも使用商標と販売元使用商標1及び2が表示されており、使用商標は販売元使用商標1及び2と相俟って、一連一体のものとして認識されるとみるのが自然である。また、商品のパンフレットにおける商品の説明には、上記商品の容器と共に販売元使用商標1及び2の文字が常に表示されており、また、日刊ゲンダイの新聞に掲載された際にも「マルチプログリーン」の表示がなされ、文中の説明においてもそのように表示されているから、使用商標は、尚一層一連一体のものとして認識されるというべきである。
また、これらの方法によって、被請求人は、使用商標を表示するにあたり、「マルチプログリーン」と一連に称呼するように一般公衆に訴え続けており、下段のみを強調して「ProGreens」のみを記載し、「マルチプログリーン」という名称の印象を損なうような実情は生じさせていない(乙第10号証ないし乙第12号証、乙第28号証)。
(ウ)一方、各引用商標は、審判請求書記載のとおり、引用商標1はゴシック体の欧文字の横書き、引用商標2はゴシック体の片仮名の横書きである(乙第15号証)。
(エ)してみると、使用商標はその構成文字全体から「マルチプログリーンズ」の称呼のみが生じるとみることができるのに対し、各引用商標からは「プログリーン」の称呼が生ずるから、その構成音数及び音構成から明らかに相違するものでり、両者は互いに聞き誤る虞のないものである。
(オ)したがって、引用商標と使用商標の構成は、上記のとおりであるから、両者は外観において十分に区別し得るものであり、観念においては特定の観念が生じないので、引用商標と使用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れる虞のない非類似の商標といえる。
(カ)その他、請求人は使用商標の上段「multi」は、複数の栄養素を材料とするサプリメントであることを表示する語であるから、自他商品の識別力が極めて弱いと主張している。
そもそも、「multi」は文法上接頭語の役割を果たすものであり、且つ、一般に馴染み深く使用頻度の高い、3文字のいたって短い単語であり、全体を通して、流暢に且つ円滑に語呂よく発音できることから、たとえ「multi」を小さく表記しているとしても、上段と下段を切離して称呼させる適切な理由は見当たらない(乙第16号証)。
例えば「マルチ」が付く用語として、1.「マルチビタミン」はもとより、2.「マルチプレイヤー」、3.「マルチキャスト」、4.「マルチ商法」、5.「マルチスウインドウ」、6.「マルチタスク」、7.「マルチタレント」、8.「マルチメディア」、9.「マルチユーザー」、10.「マルチタップ」等が挙げられ、それらをみると、「マルチ」の有無により、これらは一般的に観念・用途の異なるものとして認識され、通常の社会において双方を完全に使い分けているのが現状であるから、むしろ「マルチ」が単独で使用されている例は極めて少なく、接頭語という性質から一連一体で使用する単語であるということがわかる。このような事情からも、使用商標を上段、下段ともに切離す理由はなく、まして請求人のいう「multi」が自他識別力の極めて弱いことばであれば、上記のように「multi」の有無で異なる意味の「ことば」が多数存在する現状などありえないことである(乙第17の号証1及び2ないし乙第26号証の1及び2)。
また、使用商標の下段と各引用商標を比較すると、使用商標の語尾は「ズ」であり、「ズ」は有声摩擦子音と母音を結合した濁音であるのに対し、各引用商標の語尾「ン」は有声の気息を鼻から漏らして発する鼻音であるから、全体を通して語尾の摩擦した濁音と鼻音の違いは大きい。したがって、使用商標の下段と各請求人商標とは、単なる語尾「ズ」の有無のみで判断されるものではなく、上述のとおり、むしろ「ズ」の有無が称呼全体に大きな影響を及ぼすものであるから、両者は聴別し得るとみるのが相当である。
ウ 取引の実情について
(ア)被請求人の容器に付されている本件商標の上段「multi」は、小さく白抜きや黒字の欧文字の小文字で、下段の「ProGreens」は上段より大きく、前半の「Pro」は赤色、後半の「Greens」は緑色等で記載しており、円筒のプラスチックの蓋付容器で容器そのものに使用商標を付し、蓋上にも同様に記載しており、更に、販売元使用商標1が容器の裏側に使用商標と同様の色の配分で表示されている。また、パンフレットには使用商標、販売元使用商標1及び2が表示されている(乙第27号証)。
(イ)また、使用商標を付した商品は、販売元使用商標1及び2と共に販売当初から使用されているので、需要者は、該商品を請求人商品と誤認混同するはずはない。
(ウ)また、使用商標を付した商品は、大麦若葉を主原料としたケール加工食品と違い、野菜やハーブに加え、藻や海藻等多くの食物の栄養素をバランスよく取り入れた粉末状の加工食品で、スプーンを用いて食する商品である。
(エ)一方、引用商標2の「プログリーン」を付した商品は、四角の箱に、黒字のゴシック体の片仮名文字で箱一杯に大きく横書きし、左下方に小さく、引用商標1の「PROGREEN」が記載され、箱の大きさにより右側や真ん中にカクテルグラスが描かれている。また、引用商標を付した商品は、一つ一つがスティック状になっており、大麦若葉を使用していることをアピールしている健康食品である(乙第15号証)。
請求人は該パッケージのデザインについて、販売開始当時から現在に至るまで変更されていないと主張している(審判請求書6.(1)(i)最終行)。
(オ)上記のとおり、取扱っている商品について両者は、使用している原材料を全く異にし、パッケージ及び使用形態においても異なっているうえ、両者は長期に亘って同一の態様でそれぞれの登録商標を使用しているが、健康食品を取り扱う業者又はそれを利用する需要者は、使用している原材料について吟味するのが第1条件であり、パッケージや商標、メーカーから選ぶのではない。しかも被請求人は、使用商標及び販売元使用商標1及び2を付した商品が使用している材料は、「大麦若葉を主原料としたケール加工食品とは違う」と明記しているのに対し、請求人の商品は、「大麦若葉の元祖」と謳っている。
そのような事情から、取引者又は需要者は、両者の商品を誤認混同して、販売、需要等に影響をきたす虞はなく、また、両者の取引関係においても、請求人の取引相手は薬局、薬店のみで、その薬店、薬局から説明を受けて需要者の元に商品が入る方法であり、被請求人は口コミによる紹介、インターネットショッピングモールで直接需要者が確認して商品が渡る通信販売の方法であるから、取引者及び需要者において誤認混同を生じさせる虞はない。
(カ)また、請求人は、甲第20号証において、混同を生じている旨主張しているが、該証拠は、2008年11月14日に発信したメールであり、審判請求時に向けて用意されたものとみることができる。実際、被請求人が1996年から現在に至るまで販売を継続していることからみて、商品の流通において具体的に混同を生じさせているとはいえず、その主張の信憑性もない。
(キ)したがって、出所の混同の観点からみても、混同を生ずるとは考えられないから、請求人の主張は、本件商標を取消すべき理由に当たらない。
(4)故意について
被請求人に故意の事実はない。
ア 具体的故意性
請求人は、被請求人が本件使用行為により請求人の業務に係る商品と混同を生じる虞があることについて故意がある。と主張するが、
商標法第51条第1項の規定による審判請求は、ただ単に、類似した商標を有する者との関係を調整する規定ではなく、一般公衆の利益を害するような登録商標の使用をした場合についての制裁規定と解される。
この点について被請求人は以下のとおり答弁する。
(ア)上記のとおり「multiProGreens(マルチプログリーン)は、NutriCology社製品を製造している専属工場と被請求人が、共同で日本市場向けに研究開発した商品である。」との記載のとおり、被請求人の代表者小西理が1995年に製造元と知り合い、該商品を日本向に取り入れたものである。
(イ)被請求人は、引用商標の出願前の1995年12月に販売元商標を出願しており、1996年1月から継続して使用商標及び販売元使用商標を使用している(乙第28号証)。そして、発売数ヶ月後の同年5月9日の日刊ゲンダイに被請求人の「マルチ・プログリーン」が掲載されておりその評判を表している。当然パッケージには使用商標が付されている。このように、販売当初から被請求人は該商標の印象を損なうような実情を生じさせておらず、現在においても同様である。
また、新聞記事に「海外で評判の健康食品・・・」とあるように、1995年8月2日付けペンシルベニア在住の需要者から製造元社長あてへ、製造元製品は非常に効き目があることを示す感謝の手紙が届いている。(乙第29号証)。
(ウ)請求人が主張する甲第21号証の記載についての被請求人の反論は上記(2)ア及びウのとおりである。
しかし、製造元は、製造元商標を付した製品を日本向けに認可されている物質に置き換えて輸出が開始できたことから、被請求人は確かに製造元の製品を輸入し、製造元商標を付した製品と被請求人の「multi」を付加した商標を付した商品とを並行して取扱っていた。甲第21号証はそのときの被請求人のホームページであり、その時期に請求人から甲第22号証の通知を受けた。
しかし、甲第23号証で被請求人は、請求人が「プログリーン」の登録商標を有し、そのことが侵害行為にあたるとは知らずにいたこと、甲第22号証の通知を受けた後、製造元商標を付した製品の販売を中止しホームページから削除して、従来どおり使用商標及び販売元使用商標1及び2を付した「マルチプログリーン」の商品のみの取扱いを徹底して販売を継続した(乙第30号証)。
(エ)被請求人は、使用商標を付した商品が13年の継続的販売の中、単に使用商標の下段のみの称呼をもって需要者に認識されている事実はなく、むしろ上記(3)イ(イ)に記載のとおり「マルチプログリーン」として需要者の間に認識されていることは、その容器、パンフレット、新聞掲載、インターネットショッピングモールでの通信販売等からも明らかである(乙第31号証)。
(オ)しかし、製造元から13年余りにも亘って輸入、販売をしている被請求人に対し、請求人は引用商標が登録になったことを機に、2回に亘る警告書を発してるが、被請求人は請求人に対し誠意ある回答をしてきた。だが、1996年の使用開始から実質的に同一の販売元使用商標1及び2と使用商標を継続的に使用している被請求人に対し、更に「引用商標と混同を生じる使用商標を被請求人が故意に使用する」と主張する取消審判を請求した。
被請求人は、13年余りもの間、販売元商標及び本件商標の使用をしている以上、引用商標を侵害するために本件商標を故意に使用して、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせたことなど全くあり得ない。まして請求人の商標をフリーライドする目的などあるはずがない。
(カ)また、請求人の販売網は、薬店、薬局であり、被請求人の販売方法は口コミによる紹介、インターネットショッピングモールでの個人向け販売であるから、被請求人が販売開始当時、請求人の販売する商品が薬店・薬局に販売されていることを知るはずも無く、また、請求人の通知後においても、被請求人の商品は一貫して「マルチプログリーン」であるから、被請求人は引用商標を利用してフリーラドしようなどは考えにも及ばない。
むしろフリーライドの目的ではないかとして被請求人の業務を排除する行為は、引用商標を出願する9年も前から販売している被請求人の業務を妨害するものである。
(キ)したがって、請求人の主張からは、被請求人の商標の使用によって、請求人の業務に係る商品と出所の混同が生じた事実、その結果一般公衆を害するに足る事実があるとはいえず、また、被請求人はそのような行為をしたこともない。
(ク)念のため、製造元の「ProGreens製品」は、日本の厚生省の認可がおりてからというもの、並行輸入する個人輸入者が多くなり、ホームページでみられるものは被請求人の取り扱いとは異なる。
(5)結び
以上の理由から、被請求人の行為は商標法第51条第1項の規定には該当せず、本件商標の登録は同条の規定により取消されるべきものではない。

2 弁駁に対する答弁
(1)本件商標と使用商標の同一について
本件商標と使用商標とは同一である。
被請求人が述べた本件商標と使用商標について、請求人は商標法第50条第1項の「登録商標と社会通念上同一の商標」の適用は、登録商標との同一性の概念を認めるとしても、専ら自己の登録商標との同一性のみを考慮して第三者の商標を考慮する必要はないと主張しているが、被請求人においても同様に、自己の登録商標(本件商標)と使用商標との同?性について主張しているのであって、第三者の商標との関係において同?性を主張している訳ではない。
したがって、答弁書の主張のとおりであるが、本件商標と使用商標とを対比すると、全体の構成文字は同一であり、また、下段の「ProGrees」の「P」の文字は上段の「m」の文字と同一並びから出発していることから、両者は文字構成の態様も同一であり、称呼を共通にするうえ、観念の変動もないので、使用商標は本件商標とは同一である。
上記の通り本件商標と使用商標とは同一であるから、本件商標は、商標法第51条第1項にいう「商標権者が故意に登録商標に類似する商標の使用であって」との要件を充足しない。
(2)商品の出所の混同について
使用商標は請求人の業務に係る商品等と誤認混同を生じさせる畏れはない。
商標法第51条第1項にいう「商標権者が故意に登録商標に類似する商標の使用であって、他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」に当たるためには、使用に係る商標が他人の商標と類似するというだけでは足りず、その具体的表示態様が他人の業務に係る商品等との混同を生じさせる虞を有するものであることが必要と解される。
ア 使用商標と引用商標の類似性について
(ア)答弁書の「1 答弁の理由」(3)イ「引用商標1及び2と使用商標の類似性について」の(ア)?(カ)記載のとおりである。
(イ)使用商標は、需要者又は取引者の間に、上段の「multi」が商品の品質を表すものとして特別に分離し、「ProGreens」の文字のみをもって取引するという理由は見当たらず、また、文法上「multi」の性質から、使用商標は全体として特定の観念の生じない一連一体の造語として把握できる。
(ウ)さらに、使用商標は、発売当初から日刊ゲンダイに掲載された後も、主に口コミで販売し普及させてきた経緯があるから、「マルチプログリーン」の名を損なうような使用はしていない。
因みに、請求人は「ProGreens」が要部であると主張するうえでの証拠として、甲第31号証を挙げているが、甲第31号証の商標は単なる「ProGreens」であって、その前後、上下に何らかの付加した単語は挿入されていないから、事案が異なるばかりでなく本件と何ら関わりないから、そのような例を挙げて要部の主張をすること自体意味をなさない。
(エ)したがって、使用商標と引用商標とは外観に大きな差異を生じ、観念においては造語であるから特定の観念が生じず、称呼においては使用商標は一連一体の称呼が生じることから、使用商標と引用商標とは相紛れる虞のない非類似の商標であるといえる。
イ 具体的な「混同」の事実について(使用商標の具体的使用態様と、請求人の業務に係る商品等の取引の実情)
(ア)使用商標の具体的使用態様について
a 使用商標の使用態様は答弁書の「1 答弁の理由」(3)ウ「取引の実情について」の(ア)?(キ)記載の主張どおりである。
さらに述べると、容器の右上には黄色の丸の中に英文字が記載され、容器の表面以外(容器裏面、パンフレット、新聞記事掲載、インターネットショッピングモール、伝票等)では使用商標は横書き一連一体で使用しているから(販売元商標1.2)、引用商標とは誤認混同は生じない。
ましてや、容器の表面の表示については、以下のとおりアメリカの製造元商標に由来するものであるから、引用商標を付した商品とは誤認混同は生じない。
b 使用商標の使用態様は、1995年(平成7年10月)にアメリカのアレルギー・リサーチ・グループ社の一般向けサプリメントとしてニュートリコロジー社から製造元商標を付した商品の輸入、販売を開始したが、認可されない物質が含まれていたためその物質を除き、商標名においても製造元との差別化を図る必要があったことから「Multi」を付加して、同年12月8日に第30類で商標「MultiProGreens/マルチプログリーン」と二段で横書きしてなる商標を1995年12月8日に出願し1997年12日12日に、登録第4091664号商標として設定登録を受けた経緯がある。
c ここで、製造元商標を付した商品についてみると、円筒のプラスチック容器の表面のほぼ中央に、製造元商標の前半部「Pro」は赤色の欧文字の大文字と小文字で表記し、後半部「Greens」は緑色の欧文字の大文字と小文字で表記し、容器右上には黄色の丸の中に英文字が記載されている(乙第32号証)。
d そこで、製造元商標を付した商品と被請求人の使用商標を付した商品を対比すると、製造元商標と被請求人の使用商標の下段とは同一の文字、同一の色使いであり、容器においても黄色の丸のデザインの位置や中の文字についても同一であることがわかる。
e 被請求人は、発売当初の製造元商標の使用状況の変化に対応させるために、上記登録商標の欧文字部分を製造元商標のデザインに由来し、製造元商標と区別するために、上段に「multi」を併記して使用し、現在に至っていることがわかる。即ち使用商標はその発売当初から「プログリーン」に「マルチ」を付加して、使用商標を「マルチプログリーン」として需要者に販売しているのである。
f 被請求人のプラスチック容器に記載されている使用商標は、容器の表面以外(容器裏面、パンフレット、インタネット上の紹介、伝票等)では常に横書きにして「multiProGreens」又は「マルチプログリーン」と記載していから、需要者は該商品をマルチプログリーンと認識して購入する。
g また、販売先は、前答弁書のウ「取引の実情について」(オ)のとおり、口コミ、インターネットショッピングモールである。
(イ)引用商標の具体的使用態様について
a 各引用商標表示は前答弁書のウ「取引の実情について」(エ)記載のとおりである。
b また、その取引先は、(オ)記載のとおり、薬局、薬店のみであるから、かなり特化した場所での販売である。
(ウ)上記を前提として、使用商標の具体的使用態様が請求人の業務に係る商品等との混同を生じさせる虞を有しない。
a 需要者が使用商標を付した商品を購入しようとするときには、容器表面の使用商標とともに「multiProGreens」、「マルチプログリーン」の文字を見ることになる。そして一般に健康食品を購入する際には、むしろプラスチック容器の表面のみに付された使用商標のみを見る者は少なく、興味本位で求めるような安価なものでもないことから、その商品の効能、材料、使用方法に注意を払うことが容易に推測でき、上段の「multi」と下段の「ProGreens」を組み合わせて成る使用商標が「マルチプログリーン」であることは需要者に容易に理解できる。
b 請求人は、引用商標の使用の欄で、引用商標について「発売開始当時から現在に至るまでパッケージのデザインは変更されていない」と記載しており、特化された販売店いわゆる薬局・薬店等の取引者又はそれを購入する需要者の間には、該商標およびパッケージのイメージは定着されたものであると考えられる。
c 被請求人は、ホームページ上の使用商標を付した商品の紹介において「multProGreens(マルチプログリーン)は、NutriGology社製品を製造している専属工場と(株)エム・エヌ・ジャパンが、共同で日本市場向けに開発したグリーンフードです。」と記載している。勿論該商品はアメリカからの輸入商品であり、請求人の日本国内で製造した商品とは明らかに違いがあるから、取引者又は需要者の間に両者は出所の混同は生じない。
d 使用商標をインターネットで検索すると、被請求人の使用商標を付した商品のみが掲載され、請求人の引用商標を付した商品は見当たらない。
e また、請求人の甲第20号証の内容においても使用商標と引用商標が誤認混同を生じるとする具体的根拠はない。
f 従って、使用商標が「multiProGreens」であることを知っている需要者はもちろんであるが、一般に使用商標を付した商品に接した需要者に対し、使用商標の具体的使用態様が請求人の業務に係る商品等との混同を生じさせる虞はない。
(エ)引用商標の周知性について
請求人は自らが、審判請求書の(1)「引用商標の著名性について」中の「エ 小括」にて、「本件商標の出願時には既に日本国内における当該商品の取引者の間で周知となっている。」と主張したのであって、その主張に対し被請求人は、請求人の主張する周知性は認められないと主張したのである。請求人はなぜ弁駁書にて、甲第30号証のような証拠を提示してきたのか理解に苦しむ。むしろ請求人は、審判請求書中で主張した周知性を自らが否定したことになるから、被請求人の主張のとおり引用商標は周知性がない。
(オ)以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品等と混同を生じさせる虞はないから、商標法第51条第1項にいう「他人の業務に係る商品等若しくは役務と混同を生ずるもの」との要件を充足しない。
(3)故意の欠如について
まず、被請求人は使用商標について、答弁書の具体的故意性の中で主張しているとおりであるが、更に被請求人は次のとおり主張する。
ア 請求人は、1996年に日刊ゲンダイに掲載されている使用商標(乙第10号証)が、その後「ProGreens」に変更し、2006年1月15日の時点で商標「ProGreens」の使用が認められ、少なくとも同年6月12日まで上記商標を使用し、使用商標が使用されるまで、販売元使用商標1及び2を使用した痕跡が見当たらない旨主張している。
これに対し被請求人は、答弁書の「1 答弁の理由」の「(4)故意について」ア(ウ)で述べているとおり、請求人の上記の主張は誤りである。すなわち、製造元が日本に認可される物質を混入して日本向けに輸出が開始できたので、被請求人は早速、製造元商標の付された商品を輸入しインターネットのショッピングモールで販売しながら、元々口コミで販売していた使用商標を付した商品も並行して口コミで販売していたから、使用商標を「ProGreens」に変更したとする請求人の主張は誤りである。
乙第11、12号証は、当時使用していたチラシと商品であり、乙第28号証がその伝票である。そして、被請求人は甲第22号証の通知後、速やかに「ProGreens」の商標を付した商品を中止し、元々口コミで販売していた使用商標のみの販売を継続した。
したがって、被請求人は13年間継続的に使用商標を付した商品を販売してきた中で、需要者に対しその容器、パンフレット、新聞掲載、インターネットショッピングモール、伝票等からみても、該商標の印象を損なうような実情を生じさせておらず、現在においても同様である。
イ 被請求人は、アメリカの製造元商標を付した商品を輸入、販売しかけたところ、製造元の「ProGreens」の成分と異なることから商品名を同一にする訳にはいかず「マルチ」を付加して「multi/ProGreens」としたことは、上記(2)イ(ア)b記載のとおりである。そこで、製造元商標を付した商品をみると使用商標の下段は製造元商標の文字とデザインは同一であり、プラスチック容器の黄色の丸に英文字はまさしく同デザインであるから、全体的に製造元商標に由来してデザインした容器であることが明らかである。寧ろそうすることによって、被請求人は製造元の優れた商品を取り扱っていることを世にアピールしてきたので、請求人の登録商標を故意にデザインし使用した訳ではない(乙第32号証)。
ウ 被請求人は、使用商標を発売当初の製造元商標の使用状況に対応させるために、上記登録商標の欧文字部分を製造元商標に由来してデザイン化して、二段に併記して使用している。即ち使用商標はその発売当初から「プログリーン」に「マルチ」を付加し「マルチプログリーン」として需要者に販売しているのであるから、請求人のいう被請求人商品と請求人商品との間で出所の混同が生じる虞のある状態を維持しようという意図など全くない。
エ また、被請求人の使用商標を付した商品の紹介頁に、「ミス・ユニバース・ジャパン(MUJI)公式栄養コンサルタントである、エリカ・アンギャルさんの著書『世界一の美女になるダイエット』に製造元商標を付した商品が紹介されました。」と記載している(乙第33号証)。このことからも、被請求人は故意に請求人の商標に近づけようとする意図は全くないことは明確である。
因みに、上記著書の製造元商標を付した商品は、アレルギー・リサーチ、グループ社製と記載されているが、ニュートリコロジー社とアレルギー・リサーチ・グループ社との関係は、一般の卸、小売向け製品の販売と医師健康管理専門家向け製品の販売、いわゆるマーケティングの違いにより分担されているだけで、実質的には同?会社である(乙第34号証)。
オ これらのことから、被請求人は、引用商標を故意に誤認混同させようとして使用商標を使用しているのではなく、登録第4091664号商標をもとに、製造元の取引に対応させるために、1996年の発売当初から使用商標を付した商品を製造元から輸入、販売を継続している。被請求人は、前記答弁書の「1(3)ウ 取引の実情について」(ウ)及び(オ)同様、商品においても明らかに異なる健康食品であると認識していた以上、被請求人は、甲第28号証のとおり故意に引用商標に類似させ、フリーライドを目的として当該商標を使用してきたのではない。
寧ろ当該商品が高品質であり、優れた効果を有することから、被請求人は十数年もの間継続して販売しているのであり、世に多数存在する健康食品のなかで、最近製造元の商品が著書に取り上げられていることを紹介しているのは、正に請求人に対する故意がそもそも存在しないからである。
カ 上記のように、被請求人による本件商標の使用は、故意に請求人の業務に係る商品と誤認混同を生じさせようとするものではなく、アメリカの製造元商標の使用伏況に対応させたものである。従って、本件商標の使用は一般公衆を害するものではなく、まして請求人の業務に係る商品と誤認混同を生じさせようとするものではないので、商標法第51条第1項の故意性の要件を充足しない。
(4)結論
以上により、被請求人の使用商標の使用態様は、故意に、本件商標に係る指定商品に類似する商標の使用であって、請求人の業務に係る商品等と誤認混同を生じさせる虞を有するものではないから、商標法第51条第1項の規定には該当せず、本件商標の登録は同条の規定により取消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 本件審判について
本件審判は、商標法第51条の規定に基づき商標登録の取消を求める審判であるところ、同条は、商標権者が故意に指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品・指定役務に類似する商品・役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用をして一般公衆を害したような場合についての制裁規定である。商標権者は指定商品・指定役務について登録商標の使用をする権利を有するが、指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品・指定役務に類似する商品・役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用は、法律上の権利としては認められていない。ただ、他の権利と抵触しない限り事実上の使用ができるだけである。そこで、このような商標の使用であって商品の品質の誤認又は商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものの使用を故意にしたとき、つまり、誤認、混同を生ずることの認識があったときには、請求により、その商標登録を取り消すこととしたのである。これは商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し、かつ、そのような場合に当該商標権者に制裁を課す趣旨である(特許庁編「工業所有権法逐条解説」第16版参照)。
かかる観点から、以下、本件について検討する。
2 被請求人の使用に係る「使用商標」について
甲第14号証、甲第15号証及び乙第27号証によれば、被請求人の使用に係る「使用商標」は、別掲2のとおりの構成よりなる商標であって、原材料の「大豆レシチン,スピルリナ,リンゴペクチンと繊維,亜麻仁粉,オリゴ糖,大麦ジュース粉末,オート麦ジュース粉末,小麦ジュース粉末,小麦の芽の粉末,アルファルファジュース粉末,クロレラ,アセロラベリージュース粉末,ビーツジュース粉末,ローヤルゼリー,ほうれん草」等を主成分とした粉末状の加工食品、いわゆる「健康食品」(健康補助食品)に使用しているものである。
3 被請求人の使用に係る「使用商標」と本件商標との類否について
上記2のとおりの使用商標を被請求人が商品の「健康食品」について使用していることを前提として、上記使用商標と本件商標との類否について検討する。
本件商標は、別掲1のとおり、上段に「multi」及び下段に「ProGreens」の欧文字よりなるものである。
そして、被請求人に係る商品の容器に付されている使用商標は、別掲2のとおり、「multi」及び「ProGreens」の欧文字よりなるところ、上段の「multi」の文字は、白抜きの黒字で小さく記載されており、下段の「ProGreens」の文字は、上段の「multi」の文字よりかなり大きく表されていて、前半の「Pro」の文字部分は赤色で、後半の「Greens」の文字部分は緑色で記載されている。
してみれば、本件商標と使用商標とは同一の商標とはいえないものである。
しかしながら、本件商標と使用商標とは、その構成中の「multi」の文字の態様が相違し、「ProGreens」の文字の色が相違するという点に違いがあるとしても、その構成文字及びその文字の配置が同一といえるものであるから、両商標は類似の商標である。
4 請求人の使用に係る「引用商標」について
請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、業として健康食品(健康補助食品)の製造、販売を行っているところ、「PROGREEN」(引用商標1:登録第4925352号商標)及び「プログリーン」(引用商標2:登録第4925351号商標)の文字からなる二つの登録商標を所有し、これらの登録商標を特に大麦若葉を乾燥、粉末化した商品「青汁」について使用していることが認められる(甲第4号証及び甲第5号証の1ないし3)。
そして、甲第2号証及び甲第3号証によれば、その商品の販売は、全国に412店舗の薬局、薬店を会員とする「AGA会」を窓口として、全国的に展開されており、その販売実績は、1993年5月から2008年4月まで各年およそ約5万箱から8万箱の販売が認められるものであって、決して少なくない販売量というべきであるから、引用商標は、一定程度の周知性を獲得しているものとみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標が登録出願された平成19年5月1日当時には、引用商標は、請求人の業務に係るいわゆる健康食品(健康補助食品)である商品「青汁」に使用する商標として、健康食品の取引者及びその購入者である需要者間に一定程度に知られ、認識がされていたというべきである。
5 商品の出所の混同について
(1)上記3のとおり、被請求人の使用に係る使用商標の使用により、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるか否かについて検討する。
使用商標は、別掲のとおり、「multi」及び「ProGreens」の欧文字よりなるところ、上段の「multi」の文字は、白抜きの黒字で小さく記載されており、下段の「ProGreens」の文字は、上段の「multi」の文字よりかなり大きく表されていて、前半の「Pro」の文字部分は赤色で、後半の「Greens」の文字部分は緑色で記載されており、「ProGreens」の文字部分は、その文字の大きさ及び配色により目立った構成となっている。そうすると、使用商標は、「ProGreens」の文字部分が看者の注意を強く惹き、印象付けられ、記憶に残るものというべきである。
そうとすると、使用商標は、「multi ProGreens」の構成全体の文字に相応して、「マルチプログリーンズ」の称呼を生じるほか、「ProGreens」の文字部分が他の構成部分より独立して自他商品・役務の識別機能を有するというべきであるから、「プログリーンズ」の称呼をも生じるというのが相当である。そして、構成全体及び「ProGreens」の文字部分は特定の意味を有しない造語と認められるので観念は生じない。
他方、引用商標1は、別掲3のとおり、「PROGREEN」の欧文字を書してなり、引用商標2は、別掲4のとおり、「プログリーン」の片仮名文字を書してなるものであって、共に特定の意味を有しない造語よりなるものと認められるから、いずれもその構成文字に相応して「プログリーン」の称呼を生じ、いずれも特定の観念を生じないものである。
してみれば、使用商標より生ずる称呼「プログリーンズ」と引用商標1及び引用商標2より生ずる称呼「プログリーン」とは、「プログリーン」の音を共通にし、異なるところは比較的聴取しにくい語尾における弱音「ズ」の音の有無にすぎないから、これらを一連に称呼するときは互いに相紛らわしく、両者は、称呼上類似の商標である。
また、使用商標と引用商標1及び引用商標2とは、いずれも観念を生じないから、観念上においては比較することができない。
そして、使用商標は、「ProGreens」の文字部分が要部と認められるものであって、該「ProGreens」と引用商標1の「PROGREEN」とは語尾における「s」の有無及び大文字小文字の差異を除き欧文字の構成配列を同一にしており、両者は外観上における印象について近似しているものである。
これらを総合すると、使用商標と引用商標1及び引用商標2とは、いずれも観念が生じないことからすれば、称呼における両者の称呼上の類似性と外観における使用商標と引用商標1の外観上における印象の近似から、使用商標と引用商標1及び引用商標2は、それぞれ互いに類似する商標というのが相当である。
そして、上記使用商標が使用されている「大豆レシチン,スピルリナ,リンゴペクチンと繊維,亜麻仁粉,オリゴ糖,大麦ジュース粉末,オート麦ジュース粉末,小麦ジュース粉末,小麦の芽の粉末,アルファルファジュース粉末,クロレラ,アセロラベリージュース粉末,ビーツジュース粉末,ローヤルゼリー,ほうれん草」等を主成分とした粉末状の加工食品、いわゆる「健康食品」(健康補助食品)と引用商標が使用されている大麦若葉を乾燥、粉末化した商品「青汁」、いわゆる「健康食品」(健康補助食品)とは、同一又は類似の商品といえるものである。
(2)以上を総合すれば、被請求人に係る使用商標を使用した商品に接する取引者、需要者は、「ProGreens」の文字部分に着目して、一定程度は知られ、認識されている引用商標を連想、想起し、該商品が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
6 被請求人の故意について
本件商標は、審査において、請求人の有する引用商標1の登録第4925352商標及び引用商標2の登録第4925351号商標を引用商標として拒絶査定がなされたが、査定不服審判(審判2007-43726)における平成20年6月23日になされた審決において、前記引用各商標とは非類似と判断された。さらに、本件商標の設定登録後、前記2件の登録商標を引用商標として、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとの登録異議の申立てがなされ、同21年6月23日になされたその異議決定においても前記査定不服審判と同旨の判断がなされた経緯があることが認められる。
次に、甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
被請求人(商標権者)は、2006年1月には、「ProGreens」商標が付された健康食品を米国から輸入し、被請求人のウェブサイトにおいて当該製品を掲載するとともに、当該製品を「プログリーン」と称して日本国内において販売していた(甲第21号証)。
請求人は、平成18年2月21日付け書簡をもって、被請求人に対して、請求人は商標登録第4925351号「プログリーン」、同第4925352号「PROGREEN」の日本における登録権者であり、また日本国内に於いて健康食品「プログリーン」「PROGREEN」を製造販売していることを通知するとともに、被請求人がインターネットで「PROGREENS」の宣伝広告を行い、これらの商品の個人輸入代行行為は請求人の商標権を侵害するものである旨を警告し、その中止を求めた(甲第22号証)。
これに対して、被請求人は、同年3月20日付け書簡をもって、請求人に対して、手紙をもらうまでは請求人が「プログリーン」や「PROGREEN」の商標を使用して健康食品を販売していることを知らなかったこと、被請求人はもともと「MultiProGreens/マルチプログリーンズ」という商標を使用していたが、途中から製造元販売名である「ProGreens」の名称で販売するようになり、そのため「ProGreens」商標の使用が請求人の商標を侵害することに思いが至らず、結果として迷惑をかけたことをお詫びすること及び早急に指摘業務を中止するとともに、今後については、商品の取り扱いを止めるか被請求人の商標「MultiProGreens/マルチプログリーンズ」(商標登録第4091664号)を付して販売するかの対応をしたい旨などを回答した(甲第23号証)。
被請求人は、回答後少なくとも平成18年6月12日までは従来の行為を継続していた(甲第25号証)。その後、同19年4月12日においては、被請求人は「ProGreens」の文字の上段に「multi」の文字を付して「ProGreens製品」を販売していた(甲第26号証)が、請求人は、平成19年4月13日付け書簡をもって被請求人に対して、「貴社のご使用になられている商品を拝見しましたが、商品のパッケージ側面に『ProGreens』と大きく記載され、その左片上に小さく『multi』と記載されております。」、「貴社のこのような商品パッケージのご使用は、当社登録商標第4925351号『プログリーン』、及び同第4925352号『PROGREEN』に対する商標権侵害と判断され・・・」などと記載して二度目の警告を行い、その使用を中止し、誠意ある回答を行うよう求めた(甲第27号証)こと等の各事実が認められる。
以上によれば、被請求人(商標権者)は、本件商標の登録出願、審判手続及び設定登録後の登録異議の申立て手続並びに請求人との交渉を通じて、他人(請求人)が「プログリーン」や「PROGREEN」の各文字について本件商標の指定商品と抵触する商品を指定商品として登録商標を所有していること及びこれら登録商標を使用して健康食品を販売していることを使用商標の使用に際して当然に知っていたと推認される。
さらに、本件商標の構成文字のうち上段の「multi」を下段の「ProGreens」とは別の書体、異なる大きさで表わし、二段に表示されているもののうち「ProGreens」の一方を強調するような構成態様に変更すれば、その全体をもって一体のものとしてのみ把握することはできなくなり、商品の出所の混同を生じさせるおそれがあることを使用商標の使用に際して認識していたと推認される。
してみれば、被請求人(商標権者)は、指定商品について本件商標(登録商標)に類似する使用商標を使用するに当たり、被請求人が請求人及び引用商標の存在を知らずに本件商標を登録出願したものとは到底いい難く、また、その使用の結果、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生じさせることを認識していたものといわざるを得ない。
(2)そうすると、被請求人は、本件商標が登録されたことを奇貨として、前示のとおり、本件商標と類似する使用商標を使用し、その結果請求人の業務に係る商品との混同を生ずるおそれがあることを十分認識していたものというべきである。
したがって、被請求人は、故意に請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものと判断するのが相当である。
7 むすび
以上のとおり、本件商標権者である被請求人は、故意に、指定商品について本件商標に類似する商標の使用をし、他人である請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものであるから、商標法第51条第1項の規定に基づき、本件商標は、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標(登録第5158470号商標)


別掲2 使用商標(甲第14号証及び乙第27号証)

(色彩については原本参照。)

別掲3 引用商標1(登録第4925352号商標)


別掲4 引用商標2(登録第4925351号商標)




審理終結日 2010-02-09 
結審通知日 2010-02-12 
審決日 2010-02-24 
出願番号 商願2007-43726(T2007-43726) 
審決分類 T 1 31・ 3- Z (X29)
最終処分 成立 
前審関与審査官 藤田 和美 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 岩崎 良子
井出 英一郎
登録日 2008-08-08 
登録番号 商標登録第5158470号(T5158470) 
商標の称呼 マルチプログリーンズ、マルチ、プログリーンズ、プロ、ピイアアルオオ 
代理人 竹内 耕三 
代理人 森田 俊雄 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 
代理人 野田 久登 
代理人 深見 久郎 
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