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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X05
管理番号 1214752 
異議申立番号 異議2009-900226 
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2010-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2009-06-16 
確定日 2010-03-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第5216113号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5216113号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5216113号商標(以下「本件商標」という。)は、「earth water」の欧文字と「アースウォーター」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、平成20年7月25日に登録出願、平成21年2月16日に登録査定、第5類「台所用除菌剤,台所用消臭剤」を指定商品として、同年3月19日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立ての理由(要旨)
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の沿革
申立人の創業は明治25年4月に大阪において、局方医薬品及び外傷薬チンキ、キイロン等の製造を始めたのが第1歩であり、大正14年株式会社に組織変更、昭和4年に本邦特産である除虫菊を主成分として家庭用殺虫剤「アース」の製造を始め、昭和15年に殺虫剤「アース」の姉妹品として蚊取線香「アース渦巻」の製造、昭和28年自噴式殺虫剤「アースエアゾール」の製造を開始した。
昭和39年には商号を商標と同じアース製薬株式会社に変更、昭和40年電気蚊取器「電子アース」及び電気蚊取マット「アースマット」の製造を開始した。
さらに、昭和45年に大塚グループに編入して各種医薬品及びゴキブリ捕獲器「ゴキブリホイホイ」、加熱蒸散型殺虫剤「アースレッド」、並びに液体電子蚊取器「アースノーマット」、ジェット噴射式殺虫剤「アースジェット」、入浴剤「バスロマン」、芳香洗浄剤「セボン」、口中清涼剤「モンダミン」と次々にユニークなヒット商品を生み出し、その商品の優秀性等と相俟って、アースは我が国において周知著名の商標となっている(甲第2号証ないし甲第9号証)。
2 商標使用の状況
申立人は、前記したように相当に古くして且つ広範囲に亘たり実績を有するものであって、その創業当初よりアース、EARTHを多くの製品に使用し、新聞、雑誌、TV等で宣伝し現在に至っている(甲第10号証ないし甲第46号証)。
「アース」、「EARTH」と言えば少なくとも本件商標の出願日たる平成20年7月25日以前において申立人の製造販売する商品であることが老若男女を問わずして全国津々浦々に至るまで広く知られて周知著名の商標となっている。
3 本件商標の分析
本件商標は前記した如く、上段を英文字で「earth water」と横書きし、下段を片仮名文字で「アースウォーター」と横書きされ、アース製薬株式会社の商標、商号と類似であることは明白であり、これについてなんら異論をはさむ余地はない。
4 申立人の登録商標
申立人の有する登録商標の一例を挙げると、「EARTH」及び「スーア」の文字を上下二段に表し、第5類「殺虫剤,駆虫剤」を指定商品とする登録第243638号商標ほか23件(甲第47号証ないし甲第70号証)のとおりである。
5 両商標の比較
上記のようにみてくると本件商標は上段を英文字で「earth water」と横書きし、下段を片仮名文字で「アースウォーター」と横書きされ、申立人の有する前記登録商標とは明らかに類似する。本件商標の上段の「earth water」の「earth」と「water」の間には明らかに間隔を有し分断される。
また、「water」、「ウォーター」は「水」の意味であり、「水性」、「ウォーターベース」、「ウォータータイプ」の殺虫剤は多々販売されており「ウォーター」、「水」には殺虫剤においては識別性がない(甲第71号証ないし甲第76号証)。
したがって、一般需要者は、本件商標の上段前部の「earth」を見たり聞いたりして、申立人と何らかの関連性があるかの如く認識する。
また、登録例においても「周知商標」と「周知商標+ウォーター」が同一権利者で登録となっており、これらが非類似商標であることはあってはならないことである(甲第77号証ないし甲第80号証(枝番号を含む。))。
6 過去の異議事件
申立人は、過去において、アース、EARTHとの結合商標に登録異議の申立てをした結果、申立人の著名商標アース、EARTHとの関係で、申立人の業務に係る商品と出所について混同を生ずるおそれがあると認定されている(甲第81号証ないし甲第105号証)。
7 まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号の規定に該当し、商標登録を受けることのできないものである。

第3 当審において通知した取消理由(要旨)
1 申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
「2008 PRODUCT GUIDE」の文字が記載されている「EARTH CATALOGUE(甲第2号証)」によれば、「殺虫剤(26頁)」として「アースノーマット」、「除菌消臭剤(71頁)」として「アースエアコン洗浄スプレー」等が掲載されている。
「社名・商品名雑学事典(甲第4号証)」によれば、「アース渦巻のアースは英語で地球(earth)だが、兵庫県赤穂の木村製薬所(現・アース製薬株式会社)が昭和7年に噴霧式殺虫液を出し、地球のマークをつけてアースと称した。」と記載されている。
「日本商標大事典(甲第6号証)」によれば、「この社は先代社長木村秀蔵が明治43年創業,大正14年株式会社組織に変更,昭和4年本邦特産である除虫菊を主成分として家庭用殺虫剤アースの製造を始め,昭和15年殺虫剤アースの姉妹品として,アース渦巻蚊取線香の製造,昭和28年自噴式殺虫剤アースエアゾールの製造を開始した。」と記載されている。
「日本商標名鑑2000(甲第7号証)」によれば、商品「殺虫剤及び駆虫剤」に関する商標「EARTH」及び「アース」等とともに、「明治25年4月木村秀蔵氏が大阪難波新川において工場を建て(中略)昭和4年,除虫菊を主成分とした殺虫剤『アース』を創製・・・」と記載されている。
「平成5年9月29日付けの東京商工会議所の証明書(甲第9号証)」によれば、「登録商標『アース』は、アース製薬株式会社が同社の製造・販売に係る商品『殺虫剤』について、昭和62年より継続して使用しているものである。」旨記載されている。
1987年(昭和62年)6月から2006年(平成18年)6月に発行された新聞、雑誌等に掲載された広告(甲第10号証ないし甲第42号証)によれば、「アース」の商標とともに、「アースレッドW」、「アースエアゾール」、「アースノーマット」、「アースジェット」及び「アース 車内のニオイとり」等の商品が掲載されている。
以上よりすれば、「アース」又は「EARTH」の文字よりなる商標(以下「引用商標」という。)は、申立人の業務に係る商品「家庭用殺虫剤」「蚊取線香」等を表示する商標として、本件商標の登録出願時(平成20年7月25日)には既に取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の査定時(平成21年2月16日)においても継続していたものと認められる。

2 また、申立てに係る指定商品「台所用除菌剤,台所用消臭剤」等について、本件商標の構成中の「water」又は「ウォーター」の文字の使用状況を職権において調査したところ、以下の事実が認められる。
(1)Defend Waterの「グレープフルーツの種から人にやさしい除菌液が採れました。」の見出しのウェブサイト(http://www.defendwater.com/)において、「キッチンでも安心してお使いいただけます。(中略)『まな板や包丁に』『卵の殻の除菌に』『食器洗いに』『冷蔵庫内の掃除に』『魚焼きグリルに』『スポンジタワシに』『グリルのお掃除に』『生ゴミの消臭に』(中略)除菌液 ディフェンドウォーターの成分は、グレープフルーツの種子抽出物とお水だけ。」と記載されている。
(2)プレマ株式会社の「部屋中の除菌・消臭に万能タイプの除菌消臭剤『コスデウォーター』」の見出しのウェブサイト(http://www.binchoutan.com/cosde.html)において、「噴霧しても人体に無害な弱酸性の除菌消臭水(中略)『コスデウォーター』は、次亜塩素酸を主成分とした除菌消臭剤です。(中略)『コスデウォーター』使用例 まな板、食器、包丁などの除菌・消臭」と記載されている。
(3)大源製薬のホームページ(http://www.e-daigen.co.jp/item/19.html)において、「除菌消臭剤 ウイルレスウォーター 2L(中略)【用途】キッチン・厨房内での除菌・消臭」と記載されている。
(4)アマゾンのウェブサイト(http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5-%E9%99%A4%E8%8F%8C%E3%83%BB%E6%B6%88%E8%87%AD%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%88-%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC-280ml/dp/B001HPLBBY)において、「エアウォッシュ 除菌・消臭ミスト クリスタルウォーター 280ml」と記載されている。
(5)株式会社paperboy&co.の「カラメル」のウェブサイト(http://calamel.jp/%E5%BC%B7%E5%8A%9B%E9%99%A4%E8%8F%8C%E3%83%BB%E5%BC%B7%E5%8A%9B%E6%B6%88%E8%87%AD%EF%BC%81%E3%80%90%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%80%91%EF%BC%93%EF%BC%AC/item/15028219)において、「強力除菌・強力消臭!【ワンダークリアウォーター】3L」と記載されている。
(6)株式会社タイズのiPROS(イプロス)のウェブサイト(http://www.ipros.jp/ipros/contents/products.do?bannerId=6=317896013)において、「業務用消臭・除菌・防黴ウォーター(シャワーポンプ)」の見出しの下に、「スリーエスウォーター 3S WATER(中略)近年騒がれている食品衛生管理問題やウィルスによる感染被害問題の対策には、スリーエスウォーターがベスト(中略)家庭内のキッチン・リビングでも除菌・消臭剤としても使えるから便利」と記載されている。
(7)株式会社もしものmoshi marketのウェブサイト(http://www.moshimo.com/article/1/12695/)において、「シェルウォーター(ホタテ貝殻セラミックス)除菌・消臭剤」と記載されている。

3 上記2によれば、本件商標の構成中の「ウォーター」及び「water」の文字は、申立てに係る指定商品「台所用除菌剤,台所用消臭剤」について、単に商品が水のように一定の形状をもたないものであること、すなわち、商品が液体状のものであることを表したということができるから、自他商品識別力がないか、あるいは極めて弱い語といえるものである。
そうとすれば、本件商標に接する取引者・需要者は、自他商品識別標識としてほとんど認識しない語といえる「ウォーター」及び「water」の文字よりも前半に位置し、かつ、商品「家庭用殺虫剤,蚊取線香」等について周知著名な商標ということができる「アース」及び「earth」の文字に着目することも決して少なくないものとみるのが相当である。
また、申立てに係る指定商品「台所用除菌剤,台所用消臭剤」と申立人の業務に係る商品「家庭用殺虫剤,蚊取線香」とは、いずれも家庭で購入され使用される商品であるから、需要者を共通にするものであり、販売店を同じくすることも少なくないものであって、家庭における菌や虫を除く(殺す)という用途においても極めて密接な関連性を有しているものである。

4 以上を総合すると、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「earth」及び「アース」の文字に着目して、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、当該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

第4 商標権者の意見
当審においてした、上記第3の取消理由に対して、商標権者は何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
本件商標についてした上記第3の取消理由は、妥当であって、本件商標の登録は、その理由に示すとおり、商標法第4条第1項第15号に違反して商標登録されたと認められるから、同法第43条の3第2項により、その商標登録を取り消すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2010-01-28 
出願番号 商願2008-61143(T2008-61143) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (X05)
最終処分 取消  
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 井出 英一郎
鈴木 修
登録日 2009-03-19 
登録番号 商標登録第5216113号(T5216113) 
権利者 宇部マテリアルズ株式会社
商標の称呼 アースウオーター、アース 
代理人 柳川 泰男 

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