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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X09
管理番号 1214675 
審判番号 不服2008-32913 
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-26 
確定日 2010-04-02 
事件の表示 商願2007-127559拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第9類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成19年12月27日登録出願、その後、指定商品については、原審における同20年9月16日付け手続補正書により、第9類「水・泡・ガス又は粉末を用いた消火装置,移動式消火装置,消火用ホースノズル,およびそれらの部品並びに付属品」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、赤色正方形図形内に、指定商品との関係において、消火ホースを収納した消火栓及び火と思しき図形を白抜きして表示してなるところ、JIS規格あるいはISO規格における安全標識等において赤色正方形図形や赤色と白色の対比が用いられていること、火と思しき図形に酷似した図形がJIS規格において火を示す図形として用いられていること、巻かれた消火ホースを収納した消化栓が写真とともに多数販売されていることからすれば、これを補正後の指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の品質(内容、機能)、形状、用途を表したものと理解するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知(要点)
当審において、請求人に対して、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、証拠調べをした結果、下記の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づく通知をし、相当の期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。

1 本願商標を構成する「赤色の正方形内に配された、格納庫にホース・ノズル・消火栓弁を収納したと思しき白抜き図形及び炎と思しき白抜きされた図形」等に関して行った職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。
2 JIS(日本工業規格)における記載
(1)別掲アの絵記号が、火を表す絵記号として使用されている(日本規格協会発行「JIS コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則 JIS T0103」34頁)。
(2)消化ホースを表す安全標識の図記号として、別掲イのとおり、ホース・ノズル・消化栓弁及び火を認識させる図形が併記して使用されている(前掲「JIS 安全標識-一般的事項 JIS Z 9104」12頁 附属書2(参考)ISO7010図記号集)。
(3)安全標識は、「安全色と幾何学的形状を組み合わせた基本形によって、一般的な安全のメッセージを伝え、図記号を加えることによって、特定の安全のメッセージを伝える標識」と定義されているところ、消防器具及び消化器に使用される防火を意味する安全標識については、別掲ウのとおり、安全色が赤色、幾何学的形状として正方形及び横長長方形、対比色及び図記号が白色とされている(日本規格協会発行「JIS 安全色及び安全標識-産業環境及び案内用安全標識のデザイン通則 JIS Z 9101」2頁及び4頁)。
3 書籍における記載
(1)法規で定められた危険物の輸送用外装ダンボールなどの表面に、当該物質の危険性の種類(複数の場合もある)を表すマーク中に、「可燃性ガス、引火性液体、可燃性固体、自然発火しやすい物質、水と作用して可燃性ガスを発生する物質、酸化性物質、有機過酸化物」の表示とともに、別掲エのとおり、炎の図形が使用されている(株式会社三省堂発行「記号の事典【セレクト版】第3版」197頁)。
(2)電熱器具の注意マークの使用例において、別掲オのとおり、炎の図形に×を記載した図形の説明として、「もえやすいものの近くでは使わないでください。」との記載がある(前掲「記号の事典【セレクト版】第3版」200頁)。
(3)屋内消化栓設備の説明として、「・・初期の屋内火災に対し放水し消化活動を行うもの、つまり初期の火災の消火を主目的とする設備をいい、屋内消化栓設備の構成は水源、加圧送水装置、起動装置、配管、弁、屋内消化栓、ホース、屋内消化栓箱などから構成されています。」と記載され、別掲カのとおり、消化栓、ホース及びノズルを使用して炎に放水するイラスト図形が併記されている(株式会社学芸出版社発行「イラストでわかる消防設備士用語集」41頁)。
(4)屋内消化栓の構造図として、別掲キのとおり、屋内消化栓箱内にノズル、ホース及び開閉バルブを収納したイラスト図形が記載されている(近代消防社発行「自衛消防訓練マニュアル」39頁)。
(5)放水用具格納箱の例として、別掲クのとおり、渦巻き状にした消化ホースとノズルを収納したイラスト図形が記載されている(前掲「イラストでわかる消防設備士用語集」45頁)。
4 インターネットにおける検索
(1)財団法人日本消防設備安全センター内の違反是正支援センターのウェブサイトにおいて、「消化活動・その他」の見出しの下、別掲ケのとおり、ノズルからの放水と炎がイラスト図形で示されている(http://www.fesc.or.jp/ihanzesei/data/04_3.html)。
(2)前記違反是正支援センターのウェブサイトにおいて、火災が発生したときに消火作業に使用する屋内消化栓設備が記載され、別掲コのとおり、その使い方がイラスト図形で表示されている(http://www.fesc.or.jp/ihanzesei/ordinary/index03.html)。
(3)株式会社初田製作所のウェブサイトにおいて、水消火設備の見出しの下、消化栓として、別掲サのとおり、格納されたホース・ノズル・開閉バルブが記載されている(http://www.hatsuta.co.jp/fire_protections/water.html)。
(4)株式会社立売堀製作所のウェブサイトにおいて、1号消化栓の見出しの下、「1号消化栓は、建物の内部で発生した火災の消火を目的とした、手動による消火設備です。」との記載とともに、別掲シのとおり、その操作方法がイラスト図形で表示されている(http://www.itachibori.co.jp/HP0511/catalogue/1506.htm)。

第4 当審における証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)
前記第3の「証拠調べ通知」に対して、請求人は、平成21年11月16日付け意見書を提出し、要旨以下のように述べている。
1 赤色の正方形内に配された、格納庫にホース・ノズル・消火栓弁を収納したと思しき白抜きされた図形及び炎と思しき白抜きされた図形は、JIS規格では示されておらず、また、ホース・ノズル・消火栓弁を収納した格納庫の図形と炎の図形の配置には充分なオリジナリティが認められるものであり、さらに、ホース・ノズル・消火栓弁を収納した格納庫と炎の図形を、左右に並べて配置することにより不離一体のものとして組み合わせたものは、引用された各資料には、表現されていない。
2 本願商標である「赤色の正方形内に配された、格納庫にホース・ノズル・消火栓弁を収納したと思しき白抜きされた図形及び炎と思しき白抜きされた図形」からは、ホース・ノズル・消火栓弁と思われるものを収納した格納庫とその横に配置されている炎と思われる図形の2つのものから消火装置あるいは消火設備を想像させるが、「ホース・ノズル・消火栓弁と思われるものを収納した格納庫」だけあるいは「炎と思われる図形」だけからは、何れも消火装置あるいは消火設備を想像させること出来ない。
3 また、図形商標にあっては、指定商品の「効能」や「用途」を暗示する図形を採用するのは通常行為としてなされることであり、同様の「効能」や「用途」を暗示する図形は1つに特定できるものではなく、多数考えられることからすると、本願商標を登録しても、第3者に不測の不利益を与えるとは考えられない。
4 商標の図形が、指定商品の品質(内容、機能)、形状、用途を表したものと理解できるものとして従来、以下のものが登録されている。
(1)交通標識において禁止を表示するものとして良く知られている丸に左上から右下に向う斜め線を配したものと火炎とを組み合わせた図形商標であって、火災を鎮圧することを容易に推認させることのものが、「消火器」を指定商品として登録されている(登録第4786253号)。
(2)図形「鐘」からなる図形商標であって、警鐘を鳴らして周囲に異常を知らせることを容易に推認させることのできるものが、「火災報知機」、「盗難警報器」を指定商品の一部として登録されている(登録第4113767号)。
(3)図形「鐘」からなる図形商標であって、警鐘を鳴らして周囲に異常を知らせることを容易に推認させることのできるものが、「火災報知機」、「ガス漏れ警報器」、「盗難警報器」を指定商品の一部として登録されている。(登録第4268623号)。
(4)内部に矢印を配設した四辺形とデザイン化した人とを組み合わせた図形商標であって、インターホーンや異常通報機器などの通信機器を示すものとして容易に推認できるものが、「電気通信機械器具」を指定商品として登録されている。(登録第4455137号)。
これら、既登録商標は、指定商品との関係で見た場合、本件商標と指定商品との関係と何ら変わるところは無い。
5 以上から、本願商標は、その商品の品質(内容、機能)、形状、用途を間接的に表現したものと判断すべきであり、その商品の品質(内容、機能)、形状、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標には該当しない。

第5 当審の判断
本願商標は、別掲のとおり、赤を地色とした正方形内の左側に、格納箱にホース・ノズル・消火栓弁を収納したと思しき白抜き図形を配し、その右側に炎を想起させる白抜きされた図形を配してなるところ、前記第3の証拠調べ通知に記載された事実によれば、屋内消化栓箱内にノズル、ホース及び開閉バルブを収納したイラスト図形が屋内消化栓を表すもの(前記第3 3(4))、渦巻き状にした消火ホースとノズルを収納したイラスト図形が、放水用具格納箱を表すもの(同3(5))、格納されたホース・ノズル・開閉バルブが、水消火設備の消化栓を表すもの(同4(3))として、それぞれ使用され、構成中右側の炎を想起させる白抜きされた図形とほぼ同一の図形が、日本工業規格において、火を表す絵記号(同2(1))として使用されている事実が認められる。
さらに、日本工業規格において、消火ホースを表す安全標識の図記号として、ホース・ノズル・消化栓弁及び火を認識させる図形が併記して使用されており(前記第3 2(2))、また、消火器を取り扱う業界においては、
消火活動においてノズルからの放水と炎がイラスト図形で表されている(同3(3)及び4(1))。
加えて、赤を地色とした正方形内に、対比色及び図記号を白色とするレイアウトは、日本工業規格によれば、防火を意味し、消火器具等に使用するものとされている(前記第3 2(3))。
以上の認定事実からすれば、本願商標は、火災の消火を目的とした消火設備(消化栓)と炎をイラスト図形化したものを併記したものと容易に認識させるものであり、また、消火のために用いられるノズルやホース等を表す図形と火を表す図形とが、消火活動を表すものとして使用されている実情を考慮すれば、これをその指定商品について使用するときは、取引者、需要者において、格納箱にホース・ノズル・消火栓弁を収納した消火装置を表示するものとして容易に理解させるにすぎず、単に商品の品質・用途を表示したにすぎないものであり、自他商品の識別標識としては機能しないというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
なお、請求人は、前記第4の意見書において、炎の図形及びホース・ノズル・消化栓弁を収納した格納庫の図形の配置には充分なオリジナリティが認められる旨主張する。
しかしながら、本願商標を構成するそれぞれの図形とほぼ同一の図形は、上記のとおり、格納箱にホース・ノズル・消火栓弁を収納した消火装置及び炎の意味を有するものとして使用され、また、日本工業規格において、消火ホースを表す安全標識の図記号として、ホース・ノズル・消化栓弁及び火を認識させる図形が併記して使用されているものであるから、ことさら、これらの図形の配置や組み合わせそれ自体に識別力を有するほどオリジナリティがあるとはいい難いものである。
さらに、請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべきである旨主張するが、登録出願された商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるかどうかの判断は、当該商標の構成態様と指定商品に基づいて、個別具体的に判断されるものであって、他の登録例の存在によって、上記判断が左右されるものではなく、本願については上記のとおり判断するのが相当であるから、この点についての請求人の主張も採用することができない。
したがって、請求人の主張はいずれも採用することができない。
以上によれば、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことができない。
よって結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標


(色彩については、原本を参照。)

証拠調べ通知において引用した図形
別掲ア(以下、色彩については、原本を参照。)

別掲イ

別掲ウ

別掲エ

別掲オ

別掲カ

別掲キ

別掲ク

別掲ケ

別掲コ

別掲サ

別掲シ

審理終結日 2010-01-26 
結審通知日 2010-01-29 
審決日 2010-02-10 
出願番号 商願2007-127559(T2007-127559) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 斎古森 美和 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 木村 一弘
末武 久佳
代理人 鈴江 正二 

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