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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30 |
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管理番号 | 1214632 |
審判番号 | 無効2009-890096 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-08-14 |
確定日 | 2010-03-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5076414号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5076414号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 登録第5076414号商標(以下、「本件商標」という。)は、「伝説のしらはまチーズケーキ」の文字を標準文字で表示してなり、平成18年7月19日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同19年6月25日に登録査定、同年9月14日に設定登録がなされたものである。 第2 引用商標 請求人が本件商標の無効理由として引用する商標は、請求人が商標権者である登録第4454328号商標(以下「引用商標」という。)であって、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成12年2月4日登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として同13年2月23日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証(枝番を含む。)を提出している。 1 請求の理由 (1)本件審判申立に至るまでの経緯 ア 請求外白濱広利(通称白濱博利)は、平成元年に個人会社である有限会社コスタブランカ(数年後に「有限会社白浜」に商号変更し、更に平成11年4月に「株式会社ガトーしらはま」に変更。)を設立し、同社の代表者に就任した。 同社は秦野市内の上智短期大学の学生食堂及び同市内のレストランで飲食物を提供及び販売してきたが、同社の製造するチーズケーキは、おいしいとの評判が立ち「しらはまチーズケーキ」「しらはまのチーズケーキ」として有名になるに至った。 雑誌やテレビにも人気商品として紹介され、請求外白濱広利自身も何度かテレビ出演をするようになった。 平成12年に同社は引用商標を商標登録出願し、同商標を使用して「しらはまチーズケーキ」「しらはまのチーズケーキ」として前記のチーズケーキを販売し、平成12年から千趣会の通信販売でも販売されるようになり、同チーズケーキは、千趣会におけるナンバー1のチーズケーキとなった。 ところが、平成12年末に同社は取込詐欺に遭い、資金繰りに困窮するようになった。 そのような際、請求外株式会社日動計画が資金援助を申し出たため同社の資金援助を受けたところ、平成14年10月頃より請求外白濱広利の経営していた会社は株式会社日動計画が経営するようになり、チーズケーキの製造工場も同社が管理使用することになった。 その後、請求外株式会社日動計画が引用商標を使用して「しらはまチーズケーキ」「しらはまのチーズケーキ」として千趣会等で販売するようになった。 イ 請求外白濱広利は、チーズケーキを作るための工場もなくなったため、請求人の下で工場長として「しらはまチーズケーキ」を製造することになった。 請求人は「しらはまチーズケーキ」を製造販売するための会社を新たに設立し、製造場所や機具及び店舗の全てを用意し、請求外白濱広利が経営していた「株式会社ガトーしらはま」が有していた引用商標を譲り受け(甲4)、請求外白濱広利のレシピによってチーズケーキの製造販売を再開させた(甲5、甲6)。 その後、同チーズケーキは「ガトーよこはま」の商標においても販売するようになったが、請求外白濱広利は平成17年10月まで請求人が経営する株式会社ガトーよこはまの工場長として20?35万円の月給の支払いを受けており、平成17年11月から工場長を辞め給料は徐々に減額されたが、平成20年9月まで出勤の有無にかかわらず毎月2万円の給料の支払いを受けてきた(甲7、甲8、甲9)。 よって、請求外白濱広利は引用商標と混同を生じるような登録商標を取得し、又は自らの関与する会社に取得させてはならない義務を負担していた。 なお、請求外白濱広利が経営していた株式会社ガトーしらはま及び請求外白濱広利個人については平成15年7月11日午前10時に横浜地方裁判所小田原支部において破産決定がなされた(甲10、甲11)。 また請求人は、同破産事件の破産管財人との間で引用商標の譲受について訴訟上の和解を成立させ、請求人は改めて破産管財人に対し金200万円の和解金を支払うなどの条件において和解を成立させ、同金額を支払った(甲12)。 ウ その間、請求人は前記株式会社日動計画及び株式会社千趣会等に対し「しらはまのチーズケーキ」「しらはまチーズケーキ」の商標によって販売されたチーズケーキに対し、引用商標の商標権を侵害するものとして損害賠償を請求する訴訟を提起した。 この訴訟を提起することは請求外白濱広利の意向に基づくものでもあった。 同裁判(平成18年(ワ)第5272号、平成18年(ワ)第8460号損害賠償請求事件)についての東京地方裁判所での判決では「しらはまチーズケーキ」及び「しらはまのチーズケーキ」の商標は引用商標と称呼及び観念において類似し、引用商標の商標権を侵害するものとして株式会社日動計画及び株式会社千趣会らに対し、損害賠償を支払うよう命ずる判決が平成19年12月27日に言い渡された(甲13)。 エ 前記のように、請求外白濱広利は少なくとも平成20年9月までは請求人が経営する株式会社ガトーよこはまから給料の支払いを受けていたのであるから、請求外白濱広利は引用商標と混同を生じるような登録商標を取得し、又は自らの関与する会社に取得させてはならない義務を負担していた。 しかるに請求外白濱広利は、本件商標について登録査定を受けさせ、自らが副社長を標榜する株式会社シェ・しらはまに商標登録出願人の名義変更を行ったうえその登録を受けている。 請求外白濱広利は前記のように破産決定を受けているため、株式会社の役員となることは出来ないのに、同人は株式会社シェ・しらはまの取締役副社長であると標榜している(甲18)。 (2)商標法第4条第1項第11号の該当性について 引用商標が「しらはまチーズケーキ」の文字からなる商標と類似することは前記判決(甲13)の第56ページの下から10行目以下で明記されているところである。本件商標は「しらはまチーズケーキ」の文字の前に「伝説の」の表示があるが、「伝説の」は噂のという程の意味であり、「しらはまチーズケーキ」は千趣会でもナンバー1となった周知でかつ噂のチーズケーキである。 よって、「伝説のしらはまチーズケーキ」はまさに「しらはまチーズケーキ」そのものを意味する表示である。 請求人が「しらはまチーズケーキ」を復活した際にも新聞紙上では「“伝説”チーズケーキの復活」との表題で報道され(甲5)、請求人のチーズケーキも発売以来「伝説のチーズケーキ」すなわち「伝説のしらはまチーズケーキ」として理解されている。 請求人自身今日までチーズケーキを販売する際に「伝説のチーズケーキ」の表示を看板等に用いて宣伝広告等を行ない、「伝説のチーズケーキ」が「しらはまのチーズケーキ」であるとして販売してきた(甲14の1ないし6)。 甲15のブログにおいても「シェ・しらはまの白濱シェフは、かつてガトーしらはまのシェフをされていたそうで、そこでシェフが作りだしたケーキは、首都圏では伝説のチーズケーキと呼ばれるほどのものだったのです。」と記載され、「しらはまのチーズケーキ」が首都圏では「伝説のチーズケーキ」と呼ばれ周知著名であったことが記載されている。 このような事実から「伝説の」の表現はまさに「しらはまチーズケーキ」であることを示す付加的表示にすぎない。 商標の類否判断は取引の実情をもとに判断されるものであるが、以上のように「伝説のしらはまチーズケーキ」は「しらはまチーズケーキ」と略称され、かつ「しらはまチーズケーキ」と観念されることから本件商標は引用商標と称呼・観念において類似する。 (3)商標法第4条第1項第15号の該当性について 本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても同項15号に該当する。 前記のように「伝説のしらはまチーズケーキ」は、まさに「しらはまチーズケーキ」を指すことは取引者・需要者に認識されているところである。本件商標である「伝説のしらはまチーズケーキ」の使用されたチーズケーキは請求人の業務に係る商品である「しらはまチーズケーキ」と誤認を生じることが明らかである。 (4)本件商標が商標法第4条第1項第7号(商標法第46条)に該当する事実について 本件商標は、平成18年7月19日に山二綾子なる名義にて出願され、登録査定後である平成19年7月23日に被請求人に対する出願人名義変更届が提出されている(甲16及び甲17)。 被請求人である株式会社シェ・しらはまは、請求外白濱広利が深く関与した会社であることは明らかである。 同人は、前記のように破産宣告を受けているため、形式上取締役にはなれないが、雑誌「みやざき」(甲18)の紙面上では「株式会社シェ・しらはま取締役副社長」の肩書きをつけて顔写真まで大きく出してチーズケーキ職人としての宣伝を行っている。 また、甲19のインターネット上のショップサイトでは請求外白濱広利は「ガトーしらはまの有名シェフで‥‥‥たどり着いたのが宮崎日南市」と記載されている。 更に、「株式会社シェ・しらはま」という商号からしても同社は請求外白濱広利が深く関与するする会社であることが明らかである。 また、請求外白濱広利の関与する横浜市港南区のチーズケーキ専門店「しらはまシェフの店」においても「伝説のしらはまチーズケーキ」の表示が使用されている(甲20)。 この点からも本件商標の実質上の商標権者が請求外白濱広利であることは明白である。 以上の事実から、本件商標は引用商標と混同を生じるような登録商標を取得できない請求外白濱広利が実質上自らの登録商標として使用するため、その登録をうけたものである。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当することは明らかである。 (5)むすび 以上詳述したとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号又は第15号並びに第7号に該当し、同法第46条に基づき無効とされるべきものである。 第4 被請求人の主張 被請求人は、本件の審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由の要旨を次のように述べている。 [答弁の理由] 平成17年11月1日に、「株式会社シェ・しらはま」を宮崎県日南市に創業した。創業者、船上美津子はオーナーであって、製造部門、営業・販売部門を白濱広利(以下「白濱」という。)が担当することで開業した。 白濱が述べるところによると、白濱は、師弟関係にあった一番の弟子を株式会社ガトーよこはま(以下「ガトーよこはま」という。)に置くこと、何かあった場合はいつでも応じることを条件に、社長には退職を承知してもらって正式に退職したこと、平成19年夏には一番弟子が「ガトーよこはま」を退職するということで、一緒に製造をされていた小山氏の三男夫婦がわが社において研修を行い、わが社の従業員にもまだ教えていないことも全て教えたとのこと。 白濱は、株式会社イズミ産業という会社に弟を入れて製造を任せ、白濱がアドバイスするというやり方で仕事を始める準備をしていたが、イズミ産業で造った会社はうまくいかず、結局、副社長という肩書きでしたこのような白濱の行動は、被請求人に対する背任行為である。 その後、白濱がやっていた取引がいかにいい加減で赤字になる原因を作っていたのかが判り、平成20年2月19日付けで出社停止にし、同年6月に解任した。 しかるところ、請求人は、今回、被請求人が所有する「伝説のしらはまチーズケーキ」の文字からなる本件商標に対し、審判を請求しているが、被請求人も白濱が残したチーズケーキを作っており、立場は請求人と同じである。 したがって、請求人と被請求人が作るそれぞれのチーズケーキは、多少レシピは違っても見た目は全く同じケーキであって、お互いお互いを利用して、このまま続けるのが一番いいと思われる。 第5 当審の判断 1 引用商標及び請求人の使用に係る標章「しらはまチーズケーキ」の著名性について (1)甲各号証によれば、以下の事実が認められる。 ア 白濱は、平成元年に、神奈川県秦野市に「有限会社コスタブランカ」を設立して、代表取締役に就任した。同社は、数年後に「有限会社白浜」に、更に、平成11年4月には株式会社に組織変更をし、商号を「株式会社ガトーしらはま」(以下、「旧会社」という。)に変更した(甲第8号証)。 イ 白濱は、平成元年ころ、秦野市において、「レストランガトーしらはま」を経営し、同店において、デザートとしてチーズケーキを提供し、また、販売していた。 上記チーズケーキは、「ガトーしらはまのチーズケーキ」などとして次第に評判となり、メディアで取り上げられたほか、通信販売やデパートなどへ出店しての販売も行われるようになった。 旧会社は、平成12年10月ころから、千趣会との間でチーズケーキの継続的な売買取引を開始し、平成15年当時には、「3万人を超える会員をもつ千趣会の『チーズケーキの会』で、2年連続人気1位となった」旨紹介されていた(甲第5号証、甲第8号証及び甲第13号証)。 ウ 旧会社は、平成12年2月4日に引用商標について登録出願し、平成13年2月23日に設定登録された(甲第4号証)。 エ 旧会社は、取り込み詐欺の被害に遭うなどして資金繰りが悪化し、平成l5年7月11日、横浜地方裁判所から破産宣告決定を受け、また、白濱も同日、同裁判所から破産宣告決定を受けた(甲第10号証及び甲第11号証)。 オ 旧会社は、平成14年12月27日に、引用商標の商標権を請求人に譲渡し、平成15年1月16日にその旨の移転登録がなされた(甲第4号証)。 カ 請求人は、旧会社から本件商標の譲渡を受けた後、平成15年1月下旬ころには、横浜市神奈川区に所在し請求人が代表者を務める「ガトーよこはま」において、チーズケーキ等の菓子類を販売する店舗を出店した(甲第5号証及び甲第13号証)。 白濱は、そのころ、「ガトーよこはま」のチーズケーキ製造工場において、工場長として稼働するようになった(甲第7号証ないし甲第9号証及び甲第13号証)。 キ 請求人によるチーズケーキの販売を伝える平成15年10月23日付け日本経済新聞の記事には、「“伝説”チ-ズケーキ復活」との表題の下、「若い女性の人気を集めながら今年初め廃業した神奈川県秦野市の菓子メーカー『ガトーしらはま』のチーズケーキが、横浜ブランドに装いを変えて再登場した。」、「ガトーしらはまは1980年代中ごろに創業した名店で、東京・銀座や渋谷などの百貨店内に約十店を展開していた。本業外でつまづき昨年末に百貨店から一斉に撤退したが、百貨店や同社には、どこで購入できるかといった問い合わせが後をたたなかったという。・・小山社長は・・新会社「ガトーよこはま」(小山正武社長)を設立。・・・一月下旬に中央卸売市場(横浜市神奈川区)近くに出店、復活を望むファンの声に応えた。・・・大型商業施設ワールドポーターズ(同市中区)内に今夏出店。秋からは市内約三百の郵便局が通信販売で取り扱いを始めた。九月は月商約千万円。十一月に玉川高島屋内に出店するほか県内外の百貨店から出店依頼が相次いでいるという。」などと紹介されている(甲第5号証)。 ク 白濱は、請求人の経営する「ガトーよこはま」に、平成14年12月26日に入社し、同17年10月までは工場長をしていたが、同年11月からは、宮崎県日南市にその当時設立された被請求人会社「株式会社シェ・しらはま」の副社長に就任していた。 なお、「ガトーよこはま」から白濱には、同年11月から徐々に減額されたが、平成20年9月まで出勤の有無にかかわらず給料が支払われていた(甲第7号証ないし甲第9号証、甲第15号証、甲第18号証及び甲第19号証)。 ケ 「レストランガトーしらはま」は、請求人が引用商標を譲り受けた平成14年12月27日以降も、白濱ないし白濱の弟である白濱順により運営され、そして、請求人の許諾の下、同店の店舗入口付近には、引用商標と類似する標章が表示され、また同店舗入口横には、外に向かって、チーズケーキの写真に重ねて「しらはまチーズケーキ」の文字を書した標章などを配したボードが掲示されていた。このような状況は同18年5月25日当時においても同じであった。平成18年7月当時の「レストランガトーしらはま」の食品衛生法上の届出者(営業者)は、白濱の弟である白濱順であった(甲第13号証)。 コ 「ガトーよこはま」は、楽天市場におけるの製品案内のウェブサイトに、「ガトーよこはま とは?」との見出しの下、小山店長及び白濱広利工場長の写真とともに、「横浜でこだわりのチーズケーキを手作りしている店です。・・・当店のチーズケーキはシェフ白濱の長年の秘蔵レシピであり『しらはまチーズケーキ』はこれまでに多くのファンの方々にご支援いただいているかけがえのないチーズケーキです。これからも『しらはまチーズケーキ』を守りつつ、更においしいケーキを作りたい、こだわりのケーキを作りたい、白濱はじめ、ガトーよこはまスタッフ一同はそう思っています。」と記述し、チーズケーキの写真に重ねて「 『しらはまチーズケーキ』のレシピは不滅です」と記述し、写真の下部には「シェフ白濱とスタッフ一同でひとつひとつ心を込めて手作りしているこだわりのチーズケーキ。・・・『しらはまチーズケーキ』にはデンマーク産の極上クリームチーズを使っています。・・・」と記述し、前記写真の下部右側には引用商標を表示し、サイズのことなる5種類の各チーズケーキの製品写真の下には、○○cmに冠して「しらはまチーズケーキ」の標章を掲載して広告をしている。ウェブサイトにおけるこの内容の記事掲載時期は不明であるが、2005(平成17)年6月22日にプリントアウトされたものである(甲第7号証)。 サ 「ガトーよこはま」は、本店及び各支店のホームページには、「ガトーよこはま」の各店舗において「伝説のチーズケーキ」の表示をした看板を使用して広告をしていることを掲載し、また、「類似商品にご注意下さい 『しらはまチーズケーキ』の商標継承は、ガトーよこはま当店のみでございます。・・・」との注意書きを掲載している。このホームページの掲載時期は不明であるが、2009(平成21)年8月3日にプリントアウトされたものである(甲第14号証の1ないし6)。 (2)上記(1)の認定事実を総合すれば、白濱の経営する「レストランガトーしらはま」で提供するチーズケーキが、「ガトーしらはまのチーズケーキ」などとして次第に評判となり、メディアで取り上げられたほか、通信販売やデパートなどへ出店しての販売も行われ、また、白濱が代表取締役を務める旧会社は、平成12年10月ころから、千趣会との間でチーズケーキの継続的な売買取引を開始し、平成15年当時には、「3万人を超える会員をもつ千趣会の『チーズケーキの会』で、2年連続人気1位となった」旨紹介されていたことが認められる。 その後、旧会社が破産し、請求人は、引用商標を旧会社から譲り受けるとともに、「ガトーよこはま」において、チーズケーキ等の菓子類を販売する店舗を出店したこと、そして、白濱は、請求人が経営する「ガトーよこはま」の工場において工場長として稼働する一方、「レストランガトーしらはま」は、引用商標の商標権が請求人に譲渡された平成14年12月27日以降も、請求人の許諾の下において、白濱ないし白濱の弟である白濱順により運営され、同店において提供又は販売されるチーズケーキに引用商標又はこれに類似する標章を継続的に使用されていたことが認められる。 上記「ガトーよこはま」における出店を伝える新聞記事(平成15年10月23日付け)(甲第5号証)によれば、同秋からの市内約三百の郵便局が通信販売で取り扱いを始め、県内外の百貨店から出店依頼が相次いでいる等の紹介がされていることに照らすと、遅くとも平成15年10月当時までには、引用商標並びに別掲(2)に示すとおりの構成からなる「しらはまチーズケーキ」の標章(以下「請求人の使用標章」という。)は、「ガトーよこはま」の取り扱いに係る「チーズケーキ」の出所を表示する標章として周知・著名性を獲得していたものと解される。 その後も、請求人は、平成17年10月までは、白濱を「ガトーよこはま」の工場において工場長として稼働させており、同年11月から徐々に減額はしたが、平成20年9月まで出勤の有無にかかわらず給料を支払っており、白濱との関係をもっていた。 そうしてみると、「ガトーよこはま」は、白浜が工場長を辞めた後も白濱のレシピに基づいて「チーズケーキ」を製造・販売し、継続して引用商標並びに請求人の使用標章を使用していたものと推認されるから、本件商標が出願された当時及び登録査定がなされた当時においても、引用商標並びに請求人の使用標章は、当業界の取引者・需要者間において、「ガトーよこはま」の取り扱いに係る「チーズケーキ」の出所を表示するものとして周知・著名であったと推認される。 2 出所の混同について 本件商標は、「伝説のしらはまチーズケーキ」の文字を標準文字で横書きした構成よりなるところ、これは「言い伝え、うわさ、風説」などを意味する「伝説」の文字に格助詞「の」の文字を介して「しらはまチーズケーキ」の文字を結合させてなるものである。 その構成前半の「伝説の」文字部分は、その構成後半の「しらはまチーズケーキ」の品質を誇示するものとして認識される表示であるから、「伝説の」と「しらはまチーズケーキ」とは、常に一体不可分として認識しなければならない表示ではなく、分離してして認識し得るものある。 そうすると、本件商標は、その構成中に請求人の経営する「ガトーよこはま」が「チーズケーキ」に使用し著名な請求人の使用標章、すなわち、「しらはまチーズケーキ」の文字を有するものであるから、商標権者がこれをその指定商品の「菓子及びパン」について使用するときは、取引者・需要者をして、その商品が「ガトーよこはま」又はこれと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると認められる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。 3 結論 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたと認められるから、その余の請求人の主張について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 (1)引用商標 (2)請求人の使用標章 |
審理終結日 | 2010-01-19 |
結審通知日 | 2010-01-22 |
審決日 | 2010-02-05 |
出願番号 | 商願2006-71929(T2006-71929) |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Z
(Y30)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 達夫、大橋 信彦 |
特許庁審判長 |
野口 美代子 |
特許庁審判官 |
豊田 純一 小川 きみえ |
登録日 | 2007-09-14 |
登録番号 | 商標登録第5076414号(T5076414) |
商標の称呼 | デンセツノシラハマチーズケーキ、デンセツノシラハマ、シラハマチーズケーキ、シラハマ |
代理人 | 会田 恒司 |