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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1214624 
審判番号 取消2008-301284 
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-10-03 
確定日 2010-03-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第4779932号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4779932号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4779932号商標(以下「本件商標」という。)は、「Palgantong Pon Pon Powder」の欧文字を標準文字で表してなり、平成15年7月4日に登録出願、第3類「紙おしろい,クリームおしろい,固形おしろい,粉おしろい,練りおしろい,水おしろい,その他のおしろい」を指定商品として、平成16年6月18日に設定登録されたものである。

第2 参加の申請
本件審判については、平成21年1月8日付け(同月9日差出し)で、在大韓民国の崔熈から参加申請書(被請求人側への参加)の提出があり、当審において、平成21年3月27日付けで当該参加の申請を許可する旨の決定を行った。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品について使用された事実がないので、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)使用に係る商標について
ア 参加人は、被請求人の日本国における輸入総代理店である株式会社ドド・ジャパン(以下「ドド・ジャパン」という。)が使用する「PALGANTONG」又は「パルガントン」という商標と本件商標は、社会通念上同一である旨主張している。
しかし、審査基準に記載されている「社会通念上同一」の例は、「登録商標」と「登録商標+他の文字」の使用態様において社会通念上の同一の例を例示しているにすぎないものである。この点、本件商標から商標の一部分を構成する「Pon Pon Powder」の部分を削除した使用態様についてまで、社会通念上の同一性を認める趣旨ではないことは明らかであり、本件とは事案を異にするものである。ちなみに、参加人が挙げた「社会通念上の同一」の例も、現在の審判便覧(53-01)には記載されておらず、例示としても適切でなく採用し難いことは言うまでもない(甲第1号証)。
イ 参加人は、取引の実情を考慮すると、本件商標のうち、「Pon Pon Powder」の文字部分は、単にポンポン使用するパウダーという意味を持つにすぎず、「パルガントン」という部分に商品識別力がある旨主張する。
しかし、「Pon Pon Powder」の文字部分が「ポンポン使用するパウダー」なる品質を暗示する要素を含むからといって、常に識別力を欠くということはできない。取引の実情からみても、このような品質を表示するものとして、「Pon Pon Powder」の文字が一般に用いられている事実は存在しない。
したがって、参加人が主張する「PALGANTONG」又は「パルガントン」という商標と本件商標とは、社会通念上同一であるということはできない。
(2)権利の濫用について
ア 参加人は、仮差押を受けている商標登録第4493392号(以下「別件商標登録」という。)について請求した不使用取消審判(以下「別件審判」という。)において、被請求人がマグザス(エイチケイ)リミテッド(以下「マグザス」という。)から別件商標登録の譲渡を受けながら答弁をしなかったのは、仮差押債権者である参加人(審決注:「請求人」とあるのは誤記と判断した。)の権利又は利益を害する目的をもって別件商標登録を取り消すとする審決をさせたもであり、本件についても詐害目的がある旨主張する。
しかし、本件と別件審判とは、異なる事案に属するものであり、本答弁内容において持ち出されても、関係のないことである。また、被請求人が答弁を行わなかった理由は不明であるが、移転登録を受けるという行為と、不使用取消審判の請求に答弁するという行為との間には関連性がなく、必ず答弁すべき理由はない。そもそも、商標権者は、商標権を維持する権利は認められるとしても、その義務が厳然として存在するわけではないと思量する。むしろ、3年以上不使用で信用が蓄積していないような商標に排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることになるから、取り消されて然るべきである。
イ 参加人は、本件審判の請求人の代理人である特許業務法人ウィンテック(以下「ウィンテック」という。)が、被請求人保有の他の商標登録(商標登録第4989970号、同第5003730号)に係る出願の代理人であったことから、その代理人の共通性を詐害の理由に挙げている。
しかしながら、この点については、本件と他の案件とは異なる別の事案であり、別の案件で代理人が共通するからといって詐害性を推測するのは妥当ではない。本件商標の出願時の代理人もウィンテックではなく、本件審判の代理人は、請求人の依頼に基づき債務を履行したにすぎない。
したがって、本件審判は、仮差押権者の権利又は利益を害する目的をもって請求されたものではなく、権利の濫用にもあたらないことは明らかである。参加人の主張は単なる推測に基づくものであり、請求人と被請求人の共謀は立証されていない。
(3)不使用の事実についての補足
被請求人が本件商標を使用していないことは、添付の資料からも明らかである。
すなわち、被請求人の日本国における輸入総代理店であるドド・ジャパンは、平成19年2月15日に、「パルガントン」ブランドの製品の「500万個販売記念スペシャルセット」を発売している(甲第2号証、甲第3号証)。そして、その販売累計を証明すべく、ドド・ジャパンは、製品取扱店に対し「販売累計リスト」を送付している(甲第4号証)。そのリストによれば、「品目」欄の上から9番目に「PG Pon Pon Powder」、すなわち、本件商標に係る製品についての販売累計が掲載されており、2004年下半期には廃番になっていることがわかる。
したがって、本件商標は、3年以上不使用であることが明らかであるから、その登録を取り消されるべきものである。
(4)むすび
以上より、参加人の答弁の理由は成り立たないものであるから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

第4 参加人の主張
参加人は、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として丙第1号証ないし丙第23号証を提出した(なお、丙第1号証ないし丙第22号証は、参加申請書に添付されたものである。)。
1 本件商標の経緯
(1)本件商標は、平成16年6月18日に、マグザスによって登録された(丙第1号証、丙第2号証)。
(2)平成16年(2004年)12月14日の連帯保証契約に基づき、マグザスに対して5億大韓民国ウォンの債権を有している参加人は、平成18年8月22日、東京地方裁判所に対し、本件商標の仮差押命令申立てを行い(丙第3号証)、同年9月12日に仮差押決定を受け(丙第4号証)、同仮差押は平成18年9月27日に登録された(丙第2号証)。
(3)その後、平成19年8月22日に、本件商標権は、マグザスから被請求人に移転された(丙第2号証)。
2 本件商標が被請求人によって使用されていること
(1)本件関連商標
被請求人は、本件商標のほかに、日本国内において、以下に示すアないしエの商標(これらをまとめていうときは、以下「本件関連商標」という。)を第3類の商品を指定商品として商標登録を受けている(丙第5号証ないし丙第8号証)。
ア 「Palgantong」と「パルガントン」の文字を二段に横書きしてなる登録第4989970号商標(以下「本件関連商標1」という。)
イ 別掲1のとおりの構成よりなる登録第5003730号商標(以下「本件関連商標2」という。)
ウ 別掲2のとおりの構成よりなる登録第4940539号商標(以下「本件関連商標3」という。)
エ 別掲3のとおりの構成よりなる登録第4940540号商標(以下「本件関連商標4」という。)
(2)被請求人による「PALGANTONG」商標の使用
ア 被請求人は、2007年1月29日に、ドド・ジャパン(丙第9号証)に対し、本件関連商標及び本件商標を含む「パルガントン」の化粧品ブランドの通常使用権を付与した(丙第10号証)。なお、丙第10号証は、被請求人を原告とする本件関連商標の商標権侵害を理由とする訴訟(福岡地方裁判所、平成19年(ワ)第4128号商標権侵害排除請求の訴え。以下「別訴事件」という。)において、被請求人自らが提出したものである。
イ ドド・ジャパンは、その輸入する商品(フェイスパウダー)に、「PALGANTONG」の文字を付けて日本国内で広告及び販売をし、遅くとも2007年11月に、「PALGANTONG」の商標の使用をしている(丙第11号証ないし丙第14号証及び丙第16号証)。なお、丙第11号証ないし丙第14号証及び丙第16号証は、すべてドド・ジャパンが作成したものである。このことは、これらの証拠がすべて同じホームページであるところ、丙第11号証に「会社概要」として「株式会社ドド・ジャパン」が明確に記載されていることから明らかである。また、これら各号証の末尾に、いずれも「palgantong.co.jp」というドメイン名が記載されているが、当該ドメイン名は、ドド・ジャパンの登録したドメイン名であるからである(丙第23号証)。
(3)使用に係る商標と本件商標が社会通念上同一であること
ア 商標法第50条第1項は、「片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標…その他社会通念上同一と認められる商標」の使用があれば、同条項の「使用」であると認めている。また、特許庁商標課編・商標審査基準(改訂第5版)によれば、(ア)ローマ字の同一字形における大文字と小文字の相互間の使用の場合と、(イ)登録商標と他の文字、図形又は記号との同時使用の場合には、登録商標との社会通念上の同一性が認められるとしており、(イ)の例として、「VHC」と「水冷VHC圧縮機」が挙げられている(丙第17号証)。
イ そして、ドド・ジャパンが使用する商標と、本件商標を比較すると、(ア)「PALGANTONG」と「Palgantong」の場合は、ローマ字の文字の表示を相互に変更するものであり、また、「PALGANTONG」と「パルガントン」の場合も、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであり、いずれの場合も、「パルガントン」という同一の称呼及び観念を生ずる商標であり、かつ、(イ)本件商標は、「パルガントン」という称呼の部分に、「Pon Pon Powder」という他の文字が同時に使用されているだけにすぎない。このことは、「VHC」と「水冷VHC圧縮機」の商標の関係と全く同じである。
したがって、使用に係る商標と本件商標は、社会通念上同一であることが明らかである。
ウ 取引の実情を考慮すると、本件商標のうち、「Pon Pon Powder」の文字部分は、単にポンポン使用するパウダーという意味を持つにすぎず、むしろ「Palgantong」という文字部分にこそ商品識別力がある。
そして、被請求人自身も、別訴事件において、「原告(注:被請求人)商品は、前記登録商標(注:本件関連商標)で示される『Palgantong パルガントン』『PALGANTON』という呼称において、既に大きな商品識別力を有している」と主張した(丙第18号証)。さらに、丙第16号証の「商品説明」の部分には、明確に「ふわふわスポンジー体型チークで、ポンポン叩くだけで、いつでも可憐で上品なセレブ顔を作り上げます。」と記載されていることから、「Pon Pon Powder」とは、単にポンポン使用するパウダーという意味が明確になっている。
したがって、取引の実情を考慮しても、「Pon Pon Powder」は、単にポンポン使用するパウダーという説明的記載にすぎず、商品識別力を持つものではない。
そして、この点は、上記「水冷VHC圧縮機」という商標において、「VHC」に付加されている「水冷」「圧縮機」という部分が、「水で冷やす」「圧縮機」程度の説明的記載にすぎないことと同じである。
(4)まとめ
以上のとおり、使用に係る商標と本件商標は、社会通念上同一である以上、本件商標は使用されていることが明らかである。
3 権利濫用
(1)被請求人が、別件審判において何ら答弁を行っていないこと
参加人は、平成18年9月12日に、別件商標登録に対しても仮差押を行った(丙第20号証)ところ、請求人は、別件商標登録について別件審判を請求し、これに対して、被請求人が何ら答弁を行わなかったため、同20年5月27日に、別件商標登録を取り消すとする審決がされた(丙第21号証)。
この点、被請求人は、同19年8月22日に、わざわざマグザスから、別件商標の商標権の移転を受け(丙第20号証)、その結果、同日以降、別件商標登録の商標権者として登録されていたのであるから、その後に、当該商標登録について、他者から別件審判の請求がなされれば、当該商標登録を守るべく、答弁をして然るべきである。しかし、被請求人は、別件審判において何ら答弁を行っていないのである(丙第21号証)。
よって、別件審判においては、請求人と被請求人が共謀して、別件商標登録の仮差押債権者である参加人(審決注:「請求人」とあるのは誤記と判断した。)の権利又は利益を害する目的をもって、別件商標登録を取り消すとする審決をさせたことは明らかである。
したがって、本件商標についても、請求人と被請求人が共謀して、本件商標の仮差押債権者である参加人(審決注:「請求人」とあるのは誤記と判断した。)の権利又は利益を害する目的をもって本件審判を請求していることは明らかである。
(2)代理人の共通性
本件関連商標1及び2のいずれについても、出願代理人は、ウィンテックであった(丙第5号証、丙第6号証)。ところが、本件審判の請求人の代理人もウィンテックである(丙第22号証)。さらに、別件審判(丙第20号証)における請求人の代理人もウィンテックであった(丙第21号証)。すなわち、ウィンテックは、一方で、「Palgantong」に関する商標の出願をしておきながら、一方で、請求人の依頼を受けて、同じく「Palgantong」に関連する商標の不使用取消審判を行っているのである。
しかし、上記の経緯からすれば、ウィンテック内部において、当然、利益相反についての検討がなされているはずである。そして、被請求人において、事前に請求人からの本件商標の不使用取消審判を争わない旨の内諾があったからこそ、ウィンテックは、請求人の依頼を受けて、本件商標の不使用取消審判を行っているものであることは明らかである。だからこそ、被請求人は、未だ本件審判を争っていないのである。
(3)以上のとおり、請求人と被請求人が共謀して、本件商標権の仮差押債権者である参加人(審決注:「請求人」とあるのは誤記と判断した。)の権利又は利益を害する目的をもって本件審判を請求していることは明らかである以上、請求人による本件審判の請求は、権利の濫用であることも明らかである。
4 まとめ
よって、本件商標の登録は、商標法第50条により取り消されるべきではない。

第5 被請求人の答弁
被請求人は、答弁していない。

第6 当審の判断
1 本件商標権について
商標登録原簿の記載によれば、本件商標権は、その権利者をマグザスとして、平成16年6月18日に設定登録された。その後、参加人を債権者として、本件商標権に対し仮差押され、その登録が同18年9月27日になされた。さらに、特定承継による商標権の移転によって、本件商標権の権利者は被請求人となり、その登録が同19年8月22日になされた。なお、本件審判の請求日は、同20年10月3日であり、その登録が同月21日になされた。
2 ドド・ジャパンによる商標の使用について
(1)丙第9号証ないし丙第16号証によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 丙第9号証は、東京都台東区東上野二丁目13番2号所在のドド・ジャパンの履歴事項全部証明書(証明日:平成21年1月6日)であり、その目的の欄には、「化粧品の製造及び販売」「化粧品の輸入及び輸出」等の記載がある。
イ 丙第10号証は、被請求人の代表者とドド・ジャパンの代表者との間で締結した2007年1月29日付け同意書であるところ、その内容は、被請求人がドド・ジャパンを「パルガントン」ブランドの化粧品の日本における独占的輸入業者であることを許可すること及びドド・ジャパンが日本において被請求人の代理店の地位にあることに両社が同意したというものであり、その独占的な期間は、2008年12月までである(ただし、期間の更新がある。)。
ウ 丙第11号証ないし丙第16号証は、ドド・ジャパンのホームページであり、これらによれば次の事実が認められる(これらがドド・ジャパンの作成に係るものであることについては、当事者間に争いがない)。
(ア)丙第11号証ないし丙第14号証(いずれも2007年(平成19年)11月にプリントアウトされたもの)には、いずれもその最上段に「韓国コスメの超人気ブランド?パルガントンの化粧品をご紹介」との文字が記載され、その下に、本件関連商標3(別掲2)と同一の構成よりなる商標が表示されている。
丙第11号証には、その左下に、ドド・ジャパンの会社概要が記載され、その右には、商品の写真が掲載され、その包装容器の蓋部分に、円弧状に表した「PALGANTONG MAKE-UP」の文字とその内側に2つの仮面様図形が表示され、さらに、その下に、「THEATRICAL POWDER」の文字が表示されている。
丙第12号証には、中央に表示された「シアトリカルパウダー」の文字と共に、数種の商品の写真が掲載され、これらの包装容器の蓋部分には、丙第11号証に掲載された商品に表示されているものと同一の「PALGANTONG MAKE-UP」の文字とその内側に2つの仮面様図形が表示されている。
丙第13号証は、中央に、本件関連商標3と同一の構成よりなる商標が大きく表示され、その下に、「パルガントンは韓国語で(赤い箱)という意味を持っています。」と記載され、さらに、その下には、丙第11号証に掲載された商品を含む数種の商品の写真が掲載されている。
丙第14号証は、中央やや上段に、「肌に凛とした透明感を与えるオリジナル・アジアンカラー」「乾かない くずれない くすまない」と記載され、その下に、包装容器に丙第11号証に掲載された商品に表示されているものと同一の「PALGANTONG MAKE-UP」の文字とその内側に2つの仮面様図形が表示された「シアトリカルパウダー」の部分写真、包装容器に「PALGANTONG」の文字が表示された「ワンタッチカラー エッセンスクリーム(ファンデーション)」の部分写真、包装容器に本件関連商標3と同一の構成よりなる商標が表示された「ナチュラルパクトミニ」の部分写真、包装容器に「PALGANTONG」の文字が表示された「パッティングチーク」の部分写真等が掲載されている。なお、「パッティングチーク」の商品説明として、「ポンポン叩いて、華やかな肌色を作る…」などと記載されている。
(イ)丙第15号証及び丙第16号証は、いずれも2008年(平成20年)12月25日にプリントアウトされたものであり、その内容が本件審判の請求の登録(平成20年10月21日)前3年以内に掲載されたものであることを裏付ける証拠の提出はない。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、本件商標権の通常使用権者と認め得るドド・ジャパンは、請求に係る指定商品中のおしろいの範ちゅうに属する、(ア)「シアトリカルパウダー」について、円弧状に表した「PALGANTONG MAKE-UP」の文字とその内側に2つの仮面様図形を配してなる商標(以下「使用商標1」という。)を表示し、(イ)「ワンタッチカラー エッセンスクリーム(ファンデーション)」について、「PALGANTONG」の文字よりなる商標(以下「使用商標2」という。)を表示し、(ウ)「ナチュラルパクトミニ」について、本件関連商標3と同一の構成よりなる商標(以下「使用商標3」という。)を表示し、(エ)「パッティングチーク」について、「PALGANTONG」の文字よりなる商標(使用商標2)を表示し、(オ)これらの商品が掲載されたホームページには、いずれも本件関連商標3と同一の構成よりなる商標(使用商標3)を表示し、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、これらの商品に関する広告を電磁的方法により提供していたと認められる(ドド・ジャパンが本件商標権の通常使用権者であること、使用に係る商品が請求に係る指定商品に含まれること及び丙第11号証ないし丙第14号証が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において広告されたものであることについては、請求人は争うことを明らかにしていない。)。
なお、丙第15号証及び丙第16号証に掲載の商品「パッティングチーク」に付された商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、使用されたものと認めることができない。
3 使用商標1ないし3が本件商標と社会通念上同一と認められるか否かについて
(1)使用商標1について
本件商標は、「Palgantong Pon Pon Powder」の文字を標準文字で表してなるものである。
一方、使用商標1は、円弧状に表した「PALGANTONG MAKE-UP」の文字とその内側に2つの仮面様図形を配した構成よりなるものである。
そうすると、使用商標1と本件商標とは、両者の構成態様からして、社会通念上同一のものと認められないこと明らかである。
また、使用商標1中の「PALGANTONG MAKE-UP」「PALGANTONG」の文字部分のみを抽出し、これを捉えて取引に当たる場合があるとしても、これらと本件商標とは、「MAKE-UP」と「Pon Pon Powder」の文字部分の顕著な差異又は「Pon Pon Powder」の文字部分が無いか有るかという顕著な差異を有しているから、これらも社会通念上同一のものと認められないこと明らかである。
この点に関し、参加人は、本件商標は、その構成中の「Pon Pon Powder」の文字部分が「ポンポン使用するパウダー」という意味を有するにすぎず、「Palgantong」の文字部分が自他商品の識別機能を有する旨主張する。
確かに、丙第14号証に記載された「パッティングチーク」の商品説明には、「ポンポン叩いて、華やかな肌色を作る…」などと記載されていることが認められるものの、ここには「Pon Pon Powder」の語の記載はないし、他に「Pon Pon Powder」の語が商品「おしろい」の品質、使用方法等を表示するものとして普通に使用されているという事実は見出すことはできない。
加えて、仮に、本件商標は、その構成中の「Pon Pon Powder」の文字部分がその指定商品の品質、使用方法等を表示するものであって、「Palgantong」の文字部分が自他商品の識別機能を有するものと需要者に認識される場合があるとしても、本件商標の構成は、「Palgantong Pon Pon Powder」の文字よりなるものであることは明らかであるから、例え、「Palgantong」の文字を使用していることが認められても、その使用は、本件商標の専有権の範囲内の使用ではなく、本件商標に類似する商標(禁止権の範囲)の使用であるから、参加人が引用する「VHC」と「水冷VHC圧縮機」との関係とは事案を異にするというべきである。
また、参加人は、被請求人自身も、別訴事件において、本件関連商標で示される「Palgantong パルガントン」「PALGANTON」という呼称に、既に大きな商品識別力を有していると主張した、と主張する。
しかし、本件関連商標には、本件商標が含まれていないことは明らかであるし、参加人の指摘する別訴事件における被請求人の主張は、本件商標における「Pon Pon Powder」の語の自他商品の識別機能の有無についての判断を左右するものでもなく、また、「Pon Pon Powder」の語の自他商品の識別機能の有無にかかわらず、「Palgantong」の文字の使用が、本件商標の使用に当たらないことは、上述のとおりである。
したがって、参加人の上記主張は、いずれも理由がなく、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。
(2)使用商標2について
使用商標2は、「PALGANTONG」の文字よりなるものである。
そうすると、使用商標2は、前記(1)において認定した「Palgantong」の文字の使用と同様の理由により、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。
(3)使用商標3について
使用商標3は、2つの仮面様図形を配してなり、その下に、「PALGANTONG」の文字を横書きした構成よりなるものである。
そうすると、使用商標3と本件商標とは、両者の構成態様からして、社会通念上同一のものと認められないこと明らかである。
また、使用商標3中の文字部分のみを抽出し、これを捉えて取引に当たる場合があるとしても、「PALGANTONG」の文字部分は、前記(1)において認定した「Palgantong」の文字の使用と同様の理由により、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。
したがって、使用商標3は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。
(4)以上によれば、使用商標1ないし3は、いずれも本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。
4 権利の濫用について
(1)参加人は、別件審判において、被請求人が何ら答弁を行っていないのは、別件商標の仮差押債権者である参加人の権利又は利益を害する目的をもって、別件商標登録を取り消すとする審決をさせたことは明らかであり、本件審判においても、請求人と被請求人が共謀して、本件商標の仮差押債権者である参加人の権利又は利益を害する目的をもって本件審判を請求していることは明らかである旨主張する。
確かに、別件商標登録についても、本件商標と同様に、参加人を債権者として、その商標権に対し仮差押がされていることが認められるが、別件審判と本件審判とは、それぞれ独立した事件として個別に取り扱われるべきものであり、別件審判において、被請求人が何ら答弁をしないことをもって、本件審判について、請求人と被請求人が共謀して、参加人の権利又は利益を害する目的をもって請求されたものと認めることはできない。また、そのように判断すべき事実関係も認められない。
さらに、前記1の認定のとおり、本件商標権に対する仮差押の登録は、平成18年9月27日にされたところ、甲第4号証によれば、本件商標に係る製品は、2004年(平成16年)下半期には「廃番」になっていることが認められ、他に、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品について使用されていると認めるに足る証拠の提出がないことからすれば、本件審判において、被請求人が使用の事実を証明する証拠の提出をしていないとしても、これをもって、本件審判について、請求人と被請求人が共謀して、参加人の権利又は利益を害する目的をもって請求されたものと認めることはできない。
したがって、参加人の上記主張は採用することができない。
(2)また、参加人は、本件関連商標1及び2の出願手続きの代理人は、いずれもウィンテックであったところ、ウィンテックは、別件審判及び本件審判の請求人の代理人としても手続きを行っており、一方で、「Palgantong」に関する商標の出願手続きの代理をしておきながら、他方で、「Palgantong」に関連する商標の不使用取消審判を行っている。これは、被請求人が、事前に本件商標の不使用取消審判を争わない旨の内諾があったからこそ、ウィンテックは、請求人の依頼を受けて、本件商標の不使用取消審判を行っているものであることは明らかである旨主張する。
しかし、ウィンテックが出願手続きの代理人として、あるいは、審判請求手続きの代理人として取り扱った商標が同一又は類似のものであるとはいえ、いずれも全く別の案件についての出願手続き及び審判請求手続きであって、これが弁理士法第31条等に違反する行為であるとはいえない。そして、参加人の上記主張は、証拠によって裏付けられたものではなく、いわば単なる憶測にすぎないものというべきであるから、採用することができない。
(3)以上によれば、本件審判の請求について、権利の濫用があったと認めることができない。
5 むすび
以上のとおり、参加人又は被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をしていたことを証明したものと認めることはできない。また、参加人又は被請求人は、請求に係る指定商品について、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 登録第5003730号商標(本件関連商標2)

(色彩については原本参照)

別掲2 登録第4940539号商標(本件関連商標3)


別掲3 登録第4940540号商標(本件関連商標4)




審理終結日 2009-10-22 
結審通知日 2009-10-27 
審決日 2009-11-10 
出願番号 商願2003-56096(T2003-56096) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邉 健司 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 瀧本 佐代子
小畑 恵一
登録日 2004-06-18 
登録番号 商標登録第4779932号(T4779932) 
商標の称呼 パルガントングポンポンパウダー、パルガントングポンポン 
代理人 黒沼 吉行 
代理人 山上 祥吾 
代理人 特許業務法人ウィンテック 

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