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審決分類 審判 査定不服 商64条防護標章 登録しない X08
管理番号 1214589 
審判番号 不服2009-6135 
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-02 
確定日 2010-03-17 
事件の表示 商願2007-70289拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願標章
本願に係る防護標章登録を受けようとする標章(以下「本願標章」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、第8類「ピンセット,組ひも機(手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る。),電気かみそり及び電気バリカン,手動利器,手動工具,エッグスライサー(電気式のものを除く。),かつお節削り器,角砂糖挟み,缶切,くるみ割り器,スプーン,チーズスライサー(電気式のものを除く。),ピザカッター(電気式のものを除く。),フォーク,アイロン(電気式のものを除く。),糸通し器,チャコ削り器,五徳,十能,暖炉用ふいご(手持ち工具に当たるものに限る。),火消しつぼ,火ばし,護身棒,殺虫剤用噴霧器(手持ち工具に当たるものに限る。),ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット,水中ナイフ,水中ナイフ保持具,ピッケル,パレットナイフ」を指定商品とし、登録第1010081号商標(以下「原登録商標」という。)に係る防護標章登録出願として、平成19年6月15日に登録出願されたものである。

第2 原登録商標
原登録商標は、本願標章と同一の構成からなり、昭和44年4月24日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同48年4月23日に設定登録、その後、同58年12月21日、平成5年5月28日及び同15年1月7日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、指定商品については、同15年4月23日に、第30類「菓子,パン」に書換登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 原査定の拒絶理由(要旨)
原査定は、「本願標章は、他人がこれを本願の指定商品に使用しても商品の出所について、混同を生じさせる程に需要者に広く認識されているものとは認められない。したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。」旨認定、判断し、その登録を拒絶したものである。

第4 当審の判断
1 商標法第64条第1項は、「商標権者は、商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」と規定する。
そこで、以下、これについて検討する。
2 本願標章と原登録商標との一致について
本願標章と原登録商標とが同一のものであること、同じく本願標章の出願人(請求人)と原登録商標の商標権者が同一人であることは、出願書類及び商標登録原簿の記載に照らし、これを認めることができる。
3 原登録商標が需要者の間に広く認識されているか否かについて
請求人は、原登録商標が自己の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている旨述べ、原審における平成20年7月15日付け意見書において参考1ないし28及び当審における同21年4月8日付け手続補正書(方式)において参考29ないし49を提出している。
そこで、請求人の提出した資料を検討するに、請求人は、1905年(明治38年)に藤井パンとして神戸で創業し、1951年(昭和26年)に株式会社ドンクとして設立され、2006年7月時点で資本金約2億1千万円、フランスパンをはじめとする各種パン、フランス菓子の製造、販売及び喫茶室、レストラン営業を事業内容とするものである(参考9の1)。
また、請求人は、2005年6月時点で180店舗を有し(参考5)、2006年2月決算時のパンの売上高311億円は業界第6位の地位にあり(参考4)、また、海外展開としては、2007年9月時点で、台湾に支社を有するとともに、台湾、香港及び上海においてベーカリー店を展開している(参考14)。
さらに、請求人は、こども向けお仕事体験タウンのキッザニア東京及びキッザニア甲子園のスポンサー企業として、こども達がパンの製造を体験できる「パン工場」を運営するとともに(参考9の1ないし9の4、44)、請求人が取扱う商品「パン」について雑誌への広告を行い、新聞及び書籍において請求人が紹介されるとともに(参考5、10の1ないし10の3、11、20ないし21、23ないし29、33ないし35、38ないし41及び43)、2007年度に、請求人は、新聞雑誌96件、テレビ1件及びWEB18件、それぞれ記事掲載されている(参考29)。
そして、提出された資料によれば、原登録商標は、パンの包装袋(参考27 2004年8月25日発行の書籍)、販売店舗内の壁面及び同店舗の外壁での表示(参考3 平成20年1月28日発行、参考19 同20年3月5日発行、参考24 同20年6月1日発行、参考25 同20年8月1日発行、参考32 同20年8月10日特大号の各雑誌・ムック)、キッザニア東京及び同甲子園オフィシャルサイトにおけるスポンサー企業としての記載(参考9の2及び9の3 2008年3月3日複製、参考9の4 2007年2月14日新聞、参考44 2009年2月26日複製)、キッザニア東京のスポンサー権に関するプレスリリースにおける記載(参考9の1 2006年8月9日発表)、雑誌の広告(参考10の3 2007年8月1日、同9月1日及び同10月1日各発行、参考35 2008年11月号記載、参考21 2008年5月1日発行の各雑誌)、請求人のウェブサイト(参考15 2007年6月14日複製)において、それぞれ使用されていることが認められる。
以上の認定事実によれば、請求人は、「藤井パン」の名称で1905年(明治38年)に神戸において創業、その後、1951年(昭和26年)に現社名の「株式会社ドンク」に変更し、フランスパンを中心とした各種パン、フランス菓子の製造、販売等を事業内容とし、パンの売上高は311億円で業界第6位の地位を占め(「パンニュース」2006年4月15日発行)、また、商品を取扱う店舗は、日本全国にわたり、さらに海外にもベーカリー店を展開している。
そして、上記のとおり、原登録商標は、請求人から提出された資料によれば、遅くとも2004年(平成16年)8月25日以降、パンの包装、雑誌における広告、販売店舗における表示、ウェブサイトにおいて継続して使用されており、このような原登録商標の使用は、2004年以前から継続していたものと推認される。
そうすると、原登録商標は、請求人により、同人の取扱いに係る商品「パン」について継続して使用され、現在においては、請求人の業務に係る前記商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているものと認め得るものである。
4 混同を生ずるおそれの有無について
商標法第64条第1項においていう「混同のおそれ」を判断するに当たっては、原登録商標が請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていることを前提として、原登録商標の指定商品と防護標章登録出願の指定商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、防護標章登録出願の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものと解される。
これを本件についてみるに、前記3に記載のとおり、原登録商標は、請求人の取扱いに係る商品「パン」について継続して使用された結果、請求人の業務に係る商品「パン」を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されているといえる。
そして、請求人の取扱いに係る商品「パン」は、小麦粉を主原料とした食品の一種としてパン製造企業が生産し、百貨店やベーカリーショップ等の食品売り場において販売されているところ、本願標章の指定商品には、工作に
用いる器具である手動式工具の分野に属する商品が主として含まれており、これら商品は、一般には、金属製の手動式工具として、機械器具メーカーや日用品メーカー等によって製造され、ホームセンターやスーパーマーケット等の量販店やインターネットにおける通信販売等で販売されていることからすれば、本願標章の指定商品と請求人の取扱いに係る商品「パン」とは、手動式工具と食品という点において商品の性質が異なり、また、前記のとおり、両者の製造者、販売者及び流通業者などの取引系統を異にし、さらに、商品に用いられる材料や用途も相違するといわざるを得ない。
また、本願標章の指定商品中には、パン切り包丁やバターナイフ等のパンに関連する商品も含まれると解されるが、本願標章の指定商品中には、前記第1のとおり、パンに関連する商品以外の商品(手動式工具)が含まれているものである。
してみれば、本願標章の指定商品と原登録商標に係る指定商品「パン」とは、一部の商品において需要者を共通にする場合があるとしても、一般的には、両者の間の性質、用途又は目的を異にする商品であるというのが相当である。
さらに、食品業界における経営の多角化に関し、広く手動工具関連の商品分野についても事業展開を行っている事実は、請求人の提出に係る証拠によっても認めることができない。
そうとすれば、他人が本願標章をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、該商品が請求人の取扱いに係る商品のごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないといわなければならない。
5 請求人の主張について
請求人は、平成20年7月15日付け意見書及び同21年3月2日付け審判請求書において、「菓子パン業者は菓子やパンを販売する店舗内でパン切り包丁やバターナイフなども販売することも少なくなく、出願人(請求人)のように全国的に店舗を構えている場合には、需要者等がこれらの日用品に商標『DONQ』を使用されていると出願人の取扱商品であると誤認混同することは明白である」旨主張する。
しかしながら、「パン切り包丁やバターナイフ」が、パン等の店舗内において販売されること自体を否定するものではないが、本願の指定商品中には、前記第1に記載のとおり、「ピンセット,靴ひも機(手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。)」といった商品も含まれており、これら商品が、パンを販売する店舗において、一般的に販売されているともいい難いものであるから、他人が本願標章を本願の指定商品について使用した場合、需要者が、請求人の取扱いに係る商品と混同することが明らかとはいえず、請求人の主張は採用することはできない。
6 結論
以上によれば、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しないものとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願標章


審理終結日 2010-01-04 
結審通知日 2010-01-08 
審決日 2010-01-22 
出願番号 商願2007-70289(T2007-70289) 
審決分類 T 1 8・ 8- Z (X08)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浅野 真由美大橋 良成 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 田村 正明
木村 一弘
商標の称呼 ドンク、ドンキュウ 
代理人 辻 徹 

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