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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200915782 審決 商標
不服200913085 審決 商標
不服20095060 審決 商標
不服200914585 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項4号 ありふれた氏、名称 登録しない X33
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X33
管理番号 1214555 
審判番号 不服2009-11931 
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-30 
確定日 2010-03-10 
事件の表示 商願2008- 41398拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「YAMAZAKI」のローマ字を標準文字で表してなり、第33類「ウイスキー」を指定商品として、平成20年6月2日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由における要点
原査定は、「本願商標は、出願人の周知著名な『山崎』ではなく、『YAMAZAKI』であり、これまでに提出された証拠資料においても、そのほとんどが『YAMAZAKI』ではなく、『THE YAMAZAKI SINGLE MALT WHISKY』である。そうすると、本願商標は、ありふれた氏の一つである『山崎』に通じる『YAMAZAKI』の文字よりなるものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。また、本願商標は、同法第3条第2項の要件を具備していない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1) 商標法第3条第1項第4号について
本願商標は、前記1のとおり、「YAMAZAKI」のローマ字を標準文字で表してなるものである。
ところで、「大辞泉 増補・新装版」(株式会社小学館発行)及び「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店発行)によれば、「山崎」の文字については、「姓氏の一つ。」又は「姓氏の一。」と記載されているものである。
そして、「山崎」の姓は、「日本人の姓」(佐久間英著、1972年3月8日再版、六藝書房発行)によれば、約30万人で全国第24位に位置づけられていることが記載されており、さらに、「山崎」の姓を有する者は、「ハローページ東京都23区個人名全区版・下巻」(平成13年3月、東日本電信電話株式会社発行)によれば、約5,980名掲載されているものである。
また、インターネット情報(「Google」)において、検索キーワードに「姓」及び「ランキング」を入力して検索すると、「姓」又は「苗字」のランキングを検索することができるウェブサイトがあり、その中でも「姓名分布&ランキング 写録宝夢巣」(http://www2.nipponsoft.co.jp/bldoko/index.asp/)によれば、「山崎」の姓は、第21位で90,781件と記載されている。
そうすると、「山崎」の姓は、我が国においてありふれた氏の一つであると認められ、さらに、「日本人の氏性も日常これを表現する手段として、漢字、片仮名、平仮名、ローマ字等種々な文字を使用することは顕著な事実である。」(昭和41年(行ケ)49号 昭和48年2月23日 東京高裁)と判示されていることからすれば、本願商標「YAMAZAKI」のローマ字は、これに接する取引者、需要者に、我が国においてありふれた氏の一つである「山崎」をローマ字で表したものと容易に理解されると判断するのが相当である。
したがって、本願商標は商標法第3条第1項第4号に該当する。

(2) 商標法第3条第2項について
商標法第3条は、同条第1項第1号ないし第6号に該当する商標については、商標登録できない旨の規定であるが、同条第2項において、「商標法第3条第1項第3号から第五号までに該当する商標であっても、使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。」とされている。
そして、工業所有権法逐条解説[第17版](特許庁編集 社団法人発明協会発行 1173頁)によれば、「本条(商標法第3条)二項は、いわゆる使用による特別顕著性の発生の規定である。前述のように一項各号に掲げる商標は自他商品又は自他役務の識別力がないものとされて商標登録を受けられないのであるが、三号から五号までのものは特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標が、その商品又は役務と密接に結びついて出所表示機能をもつに至ることが経験的に認められるので、このような場合には特別顕著性が発生したと考えて商標登録をしうることにしたのである。」と説明されている。
また、商標法第3条第2項の判断に際しては、「同条項によって商標登録が認められるためには,以下のような要件を具備することが必要であると解される。
ア 使用により自他商品識別力を有すること
商標登録出願された商標(以下「出願商標」という。)が,商標法3条2項の要件を具備し,登録が認められるか否かは,実際に使用している商標(以下「使用商標」という。)及び商品,使用開始時期,使用期間,使用地域,当該商品の生産又は販売の数量,並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して,出願商標が使用された結果,判断時である審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる「自他商品識別力(特別顕著性)」の獲得の有無)によって決すべきものである。
イ 出願商標と使用商標の同一性が認められること
商標法3条2項の要件を具備するためには,使用商標は,出願商標と同一であることを要し,出願商標と類似のもの(例えば,文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。
なぜなら,同条項は,本来的には自他商品識別力がなく,特定人の独占にもなじまない商標について,特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり,実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして,登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると,同条項は,厳格に解釈し適用されるべきものである。」(知財高裁平成18年(行ケ)第10054号 平成18年6月12日判決言渡)と判示されているところである。
なお、請求人は、原審及び当審において「今や洋酒その他の酒の業界並びに愛飲家の間では、『ウイスキー』について『ヤマザキ』と言えば、本願出願人の商品『ウイスキー』を示すものとして認識されているものである。すなわち、登録商標『山崎』は、『ヤマザキ』という称呼を生じる以上は、それが片仮名であろうとアルファベットであろうと、すでに自他商品の識別力を発揮している商標であって、商標法第3条第1項第4号に該当するとしても、同第3条第2項により登録される。」旨主張し、証拠方法として、平成21年1月19日付け第1号証ないし第6号証の4及び平成21年10月6日付け第1号証の1ないし第4号証を提出している。
そして、号証番号については、前記の平成21年1月19日付け第1号証ないし第6号証の4と平成21年10月6日付け第1号証の1ないし第4号証は、提出された証拠の物件名の号証番号が重複しているため、平成21年1月19日付け第1号証ないし第6号証の4及び平成21年10月6日付け第1号証の1ないし第4号証は、職権により、甲号証として連続番号に付け直した。
したがって、平成21年10月6日付け第1号証の1ないし第4号証は、甲第7号証の1ないし甲第10号証として検討する。
ア 甲第2号証は、請求人の指定商品である「ウイスキー」が掲載されたウェブサイトの写しであるところ、「THE」、「YAMAZAKI」、「SINGLE MALT」、「WHISKY」の文字を四段に表し、その右横に大きく縦書きに「山崎」(別掲)の文字が記載されている。
イ 甲第3号証の1ないし5は、2004年ないし2008年のサントリー製品一覧表抜粋の写しであるところ、「ウイスキー」の商品ラベルに、「山崎」(別掲)の文字は確認できるものの、「YAMAZAKI」の文字までは確認することができない。
ウ 甲第4号証の1は、「ウイスキー」を紹介するウェブサイト内の「在庫リスト:ジャパニーズウィスキー」の写しであるところ、「Yamazaki」の文字と他の文字が共に記載されている。
エ 甲第4号証の2は、飲食店のメニューリストを紹介するウェブサイトの写しであるところ、「Yamazaki」の文字と他の文字が共に記載されている。
オ 甲第5号証は、「WHISKY Magazine」と称するウェブサイトの写しであるところ、「YAMAZAKI」、「Yamazaki」の文字と他の文字が共に記載されている。
カ 甲第7号証の1及び2は、新聞・雑誌等に掲載された広告の写しであるところ、甲第7号証の1は、「山崎」(別掲)の文字は確認できるものの、「YAMAZAKI」の文字までは確認することができない。また、第7号証の2は、「THE YAMAZAKI SINGLE MALT WHISKY」の文字が記載されている。
キ 甲第8号証は、請求人が、世界的な酒類コンペティション「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション」で「山崎18年」「山崎12年」が最優秀金賞を受賞した「SUNTORY ニュースリリース」の写し。なお、「山崎」(別掲)の文字は確認できるものの、「YAMAZAKI」の文字までは確認することができない。
ク 甲第9号証は、日本経済新聞朝刊に掲載した広告の写しであるところ、「YAMAZAKI,」、「THE JAPANESE」、「GOLD.」の文字と、「ウイスキー」の商品ラベルに、小さく「THE」、「YAMAZAKI」、「SINGLE MALT」、「WHISKY」の文字が記載されている。
ケ 甲第10号証は、「楽天市場」のサントリーの商品を紹介するウェブサイトの写しであるところ、「サントリー 山崎」の「ウイスキー」の商品箱には、「山崎」の文字と共に「“YAMAZAKI”」の文字及びそのウェブサイトの下段に「■Suntory Single Malt Whisky『YAMAZAKI』18years」の文字が記載されている。
以上のとおり、請求人が提出した甲各号証を総合して判断すると、「YAMAZAKI」のローマ字を標準文字で表した本願商標と、請求人の提出に係る甲各号証に使用している商標とは、その書体、構成態様を異にするものであるから、出願された商標と使用している商標とは、同一とはいえず、商標法第3条第2項の要件である、出願商標と使用商標の同一性は認められない。
また、実際に使用している商標及び商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の生産又は販売の数量、並びに広告宣伝の方法及び回数等について、請求人の提出に係る甲各号証は、商標の周知性を客観的に示すものとして十分なものと認めるに足りるものではなく、本願商標は、その指定商品について使用された結果、請求人の業務に係る商品であることが、取引者、需要者間に広く認識されるに至ったものであるとは認めることはできない。
してみれば、本願商標「YAMAZAKI」のローマ字が、その指定商品「ウイスキー」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至ったものと認めることはできず、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものと認めることはできない。
よって、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得したとする請求人の主張は採用することはできない。
なお、請求人が上げた過去の登録例(甲第6号証の1ないし4)については、商標の構成等において事案を異にするものであり、ある商標が識別力を有するか否かの判断は、個々の商標ごとに個別具体的に判断されるべきものであるから、本願の判断に影響を与えるものとは認められない。

(3) まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないとした原査定は妥当であって、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲(使用商標)


(色彩については原本を参照)
審理終結日 2010-01-06 
結審通知日 2010-01-12 
審決日 2010-01-25 
出願番号 商願2008-41398(T2008-41398) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (X33)
T 1 8・ 14- Z (X33)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 昇 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 大島 康浩
小畑 恵一
商標の称呼 ヤマザキ 
代理人 足立 泉 
代理人 中田 和博 
代理人 青木 博通 
代理人 柳生 征男 

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