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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20094717 審決 商標
不服200733414 審決 商標
不服200831508 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 取り消して登録 Y3645
審判 査定不服 商6条一商標一出願 取り消して登録 Y3645
管理番号 1214549 
審判番号 不服2008-15081 
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-16 
確定日 2010-03-31 
事件の表示 商願2006-103144拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 1 本願商標
本願商標は、「日本のヘレン・ケラーを支援する会」の文字を書してなり、第36類及び第45類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成18年11月7日に登録出願され、その後、指定役務については、同22年1月15日付けの手続補正書により、第36類「盲ろう者支援のための募金,慈善のための募金」及び第45類「盲ろう者の社会参加・自立・就職に関する身の上相談,盲ろう者の生活に関する悩み相談,盲ろう者を対象とした身の上相談,身の上相談」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、以下の(1)及び(2)を認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(1)本願に係る指定役務中「盲ろう者の社会参加・自立に関する相談・助言及び支援情報の提供」は、その内容及び範囲を明確に指定したものとは認められない。また、前記指定役務が不明確でその内容及び範囲が把握できないことから、政令で定める商品及び役務の区分に従って役務を指定したものと認めることもできない。
したがって、本願商標は、商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備しない。
(2)本願商標は、「日本のヘレン・ケラーを支援する会」の文字を書してなるところ、その構成中「ヘレン・ケラー」の文字は、アメリカの教育家・社会福祉事業家であり、自らも障害を背負いながらも、世界各地を歴訪し、身体障害者の教育・福祉に尽くしたことで、日本はもとより世界中に知られた人物である(1880年6月27日 - 1968年6月1日)。
してみれば、本願商標をその指定役務について出願人が商標として採択使用することは、米国国民の感情を害し、国際信義の観点に照らして穏当でない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

3 当審の判断
(1)商標法第6条第1項及び第2項について
本願は、その指定役務について前記1のとおり補正された結果、役務の内容が明確になったものと認められる。
その結果、本願の指定役務は、商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備するものとなった。

(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 請求人の提出に係る甲第1号証ないし甲第22号証(枝番を含む。ただし、以下、枝番のすべてを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)及び、職権による調査によれば、以下の事実が認められる。
(ア)「ヘレン・ケラー」の周知・著名性
「ヘレン・ケラー」(1880?1968)は、アメリカの教育家・社会福祉事業家であって、2歳の時盲聾唖となり、自らも重い障害を背負いながらも、世界各地を歴訪し、身体障害者の教育・福祉に尽くした人物であり、3度の来日や、書籍、映画等を通して、日本はもとより世界的によく知られ著名であるといえる(株式会社岩波書店 広辞苑第六版、以下のフリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」のウェブサイト参照)。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%A9%E3%83%BC)
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%87%E8%B7%A1%E3%81%AE%E4%BA%BA)
(イ)「ヘレン・ケラー」の使用例
「ヘレン・ケラー」の名前を用いた福祉団体、施設及び会議名が、社会福祉活動の様々な場面において、日本はもとより世界中に存在する。
我が国においては、1948年(昭和23年)の女史2度目の来日を記念して、「財団法人東日本ヘレン・ケラー財団」(現・社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会)と、「財団法人西日本ヘレン・ケラー財団」(現・社会福祉法人日本ヘレン・ケラー財団)という福祉団体が設立され、さらには、ヘレン・ケラーの出身地である米国ニューヨーク市には、1969年に「盲ろう者一人一人が自ら選んだ地域で仕事をしながら暮らしていけるように支援すること」を使命とし設立された「ヘレン・ケラー・ナショナルセンター(Helen Keller National Center for Deaf-Blind Youths and Adults)」という施設の存在(運営費は大半を政府の助成によるが、政府から独立した機関)及び世界各地で4年に1回開催されている「ヘレン・ケラー世界会議(Helen Keller World Conference)」(1977年に米国・ニューヨークで第1回会議が開催されて以来、世界各地で4年に1回開催されている盲ろう者の世界会議。直近の2005年にはフィンランドで第8回会議が開催された。なお、該会議は、現在、世界盲ろう者連盟により企画・運営が行われており、本願請求人はその会員であることが認められる。)の存在がある(甲第12号証ないし甲第18号証)。
(ウ)請求人の沿革・事業内容
請求人は、1991年(平成3年)に社会福祉法人としての認可を得、「社会福祉法人全国盲ろう者協会」として、全国の盲ろう者の支援活動を行っている。その主な事業内容としては、盲ろう者関係生活相談事業、盲ろう者向け通訳・介助者養成事業、盲ろう者国際協力推進事業、盲ろう者向け通訳・介助者派遣事業等である(甲第1号証ないし甲第11号証)。
(エ)「?日本のヘレン・ケラーを支援する会?」の採択経緯
甲第21号証の「盲ろう者の専門誌『コミュニカ』(2006年・秋・No.33)」には、「請求人の協会名『全国盲ろう者協会』が障害特性をイメージしにくい等の理由で、啓発運動や募金活動などに支障を生じている。そこで、当該協会は、『ヘレン・ケラー』の名称の知名度の高さ、当該協会の活動内容にもよく調和するとして、『?日本のヘレン・ケラーを支援する会?』というコミュニケーションネームを使用する。これを使用するに当たっては、『ヘレン・ケラー』を冠した他の社会福祉法人と紛らわしくない範囲で使用する。なお、このことについては、これらの社会福祉法人から了承されている」旨の記載がある。
また、請求人が、上記コミュニケーションネームを使用することに関し、ヘレン・ケラーの来日を記念して設立された上記(イ)の社会福祉法人から了承を得ていることが窺える(甲第19号証ないし甲第21号証)。
そして、実際に、「?日本のヘレン・ケラーを支援する会?」の文字が、請求人のパンフレット、雑誌等に、コミュニケーションネーム、すなわち、愛称として、請求人である「社会福祉法人 全国盲ろう者協会」の文字と共に使用されている(甲第2号証、甲第4号証及び甲第10号証)。

イ 上記アのとおり、「ヘレン・ケラー」は、重い障害をもつアメリカの教育家・社会福祉事業家として、日本はもとより世界的によく知られているものである。
しかしながら、障害者福祉の世界における「ヘレン・ケラー」という名前の用いられ方、請求人のこれまでの盲ろう者支援事業活動内容や、「?日本のヘレン・ケラーを支援する会?」の採択経緯などに照らすならば、「日本のヘレン・ケラーを支援する会」の文字よりなる本願商標の構成中に、「ヘレン・ケラー」の文字を含んでいるとしても、本願商標をその指定役務に使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものとはいい難く、また、他の法律によってその使用が禁止されているものとすべき事実も認められないものである。
また、本願商標は、商標の構成自体には公序良俗違反がないことは明らかであり、さらに、上記認定判断のほか、米国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでなく、本願商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くというものでもない。
そうすると、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきではない。

(3)まとめ
したがって、本願商標が商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備しないとする原査定の拒絶の理由は解消したものであり、また、本願商標が同法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。
その他、政令で定める期間内に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2010-02-23 
出願番号 商願2006-103144(T2006-103144) 
審決分類 T 1 8・ 91- WY (Y3645)
T 1 8・ 22- WY (Y3645)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原田 信彦田中 幸一 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 豊田 純一
小川 きみえ
商標の称呼 ニッポンノヘレンケラーオシエンスルカイ、ヘレンケラーオシエンスルカイ、ヘレンケラー、ヘレン、ケラー 
代理人 亀川 義示 

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