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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X3543
審判 全部申立て  登録を維持 X3543
審判 全部申立て  登録を維持 X3543
管理番号 1211542 
異議申立番号 異議2009-900231 
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2010-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2009-06-22 
確定日 2010-01-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第5214825号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5214825号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5214825号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成20年5月1日に登録出願、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食施設の提供に係る事業の管理又は運営,飲食物の販売に関する情報の提供」及び第43類「アルコール飲料を主とする飲食物の提供及びこれに関する情報の提供,レストラン・バーにおける飲食物の提供,セルフサービス方式による飲食物の提供,バー及びナイトクラブにおけるアルコール飲料を主とする飲食物の提供,ビール・ワインを主とする飲食物の提供,飲食物の提供」を指定役務として、同21年2月5日に登録査定、同年3月19日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
1 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、以下の(1)ないし(5)のとおりである。
(1)登録第4908960号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成16年8月31日に登録出願、第41類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同17年11月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第4910425号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成16年8月31日に登録出願、第41類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同17年11月25日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(3)登録第5046547号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)のとおりの構成からなり、平成18年6月20日に登録出願、第35類、第36類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同19年5月11日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(4)登録第4965244号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(5)のとおりの構成からなり、平成14年6月28日に登録出願、第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同18年6月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(5)甲第6号証のウェブサイト中に表示されている商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(6)のとおりの構成からなるものである。
2 申立ての理由の要点
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「W」の文字を大きく赤色で表し、続けてその半分程度の高さの「BAR」の文字を紺色で表したものである。本件商標にあっては、色彩、大きさからして特に顕著な「W」の文字部分が単独で自他役務の識別標識として機能し得ることは明らかである。
一方、引用商標1ないし3は、いずれも「W」の文字を(他の「HOTELS」の文字や装飾的図形に比して)大きく黒地に白又は黒色で表しており、この「W」の文字が要部であることも明らかである。
本件商標の「W」の文字は、線の上方がやや太くなってはいるものの、「W」(ダブリュウ)をモチーフとし、バランスよく、上下の頂点が平行になるよう図案化した構成において引用商標1ないし3と共通し、視覚的に似通った印象を与える。
してみれば、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中、特に顕著な「W」の文字部分を主要な識別標識として認識し、その外観から受ける印象と「ダブリュウ」の称呼をもって取引に資する場合もあるとみるべきである。
ゆえに、本件商標がその指定役務中、第35類「飲食施設の提供に係る事業の管理又は運営,飲食物の販売に関する情報の提供」及び第43類に属する役務に使用された場合、引用商標1ないし3とは、その構成や外観の印象において共通し、「ダブリュウ」の称呼を同じくするため相紛れるおそれがあり、類似の商標であるといわざるを得ない。また、本件商標の指定役務と引用商標1ないし3の指定役務は、同一又は類似する役務である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標4及び5の周知性について
(ア)申立人は、「SHERATON(シェラトン)」、「WESTIN(ウェスティン)」、「St.REGIS(セント・レジス)」といったブランドでハイグレードなホテルチェーンを経営しており、ホテルの数は全世界で900を超える。
なかでも、洗練されたスタイルと行き届いたサービスを融合させたブランドである引用商標4又は「W」(引用商標5:甲第6号証)は、1998年オープンの「W ニューヨーク」に始まり、現在では世界の主要都市やリゾート地に30を超える「W」ホテルを展開し大きな話題を集めており、さらに20件程度の新規開業が決まっている。アジアでは香港、韓国ソウルに「W」ホテルがあり、2012年5月に日本での第1号として横浜での開業を予定している。
(イ)申立人は、1998年以来「W HOTELS」及び「W」ホテルのブランドの広告宣伝、キャンペーンを大規模かつ継続的に行ってきた。また、「W HOTELS」は、申立人が展開する他のブランドのホテルとともに優待制度「Starwood Preferred Guest (SPG)」プログラムの対象とっている(甲第7号証)。さらに、アジアでは香港の「W」ホテルや、近年の韓国ドラマや旅行ブームにのって2004年8月開業のソウルの「W」ホテルは、海外のみならず日本の新聞、雑誌、ガイドブックなどで大々的に頻繁に取り上げられ、数々のドラマの舞台としても登場している。
「W HOTELS」及び「W」ホテルブランドは、そのコンセプトとともに憧れのホテルとして浸透し、日本においても一般に広く知られた周知商標となっている。
(ウ)本件商標の登録出願前である2006年から現在まで香港やソウルの「Wホテル」について掲載された新聞、雑誌、ガイドブックなどの出版物、2008年3月の韓国旅行のパンフレット、インターネットの海外ホテル検索サイトの情報等を証拠として提出する(甲第8号証ないし甲第35号証)。
イ 商標権者による本件商標の使用
本件商標は、特に顕著に表された「W」の文字部分が単独で自他役務の識別標識たり得ることは前述のとおりであるが、さらにその指定役務中「アルコール飲料を主とする飲食物の提供、レストラン・バー及びナイトクラブにおける飲食物の提供、ビール・ワインを主とする飲食物の提供」といったサービスに関しては、「BAR」の文字部分が役務の内容を表すため、本来識別力のない部分ということができる。商標権者の営業に係ると思われる東京都目黒区上大崎所在の「W-BAR」のウェブサイトでは、実際に本件商標中の書体や色彩(赤色)が同じ「W」の文字部分のみがトップページ、各ページの上部に大きく表示されている(甲第36号証)。この点からも本件商標中の構成において「W」の文字部分が主要な、又は単独で機能する自他役務の識別標識であることは明白である。
ウ 出所の混同のおそれ
(ア)引用商標4及び5は、本件商標の登録出願時から現在に至るまで、申立人のホテルブランドを指称するものとして周知であることは前述のとおりである。
(イ)一方、本件商標の指定役務は、申立人が提供するハイグレードなホテルの魅力のひとつとして不可欠かつ密接な関係にあるレストラン等での飲食物の提供や、多くのブランドでホテルチェーンを展開、経営している申立人の事業の管理・運営に係る役務と重複するものである。
(ウ)こういった状況において、本件商標に接する取引者、需要者は、特に顕著な「W」の文字部分に着目し、これを役務の識別標識として取引にあたる可能性が高く、かつ商標権者が実際に「W」の文字部分のみを使用している事実に照らせば、前述した構成や外観の印象において共通し「ダブリュウ」の称呼を同じくする引用商標4及び5と相紛れるおそれの高い類似商標といわざるを得ない。特に、旅行やグルメ関連の記事、情報は、同一の媒体で扱われることが多く、取引者、需用者の範囲も重なることが想定される本件商標がその指定役務(飲食物の提供等)に使用された場合、当該役務が申立人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く誤認し、その出所について混同が生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当すると思料する。
3 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によりその登録を取り消されるべきである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおり、赤色の「W」の文字を顕著に表し、その右にわずかに間隔を空けて紺色の「BAR」の文字を小さく横書きした構成からなるものである。
そして、本件商標は、上記「W」と「BAR」の各文字部分を個別に観察してみれば、その構成中の「W」の文字が赤色で大きく表されているとしても、格別特異なデザインが施されているものとまではいえないものであって、欧文字の一文字「W」を表したものと容易に認識、把握されるものであり、欧文字の一文字は、役務の等級、質等を表すための記号・符号として取引上普通に使用されているものであるから、該「W」の文字自体は、その一類型と理解されるというのが相当である。
また、本件商標構成中の「BAR」の文字は、「酒場、売場」等(「研究社新英和大辞典第6版」2002年3月 株式会社研究社発行)を意味する英語として知られているものであり、本件商標の指定役務との関係からして、役務の質ないし役務の提供場所を表すものとして理解されるというのが相当であるから、本件商標は、「W」と「BAR」の各文字部分がいずれも自他役務の識別標識としての機能がないか又は極めて弱いものである。
しかして、本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からして、全体としては「W」と「BAR」の各文字が外観上まとまり良く一体的に表されているといえるものであり、これより生ずると認められる「ダブリューバー」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく、一気一連に発音できるものであるから、その構成中の「W」と「BAR」の各文字部分のいずれもが、他の文字部分を捨象し独立して取引に資されるということはできない。
そうすると、本件商標は、構成文字全体に相応して、「ダブリューバー」のみの称呼を生ずる一体不可分の一種の造語を表したものと認識し、把握されるというのが自然である。
(2)引用商標1ないし3について
引用商標1は、別掲(2)のとおり、黒地四角形内に「W」の文字及びその下に横長変形の線図形をそれぞれ白抜きで表した構成からなるものである。
引用商標2は、別掲(3)のとおり、黒地四角形内の上部に「W」の文字、その下に小さく表した「HOTELS」の文字及び下部に横長変形の線図形をいずれも白抜きで表した構成からなるものである。
引用商標3は、別掲(4)のとおり、「W」の文字を顕著に表し、その下に小さく表した「HOTELS」の文字を配した構成からなるものである。
そして、引用商標1ないし3において、その構成中の「W」の文字部分は、本件商標と同様に欧文字の一文字「W」を書したものと容易に認識、把握されるものといえ、また、「HOTELS」の文字部分は、その指定役務中の「ホテル」に係わる役務との関係からして、それぞれ単独では自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当である。
しかして、引用商標1ないし3は、それぞれ上記のとおりの構成からして、全体としては「W」の文字と「横長変形の線図形」又は「HOTELS」の文字とが外観上まとまり良く一体的に表されているといえるものである。
そうすると、引用商標1は、「W」の文字と「横長変形の線図形」とからなる特定の観念を有しない一体不可分の商標というのが相当であり、また、引用商標2及び3は、その構成する文字部分全体に相応して「ダブリューホテルズ」のみの称呼を生じ、後記2(2)のとおり、申立人が「宿泊施設の提供」等に「W」と「HOTELS」の文字を組み合わせて使用していることからすれば、申立人に係るホテルの名称を表したものと認識し、把握されるというのが自然である。
(3)本件商標と引用商標1ないし3との類否について
ア 本件商標と引用商標1との類否
上記のとおり、本件商標は、「ダブリューバー」のみの称呼を生ずるものであるから、仮に、引用商標1から「ダブリュー」の称呼が生ずるとしても、両者はその音構成及び音数において明らかな差異を有するものであり、称呼上十分区別し得るものである。
また、両者は、外観においても明らかな差異があり、観念においては、いずれも特定の意味を有しないものであるから、比較することができない。
イ 本件商標と引用商標2及び3との類否
本件商標から生ずる称呼「ダブリューバー」と引用商標2及び3から生ずる「ダブリューホテルズ」の称呼とは、後半部の音構成において明らかな差異を有するものであるから、称呼上十分区別し得るものである。また、本件商標と引用商標2及び3とは、外観においても明らかな差異があり、観念においては、本件商標が特定の意味を有しないものであるから、比較することができない。
ウ したがって、本件商標と引用商標1ないし3とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標4及び5について
引用商標4は、別掲(5)のとおり、「W」の文字を顕著に表し、その下に小さく表した「HOTELS」の文字を配した構成からなるものであり、引用商標5は、別掲(6)のとおり、引用商標4の構成に加えて、下段に「WORLDWIDE」の文字を小さく配した構成からなるところ、いずれも「W」と「HOTELS」の各構成文字を外観上まとまりよく一体的に表してなるものであり、また、引用商標5においては、その構成中の「WORLDWIDE」の文字が他の文字部分と比較して極めて小さく表されているばかりでなく構成文字全体から生ずる「ダブリューホテルズワールドワイド」の称呼も冗長であるから、該「WORLDWIDE」の文字を捨象して取引に資する場合も決して少なくないというのが相当である。
そうすると、引用商標4は、その構成文字相応して「ダブリューホテルズ」の称呼を生ずるものであり、また、引用商標5は、その構成文字相応して「ダブリューホテルズ」又は「ダブリューホテルズワールドワイド」の各称呼を生ずるものである。
(2)出所の混同のおそれについて
本件商標と引用商標4とは、前記1と同様の理由により、明らかに非類似の商標であって、十分に区別し得る別異の商標であるということができる。
また、本件商標と引用商標5とは、後者の構成中に「WORLDWIDE」の文字があるとしても、前記1と同様の理由により、明らかに非類似の商標であって、十分に区別し得る別異の商標であるいうことができる。
そして、申立人の提出に係る証拠によって、引用商標4及び5が同人に係るホテルに使用されていることが認められるところ、たとえ、申立人が「宿泊施設の提供」その他の関連役務に使用している引用商標4及び5が相当程度知られているものであるとしても、上記のとおり、本件商標と引用商標4及び5とは、別異の商標というべきものであるから、商標権者が本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者・需要者は引用商標4及び5を連想又は想起するとはいえないものであって、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(色彩については、原本参照)

(2)引用商標1


(3)引用商標2


(4)引用商標3


(5)引用商標4


(6)引用商標5

(色彩については、原本参照)

異議決定日 2010-01-08 
出願番号 商願2008-37613(T2008-37613) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (X3543)
T 1 651・ 271- Y (X3543)
T 1 651・ 261- Y (X3543)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 田村 正明
末武 久佳
登録日 2009-03-19 
登録番号 商標登録第5214825号(T5214825) 
権利者 株式会社和びす
商標の称呼 ダブリュウバー 
代理人 渡辺 広己 
代理人 阿部 佳基 

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