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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y29
管理番号 1211403 
審判番号 取消2009-300314 
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-03-12 
確定日 2010-01-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4933771号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件審判請求に係る登録第4933771号商標(以下「本件商標」という。)は、「ティムさんの大麦若葉」の文字を標準文字で表してなり、平成17年5月13日に登録出願、第29類「大麦若葉を主原料とする粉末状・錠剤状・顆粒状・粒状・カプセル状・液状の加工食品,大麦若葉を主原料とする調理用青汁のもと,大麦若葉を主原料とする調理用青汁」を指定商品として、同18年3月3日に設定登録がされたものである。
本件審判請求の登録は、平成21年3月31日にされている。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出している。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者により使用された事実を見いだせない。
さらに、商標権者以外の者が、本件商標の指定商品について専用使用権又は通常使用権の許諾などを受けて、本件商標を本件審判請求前に継続して3年以上日本国内において使用した事実も認められない。
よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

(2)弁駁の理由
ア 本件商標と使用商標
(ア)本件商標は、10文字の標準文字で構成される「ティムさんの大麦若葉」の文字からなり、その称呼は、一気一連に読む「ティムサンノオオムギワカバ」である。

(イ)被請求人は、乙第1号証及び乙第2号証にそれぞれ、商標の使用であると考えている部分を一箇所づつ赤の矢印で示しているが、これらは何れも登録商標の使用とはいえないものである。
なお、使用している商品が審判請求に係る商品と同一又は類似であることについては、請求人も認めるところである。

(ウ)乙第1号証
被請求人は、乙第1号証の見開き中央上部の白抜き円状内の上側に2段で記された「オーガニック農法\チャンピオン」と、その下に若干間隔を置き、下側に2段で記された「ティムさんの\大麦若葉」のうち、下側の2段に記された「ティムさんの\大麦若葉」の部分を、登録商標の使用であると考えているようである。
しかしながら、この記載は、大麦若葉の栽培主が「ティムさん」であること、即ち原料の栽培主と、原料そのものである「大麦若葉」の普通名称を単に2段に記したに過ぎず、一連に構成・称呼される商標「ティムさんの大麦若葉」としての使用とはいえないものであり、また、登録商標と社会通念上同一といえる商標でもないものである。
すなわち、矢印が付された頁のほぼ中央部分に、緑の見出し「オーガニック農法チャンピオンが大切に育てた大麦若葉。」と、その説明部分に「栽培主のティムさんはオーガニック農法に関する数々の賞を受賞しています。」との記載をまとめて、矢印で被請求人が示した部分に、商品の原料の栽培主と原材料等を明確にする目的で、端的に箇条書きで記載したに過ぎないものである。

(エ)乙第2号証
被請求人は、乙第2号証の第2頁右側中央やや下の赤字部分「ティムさんの大麦若葉」をもって登録商標の使用であると考えているようである。しかしながら、これは、文章としての「国内や他の国で育った大麦若葉と比較すると、ティムさんの大麦若葉はビタミンA・C・Eやβカロチン、クロロフィルなどが数倍から10倍近くも豊富に含まれていることがわかりました。」という説明文の中で、他の箇所で紹介されているティムさんという栽培主と原料名を表わす通常の語句の単なる結合であり、商標としての使用ではない。そして、同じ頁中には、文章中の通常の語句の結合として、他に「オーガニック農法チャンピオン」、「色鮮やかに育った」の箇所が文章中に同様に赤字で記載されているが、何れも単に意味内容を強調するために赤字で記載されているだけであり、被請求人が矢印で示す文章中の「ティムさんの大麦若葉」は、自他商品識別力を有する商標の使用とはいえないものである。

イ 使用の時期
被請求人は、乙第6号証の1ないし4の、被請求人自らが発行した納品書(控)写しと、乙第7号証の、乙第1号証及び乙第2号証を印刷した印刷会社の納品一覧を提出して、使用の時期が審判請求登録前3年以内であると主張しているが、これらの証拠は、使用の時期を証明するものといえない。
(ア)乙第6号証の1ないし4
乙第6号証の1ないし4は、被請求人が納品書の発行人で、その受領人が、通常使用権者である株式会社トーカ堂フリーダムとのことであるが、項目名の商品「新ほっと青汁」が、実際に、同人からの依頼に基き納品されたものであることの証明にはなっていない。その使用の時期を証明するためには、商標使用権者である株式会社トーカ堂フリーダムから被請求人への依頼書(注文書)は勿論のこと、今回提出されている納品書、更には、請求書、受領書等の、一方から他方へのもの一種類だけではなく、両当事者間で実際に取引があったことを示す、日付・捺印入り往復の書類の原本を提出する必要がある。
さらに、乙第6号証の1ないし4の納品書(控)に記載の商品項目は、「新ほっと青汁」となっているが、乙第1号証及び乙第2号証の書面の中には、「新」が付加された「新ほっと青汁」との記載は一切なく、該納品書(控)に記載の商品が、本当に乙第1号証及び乙第2号証に記載の商品であるといえるのかどうかが不明である。
何れにしても、被請求人自身が発行した乙第6号証の1ないし4は、商品名が不一致であることも含めて、使用の事実、使用の時期を客観的に示す証拠能力を備えた適正な証拠といえるものではない。

(イ)乙第7号証
被請求人は、乙第7号証の各ページの左上部に手書きで<2006>、<2007>、<2008>と書してなる部分がそれぞれ使用の年度であり、例えば、乙第7号証の第1頁の赤鉛筆下線を引いた部分で、2006年10月に乙第2号証のダイレクトメールが5千部印刷されたことを示すと答弁書において主張しているが、誰が何時この納品一覧表を作成したものであるか等の記載がー切ない、単なる内部資料に過ぎないものをもって使用の時期が証明されたとはいえない。
そして、この乙第7号証は、被請求人が、本件審判請求の事実に接し、印刷会社に過去の納品データの調査を依頼して、該社が乙第7号証の右端部に打ち出されている「2009年05月22日付」で、商標使用権者に対して過去のデータをファクシミリ送信して得た単なるコピーと思われるが、使用の時期を示す客観的な証拠書類としては不適切で、その証拠能力を欠いたものである。
さらに、乙第1号証には、これが乙第7号証に記載された<2008>年、平成20年?平成21年のものであり、かつ、凸版印刷株式会社によって印刷されたことを示す記載・印刷部分が無く、乙第1号証と乙第7号証を結び付ける根拠がないといわざるを得ない。また、乙第2号証にあっても、ダイレクトメール情報誌「ほっと青汁通信」の発行年度が被請求人がいうとおり<2006>年、平成18年であることの記載・印刷部分は勿論のこと、それを印刷した会社が凸版印刷株式会社であることを示す記載・印刷部分も一切ない。
そうすると、乙第7号証は、単なる社内の内部資料に過ぎず、使用の時期を証明する証拠書類とはなり得ないものである。

ウ むすび
以上のとおり、被請求人が説明する通常使用権者による使用は、登録商標と同一又は類似する商標とはいえず、また、社会通念上登録商標と同一又は類似する商標ともいえず、そして、その使用の時期も、適正な証拠能力を有する書類をもって証明されていないから、本件審判請求に係る登録商標は取り消されるべきである。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第13号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)答弁の理由
ア 本件商標の使用事実
(ア)商標の使用者
乙第1号証(商品パンフレット)には、「株式会社トーカ堂」(以下「トーカ堂」という場合がある。)、「福岡県粕屋郡篠栗町乙犬888」が表示されており、また、乙第2号証(情報誌「ほっと青汁通信」)には、「株式会社トーカ堂フリーダム」(以下「トーカ堂フリーダム」という場合がある。)、「福岡市中央区舞鶴2丁目1-10」が表示されている。
そうして、トーカ堂フリーダムは、トーカ堂の関連会社であり(トーカ堂の会社概要:乙第3号証)、また、乙第4号証(トーカ堂フリーダムの会社概要)に示すとおり、上記住所「福岡市中央区舞鶴2丁目1-10」は、トーカ堂フリーダムのオフィスの住所である。
加えて、乙第5号証(商標使用許諾書写し)には、商標権者がトーカ堂及びトーカ堂フリーダムに、本件商標の使用を商品「ほっと青汁」(商品区分:大麦若葉を主原料とする粉末状の加工食品)について許諾した旨の記載がされている。

(イ)使用に係る商品
乙第1号証及び乙第2号証には、請求に係る指定商品中「大麦若葉を主原料とする粉末状の加工食品」が掲載されている。

(ウ)使用に係る商標
乙第1号証及び乙第2号証には、本件商標が記載されている。

(エ)使用時期
乙第6号証の1ないし4(納品書(控)写し)に示すとおり、商標権者(被請求人)は、平成18年から現在に至るまで、上記商品「ほっと青汁」(乙第1号証及び乙第2号証に掲載)をトーカ堂フリーダムに納品している。
通常使用権者であるトーカ堂及びトーカ堂フリーダム(以下、両社を併せて「通常使用権者」という。)は、乙第1号証(商品パンフレット)をこの商品「ほっと青汁」に同梱して、主に通信販売を行っている。また、通常使用権者は、乙第2号証(情報誌「ほっと青汁通信」)を顧客に配布している。
そして、乙第7号証は、乙第1号証及び乙第2号証を印刷した「凸版印刷株式会社」の納品一覧であり、乙第1号証は、乙第7号証の品名「0901青汁同梱リーフレット」であり、平成21年1月に1万部印刷されている。
また、乙第2号証は、乙第7号証の品名「’06冬ほっと青汁通信V0L3DM」であり、平成18年10月に5千部印刷されている。

イ むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者により指定商品中「大麦若葉を主原料とする粉末状の加工食品」について使用していることが明らかである。

(2)請求人の弁駁に対する答弁
ア 乙第1号証について
(ア)請求人は、乙第1号証に示す使用に係る商標(以下、「乙第1号証の商標」という。)は、原料の栽培主「ティムさん」と、原料そのものである「大麦若葉」の普通名称を単に2段に記したに過ぎず、一連に構成・称呼される商標「ティムさんの大麦若葉」としての使用とは言えない、と主張している。
また、請求人は、上段の「ティムさんの」のうち「さんの」の文字部分が意図的に小さい文字で構成され、下段の「大麦若葉」が特に目立つように記載されていることから、この2段で構成された文字列「ティムさんの/大麦若葉」を一気一連に「ティムサンノオオムギワカバ」と読むことは極めて少ないと言わざるを得ない表示方法となっており、登録商標と社会通念上同一と言える商標ではない、とも主張している。
しかしながら、登録商標は、商取引の実際においては、その配列又は配置その他の表示態様について、少なからず変更を加えて使用されるのがむしろ通常である。
確かに、本件商標は、標準文字にて一連に「ティムさんの大麦若葉」と書してなるが、このような比較的長い商標の場合には、スペース等の関係からも、2段又は2列に表示して使用することは通常行われていることであり、また、「○○さん(の)」のような場合、「さん(の)」の部分を少し小さめに表示することも普通に行われている。
乙第1号証の商標は、白っぽい円の中に、外観上まとまりよく、「ティムさんの」と「大麦若葉」を上下2段に緑色の文字で鮮明に表示してなり、「の」の文字によって「ティムさん」と「大麦若葉」が結合されているので、これからは、容易に「ティムサンノオオムギワカバ」という本件商標と同一の称呼が生じる。
したがって、本件商標と乙第1号証の商標とは、商標のもつ出所表示機能自体には差異はなく、社会通念上同一と認められる商標であると考える。
このことは、乙第8号証ないし乙第10号証に示す過去の不使用取消審判事件の「審決」からも明らかである。

(イ)請求人は、乙第1号証の商標は、商品の原料の栽培主と原材料等を明確にする目的で、端的に箇条書きで記載したに過ぎない、と主張している。
しかしながら、上記の通り、乙第1号証の商標は、白っぽい円の中に、外観上まとまりよく、上下2段に緑色の文字で鮮明に、「ティムさんの/大麦若葉」と表示している。
乙第1号証に示す通り、乙第1号証の商標は、本件商標の使用に係る商品「大麦若葉を主原料とする粉末状の加工食品」(以下、「本件商品」という。)をコップに入れて水で溶かした写真といっしょに掲載している。
このように、乙第1号証の商標は、本件商品と密接な関係をもって使用しており、しかも、上段に配置したほぼ半分を占める写真の中で、白っぽい円の中に目立つように掲載しているので、取引の目印となっており、実際に取引者・需要者が見た場合にも、本件商品の出所を表す目印であると認識して、本件商品を選択・購入するものと考える。
したがって、乙第1号証の商標は、商品の原料の栽培主と原材料等を端的に箇条書きで記載したに過ぎないのではなく、十分出所表示機能を果たしているものと考える。

イ 乙第2号証について
請求人は、乙第2号証に示す使用に係る商標(以下、「乙第2号証の商標」という。)は、栽培主と原料名を表す通常の語句の単なる結合であり、自他商品識別力を有する商標の使用とは言えない、と主張している。
しかしながら、商標を説明文中で、例えば、括弧書きで表したり、書体を強調したり、文字の色を変えたりして使用することも、通常行われている。
乙第2号証の商標は、本件商品の説明の中で使用しているので、本件商品と密接な関係をもっており、しかも、目立つ赤色にて表示しているので、出所表示機能を果たしていると考える。

ウ 乙第6号証の1ないし4及び乙第7号証は、使用の時期を証明するものとしてはまったく意味無い、無効なものであるとの請求人の弁駁に対して
(ア)乙第6号証の1ないし4について
a 被請求人は、通常使用権者から、本件商品の納品の依頼を受けると、乙第11号証「極東化成工業株式会社の証明書」に示す通り、本件商品の製造を「極東化成工業株式会社」に委託している。
委託を受けた極東化成工業株式会社は、製造した本件商品を、乙第12号証「佐川急便株式会社福岡店の証明書」に示す通り、通常使用権者から保管の委託を受けている「佐川急使株式会社福岡店大野城センター」の倉庫へ送っている。
通常使用権者は、主に通信販売により本件商品の注文を受け、その倉庫に保管されている本件商品に乙第1号証を同梱して注文者へ配送している。
b 請求人は、乙第6号証の1ないし4は、被請求人自らが納品書の発行人であり、使用の証明にはなっていない、と主張している。
しかしながら、乙第6号証の1ないし4に記載の「数量」の合計が、乙第11号証に添付の別紙1ないし4(被請求人宛の納品書)に記載の「数量」と一致しており、乙第11号証に添付の別紙1ないし4に記載の「摘要」が「佐川大野城」となっていることからも、実際に、通常使用権者から本件商品の納品依頼を受けて、被請求人が極東化成工業株式会社に製造を委託し、製造された本件商品が、通常使用権者から保管の委託を受けている倉庫へ送られていることが明らかである。
c 請求人は、乙第6号証の1ないし4の商品項目が「新ほっと青汁」となっているが、乙第1号証及び乙第2号証の書面の中には、「ほっと青汁」の記載はあるが、「新ほっと青汁」の記載は一切ない、と主張している。
これは、乙第11号証にも記載されているように、被請求人は、平成17年4月を境に、本件商品の主原料である「大麦若葉」を中国産からニュージーランド産に変更し、社内的に、ニュージーランド産の大麦若葉を使用したものを「新ほっと青汁」と呼んでいるからである。
乙第6号証の1ないし4に記載の商品が、乙第1号証及び乙第2号証に記載の商品であることは、乙第11号証からも明らかである。

(イ)乙第7号証について
請求人は、乙第7号証は単なる内部資料に過ぎず、使用の時期を証明する証拠書類とはなり得ない、と主張している。
しかしながら、乙第7号証は、「FAX トッパンインサツ→トーカ堂フリーダム」との記載からも明らかな通り、凸版印刷株式会社が通常使用権者である「株式会社トーカ堂フリーダム」に宛てて送信した「納品一覧」であり、凸版印刷株式会社が、各種印刷物等を通常使用権者に納品している事実を示すものである。
そして、乙第7号証の第1頁記載の「’06冬 ほっと青汁通信VOL3DM」は、乙第2号証が「ほっと青汁通信Vol.03」となっているところからも、乙第2号証のものであることが明らかである。
また、乙第7号証の第3頁記載の「0901青汁同梱リーフレット」の文言から、乙第1号証のものであると考えられるが、それを裏付けるために、乙第13号証を提出する。
乙第13号証は、「凸版印刷株式会社九州事業部の証明書」であり、乙第1号証が乙第7号証に記載の平成21年1月に納品した印刷物「0901青汁同梱リーフレット」、乙第2号証が乙第7号証に記載の平成18年10月に納品した印刷物「’06冬ほっと青汁通信VOL3DM」に相違ないことが、証明されている。

エ むすび
以上の通り、通常使用権者による使用は本件商標の使用とはいえず、また、使用の時期も適正な証拠能力を有する書類をもって証明されていないとの請求人の弁駁は、全く埋由のないものである。

4 当審の判断
被請求人の提出に係る乙第1号証及び乙第2号証に記載された「ほっと青汁」なる商品(以下「使用商品」という。)は、取消し請求に係る指定商品中「大麦若葉を主原料とする粉末状の加工食品」の範疇に属する商品であること、及び乙第1号証及び乙第2号証に記載されたトーカ堂及びトーカ堂フリーダムは、本件商標に係る通常使用権者であるということに関しては、当事者間に争いはない。
そこで、当事者間に争いのある「使用に係る商標」が本件商標と社会通念上同一であるか否か、また、使用商品についての使用時期および具体的取引があったか否かについては、以下検討する。
(1)乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第1号証は、主として商品「ほっと青汁」とする、いわゆる健康食品に係る通販用のリーフレットであり、その見開きの右頁の上部に矢印が付された箇所には、モザイク様の円図形内に、赤色で横二段書きした「オーガニック農法」と「チャンピオン」の文字、及びこれに比してやや大きく緑字で横二段書きした「ティムさんの」と「大麦若葉」の文字とを4段に配して表示されていること、そして、これの裏面頁にフリーダイヤルやファックスの番号、及びホームページアドレスが「株式会社トーカ堂」の文字とともに表示されていることなどが認められる。

イ 乙第2号証は、乙第1号証と同様に「ほっと青汁通信 vol.03」を表題とする、主として商品「ほっと青汁」に係る情報誌であり、表紙の裏頁に右部の矢印が付された箇所には「他の大麦若葉に比べ、栄養がたっぷり。」の見出しのもとで「国内や他の国で育った大麦若葉と比較すると、ティムさんの大麦若葉はビタミンA・C・Eやβカロチン、クロロフィルなどが数倍から・・・」(「ティムさんの大麦若葉」の文字部分は赤字」)との記載されていること、そして、最終頁にフリーダイヤルやファックスの番号、及びホームページアドレスが「株式会社トーカ堂フリーダム」の文字とともに表示されていることなどが認められる。

ウ 乙第6号証の1ないし4は、納品日を「06年(2006年)5月18日」、「07年(2007年)3月29日」、「08年(2008年)2月4日」及び「09年(2009年)3月2日」とする商標権者からトーカ堂フリーダム宛の「納品書(控)」であり、商品欄に「新ほっと青汁(90包)」や「新ほっと青汁(10包)」の記載があり、これら「新ほっと青汁」に関する数量合計は、納品日順に、「2,860」、「2,588」、「3,280」及び「3,925」であることが認められる。

エ 乙第7号証は、右端部に「2009 05/22 FRI 17:24(または17:25) FAX トッパンインサツ → トーカ堂フリーダム」の表示があり、その該日時に「トッパンインサツ」から「トーカ堂フリーダム」に送付された3葉からなるファクシミリによる写しであるところ、左上に「〈2006〉」の手書きで付加された1葉目に、「品種名」「品名」「4月ないし3月」における各月の記載、「年間合計」「単価」「合計金額」の欄があり、3段目の赤い下線がされた品名欄の箇所に「’06冬 ほっと青汁通信VOL3DM」、「10月」欄に「5,000.00」の記載が認められる。
同じく、「〈2008〉」の手書きで付加された3葉目に、上記と同様の欄があり、12段目の赤い下線がされた品名欄の箇所には「0901青汁同梱リーフレット」、「1月」欄に「10,000.00」の記載が認められる。

オ 乙第11号証は、極東化成工業株式会社から被請求人宛の平成21年10月7日付けの証明書であって、かつ、乙第6号証の1ないし4に対応する納品実績として別紙1ないし4を添付している。
証明書には、極東化成工業株式会社が平成14年7月から現在に至るまで、被請求人からトーカ堂フリーダムの「ほっと青汁」の製造を委託されていること、該商品が乙第1号証及び乙第2号証に掲載されているものであること、平成17年4月を境に該商品の主原料を中国産からニュージーランド産に変更した旨の記載が認められる。
別紙1ないし4は、乙第6号証の1ないし4に対応する、極東化成工業株式会社から被請求人宛の「ほっと青汁」等の納品書であるところ、06年(2006年)5月12日付けの納品書(別紙1)、07年(2007年)3月24日付けの納品書(別紙2)、08年(2008年)2月5日付けの納品書(別紙3)及び09年(2009年)3月2日付けの納品書(別紙4)のいずれにも、「品名」欄に「ほっと青汁3.5g×90」あるいは「ほっと青汁100セット」及び「摘要」欄に「佐川大野城」の記載が認められる。
そして、これら「ほっと青汁」に関する数量合計は、納品日順に、「2,860」、「2,588」、「3,280」及び「3,925」であることが認められる。
ところで、これらの納品書に記載された「ほっと青汁」に関する納品の数量は、上記(ウ)の数量合計と一致するものと認められる。

カ 乙第12号証は、佐川急便株式会社福岡店からトーカ堂宛の平成21年10月13日付けの証明書であって、佐川急便株式会社福岡店大野城センターは、通常使用権者から保管の委託を受け、乙第1号証及び乙第2号証の写真に掲載されている商品の保管を行っている旨の記載が認められる。

キ 乙第13号証は、凸版印刷株式会社九州事業部からトーカ堂宛の平成21年10月15日付けの証明書であって、乙第1号証及び乙第2号証が乙第7号証に記載の平成21年1月に納品した印刷物「0901青汁同梱リーフレット」及び平成18年10月に納品した印刷物「’06冬 ほっと青汁通信VOL3DM」であることを証明する旨の記載が認められる。

(2)前記(1)で認定した事実によると、次のとおり判断される。
ア 使用に係る商標
通販用のリーフレット(乙第1号証)の見開き上部に表示されたモザイク様の円図形内に、やや大きく緑字で横二段書きした「ティムさんの」と「大麦若葉」の文字部分は、たとえ、その構成中「さんの」の文字部分が他の文字部分に比べ小さく書されているとしても、外観上、同じ色彩でまとまりよく一体のものとして認識・把握されるものであるから、その使用に係る商標と横一連に構成されてなる本件商標とは、構成態様において異なる点があるとしても、「ティムサンノオオムギワカバ」の共通の称呼を生じ、また、観念上の異同もなく社会通念上同一の商標であると認められる。
また、乙第2号証における矢印が付された箇所での「ティムさんの大麦若葉」の記載は、たとえ、商品説明文中に記載されているとしても、「ティムさんの大麦若葉」の文字部分は、需要者の注意を惹くように赤字で記載されていることによって、文章中の他の文言から分離・抽出されて把握・認識されるものというべきであり、かつ、自他商品識別標識としての機能を果たし得る商標としての使用と認識し得るから、その使用に係る商標と、本件商標とは社会通念上同一の商標であると認められる。
これに対し、請求人は、上記した乙第1号証及び乙第2号証に記載された使用に係る商標(以下、「使用商標」という。)が、商品の説明文との関係で商品の原料の栽培主と原材料を表す通常の語句の単なる結合であって、自他商品識別力を有する商標の使用ではない旨主張する。
しかしながら、使用商標が、そもそも商品の原料の栽培主と原材料を表す語句の結合であったとしても、全体として使用商品の特性を暗示させる一体不可分の商標の使用であって、上記したとおり、本件商標とは社会通念上同一と認められる商標としての使用と言い得るものであるから、請求人の主張は採用できない。

イ 使用時期及び具体的取引
乙第7号証及び乙第13号証を総合勘案すれば、乙第1号証が平成21年1月、また、乙第2号証が平成18年10月のそれぞれ要証期間内において、凸版印刷株式会社から通常使用権者に納品された通販用のリーフレット(「0901青汁同梱リーフレット」)及び情報誌(「’06冬ほっと青汁通信VOL3DM」)であることが推認できるものである。
そして、被請求人からトーカ堂フリーダム宛の「納品書(控)」である乙第6号証の1ないし4、極東化成工業株式会社から被請求人宛の「納品書」を別紙1ないし4として提出した乙第11号証及び乙第12号証及び被請求人の主張を総合勘案すれば、被請求人は、通常使用権者から使用商品の納品依頼を受けると、被請求人から製造委託されている「極東化成工業株式会社」が、被請求人に使用商品を納品し、それを受けて、被請求人が、要証期間内である2006年(平成18年)5月18日、2007年(平成19年)3月29日、2008年(平成20年)2月4日及び2009年(平成21年)3月2日に、それぞれ使用商品を通常使用権者に納品したことが認められる。
そして、実際には、被請求人から製造委託されている「極東化成工業株式会社」が製造した使用商品を通常使用権者から保管の委託を受けている「佐川急便株式会社福岡店大野城センター」の倉庫へ送り、さらに、通常使用権者は、使用商品の注文を受け、その倉庫に保管されている使用商品に乙第1号証の通販用のリーフレットを同梱して注文者に販売していたが推認することができる。
これに対し、請求人は、使用の時期を証明するためには、通常使用権者と被請求人の両当事者間で取引があったことを示す書類の原本を提出すべきであること、また、乙第6号証の1ないし4の「納品書(控)」に記載の「新ほっと青汁」と、乙第1号証及び乙第2号証の書面中の「ほっと青汁」は、不一致であるから、上記「納品書(控)」に記載の商品が、乙第1号証及び乙第2号証に記載の商品であるか不明である旨主張する。
しかしながら、上記したとおり、極東化成工業株式会社から被請求人宛の「納品書」と、被請求人から通常使用権者宛の「納品書(控)」の存在があり、それらに記載された使用商品の納品数量が一致すること、そして、乙第11号証及び被請求人の「平成17年4月を境に、本件商品の主原料である「大麦若葉」を中国産からニュージーランド産に変更し、社内的に、ニュージーランド産の大麦若葉を使用したものを『新ほっと青汁』と呼んでいる」旨の主張、および、乙第1号証の通販用のリーフレットにも、使用に係る商品の原材料の「大麦若葉」が「ニュージーランド産」である旨の記載があるところからすれば、乙第6号証の1ないし4の「納品書(控)」における商品欄に記載された商品は、通販用のリーフレットに掲載されている商品と同一の商品と推認し得るものであって、結局、通常使用権者と被請求人の両当事者間で一連の取引があったものということができる。
したがって、請求人の主張はいずれも採用の限りでない。

(3)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が請求に係る指定商品中「大麦若葉を主原料とする粉末状の加工食品」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-11-18 
結審通知日 2009-11-26 
審決日 2009-12-09 
出願番号 商願2005-42097(T2005-42097) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y29)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 小川 きみえ
野口 美代子
登録日 2006-03-03 
登録番号 商標登録第4933771号(T4933771) 
商標の称呼 ティムサンノオームギワカバ、ティムサン、ティム 
代理人 小堀 益 
代理人 石原 昌典 
代理人 堤 隆人 

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