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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 1060912131922
管理番号 1209963 
審判番号 取消2005-31371 
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-11-14 
確定日 2010-01-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第2423435号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2423435号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2423435号商標(以下「本件商標」という。)は、「ブライド」の片仮名文字と「BRIDE」の欧文字とを二段に横書きしてなり、昭和63年7月7日に登録出願、第12類「輸送機械器具、その部品及び附属品」を指定商品として、平成4年6月30日に設定登録されたものであるが、その後、同14年7月9日に商標権存続期間の更新登録がなされ、また、その指定商品については、同15年10月1日に第6類、第9類、第12類、第13類、第19類及び第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品に書換登録がなされているものである。
なお、商標登録原簿の記載によれば、本件審判は、平成17年11月14日に請求、同年12月5日に当該請求の予告登録がされている。

第2 参加申請
本件審判に関し、平成18年2月15日付けで株式会社ハトプラから参加申請書の提出があったところ、当審において、同年10月17日付けで本件参加の申請を許可する旨の決定を行った。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証の1ないし甲第15号証(枝番を含む。)を提出した。
なお、請求人は、請求の趣旨について、審判請求書においては「商標法第53条の規定により、登録第2423435号の指定商品中『第9類 消防車,自動車用シガーライター』『第12類 自動車並びにその部品及び附属品』及び『第13類 戦車』についての登録を取り消す、・・・」旨記載していたものを、平成18年7月19日付け手続補正書により「商標法第53条の規定により、登録第2423435号の登録を取り消す、・・・」旨補正している。
請求の趣旨の補正は、多くの場合、要旨の変更になるものではあるが、商標法第53条の取消審判は、制裁的な趣旨から設けられた規定であって、請求できるのは商標登録の全部取消のみであると解されている。
そして、本件審判請求書の請求の趣旨には、当初から、商標法第53条の規定による取消審判であることが明示されていた。
したがって、上記補正を採用しても、実質的な意味での要旨変更の問題は生じないものと解されるから、上記補正を有効な補正として採用した。
また、請求人は、平成18年3月2日付けで請求人代表者 高瀬峰雄の証人尋問申出書を提出している。
1 請求の理由
(1)本件商標は、カタカナ「ブライド」と欧文字「BRIDE」を上下に併記した構成からなり、その指定商品には、「自動車並びにその部品及び附属品」の指定商品が含まれるものである。
株式会社ハトプラは、平成15年6月16日、本件商標の商標権者である被請求人から本商標権につき通常使用権の許諾を受けている(甲第1号証の7)。
株式会社ハトプラは、平成15年10月頃から平成16年2月頃までの間、「BRIDE」の文字からなる商標を付した自動車用座席を販売・譲渡するとともに、自動車用座席に関する広告に同商標を付して展示し、頒布することにより、同商標を使用した。上記使用に係る商標は、本件商標の構成中の「BRIDE」部分であり、本件商標に類似する商標である。
株式会社ハトプラが使用した上記商標は、請求人の商品である自動車用座席の出所を示す標章として「ブリッド」と称呼されている周知の「BRIDE」とその構成が完全に同一であるから、株式会社ハトプラの上記商標の使用は、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものである。
そして、被請求人は、株式会社ハトプラの商標使用に関して、定期的な監督、報告の聴取など実質的な監督を行っておらず、相当の注意義務を果たしたとはいえない。
(2)本件審判に至る経緯について
請求人は、1983年以来、その取扱商品である自動車用座席(以下「スポーツシート」ともいう。)に標章「BRIDE(ブリッドと呼ばれる)」(甲第7号証)を付して製造、販売してきた(以下「BRIDE商品」という。)。スポーツシート市場においては、BRIDE商品は高いシェアを有し(国産品ではほぼ独占)、その標章「BRIDE」は、請求人のブランドであることは広く知られている(甲第3号証及び甲第4号証)。
株式会社ハトプラは、本件通常使用権の許諾を受けた後、その使用権者として、上記BRIDE商品に付されている標章と同一の商標の使用(広告)を図ったが、請求人は、その使用の事実を確認できなかったので、本件商標につき不使用取消審判(その請求人名義は大沢敏昭)を申し立てた。
その審判は取消2004-30240号事件として審理され、平成17年4月6日、当該商標は株式会社ハトプラにおいて使用の事実があるとの審決がなされ、その審決に対する取消訴訟(知財高裁平成17年(行ケ)第10470号)においては、平成17年9月29日、取消請求の棄却判決がなされ、その判決は確定した。
本件審判は、本商標権の通常使用権者である株式会社ハトプラによる本件商標又はこれに類似する商標の使用の事実が上記高裁判決の認定により確定したことから、その使用が商標法第53条第1項に係る「他人の業務に係る商品と混同を生ずるもの」であるとして申し立てるものである。
2 答弁に対する弁駁要旨
(1)被請求人の答弁に対する弁駁(その1)
(ア)本件商標権の使用権者である株式会社ハトプラが使用した商標は、審決取消判決によれば、「BRIDE」の文字からなる商標であるとし、本件商標と社会通念上同一とみられると認定した。すなわち、「ブライド」部分を省略しても社会通念上同一の使用と判断したのであるが、この使用商標の態様は、請求人が使用している商標と全く同一であって、外観、称呼は完全に一致している。
(イ)本条の「混同を生ずるものとした」とは、他人の業務に係る商品と現実に出所の混同が発生したことでなく、客観的に混同の危険があれば足りる(最高裁昭和60年2月15日判決)。
株式会社ハトプラが使用した「BRIDE」商標は、請求人の業務に係る自動車用シートと同一の商品に使用され、ブリッドと称呼されている請求人の「BRIDE」標章と完全に同一であること、本件商標の唯一の称呼である「ブライド」とは異なって、あえて積極的に「ブリッド」と表示してブリッドの称呼を生じさせていること、請求人標章は、既に一般需要者に広く知られた周知ブランドであるから、使用権者ハトプラの使用行為によって、本条の「混同を生ずるものとした」に該当するものであることは疑う余地がない。
加えて、株式会社ハトプラは、本件商標の構成中「ブライド」を部分を削除し、かつ本件商標の構成のゴシック体「BRIDE」部分の文字を改変し、請求人のデザイン化した「BRIDE」の文字と全く同一のものを使用していることからすれば、故意に請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものとしたことは明らかである。
(ウ)被請求人は、株式会社ハトプラによる販売は直接小売店に商品を納品する形態のみであり、ほぼ全てがカタログ販売である請求人の販売態様と異なる旨主張している。しかし、請求人は、問屋及び小売を経由する販売、カタログ販売等様々な態様での販売を行っており、両者の販売態様において異なるというのは全くの誤りである。
また、被請求人は、株式会社ハトプラが販売するシートに「BRIDE」の他に「ERGO」や「BRIX」の名称を付したものを主として販売しているというが、「ERGO」や「BRIX」は、請求人の商品に係るセカンドブランドである(甲第5号証)。
株式会社ハトプラは、請求人のメインブランドである「BRIDE」ばかりではなく、請求人のセカンドブランドと同一の標章を付し、故意に請求人商品との出所誤認を図っている。
被請求人は、株式会社ハトプラの販売するシートに付されるプレートは請求人のものと異なるという。しかし、そのプレートは、実際の商品のシートの外観からは判別できず、需要者は、付されるプレートをチェックして購入するものではなく、商品に大きく付された「BRIDE」の標章によりその出所を信頼するものであるので、被請求人の主張は失当という他ない。
さらに、被請求人は、株式会社ハトプラの販売価格は請求人の販売価格と異なる旨主張しているが、その主張の趣旨は不明である。
(エ)商標法第53条第1項ただし書の「相当の注意」とは、注意・監督するだけでなく、定期的な監督とか報告の聴取など実質的な監督が必要であり、その立証責任は商標権者にある。被請求人は、使用許諾契約7条に記載される見本の事前提出、承認等の監督をしていた事実を裏付けるような証拠は提出しておらず、ただし書に係る事実について何ら主張・立証していない。
被請求人は、同使用許諾契約書(甲第1号証の7)に基づき、使用権者である株式会社ハトプラの本件商標・類似商標の使用状況をチェックできる権限を有していたにもかかわらず、その権限を行使せず、漫然と株式会社ハトプラの行う行為を放置していたのであり、相当の注意を怠ったことは明らかである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁(その2)
(ア)被請求人は、登録商標の独占権の範囲における商標の使用は、本来適法であるから、商標法第53条第1項は限定して適用すべき旨主張する。
同条項は、同法第51条と異なり、禁止権の範囲である登録商標と類似する標章だけでなく、専用使用権の範囲である登録商標の不正使用行為に対しても取消原因を定めている点において、商標権者の責任が異なる。
本件審判は、使用権者株式会社ハトプラが本件商標(BRIDE/ブライド)を使用した事実に基づいて取消を求めるのではなく、使用権の範囲にない本件商標と類似する商標「BRIDE」を不正使用した事実に基づいて取消を求めるのであるから、被請求人の主張は前提において誤っている。
(イ)被請求人は、株式会社ハトプラが本件商標の使用許諾前から、自己の商標としてBRIDE標章を使用していた旨主張するが、その事実はなく、東京高裁判決が認定するとおり、株式会社ハトプラは使用許諾後の平成15年10月頃から平成16年2月頃までの間、「BRIDE」の文字からなる商標を付した自動車用座席を販売・譲渡していたのである。
そして、株式会社ハトプラ代表者浜路は、名古屋地方裁判所の代表者審問において、それが請求人のブランドであること、それを請求人から乗っ取る目的であったことを供述しており、本件商標(BRIDE/ブライド)から故意にその称呼部分である「ブライド」を削除して、請求人の周知商品表示である「BRIDE」と同一の標章を使用したものであることが明らかになっている(甲第8号証)。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。)を提出した。
1 第1回答弁
(1)出所の混同について
本件については、次のような事情があり、株式会社ハトプラによる「BRIDE」商標の使用は、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものではない。
(ア)販売経路について
請求人による「BRIDE」シートの販売は、ほぼ全てがカタログ販売であるのに対して、株式会社ハトプラによる「BRIDE」シートの販売は、問屋を通じ、問屋の担当者が小売店で商品内容を説明した上で、株式会社ハトプラが直接小売店に商品を納品するという形態のみである(乙第1号証ないし乙第3号証、甲第1号証の3、4)。このように、請求人の販売形態と株式会社ハトプラの販売形態は異なっており、株式会社ハトプラの販売経路は極めて限定されている。
自動車用シートの需要者は、小売店及びその顧客であるところ、小売店については、上記のように限定された販売経路で商品を仕入れ、問屋の担当者から商品内容の説明を受けているため、請求人の「BRIDE」シートと株式会社ハトプラの「BRIDE」シートを混同することはない。
また、顧客についても、自動車パーツを取り替えるほどの専門的なマニアであり、各商品の相違点を判別した上で商品を購入しているため、両者の商品を混同することはない。
(イ)モデル名について
株式会社ハトプラは、平成15年以降、「BRIDE」シートの「ERGO」モデル、「BRIX」モデルを主として販売している(乙第2号証、乙第3号証、甲第1号証の3、4)。
一方、請求人は、「ERGO」モデル、「BRIX」モデルについて、それぞれローマ数字のIIを付し、「ERGOII」「BRIXII」として販売しており(乙第6号証)、「ハトプラのシートは旧商品です」と説明することもあった。
(ウ)製造元、販売元の表示について
株式会社ハトプラの販売する「BRIDE」シートには、「製造元(株)ブリッド 販売元(株)ハトプラ」、または、「製造元 ハトプラ」という認識シールが付けられている(乙第7号証の1)。この認識シールは、全国陸運局における車検時の公認適応の型式シールであり、シートの取替後に車検を予定している需要者は、この型式シールに着目して商品を購入している。
一方、請求人の販売する「BRIDE」シートには、上記のような車検時の公認適応の型式シールは付けられていない。請求人の販売する「BRIDE」シートには、座席側面にBマーク(赤色)の入った独自の認識シールが付けられているほか、座席カバーにキャラクターとBRIDEの文字を組み合わせた織りネームや「製造・販売 ティーズ株式会社 MADE IN JAPAN」という織りネームが付けられている(乙第7号証の2)。
(エ)販売価格帯について
請求人が販売するリクライニングシートの価格は9万円台であるのに対し、株式会社ハトプラが販売するリクライニングシートの価格は8万円台である(乙第9号証)。また、請求人が販売するバケットシートの価格は5万円台であるのに対し、株式会社ハトプラが販売するバケットシートの価格は7万円台である(乙第9号証)。このように、請求人の商品と株式会社ハトプラの商品とは、販売価格帯も異なっている。
(オ)自動車用座席の国内販売量について
自動車用座席の国内販売量については、年間販売総数約3万脚のうち、ドイツのレカロ社が約70%、イタリアのスパルコ社が約11%のシェアを有し、その残部をドイツのケーニッヒ社、アメリカのOMP社、イタリアのモモ社ほか約5社の海外メーカーや株式会社ハトプラ、D&W、AAR、デルタツーリングほか約10社の国産メーカーが分け合っている状況にある。請求人は、そのような中の国産メーカーの1社にすぎず、請求人の標章は、一般に広く知られているものではない。
(カ)以上より、株式会社ハトプラによる「BRIDE」商標の使用は、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものではない。
(2)「BRIDE」標章使用の経緯について
株式会社ケンテック(平成11年に株式会社ハトプラに承継)、トータス(平成6年に株式会社ブリッドに承継)及び請求人は、平成3年に提携して「BRIDE」シートの企画・開発、製造及び販売をしていくことにした。 具体的には、株式会社ケンテックが「BRIDE」シートの企画、開発、車検対応の実験を担当し、トータスが「BRIDE」シートの開発、製造を担当し、請求人が「BRIDE」シートの広告宣伝、販売を担当することになった。
株式会社ケンテック及びトータスは、平成4年に、「BRIDE」シートの増産体制を確立し(乙第4号証)、その後、100種類を超えるシートの企画・開発を行った。また、株式会社ブリッドは、各運輸局局長に対し車検対応自動車シートの申請手続を行う等して(乙第5号証)、自己の商品として「BRIDE」シートの製造を行っていた。そのため、「BRIDE」シートの認識シール(車検時の公認適応の型式シール)にも、「製造元 ブリッド」と表示されていた(乙第7号証の1)。
請求人は、販売会社であるため、一般需要者に対する広告宣伝では請求人が前面に出てくるが、「BRIDE」シートについては、上記のように、株式会社ハトプラ、株式会社ブリッド及び請求人が提携して企画・開発、製造及び販売をしてきたものであり、「BRIDE」標章は、共同開発者である株式会社ハトプラの標章でもある。
その後、平成15年に入って請求人と株式会社ブリッドの関係が悪化し、提携を解消することになったため、株式会社ブリッドと株式会社ハトプラは、別ルートで「BRIDE」シートを販売することにした。
一方、請求人も、独自に「BRIDE」シートの製造、販売を始め、平成16年3月1日には、請求人側の新たな製造会社としてBRIDE株式会社が設立された(乙第8号証の1)。なお、このBRIDE株式会社は、その代表者が請求人の代表者と同一人であり、他の役員もほぼ重なり合っている会社である(乙第8号証の2)。
(3)相当の注意について
請求人は、被請求人が相当の注意義務を果たしたとはいえない旨主張している。
しかし、被請求人・株式会社ハトプラ間の使用許諾契約第7条は、「乙は、本件商標及び本件類似商標を使用するに際してその態様を示す見本を甲に事前に提出するものとし、また新たな使用予定の標章(ロゴ等)についてその都度事前にその態様を示す見本を甲に提出して承認を得るものとする。」と規定しているところ(甲第1号証の7)、被請求人は、同条の規定に基づき、株式会社ハトプラから「BRIDE」商標の見本を徴求していた。
また、前述したように、「BRIDE」シートは、株式会社ハトプラ、株式会社ブリッド及び請求人が提携して企画・開発、製造及び販売をしてきたものであり、「BRIDE」標章は、株式会社ハトプラ自身の標章でもあったから、被請求人が株式会社ハトプラによる「BRIDE」商標使用を格別問題としなかったのは、むしろ当然のことであった。したがって、被請求人に注意義務の懈怠はない。
(4)なお、付言すれば、商標法第53条1項は、使用権者が登録商標の専用権の範囲に属する商標を指定商品に用いている場合であっても、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる場合には、商標登録を取り消すという規定であって、使用権の許諾や登録商標の譲渡が自由に認められる現行法の下では不合理な規定である。
そこで、解釈論として、その「他人」の商標が「広知表示」であることが必要であるという主張もなされているのである(田村善之「商標法概説[第2版]」参照)。
したがって、同条項は、その他人の商標が少なくとも周知であり、それに似せて使用した場合に限って、制限的に適用されるべきである。
(5)以上より、請求人の商標法第53条第1項に関する主張は、いずれも理由がなく、本件審判請求は成り立たない。
2 第2回答弁
商標法第53条第1項に関する参加人の主張を全面的に援用する。
独占権の範囲における商標の使用は、本来適法なのであるから、本条の適用は、ブラウン事件のように著名商標に字体を似せ、混同し易くした場合に限るのである。
また、本件において、使用権者は、使用許諾の以前から自己の商標として本件商品(自動車用座席)に「BRIDE」の商標を用いていたのであり(丙第2号証の1,2)、本件商標の使用許諾を受けて使用し、そのため、混同を招いたというような事実は存しない。

第5 参加人の答弁
参加人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として丙第1号証の1及び丙第8号証(枝番号を含む)を提出した。
また、平成18年6月26日付けで、参加人代表者 浜路公平の証人尋問申出書を提出している。
1 第1回答弁
(1)商標法第53条第1項の解釈
商標法第53条第1項は、使用権者が「指定商品についての登録商標」の範囲(「同一の範囲」)、すなわち、自己が使用権を有する登録商標そのものを、指定商品に使用する場合には適用されない。
しかるところ、参加人は、商標権者の許諾を受けて、本件商標の指定商品である「自動車用座席」に、本件商標そのものである「BRIDE」を使用しているのであって、参加人の使用は、前述の「同一の範囲」における使用として、商標法第53条第1項の適用範囲外と解されるべきである。
(2)請求人の標章「BRIDE」の使用行為
請求人は、「BRIDE」は請求人のブランドであることは広く知られているとして、「BRIDE」の周知性を主張し、そのことを以って、参加人の登録商標「BRIDE」の使用が商標法第53条第1項の規定に該当するとしている。そして、こうした周知性の根拠となる甲第2号証には、請求人が1983年から上記標章「BRIDE」の使用を開始した旨が記載されている。
しかしながら、1983年(昭和58年)が本件商標に係る商標登録出願日である昭和63年7月7日以前であるとしても、少なくとも、当該商標登録出願時において、請求人の標章「BRIDE」は何ら周知ではなく、請求人は商標法第32条第1項で認められる権利(先使用権)を有していない。
請求人の標章「BRIDE」の使用行為は、本件商標に係る商標権を明らかに侵害する行為である。すなわち、請求人が商標法第32条第1項の先使用権を有していない以上、請求人の上記標章使用行為は、本商標権を侵害する行為であり、当該侵害行為の存在を前提に、商標法第53条第1項の規定により本商標権が取り消されるなどということは極めて不当である。
(3)以上の通り、請求人による商標法第53条第1項に関する主張は、それ自体失当であり、本件審判請求が成り立たないことは明らかである。
2 第2回答弁
参加人は、先に商標法第53条第1項の解釈を述べ、本件審判請求は理由がないことを主張したが、さらに、以下のとおり主張する。
(1)参加人が「BRIDE」を使用するに至った経緯
平成2年頃に請求人代表者高瀬(当時は「ブリッドCo」の個人事業主)が、参加人代表者浜路が当時、専務を務めていた株式会社ケンテックを訪れ、スポーツシートを供給して欲しい旨依頼してきたが、浜路は高瀬販売のスポーツシートが車検に適合していないこと、品質が劣ることを理由に(別会社である)株式会社トータス代表者鈴木を紹介した。
以後、トータス株式会社(鈴木)、株式会社ケンテック(浜路)、ティーズ株式会社(高瀬)の三社(以下、三社の「株式会社」の文字を便宜上、省略する。)が共同事業として、スポーツシートの生産販売を開始することとなった。
平成6年に鈴木は、トータスの名称の使用を止め、株式会社ブリッドを設立。また、ティーズへの発送のみを目的とした株式会社トレジャーを設立した。
三社による共同事業により、スポーツシートの売れ行きは格段に上昇したが、平成9年頃から売上げは序々に低下し始めた。
平成11年にケンテックの社員であった浜路は退職し、ほどなく「株式会社ハトプラ」を設立した。
平成14年末に、ティーズから商品の注文を打ち切る旨の通告がされ、株式会社ハトプラとブリッドは、スポーツシートの販売経路を絶たれ、1億円以上の在庫商品を抱えた。
その後、株式会社ハトプラがブリッドの事業を継承し、これまでと同じように「BRIDE」のロゴを付けたスポーツシートを製造・販売した。
したがって、株式会社ハトプラは、販売先が異なるとしても、これまでブリッドやトレジャーが行ってきたと同様に、自動車用シートであるスポーツシートに「BRIDE」のロゴを使用しているのであり、請求人が指摘しているように、使用権を取得した後に使用を開始したのではない。
(2)使用商標が周知性を獲得した時期
前述のように、三社による共同事業が決定された後、「BRIDE」のロゴが付されたスポーツシートの売上げは激増し、こうした売上の増加とともに「BRIDE」のロゴも周知性を獲得したのである。
なお、高瀬(ティーズ)は、三社のなかで、自動車雑誌へ広告を掲載し、通信販売の注文を受け、買主に商品を発送することを専ら担当していたが、こうした通信販売方法は、他の業界でも行われている手法であり、「BRIDE」のロゴの周知性を獲得する上で特筆すべきことではない。
(3)参加人が商標権者から使用許諾を受けるに至った経緯
ブリッド及びトレジャーの事業を承継した株式会社ハトプラは、これまでどおり「BRIDE」のロゴを付してスポーツシートを製造・販売する決意をしたが、このとき、商標権に関する調査を行ったところ、「BRIDE」が宮田工業株式会社により登録されていることを知った。
そこで、同社から通常使用権の許諾を受けたのであり、参加人は、商標権者から使用許諾を受けた後に使用を開始したものではないのである。
3 第3回答弁
商標法第53条第1項について、「他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとき」とは、当該他人の行為の適否や使用行為の正当性の当否を一切無視し、単に「混同を生じさえすれば足りる」というのではなく、使用権者が適法な第三者の法益を侵害して、違法に出所の混同を生じさせることを必要とするというべきである。
前記「BRIDE」商標の使用を前事業者(株式会社ブリッド)から適法に継続していた参加人が、他社(宮田工業株式会社)が所有する商標権の存在を知り、該商標権の侵害を回避するため、当該商標権について使用権の設定を受け、従前の使用を継続したとしても、それは適法であることはいうまでもない。
このように、本件においては、使用権者による商標の使用が、上記法益を侵害する違法な行為であることという、商標法第53条が当然の前提としている条件を欠くものであり、専用使用権者の行為は、「指定商品についての登録商標又は類似する商標の正当な使用であって、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとき」に該当するものではない。
4 第4回答弁
株式会社ハトプラは、株式会社ブリッドから同社の事業を適法に継続した者であり、他社(宮田工業株式会社)が所有する商標権の存在を知ったことにより、それまで継続使用してきた商標の使用が当該商標権の侵害に当たることを知るに至り、これを回避するために使用権の設定を受けたのである。
換言すれば、株式会社ハトプラは、適法に使用されているティーズの未登録商標「BRIDE」の存在を知り、その未登録商標の周知性ただ乗りするために、商標権者から使用許諾を受け、登録商標ないしそれに類似する商標を使用することにより、出所の混同を生じさせたものでもない。
これに対し、ティーズによる商標「BRIDE」の使用行為は、明らかに宮田工業株式会社が所有する商標権を侵害するものであって、法律上守られるべき法益として認められるものではなく、使用権者株式会社ハトプラによる使用は、上記法益を侵害する違法な行為ではない。
したがって、株式会社ハトプラによる商標「BRIDE」の使用行為により、商標権の侵害を継続しているティーズの商品との間で出所の混同を生じたとしても、当該商標登録が商標法第53条第1項により取り消されることはない。
また、請求人は、「被請求人は、株式会社ハトプラの商標使用に関して、定期的な監督、報告の聴取など実質的な監督を行っておらず、相当の注意義務を果たしたとはいえない。」と主張している。
しかし、商標権者は、少なくともティーズの商標使用行為が、当該商標権を侵害している事実ばかりか、株式会社ブリッドによる商標の使用態様並びに株式会社ハトプラの商標使用態様の全てを知悉した上で、専用使用権を許諾しているのであり、そもそも株式会社ハトプラの登録商標使用に関して、自己の商標権を侵害しているティーズの使用行為に係る商品との間で混同を生じないよう注意監督する義務があろう筈もないのである。

第6 当審の判断
1 商標法第53条第1項本文に規定する各要件について
甲各号証及び乙各号証によれば、商標法第53条第1項本文に規定する各要件について、以下のように認められる。
(1)本商標権の通常使用権者及び通常使用権の範囲について
甲第1号証の7(契約書)によれば、被請求人(当該契約書においては「甲」)は、平成15年6月16日付で株式会社ハトプラ(当該契約書においては「乙」)に対して、本件登録第2423435号商標権について、通常使用権を許諾する契約をしている。
その第1条(商標の使用範囲)によれば、(a)許諾商品「自動車用座席及び座席部品」、(b)使用態様「ブライド/BRIDE」、(c)適用地域「日本国内全域」、(d)許諾期間「本契約締結後3年間」となっており、第2条(乙の使用義務)には、「乙は、本契約書締結後平成15年7月1日より、前条の範囲で商標の使用を開始するものとする。」とあり、第7条(使用見本と使用報告書の提出)には、「乙は、本件商標及び本件類似商標を使用するに際してその態様を示す見本を甲に事前に提出するものとし、また新たに使用予定の標章(ロゴ等)についてその都度事前にその態様を示す見本を甲に提出して承認を得るものとする。」と規定されている。
(2)通常使用権者の使用商標・使用商品について
本件取消審判において、請求人が本件商標の不正使用に該当すると主張している通常使用権者の使用に係る商標は、甲第1号証の2(株式会社ハトプラのパンフレット)に表示されている商標であり、その態様は、別掲(1)に示すとおり、やゝデザイン化された「BRIDE」の欧文字のみからなる商標(以下「本件使用商標」という。)であって、「自動車用座席(スポーツシート)」について使用されているものである。この点については、被請求人も乙第9号証として甲第1号証の2と同じ株式会社ハトプラのパンフレットを提出しており、当事者間に争いはないものと認められる。
なお、この点について、被請求人は、「株式会社ケンテック(平成11年に株式会社ハトプラに承継)、トータス(平成6年に株式会社ブリッドに承継)及び請求人は、平成3年に提携して『BRIDE』シートの企画・開発、製造及び販売をしていくことにした。その後、平成15年に入って、請求人と株式会社ブリッドの関係が悪化し、提携を解消することになった。そのため、株式会社ブリッドと株式会社ハトプラは、別ルートで『BRIDE』シートを販売することとし、請求人も、独自に『BRIDE』シートの製造、販売を始め、平成16年3月1日には、新たな製造会社としてBRIDE株式会社が設立された・・・」旨述べている。
(3)本件商標と本件使用商標との関係について
本件商標は、「ブライド」の片仮名文字と「BRIDE」の欧文字とを二段に横書きしてなるものであるところ、「BRIDE」の語は、「花嫁」等の意味を表す英語として「ブライド」の読みをもって知られている語であるから、本件商標は、「BRIDE」の欧文字にその自然な読みを併記したものと認められるものである。
これに対して、通常使用権者の使用に係る本件使用商標は、「BRIDE」の欧文字のみからなるものであるところ、「花嫁」の観念を生ずる点及び「ブライド」の称呼を生じ得るものである点において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用ということができるが、その態様はやゝデザイン化されており、「ブライド」の文字部分も使用されていないから、本件商標と同一の商標であるか類似の商標であるかという観点からみれば、同一の商標の使用ではなく、本件商標に類似する商標の使用といわなければならない。そして、本件使用商標が使用されている商品は「自動車用座席(スポーツシート)」であり、これは、本件商標の指定商品中に含まれている商品であり、通常使用権の許諾商品中に含まれている商品である。
しかしその一方、通常使用権者である株式会社ハトプラのパンフレット(甲第1号証の2、乙第9号証)には、大きく書された「BRIDE」の文字の左上に、「ブリッド、ネクストステージ/NEWBORN」の文字が表示されており、また、甲第1号証の1(平成17年(行ケ)第10470号審決取消請求事件判決)によれば、被請求人(該事件の被告)は、「被告の主張」として、「・・・ブリッド社及びハトプラ社は、自己の商品として、ブリッド標章を付した自動車用座席の製造又は企画、開発を行っていたのであって、単なる下請製造業者、部品納入業者ではない。ところが、平成15年に入って原告補助参加人との関係が悪化したため、・・・別のルートで自動車用座席を販売することとして・・・」と述べていることを併せみれば、通常使用権者は、本件使用商標を「ブリッド」の称呼のもとに取引に供していたものと認められる。
そうとすれば、本件使用商標を使用する行為は、本件商標と類似する商標の使用行為といえる一方で、本件商標とは外観を異にし、その称呼も「ブライド」とは別異の「ブリッド」の称呼をもって使用されていたものと認められるから、これは、本件商標とは別個の識別機能を併せ持つ態様での使用行為といわなければならない。
(4)請求人の使用商標・使用商品について
請求人は、1981年にスポーツカーのスポーツシート専用メーカーとして、請求人の前身であるブリッドCoの商号のもとに事業を開始し、1989年には法人化されている。そして、請求人の使用に係る商標(以下「請求人使用商標」という。)は、1983年に、株式会社鉄谷写真事務所に依頼して作製されたものであって(甲第7号証 ロゴマーク製作証明書)、甲第4号証(報告書2)に添付の雑誌等の広告に表示されており、その態様は、別掲(2)に示すとおり、やゝデザイン化された「BRIDE」の欧文字のみからなる商標であって、「自動車用座席(スポーツシート)」について使用されているものである。そして、該雑誌等の広告や記事によれば、請求人使用商標は、「ブリッド」と表記され、「ブリッド」と称呼されていることを認めることができる。
(5)本件使用商標と請求人使用商標との関係について
本件使用商標の態様は、別掲(1)に示したとおりの構成からなるものであり、これは、別掲(2)に示した請求人使用商標とその外観における構成態様を全く同一にするものである。しかも、上記したとおり、請求人使用商標は「ブリッド」と称呼されているものであるところ、本件使用商標も「ブリッド」の称呼のもとに使用されていたものである。
そうとすれば、本件使用商標は、請求人使用商標と外観を同一にし、その称呼「ブリッド」をも同一にするものであり、使用に係る商品も請求人の業務に係る商品と同じ「自動車用座席(スポーツシート)」である。
(6)請求人使用商標の周知性について
前記したとおり、請求人は、1983年には、「BRIDE(ブリッド)」標章を使用して、スポーツシートの製造・販売を始めていたものと認められるところ、請求人の提出に係る甲第3号証に添付の「営業報告書」によれば、請求人の業務に係るスポーツシートの売上げは、平成元年度においては、約2億3000万円であったものが、平成6年度から平成8年度においては、13億円台に達し、その後は漸減傾向ではあるが、平成14年度においては、約5億7000万円となっている。また、請求人の宣伝広告費も、平成元年度においては、約790万円であったものが、平成7年度においては、1億3000万円近くになり、平成14年度においては、約4200万円となっている。そして、平成14年度におけるシートの売上数は、リクライニングとフルバケットの合計で6190脚となっている。
なお、自動車のドライビングシートの市場は、完成車の交換部品市場であって、ラグジュアリー用又はモータースポーツ用等の用途に応じて自動車部品専門店で販売されるものであり、甲第6号証(株式会社自動車産業通信社発行の「2004年カー用品トータルボリューム試算」)によれば、ドライビングシートの年間の需要は、2002年度で約18億6000万円、個数で2万8800脚の規模である。
そして、甲第4号証に添付の証拠によれば、請求人は、「BRIDE(ブリッド)」シートの広告を「CAR ACCESSORIES GUIDE’83」、「’85/エキサイティングパーツマニュアル」、「カーマガジンOPTION(1986年5月、1987年6月、1996年5月発行)」、「ヤングバージョン(平成13年5月発行)」等々に掲載していた事実を認めることができる。
また、甲第4号証に添付の新聞や雑誌によれば、請求人の商品に関して、次のように記載されている。
1995年発行の「J’Sティーポ」には、「・・特にクルマのパーツの場合は、開発にあたっての動機と情熱が何よりも重大な意味を持つことがほとんどである。ブリッドという名のスポーツ&レーシングバケットシートを製作しているティーズは、まさにそんな会社であるといえよう。・・・今やアフターマーケットシートの分野では国内最大手である。・・・」とあり、1995年6月発行の「4WD SPIRITS」には、「・・・国産バケットシートの普及に大きな役割を果たしてきたティーズ(株)の『ブリッド』シリーズ。バケットシートの製作を始めて12年間、ブリッド・シートはモータースポーツからストリートまで、幅広いファン層に支えられている。・・・」とあり、平成7年8月30日発行の「スポーツニッポン」には、「・・・ドイツのカイパー・レカロ社は、人間工学に基づいたデザインで有名なメーカー。レカロ社のシートは、ヨーロッパ産のクルマに純正装備されていることも多く、その性能のよさには定評がある。・・・日本でもドイツさながらの職人気質でシートを製造するメーカーがある。例えば、名古屋に本社を置くティーズ株式会社の『ブリッド』というブランド。・・・」とあり、1999年10月発行の「auto fashion original」には、「・・・今回紹介するブリッドは、スポーツシートだけにこだわり、機能性を最優先させたシート作りをポリシーとする。・・・実際に全日本GT選手権500クラスのエッソタイガースープラや300クラスのダイシンS15スープラなども採用され、国内レースカーの約6割の装着率を誇る。・・・」旨記載されている。
上記において認定した事実を総合してみれば、「BRIDE(ブリッド)」商標が付された請求人の業務に係るスポーツシートは、自動車関連の新聞・雑誌等において盛んに紹介されており、請求人商品の売上げのピーク時とはいえない平成14年度(2002年度)においても、ドライビングシート市場において約25%のシェアを有し、国産品では圧倒的なシェアを有していたものであることが認められる。
そして、自動車レーシング用シートは、モータースポーツを愛好する若い男性が主たる需要者であるという比較的限られた市場であるという特殊性をも併せ考慮すれば、請求人使用商標は、遅くとも、その売上げが最高に達した平成6年当時には、モータースポーツ用シートの取引者・需要者の間において広く認識されていたものと認められ、その周知性は、被請求人と株式会社ハトプラとの間で「ブライド/BRIDE」の商標権についての通常使用権を許諾する契約を締結した平成15年6月16日の時点以降においても継続していたものということができる。
そして、上記した請求人の業績には、業務提携していた株式会社ハトプラらの寄与があったことは推測し得るとしても、「BRIDE(ブリッド)」の商標自体は、請求人が1983年(昭和58年)に株式会社鉄谷写真事務所に依頼して作製したものであることが認められ、請求人は、株式会社ハトプラらと業務提携した平成3年以前の昭和58年には既に、雑誌に広告を掲載しており、前記した新聞や雑誌の記事においても、専ら「ティーズ株式会社のBRIDE(ブリッド)」として紹介されていたことをも併せみれば、「BRIDE(ブリッド)」商標は、請求人の業務に係るスポーツシートの標章として機能していたものとみるのが相当である。
(7)出所の混同について
以上を総合してみれば、株式会社ハトプラの使用する本件使用商標は、請求人使用商標と外観を同一にするばかりでなく、称呼をも同一にするものであり、使用に係る商品も請求人の業務に係る商品と同じ「自動車用座席(スポーツシート)」である。
そして、請求人使用商標は、モータースポーツ用シートの取引者・需要者の間において広く認識されていたと認められるものである。
してみれば、上述した事情のもとに、株式会社ハトプラが「自動車用座席(スポーツシート)」について本件使用商標を使用すれば、これに接する取引者・需要者は、請求人使用商標を想起して、その商品が請求人の業務に係る商品であるかの如く、あるいは、請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生ずることは必至のことというべきであるから、本商標権の通常使用権者である株式会社ハトプラは、本件商標の指定商品に含まれる商品について、本件商標に類似する商標を使用することにより、他人(請求人)の業務に係る商品と出所の混同を生ずるものをしたといわなければならない。
2 商標法第53条第1項ただし書きに規定する要件の有無について
そこで次に、被請求人(商標権者)が商標法第53条第1項ただし書きに規定する「その事実を知らなかった場合」に該当するか否かについて検討する。
この点について、被請求人は、使用許諾契約第7条の規定に基づき、株式会社ハトプラから「BRIDE」商標の見本を徴求していたこと、また、「BRIDE」シートは、株式会社ハトプラ、株式会社ブリッド及び請求人が提携して企画・開発、製造及び販売をしてきたものであり、「BRIDE」標章は、株式会社ハトプラ自身の標章でもあったから、被請求人が株式会社ハトプラによる「BRIDE」商標の使用を格別問題としなかったのは、むしろ当然のことであって、被請求人に注意義務の懈怠はない旨述べている。
しかしながら、本件審判において問題となるのは、通常使用権者である株式会社ハトプラが本件商標(本件商標に類似する商標を含む)の使用行為として、「BRIDE(ブリッド)」商標を使用することにより、他人(請求人)の業務に係る商品と出所の混同を生じさせるものをしたか否かということである。
この要件の判断にあたって、株式会社ハトプラが「BRIDE(ブリッド)」標章を使用し得る立場にあったか否かということは関係のないことであって、株式会社ハトプラが「BRIDE(ブリッド)」標章を使用し得る立場にあったとしても、被請求人は使用許諾者として、本件商標が通常使用権者により不正に使用されていないかどうかを監督する責任があったのである。
そこで、被請求人が商標法第53条第1項ただし書きに規定する「その事実を知らなかった場合」に該当するか否かについてみるに、被請求人は、使用許諾契約第7条の規定に基づき、通常使用権者である株式会社ハトプラから「BRIDE」商標の見本を提出させていたというのであるから、被請求人は、通常使用権者が本件商標構成中の「ブライド」の文字部分を使用しないで、別掲(1)のとおりの構成よりなる「BRIDE」の欧文字部分のみよりなる商標を使用することを把握していたものということができる。
そしてまた、過去において、株式会社ハトプラと請求人とが提携して「BRIDE(ブリッド)」標章に係る商品の製造・販売をしていた事実を認識していたのであれば、そのような事情を認識する過程において、「BRIDE(ブリッド)」商標の周知性について、少なくとも一定程度の認識をしていたものとみるのが自然である。
そうとすれば、被請求人は、商標等の知的財産権に精通している企業ともいえるから、上記の如き実情のもとにおいて、通常使用権者が請求人の業務に係る商品と同じ「自動車用座席(スポーツシート)」について、請求人が使用している商標と同じ商標を使用すれば、商品の出所について混同を生ずるであろうことは容易に認識し得たはずである。
しかるに、被請求人は、使用許諾契約第1条において、本件商標の使用態様として、「ブライド/BRIDE」の態様で使用することを定めておきながら、通常使用権者が本件商標構成中の「ブライド」の文字部分を使用することなく、別掲(1)のとおりの構成態様からなる商標(前述のとおり、乙第9号証のパンフレットには「ブリッド」の文字も表示されている)を使用し続けていることを容認していたということは、被請求人において、使用許諾者としての監督責任を果たしていたものとはいい難く、使用許諾者として相当の注意をしていたものということもできない。
以上のとおり、本件の場合は、商標法第53条第1項ただし書きに規定されている「当該商標権者がその事実を知らなかった場合」には該当しないものというべきであり、仮に、被請求人(商標権者)がその事実を知らなかったとしても、上記のような状況のもとにあっては、「相当の注意をしていた」ものということもできない。
3 被請求人及び参加人のその他の反論について
(1)被請求人は、株式会社ハトプラと請求人の商品販売経路の違い、モデル名の表示の違い、製造元・販売元の表示の違い、販売価格帯の違い等から、株式会社ハトプラと請求人の商品との間において出所の混同は生じない旨主張している。
しかしながら、仮に、被請求人が主張しているように、小売店については限定された販売経路で商品を仕入れ、問屋の担当者から商品内容の説明を受けているため、請求人の「BRIDE」シートと株式会社ハトプラの「BRIDE」シートを混同することはないとしても、これを購入しようとする顧客については、たとえ専門的なマニアであったとしても、同種の商品に同じ商標が付されていれば、商品の出所について混同を生ずることは必定である。
しかも、請求人においても様々な販売経路での販売を行っている旨主張しており、また、販売価格帯の違いにしても、需要者層を異にする程の差異ではなく、その他の商品販売にあたっての相違点を総合してみても、先に判断したとおり、請求人使用商標に係る商品と本件使用商標に係る商品との間の出所の混同を否定するに足る理由とは認められない。
(2)被請求人は、自動車用座席の国内販売量については年間販売総数約3万脚のうち、ドイツのレカロ社が約70%、イタリアのスパルコ社が約11%のシェアを有し、その残部を海外メーカーや国産メーカーが分け合っている状況にあり、請求人は、そのような中の国産メーカーの1社にすぎず、請求人の標章は、一般に広く知られているものではない旨主張している。
しかしながら、被請求人は、その主張を裏付ける証拠を提出していないばかりでなく、元々、シェアというものは、比較の対象となるデータの取り方によって、そのシェアが表している意味合い、占有率の数値自体が異なったものとなるものであるから、請求人が主張しているシェアの数値と被請求人が主張しているシェアの数値とが異なっていたとしても必ずしも不自然なことではなく、基礎となるデータの取り方によっては、被請求人が主張しているようなシェアとなる場合があるとしても、シェアのみによって、請求人使用商標の周知性を判断した訳ではないから、この点についての被請求人の主張をもって、前記判断が左右されることはない。
(3)被請求人は、商標法第53条の規定は、他人の商標が少なくとも周知であり、それに似せて使用した場合に限って制限的に適用されるべきである旨主張している。
しかしながら、前述のとおり、請求人使用商標は、自動車レーシング用シートの取引者・需要者間において広く知られていたと認められるものであり、また、本件使用商標は、本件商標に類似する商標の使用であって、しかも、外観を請求人使用商標と同一にし、称呼においても、請求人使用商標と同じ「ブリッド」の称呼をもって取引に供されていたものと認め得るものであるから、この点についての被請求人の主張は採用できない。
(4)参加人は、使用権者が登録商標そのものを、その指定商品に使用する場合(「同一の範囲内の使用」)には、商標法第53条第1項の適用範囲外と解されるべきである旨主張している。
しかしながら、商標法第53条第1項には、参加人が主張するような適用除外を定める規定がないばかりでなく、上記のとおり、参加人である通常使用権者の使用する商標は、本件商標そのものの使用ではないから、いずれにしても、この点についての参加人の主張は採用できない。
(5)参加人は、請求人使用商標は本件商標の商標登録出願の時点においては何ら周知ではなく、請求人は、商標法第32条第1項の先使用権を有していないから、請求人の上記標章使用行為は、本商標権を侵害する行為であって、当該侵害行為の存在を前提に、商標法第53条第1項の規定により本商標権が取り消されるということは極めて不当である旨主張している。
しかしながら、商標法第53条の取消審判は、現行法において自由に使用許諾を認めたことに対する弊害防止の規定であり、取消の要件も専らその観点から定められているものであって、本件審判における当事者間の権利関係が確定しなければ、取消の要件を判断できないものとは解されない。本件商標と請求人使用商標との間に、参加人が主張しているような権利関係の争いがあったとしても、その争いは別途判断されるべきものである。
(6)そうとすれば、被請求人及び参加人の上記主張は、いずれも採用できない。
4 むすび
以上のとおり、本商標権の通常使用権者である株式会社ハトプラは、本件商標に類似する商標をその指定商品に含まれる商品に使用して、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたと認められるものである。そして、本件においては、同項ただし書に規定する「被請求人(商標権者)がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたとき」に該当するものとも認められない。
なお、本件使用商標は、2003年10月発行のパンフレットにおいても使用されていたものであるから、本件審判請求は、商標法第53条第3項において準用する同法第52条(除斥期間)の規定に触れるものではない。
また、請求人及び参加人は、共に証人尋問申出書を提出しているが、申出書に記載されている尋問事項は、両者提出の書証をもって把握し得たので、証人尋問は行わなかった。
したがって、本件商標の登録は、同法第53条第1項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)通常使用権者の使用に係る商標(本件使用商標)


別掲(2)請求人使用商標


審理終結日 2007-08-31 
結審通知日 2007-09-05 
審決日 2007-09-19 
出願番号 商願昭63-77021 
審決分類 T 1 31・ 5- Z (1060912131922)
最終処分 成立 
前審関与審査官 柴田 昭夫鹿谷 俊夫 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 関根 文昭
久我 敬史
登録日 1992-06-30 
登録番号 商標登録第2423435号(T2423435) 
商標の称呼 ブライド 
代理人 吉原 省三 
代理人 桶川 美和 
代理人 元井 成幸 
代理人 稲葉 民安 
代理人 高橋 隆二 
代理人 中澤 直樹 
代理人 上田 敏成 
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