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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200612859 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X43
管理番号 1209938 
審判番号 無効2009-890068 
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-06-08 
確定日 2009-12-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5142698号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5142698号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5142698号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「愛飲酒多飲」の漢字を横書きし、その上にルビするように小さな「アインシュタイン」の片仮名文字を上に横書きで配し、「愛飲酒多飲」の文字の右側にその3分の2程度の大きさで「江戸おでん」の漢字仮名交じりの文字を横書きで配してなり、平成19年6月4日に登録出願、第43類「飲食物の提供,宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」を指定役務として、同20年6月20日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
請求人は、世界的に著名なドイツ出身の物理学者であるアルベルト・アインシュタインの遺言に基づく受益者として、アインシュタイン博士の名前、肖像、声、署名、イラスト、写真、科学公式及び図面等を使用し又は他者に使用させるなど、アルベルト・アインシュタインの死後のパブリシティ権、著作権、商標権等を全て所有する大学機関である。
本件商標は、その外観から「アインシュタイン」の称呼が生ずるところ、「アインシュタイン」は、我が国を始め、アルベルト・アインシュタインの著名な略称である。この著名な略称を含む商標を、アインシュタインと無関係な者が遺族等の承諾を得ることなく自己の商標として登録することは、世界的に著名な死者の著名な略称の名声に便乗し、かつ、その使用の独占をもたらすことになり、アルベルト・アインシュタインないしその遺族の名声、名誉を毀損し、かつ、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして公の秩序又は善良の風俗を害するものである。
したがって、本件登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。
本件商標は、「愛飲酒多飲江戸おでん」の全体で意味をなし、重要なのは漢字表記の持つ「愛する酒を多く飲む」という意味であり、ルビはあくまで語呂合わせにすぎず、アルベルト・アインシュタインの人名を観念するものではない。また、ドイツ語では、「一つの石」という意味である。なお、本件商標は、昭和52年に有限会社カミヤを権利者として登録されて以来、有効かつ平穏に使用され、現在は、分社された有限会社カミヤ本店江戸おでんが現在まで、継続して使用し続けているものである。

第4 当審の判断
本件商標は、別掲のとおり、大きい「愛飲酒多飲」の文字とその3分の2程度の大きさの「江戸おでん」の文字を一連に横書きし、さらにその「愛飲酒多飲」の文字の上には、ルビするように小さく「アインシュタイン」の文字を表してなるが、詳細に見るとその構成文字「愛」「飲」「酒」「多」「飲」の文字には、その各文字の上に「ア」「イン」「シュ」「タ」「イン」の振り仮名が付されているものと認められる。
ところで、「アインシュタイン」の文字(語)は、「[アルベルト?,Albert Einstein 1879-1955] 米国の理論物理学者.ユダヤ系ドイツ人.ナチスに追われて米国に帰化.相対性理論で従来の宇宙観に根本的変革を与え,現代物理学の基礎を築いた.1921年にノーベル物理学賞受賞」(コンサイスカタカナ語辞典 三省堂)と記載されているとおり、我が国においても非常によく知られている世界的な著名な物理学者の名前として理解されるところである。
そうとすれば、本件商標構成中の「アインシュタイン」は、故「アルベルト・アインシュタイン」の著名な略称であると十分に認めることができ、1955年の死亡時から本件商標の登録査定時までの間に、その著名性が減少したものとは認められない。
また、被請求人も故「アイシュタイン」が著名な物理学者であったことは争っていないところ、同人の名声はその後も衰えるところもなく、しかも、甲第2号証の「宣誓供述書」によれば、請求人は、同人の遺言に基づき受託した知的財産等の財産を管理、所有していることが認められる。
しかして、我が国において、その名称、氏名又はそれらの略称をもって著名な者と無関係な者が、その承諾なしに前記の名称等からなる商標について登録を受けることは、それが商標法第4条第1項第8号、同第15号等によって商標登録が受けられない場合に当たらないとしても、当該名称等に係る者の名声を冒用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正目的をもって登録出願されたものと認められる限り、商取引秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為と言うべきであるから、同第7号に該当すると解すべきである(平成10年(行ケ)第11号東京高裁同11年3月24日言渡参照)。
これを本件商標についてみれば、本件商標を登録することは「アイシュタイン」の名声に便乗し、これを冒用して商売において利益を得るために使用する目的が認められ、かつ、世界的に著名な物理学者の名声を一私人たる被請求人が、遺族の承諾もなく商取引に使用することは、故人の名声・名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、商取引秩序を乱すものであって、我が国の国際的な信頼も損なうおそれがあると言うべきであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為と言わざるを得ないから、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当すると判断するのが相当である。
なお、被請求人は、「『アインシュタイン』のルビは、語呂合わせにすぎず、アルベルト・アインシュタインの人名を観念するものではない。ドイツ語では、『一つの石』という意味である。本件商標を昭和52年に登録して以来、有効かつ平穏に現在まで、継続して使用し続けているものである。」旨主張しているが、上記のとおり「アインシュタイン」の文字(語)が故「アルベルト・アインシュタイン」の著名な略称であるところ、本件商標構成中「愛飲酒多飲」中の「愛飲」は、「好んで飲むこと。」(広辞苑第六版)の意味を有する成語であって「アイイン」と読まれること、また、「アインシュタイン」の文字がドイツ語であって、仮に「一つの石」の意味を有するとしても、取引者、需要者間において、親しまれた語とは認められないことから、被請求人の主張は採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)



審理終結日 2009-10-23 
結審通知日 2009-10-28 
審決日 2009-11-10 
出願番号 商願2007-56027(T2007-56027) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (X43)
最終処分 成立  
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 鈴木 修
井出 英一郎
登録日 2008-06-20 
登録番号 商標登録第5142698号(T5142698) 
商標の称呼 アインシュタインエドオデン、アイインシュタインエドオデン、アインシュタイン、アイインシュタイン、エドオデン 
代理人 佐藤 恒雄 

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