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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z10
管理番号 1208385 
審判番号 取消2008-670002 
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-03-05 
確定日 2009-10-05 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第765543号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件国際登録第765543号商標(以下「本件商標」という。)は,「ORTHORA」の欧文字からなり,2001年2月14日に,Switzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2001(平成13)年8月9日を国際登録の日とし,第10類「Medical and dental instruments and apparatus(particularly for maxillofacial orthopaedics);dental apparatus(electric),particularly for maxillofacial orthopaedics;mirrors for dentists(particularly for maxillofacial orthopaedics),dentists’ chairs;chairs and seats for dental purposes(particularly for maxillofacial orthopaedics);quartz and ultra-violet lamps for dental and medical purposes(particularly for maxillofacial orthopaedics);basins for medical and dental purposes and(particularly for maxillofacial orthopaedics);dental burs(particularly for maxillofacial orthopedists).」及び第20類「Furniture,particularly chairs and deck chairs.」を指定商品として,平成20年3月7日に設定登録されたものである。
2 請求人の主張
請求人は,「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て,その理由及び答弁に対する弁駁を次のとおり述べた。
(1)請求の理由
本件商標は,その指定商品中の第10類の全指定商品について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから,商標法第50条第1項の規定によりその登録を取り消すべきである。
(2)答弁に対する弁駁
被請求人は,「chairs and seats for dental purposes(particularly for maxillofacial orthopaedics)」について,本件商標を使用している旨主張し,証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証を提出しているが,これらの証拠は本件審判請求の登録前3年以内のわが国における商標の使用の事実を証明するに足るものではない。
(1)乙第1号証ないし乙第6号証は,被請求人会社の沿革や取扱商品や「Orthora 200」という商品の概略を外国において示す資料であり,我が国において使用されていたことを示す資料ではない。
(2)被請求人は,乙第7号証及び乙第8号証により,被請求人が日本の貿易会社である白水貿易株式会社(以下「白水貿易」という。)の仲介で歯科医師に直接本件商標を付した商品の販売を行ったことにより本件商標を日本国内で使用していた事実を立証しようとしている。
しかし,被請求人が本件商標を日本国内で使用していたことを立証するためには,被請求人の当該販売行為が日本国内において行われたことが必要であり,スイス国に所在の被請求人がスイス国に所在する本件商標に係る商品について日本国内に所在する歯科医師に対して個人輸入により販売し,当該商品を日本国内に発送したとしても,それは日本国内に所在する歯科医師による輸入行為に該当するのであって,被請求人による日本国内における販売行為に該当するものではない。
また,被請求人は日本の貿易会社である白水貿易の仲介で歯科医師に直接本件商標を付した商品の販売を行ったと主張しているが,乙第10号証及び乙第11号証には白水貿易が本件商標を付した商品を取り扱っていることが示されておらず,薬事法の医療機器に該当する本件商品を日本国内に所在する歯科医師が薬事申請を行うことなく個人輸入により被請求人から直接輸入して個人で使用する行為は被請求人の日本国内での使用とはいえない。
3 被請求人の答弁の要点
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を次のとおり述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
(1)答弁書(要旨)
本件商標の商標権者であるMikrona Technologie AG(以下「被請求人」という)は,1959年に設立されたスイス国に所在の会社であり,歯列矯正を中心とする歯科技術に関する製品の開発,製造を業として行っている(乙第2号証)。
「Orthora 200」は,被請求人の販売する歯列矯正治療用椅子である。当該パンフレットには,当該製品と歯科治療用器具,照明器具,収納棚などの専用備品が紹介されている(乙第3号証)。また,被請求人のウェブサイトの製品問い合わせページから,日本在住の需要者であっても容易に資料請求をすることが可能である(乙第4号証)。
被請求人は,大阪市淀川区新高1丁目1番15号に所在の白水貿易の仲介で,わが国の歯科医師に直接,「Orthora 200」を含む歯列矯正用治療用椅子一式の販売を本件審判請求の登録前3年以内に行った(乙第7号証ないし乙第8号証)。
乙第7号証の請求書発行日は,「15.11.2006(2006年11月15日)」であり,これには,販売者である被請求人の名称とその住所が表示されている。そして,納品先の一つである竹元矯正歯科は,矯正治療専門のクリニックである(乙第9号証)。
上記の白水貿易は,歯科専門貿易商社であり(乙第10号証)。被請求人の製品も白水貿易の取り扱い製品に含まれている(乙第11号証)。被請求人は,白水貿易と取引関係にあることから,白水貿易の紹介で乙第7号証及び乙第8号証に記載の国内の歯科医師に直接,販売を行った。
被請求人は,竹元矯正歯科から本件商品の注文を受けて,2006年11月16日に本件商品をスイス国シュプレイテンバッハの工場から出荷した。運送業者のシェンカーシュバイツアーゲーの2006年11月16日付けの送り状には,2006年12月25日が本件商品の東京到着予定日であることが示されている(乙第12号証)。
乙第13号証の陳述書は,白水貿易が竹元矯正歯科において,本件商品の設置作業を行ったことを証明するものである。
白水貿易は,2007年(平成19年)2月28日付けで,被請求人の従業員のメールアドレスあてに,竹元矯正歯科で本件商品の設置作業完了後に撮影した写真をメールで送信し,作業完了の連絡をしている(乙第14号証)。該写真には,乙第3号証の製品カタログに示された「Orthora 200」の商品が撮影されている。
乙第14号証のメールに添付された写真が竹元矯正歯科で撮影されたものであることは,竹元矯正歯科のホームページに掲載されている診察室の写真からも明らかである(乙第15号証)。
以上のとおり,本件商標は,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者である被請求人により指定商品中「chairs and seats for dental purposes(particularly for maxillofacial orthopaedics)」について使用していることが明らかである。
4 当審の判断
(1)被請求人の提出した証拠によれば以下の事実を認めることができる。
ア 乙第3号証は,被請求人が作成した「Der ORTHORA 200」「The ORTHORA 200」及び「L’ORTHORA 200」と題する製品パンフレットであるところ,これには,歯列矯正治療用椅子とその専用備品である照明器具,収納棚などの写真と独語,英語及び仏語による商品の説明などが掲載されている。
乙第4号証は,被請求人のウェブサイトの製品問い合わせページ及びその訳文であるところ,これには上部に「We are interested in ORTHORA 200,the orthodontics treatment unit」の記載,その下に「send us brochure(カタログ希望)」,「Please contact us(連絡希望)」の記載,さらに,その下に複数の歯列矯正治療用椅子の写真が掲載され,それぞれにチェック用のボックスが設けられている。
以上によれば,前記の各証拠は,外国語ではあるものの日本在住の需要者により参照及び入手が可能なパンフレット及びウェブサイトであり,その記載内容により,被請求人が「歯列矯正治療用椅子」に,「ORTHORA(Orthora)200」なる商標を使用していること,すなわち,「ORTHORA(Orthora)」を要部とする本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していることが認められる。
そして,「歯列矯正治療用椅子」は,請求にかかる指定商品に含まれる「chairs andseats for dental purposes(particularly for maxillofacial orthopaedics)」であると認められる。
イ 乙第7号証は,被請求人発行の「INVOICE」及びその訳文であるところ,これには,宛先として「TAKEMOTO ORTHODONTIC OFFICE Dr,Kyoto Takemoto,D.D.S」及び「3-89-3,Shinmatsudo Matsudo JP270-0034Chiba/Japan」の記載,また,発行日欄及び配送日の欄に「15.11.2006」,配送として「Sea freight by carrier」,内容欄に,製品名として「Orthora 200 EC treatment unit」,数量欄に「4」などの記載があり,さらに,その書類の最後には,支払いとして「Prepaid(前払い:翻訳)」,支払先として銀行名及び口座番号などの記載がある。
乙第9号証は,竹本矯正歯科のウェブサイトであるところ,これには,住所として「千葉県松戸市新松戸3-89-3」,また,医院の説明として「E-LINE・竹元矯正歯科は1983年に矯正治療専門のクリニックとして誕生しました。…」などの記載がある。
乙第12号証は,上部左に,「16/11 2006 DO 17:16」,上部右に,「SCHENKER Logistics」の記載のある書面及びその書面の訳文であるところ,これは,その記載事項及び被請求人の主張から,運送業者である「シェンカーシュバイツアーゲー」が作成した2006年11月16日付けの送り状と認められ,これには,送り主として「MIKRONA TECHNOLOGIE AG」,受取人として「TAKEMOTO ORTHODONTIC OFFICE DR.KYOTO TAKEMOTO,D.D.S.」,船積日として「28.11.2006」,目的地として「TOKYO」,到着予定日として「25.12.2006」,個数/梱包商品として「4」及び「COMPLETE ORTHODONTIC CHAIRS(歯科治療用椅子:訳文)」などの記載がある。
以上によれば,被請求人が,「ORTHORA(Orthora)200 EC」なる商標を付した「歯科治療用椅子(歯列矯正治療用椅子)」4台及びその付属品を,2006年11月16日にスイス国シュプレイテンバッハの工場から出荷し,船便により,日本国(東京)千葉県松戸市所在の竹元矯正歯科に向けて発送し,その製品が2006年12月26日ころに日本国(東京)に届いたであろうことが推認され,また,被請求人は,竹元矯正歯科に対し,発送した商品の代金を2006年11月15日付けの請求書(INVOICE)により請求したことが認められる。
ウ 乙第10号証は,白水貿易のウェブサイトであるところ,その会社案内欄に「白水貿易は…歯科医の使用するデンタルチェアー,レントゲン,小器械,各種材料,また歯科技工士,歯科衛生士が使用する器械,材料などを一貫して輸入し,日本全国に広がる販売網で販売しています。…」の記載がある。
乙第11号証は,同じく白水貿易のウェブサイトの製品紹介を掲載したページであるところ,これには,[メーカー別製品のご案内]として,被請求人と認められる「ミクロナ社」が掲載されている。
乙第13号証は,白水貿易株式会社 代表取締役 中山茂男の記名押印のある「陳述書」であるところ,これには,「平成19年2月19日に,竹元矯正歯科において,白水貿易が『Orthora 200 EC 治療装置』の設置作業を行った」旨の記載がある。
乙第14号証は,送信者を「sh-nakayama@hakusui-trding.co.jp」,宛先を「PeterMeier;WalterSprenger」,送信日を「28.Februar20070 8:52」,件名を「RE:MIGMA200&Dr.Takemoto」とする電子メール(写)であるところ,これには,「竹元(医師)矯正歯科の写真を添付しました(訳文)」と記載され,その添付として,「122.zip」の表示があり,4台の歯科治療用椅子が設置された診療室を写した4枚の写真が添付されている。
乙第15号証は,竹元矯正歯科のウェブサイトであるところ,これには,乙第14号証に示された写真と略同じ角度で撮られた「4台の歯科治療用椅子が設置された診療室」の写真が表示されている。
以上によれば,乙第7号証及び乙第12号証に示された「歯科治療用椅子(歯列矯正治療用椅子)」4台及びその付属品が,歯科用医療機材の輸入販売を行う白水貿易により,平成19年2月19日に竹元矯正歯科に設置されたことが推認できる。
(2)前記(1)で認定した事実及び答弁の理由を総合すれば,本件商標の商標権者(被請求人)は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示した請求に係る指定商品に含まれる「chairs andseats for dental purposes(particularly for maxillofacial orthopaedics)(歯列矯正治療用椅子)」を,2006年11月16日にスイス国シュプレイテンバッハの工場から,「竹本矯正歯科」に向け発送し,その商品が,審判の請求の登録(平成20年3月11日)前3年以内である2006年12月26日ころに日本国(東京)に輸入され,「竹本矯正歯科」は,その商品を,遅くとも平成18年2月19日には受領していたことが認められる。
そして,被請求人の上記行為は,標章の「使用」について定めている商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回線を通じて提供する行為」の規定のうち「輸入する行為」に該当するものと判断するのが相当である。
(3)請求人の主張について
請求人は,「スイス国に所在の被請求人がスイス国に所在する本件商標に係る商品について日本国内に所在する歯科医師に対して個人輸入により販売し,当該商品を日本国内に発送したとしても,それは日本国内に所在する歯科医師による輸入行為に該当するのであって,被請求人による日本国内における販売行為に該当するものではない」旨主張する。
しかしながら,以下に示す平成15年7月15日 東京高等裁判所 平成14年行(ケ)第345号判決の判示に照らしても,本件商品の輸入を被請求人による輸入とした上記(2)の判断は,妥当であるというべきである。
「…商標権は,国ごとに出願及び登録を経て権利として認められるものであり,属地主義の原則に支配され,その効力は当該国の領域内においてのみ認められるところから,外国法人が商標を付した商品が我が国外において流通している限りは,我が国の商標法の効力は及ばない結果,我が国の商標法上の「使用」として認めることはできないものの,その商品がいったん日本に輸入された場合には,当該輸入行為をとらえ,当該外国法人による同法2条3項2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に当たる「使用」行為として,同法上の「使用」としての法的効果を認めるのが相当である。」
また,被請求人は,「薬事法の医療機器に該当する本件商品を日本国内に所在する歯科医師が薬事申請を行うことなく個人輸入により被請求人から直接輸入して個人で使用する行為は被請求人の日本国内での使用とはいえない」旨主張する。
しかしながら,本件については,仮にそれが個人輸入であるとしても,前記(2)のとおり,その輸入を被請求人による輸入とみて差し支えないものとみるのが相当であり,また,本件の使用事実の認定においては,必ずしも薬事法に基づく承認・許可等の有無の立証を要するものでもない。
(4)むすび
以上のとおりであるから,本件商標の商標権者(被請求人)は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標を請求に係る指定商品中の「chairs and seats for dental purposes(particularly for maxillofacial orthopaedics)(歯列矯正治療用椅子)」について使用していたことを証明し得たというべきである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-08-06 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-25 
国際登録番号 0765543 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z10)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊瀬 京太郎 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 岩崎 良子
小林 由美子
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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